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  • 特許-軸継手およびこれを備えたねじ締め装置 図1
  • 特許-軸継手およびこれを備えたねじ締め装置 図2
  • 特許-軸継手およびこれを備えたねじ締め装置 図3
  • 特許-軸継手およびこれを備えたねじ締め装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】軸継手およびこれを備えたねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/159 20060101AFI20220831BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20220831BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20220831BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B25B23/159
F16D1/02 230
B23P19/06 E
B25B23/14 630H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018172928
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2019055477
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2017179646
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺井 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅雄
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特許第5351239(JP,B2)
【文献】特開昭59-031429(JP,A)
【文献】実開昭57-018962(JP,U)
【文献】特開2004-257554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/159
F16D 1/02
B23P 19/06
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に雄ねじ部を備え、回転駆動源の駆動を受けて回転する入力軸と、
前記入力軸の雄ねじ部が螺合可能な雌ねじ部を備える出力軸と、
前記入力軸および出力軸を離反する方向に付勢するように配置される圧縮ばねとを備え、
前記入力軸に回転力が付与されていないときは、圧縮ばねの付勢力によって入力軸の雄ねじ部と出力軸の雌ねじ部が緩み、入力軸と出力軸が離反する一方、
前記入力軸に回転力が付与されたときは、圧縮ばねの付勢力に逆らって入力軸の雄ねじ部が出力軸の雌ねじ部に螺入し、入力軸と出力軸とが一体になって回転するように構成されていること、を特徴とする軸継手。
【請求項2】
前記雌ねじ部は、前記入力軸が前記出力軸に対して相対回転することで当該出力軸から突出する方向へ移動することを特徴とする請求項1に記載の軸継手。
【請求項3】
前記雌ねじ部は、前記出力軸と一体に回転するよう固定されて成り、
前記入力軸は、前記出力軸に対して相対回転することで出力軸側へ向かって移動すること特徴とする請求項1に記載の軸継手。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の軸継手と、前記出力軸の先端に取り付けられねじ部品に係合する係合部を備えたビットと、前記入力軸に回転を付与する回転駆動源と、この回転駆動源を予め設定した設定トルクおよび設定回転数に基づいて駆動制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記回転駆動源に負荷されたトルクが前記設定トルクに到達すれば、前記回転駆動源を高速回転の設定回転数から低速回転の設定回転数へ切り替え、前記入力軸に設けられた係合爪および前記出力軸に設けられた噛合爪が噛み合うまでの相対回転中に入力軸を高速回転から低速回転へ切り替えて成ることを特徴とするねじ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動源の回転力を一時的に切り離すことができる軸継手およびこれを備えたねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軸継手およびねじ締め装置は、特許文献1に開示されており、以下に説明する。従来の自動ねじ締め装置は、ねじ部品に係合するビットを連結した出力軸と、この出力軸と相対回転可能な入力軸と、これら出力軸および入力軸を所要回転角度離間させて互いの係合を遅延させるトーションばねとを備えて成る。また、前記トーションばねは、その一端を前記出力軸に固定されている一方、その他端を前記入力軸に固定されている。
【0003】
このように構成された従来の軸継手および自動ねじ締め装置は、ねじ部品がワークの表面に着座することで、出力軸から所要回転角度だけ離間していた入力軸がトーションばねの付勢に抗して相対回転を始め、やがて出力軸に係合して再び出力軸とともに回転する。また、この入力軸と出力軸との相対回転中において、入力軸の回転制御が当初の高速回転低トルク(仮締め)から最終締め上げの低速回転高トルク(本締め)へ切り替えられる。つまり、入力軸と出力軸とが係合するまでの相対回転中に仮締めから本締めへと切り替えることができるので、ねじ部品のワーク着座時に発生する衝撃トルクを低減することができるという特徴がある。さらに、前記トーションばねを用いているが故に、本締め完了後に入力軸の回転停止を受けて捩じられたトーションばねが元の状態へ復帰しようとし、締結されたねじ部品から出力軸が離脱すると、入力軸および出力軸が逆方向へ相対回転して元の所要回転角度離間した位置関係に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5351239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の軸継手および自動ねじ締め装置は、繰り返し捩じりを受けるトーションばねを備えるので、当該トーションばねの入力軸および出力軸に固定された両端がせん断力を受けて破損し易いという問題があった。また、従来の軸継手および自動ねじ締め装置は、入力軸と出力軸とを所要回転角度離間させるものの、軸方向へは離間させていないことから、前記所要回転角度を360度超えるような設定にできないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る軸継手は、先端に雄ねじ部を備え、回転駆動源の駆動を受けて回転する入力軸と、前記入力軸の雄ねじ部が螺合可能な雌ねじ部を備える出力軸と、前記入力軸および出力軸を離反する方向に付勢するように配置される圧縮ばねとを備え、前記入力軸に回転力が付与されていないときは、圧縮ばねの付勢力によって入力軸の雄ねじ部と出力軸の雌ねじ部が緩み、入力軸と出力軸が離反する一方、前記入力軸に回転力が付与されたときは、圧縮ばねの付勢力に逆らって入力軸の雄ねじ部が出力軸の雌ねじ部に螺入し、入力軸と出力軸とが一体になって回転するように構成されていること、を特徴とする。なお、前記雌ねじ部は、前記入力軸が前記出力軸に対して相対回転することで当該出力軸から突出する方向へ移動して成るか、あるいは、前記雌ねじ部は、前記出力軸と一体に回転するよう固定されて成り、前記入力軸は、前記出力軸に対して相対回転することで出力軸側へ向かって移動して成ることが望ましい。
【0007】
また、本発明に係るねじ締め装置は、前記軸継手と、前記出力軸の先端に取り付けられねじ部品に係合する係合部を備えたビットと、前記入力軸に回転を付与する回転駆動源と、この回転駆動源を予め設定した設定トルクおよび設定回転数に基づいて駆動制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記回転駆動源に負荷されたトルクが前記設定トルクに到達すれば、前記回転駆動源を高速回転の設定回転数から低速回転の設定回転数へ切り替え、前記係合爪および前記噛合爪が噛み合うまでの相対回転中に入力軸を高速回転から低速回転へ切り替えて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る軸継手およびねじ締め装置は、平坦な両端を押圧することで軸方向へ撓む圧縮ばねを備えるので、従来のトーションばねを採用したものに比べて破損し難いという利点がある。また、本発明に係る軸継手およびねじ締め装置は、入力軸が出力軸に対して相対回転することで螺合部材または出力軸を軸方向へ移動させつつ回転させるねじ軸を備えるので、噛合爪と係合爪とが噛み合うまでの所要回転角度を従来のものに比べて大きな角度に設定できるという利点もある。さらに、本発明に係る軸継手およびねじ締め装置は、圧縮ばねを撓ませ回転する入力軸を出力軸に連結するので、圧縮ばねの付勢力を受ける螺合部材または出力軸は、入力軸を回転フリーにすることによりねじ軸に沿って自ら逆転して元の高さ位置へ復帰できるという利点もある。
【0009】
本発明に係るねじ締め装置は、ねじ部品の着座により入力軸とともに高速回転していた出力軸を当該入力軸から一時的に切り離すことができるので、ねじ部品の着座時に生じる衝撃トルクを大幅に低減できるという利点がある。また、本発明に係るねじ締め装置は、入力軸の相対回転中に前記モータを高速回転から低速回転へ切り替えるので、当該入力軸に噛み合い一体回転する出力軸は低速回転をねじ部品へ付与することができる。これにより、本発明に係るねじ締め装置は、着座状態の当該ねじ部品を低速回転する前記ビットよって締結できるので、目標の締付トルクから大幅に超えるようなことがなく高精度に締結できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る軸継手を示す断面図である。
図2】本発明に係る別の軸継手を示す断面図である。
図3図1の軸継手を備えたねじ締め装置の動作説明図であり、(a)はねじをワークへ螺入している仮締め中の状態を説明するものであり、(b)はねじの頭部がワークに着座し、入力軸が出力軸に対して相対回転している状態を説明するものであり、(c)は相対回転を終えて係合爪と噛合爪とが噛み合って本締めを行っている状態を説明するものである。
図4図2の軸継手を備えたねじ締め装置の動作説明図である。(a)はねじをワークへ螺入している仮締め中の状態を説明するものであり、(b)はねじの頭部がワークに着座し、入力軸が出力軸に対して相対回転している状態を説明するものであり、(c)は相対回転を終えて係合爪と噛合爪とが噛み合って本締めを行っている状態を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る軸継手2およびねじ締め装置1を図1ないし図4に基づき説明する。まず、本発明に係る軸継手2は、先端に係合爪3aを備えた入力軸3と、この入力軸3に接続され当該入力軸3と一体に回転するねじ軸4と、このねじ軸4に螺合され前記係合爪3aに噛み合う噛合爪5aを備えた螺合部材5と、この螺合部材5を端部に備え前記ねじ軸4を回転自在に軸支して成る出力軸6と、前記入力軸3を内包するよう配され軸方向に圧縮されることで付勢力を高める圧縮ばね7とを備える。
【0012】
前記入力軸3は、筒状に形成された本体10の上部に固定配置された回転支持部材9へ挿通されており、その先端側に形成された係合爪3aと、その後端側に形成され回転駆動する駆動軸を嵌め込み可能な嵌合穴3cと、前記ねじ軸4を接続可能な六角穴3bと備えて成る。さらに、入力軸3は、係合爪3a側から突出させたねじ軸4を一体に備える。
【0013】
また、図1に示す入力軸3は、ナット15により固定したねじ軸4と一体に回転するのみならず軸方向への移動も一体になるよう構成される。一方、図2に示す入力軸3は、前記六角穴3bに接続したねじ軸4と一体に回転するものの軸方向への移動を行うことはなく、常時軸方向へは当該入力軸3および前記ねじ軸4ともに位置を変えることがないよう構成される。
【0014】
前記ねじ軸4は、螺旋状の溝をその外周に備えて成るおねじ山部4cと、前記六角穴3bに接続可能な六角軸部4bとを具備しており、前記おねじ山部4cの大半を前記係合爪3a側から下方へ常時突出させて成る。また、図1に示すねじ軸4は、その上端部に前記ナット15を螺合可能なナット螺合部4aを備えて成る。一方、図2に示すねじ軸4は、その下端部を成し前記おねじ山部4cに連設された小径の小径軸部4dを備える。
【0015】
前記螺合部材5は、その外周に形成された多角形状の多角軸部5bと、その上端側に配された前記噛合爪5aとを備えて成る。また、前記螺合部材5は、前記ねじ軸4のおねじ山部4cに常時螺合しており、前記出力軸6に内挿されて成る。
【0016】
前記出力軸6は、これに内挿する螺合部材5の前記多角軸部5bを嵌め込み可能な多角穴部6aを備え、その下端をねじ部品に係合するビットBを取り付け可能に構成される。さらに、前記出力軸6は、前記本体10の下部に複数配された軸受に挿通され、前記本体10から軸方向へ抜け出さないよう回転自在に軸支されて成る。これにより、出力軸6は、これに嵌り込んでいる螺合部材5とともに一体に回転するよう構成される。
【0017】
また、図1に示す出力軸6は、前記多角穴部6aに連通し下方へ延びる前記連通穴部6bを備えており、この連通穴部6bは、前記おねじ山部4cを抜き差し可能な内径寸法で構成される。一方、図2に示す出力軸6は、前記多角穴部6aの連設され後記軸支部材の一例である焼入れワッシャ11を配置可能な取付穴6cを備える。
【0018】
前記軸支部材は、前記おねじ山部4cの小径軸部4dを挿通可能に構成され、前記おねじ山部4cの端面に当接して当該ねじ軸4を回転自在に軸支して成る。なお、本実施形態において、軸支部材を焼入れワッシャ11としたがこれに限定されるものでは無く例えばスラスト方向の荷重に強い軸受などに置き替えてもよい。
【0019】
前記圧縮ばね7は、前記本体10に内装されており、端部を押圧されることで撓んで付勢力を高めるよう構成される。図1に示す圧縮ばね7は、その下端を本体10内に配された止め輪12に抜け止めされるよう載置され、その上端を後記摺動部材8に常時当接するよう配されている。また、前記摺動部材8は、前記圧縮ばね7の付勢力を受けて上方へ付勢され、固定配置された前記回転支持部材9の下端に当接するよう配置されている。さらに、前記摺動部材8は、前記入力軸3を回転自在に軸支して成り、回転支持部材9から離反する方向へ当該入力軸3とともに移動可能に構成される。また、図2に示す圧縮ばね7は、その下端を前記螺合部材5の上部に配された軸受13に当接するよう載置され、その上端を固定配置された回転支持部材9に当接するよう配置されている。
【0020】
次に、本発明に係るねじ締め装置1は、図3および図4に示すように、前記軸継手2と、ねじ部品の一例である十字穴付き小ねじ(以下、単にねじNという)の頭部に係合するビットBと、回転駆動源の一例であるモータMと、予め設定された設定トルクおよび設定回転数に基づき前記モータMを駆動制御するコントローラCとから構成される。また、このねじ締め装置1は、これを昇降可能な多関節ロボット(図示せず)などに支持されており、前記多関節ロボットの動作を受けてワークWに設けられためねじへ向かい移動するよう構成されている。
【0021】
前記ビットBは、その一端にねじNの頭部と係合可能な係合部を備える一方、他端が前記出力軸6と連結可能に構成されており、前記出力軸6と一体に回転するよう構成される。
【0022】
前記モータMは、その一端から突出し回転自在な回転軸と、その本体に内蔵され回転する回転軸の回転角度を検出可能なエンコーダとを備えて成り、前記エンコーダは、コントローラへパルス信号を発信可能に構成されている。また、前記モータMは、前記軸継手2の入力軸3に接続されており、前記回転軸を回転駆動することで入力軸3へ回転力を伝達可能に構成される。
【0023】
前記コントローラCは、モータMを配線接続して成り、当該モータMへ回転駆動指令を発するよう構成されている。また、コントローラCは、モータMの回転軸を予め設定した設定回転数および設定トルクに基づき駆動制御して成り、回転開始から前記設定トルクに到達するまでの区間(以下、仮締めという)を高速回転で回転させ、前記設定トルクに達した後、予め設定している締付トルクに到達するまでの区間(以下、本締めという)を低速回転で回転させるよう制御する。つまり、コントローラCは、モータMの回転を高速回転から低速回転へ切り替えて仮締めおよび本締めを行っている。
【0024】
前記設定トルクは、図1および図3(a)または図2および図4(a)に示す状態の圧縮ばね7により出力軸6に負荷される負荷トルクと、図3(c)または図4(c)に示す状態の圧縮ばね7により出力軸6に負荷される負荷トルクとの中間になるよう設定されている。
【0025】
さらに、前記コントローラCは、所定の締付トルクに到達後、モータMへ回転停止指令を発するので、前記駆動軸が回転停止する。この回転停止したモータは、前記回転軸が回転しないようブレーキなどを作動させず、回転停止した回転軸を回転フリーにしている。
【0026】
このように構成された本発明に係る軸継手2およびねじ締め装置1の作用について以下に説明する。本発明に係る軸継手2およびねじ締め装置1は、ねじNをビットBに係合させると多関節ロボットの作動によってワークWに設けられためねじへ向かい下降し始める。この時、モータMは、コントローラCの指令を受けて回転軸を予め設定された高速回転の設定回転数により回転駆動して入力軸3を回転させる。
【0027】
このように、ワークWの上空で入力軸3を回転駆動している時、出力軸6に作用する負荷トルクは極めて小さいので、図1および図3に示す通常位置にある圧縮ばね7の付勢力により入力軸3および出力軸6は、軸方向に距離を保ったまま一体に高速回転で回転する。
【0028】
やがて、ねじNの先端がワークWの表面に到達し、当該ねじが図3(a)または図4(a)に示すように前記めねじに螺合し始める。このねじNの螺入中における出力軸6の負荷トルクは、上述したワークWの上空で回転している時とほぼ同様のため、上述と同様に入力軸3および出力軸6は、軸方向に距離を保ったまま一体に高速回転で回転する。
【0029】
前述のように、図3(a)または図4(a)に示すように出力軸6は、入力軸3と軸方向に距離を空けた状態で高速回転するので、ねじNの頭部が図3(b)または図4(b)に示すようにワークWの表面に密着して着座する。
【0030】
引き続き高速回転する入力軸3は、着座により回転しようとしても回転できない出力軸6に対して相対回転を始める。よって、本発明に係る軸継手2およびねじ締め装置1は、ねじNの着座と同時に高速回転する入力軸3から出力軸6を一時的に切り離すことができるので、着座時の衝撃トルクを入力軸と出力軸とを直結するものに比べて生じさせ難い。
【0031】
続いて図3(a)ないし図3(c)に基づいて前記入力軸3の相対回転中における作用を説明する。前記入力軸3と一体に取り付けられたねじ軸4は、回転不能な出力軸6に収められた螺合部材5から突出するよう下方へ移動しつつ高速回転する。よって、ねじ軸4とともに下降する入力軸3は、前記摺動部材8とともにも下降して、図3(b)に示すように圧縮ばね7を撓ませ、螺合状態のねじ軸4および螺合部材5の摩擦抵抗を徐々に高める。これにより、回転不能であった出力軸6は、このねじ軸4と螺合部材5との摩擦抵抗の高まりによって、前記摩擦抵抗に応じたトルクを発揮して再びねじNを締結する方向へ回転しようとする。
【0032】
ここからは、図4(a)ないし図4(c)に基づいて作用を説明する。入力軸3の相対回転中において、前記入力軸3と一体に取り付けられたねじ軸4は、回転不能な出力軸6に収められた螺合部材5に回転を付与して当該螺合部材5を上方へ移動させつつ高速回転させる。よって、上方へ移動する前記螺合部材5は、前記軸受13とともにも上昇して、図4(b)に示すように圧縮ばね7を撓ませ、螺合状態のねじ軸4および螺合部材5の摩擦抵抗を徐々に高める。これにより、回転不能であった出力軸6は、このねじ軸4と螺合部材5との摩擦抵抗の高まりによって、前記摩擦抵抗に応じたトルクを発揮して再びねじNを締結する方向へ回転しようとする。
【0033】
前記コントローラCは、前記モータMを介して出力軸6に加わっている負荷トルクを常時検出するとともに、この検出した負荷トルクと予め設定していた設定トルクとを比較し、前記負荷トルクが前記設定トルクに到達すればモータMの駆動軸の回転を高速回転から低速回転へ切り替える。したがって、本発明に係る軸継手2およびねじ締め装置1は、図3(c)または図4(c)に示す入力軸3の係合爪3aと出力軸6の噛合爪6aとが噛み合う状態までに高速回転から低速回転へ切り替えるので、着座したねじNを低速回転により増し締めできる。よって、増し締め開始直後の衝撃トルクはほぼ生じることなく、前記締付トルクに到達するまで低速回転によりねじNをワークWへ締結できる。
【0034】
また、本発明に係るねじ締め装置1は、締付トルクに到達するとモータMの駆動軸を回転フリーにするので、図3(c)または図4(c)に示す状態の付勢力を最も高めた圧縮ばね7によって、前記摺動部材8または前記螺合部材5を図3(a)または図4(a)に示す状態へ復帰することができる。
【0035】
なお、本実施形態における設定トルクは、図1および図3(a)または図2および図4(a)に示す状態の圧縮ばね7により出力軸6に負荷される負荷トルクと、図3(c)または図4(c)に示す状態の圧縮ばね7により出力軸6に負荷される負荷トルクとの中間としたが、これに限定されるものではない。つまり、前記設定トルクは、図3(a)に示す状態の圧縮ばね7により出力軸6に負荷される負荷トルクから図3(c)に示す状態の圧縮ばね7により出力軸6に負荷される負荷トルクまでの範囲であればよく、図3(c)または図4(c)に示す入力軸3と出力軸6とが一体に噛み合うまでに入力軸3の回転数を高速回転から低速回転に切り替え終わる値であればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 … ねじ締め装置
2 … 軸継手
3 … 入力軸
3a… 係合爪
4 … ねじ軸
4c… おねじ山部
5 … 螺合部材
5a… 噛合爪
6 … 出力軸
8 … 摺動部材
B … ビット
C … コントローラ
M … モータ
N … ねじ
図1
図2
図3
図4