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特許7132797DPF再生制御装置及びDPF再生制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】DPF再生制御装置及びDPF再生制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/025 20060101AFI20220831BHJP
   F02D 41/38 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
F01N3/025 101
F02D41/38
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018162730
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033970
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西澤 和樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223367(JP,A)
【文献】特開2006-291788(JP,A)
【文献】特開2011-106340(JP,A)
【文献】特開2010-144525(JP,A)
【文献】特開平04-308309(JP,A)
【文献】特開2012-087705(JP,A)
【文献】特開2014-218982(JP,A)
【文献】特開2011-069323(JP,A)
【文献】特開2005-002830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
F02D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に配置されるDOC及び前記DOCの下流に配置されるDPFを備えるディーゼルエンジンの排ガス処理装置において、前記DPFの昇温により前記DPFに堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するためのDPF再生制御装置であって、
前記DPF再生制御装置は、
前記強制再生開始後、前記DOCの上流側温度が所定温度に到達した後に、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じた噴射開始条件を満たすか否かを判定するための判定部と、
前記噴射開始条件を満たしたときに前記DOCへの燃料のレイトポスト噴射を開始するための噴射実行部とを備え
前記噴射実行部は、切替条件を満たすまでは前記レイトポスト噴射における燃料噴射量のFF制御を行い、前記切替条件を満たした時にFB制御に切り替えるように構成されるとともに、
前記切替条件は、
前記燃料の噴射開始時から所定の切替時間経過時である第1切替条件、又は、
前記DPFの上流側温度が所定の切替温度到達時である第2切替条件、
のうちの少なくとも一方の切替条件を含む、
DPF再生制御装置。
【請求項2】
排気通路に配置されるDOC及び前記DOCの下流に配置されるDPFを備えるディーゼルエンジンの排ガス処理装置において、前記DPFの昇温により前記DPFに堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するためのDPF再生制御装置であって、
前記DPF再生制御装置は、
前記強制再生開始後、前記DOCの上流側温度が所定温度に到達した後に、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じた噴射開始条件を満たすか否かを判定するための判定部と、
前記噴射開始条件を満たしたときに前記DOCへの燃料のレイトポスト噴射を開始するための噴射実行部とを備え、
前記噴射実行部は、切替条件を満たすまでは前記レイトポスト噴射における燃料噴射量のFF制御を行い、前記切替条件を満たした時にFB制御に切り替えるように構成されるとともに、
前記噴射実行部は、前記FB制御の開始後、前記DPFの上流側温度と目標温度との温度差が第4温度以下を超えるときに、前記FF制御を再度行うように構成された、
DPF再生制御装置。
【請求項3】
前記DOCに堆積するSOFの堆積量が所定の堆積量を上回っている堆積条件を満たすか否かを判定するための堆積条件判定部をさらに備える、請求項1又は2に記載のDPF再生制御装置。
【請求項4】
前記堆積条件判定部は、前記DOCの上流側温度に応じて設定された重み係数に対し前記ディーゼルエンジンの運転時間を乗じて得られたSOF堆積指標に基づき、前記堆積条件を満たすか否かを判定するように構成された、請求項に記載のDPF再生制御装置。
【請求項5】
前記重み係数は、前記DOCの上流側における基準温度を境界として、前記基準温度よりも大きいときに負の重み係数を含み、前記基準温度よりも低いときに正の重み係数を含む、請求項記載のDPF再生制御装置。
【請求項6】
前記噴射開始条件は、前記DOCの上流側温度が第1温度に到達した時から前記レイトポスト噴射を開始するまでの時間が、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じて設定された遅らせ時間以上である第1噴射開始条件を含む、請求項1~の何れか1項に記載のDPF再生制御装置。
【請求項7】
前記噴射開始条件は、
前記DOCの下流側温度が第2温度以下である第2噴射開始条件、又は、
前記DOCの上流側温度と下流側温度との温度差が第3温度以下である第3噴射開始条件
のうちの少なくとも一方を含む、請求項1~の何れか1項に記載のDPF再生制御装置。
【請求項8】
前記第2温度又は前記第3温度のうちの少なくとも一方の温度は、前記強制再生開始により前記DOCの下流側温度が昇温した後低下することで至った温度を含む、請求項に記載のDPF再生制御装置。
【請求項9】
前記切替条件は、
前記燃料の噴射開始時から所定の切替時間経過時である第1切替条件、又は、
前記DPFの上流側温度が所定の切替温度到達時である第2切替条件、
のうちの少なくとも一方の切替条件を含む、請求項に記載のDPF再生制御装置。
【請求項10】
前記噴射実行部は、前記FB制御の開始後、前記DPFの上流側温度と目標温度との温度差が第4温度以下を超えるときに、前記FF制御を再度行うように構成された、請求項に記載のDPF再生制御装置。
【請求項11】
排気通路に配置されるDOC及び前記DOCの下流に配置されるDPFを備えるディーゼルエンジンの排ガス処理装置において、前記DPFの昇温により前記DPFに堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するDPF再生制御方法であって、
前記DPF再生制御方法は、
前記強制再生開始後、前記DOCの上流側温度が所定温度に到達した後に、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じた噴射開始条件を満たすか否かを判定する判定ステップと、
前記噴射開始条件を満たしたときに前記DOCへの燃料のレイトポスト噴射を開始する噴射実行ステップとを含み、
前記噴射実行ステップは、切替条件を満たすまでは前記レイトポスト噴射における燃料噴射量のFF制御を行い、前記切替条件を満たした時にFB制御に切り替えるとともに、
前記切替条件は、
前記燃料の噴射開始時から所定の切替時間経過時である第1切替条件、又は、
前記DPFの上流側温度が所定の切替温度到達時である第2切替条件、
のうちの少なくとも一方の切替条件を含む、
DPF再生制御方法。
【請求項12】
排気通路に配置されるDOC及び前記DOCの下流に配置されるDPFを備えるディーゼルエンジンの排ガス処理装置において、前記DPFの昇温により前記DPFに堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するDPF再生制御方法であって、
前記DPF再生制御方法は、
前記強制再生開始後、前記DOCの上流側温度が所定温度に到達した後に、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じた噴射開始条件を満たすか否かを判定する判定ステップと、
前記噴射開始条件を満たしたときに前記DOCへの燃料のレイトポスト噴射を開始する噴射実行ステップとを含み、
前記噴射実行ステップは、切替条件を満たすまでは前記レイトポスト噴射における燃料噴射量のFF制御を行い、前記切替条件を満たした時にFB制御に切り替えるとともに、
前記噴射実行ステップは、前記FB制御の開始後、前記DPFの上流側温度と目標温度との温度差が第4温度以下を超えるときに、前記FF制御を再度行う、
DPF再生制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DPF再生制御装置及びDPF再生制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンでは排ガス中のPM(粒子状物質)を捕集除去するため、後処理装置としてDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)システムが搭載される。DPFシステムでは、ディーゼルエンジンの排ガス流れの上流側にDOC(ディーゼル酸化触媒)が、下流側にDPFが配置されている。DPFで捕集されたPMは、所定量に達するか又は一定時間毎に、DPF昇温による強制再生によって除去される。DPFの強制再生には、自動再生及び手動再生が含まれる。
【0003】
強制再生では、DPF再生開始の閾値に達すると、先ずはDOCが活性を有する温度(250℃程度)まで排ガス温度(排温)が昇温される。その後、未燃燃料を供給し(レイトポスト噴射;LP噴射)、DOCで酸化発熱させることで、DPFの上流側での排温が600℃程度にまで昇温する。DOCが活性を有する温度(250℃程度)までの昇温は、吸気スロットルバルブ又は排気スロットルバルブの絞り、アーリーポスト噴射量及び噴射タイミングの変更等によって行われる。これらの制御は、ディーゼルエンジンの回転数及び燃料噴射量に応じたマップに従って行われる。また、これらの制御は、LP噴射後も、強制再生が終了するまで継続する。
【0004】
DPFの強制再生に関する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、LP噴射によりDPFを昇温することが記載されている(特に段落0050)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-68233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えばフォークリフト等では、排温が低い低負荷運転が多いため、運転時間に応じてDOCに燃料や潤滑油などに由来するSOF(可溶有機分)が堆積していくことが分かってきた。しかし、従来は、SOF堆積量によらずDOCが活性を有する温度に到達すると、一定時間経過後にLP噴射が開始されていた。そのため、SOF堆積量が多いときには、DOCが活性を有する温度までの昇温により、SOFの酸化発熱によるDOCの下流側(DPFの上流側)での温度上昇幅が大きくなる。この結果、LP噴射の開始直後において、DOCでのSOF分による酸化発熱とLP噴射による発熱とが同時に進行し、DPF上流側温度がオーバーシュートし易い。そして、DPFの上流側温度のオーバーシュートは、DPFに堆積した煤の異常燃焼をもたらし、DPFの過昇温に起因するDPF破損のおそれがある。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、上記課題に鑑みて為されたものであり、DPFの過昇温を抑制可能なDPF再生制御装置及びDPF再生制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るDPF再生制御装置は、
排気通路に配置されるDOC及び前記DOCの下流に配置されるDPFを備えるディーゼルエンジンの排ガス処理装置において、前記DPFの昇温により前記DPFに堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するためのDPF再生制御装置であって、
前記DPF再生制御装置は、
前記強制再生開始後、前記DOCの上流側温度が所定温度に到達した後に、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じた噴射開始条件を満たすか否かを判定するための判定部と、
前記噴射開始条件を満たしたときに前記DOCへの燃料のレイトポスト噴射を開始するための噴射実行部とを備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、DOC上流側温度がレイトポスト噴射を行うべき所定温度に到達したときであっても、その後に噴射開始条件を満たすまでレイトポスト噴射を待機することで、レイトポスト噴射開始を遅らせることができる。これにより、DOCでのSOFの酸化発熱が落ち着いてからレイトポスト噴射を行うことができるような適当な噴射開始条件を設定することで、DPFの過昇温を抑制できる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記DOCに堆積するSOFの堆積量が所定の堆積量を上回っている堆積条件を満たすか否かを判定するための堆積条件判定部をさらに備える。
【0011】
上記(2)の構成によれば、DOCへのSOF堆積量が多く発熱量が多い場合であっても、レイトポスト噴射開始を遅らせることでDPFの過昇温を抑制できる。また、DOCへのSOF堆積量が少ない場合にはレイトポスト噴射がすぐに行われるため、強制再生を迅速に行うことができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記堆積条件判定部は、前記DOCの上流側温度に応じて設定された重み係数に対し前記ディーゼルエンジンの運転時間を乗じて得られたSOF堆積指標に基づき、前記堆積条件を満たすか否かを判定するように構成された。
【0013】
上記(3)の構成によれば、ディーゼルエンジンの運転時間を考慮したSOF堆積指標を算出できるため、SOF堆積量を精度よく評価できる。これにより、適切なSOF堆積量に基づきレイトポスト噴射を開始できるため、DPFの過昇温をより確実に抑制できる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記重み係数は、前記DOCの上流側における基準温度を境界として、前記基準温度よりも大きいときに負の重み係数を含み、前記基準温度よりも低いときに正の重み係数を含む。
【0015】
上記(4)の構成によれば、DOCの上流側温度が基準温度よりも高いためにSOFが揮発し易い場合に、当該揮発に起因するSOFの減少分を考慮してSOFの堆積量を評価できる。これにより、適切なSOF堆積量に基づきレイトポスト噴射を開始できるため、DPFの過昇温をより確実に抑制できる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の何れか1の構成において、
前記噴射開始条件は、前記DOCの上流側温度が第1温度に到達した時から前記レイトポスト噴射を開始するまでの時間が、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じて設定された遅らせ時間以上である第1噴射開始条件を含む。
【0017】
上記(5)の構成によれば、SOFの酸化に起因する発熱量を十分に減少させるために要する遅らせ時間を設定できる。具体的には例えば、SOFの堆積量が多いほど、遅らせ時間を長くできる。この結果、酸化発熱量が十分に減少するまでレイトポスト噴射開始を遅らせて、DPFの過昇温を抑制できる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の何れか1の構成において、
前記噴射開始条件は、
前記DOCの下流側温度が第2温度以下である第2噴射開始条件、又は、
前記DOCの上流側温度と下流側温度との温度差が第3温度以下である第3噴射開始条件
のうちの少なくとも一方を含む。
【0019】
上記(6)の構成によれば、第2温度をDOCでの酸化発熱量が十分に少なくなるような温度に設定できる。そして、DOCの下流側温度(即ちDPF上流側温度)が第2温度以下にまで低下したときにレイトポスト噴射を行うことで、DPFの過昇温を抑制できる。また、第3温度をDOCでの酸化発熱がほとんど生じなくなるような温度に設定できる。そして、DOCでの上流側温度と下流側温度との温度差が第3温度以下になったときにレイトポスト噴射を行うことで、DPFの過昇温を抑制できる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記第2温度又は前記第3温度のうちの少なくとも一方の温度は、前記強制再生開始により前記DOCの下流側温度が昇温した後低下することで至った温度を含む。
【0021】
上記(7)の構成によれば、SOFの酸化発熱により堆積残量が十分に減少していると考えられる、DOCの下流側温度が昇温した後低下したときにレイトポスト噴射を開始でき、DOCの下流側温度の過昇温を抑制でき、DPFの過昇温を抑制できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)~(7)の何れか1の構成において、
前記噴射実行部は、切替条件を満たすまでは前記燃料噴射量のFF制御を行い、前記切替条件を満たした時にFB制御に切り替えるように構成された。
【0023】
上記(8)の構成によれば、DOCでのSOFの酸化発熱の初期段階において温度ピークが発生しても、FF制御によりDPFの過昇温を抑制できる。また、切替条件を満たした時にFB制御を行うことで、ディーゼルエンジンの運転状態等の環境変化に追従させたDPF上流側温度の制御が可能となり、DPFの過昇温を抑制できる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記切替条件は、
前記燃料の噴射開始時から所定の切替時間経過時である第1切替条件、又は、
前記DPFの上流側温度が所定の切替温度到達時である第2切替条件、
のうちの少なくとも一方の切替条件を含む。
【0025】
上記(9)の構成によれば、レイトポスト噴射の開始に起因する昇温度合いがある程度緩やかになったときにFB制御に切り替えることができ、ディーゼルエンジンの運転状態等の環境変化に追従させたDPFの上流側温度の制御が可能となり、DPFの過昇温を抑制できる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)の構成において、
前記噴射実行部は、前記FB制御の開始後、前記DPFの上流側温度と目標温度との温度差が第4温度を超えるときに、前記FF制御を再度行うように構成された。
【0027】
上記(10)の構成によれば、第4温度をDPFの上流側温度が目標温度に近づいたと判断可能な温度に設定でき、DOCでのSOF酸化発熱の初期段階において温度ピークが発生しても、FF制御によりDPFの過昇温を抑制できる。
【0028】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るDPF再生制御方法は、
排気通路に配置されるDOC及び前記DOCの下流に配置されるDPFを備えるディーゼルエンジンの排ガス処理装置において、前記DPFの昇温により前記DPFに堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するDPF再生制御方法であって、
前記DPF再生制御方法は、
前記強制再生開始後、前記DOC上流側温度が所定温度に到達した後に、前記DOCにおけるSOFの堆積残量に応じた噴射開始条件を満たすか否かを判定する判定ステップと、
前記噴射開始条件を満たしたときに前記DOCへの燃料のレイトポスト噴射を開始する噴射実行ステップとを含む。
【0029】
上記(11)の方法によれば、DOCの上流側温度がレイトポスト噴射を行うべき所定温度に到達したときであっても、その後に噴射開始条件を満たすまでレイトポスト噴射を待機することで、レイトポスト噴射開始を遅らせることができる。これにより、DOCでのSOFの酸化発熱が落ち着いてからレイトポスト噴射を行うことができるような適当な噴射開始条件を設定することで、DPFの過昇温を抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、DPFの過昇温を抑制可能なDPF再生制御装置及びDPF再生制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジンの排ガス処理装置を示す全体構成図である。
図2】ECUの機能を説明するためのブロック図である。
図3】ECUにより実行されるフローチャートであり、本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジンの排ガス処理方法を示す図である。
図4】経過時間に対する温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、以下に実施形態として記載されている内容又は図面に記載されている内容は、あくまでも例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変更して実施することができる。また、各実施形態は、2つ以上を任意に組み合わせて実施することができる。さらに、各実施形態において、共通する部材については同じ符号を付すものとし、説明の簡略化のために重複する説明は省略する。
【0033】
また、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジン1の排ガス処理装置を示す全体構成図である。図1に示す排ガス処理装置は、排気通路21に配置されるDOC35及びDOC35の下流に配置されるDPF37を備えるディーゼルエンジン1の排ガス処理装置である。
【0035】
ディーゼルエンジン1の下流側には、排気通路21が接続されている。排気通路21には、DOC35と、DOC35の下流側に配置されるDPF37とを備える排ガス処理装置33が設けられる。DOC35は、排ガス中の未燃燃料(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化除去するとともに、排ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO)を生成する機能を有する。また、DOC35では、噴射された燃料の酸化熱によって通過する排ガスが昇温され、これにより、DPF37の上流側温度(例えば入口温度)が昇温される。DPF37は、排ガス中に含まれる煤等のPMをフィルタで捕集し、排ガスから除去する装置である。
【0036】
ディーゼルエンジン1の上流側には、吸気マニホールド13を介して吸気通路9が接続される。そして、吸気通路9と排気通路21との間には、排気ターボ過給機7が設けられる。排気ターボ過給機7は、排気通路21に配置されている排気タービン3と、吸気通路9に配置されているコンプレッサ5とを有しており、該コンプレッサ5は排気タービン3によって同軸駆動される。また、吸気通路9には、インタークーラ(図示しない)及び吸気スロットルバルブ11が設けられる。吸気スロットルバルブ11は、後記するECU10によって、その開度が制御される。そして、コンプレッサ5から吐出された圧縮吸気は、インタークーラで冷却された後、吸気スロットルバルブ11で吸気流量が制御され、その後、吸気ポート15を介してディーゼルエンジン1の各シリンダ内の燃焼室39に流入する。
【0037】
ディーゼルエンジン1には、燃焼室39に高圧燃料を噴射するための燃料噴射弁19が配置される。燃料噴射弁19は、高圧燃料が蓄圧されたコモンレール(図示しない)に接続されるとともに、後記するECU10によって、その噴射タイミング及び燃料噴射量が制御される。燃焼室39に噴射された高圧燃料は、上記の吸気と混合された後、燃焼室39内で燃焼する。
【0038】
排気通路21の排気ポート29の直下流位置において、EGR管23が排気通路21のから分岐する。EGR管23は、吸気スロットルバルブ11の下流側に位置している吸気マニホールド13に接続する。また、EGR管23にはEGRバルブ25が配置される。そして、EGRバルブ25を制御することにより、ディーゼルエンジン1から排出された排ガスの一部が、EGR管23を通ってディーゼルエンジン1を再循環する。
【0039】
ディーゼルエンジン1から排出された排ガスは、排気タービン3を駆動してコンプレッサ5を同軸駆動させる。そして、排気通路21を通った後、排ガス処理装置33のDOC35及びDPF37へと流入する。排気通路21には排気スロットルバルブ61が配置される。
【0040】
排ガス処理装置33に流入した排ガスは、DOC35において排ガス中に含まれる未燃燃料及び一酸化炭素が酸化除去される。次いで、DPF37において排ガス中に含まれるPMが除去された後、PM除去後の排ガスはエンジン外部に排出される。
【0041】
DPF37で除去されたPMの一部は、運転中のエンジン排ガス中に存在するNOがDOC35にて酸化されたNOによって再生されるが(自然再生)、残りのPMはDPF37のフィルタ(図示しない)に堆積する。そして、PMの堆積が過度に進行すると、PM捕集能力の低下、背圧増大によるエンジン出力の低下等が生じ得る。このため、DPF37を備える排ガス処理装置33では、堆積したPMを強制的に燃焼させることでフィルタを再生させる強制再生が、適切なタイミングで実行される。
【0042】
強制再生には、ECU10によって自動的に実行される自動再生と、操作者等の手動操作によって実行される手動再生との少なくとも2種類が含まれる。自動再生は、車両(図示しない)の走行及び停止に関わらず所定の強制再生実行条件を満たすことで自動的に実行される。これに対して手動再生は、操作者等のボタン操作等によって実行されるものであり、基本的に車両が停止した状態で実行される。このため、手動再生の方が自動再生よりも再生温度が高くなるように制御される。一例としては、自動再生ではDPF37の上流側温度が600℃~610℃程度となるように制御されるのに対し、手動再生ではDPF37の上流側温度が620℃~630℃となるように制御される。
【0043】
昇温制御は、排気スロットルバルブ61の開度調整により行うことができる。即ち、排気スロットルバルブ61を絞る(開度を小さいくする)ことで、排温を高くできる。また、昇温制御は、排気スロットルバルブ61の開度調整とともに、又は、排気スロットルバルブ61の開度調整に代えて、吸気スロットルバルブ11の開度調整により行うこともできる。
【0044】
排気通路21には、DOC上流側温度センサ48、DPF上流側温度センサ49、DPF下流側温度(例えば出口温度)センサ50、DPF上流側圧力センサ52、DPF下流側圧力センサ54、及びDPF差圧センサ56、背圧センサ(図示しない)等の各種センサ類が配置されている。そして、これらセンサ類で測定されたDOC入口温度、DPF入口温度、DPF出口温度、DPF差圧等に関する信号は、ECU10に入力される。
【0045】
なお、ECU10は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory。例えばEEPROM、FlashROM等)、RAM(Random Access Memory)、I/F(InterFace)等を備える。そして、ECU10は、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
【0046】
図2は、ECU10の機能を説明するためのブロック図である。ECU10(DPF再生制御装置)は、DPF37の昇温によりDPF37に堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するためのものである。ECU10は、バルブ絞り部101と、判定部102と、堆積条件判定部103と、噴射実行部104とを備える。
【0047】
バルブ絞り部101は、強制再生開始時に、吸気スロットルバルブ11又は排気スロットルバルブ61のうちの少なくとも一方のバルブの開度を絞るためのものである。バルブ開度が絞られることで、DOC35への排温が昇温する。
【0048】
判定部102は、DPF37の強制再生開始後、DOC35の上流側温度が所定温度(例えば250℃)に到達した後に噴射開始条件を満たすか否かを判定するためのものである。従来は、DOC35の上流側温度が所定温度に到達した時点でレイトポスト噴射が行われていたが、本発明の一実施形態では、DOC35の上流側温度が所定温度に到達しても、噴射開始条件を満たすまでレイトポスト噴射開始が待機される。従って、本発明の一実施形態では、DOC35の上流側温度が所定温度に到達した後、噴射開始条件が満たされるまで、レイトポスト噴射開始が遅れることになる。
【0049】
噴射開始条件は、DOC35におけるSOFの堆積残量に応じたものであり、レイトポスト噴射(LP噴射)を開始するための条件である。具体的には、本発明の一実施形態では、噴射開始条件は、DOC35の上流側温度が第1温度に到達した時からレイトポスト噴射を開始するまでの時間が、DOC35におけるSOFの堆積残量に応じて設定された遅らせ時間以上である第1噴射開始条件を含む。
【0050】
噴射開始条件が第1噴射開始条件を含むことで、SOFの酸化に起因する発熱量を十分に減少させるために要する遅らせ時間を設定できる。具体的には例えば、SOFの堆積量が多いほど、遅らせ時間を長くできる。反対に、SOFの堆積量が少ないほど、遅らせ時間を短くできる。この結果、酸化発熱量が十分に減少するまでレイトポスト噴射開始を遅らせて、DPF37の過昇温を抑制できる。なお、SOFの堆積量と遅らせ時間との相関は、例えば、判定部102にマップとして記憶できる。
【0051】
また、本発明の一実施形態では、噴射開始条件は、DOC35の下流側温度が第2温度以下である第2噴射開始条件、又は、DOC35の上流側温度と下流側温度との温度差が第3温度以下である第3噴射開始条件のうちの少なくとも一方を含む。噴射開始条件が第2噴射開始条件又は第3噴射開始条件のうちの少なくとも一方を含むことで、第2温度をDOC35での酸化発熱量が十分に少なくなるような温度に設定できる。そして、DOC35の下流側温度(即ちDPF37上流側温度)が第2温度以下にまで低下したときにレイトポスト噴射を行うことで、DPF37の過昇温を抑制できる。また、第3温度をDOC35での酸化発熱がほとんど生じなくなるような温度に設定できる。そして、DOC35での上流側温度と下流側温度との温度差が第3温度以下になったときにレイトポスト噴射を行うことで、DPF37の過昇温を抑制できる。
【0052】
さらに、本発明の一実施形態では、上記の第2噴射開始条件における第2温度、又は、上記の第3噴射開始条件における第3温度のうちの少なくとも一方の温度は、強制再生開始によりDOC35の下流側温度が昇温した後低下することで至った温度を含む。即ち、第2温度又は第3温度のうちの少なくとも一方は、DOC35でのSOF酸化発熱に伴うDOC35の下流側温度がいったん上昇して温度ピークが検出された後、SOFの堆積残量減少に伴う下流側温度低下中に至った温度を含む。このようにすることで、SOFの酸化発熱により堆積残量が十分に減少していると考えられる、DOC35の下流側温度が昇温した後低下したときにレイトポスト噴射を開始でき、DOC35の下流側温度の過昇温を抑制でき、DPF37の過昇温を抑制できる。
【0053】
堆積条件判定部103は、DOC35に堆積するSOFの堆積量が所定の堆積量を上回っている堆積条件を満たすか否かを判定するためのものである。そして、詳細は後記するが、後記する噴射実行部104は、堆積条件を満たしたときに、DOC35への燃料のレイトポスト噴射を開始するように構成される。従って、本発明の一実施形態では、DOC35へのSOF堆積量が多いとき(所定の堆積量を上回るとき)にのみ、レイトポスト噴射が遅れて開始されるようになっている。
【0054】
このようにすることで、DOC35へのSOF堆積量が多く発熱量が多い場合であっても、レイトポスト噴射開始を遅らせることでDPF37の過昇温を抑制できる。また、DOC35へのSOF堆積量が少ない場合にはレイトポスト噴射がすぐに行われるため、強制再生を迅速に行うことができる。
【0055】
堆積条件を構成するDOC35へのSOF堆積量は、直接算出してもよいが、本発明の一実施形態では、例えば以下にようにして評価できる。具体的には例えば、堆積条件判定部103は、DOC35の上流側温度が所定温度以下になった連続時間が所定時間以上の場合に、SOF堆積量が多いと評価できる。また、例えば、堆積条件判定部103は、直近の一定時間において、ディーゼルエンジン1が低負荷運転(トルク又は燃料噴射量が所定値以下)の時間割合、又は、又は排温が所定温度以下となる時間割合が所定値以上の場合に、SOF堆積量が多いと評価できる。
【0056】
さらに、堆積条件判定部103は、例えば、DOC35の上流側温度に応じて決定された重み係数に対し、ディーゼルエンジン1の運転時間(積算でもよく、直近でもよい)を乗じて得られたSOF堆積指標に基づき、堆積条件を満たすか否かを判定するように構成されることもできる。このようにすることで、ディーゼルエンジンの運転時間を考慮したSOF堆積指標を算出できるため、SOF堆積量を精度よく評価できる。これにより、適切なSOF堆積量に基づきレイトポスト噴射を開始できるため、DPF37の過昇温をより確実に抑制できる。なお、重み係数は、例えば、DOC35の上流側温度と重み係数との相関マップを堆積条件判定部103に記憶し、当該マップに基づいて決定できる。
【0057】
上記の重み係数は、例えば、DOC35の上流側温度が高いほど、小さな値にすることができる。特に、本発明の一実施形態では、重み係数は、DOC35の上流側における基準温度を境界として、基準温度よりも大きいときに負の重み係数を含み、基準温度よりも低いときに正の重み係数を含む。このようにすることで、DOC35の上流側温度が基準温度よりも高いためにSOFが揮発し易い場合に、当該揮発に起因するSOFの減少分を考慮してSOFの堆積量を評価できる。これにより、適切なSOF堆積量に基づきレイトポスト噴射を開始できるため、DPF37の過昇温をより確実に抑制できる。
【0058】
噴射実行部104は、噴射開始条件を満たしたときにDOC35への燃料のレイトポスト噴射を開始するためのものである。噴射実行部104は、本発明の一実施形態では、切替条件を満たすまでは燃料噴射量のFF制御を行い、切替条件を満たした時にFB制御に切り替えるように構成される。即ち、レイトポスト噴射開始直後にはFF制御(フィードフォワード制御)が行われるとともに、切替条件を満たした時に、FB制御(フィードバック制御)に切り替えられる。燃料噴射量のFF制御において噴射すべき燃料噴射量は、例えば、排ガス流量、DOC35の上流側と下流側との温度差等に基づいて決定される発熱量に応じて、決定できる。
【0059】
このようにすることで、DOC35でのSOFの酸化発熱の初期段階において温度ピークが発生しても、FF制御によりDPF37の過昇温を抑制できる。また、切替条件を満たした時にFB制御を行うことで、ディーゼルエンジン1の運転状態等の環境変化に追従させたDPF37上流側温度の制御が可能となり、DPF37の過昇温を抑制できる。
【0060】
切替条件は、例えば、燃料の噴射開始時から所定の切替時間経過時である第1切替条件、又は、DPF37上流側温度が所定の切替温度到達時である第2切替条件、のうちの少なくとも一方の切替条件を含む。このようにすることで、レイトポスト噴射の開始に起因する昇温度合いがある程度緩やかになったときにFB制御に切り替えることができ、ディーゼルエンジン1の運転状態等の環境変化に追従させたDPF37の上流側温度の制御が可能となり、DPF37の過昇温を抑制できる。
【0061】
また、噴射実行部104は、上記のFB制御の開始後、DPF37上流側温度と目標温度との温度差が第4温度を超えるときに、FF制御を再度行うように構成される。即ち、FB制御の開始後にFF制御に戻すことで、第4温度をDPF37の上流側温度が目標温度に近づいたと判断可能な温度に設定でき、DOC35でのSOF酸化発熱の初期段階において温度ピークが発生しても、FF制御によりDPF37の過昇温を抑制できる。
【0062】
以上の構成を有するECU10(DPF再生制御装置)によれば、DOC35上流側温度がレイトポスト噴射を行うべき所定温度に到達したときであっても、その後に噴射開始条件を満たすまでレイトポスト噴射を待機することで、レイトポスト噴射開始を遅らせることができる。これにより、DOC35でのSOFの酸化発熱が落ち着いてからレイトポスト噴射を行うことができるような適当な噴射開始条件を設定することで、DPFの過昇温を抑制できる。
【0063】
特に、DOC35へのSOF堆積量が多くなる長時間の低負荷運転後の再生時においてもDPF37の上流側温度制御性が向上し、DPF37の過昇温によるDPF37の焼損リスクを低減できる。この結果、DPF37への許容煤堆積量の引き上げにより再生間隔を長期化でき、再生頻度の引き下げにより燃費の改善、及びオイルダイリューションリスクを低減できる。
【0064】
図3は、ECU10により実行されるフローチャートであり、本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジン1の排ガス処理方法(以下、単に「本実施形態の制御方法」という)を示す図である。本実施形態の制御方法は、排気通路21に配置されるDOC35及びDOC35の下流に配置されるDPF37を備えるディーゼルエンジン1の排ガス処理装置において、DPF37の昇温によりDPF37に堆積するPMを除去する強制再生の実行を制御するものである。本実施形態の制御方法は、上記のECU10により実行されるため、以下の説明は、適宜上記の図2を併せて参照しながら行う。
【0065】
強制再生が開始されると、バルブ絞り部101は、排気スロットルバルブ61の絞り制御を開始する(ステップS1)。これにより、排温の昇温が開始する。なお、排温の昇温は、例えば、アーリーポスト噴射量及び噴射タイミングを変更したり、燃料噴射レール圧を変更したりして行ってもよい。次いで、判定部102は、DOC35へのSOF堆積量が大であるか否か、即ち、強制再生開始後、DOC35の上流側温度が所定温度に到達した後に、DOC35におけるSOFの堆積残量に応じた噴射開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS2、判定ステップ)。ここでいう噴射開始条件は、上記の判定部102において説明した噴射開始条件と同義である。
【0066】
SOF堆積量が大であれば(YES)、本発明の一実施形態であれば、噴火開始条件を満たすか否かを判定するための2つのフローが並行して行われる。具体的には、堆積条件判定部103は、レイトポスト噴射開始の遅らせ時間を計算する(ステップS3)。ここでいう遅らせ時間は、上記の判定部102において説明した遅らせ時間と同義である。そして、噴射実行部104は、DOC35の上流側がレイトポスト噴射を行うべき温度(例えば250℃)になった時から遅らせ時間だけ、待機する(ステップS4、第1噴射開始条件)。
【0067】
一方で、堆積条件判定部103は、強制再生開始によりDOC35の下流側温度が昇温した後低下することにより生じた温度ピークを検出する(ステップS5)。その後、堆積条件判定部103は、DOC35の下流側温度が第2温度以下(第2噴射開始条件)、又は、DOC35の上流側温度と下流側温度との温度差が第3温度以下(第3噴射開始条件)のうちの少なくとも一方の噴射開始条件を満たすまで、待機する(ステップS6)。
【0068】
そして、噴射実行部104は、上記いずれかの噴射開始条件を満たしたときに、DOC35への燃料のレイトポスト噴射を開始する(ステップS7、噴射実行ステップ)。レイトポスト噴射は、燃料噴射量のFF制御により開始される。そして、噴射実行部104は、燃料の噴射開始時から第1切替時間経過時(第1切替条件)、又は、DPF37上流側温度が第2切替温度到達時(第2切替条件)のうちの少なくとも一方の切替条件を満たしたときに(ステップS8のYES)、レイトポスト噴射をFF制御からFB制御に切り替える(ステップS9)。なお、切替条件を満たすまでは(ステップS8のNO)、FF制御が行われる。
【0069】
FB制御の開始後、噴射実行部104は、DPF37上流側温度と目標温度との温度差が第4温度以下であれば(ステップS10のYES)、DOC35でのSOF酸化発熱に起因するDPF37の過昇温が抑制されたとして、以降は通常再生が行われる(ステップS11)。一方で、FB制御の開始後、DPF37上流側温度と目標温度との温度差が第4温度を超えるときには(ステップS10のNO)、上記のFF制御を再度行う(ステップS12)。このFF制御は所定時間行われ、所定時間経過後、FB制御に切り替えられる(ステップS9)。
【0070】
図4は、経過時間に対する温度変化を示すグラフである。実線はDPF37の上流側温度、一点鎖線はDOC35の上流側温度、破線はDPF37の下流側温度を表す。DPF37の強制再生が開始されると、DOC35の上流側温度が昇温し始める(点A)。そして、DOC35の上流側温度がレイトポスト噴射するのに十分な触媒活性を有する250℃(所定温度)(点B)に到達する前に、DOC35でのSOF酸化発熱が生じ始める。このため、DOC35の下流側温度、即ち、DPF37の上流側温度が昇温する。ただし、この時点では、上記のようにDOC35への燃料のレイトポスト噴射は行われない。そのため、DPF37の上流側温度は600℃以下に抑制され、DPF37の過昇温が抑制される。
【0071】
そして、DOC35でのSOF堆積残量がある程度減少すると、酸化発熱量が減少し、DOC35の下流側温度、即ち、DPF37の上流側温度は低下する。そこで、本発明の一実施形態では、温度ピークを越え、DOC35の上流側温度と下流側温度との温度差ΔTのときにレイトポスト噴射が開始される。レイトポスト噴射により、噴射された燃料がDOC35で酸化発熱し、DOC35の下流側温度、即ち、DPF37の上流側温度は再度上昇する。また、DPF37では煤の燃焼が生じ、DPF37の下流側温度も上昇する。そして、レイトポスト噴射開始後十分な時間が経過した後に強制再生が完了し(点C)、温度が低下する。
【0072】
以上のような本実施形態の制御方法によれば、DOC35上流側温度がレイトポスト噴射を行うべき所定温度に到達したときであっても、その後に噴射開始条件を満たすまでレイトポスト噴射を待機することで、レイトポスト噴射開始を遅らせることができる。これにより、DOC35でのSOFの酸化発熱が落ち着いてからレイトポスト噴射を行うことができるような適当な噴射開始条件を設定することで、DPFの過昇温を抑制できる。
【0073】
特に、DOC35へのSOF堆積量が多くなる長時間の低負荷運転後の再生時においてもDPF37の上流側温度制御性が向上し、DPF37の過昇温によるDPF37の焼損リスクを低減できる。この結果、DPF37への許容煤堆積量の引き上げにより再生間隔を長期化でき、再生頻度の引き下げにより燃費の改善、及びオイルダイリューションリスクを低減できる。
【符号の説明】
【0074】
1 ディーゼルエンジン
3 排気タービン
5 コンプレッサ
7 過給機
9 吸気通路
11 吸気スロットルバルブ
13 吸気マニホールド
15 吸気ポート
19 燃料噴射弁
21 排気通路
23 管
25 バルブ
29 排気ポート
33 排ガス処理装置
39 燃焼室
48,49 上流側温度センサ
50 センサ
52 上流側圧力センサ
54 下流側圧力センサ
56 差圧センサ
61 排気スロットルバルブ
101 バルブ絞り部
102 判定部
103 堆積条件判定部
104 噴射実行部
図1
図2
図3
図4