IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友理工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-トランスデューサ 図1
  • 特許-トランスデューサ 図2
  • 特許-トランスデューサ 図3
  • 特許-トランスデューサ 図4
  • 特許-トランスデューサ 図5
  • 特許-トランスデューサ 図6
  • 特許-トランスデューサ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/02 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
H04R19/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018178216
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020053728
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田原 新也
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-089496(JP,A)
【文献】特開2014-027756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01L 1/00- 1/26
G01L 25/00
H01L 29/84
H01L 49/00-49/02
H04R 1/00- 1/02
H04R 1/06
H04R 1/20- 1/34
H04R 1/40
H04R 1/44
H04R 3/00
H04R 9/00
H04R 11/00-11/06
H04R 11/14
H04R 13/00-15/02
H04R 17/00
H04R 17/10
H04R 19/00-19/04
H04R 21/00-21/02
H04R 23/00-23/02
H04R 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、
前記誘電体層の第一面側に配置される第一電極シートと、
前記誘電体層の第二面側に配置される第二電極シートと、
前記誘電体層の前記第一面側に配置される第一導通部であり、前記第一電極シートに電気的に接続される前記第一導通部を備える第一リード線と、
前記誘電体層の前記第二面側に配置される第二導通部であり、前記第二電極シートに電気的に接続される前記第二導通部を備える第二リード線と、
を備え、
前記第一導通部と前記第二導通部は、前記誘電体層の面方向にオフセットして配置され、
さらに、前記第一導通部と前記第二導通部のオフセット方向の境界部に形成される変形許容部を有し、
前記変形許容部は、変形前における前記第一電極シートと前記第二電極シートとの対向距離に比べて、前記第一導通部と前記第二導通部との前記誘電体層の厚み方向の距離を短くするように配置させる、トランスデューサ。
【請求項2】
前記変形許容部は、前記誘電体層の前記第一面から前記第二面に亘って切断されたスリットであり、前記スリットを形成する突き合わせ面が前記誘電体層の厚み方向にずらした状態とされる、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記スリットの周囲において、前記第一電極シート及び前記第二電極シートが配置されていない、又は、前記第一電極シート及び前記第二電極シートの一方のみが配置されている、請求項2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記誘電体層は、エラストマーにより形成され、
前記変形許容部は、前記誘電体層の曲げ変形により段差状に変形されて形成される、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記第一電極シート及び前記第一導通部を含んで構成される第一導電範囲と、前記第二電極シート及び前記第二導通部を含んで構成される第二導電範囲とは、前記誘電体層の厚み方向においてオーバーラップしている、請求項1-4の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層型ピエゾアクチュエータにおけるワイヤメッシュ形状の外部電極の自由端に、半田付けや溶接によって、リード線を接続する構成が開示されている。特許文献2には、積層型圧電素子における外部電極の端部に、半田や導電性樹脂等の導電性接合材によりリード線を接続し、外部電極の端部とリード線との接続部を樹脂で覆う構成が開示されている。
【0003】
特許文献3には、ポリマー圧電体に多孔シート状の電極が埋設された圧電素子が開示されている。この圧電素子は、ポリマー圧電体フィルム又はシートの表面をアセトン等の有機溶媒で処理し、その後に処理表面に多孔シート状の電極を積層して圧着することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-500486号公報
【文献】特許第5465337号公報
【文献】特許第3105645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、両面に電極を有する静電シートにおいて、それぞれの電極にリード線が接続される。一般的に、リード線、及び、リード線を接続する導電性接合材は、静電シートの各外面側から突出する。そのため、リード線が配置される部位において、リード線が配置されていない部位に比べて、リード線及び導電性接合材の厚みの分だけ厚くなる。特に、静電シートの両面のそれぞれにリード線が配置されるため、リード線及び導電性接合材の厚みの2倍の厚みの分だけ、厚くなる。
【0006】
本発明は、リード線が配置される部位において、厚みを小さくすることができるトランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るトランスデューサは、誘電体層と、前記誘電体層の第一面側に配置される第一電極シートと、前記誘電体層の第二面側に配置される第二電極シートと、前記誘電体層の前記第一面側に配置される第一導通部であり、前記第一電極シートに電気的に接続される前記第一導通部を備える第一リード線と、前記誘電体層の前記第二面側に配置される第二導通部であり、前記第二電極シートに電気的に接続される前記第二導通部を備える第二リード線とを備える。
【0008】
前記第一導通部と前記第二導通部は、前記誘電体層の面方向にオフセットして配置される。前記誘電体層は、前記第一導通部と前記第二導通部のオフセット方向の境界部に形成される変形許容部を有する。そして、前記変形許容部は、変形前における前記第一電極シートと前記第二電極シートとの対向距離に比べて、前記第一導通部と前記第二導通部との前記誘電体層の厚み方向の距離を短くするように配置させる。
【0009】
このように、第一リード線の第一導通部と第二リード線の第二導通部とはオフセットされている上に、誘電体層は、変形許容部を備えている。変形許容部は、第一導通部と第二導通部とを誘電体層の厚み方向に近接させるように作用する。換言すると、第一導通部に対向する誘電体層の部位と、第二導通部に対向する誘電体層の部位とは、同一平面上に位置せず、誘電体層の厚み方向にずれている。従って、第一導通部、第一電極シート、及び、誘電体層を含む部位の厚み方向の範囲と、第二導通部、第二電極シート、及び、誘電体層を含む部位の厚み方向の範囲とは、オーバーラップしている。つまり、トランスデューサを構成する静電シート全体の最大厚みを、小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】トランスデューサを構成する静電シートを示す斜視図である。
図2】トランスデューサを構成する静電シートの平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】第一例の端子部の模式的な平面図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6】第二例の端子部の模式的な平面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.トランスデューサ1の構成)
トランスデューサ1について、図1図3を参照して説明する。トランスデューサ1は、静電型である。つまり、トランスデューサ1は、電極間の静電容量の変化を利用して、振動や音等を発生させるアクチュエータとして機能させることができる。また、トランスデューサ1は、電極間の静電容量の変化を利用して、外部からの押込力等を検出するセンサ(外力検出センサ)、電位を有する導電体の接触又は接近を検出するセンサ(接触接近センサ)として機能させることができる。
【0012】
トランスデューサ1がアクチュエータとして機能する場合には、電極に電圧が印加されることにより、電極間の電位に応じて誘電体が変形し、誘電体の変形に伴って振動が発生する。トランスデューサ1が外力検出センサとして機能する場合には、外部からの押込力や振動や音などの入力に起因して誘電体が変形することにより電極間の静電容量が変化し、電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、外部からの押込力等を検出する。また、トランスデューサ1が接触接近センサとして機能する場合には、電位を有する導電体の接触又は接近により、電極間の静電容量が変化し、変化した電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触又は接近を検出する。
【0013】
図1に示すように、トランスデューサ1は、シート状に形成された静電シートを備える。ただし、トランスデューサ1は、図1に示す基本構成である静電シートを複数積層するようにしてもよい。トランスデューサ1は、シート本体部10と、第一接続部20と、第二接続部30とにより構成された静電シートを備える。
【0014】
シート本体部10は、静電型のトランスデューサ1として機能するための主要な部分を構成する。シート本体部10は、アクチュエータ又はセンサとして機能する範囲を構成するトランスデューサ部10aと、トランスデューサ部10aの縁に接続される端子部10bとを備える。本例においては、端子部10bは、第一端子部10b1と、第二端子部10b2と、変形許容部10b3とを備える。シート本体部10は、誘電体層11、第一電極シート12、第一主融着層13、第一主保護層14、第二電極シート15、第二主融着層16、第二主保護層17を備える。
【0015】
第一接続部20は、第一リード線21を含み、第一リード線21をシート本体部10に接続する部分を構成する。第一接続部20は、第一リード線21、第一融着規制層22、第一固着層23、第一接続保護層24、第一接続融着層25を備える。第二接続部30は、第二リード線31を含み、第二リード線31をシート本体部10に接続する部分を構成する。第二接続部30は、第二リード線31、第二融着規制層32、第二固着層33、第二接続保護層34、第二接続融着層35を備える。
【0016】
なお、トランスデューサ1は、第二電極シート15に関する要素を備えない構成としてもよい。すなわち、トランスデューサ1は、第二電極シート15、第二主融着層16、第二主保護層17、第二リード線31、第二融着規制層32、第二固着層33、第二接続保護層34を備えない構成としてもよい。この場合、トランスデューサ1を構成する静電シートは、誘電体層11と、第一電極シート12に関する要素とを備える構成となる。すなわち、トランスデューサ1は、シート本体部10として、誘電体層11、第一電極シート12、第一主融着層13、第一主保護層14を備えると共に、第一接続部20を備える。そして、トランスデューサ1は、第二電極シート15に相当する変形不能な導電部材(図示せず)を備える構成とすることもできる。
【0017】
シート本体部10の構成について説明する。誘電体層11は、弾性変形可能な誘電材料により形成される。詳細には、誘電体層11は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより形成されている。誘電体層11は、シート状で、所望の外形に形成されている。誘電体層11は、厚み方向に伸縮すると共に、厚み方向の伸縮に伴って面方向に伸縮する構造を有する。
【0018】
第一電極シート12及び第二電極シート15は、導電性を有しつつ、柔軟性及び面方向に伸縮性を有する。第一電極シート12及び第二電極シート15は、例えば、導電性布である。導電性布とは、導電性繊維により形成された織物又は不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電性材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレン等の樹脂繊維の表面に、銅やニッケルなどをメッキすることにより形成される。
【0019】
第一電極シート12は、繊維により布を形成されることで、複数の第一貫通孔12a(図2に示す)を備えると共に、柔軟性を有し、面方向に伸縮可能である。第二電極シート15は、第一電極シート12と同様に、複数の第二貫通孔15a(図2に示す)を備える。
【0020】
図2においては、第一電極シート12及び第二電極シート15は、導電性織物である場合を例にあげるが、導電性不織布を適用することもできる。第一電極シート12は、例えば、図2に示すように、導電性織物の場合には、導電性繊維を縦糸と横糸として織ることにより形成されている。縦糸と横糸により囲まれる領域が、第一貫通孔12aとなる。第二貫通孔15aも同様である。
【0021】
なお、第一電極シート12が導電性不織布である場合には、第一貫通孔12aが不規則に形成される。また、第一電極シート12及び第二電極シート15は、導電性布の他に、柔軟性及び伸縮性を有する薄膜のパンチングメタルを適用することもできる。この場合、第一貫通孔12a及び第二貫通孔15aは、パンチにより打ち抜かれた部位となる。また、第一電極シート12は、導電性材料を含有し、複数の貫通孔を備えるエラストマーシート(ゴムシートを含む)を適用することもできる。なお、本例において、エラストマーとは、弾性を有する高分子材料であり、ゴム弾性体、及び、ゴム弾性体以外のゴム状を有する弾性体を含む意味で用いている。
【0022】
第一電極シート12及び第二電極シート15は、同程度の大きさに形成され、且つ、誘電体層11の外形と同様の外形に形成されている。ただし、端子部10bにおいては、第一電極シート12及び第二電極シート15は、異なる形状であることが許容される。第一電極シート12は、誘電体層11の第一面(図1の上面)側に配置される。第二電極シート15は、誘電体層11の第二面(図1の下面)側に配置される。従って、少なくともトランスデューサ部10aにおいては、第一電極シート12及び第二電極シート15は、誘電体層11を挟んだ状態で、対向して配置されている。
【0023】
ここで、第一電極シート12において、第二電極シート15に対向する側の面を第一内面12bとし、第二電極シート15と反対側の面を第一外面12cとする。また、第二電極シート15において、第一電極シート12に対向する側の面を第二内面15bとし、第一電極シート12と反対側の面を第二外面15cとする。
【0024】
図3に示すように、第一電極シート12は、誘電体層11の第一面側(図3の上側)に配置されている。第一電極シート12と誘電体層11とは、融着材料により形成された第一主融着層13により接合されている。
【0025】
図3においては、第一電極シート12は、誘電体層11の素材(図示せず)の第一面側に埋設されている。ここで、本例においては、誘電体層11の素材は、第二面側から順に、第二主保護層17の素材、第二主融着層16の素材、誘電体層11、第一主融着層13の素材、及び、第一主保護層14の素材を構成する。
【0026】
つまり、誘電体層11のうち第一面側の一部分が、誘電体層11の本体部分と第一電極シート12とを接合する第一主融着層13として機能する。換言すると、第一主融着層13は、誘電体層11のうち第一面側の少なくとも一部分として配置され、第一電極シート12と誘電体層11の本体部分とを接合する。なお、第一主融着層13は、誘電体層11の第一面に別部材として接合され、第一電極シート12と誘電体層11とを接合することもできる。
【0027】
また、上述したように、第一電極シート12は、誘電体層11の素材の第一面側に埋設されている。つまり、第一主融着層13は、誘電体層11の本体部分と第一電極シート12の第一内面12bとの境界部位、及び、誘電体層11の本体部分と第一電極シート12の複数の第一貫通孔12aの内周面との境界部位を接合する。
【0028】
さらに、第一主保護層14が、第一電極シート12の第一外面12cに接合した状態で、第一外面12cを被覆している。誘電体層11の素材のうち第一面側の一部分が、第一主保護層14として機能する。つまり、第一主保護層14は、第一主融着層13と同様に、誘電体層11の素材の第一面側の一部分として配置され、融着材料の融着により第一外面12cを被覆する。なお、第一主保護層14は、誘電体層11の第一面側に別部材として配置され、第一外面12cを被覆することもできる。なお、第一電極シート12の第一外面12cは、外側に露出するようにしてもよい。
【0029】
また、図3に示すように、第二電極シート15は、第一電極シート12と同様に、誘電体層11の素材の第二面側(図3の下側)に埋設されている。つまり、誘電体層11のうち第二面側の一部分が、誘電体層11の本体部分と第二電極シート15とを接合する第二主融着層16として機能する。換言すると、第二主融着層16は、誘電体層11のうち第二面側の少なくとも一部分として配置され、融着材料の融着により第二電極シート15と誘電体層11の本体部分とを接合する。なお、第二主融着層16は、誘電体層11の第二面に別部材として接合され、融着材料の融着により第二電極シート15と誘電体層11とを接合することもできる。
【0030】
また、上述したように、第二電極シート15は、誘電体層11の素材の第二面側に埋設されている。つまり、第二主融着層16は、誘電体層11の本体部分と第二電極シート15の第二内面15bとの境界部位、及び、誘電体層11の本体部分と第二電極シート15の複数の第二貫通孔15aの内周面との境界部位を接合する。
【0031】
さらに、第二主保護層17が、第二電極シート15の第二外面15cに接合した状態で、第二外面15cを被覆している。誘電体層11の素材のうち第二面側の一部分が、第二主保護層17として機能する。つまり、第二主保護層17は、第二主融着層16と同様に、誘電体層11の素材の第二面側の一部分として配置され、融着材料の融着により第二外面15cを被覆する。なお、第二主保護層17は、誘電体層11の第二面側に別部材として配置され、第二外面15cを被覆することもできる。なお、第二電極シート15の第二外面15cは、外側に露出するようにしてもよい。
【0032】
ここで、図3においては、第一主融着層13及び第二主融着層16は、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体層11の素材に熱を加えることにより形成されている。そのため、第一主融着層13及び第二主融着層16は、誘電体層11と同一材料成分により構成されている。つまり、誘電体層11の材料成分が実質的に変化することなく、第一主融着層13及び第二主融着層16が形成されている。このことは、第一主融着層13及び第二主融着層16に、揮散型接着剤や有機溶媒等の成分が含まれていないことを意味する。
【0033】
第一接続部20の構成について、主に図3を参照して説明する。第一リード線21は、導線を絶縁材により被覆する第一リード線本体21aと、先端側に配置されており導線を露出する第一導通部21bとを備える。第一リード線21の第一リード線本体21aは、第一電極シート12における誘電体層11と反対側の面(第一外面12c)側に配置されている。第一リード線21の第一導通部21bは、誘電体層11の第一面側に配置されている。第一導通部21bは、図3に示すように、第一電極シート12の第一外面12c側に配置してもよい。また、第一導通部21bは、図示しないが、第一電極シート12に絡ませて配置してもよい。いずれの場合にも、第一導通部21bは、第一電極シート12に電気的に接続されている。
【0034】
第一融着規制層22は、シート状に形成されており、第一主融着層13を構成する融着材料の通過を規制可能な材料により形成されている。第一融着規制層22は、第一主融着層13を構成する融着材料の軟化点よりも高い軟化点を有する材料により形成されている。軟化点を有しない材料は、無限大の軟化点を有する材料であることに相当する。例えば、第一融着規制層22は、樹脂シート、耐熱紙等により形成されている。
【0035】
第一融着規制層22は、第一電極シート12と第一主融着層13との間に部分的に配置されている。詳細には、第一融着規制層22は、第一リード線21が配置される領域に配置されている。従って、第一融着規制層22は、第一リード線21が配置される領域において、第一主融着層13が第一電極シート12に融着することを規制する。つまり、第一融着規制層22の中央部は、第一主融着層13が存在しない状態とされている。従って、第一融着規制層22は、中央部において、第一電極シート12の少なくとも一部を第一主融着層13の外側に露出させる。
【0036】
ここで、第一融着規制層22の外面における中央部は、第一主融着層13に接合されておらず、且つ、第一電極シート12に非接合状態で配置されている。一方、第一融着規制層22の内面は、第一主融着層13に接合されている。ただし、第一融着規制層22の外面における外縁部は、第一主融着層13に接合されている。つまり、第一融着規制層22の外縁部は、第一主融着層13に埋設されている。従って、第一融着規制層22は、第一主融着層13によって位置決めがされている。
【0037】
従って、第一主融着層13は、第一融着規制層22が存在する領域において、第一電極シート12に接合されていない。従って、第一主融着層13は、第一融着規制層22が存在する領域において、第一電極シート12を外側に露出させている。一方、第一主融着層13は、第一融着規制層22が存在しない領域において、第一電極シート12の一部を埋設し、第一電極シート12の当該一部を外側に露出させないように配置されている。そして、第一電極シート12のうち第一融着規制層22により外側に露出している部分に、第一リード線21の第一導通部21bが電気的に接続される。
【0038】
第一固着層23は、第一融着規制層22に面する領域において、第一リード線21の第一導通部21bを第一電極シート12に電気的に接続した状態で、第一リード線21の第一導通部21bを第一電極シート12に固着させる。第一固着層23は、例えば、半田や導電性樹脂等の導電性接合材である。つまり、第一固着層23により、第一リード線21の第一導通部21bが、第一電極シート12に対して、広範囲に且つ確実に、電気的に接続される状態となる。
【0039】
第一接続保護層24は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより、シート状に形成されている。第一接続保護層24は、図2に示すように、第一リード線21のうち第一電極シート12上に位置する領域、及び、第一固着層23が存在する領域に対応する形状に形成されている。第一接続保護層24は、図3に示すように、第一電極シート12における誘電体層11と反対側の面(第一電極シート12の第一外面12c)に配置され、第一リード線21の第一導通部21b及び第一固着層23を保護する。特に、第一接続保護層24は、第一電極シート12のうち第一主保護層14により保護されていない部分を被覆する。
【0040】
そして、第一接続保護層24は、融着材料により形成された第一接続融着層25により接合されている。詳細には、図3に示すように、第一接続保護層24は、第一接続融着層25により、第一リード線21、第一電極シート12の第一外面12cのうち露出している部分、及び、第一固着層23に接合されている。
【0041】
つまり、第一接続融着層25は、第一接続保護層24と第一リード線21との境界部位を接合する。さらに、第一接続融着層25は、第一接続保護層24と第一電極シート12との境界部位を接合する。詳細には、第一接続融着層25は、第一電極シート12の第一外面12c及び第一貫通孔12aの内周面を含む境界部位を接合する。
【0042】
ここで、本例においては、第一接続保護層24の一部分が、第一リード線21等と接合する第一接続融着層25として機能する。換言すると、第一接続融着層25は、第一接続保護層24の一部分として配置され、第一リード線21等と第一接続保護層24とを接合する。なお、第一接続融着層25は、第一接続保護層24に別部材として接合され、第一リード線21等と第一接続保護層24とを接合することもできる。
【0043】
さらに、第一接続保護層24の一部は、第一接続融着層25により、第一主保護層14にも接合されている。従って、第一接続保護層24は、シート本体部10と一体的となる。さらに、第一接続保護層24の一部は、第一電極シート12の第一貫通孔12aを介して、第一接続融着層25により、第一融着規制層22にも接合されている。
【0044】
第一接続融着層25は、上述したように、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一接続保護層24の素材に熱を加えることにより形成されている。そのため、第一接続融着層25は、第一接続保護層24と同一材料成分により構成されている。つまり、第一接続保護層24の材料成分が実質的に変化することなく、第一接続融着層25が形成されている。このことは、第一接続融着層25に、揮散型接着剤や有機溶媒等の成分が含まれていないことを意味する。
【0045】
ここで、上記の例においては、第一固着層23により第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとが電気的に接続されることとした。この他に、トランスデューサ1は、第一固着層23を有しない構成とすることもできる。つまり、第一接続保護層24が、第一接続融着層25により、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとを電気的に接続させた状態で固着することもできる。この場合、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとが接触した状態において、第一接続保護層24が、第一接続融着層25により、第一電極シート12及び第一リード線21の第一導通部21bとに接合する。さらに、第一接続保護層24が、第一接続融着層25により、第一融着規制層22に接合することにより、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとを確実に固着させることができる。
【0046】
第二接続部30の構成について説明する。第二接続部30は、実質的に、第一接続部20と同様の構成からなる。第二リード線31は、導線を絶縁材により被覆する第二リード線本体31aと、先端側に配置されており導線を露出する第二導通部31bとを備える。第二リード線31の第二リード線本体31aは、第二電極シート15における誘電体層11と反対側の面(第二外面15c)側に配置されている。第二リード線31の第二導通部31bは、誘電体層11の第二面側に配置されている。第二導通部31bは、第二電極シート15の第二外面15c側に配置してもよいし、第二電極シート15に絡ませて配置してもよい。そして、第二導通部31bが、第二電極シート15に電気的に接続されている。
【0047】
第二融着規制層32、第二固着層33、第二接続保護層34、第二接続融着層35は、それぞれ、第一融着規制層22、第一固着層23、第一接続保護層24、第一接続融着層25と実質的に同様に構成される。そのため、これらの詳細な説明は省略する。
【0048】
(2.第一例の端子部10bの詳細構成)
第一例の端子部10bの詳細構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここで、図4及び図5においては、模式的に図示するため、シート本体部10が、誘電体層11、第一電極シート12及び第二電極シート15により構成されるものとする。また、第一接続部20及び第二接続部30においても、第一融着規制層22、第一接続融着層25、第二融着規制層32及び第二接続融着層35を図示しない。
【0049】
上述したように、端子部10bは、第一端子部10b1と、第二端子部10b2と、変形許容部10b3とを備える。ここで、第一電極シート12は、第一端子部10b1に配置され、且つ、第二端子部10b2にも配置されている。ただし、第一電極シート12は、第一端子部10b1のみに配置されるようにしてもよい。一方、第二電極シート15は、第二端子部10b2のみに配置されている。ただし、第二電極シート15も、第一端子部10b1に配置され、且つ、第二端子部10b2にも配置されるようにしてもよい。
【0050】
第一端子部10b1には第一リード線21の第一導通部21bが接続されており、第一接続保護層24が第一導通部21bを被覆している。第二端子部10b2には第二リード線31の第二導通部31bが接続されており、第二接続保護層34が第二導通部31bを被覆している。つまり、第一導通部21bと第二導通部31bとは、誘電体層11の面方向(図4及び図5の左右方向)にオフセットして配置されている。
【0051】
ここで、第一導通部21bは、誘電体層11の第一面側に配置され、第二導通部31bは、誘電体層11の第二面側に配置されている。つまり、第一導通部21bと第二導通部31bとは、誘電体層11の厚み方向の表裏反対側の面に配置されている。さらに、第一導通部21bを含む第一接続部20は、誘電体層11の第一面から面法線方向に突出している。また、第二導通部31bを含む第二接続部30は、誘電体層11の第二面から面法線方向に突出している。つまり、第一導通部21bと第二導通部31bの突出方向は、反対である。
【0052】
そして、端子部10bは、第一端子部10b1と第二端子部10b2との境界部に、変形許容部10b3を備える。すなわち、変形許容部10b3は、第一導通部21bと第二導通部31bのオフセット方向の境界部に形成されている。変形許容部10b3は、第一端子部10b1と第二端子部10b2とを面法線方向への相対移動を許容する。詳細には、シート本体部10の面法線方向(誘電体層11の厚み方向)において、第一接続部20と第二接続部30との距離が、変形許容部10b3による変形前の状態に相当するトランスデューサ部10aにおける第一電極シート12と第二電極シート15との対向距離D(図3及び図5に示す)よりも短くなるように、第一端子部10b1と第二端子部10b2とが配置される。特に、シート本体部10の面法線方向において、第一導通部21bと第二導通部31bとの距離が、変形前における第一電極シート12と第二電極シート15との対向距離Dよりも短くなるようにされている。
【0053】
ここで、本例においては、変形許容部10b3は、誘電体層11の第一面から第二面に亘って切断されたスリットである。そして、図5に示すように、スリットを形成する突き合わせ面が誘電体層11の厚み方向にずらした状態とされる。つまり、変形許容部10b3による変形前の状態に相当するトランスデューサ部10aにおける第一電極シート12と第二電極シート15との対向距離Dに比べて、第一導通部21bと第二導通部31bとの誘電体層11の厚み方向の距離が短くなる。
【0054】
以上のとおり、第一導通部21bと第二導通部31bとは面方向にオフセットされている上に、誘電体層11は、変形許容部10b3を備えている。変形許容部10b3は、第一導通部21bと第二導通部31bとを誘電体層11の厚み方向に近接させるように作用する。換言すると、第一導通部21bに対向する誘電体層11の部位と、第二導通部31bに対向する誘電体層11の部位とは、同一平面上に位置せず、誘電体層11の厚み方向にずれている。
【0055】
従って、第一導通部21b、第一電極シート12、及び、誘電体層11を含む部位の厚み方向の範囲と、第二導通部31b、第二電極シート15、及び、誘電体層11を含む部位の厚み方向の範囲とは、オーバーラップしている。特に、第一電極シート12及び第一導通部21bを含んで構成される第一導電範囲と、第二電極シート15及び第二導通部31bを含んで構成される第二導電範囲とは、誘電体層11の厚み方向においてオーバーラップしている。つまり、第一リード線21と第二リード線31とが誘電体層11の表裏反対側に配置される場合であっても、端子部10b全体の厚みHが小さくなる。その結果、トランスデューサ1を構成する静電シート全体の最大厚みを、小さくすることができる。
【0056】
さらに、第二電極シート15は、第二端子部10b2の中央部に配置されており、第二端子部10b2におけるスリット側の縁には配置されていない。一方、第一電極シート12は、第一端子部10b1及び第二端子部10b2に亘って配置されている。従って、スリットの周囲(スリットを形成する縁)において、第一電極シート12のみが配置されており、第二電極シート15は配置されていない。従って、第一端子部10b1と第二端子部10b2が厚み方向にずれている場合に、第一電極シート12と第二電極シート15とが接触することが防止される。
【0057】
また、図示しないが、スリットの周囲において、第一電極シート12が配置されておらず、第二電極シート15のみが配置されている場合にも、上記と同様の効果を奏する。また、図示しないが、スリットの周囲において、第一電極シート12及び第二電極シート15が配置されていない場合にも、上記と同様の効果を奏する。
【0058】
(3.第二例の端子部10bの詳細構成)
第二例の端子部10bの詳細構成について、図6及び図7を参照して説明する。第二例の端子部10bは、第一例の端子部10bに対して、変形許容部10b3が相違する。
【0059】
本例においては、変形許容部10b3は、エラストマーにより形成されている誘電体層11の曲げ変形により構成されている。第一端子部10b1の誘電体層11と第二端子部10b2の誘電体層11は、変形許容部10b3の誘電体層11により連続的に接続されている。変形許容部10b3は、誘電体層11の曲げ変形により段差状に変形されて形成されている。
【0060】
このようにして、変形許容部10b3は、第一接続部20と第二接続部30との誘電体層11の厚み方向の距離を、変形許容部10b3による変形前の状態に相当するトランスデューサ部10aにおける第一電極シート12と第二電極シート15との対向距離D(図3に示す)よりも短くなるように、第一端子部10b1と第二端子部10b2とを配置させることができる。特に、シート本体部10の面法線方向において、第一導通部21bと第二導通部31bとの距離が、変形許容部10b3による変形前の状態に相当するトランスデューサ部10aにおける第一電極シート12と第二電極シート15との対向距離Dよりも短くなるようにされている。従って、第一リード線21と第二リード線31とが誘電体層11の表裏反対側に配置される場合であっても、端子部10b全体の厚みHが小さくなる。その結果、トランスデューサ1を構成する静電シート全体の最大厚みを、小さくすることができる。
【0061】
さらに、第一電極シート12が、第一端子部10b1に配置されており、第二端子部10b2には配置されていない。一方、第二電極シート15は、第一端子部10b1に配置されておらず、第二端子部10b2に配置されている。このように、第一電極シート12及び第二電極シート15が、第一端子部10b1及び第二端子部10b2のそれぞれのみに配置されることで、端子部10b全体の厚みHがより小さくなる。
【0062】
また、シート本体部10の面方向において、第一端子部10b1と第二端子部10b2との距離を長く確保できる場合には、本例の変形許容部10b3が好適である。この場合、第一端子部10b1の誘電体層11と第二端子部10b2の誘電体層11とを大きくずらすことが確実にできると共に、誘電体層11の形状が簡易な形状となる。
【符号の説明】
【0063】
1:トランスデューサ、10:シート本体部、10a:トランスデューサ部、10b:端子部、10b1:第一端子部、10b2:第二端子部、10b3:変形許容部、11:誘電体層、12:第一電極シート、12a:第一貫通孔、12b:第一内面、12c:第一外面、13:第一主融着層、14:第一主保護層、15:第二電極シート、15a:第二貫通孔、15b:第二内面、15c:第二外面、16:第二主融着層、17:第二主保護層、20:第一接続部、21:第一リード線、21a:第一リード線本体、21b:第一導通部、22:第一融着規制層、23:第一固着層、24:第一接続保護層、25:第一接続融着層、30:第二接続部、31:第二リード線、31a:第二リード線本体、31b:第二導通部、32:第二融着規制層、33:第二固着層、34:第二接続保護層、35:第二接続融着層、D:第一電極シートと第二電極シートとの対向距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7