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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ボルト軸用の連結金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/20 20060101AFI20220831BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20220831BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20220831BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20220831BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E04B9/20 B
E04B9/20 C
E04B9/18 B
F16B7/04 301U
F16B1/00 A
F16B2/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018132643
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020007881
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594062260
【氏名又は名称】株式会社佐藤型鋼製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】391060339
【氏名又は名称】株式会社サイトウミクロ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公章
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 勝巳
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056601(JP,A)
【文献】特開2017-133354(JP,A)
【文献】特開2015-183507(JP,A)
【文献】特開2015-212503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/20
E04B 9/18
F16B 7/04
F16B 1/00
F16B 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の連結部材の一端を上下方向に延びるボルト軸の所定の位置に連結固定するためのボルト軸用の連結金具であって、上記ボルト軸を挿通する前端部側U状部の側部に同U状部を形成する側壁の一部を切り欠くことによって上記ボルト軸を横から嵌入するボルト軸嵌入口を形成し、該ボルト軸嵌入口を介して上記前端部側U状部に上記ボルト軸を嵌挿する連結金具係止ホルダーと、該連結金具係止ホルダー内にあって上記嵌挿された前端部側ボルト軸に向けて後端部側から前端部側にスライド可能に軸支され、上記ボルト軸と平行な状態で上下方向に延びる左右一対の側壁部前の上下方向の全体に上記ボルト軸のネジ溝に係合する上下方向の係合を備えたU状の係合部材と、上記連結金具係止ホルダーの左右両側に相対回転可能に軸着されたU状のボルト連結金具と、該ボルト連結金具の基端に設けられた連結ボルト螺合孔と、該連結ボルト螺合孔を介して先端側押圧部を上記係合部材のU状部基端に衝合する連結ボルトと、上記ボルト軸に対して連結される連結部材の一端側に取り付けられ、上記連結ボルトの基端側を保持する連結ボルト保持部材とを備え、上記連結ボルト螺合孔に螺合され、上記連結部材の回動操作によって回動される連結ボルトにより上記係合部材が上記前端部側ボルト軸方向に押圧されて平行に移動し、その左右一対の側壁部の前端側上下方向の係合の全体が各々上記ボルト軸外周のネジ溝に均等に係合すると共に、該係合時に何れか一方側の側壁部の端が上記ボルト軸嵌入口を狭くするように構成されていることを特徴とするボルト軸用の連結金具。
【請求項2】
連結ボルト保持部材は、一定の回動トルク以上の回動トルクで相対回転可能に連結ボルトを連結保持していることを特徴とする請求項1記載のボルト軸用連結金具。
【請求項3】
嵌挿されたボルト軸に向けてスライド可能に軸支されたU状の係合部材は、左右一対の側壁部に上記ボルト軸方向に延びる長穴を備え、該長穴を介して連結金具係止ホルダー内に軸支されていることを特徴とする請求項1又は2記載のボルト軸用の連結金具。
【請求項4】
連結金具係止ホルダーの吊りボルト嵌挿部の他端には、ボルト連結金具を介して相対回転可能に連結された連結ボルトを所定の回転角位置に位置決めする位置規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1,2または3記載のボルト軸用の連結金具。
【請求項5】
ボルト軸が天上枠吊り下げ用の吊りボルトであり、連結部材が吊りボルト上端と天上枠との間に連結されるブレース材であることを特徴とする請求項1,2,3または4記載のボルト軸用の連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、天井下地における天井枠吊り下げボルト等のネジ溝を有するボルト軸に対して、補強用ブレース材等の連結部材の一端を連結するためのボルト軸用の連結金具の構造に関し、さらに詳しくは、ボルト軸に対する連結作業を容易にすると共に連結後のボルト軸との連結強度を向上させ、かつ構造をも簡素化したボルト軸用の連結金具の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に天井の下地構造の一部を形成する天井枠は、例えば複数本の野縁と該野縁が取り付けられる複数本の野縁受けとからなり、それら野縁および野縁受けを格子状に組み合わせ、野縁および野縁受けの上下に交叉する部分を所定の接合金具で相互に接合固定することによって一体に構成されている。
【0003】
そして、同天井枠は、天井の高さに応じた所定の長さの吊りボルトを用い、たとえば野縁受け等天井枠の所定部分に当該吊りボルトの下端を、また上階床スラブ等の建物の構造体の所定の取り付け部分に当該吊りボルトの上端を、それぞれ所定の取り付け金具(インサート型係止部材および吊り金具)を介して取り付けることにより吊り下げるようにしている。
【0004】
そして、同構成では、必要に応じて、上記天井枠の一部、たとえば天井枠を構成する野縁受けと上記吊りボルトの上端との間に斜め補強材としてのブレース材を設け、天井枠および天井下地の強度、耐震性を向上させる構成が採用されている。
【0005】
そのような構成を採用した場合において、当該ブレース材の下端は一般に上記野縁受けに対してネジ部材等で直接締結されるが、他方、上端側は所定の連結金具を介して連結されるようになっている。
【0006】
この所定の連結金具として、従来から幾つかのものが提案されていたが、何れのものも吊りボルトに対する連結金具の係合力が不十分で外れやすく、係合時の係合位置の調節が困難で連結時の作業効率が悪かった。また、連結後の連結金具とブレース材との連結距離を変えない相対回動が不可能で、連結されたブレース材のウエブ面が天井枠側野縁受けのウエブ面に沿わないような場合(沿わないと締結できない)、再度連結時と逆方向に回動してウエブ面を合わす必要があるが、そのようにすると螺合部により連結距離が変わってしまい、連結状態が緩んでしまう問題があった。
【0007】
そこで、本件出願人は、これらの問題を解決するために、吊りボルトの外周に対して嵌合される断面U字形状の連結金具係止ホルダーと、該連結金具係止ホルダーのU状部内側に上記吊りボルトの挿通孔を形成する状態で軸支された断面U字形状の係止ギヤホルダーと、該係止ギヤホルダーのU状部内側に回転可能に軸支された左右一対の係止ギヤと、上記連結金具係止ホルダーの上記U状部に対して先端側を相対回転可能に軸着された断面U字形状のボルト連結金具と、該ボルト連結金具のU状部基端に設けられた連結ボルト螺合孔と、該連結ボルト螺合孔を介して螺合挿通され、その軸部先端を上記係止ギヤに衝合する連結ボルトと、上記吊りボルトに対して連結されるブレース材等連結部材の一端側に在って、上記連結ボルトの軸部基端側を保持する連結ボルト保持部材とからなり、上記ボルト連結金具を介して螺合される上記連結ボルトによって上記係止ギヤホルダーおよび上記係止ギヤが上記吊りボルト外周面に押圧されて上記係止ギヤの一部が上記吊りボルトのネジ溝に係合する一方、上記吊りボルトが上記連結金具係止ホルダーのU状部基端内周面に形成されているネジ溝部に係合して軸方向に固定されるようにしたものを提案している(特許文献1を参照)。
【0008】
このような構成によると、連結金具係止ホルダーが断面U字形状となっていて、吊りボルトの外周に確実に嵌合されるようになっている。そして、同連結金具係止ホルダーのU状部内側(内周側)に、そのU状部基端面(外端面)との間で上記吊りボルトの挿通孔を形成する係止ギヤホルダーが軸支されている。
【0009】
したがって、吊りボルトは、連結金具係止ホルダーの閉環状の吊りボルト挿通孔内に確実に嵌挿されることになり、連結金具係止ホルダーの吊りボルトに対する嵌合機能は大きく向上する。また、連結金具係止ホルダーのU状部内側の係止ギヤホルダー内には、左右一対の係止ギヤが同軸に軸支されており、連結時には、係止ギヤホルダーのU状部基端面および係止ギヤ先端が連結ボルトの回転により押されて吊りボルトの外周面に押圧され、係止ギヤの先端が吊りボルトのネジ溝に係合する一方、吊りボルトが連結金具係止ホルダーのU状部基端内周面に形成されているネジ溝部に係合して固定連結されるようになっている。
【0010】
したがって、単に吊りボルトと連結金具係止ホルダーが外れないだけでなく、両者は吊りボルトの所定の軸方向位置で確実に係止される。
【0011】
また、ボルト連結金具とブレース材とを連結する連結ボルトの連結部材との連結は完全な固定ではなく、一定のトルク以上のトルクで相対回転可能な連結状態となっているので、連結金具係止ホルダーが吊りボルト等ボルト軸に対して確実に係止された後においても、同係止状態を緩めることなく、ブレース材のウエブ面とブレース材下端側野縁受けのウエブ面との面合わせを連結距離を変えることなく行うことができる。
【0012】
したがって、以上に述べた問題は、確実に解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2017-133279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記特許文献1に示されている連結金具の場合にも、次のような新たな課題が見出された。
【0015】
(1)連結金具係止ホルダーが完全なU状構造となっており、U状部内側にU状部基端との間に吊りボルト挿通孔(嵌挿孔)を形成する係止ギヤホルダーおよび係止ギヤが軸支されており、形成される吊りボルト挿通孔(嵌挿孔)は完全な閉環構造である。
【0016】
したがって、吊りボルトに対する連結金具の係合力は確実で、外れにくいメリットがあるが、他面、上下方向の長さが長い吊りボルトに対して下端側から連結金具を嵌挿し、上端側の取り付け位置までスライドさせてセットしなければならず、そのセット作業は必ずしも容易ではない。そのため、取り付け時の作業効率が悪い。
【0017】
(2)吊りボルト外周面に押圧されて吊りボルト外周面のネジ溝に係合するのは円形の係止ギヤであり、吊りボルト外周面のネジ溝に係合するのは同円形の係止ギヤの円弧部の一部にしか過ぎない。したがって、連結金具係止ホルダーのU状部が閉環構造で吊りボルトの外周に嵌合しているとは言いながら、その上下方向の係止力が十分であるかと言うと、決して十分であるとは言い難い。
【0018】
この部分での係止力が十分でないと、連結金具係止ホルダーのU状部基端側内周面のネジ溝と吊りボルト外周面のネジ溝との係合も十分とは言えなくなる。また、連結金具係止ホルダーのU状部基端側内周面のネジ溝は、吊りボルトに挿通した後のスライド時に引っ掛かりやすく、スムーズなスライド操作を妨げる。したがって、どちらかと言うと、そのようなネジ部を不要に出来るくらいの係止力を係止ギヤ側で実現できることが望ましい。
【0019】
また、連結ボルトのボルト軸先端で係止ギヤの一端側ギヤ面を点接触に近い状態で押圧することにより、係止ギヤの他端側ギヤ面を吊りボルト外周面のネジ溝に押圧係合させるようにしているので、吊りボルト外周面への押圧力が必ずしも十分でなく、押圧されるギヤの歯が損傷しやすい問題もある。
【0020】
(3)連結ボルトにより係止ギヤを押圧する押圧ストロークは、連結金具係止ホルダーとボルト連結金具を連結している軸着ボルト外径と同軸着ボルトの外周に遊嵌されていて係止ギヤホルダー及び係止ギヤを嵌装支持しているスリーブ部材の内径との差により決まる構成となっており、係止ギヤに必ずしも十分な押圧力が作用する構成とはなっていない。
【0021】
(4)係止ギヤホルダーを介して係止ギヤを軸支しているために、連結金具係止ホルダー内の構造が複雑になっており、重量も重く、部品点数が多いため、製品コストも高くなっている。
【0022】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、断面U状の連結金具係止ホルダーのU状部基端側ボルト軸挿通孔の側部に横から吊りボルト等のボルト軸を嵌入することができるボルト軸嵌入口を形成することにより、吊りボルト等ボルト軸の嵌挿を容易にすると共に、連結ボルトに押されて吊りボルト等ボルト軸外周面のネジ溝に係合する係合部材を、係止ギヤホルダーに保持されて押圧される円形の係止ギヤに変えて、左右一対の側壁部の端が吊りボルト等ボルト軸外周面のネジ溝に沿って係合する上下方向の係合に形成されていると共に係合時に左右一対の側壁部の何れかが上記ボルト軸嵌入口を狭くするU状の係合部材を採用することにより、十分に係止力を向上させたボルト軸用の連結金具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願発明のボルト軸用の連結金具は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0024】
(1)第1の課題解決手段
本願発明の第1の課題解決手段におけるボルト軸用の連結金具は、所定の連結部材の一端を上下方向に延びるボルト軸の所定の位置に連結固定するためのボルト軸用の連結金具であって、上記ボルト軸を挿通する前端部側U状部の側部に同U状部を形成する側壁の一部を切り欠くことによって上記ボルト軸を横から嵌入するボルト軸嵌入口を形成し、該ボルト軸嵌入口を介して上記前端部側U状部に上記ボルト軸を嵌挿する連結金具係止ホルダーと、該連結金具係止ホルダー内にあって上記嵌挿された前端部側ボルト軸に向けて後端部側から前端部側にスライド可能に軸支され、上記ボルト軸と平行な状態で上下方向に延びる左右一対の側壁部前の上下方向の全体に上記ボルト軸のネジ溝に係合する上下方向の係合を備えたU状の係合部材と、上記連結金具係止ホルダーの左右両側に相対回転可能に軸着されたU状のボルト連結金具と、該ボルト連結金具の基端に設けられた連結ボルト螺合孔と、該連結ボルト螺合孔を介して先端側押圧部を上記係合部材のU状部基端に衝合する連結ボルトと、上記ボルト軸に対して連結される連結部材の一端側に取り付けられ、上記連結ボルトの基端側を保持する連結ボルト保持部材とを備え、上記連結ボルト螺合孔に螺合され、上記連結部材の回動操作によって回動される連結ボルトにより上記係合部材が上記前端部側ボルト軸方向に押圧されて平行に移動し、その左右一対の側壁部の前端側上下方向の係合の全体が各々上記ボルト軸外周のネジ溝に均等に係合すると共に、該係合時に何れか一方側の側壁部の端が上記ボルト軸嵌入口を狭くするように構成されていることを特徴としている。
【0025】
このような構成の場合、まず断面U状の連結金具係止ホルダーのU状部端側ボルト軸挿通孔部分の側部に同U状部を形成する側壁の一部を切り欠くことによって、横から吊りボルト等のボルト軸を嵌入することができるボルト軸嵌入口が形成されている。したがって、吊りボルト等ボルト軸の天上スラブ側上端に連結部材を連結する場合にも、長いボルト軸の下方から上方に連結金具を嵌挿する必要がなく、最初から連結位置で直交方向に容易に嵌合することができる。したがって、連結金具係止ホルダーに対するボルト軸嵌挿作業(又はボルト軸に対する連結金具係止ホルダーの嵌合作業)が非常に容易になる。
【0026】
また、連結ボルトに押されて吊りボルト等ボルト軸外周面のネジ溝に係合する係合部材が、従来のような円形の係止ギヤではなく、連結金具係止ホルダー内にあって上記嵌挿された前端部側ボルト軸に向けて後端部側から前端部側に平行スライド可能に軸支され、上記ボルト軸と平行な状態で上下方向に延びる左右一対の側壁部前の上下方向の全体に上記ボルト軸のネジ溝に係合する上下方向の係合を備えたU状の係合部材よりなっており、吊りボルト等ボルト軸外周面のネジ溝に対して水平に十分な係合力を有して係合するようになる。したがって、吊りボルト等ボルト軸とブレース材等連結部材の連結部の係止力が大きく向上する。
【0027】
しかも、断面U状の係合部材は、連結金具係止ホルダー内にあって嵌挿された前端部側ボルト軸に向けて後端側から前端側に平行スライド可能に軸支されており、上記のように、ボルト軸外周面のネジ溝に沿って係合した時には、その内の何れか一方側の側壁部が上記ボルト軸嵌入口を狭くするようになっている。したがって、連結金具係止ホルダー内に嵌挿されたボルト軸は、ボルト軸嵌入口があっても係合後は従来とほぼ同様の閉環状に嵌合保持されることになり、外れるような恐れは生じない。
【0028】
また、係合部材は、断面U状構造をなし、同係合部材の上下方向の全体に亘って係合を有する左右一対の側壁部の端(開放端側端)が所定の間隔をおいて吊りボルト等ボルト軸外周面(円弧面)のネジ溝部分に左右2カ所で係合して連結金具係止ホルダーのU状の前端部(基端部との間で吊りボルト等ボルト軸を確実かつ強固に挟着保持するので、従来のようなボルト軸挿通孔形成用(押圧用)の係止ギヤホルダーは不要となり、部品点数が減少して、構造も簡単になり、より軽量化されて、製品価格も安価になる。
【0029】
この場合、上下方向の係合を有する左右一対の側壁部相互の間隔は、当然ながら吊りボルト等ボルト軸の外径(直径)よりも所定寸法小さいが、同ボルト軸の円弧面を左右両側で十分に挟着固定して、かつ同円弧面に有効に押圧力を作用させることができる寸法に設定されている。
【0030】
具体的には、断面U状の金属製連結金具係止ホルダーの内側にスライド可能に嵌合される同じく断面U状の金属プレートで、その開放端側左右一対の側壁部を当該連結係止ホルダーのU状部基端側内壁面に対向させ得る寸法のものに形成されている。
【0031】
この場合、上記係合部材の開放端側左右一対の側壁部端は、ボルト軸の円弧面左右に所定の間隔をおいて強く押し付けられると、当該ボルト軸の円弧面左右を強く挟着する反面、ボルト軸円弧面側からの応力で広がり方向の力を受けるが、同構成の場合、係合部材は連結金具係止ホルダーの内側に嵌合されており、上記開放端側左右一対の側壁部先端に作用する広がり力は連結金具係止ホルダーの左右両側壁によって確実、かつ強固に規制されるので、そのような心配はない。
【0032】
(2)第2の課題解決手段
本願発明の第2の課題解決手段は、上記第1の課題解決手段において、連結ボルト保持部材は、一定の回動トルク以上の回動トルクで相対回転可能に連結ボルトを連結保持していることを特徴としている。
【0033】
したがって、このような構成によれば、所定の対角線方向の連結位置に最終的に連結された後でも、その連結長さを変えることなくブレース材のみを所望に軸周り方向に回動することが可能となる。そのため、連結作業終了後に、自由に連結部材の下端側ウエブ面を天上枠側野縁受けのウエブ面に合わせることが可能となる。
【0034】
(3)第3の課題解決手段
本願発明の第3の課題解決手段は、上記第1または第2の課題解決手段において、上記嵌挿されたボルト軸に向けてスライド可能に軸支されたU状の係合部材は、左右一対の側壁部に上記ボルト軸方向に延びる長穴を備え、該長穴を介して連結金具係止ホルダー内に軸支されていることを特徴としている。
【0035】
この第3の課題解決手段の構成では、ボルト軸に押圧されて上下方向の係合面がボルト軸のネジ溝に係合する係合部材は、ボルト軸方向に延びる長穴を介して連結金具係止ホルダーとボルト連結金具を相対回転可能に軸着する軸着ボルトに支持されている。したがって、連結ボルトにより押圧されてボルト軸方向に移動し、ボルト軸のネジ溝に係合する係合面を有する係合部材は、該長穴により十分な長さの押圧ストロークが確保され、十分に大きい押圧力を伴って有効に係合するようになる。したがって、従来のように、係止ギヤを押圧する押圧ストロークが、連結金具係止ホルダーとボルト連結金具を連結している軸着ボルトの外径と同軸着ボルトの外周に遊嵌されていて係止ギヤホルダー及び係止ギヤを嵌装支持しているスリーブ部材の内径との差により決まる殆どストロークのない構成と異なって、十分に距離のある有効な押圧ストロークを確保することが出き、確実な係合力を実現することができる。また、それによって連結部材の連結回転角位置を十分に広く取ることができる。
【0036】
(4)第4の課題解決手段
本願発明の第4の課題解決手段は、上記第1,第2または第3の課題解決手段において、上記連結金具係止ホルダーの吊りボルト嵌挿部の他端には、ボルト連結金具を介して相対回転可能に連結された連結ボルトを所定の回転角位置に位置決めする位置規制部材が設けられていることを特徴としている。
【0037】
この課題解決手段の構成では、吊りボルトに対して嵌合され、吊りボルトのボルト軸部分を嵌挿する連結金具係止ホルダーの吊りボルト嵌挿部の他端に、螺合状態で介装され、連結金具係止ホルダーに対して相対回転可能に支持された連結ボルトを、たとえば対角線方向45度の最大回転角位置などの所定回転角位置に位置決めする位置規制部材が設けられている。したがって、吊りボルトへの連結部材を連結保持するボルト連結金具が、同位置規制部材によって位置規制された最大回転角連結位置に位置決めされることは勿論、同位置規制部材によって位置規制されるまでの所定回転角位置において所望に連結されるようになり、連結部材の連結作業が著しく容易になる。
【0038】
(5)第5の課題解決手段
本願発明の第5の課題解決手段は、上記第1,第2,第3または4の課題解決手段において、ボルト軸が天上枠吊り下げ用の吊りボルトであり、連結部材が吊りボルト上端と天上枠との間に連結されるブレース材であることを特徴としている。
【0039】
このような構成によれば、ボルト軸が天上枠吊り下げ用の吊りボルトであり、連結部材が吊りボルト上端と天上枠との間に連結されるブレース材である場合において、上記各解決手段と同様の作用、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0040】
以上の結果、本願発明によると、天井スラブから吊り下げた吊りボルト等のボルト軸に対するブレース材等所望の連結部材の連結強度がより有効に向上し、天井下地等所望の連結部材を使用する構造体自体の強度、耐震性能が大きく向上する。
【0041】
しかも、上下方向の長さが長い吊りボルト等ボルト軸に対するブレース材等連結部材の連結金具を介した連結作業が著しく容易になり、連結作業効率が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本願発明の実施の形態に係るボルト軸用の連結金具を用いて、天井スラブに固定された吊りボルトに対してブレース材を連結するブレース材連結構造を示す正面図である。
図2】同ブレース材連結構造を示す図1の背面図である。
図3】本願発明の実施の形態に係るボルト軸用の連結金具部分全体の構成を示す正面図である。
図4】同ボルト軸用の連結金具部分全体の構成を示す図3の背面図である。
図5】同ボルト軸用の連結金具における連結ボルト保持部材の構成を示す正面図である。
図6】同ボルト軸用の連結金具における連結ボルト保持部材の構成を示す背面図である。
図7】同ボルト軸用の連結金具における連結ボルト保持部材の構成を示す右側面図である。
図8】同ボルト軸用の連結金具における連結ボルト圧着板の構成を示す正面図である。
図9】同ボルト軸用の連結金具における連結ボルト圧着板の構成を示す右側面図である。
図10】同ボルト軸用の連結金具における連結ボルトの構成を示す正面図である。
図11】同ボルト軸用の連結金具におけるボルト連結金具の構成を示す正面図である。
図12】同ボルト軸用の連結金具におけるボルト連結金具の構成を示す左側面図である。
図13】同ボルト軸用の連結金具において、連結金具係止ホルダーおよび係合部材を軸支するとともに、それらとボルト連結金具の先端とを相対回動可能に連結する軸着ボルトの構成を示す正面図である。
図14】同ボルト軸用の連結金具における連結金具係止ホルダーの構成を示す正面図である。
図15】同ボルト軸用の連結金具における連結金具係止ホルダーの構成を示す左側面図である。
図16】同ボルト軸用の連結金具における連結金具係止ホルダーの構成を示す右側面図である。
図17】同ボルト軸用の連結金具における連結金具係止ホルダーの構成を示す上面図である。
図18】同ボルト軸用の連結金具における係合部材の構成を示す正面図である。
図19】同ボルト軸用の連結金具における係合部材の構成を示す背面図である。
図20】同ボルト軸用の連結金具における係合部材の構成を示す左側面図である。
図21】同ボルト軸用の連結金具における係合部材の構成を示す上面図である。
図22】同ボルト軸用の連結金具において連結ボルト保持部材とブレース材とを連結する場合の連結面相互の関係を示す要部の断面図である。
図23】同ボルト軸用の連結金具における連結ボルト保持部材とブレース材との連結状態の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付の図面を参照して、本願発明に係るボルト軸用の連結金具の具体的な実施の形態について詳細に説明する。
【0044】
この発明の実施の形態に係るボルト軸用の連結金具の構成では、実施対象(施工対象)の一例として、体育館や倉庫等の建物における天井スラブの下面側に吊りボルトを吊設して天井枠を吊り下げ、該天井枠の一部と吊りボルトの上端とをブレース材(斜め補強材)で連結することによって補強し、その構造強度および耐震性能を向上させるようにした天井下地が選ばれている。そして、本願発明に係るボルト軸が吊りボルトに、また連結材がブレース材(斜め補強材)に対応している。
【0045】
まず図1および図2は、同本願発明の実施の形態に係るボルト軸用の連結金具を用いた吊りボルトに対するブレース材の連結状態を、また図3および図4は、同本願発明の実施の形態に係るボルト軸用の連結金具の全体的な構成を、さらに図5図23は、同本願発明の実施の形態に係るボルト軸用の連結金具を構成する各構成部品の構成を、それぞれ示している。
【0046】
<吊りボルト2,2・・の構成および天井スラブ1における吊りボルト2,2・・係止部の構成について>
本実施の形態における天井枠の構成は、先に述べた従来の特許文献のものと同様のものであり(野縁および野縁受けにより構成)、そのような天井枠を天井スラブ1に吊り下げる吊りボルト2,2・・も、たとえば図1および図2に示されるように、その上端から下端までの外周面全体に所定の深さおよび所定の溝幅のネジ溝を有し、所定の軸径で上下方向にストレートに延びるボルト部材(頭部のないネジ溝付ロッド部材)により構成されている。そして、その上端側は、天井スラブ1中にインサートされた状態で強固に埋設(固定)されているスリーブ状の吊りボルト係止部材9の吊りボルト連結孔9a内に螺合されることにより連結係止されている。
【0047】
すなわち、天井スラブ1の吊りボルト2,2・・の吊り下げ位置には、たとえば図1および図2に詳細に示すように、上下方向に所定の深さ(長さ)の吊りボルト連結孔9aおよび係止用縁部9b、9cを備えたスリーブ状の吊りボルト係止部材9がインサート設置(固定)されており、吊りボルト係止部材9の対応するネジ溝を備えた吊りボルト連結孔9aに対して吊りボルト2,2・・の上端2a側の所定長さ部分を螺合係止することにより吊りボルト2,2・・が確実、かつ強固に垂設状態で取り付けられている。
【0048】
そして、これら吊りボルト2,2・・の下端側に野縁受け吊設金具を介して天上枠が吊設される。
【0049】
<吊りボルト2,2・・に対して連結されるブレース材5,5・・の構成について>
この発明の実施の形態では、上述のように、複数本の野縁および野縁受けにより構成される天井枠における所定の野縁受けと複数本の吊りボルト2,2・・の内の所定の吊りボルト2の上端2aとの間に位置してブレース材(斜め補強材)5が連結され、吊りボルト2と野縁受けとの間で所定の内角関係の直角三角形を形成することによって、強固な天井下地トラス構造を実現し、有効に耐震強度を向上させるようになっている。
【0050】
このブレース材5は、たとえば図1図2図22図23に示すように、引っ張り強度に加えて座屈強度が高い断面コ字状の溝形鋼(チャンネル材)よりなっており、従来と同様に、その下端側の面積の大きいウエブ面部分を野縁受けのウエブ面部分に対して、締結面を合わせた上で、所定の傾斜角(たとえば45度)を有してドリリングタッピンネジ等により強固に締結することにより野縁受けに対して連結される(図示省略)。
【0051】
<ボルト軸用の連結金具の構成およびボルト軸用の連結金具を用いた吊りボルト2に対するブレース材5の連結構造について>
この実施の形態の場合、ブレース材5の上端5aと吊りボルト2の上端2aとは、たとえば図1および図2に示すように、ブレース材5,5・・による吊りボルト2の上端2aと天上枠側野縁受けとの対角線方向の連結長さおよび吊りボルト2とブレース材5との間の連結角度の調整、さらには連結されるブレース材5の軸周り方向の回動調整が可能なようにボルト軸用の連結金具(ブレース材連結金具)10を用いて強固に連結されるようになっている。
【0052】
このボルト軸用の連結金具10は、たとえば図1図2および図3図4に示すように、吊りボルト2のボルト軸外周部分に嵌合されて最上端位置(天井スラブ1の下面に接する位置)に係止される筒状の連結金具係止ホルダー11と、該連結金具係止ホルダー11の左右両側壁中央部分に軸着ボルト54を介して相対回動可能に連結されたU状のボルト連結金具51と、上記連結金具係止ホルダー10の左右両側壁間にあって上記軸着ボルト54により回動可能、かつ前後方向にスライド可能に支持されたU状の係合部材13と、上記溝形鋼よりなるブレース材5の上端部5aのウエブ部背面側 (フランジ部のない面側)から当該ブレース材5に対して嵌合(重合)され、ドリリングタッピンネジ56、56を用いて締結固定される連結ボルト保持部材52と、該連結ボルト保持部材52のブレース材5の上端5aと重合していない先端側所定長さ部分に頭部(ボルト基端)53b側ボルト軸部分を支持されている一方、同ボルト軸の先端53a部分を上記ボルト連結金具51の基端側後部壁51c部分に設けた螺合孔51eを螺合貫通して上記ボルト連結金具51内前方(斜め上方)に伸縮可能に突出するブレース材連結ボルト53とからなっている。
【0053】
<連結金具係止ホルダー11部分の具体的な構成について>
連結金具係止ホルダー11は、全体として所定の板厚の金属プレートよりなる金具本体11aの前端部11d部分が上記吊りボルト2の外周に嵌合(外嵌)される平面視U状の円弧形状、後端部11c部分が平面視コ状の方形状で、全体として前後方向に長い薄型の金属製の筒体構造となっている。
【0054】
そして、その左右両側壁11b,11bの中央部分には、上述したボルト連結金具51連結用の軸着ボルト54を挿通する軸着ボルト挿通孔11e、11eが設けられており、同左右両側壁11b,11bの中央部分の外側に重合状態で嵌合されたボルト連結金具51の金具本体51aの左右両側壁51b,51bの軸着ボルト挿通孔51d,51dを通して図13に示す軸着ボルト54が挿通され、その先端部54aにナット(図示省略)を螺合することによって頭部54bとの間係止され、これによってボルト連結金具51が鉛直状態から斜め45度の状態まで相対回動可能に連結されている。
【0055】
また、該連結金具係止ホルダー11の上記円弧形状の前端部11dの内側は上述した吊りボルト2を嵌挿する吊りボルト嵌挿部12に形成されており、該吊りボルト嵌挿部12の一側には、側壁11bの一部を上下に切り欠くことにより、横方向から平行に吊りボルト2を嵌入する(逆に言うと、連結金具係止ホルダー11を側方から平行に吊りボルト2に嵌合する)ための吊りボルト嵌入口(ボルト軸嵌入口)12aが設けられている。この吊りボルト嵌入口12aの幅は、吊りボルト2の外径に対応し、吊りボルト2の外径よりも少し大きいものとなっている。連結金具係止ホルダー11の上記円弧形状の前端部11d部分には、上下2か所において吊りボルト嵌挿部12を補強する水平方向のリブ11i,11iが設けられており、側壁11bの一部を切り欠いたことによる吊りボルト嵌挿部12部分の剛性強度を補強している。連結金具係止ホルダー11の上記方形状の後端部11c部分は、平面視コ状に連結されている連結部(左右の側壁11b,11bを連結している部分)が、上下方向の中間部より上方側所定幅部分にのみあって、下方側半分部分は左右の側壁11b,11b間が開放されているとともに、同左右の側壁11b,11bの下端側コーナー部分が上記軸着ボルト挿通孔11e,11eを中心とした所定半径の円弧形状に形成されている。そして、それにより、上述のように軸着ボルト54を介して連結されたボルト連結金具51が後述するように連結ボルト53を螺合し、その先端53aを左右の側壁11b,11b間に臨ませた状態で、上記軸着ボルト挿通孔11e,11e部分から鉛直方向下方に垂設させた状態から斜め45度に傾斜させた状態に所望に相対回動できるようになっている。この場合において、上記方形状の後端部11c部分(左右両側壁11b,11bの連結部)は、斜め45度に傾斜させてブレース材5を連結する場合に位置規制部材として機能する。
【0056】
連結金具係止ホルダー11の上記金具本体11aの上記吊りボルト嵌入口12が設けられていない側壁11bの吊りボルト嵌入口12手前側下端には、側壁11bの一部を側壁間内側に90度折り曲げることによってボルト連結金具回動規制片11gを設け、上記軸着ボルト54を介して連結されたボルト連結金具51が連結ボルト53の先端53aを左右の側壁11b,11b間に臨ませた状態で、上記軸着ボルト挿通孔11e,11e部分から鉛直方向下方に垂設させた位置に来た時に、ボルト連結金具回動規制片11gが連結ボルト53の先端53aに当接してそれ以上吊りボルト嵌挿部12側に回動しないように前方側への回動規制を行うようになっている。
【0057】
他方、当該ボルト連結金具51および連結ボルト53が、当該鉛直方向下方への垂設状態から斜め45度後方に傾斜する状態に来た時には、上記方形状の後端部11cの上記平面視コ状に連結されている部分(左右の側壁11b,11bを連結している部分)が連結ボルト53の先端53aに当接してそれ以上水平方向後方側に回動しないように回動規制を行ない、ブレース材5の連結角度を斜め45度に設定する。
【0058】
また、該連結金具係止ホルダー11の上記金具本体11aの左右側壁11b,11b間上端には、上記吊りボルト嵌入口12が設けられていない側壁11bの一部を側壁間内側に90度折り曲げることにより、当該連結金具係止ホルダー11の左右側壁11b,11b間に前後方向にスライド可能に嵌装された上記係合部材13のスライド方向へのガイドを行う天板機能を持ったガイド片11fが設けられている(ガイド作用については、係合部材13の構成に関する部分で詳細に説明する)。このガイド片11は、その前端側の一部を鉛直方向上方に折り曲げて吊りボルト嵌挿部12の嵌装通路を制約しないようにするとともに、折り曲げ部11hの上端を天上スラブ1下面への吊りボルト嵌挿部12の鉛直位置規制部材として機能させるように構成している。すなわち、この実施の形態における連結金具係止ホルダー11の金具本体11aは、図1図4および図14に示されるように、上端部全体が前端部11d側から後端部11c側にかけて所定の角度で下降傾斜するように構成されている。したがって、従来のように、当該上端部全体を天上スラブ1の下面に当接させたのでは、吊りボルト嵌挿部12の嵌装通路が鉛直方向に沿わず、適正な取り付けを行うことができない。そこで、吊りボルト嵌挿部12を形成する円弧形状の前端部11dの上端とガイド片11fの折り曲げ部11hの上端が共に水平方向の同じ高さ位置にあるように構成し、上端部全体の傾斜角に関係なく、吊りボルト嵌挿部12を形成する円弧形状の前端部11dの上端とガイド片11fの折り曲げ部11hの上端が天上スラブ1の下面に当接させて連結金具係止ホルダー11を取り付けさえすれば、必ず吊りボルト嵌挿部12の嵌装通路が鉛直方向に位置規制されるようにしている。
【0059】
<係合部材13の構成について>
係合部材13は、平面視U状の金具本体13aよりなり、左右一対の側壁13b,13bは、上記連結金具係止ホルダー11の左右一対の側壁11b,11bの連結部がない円弧形状部分に対応した部分が逆に連結部(連結ボルト53の押圧部)13cがある円弧形状に形成されている。
【0060】
そして、左右一対の側壁13b,13bの中央部分には、図18および図19に示すように、前後方向に延びる所定の長さの長穴13d,13dが形成されており、この長穴13d,13dを介して、上記連結金具係止ホルダー11の左右一対の側壁11b,11b間の上記軸着ボルト54に回動可能、かつ前後方向にスライド可能に軸支されている。
【0061】
この係合部材13の左右一対の側壁13b,13bの上下両端は、上記連結金具係止ホルダー11上端のガイド片11fの前後方向の傾斜角に沿って平行に傾斜したものとなっており、上記長穴13d,13dも同様の傾斜角度で前後方向に平行に傾斜している。そして、それら左右一対の側壁13b,13bの上端は、上記長穴13d、13dを介して軸着ボルト54に軸支された状態において、上記連結金具係止ホルダー11上端のガイド片11fの下面により傾斜角が規制されて、上下方向に傾くことなく前後方向にスムーズにスライドするようになっている。
【0062】
左右一対の側壁13b,13bの前端は、上記軸支状態において鉛直方向にストレートに延び、その上下方向の全体に亘って、上記吊りボルト2のネジ溝に噛み合う係合部(凹凸溝部)13e,13eが設けられている。
【0063】
それら左右一対の側壁13b,13bの後部側下端の連結部13cの前後方向の幅は、少なくともブレース材5を連結する傾斜角範囲内において、連結ボルト53のボルト軸先端53aが当接し、押圧力が作用する回動角範囲をカバーできる寸法のものであれば良い。
【0064】
この実施の形態の場合、上述した軸着ボルト挿通孔11e,11e部分からボルト連結金具51および連結ボルト53を鉛直方向下方に垂設させた状態から斜め45度に傾斜させた状態までの回動角範囲に対応したものとされており、しかも、その円弧面の曲率(傾斜角)は、上記長穴13d,13dの長さ、位置およびその傾斜角との関係において、上記ボルト連結金具51および連結ボルト53が鉛直方向下方に垂設されている状態において、上記ボルト連結金具51を介して上記連結ボルト53を締めて行った時に(連結ボルト53の先端で係合部材13の連結部13cを押圧していった時に)、係合部材13の全体が上記連結部13cの円弧面によりガイドされて次第に右回りに回動せしめられて(図18の方向に見た時に)、最終的に斜め45度に傾斜する状態になった時に、連結金具係止ホルダー後端部11cで位置規制されて係合部材13の回転が止まり、確実に締めつけられるようになっている。逆に連結金具係止ホルダー11が固定されている状態で言うと、連結ボルト53およびボルト連結金具51側が左回り方向に回転されて連結金具係止ホルダー後端部11c部分で位置規制されて回転が止まり、確実に締めつけられるようになっている。
【0065】
この時、上記ボルト連結金具51および連結ボルト53が鉛直方向下方に垂設されている状態では、上記係合部材13は、重力により下降した状態にあり、長穴13dの前端(上端)位置で軸着ボルト54に軸支されているから(図3および図4の状態を参照)、その前端側の係合部(凹凸部)13e、13eは、上記吊りボルト嵌挿部12部分には突出しておらず、上記吊りボルト嵌挿部12部分には、上述した吊りボルト嵌入口12aを介して横から容易に吊りボルト2を嵌入することができる。
【0066】
そして、このようにして連結係止ホルダー11前端部11d内側の吊りボルト嵌挿部12に吊りボルト2を嵌合し、さらに上述のように連結ボルト53を螺合、回動してゆくと、上記ボルト連結金具51および連結ボルト53が45度傾斜方向に回動されるとともに、係合部材13が長穴13dを介して次第に吊りボルト嵌挿部12側に突出して行き、その前端側の係合部(凹凸部)13e、13eの全体を上記吊りボルト嵌挿部12内に嵌挿されている吊りボルト2のネジ溝に係合させた状態で押圧され、吊りボルト2を吊りボルト嵌挿部12部分に確実に固定する(図1および図2の状態を参照)。
【0067】
<ブレース材5上端側の連結ボルト保持部材52の構成について>
吊りボルト2に対して連結されるブレース材5の上端5a部分には、たとえば図1および図2に示されるように、上記のようにして係合部材13を吊りボルト2の外周面に係合、圧着させる連結ボルト53の保持部材(連結ボルト53を保持し、かつ連結ボルト53とブレース材5とをトルクリミッター機能を有して連結保持する連結ボルト保持部材52が設けられている。
【0068】
この連結ボルト保持部材52は、たとえば図5図7に示されるように、両側に断面U状に曲成された補強用のリブ52b,52bを設けた、ブレース材5よりも若干幅が広い所定の長さの金属板52aよりなり、そのフラット面側(補強用リブ52,52の非曲成面側/溝面側)を、たとえば図22に示すように、フランジ5b,5bを備えたチャンネル材よりなるブレース材5の上端部5aのウエブ面側に対して重合し、ネジ孔52f,52f・・(図5図6参照)を介してドリリングタッピンネジ56,56・・を螺合して一体に締結固定している。
【0069】
そして、該連結ボルト保持部材52の上記ブレース材5の上端5aと重合していない先端側部分に上記連結ボルト53の頭部53b側ボルト軸基端部分を支持しているとともに、同連結ボルト53のボルト軸先端53a側を上記ボルト連結金具51の後部壁51cのボルト螺合孔51eを螺合状態で貫通して上記ボルト連結金具51内前方の上述した係合部材13の連結部13c円弧面に向けて伸縮可能に突出させている。
【0070】
上記連結ボルト保持部材52の上記ブレース材5の上端5aと重合していない先端側部分には、上記連結ボルト53の頭部53bを遊嵌し、軸方向に係止する頭部嵌合用の開口52dが、そして、同開口52d部分から軸方向先端側には、さらにボルト頭部53bから延びるボルト軸部分を嵌合する円弧面状の固定部52cが設けられている。
【0071】
上記円弧面状の固定部52cの内側は、上記連結ボルト53のボルト軸の断面形状の略2分の1の半円形状の凹溝面となっており、内側には、さらに当該固定部52c内側の凹溝面との間に上記連結ボルト53のボルト軸基端部分を挟んで、所定の圧接力で圧着する、上記同様の半円形状の凹溝面を有する固定部57cを備えたボルト圧着板57が締結ボルト(ボルトおよびナット)55,55により締結固定されている。
【0072】
このボルト圧着板57は、たとえば図9に示すように、金属製の圧接板本体57aにおける上記ボルト軸圧接用の凸部(凹部)57cの両側に締結用のフランジ部57b,57bを備えて構成されており、該フランジ部57b,57b部分に上記連結ボルト保持部材52に設けられた圧着板締結用のボルト孔52e,52e(図5および図6参照)に対応するボルト孔57d,57dを設けている。
【0073】
そして、同ボルト孔57d,57dを介して、締結ボルト55、55により上記フランジ部57b,57b部分を上記連結ボルト保持部材52のボルト孔52e,52eに所定値以上の締め付け力で締結することにより、連結ボルト保持部材52側を右方向に回動させれば、連結ボルト53の先端側ボルト軸を上記連結金具51後壁部51cのボルト螺合孔51eを螺合状態で貫通して突出方向(係合部材13の連結部13c方向)に移動させることができ、同ボルト軸の移動により、やがて同ボルト軸の先端53aが上述した係合部材13の円弧形状の連結部13cに当接することになる。
【0074】
すなわち、連結ボルト53は、上記構成により、たとえば図23に示すような状態でブレース材5の上端部5a側に保持され、そのボルト軸先端53a側を、たとえば図1図2に示すように、ボルト連結金具51のボルト螺合孔51eに螺合貫通させることにより、上記吊りボルト2の上端に嵌合された連結金具係止ホルダー11に連結され、ボルト軸先端53a連結金具係止ホルダー11内の係合部材13の連結部13cに臨まされる。したがって、この状態では、上記ブレース材5そのものを軸周り方向右に回転させることにより、上記連結ボルト53をボルト連結金具51のボルト螺合孔51eに対して右回り方向に回転させることができる。そして、それによりボルト軸の先端53aを連結金具係止ホルダー11内の係合部材13の連結部13cに当接させ、さらには係合部材13の連結部13cを長穴13d,13dを介して徐々に吊りボルト2の方向にスムーズに押圧することができ、係合部材13の先端側上下方向にストレートな左右一対の係合部13e,13eを吊りボルト2に平行にスライドさせて吊りボルト2外周面のネジ溝に係合させることができる(上下方向の凹凸係合部全面を均等均圧に係合)。そして、同係合状態で、さらに押圧力が加えられると、上記左右一対の側壁13b,13b先端の左右一対の係合部13e,13eが吊りボルト2の対応する円弧面を左右両側から所定の円弧角で挟着(挟みつけながら、軸直交方向に押し付ける)する。また、この状態では、上記係合部材13の左右一対の側壁13b,13bの吊りボルト嵌入口12a側に位置する側壁13bの先端が吊りボルト嵌入口12aを半分近くまで狭く閉じ、吊りボルト2を実質的に閉環状態に維持する。
【0075】
その結果、ブレース材5の上端部5aが、吊りボルト2の上端に対して、上下方向の確実な係止力を伴った形で、たとえば傾斜角45度の対角線方向に強固に連結され、吊りボルト2と天上枠の野縁受けとの間で引っ張り強度(耐震強度)の高いトラス構造を形成する(図1および図2の状態を参照)。この場合、上記左右一対の側壁13b,13b先端の左右一対の係合部13e,13e部分は、必用に応じて、上記吊りボルト2の対応するネジ溝円弧面に対応した円周率の凹凸溝付き円弧面に形成される。
【0076】
そして、上記のように、ブレース材5が吊りボルト2の上端に対して、傾斜角45度の対角線方向に強固に連結され、それ以上には押圧できない状態(連結ボルト53が回動できない状態)になった時には、上記固定部52cと圧着板57よりなるボルト軸圧着部における圧着力に抗して、ブレース材5(および連結ボルト保持部材52)のみが上記連結ボルト53に対して空回りするようになり、トルクリミッター機能を発揮するので、必用以上の無駄な締めつけ作業を行うこともなくなる。
【0077】
ところで、上記連結金具10を介したブレース材5の回動操作による吊りボルト2上端への連結は、基本的に連結係止ホルダー11を図1図2のように吊りボルト2の上端位置に嵌合し、同状態を作業者が支持した状態で行われるが、ブレース材5の回動は、当該ブレース材5を予め上記最終的な連結傾斜角45度まで持ち上げておいて行っても良いが、その場合、上記連結ボルト53のボルト軸先端53aの突出量が少ない状態では、ボルト軸先端53aが係合部材13の45度位置決め用の連結部13c下端に当接係合しないので、正確に傾斜角45度の位置決めを行うことができない。
【0078】
したがって、最初はたとえば先に述べたように鉛直方向に垂設支持しておいて、ブレース材5を所定回数回動し、所定のボルト軸突出量を確保してからブレース材5を傾斜角45度位置に持ち上げると、ボルト軸の先端53aが係合部材13の45度位置決め用の連結部13cの下端に確実に係合するので、同位置で最終的にブレース材5を回動しても連結ボルト53が回らなくなる状態(連結ボルト保持部材52のトルクリミッター機能が作動する状態)まで回動操作して連結固定すればよい。
【0079】
この場合、上記の構成では、上述のように、上記係合部材13の長穴13d,13dの傾斜角および円弧形状の連結部13cの傾斜曲率が、ボルト軸先端53aの当接角(向かい角)との関係で、上記傾斜角45度に達するまではボルト軸(又は係合部材13)が傾斜角拡大方向(45度方向に)に相対的に逃がされ、傾斜角45度位置になった時に初めて、長穴13d,13dの後端(下端)が軸着ボルト54により係止され、かつボルト軸の先端53aが連結部13cの円弧面に正面して圧接するようになっているので、上記のような傾斜角45度の設定操作は本来特に必要ではなく、とにかくブレース材5を回動操作しさえすれば良い。したがって、ブレース材5の連結操作が非常に簡単になる。
【0080】
なお、上記ブレース材5の連結角度は、上述した45度の角度に限らず、それよりも小さい途中の連結角度に調整することもできる。
【0081】
(その他の実施の形態)
以上のように、本願発明に係るボルト軸用の連結金具、および該連結金具を用いた連結構造は、上述したような天井下地構造におけるボルト軸とブレース材の連結の場合だけでなく、その要旨を変更しない範囲で、同様のボルト軸に対して何らかの連結部材を連結する場合などに、広く適用できるものである。
【0082】
また、各構成部品等の構成も、技術的に均等と認められる範囲で、種々の変形が可能である。
【0083】
たとえば、そのような変形例として、上述の連結ボルト53の先端部53aと係合部材13の連結部13cの円弧面との関係があげられる。上述の実施の形態では、連結ボルト53の先端部53aが当接する係合部材13の連結部13cの円弧面が滑らかであるので、角度調節が容易な反面、位置規制部材による位置規制機能が働かない30~40度の連結角度位置では、連結ボルト53のボルト軸先端53aが連結部13cの円弧面に対し滑る可能性がある。
【0084】
そこで、連結部13cの円弧面をディンプル面等の凹凸面に形成することも可能である。このようにすると、45度以外の連結角度での連結の場合にも確実な係止力を実現することができる。しかも、角度調節の移動も比較的滑らかである。
【0085】
その結果、吊りボルト2に対する連結金具10の係止、固定強度が高くなるとともに、連結ボルト53を介したブレース材5の連結強度も向上する。
【符号の説明】
【0086】
1は、天井スラブ
2は、吊りボルト
5は、ブレース材
10は、連結金具
11は、連結金具係止ホルダー
12は、吊りボルト嵌挿部
12aは、吊りボルト嵌入口
13は、係合部材
13bは、側壁
13cは、連結部
13dは、長穴
13eは、係合部
51は、ボルト連結金具
52は、連結ボルト保持部材
53は、連結ボルト
53aは、連結ボルト53のボルト軸先端
54は、軸着ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18
図19
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図21
図22
図23