(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ミキサドラム洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B60P 3/16 20060101AFI20220831BHJP
B28C 5/42 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B60P3/16 C
B60P3/16 A
B28C5/42
(21)【出願番号】P 2018180534
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 茂
(72)【発明者】
【氏名】木本 恵介
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-75986(JP,A)
【文献】特開2002-67782(JP,A)
【文献】特開2017-123767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0222818(US,A1)
【文献】特開2012-40083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
B28C 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に回転可能に搭載されたミキサドラムと、
前記ミキサドラムを投入方向及び排出方向へ回転駆動可能な駆動装置と、
前記ミキサドラムの洗浄指示が入力されると、前記ミキサドラムを所定の投入側洗浄回転数で前記投入方向へ回転させる投入方向回転と前記ミキサドラムを所定の排出側洗浄回転数で前記排出方向へ回転させる排出方向回転とを交互に繰り返すように前記駆動装置の作動を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、洗浄時の前記ミキサドラムの目標回転数が設定された目標洗浄パターンを有し、前記ミキサドラムの回転数が前記目標洗浄パターンに従って推移するように前記駆動装置を制御し、
前記目標洗浄パターンの前記ミキサドラムの目標回転数は、所定の時間変化率で前記投入側洗浄回転数及び前記排出側洗浄回転数まで上昇、または、所定の時間変化率で前記投入側洗浄回転数及び前記排出側洗浄回転数から低下するように設定されることを特徴とするミキサドラム洗浄装置。
【請求項2】
前記目標洗浄パターンの前記ミキサドラムの目標回転数は、所定の第1時間変化率で前記投入側洗浄回転数及び前記排出側洗浄回転数まで上昇し、前記第1時間変化率とは異なる所定の第2時間変化率で前記投入側洗浄回転数及び前記排出側洗浄回転数から低下するように設定されることを特徴とする請求項1に記載のミキサドラム洗浄装置。
【請求項3】
前記第1時間変化率は前記第2時間変化率よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のミキサドラム洗浄装置。
【請求項4】
前記目標洗浄パターンは、前記ミキサドラムの洗浄を開始し前記ミキサドラムの回転数が前記投入側洗浄回転数となるまでの前記ミキサドラムの目標回転数が設定された開始時パターンを含み、
前記開始時パターンの前記ミキサドラムの目標回転数は、前記投入側洗浄回転数に向かって所定の第3時間変化率で上昇し、前記投入側洗浄回転数に至る前に、前記第3時間変化率とは異なる所定の第4時間変化率でさらに上昇するように設定されることを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載のミキサドラム洗浄装置。
【請求項5】
前記第4時間変化率は前記第3時間変化率よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載のミキサドラム洗浄装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ミキサドラム内に投入された洗浄流体の量に応じて、前記ミキサドラムを前記排出方向へ回転させる時間を変化させることを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載のミキサドラム洗浄装置。
【請求項7】
前記排出側洗浄回転数は前記投入側洗浄回転数よりも小さく設定されることを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載のミキサドラム洗浄装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記投入方向回転の開始から前記排出方向回転の終了までを1サイクルとして複数サイクル繰り返して前記ミキサドラムを回転させ、サイクル毎に前記投入側洗浄回転数及び前記排出側洗浄回転数の少なくとも一方を変化させることを特徴とする請求項1から7の何れか1つに記載のミキサドラム洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車のミキサドラム洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ミキサ車のミキサドラムを洗浄するミキサドラム洗浄装置が開示されている。このミキサドラム洗浄装置では、投入方向への回転と排出方向への回転とを繰り返すことによってミキサドラム内を洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミキサドラム洗浄装置では、投入方向へ所定の回転数で回転した状態から排出方向へ所定の回転数で回転するようにミキサドラムの回転方向が切り換えられる。このようにミキサドラムの回転方向が単に切り換えられると、切り換え時の衝撃によって車両が大きく振動してしまう場合がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサドラムを洗浄する際に生じる車両の振動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ミキサドラム洗浄装置が、車両に回転可能に搭載されたミキサドラムと、ミキサドラムを投入方向及び排出方向へ回転駆動可能な駆動装置と、ミキサドラムの洗浄指示が入力されると、ミキサドラムを所定の投入側洗浄回転数で投入方向へ回転させる投入方向回転とミキサドラムを所定の排出側洗浄回転数で排出方向へ回転させる排出方向回転とを交互に繰り返すように駆動装置の作動を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、洗浄時のミキサドラムの目標回転数が設定された目標洗浄パターンを有し、ミキサドラムの回転数が目標洗浄パターンに従って推移するように駆動装置を制御し、目標洗浄パターンのミキサドラムの目標回転数は、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数まで上昇、または、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数から低下するように設定されることを特徴とする。
【0007】
この発明では、ミキサドラムの洗浄が行われる際のミキサドラムの回転数が、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数まで上昇、または、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数から低下するように制御される。このように、ミキサドラムの回転方向が切り換わる前後の少なくとも一方において、ミキサドラムの回転数が時間の経過とともに徐々に変化するように制御されることによってミキサドラムの回転方向が急激に切り換わることが抑制される。
【0008】
本発明は、目標洗浄パターンのミキサドラムの目標回転数が、所定の第1時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数まで上昇し、第1時間変化率とは異なる所定の第2時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数から低下するように設定されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ミキサドラムの洗浄が行われる際のミキサドラムの回転数が、第1時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数まで上昇し、第1時間変化率とは異なる第2時間変化率で投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数から低下するように制御される。このようにミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数まで上昇するときと投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数から低下するときとにおいて時間変化率を異ならせることによって、洗浄力の向上とミキサドラムの回転方向の切り換わり時の衝撃の低減とを両立させることができる。
【0010】
本発明は、第1時間変化率が第2時間変化率よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
この発明では、第1時間変化率が第2時間変化率よりも大きく設定される。このように、ミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数まで上昇する際の目標回転数の時間変化率を大きくすることで洗浄力を向上させることができるとともに、ミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数から低下する際の目標回転数の時間変化率を小さくすることでミキサドラムの回転方向の切り換わり時の衝撃を低減させることができる。
【0012】
本発明は、目標洗浄パターンが、ミキサドラムの洗浄を開始しミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数となるまでのミキサドラムの目標回転数が設定された開始時パターンを含み、開始時パターンのミキサドラムの目標回転数は、投入側洗浄回転数に向かって所定の第3時間変化率で上昇し、投入側洗浄回転数に至る前に、第3時間変化率とは異なる所定の第4時間変化率でさらに上昇するように設定されることを特徴とする。
【0013】
この発明では、ミキサドラムの洗浄を開始しミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数となるまでに、ミキサドラムの目標回転数の時間変化率が変更される。このように、時間変化率を変更することで、ミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数に緩やかに到達させることが可能となり、結果として、ミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数に到達する際に生じる車両の振動を低減させることができる。
【0014】
本発明は、第4時間変化率が第3時間変化率よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
この発明では、投入側洗浄回転数に至る前のミキサドラムの目標回転数の時間変化率が小さく設定される。このように、投入側洗浄回転数に至る前のミキサドラムの目標回転数の時間変化率を小さくすることで、ミキサドラムの回転数を投入側洗浄回転数へと緩やかに到達させることが可能となり、結果として、ミキサドラムの回転数が投入側洗浄回転数に到達する際に生じる車両の振動を低減させることができる。
【0016】
本発明は、コントローラが、ミキサドラム内に投入された洗浄流体の量に応じて、ミキサドラムを排出方向へ回転させる時間を変化させることを特徴とする。
【0017】
この発明では、ミキサドラムを排出方向へ回転させる時間がミキサドラム内に投入された洗浄流体の量に応じて変更される。このように、ミキサドラムを排出方向へ回転させる時間を、ミキサドラム内に投入された洗浄流体の量に応じて変更することで、ミキサドラムの開口部から洗浄流体があふれ出すことを防止しつつ、開口部付近に付着した付着物を効率的に除去することができる。
【0018】
本発明は、排出側洗浄回転数が投入側洗浄回転数よりも小さく設定されることを特徴とする。
【0019】
この発明では、排出側洗浄回転数が投入側洗浄回転数よりも小さく設定される。このように、排出側洗浄回転数を投入側洗浄回転数よりも小さく設定することで、ミキサドラムの開口部から洗浄流体があふれ出すことを防止することができるとともに、投入側洗浄回転数と排出側洗浄回転数とに差を設けることでミキサドラム内を移動する洗浄流体の流れに緩急をつけ、洗浄力を向上させることができる。
【0020】
本発明は、コントローラが、投入方向回転の開始から排出方向回転の終了までを1サイクルとして複数サイクル繰り返してミキサドラムを回転させ、サイクル毎に投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数の少なくとも一方を変化させることを特徴とする。
【0021】
この発明では、サイクル毎に投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数の少なくとも一方が変更される。このように、サイクル毎に投入側洗浄回転数や排出側洗浄回転数を変更することでミキサドラム内を移動する洗浄流体の流れに緩急をつけ、洗浄力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ミキサドラムを洗浄する際に生じる車両の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置が適用されるミキサ車の側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置による洗浄パターンを示した図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置による洗浄パターンの開始部分を拡大して示した図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置による洗浄パターンの一部を拡大して示した図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置においてミキサドラムを洗浄する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置による洗浄パターンの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係るミキサドラム洗浄装置100が適用されるミキサ車1の全体構成について説明する。
図1は、ミキサ車1の側面を示す概略図であり、
図2は、ミキサドラム洗浄装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0026】
ミキサ車1は、ミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車1が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0027】
ミキサ車1は、
図1に示すように、運転室11と架台3とを備える車両であり、架台3に搭載されて生コンを搭載可能なミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、ミキサドラム2の回転を制御するコントローラ20と、を備える。
【0028】
ミキサドラム2は、架台3に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられる。ミキサドラム2は、その回転軸Oが車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。ミキサドラム2内には、図示しないドラムブレードがドラム内壁面に沿って螺旋状に配設されており、ミキサドラム2とともにドラムブレードが回転することによって、ミキサドラム2内に積載された生コンの攪拌等が行われる。
【0029】
ミキサドラム2の開口部2aの後方上部には、ホッパ16が設けられる。生コン工場においてミキサ車1に投入される生コンは、ホッパ16によって開口部2aへと導かれる。ミキサドラム2の開口部2aの後方下部には、フローガイド17及びシュート18が設けられる。開口部2aから排出される生コンは、フローガイド17によってシュート18に導かれ、シュート18によって所定の方向に排出される。
【0030】
ミキサドラム2は、ミキサ車1に搭載された走行用のエンジン10を動力源として、駆動装置4を介して回転駆動される。駆動装置4は、エンジン10の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動する流体圧装置である。
【0031】
図2に示すように、エンジン10は、エンジン10の出力及び回転数を調整するためのスロットル弁10aを有する。スロットル弁10aの開度は、エンジン10によって駆動装置4を駆動させる際に図示しないアクチュエータを介してコントローラ20により制御される。また、エンジン10には、エンジン10の回転速度を検出し、検出された回転速度に応じた信号をコントローラ20へ出力する回転センサ10bが設けられる。
【0032】
駆動装置4を駆動する際のエンジン10の回転数は、回転センサ10bにより検出された回転速度が所定の大きさとなるように、スロットル弁10aを介してコントローラ20によって制御される。なお、回転センサ10bは、駆動装置4の入力軸である後述のPTO軸9やドライブシャフト8の回転速度を検知するものであってもよい。
【0033】
エンジン10の回転は、エンジン10から常時動力を取り出すPTO軸9(PTO:Power take-off)と、PTO軸9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8(
図2参照)と、を介して駆動装置4に伝達される。
【0034】
駆動装置4は、エンジン10によって駆動され作動流体としての作動油を吐出する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される作動油によって駆動されミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6と、を有する。なお、駆動装置4では、作動流体として作動油ではなく、他の非圧縮性流体が用いられてもよい。
【0035】
油圧ポンプ5は、図示しない斜板の傾転角に応じて吐出量及び吐出方向が変更される斜板型アキシャルピストンポンプであり、油圧ポンプ5の吐出量及び吐出方向を検出する容量検出センサ5aと、斜板の傾転角を調整するための電磁弁5bと、を有する。容量検出センサ5aは、検出された吐出量に応じた信号をコントローラ20に出力する。油圧ポンプ5の吐出量及び吐出方向は、コントローラ20により電磁弁5bが切り換えられることによって変更される。なお、油圧ポンプ5は、斜板の傾転角に応じて吐出量が変更され、吐出方向切換弁により吐出方向が変更される形式の斜板型アキシャルピストンポンプであってもよい。
【0036】
また、油圧ポンプ5には、油圧ポンプ5の吐出圧力を検出する圧力センサ5cが設けられる。圧力センサ5cは、検出された作動油の圧力に応じた信号をコントローラ20に出力する。なお、圧力センサ5cは、油圧モータ6に設けられ、油圧ポンプ5から油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出するものであってもよい。このように、圧力センサ5cは、駆動装置4における作動油の圧力を検知する。
【0037】
油圧モータ6は、図示しない斜板の傾転角に応じて容量が変更される斜板型アキシャルピストンモータであり、斜板の傾転角を調整するための電磁弁6bを有する。油圧モータ6の容量は、コントローラ20により電磁弁6bが切り換えられることによって、高速回転用の小容量と通常回転用の大容量との二段階に切り換えられる。なお、油圧モータ6は、容量を小容量から大容量まで連続的に変更可能な斜板型アキシャルピストンモータであってもよい。
【0038】
また、油圧モータ6には、油圧モータ6の図示しない出力軸の回転方向と回転速度とを検出する回転センサ6aが設けられる。回転センサ6aは、検出された出力軸の回転方向と回転速度とに応じた信号をコントローラ20に出力する。
【0039】
上記構成の駆動装置4において、油圧ポンプ5から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されることによって油圧モータ6が回転し、供給される油量や油圧モータ6の斜板の傾転角に応じて、油圧モータ6の回転速度が変更される。また、油圧モータ6の回転方向は、油圧ポンプ5において吐出方向が切り換えられることで切り換わる。
【0040】
このような駆動装置4の油圧モータ6の回転が減速機7を介してミキサドラム2に伝達されることで、ミキサドラム2の回転方向を正回転方向である投入方向と逆回転方向である排出方向とに切り換えることが可能であるとともに、ミキサドラム2の回転速度を増減させることが可能である。
【0041】
ミキサドラム2が投入方向に回転駆動される場合、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら前方へと移動する。一方、ミキサドラム2が排出方向に回転駆動される場合、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら後方へと移動する。
【0042】
このようにミキサドラム2を投入方向とは反対の方向である排出方向に回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出することができる。ミキサドラム2から排出された生コンは、フローガイド17及びシュート18を介して所定位置に誘導される。
【0043】
なお、ホッパ16を介して、ミキサドラム2内へ生コンを投入する場合には、攪拌時よりもミキサドラム2を高速で投入方向に回転させることで、投入された生コンを速やかにミキサドラム2の前方へと移動させる。
【0044】
なお、上記構成の駆動装置4では、油圧ポンプ5がPTO軸9を介してエンジン10から常時取り出される動力によって回転駆動されるため、油圧ポンプ5の回転速度は、車両の走行状態に伴うエンジン10の回転速度の変化の影響を受ける。したがって、ミキサ車1では、油圧モータ6の回転速度をコントローラ20により制御することによって、ミキサドラム2の回転数が目標回転数となるように制御している。なお、油圧ポンプ5を回転駆動させる駆動源としては、走行用のエンジン10に限定されず、走行に用いられない補機用のエンジンや電動モータであってもよい。
【0045】
コントローラ20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)などを備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラムなどを予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって駆動装置4の作動が制御される。
【0046】
コントローラ20は、パーキングブレーキ31やミキサドラム2を操作するための操作装置32と共に運転室11内に配置される。また、コントローラ20には、ミキサドラム2の状態を文字コードやランプの点滅状態で表示する表示部20aが設けられており、作業者やメンテナンス作業員は、表示部20aの表示を見ることによって、例えばミキサドラム2の制御状態がどのような異常状態にあるのかを確認することができる。
【0047】
パーキングブレーキ31には、パーキングブレーキ31のレバー位置を検知する図示しない検知器が設けられる。パーキングブレーキ31がかけられている場合には、検知器から停車信号がコントローラ20へと出力される。
【0048】
操作装置32には、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を切り換えるためのつまみ型の操作スイッチ32aと、作業者によって後述の洗浄設定が入力される入力部32bと、緊急時にミキサドラム2の回転を停止させるための非常停止スイッチ32cと、ミキサドラム2を自動的に洗浄回転させるための洗浄スイッチ32dと、が設けられる。なお、ミキサ車1の外部にてミキサドラム2の操作を可能とするため、操作装置32と同様の操作装置をミキサ車1の後部に配置してもよい。また、コントローラ20よりも目に付きやすい場所に操作装置32が設置されている場合には、操作装置32に上述の表示部20aが設けられてもよい。
【0049】
作業者により操作スイッチ32aが操作されると、コントローラ20は、操作スイッチ32aの操作方向および操作量に応じてミキサドラム2の回転方向及び目標回転速度といった目標回転状態を設定し、ミキサドラム2の回転状態が目標回転状態となるように駆動装置4及びエンジン10を制御する。
【0050】
具体的には、ミキサドラム2の回転状態は、油圧モータ6の回転状態と相関することからコントローラ20は、回転センサ6aを通じて入力される油圧モータ6の回転方向信号が所望の回転方向となるように電磁弁5bを介して油圧ポンプ5の吐出方向を切り換える。また、コントローラ20は、回転センサ6aを通じて入力される油圧モータ6の回転速度信号が所望の大きさとなるように、電磁弁5bを介して油圧ポンプ5の吐出量を適宜変化させるとともに、電磁弁6bを介して油圧モータ6の容量を適宜変更する。
【0051】
また、作業者により非常停止スイッチ32cが操作されると、コントローラ20は、駆動装置4を制御しミキサドラム2の回転を停止させる。
【0052】
また、作業者により洗浄スイッチ32dが操作されると、コントローラ20は、ミキサドラム2を所定の投入側洗浄回転数DN1で投入方向へ回転させる投入方向回転とミキサドラム2を所定の排出側洗浄回転数DN2で排出方向へ回転させる排出方向回転とを交互に繰り返すように駆動装置4を制御する。このように、作業者により洗浄スイッチ32dが操作されると、ミキサドラム洗浄装置100によって、ミキサドラム2の洗浄が実行される。
【0053】
以下に、
図2から
図6を参照し、ミキサドラム洗浄装置100によるミキサドラム2の洗浄について具体的に説明する。
図2は、ミキサドラム洗浄装置100のハードウェア構成を示すブロック図であり、
図3から
図5は、ミキサドラム洗浄装置100による洗浄パターンを示した図であり、
図6は、ミキサドラム洗浄装置100においてミキサドラム2を洗浄する際の処理手順を示すフローチャートである。
【0054】
ミキサドラム2の洗浄を行うミキサドラム洗浄装置100は、
図2に示すように、主に、車両に回転可能に搭載されたミキサドラム2と、ミキサドラム2を投入方向及び排出方向へ回転駆動可能な駆動装置4と、ミキサドラム2の洗浄指示が入力されると、ミキサドラム2を投入方向へ回転させる投入方向回転と排出方向へ回転させる排出方向回転とを交互に繰り返すように駆動装置4の作動を制御するコントローラ20と、により構成される。なお、各構成の説明については、上述されているため省略する。
【0055】
コントローラ20のROMには、ミキサドラム2の洗浄を行うために、
図3に示されるような、ミキサドラム2を洗浄する際のミキサドラム2の回転数の目標推移が設定された目標洗浄パターンが記憶されている。また、コントローラ20のROMには、
図3に示されるような、目標洗浄パターンに従ってミキサドラム2を洗浄する際のエンジン10の回転数の目標推移が記憶されている。
【0056】
目標洗浄パターンは、洗浄を開始する際のミキサドラム2の回転数の目標推移が設定された開始時パターンPSと、洗浄中のミキサドラム2の回転数の目標推移が設定された洗浄中パターンPWと、洗浄を終了する際のミキサドラム2の回転数の目標推移が設定された終了時パターンPEと、の3つのパターンにより構成される。
【0057】
洗浄中パターンPWは、ミキサドラム2を投入方向へ回転させる投入方向回転パターン41と、ミキサドラム2を排出方向へ回転させる排出方向回転パターン42と、が組み合わされたものである。
【0058】
投入方向回転パターン41は、洗浄流体としてミキサドラム2内に投入された水をミキサドラム2の前方に向けて勢いよく移動させる工程であり、投入側洗浄回転数DN1に向かって回転数が上昇する投入立上り区間41aと、回転数が投入側洗浄回転数DN1となる投入一定区間41bと、投入側洗浄回転数DN1から回転数が低下する投入立下り区間41cと、を有する。
【0059】
排出方向回転パターン42は、ミキサドラム2内に投入された水をミキサドラム2の開口部2aに向けて勢いよく移動させる工程であり、排出側洗浄回転数DN2に向かって回転数が上昇する排出立上り区間42aと、回転数が排出側洗浄回転数DN2となる排出一定区間42bと、排出側洗浄回転数DN2から回転数が低下する排出立下り区間42cと、を有する。投入側洗浄回転数DN1と排出側洗浄回転数DN2とは同じ回転数に設定されていてもよいし、異なる回転数であってもよい。
【0060】
また、開始時パターンPSは、洗浄中パターンPWの投入方向回転パターン41と排出方向回転パターン42とを組み合わせたものとほぼ同等であり、終了時パターンPEは、洗浄中パターンPWの投入方向回転パターン41と同じパターンである。
【0061】
このように設定された目標洗浄パターンに従って、洗浄流体としての水が投入されたミキサドラム2を投入方向及び排出方向へと繰り返し回転させることでミキサドラム2内を洗浄され、ミキサドラム2内の水は、終了時パターンPEにおいてミキサドラム2の前方へと集められる。
【0062】
ここで、投入方向回転パターン41の投入立下り区間41cにおいて目標回転数を、所定の時間変化率で低下させることなく、投入側洗浄回転数DN1からゼロ回転に移行するように設定し、また、排出方向回転パターン42の排出立上り区間42aにおいて目標回転数を、所定の時間変化率で上昇させることなく、ゼロ回転から排出側洗浄回転数DN2に移行するように設定すると、ミキサドラム2の回転方向が急激に切り換わることとなる。
【0063】
このようにミキサドラム2の回転方向が急激に切り換わると、その衝撃で車両が大きく揺れ動く場合がある。このようにミキサドラム2を洗浄している間に車両が大きく振動すると作業者に危険を感じさせてしまったり、ミキサドラム洗浄装置100において何らかの故障が発生したと作業者に誤解や不安を与えてしまったりするおそれがある。
【0064】
なお、これは、排出方向回転パターン42の排出立下り区間42cにおいて目標回転数を排出側洗浄回転数DN2からゼロ回転に移行するように設定し、投入方向回転パターン41の投入立上り区間41aにおいて目標回転数をゼロ回転から投入側洗浄回転数DN1に移行するように設定した場合も同様である。
【0065】
本実施形態では、このようにミキサドラム2を洗浄する際に車両が大きく振動してしまうことを抑制するために、投入立上り区間41a及び排出立上り区間42aにおけるミキサドラム2の目標回転数を所定の時間変化率である第1時間変化率で徐々に上昇させ、投入立下り区間41c及び排出立下り区間42cにおけるミキサドラム2の目標回転数を所定の時間変化率である第2時間変化率で徐々に低下させている。
【0066】
投入立上り区間41a、投入立下り区間41c、排出立上り区間42a及び排出立下り区間42cにおけるミキサドラム2の目標回転数を、時間の経過とともに徐々に変化させると、目標回転数が瞬時に変更される場合と比較し、ミキサドラム2の回転方向が切り換わる際に時間がかかるため、ミキサドラム2の回転方向は自ずと緩やかに切り換わることになる。この結果、ミキサドラム2の回転方向の切り換わりによる衝撃で車両が振動してしまうことを抑制することができる。
【0067】
投入立上り区間41aにおける目標回転数の第1時間変化率と、投入立下り区間41cにおける目標回転数の第2時間変化率と、は同じであってもよいが、ミキサドラム2内の水の流れに勢いをつけ、洗浄力を向上させるには、投入側洗浄回転数DN1に到達するまでの時間を短くすることが好ましいことから、投入立上り区間41aにおける第1時間変化率は、投入立下り区間41cにおける第2時間変化率よりも大きく設定される。同様の理由から、排出立上り区間42aにおける目標回転数の第1時間変化率は、排出立下り区間42cにおける目標回転数の第2時間変化率よりも大きく設定される。
【0068】
また、ミキサドラム2の洗浄が開始されるとき、
図3に示すように、エンジン10の回転数もミキサドラム2の回転数と同時に上昇し、アイドリング状態から所定の回転数である洗浄時回転数EN1となる。このように、エンジン10の回転数の上昇とミキサドラム2の回転数の上昇とが重なると、エンジン10の回転数が洗浄時回転数EN1に至ることで生じる車両の振動とミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に至ることで生じる車両の振動とが重畳され、結果として、車両が大きく揺れ動いてしまうおそれがある。
【0069】
本実施形態では、ミキサドラム2の洗浄を始める際に車両が大きく振動してしまうことを抑制するため、開始時パターンPSを以下のような設定としている。
【0070】
開始時パターンPSは、
図4に拡大して示すように、洗浄開始と共にミキサドラム2を投入方向へ回転させる第1開始時パターン43と、第1開始時パターン43に引き続いてミキサドラム2を排出方向へ回転させる第2開始時パターン44と、を有する。なお、第2開始時パターン44は洗浄中パターンPWの排出方向回転パターン42と同じ設定であるためその説明を省略する。
【0071】
第1開始時パターン43は、洗浄中パターンPWの投入方向回転パターン41と同様に、洗浄流体としてミキサドラム2内に投入された水をミキサドラム2の前方に向けて勢いよく移動させる工程である。
【0072】
第1開始時パターン43は、ゼロ回転から投入側洗浄回転数DN1に向かって回転数が上昇する第1投入立上り区間43aと、投入側洗浄回転数DN1に至る前に第1投入立上り区間43aから切り換わる第2投入立上り区間43bと、投入側洗浄回転数DN1から回転数が低下する投入立下り区間43cと、を有する。
【0073】
第2投入立上り区間43bにおける目標回転数の所定の時間変化率である第4時間変化率は、第1投入立上り区間43aにおける目標回転数の所定の時間変化率である第3時間変化率よりも小さく設定される。なお、投入立下り区間43cにおける目標回転数の時間変化率は、投入方向回転パターン41の投入立下り区間41cの時間変化率と同じである。
【0074】
このように第2投入立上り区間43bにおける第4時間変化率を小さくし、ミキサドラム2の回転数が、投入側洗浄回転数DN1に至る前に、ミキサドラム2の回転数の上昇度合いを緩やかにすることによって、ミキサドラム2の回転数がオーバーシュートすることを防止するとともに、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に到達する際に生じる車両の振動を低減させることが可能となる。
【0075】
これにより、エンジン10の回転数が洗浄時回転数EN1に到達する際にオーバーシュートが生じ車両が振動したとしても、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に至ることで生じる車両の振動が抑制されるので、車両が大きく揺れ動くことは抑制される。
【0076】
また、
図4に示されるように、第1開始時パターン43においてミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に到達するタイミングは、エンジン10の回転数が洗浄時回転数EN1に到達するタイミングよりも遅くなるように設定されている。
【0077】
このように第1開始時パターン43を設定することによって、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に至ることで車両が多少振動したとしても、エンジン10の回転数が洗浄時回転数EN1に到達することに起因する車両の振動とは振動が生じるタイミングがずれることから車両が大きく揺れ動くことは抑制される。
【0078】
なお、第1開始時パターン43では、投入立上り区間が二つの区間により構成されているが、三つ以上の複数の区間によって構成し、ミキサドラム2の回転数がさらに緩やかに投入側洗浄回転数DN1に到達するようにしてもよい。また、ミキサドラム2の洗浄を開始する際だけではなく、洗浄中パターンPWの投入立上り区間41a及び排出立上り区間42aも第1開始時パターン43と同様に複数の区間によって構成し、ミキサドラム2の回転数が緩やかに投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2に到達するようにしてもよい。
【0079】
また、ミキサドラム洗浄装置100によってミキサドラム2を洗浄するにあたって、生コンを排出した後のミキサドラム2は、特に開口部2a付近への生コンの付着が多いことから、洗浄中パターンPWにおける排出方向回転パターン42の時間、特に排出一定区間42bの時間を長くし、開口部2a付近へ水を積極的に導くことが好ましい。
【0080】
しかしながら、洗浄のためにミキサドラム2内に投入された水の量が多い場合、排出一定区間42bの時間を長くすると、開口部2aから水があふれ出てしまう。一方、開口部2aから水があふれ出ることを防止するために、排出一定区間42bの時間を制限してしまうと、ミキサドラム2内に投入された水の量が少ない場合には、開口部2a付近まで水が導かれず、結果として、開口部2a付近に付着した生コンを除去することが困難となる。
【0081】
このようにミキサドラム2内に投入された水の量によって、開口部2aから水があふれ出てしまったり、開口部2a付近まで水を導くことができなかったりすることを防止するため、本実施形態では、洗浄中パターンPWにおける排出方向回転パターン42の時間、特に排出一定区間42bの時間をミキサドラム2内に投入された水の量に応じて変更している。
【0082】
具体的には、
図5に示すように、ミキサドラム2内に投入された水の量が少ない場合は、洗浄中パターンPWが、排出一定区間42bの時間が第1時間T1である実線で示されるパターンに変更される一方、ミキサドラム2内に投入された水の量が多い場合は、洗浄中パターンPWが、排出一定区間42bの時間が第1時間T1より短い第2時間T2である破線で示されるパターンに変更される。
【0083】
このようにミキサドラム2内に投入された水の量が少ない場合は、排出方向回転パターン42の時間、特に排出一定区間42bの時間を長くすることによって、水が貴重な地域においても僅かな水でミキサドラム2の開口部2a付近に付着した生コンを効率的に除去することが可能となる。
【0084】
また、ミキサドラム2内に投入された水の量が多い場合は、排出方向回転パターン42の時間、特に排出一定区間42bの時間を短くすることによって、ミキサドラム2の開口部2aから水があふれ出すことを防止しつつ、開口部2a付近に付着した生コンを効率的に除去することが可能となる。
【0085】
ミキサドラム2内に投入された水の量と排出一定区間42bの時間との関係は予めマップとしてROMに記憶されている。
【0086】
なお、ミキサドラム2内に投入された水の量に応じて排出一定区間42bの時間を変更することに代えて、排出一定区間42bにおけるミキサドラム2回転数を変更してもよい。この場合、水の量が少ない場合は、比較的高い回転とすることで遠心力を大きくしてミキサドラム2の開口部2a付近へ水を導き、水の量が多い場合は、比較的低い回転数とすることで遠心力を小さくしミキサドラム2の開口部2aから水があふれ出すことを防止することができる。
【0087】
次に、
図6のフローチャートを参照して、ミキサドラム洗浄装置100によってミキサドラム2を洗浄する際の処理手順について説明する。
【0088】
まず、ステップS101において、作業者により操作装置32の洗浄スイッチ32dが押されたか否かが判定される。洗浄スイッチ32dが押されていない場合は、一旦処理を終了し、洗浄スイッチ32dが押されている場合は、ステップS102へと進む。
【0089】
ステップS102では、洗浄の設定がすでに行われているか否かが判定される。洗浄の設定とは、投入方向回転パターン41の開始から排出方向回転パターン42の終了までを1サイクルとした場合にこれを何サイクル実行するかや、ミキサドラム2内に何リットルの水が投入されているかである。この他、投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2や、各区間41a~41c,42a~42cの長さや時間変化率を設定可能としてもよい。
【0090】
洗浄の設定がすでに行われている場合は、ステップS104に進み、洗浄の設定がまだ行われていない場合は、ステップS103に進む。
【0091】
ステップS103では、操作装置32の入力部32bを介してミキサドラム2内に投入された水の量や洗浄パターン、洗浄パターンの繰り返し回数といった洗浄設定が作業者により入力される。洗浄設定の入力が完了すると、ステップS104に進む。なお、入力を完了した際に、今後も同じ設定で洗浄を行うことを選択することで、次回以降、洗浄設定の入力を省略できるようにしてもよい。
【0092】
続くステップS104では、ミキサ車1全体のシステムにおいて異常があるか否かが判定される。何らかの異常がある場合は、安全のためにミキサドラム2の洗浄を行うことなく、ステップS109に進み、洗浄ができない理由、具体的に何処に異常があるかを表示部20aに表示し、一旦、処理を終了する。何も異常がない場合は、ステップS105に進む。
【0093】
ステップS105では、ミキサドラム2が停止中であるか否かが判定される。ミキサドラム2が回転している場合は、ミキサドラム2内にまだ生コンが積載されている可能性があることから、安全のためにミキサドラム2の洗浄を行うことなく、ステップS109に進み、ミキサドラム2が回転しているため洗浄ができない旨を表示部20aに表示し、一旦、処理を終了する。ミキサドラム2が停止している場合は、ステップS106に進む。
【0094】
ステップS106では、パーキングブレーキ31がかけられているか否かが判定される。パーキングブレーキ31がかけられていない場合は、ミキサドラム2を洗浄中に車両が動いてしまうおそれがあることから、安全のためにミキサドラム2の洗浄を行うことなく、ステップS109に進み、パーキングブレーキ31がかけられていないため洗浄ができない旨を表示部20aに表示し、一旦、処理を終了する。パーキングブレーキ31がかけられている場合は、ステップS107に進む。
【0095】
ステップS107では、ミキサドラム2内に生コンが積載されているか否かが判定される。具体的には、ミキサドラム2を僅かに回転させた際に圧力センサ5cで検出された検出値に基づいて判定される。ミキサドラム2内に生コンが積載されている場合、ミキサドラム2内に洗浄用の水が投入されている場合と比較し、ミキサドラム2を回転させる負荷が大きいとともに、ミキサドラム2内を生コンが滑ることで負荷変動が生じる。このため、圧力センサ5cで検出された検出値が所定の値よりも大きい場合、または、検出値の変動幅が所定の値よりも大きい場合は、ミキサドラム2内に生コンが積載されていると判定することができる。
【0096】
ミキサドラム2内に生コンが積載されていると判定された場合は、ミキサドラム2を洗浄することができないため、ステップS109に進み、ミキサドラム2内に生コンが積載されている旨を表示部20aに表示し、一旦、処理を終了する。ミキサドラム2内に生コンが積載されていないと判定された場合は、ステップS108に進む。
【0097】
ステップS108では、ミキサドラム2の洗浄が開始される。具体的には、上述の目標洗浄パターンに従って、ミキサドラム2が回転するように、コントローラ20によって駆動装置4の作動とエンジン10の回転数が制御される。
【0098】
ステップS108において、ミキサドラム2の洗浄が開始されると、ステップS110に進み、作業者により操作装置32の洗浄スイッチ32dが再度、押されたか否かが判定される。ミキサドラム2の洗浄が開始されてから何らかのスイッチ等の操作が行われる場合は、ミキサドラム2の洗浄を中断ないし停止する意思があると考えられることから、再び洗浄スイッチ32dが押された場合は、ステップS111に進み、ミキサドラム2の洗浄を強制的に終了する。そして、洗浄スイッチ32dが押されたため洗浄を強制終了した旨を表示部20aに表示し、処理を終了する。
【0099】
ステップS110において、洗浄スイッチ32dが再度押されない場合は、ステップS112に進み、作業者により操作装置32が操作されたか否かが判定される。ミキサドラム2の洗浄が開始されてから操作装置32を介して何らかの操作が行われる場合は、ミキサドラム2の洗浄を中断ないし停止する意思があると考えられることから、操作装置32が操作された場合は、ステップS111に進み、ミキサドラム2の洗浄を強制的に終了する。そして、操作装置32が操作されたため洗浄を強制終了した旨を表示部20aに表示し、処理を終了する。
【0100】
ステップS112において、操作装置32が操作されない場合は、ステップS113に進み、作業者により非常停止スイッチ32cが押されたか否かが判定される。非常停止スイッチ32cが押された場合は、ステップS111に進み、ミキサドラム2の洗浄を強制的に終了する。そして、非常停止スイッチ32cが押されたため洗浄を強制終了した旨を表示部20aに表示し、処理を終了する。非常停止スイッチ32cが押されない場合は、ステップS114へ進む。
【0101】
ステップS114では、設定されたサイクル数が終了したか否かが判定される。まだ、設定されたサイクル数に達していない場合は、ステップS110に戻り、ミキサドラム2の洗浄が継続される。設定されたサイクル数に達した場合は、ステップS115に進み、ミキサドラム2の洗浄が正常に終了した旨を表示部20aに表示し、処理を終了する。
【0102】
このように上述の目標洗浄パターンに従って、ミキサドラム2を回転させることで、車両の振動を抑制しつつミキサドラム2を洗浄することができる。
【0103】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0104】
ミキサドラム洗浄装置100では、投入立上り区間41a及び排出立上り区間42aにおけるミキサドラム2の目標回転数を所定の第1時間変化率で徐々に上昇させ、投入立下り区間41c及び排出立下り区間42cにおけるミキサドラム2の目標回転数を所定の第2時間変化率で徐々に低下させている。
【0105】
このように投入立上り区間41a、投入立下り区間41c、排出立上り区間42a及び排出立下り区間42cにおけるミキサドラム2の目標回転数を、時間の経過とともに徐々に変化するように設定することで、ミキサドラム2の回転方向が切り換わる前後においてミキサドラム2の回転数は時間の経過とともに徐々に変化するように制御されることになる。これによりミキサドラム2の洗浄が行われる際、ミキサドラム2の回転方向が急激に切り換わることが抑制され、結果として、ミキサドラム2の回転方向の切り換わりによる衝撃で車両が振動してしまうことを抑制することができる。
【0106】
以下に、本発明の実施形態の変形例について説明する。
【0107】
上記実施形態では、
図3に示すように、各サイクルにおいて、投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2が同じである。これに代えて、
図7に示すように、サイクル毎に投入側洗浄回転数及び排出側洗浄回転数を変更してもよい。具体的には、投入一定区間41bの回転数が、サイクル毎に、比較的回転数が高い第1投入側洗浄回転数DN3と比較的回転数が低い第2投入側洗浄回転数DN5とに切り換えられ、排出一定区間42bの回転数が、サイクル毎に、比較的回転数が高い第1排出側洗浄回転数DN4と比較的回転数が低い第2排出側洗浄回転数DN6とに切り換えられる。
【0108】
このように洗浄回転数をサイクル毎に切り換えることによって、ミキサドラム2内を移動する水の流れに緩急をつけることができるため、結果として、洗浄力を向上させることができる。
【0109】
また、上記実施形態では、投入側洗浄回転数DN1と排出側洗浄回転数DN2とが同じ回転数に設定される。これに代えて、排出側洗浄回転数DN2を投入側洗浄回転数DN1よりも低い回転数に設定してもよい。このように、排出側洗浄回転数DN2を比較的低い回転数とすることでミキサドラム2の開口部2aから水があふれ出すことを確実に防止することができるとともに、投入側洗浄回転数DN1と排出側洗浄回転数DN2とに差を設けることでミキサドラム2内を移動する水の流れに緩急をつけることができるため、結果として、洗浄力を向上させることができる。
【0110】
また、上記実施形態では、投入立上り区間41a及び排出立上り区間42aにおけるミキサドラム2の目標回転数は一定の時間変化率で直線的に変化している。これに代えて、投入立上り区間41a及び排出立上り区間42aにおけるミキサドラム2の目標回転数の時間変化率は段階的または連続的に変化させてもよく、例えば、投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2に近づくにつれて徐々に小さくなるように変化させてもよい。また、投入立下り区間41c及び排出立下り区間42cにおけるミキサドラム2の目標回転数の時間変化率についても段階的または連続的に変化させてもよい。
【0111】
また、上記実施形態における洗浄中パターンPWでは、投入方向回転パターン41と排出方向回転パターン42とが交互に繰り返される。これに代えて、洗浄中パターンPWは、投入方向回転パターン41と停止状態とを交互に繰り返すものであってもよいし、排出方向回転パターン42と停止状態とを交互に繰り返すものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。また、開始時パターンPSも投入方向に回転させてから一旦停止状態としてもよいし、排出方向に回転させてから一旦停止状態としてもよい。また、終了時パターンPEは、投入方向回転パターン41と同じものに限定されず、排出方向回転パターン42と同じものであってもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、ミキサドラム2の洗浄の終了に関する情報が表示部20aに表示される。これに代えて、ミキサドラム2の洗浄過程や洗浄設定に関する情報を文字や画像で表示可能なモニタを入力部32bとともに操作装置32に設けてもよい。
【0113】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0114】
ミキサドラム洗浄装置100は、車両に回転可能に搭載されたミキサドラム2と、ミキサドラム2を投入方向及び排出方向へ回転駆動可能な駆動装置4と、ミキサドラム2の洗浄指示が入力されると、ミキサドラム2を所定の投入側洗浄回転数DN1で投入方向へ回転させる投入方向回転とミキサドラム2を所定の排出側洗浄回転数DN2で排出方向へ回転させる排出方向回転とを交互に繰り返すように駆動装置4の作動を制御するコントローラ20と、を備え、コントローラ20は、洗浄時のミキサドラム2の目標回転数が設定された目標洗浄パターンを有し、ミキサドラム2の回転数が目標洗浄パターンに従って推移するように駆動装置4を制御し、目標洗浄パターンのミキサドラム2の目標回転数は、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2まで上昇、または、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2から低下するように設定される。
【0115】
この構成では、ミキサドラム2の洗浄が行われる際のミキサドラム2の回転数が、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2まで上昇、または、所定の時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2から低下するように制御される。このように、ミキサドラム2の回転方向が切り換わる前後の少なくとも一方においてミキサドラム2の回転数が時間の経過とともに徐々に変化するように制御されることによってミキサドラム2の回転方向が急激に切り換わることが抑制される。この結果、ミキサドラム2の回転方向の切り換わりによる衝撃で車両が振動してしまうことを抑制することができる。
【0116】
また、目標洗浄パターンのミキサドラム2の目標回転数は、所定の第1時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2まで上昇し、第1時間変化率とは異なる所定の第2時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2から低下するように設定される。
【0117】
ミキサドラム2の回転数の時間変化率を大きくするとミキサドラム2内を移動する水の流れに勢いがつき洗浄力を向上させることができる一方、時間変化率を小さくするとミキサドラム2の回転方向の切り換わり時の衝撃を緩和することができる。この構成では、ミキサドラム2の洗浄が行われる際のミキサドラム2の回転数が、第1時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2まで上昇し、第1時間変化率とは異なる第2時間変化率で投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2から低下するように制御される。このようにミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2まで上昇するときと投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2から低下するときとにおいて時間変化率を異ならせることによって、洗浄力の向上とミキサドラム2の回転方向の切り換わり時の衝撃の低減とを両立させることができる。
【0118】
また、第1時間変化率は第2時間変化率よりも大きく設定される。
【0119】
この構成では、ミキサドラム2の回転数を投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2まで上昇させる際の目標回転数の時間変化率が、ミキサドラム2の回転数を投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2から低下させる際の目標回転数の時間変化率よりも大きく設定される。このように、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2まで上昇する際の目標回転数の時間変化率を大きくすることでミキサドラム2内を移動する水の流れに勢いをつけて洗浄力を向上させることができるとともに、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2から低下する際の目標回転数の時間変化率を小さくすることでミキサドラム2の回転方向の切り換わり時の衝撃を低減させることができる。
【0120】
また、目標洗浄パターンは、ミキサドラム2の洗浄を開始しミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1となるまでのミキサドラム2の目標回転数が設定された開始時パターンを含み、開始時パターンのミキサドラム2の目標回転数は、投入側洗浄回転数DN1に向かって所定の第3時間変化率で上昇し、投入側洗浄回転数DN1に至る前に、第3時間変化率とは異なる所定の第4時間変化率でさらに上昇するように設定される。
【0121】
この構成では、ミキサドラム2の洗浄を開始しミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1となるまでに、ミキサドラム2の回転数の時間変化率が変更される。このように、時間変化率を変更することで、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に緩やかに到達させることが可能となり、結果として、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に到達する際に生じる車両の振動を低減させることができる。
【0122】
また、第4時間変化率は第3時間変化率よりも小さく設定される。
【0123】
この構成では、投入側洗浄回転数DN1に至る前のミキサドラム2の目標回転数の時間変化率が小さく設定される。このように、投入側洗浄回転数DN1に至る前のミキサドラム2の目標回転数の時間変化率を小さくすることで、ミキサドラム2の回転数を投入側洗浄回転数DN1へと緩やかに到達させることが可能となり、結果として、ミキサドラム2の回転数が投入側洗浄回転数DN1に到達する際に生じる車両の振動を低減させることができる。
【0124】
また、コントローラ20は、ミキサドラム2内に投入された水の量に応じて、ミキサドラム2を排出方向へ回転させる時間を変化させる。
【0125】
この構成では、ミキサドラム2を排出方向へ回転させる時間がミキサドラム2内に投入された水の量に応じて変更される。このように、ミキサドラム2を排出方向へ回転させる時間を、ミキサドラム2内に投入された水の量に応じて変更することで、ミキサドラム2の開口部2aから水があふれ出すことを防止しつつ、開口部2a付近に付着した生コンを効率的に除去することができる。
【0126】
また、排出側洗浄回転数DN2は投入側洗浄回転数DN1よりも小さく設定される。
【0127】
この構成では、排出側洗浄回転数DN2が投入側洗浄回転数DN1よりも小さく設定される。このように、排出側洗浄回転数DN2を投入側洗浄回転数DN1よりも小さく設定することで、ミキサドラム2の開口部2aから水があふれ出すことを確実に防止することができるとともに、投入側洗浄回転数DN1と排出側洗浄回転数DN2とに差を設けることでミキサドラム2内を移動する水の流れに緩急をつけ、洗浄力を向上させることができる。
【0128】
また、コントローラ20は、投入方向回転の開始から排出方向回転の終了までを1サイクルとして複数サイクル繰り返してミキサドラム2を回転させ、サイクル毎に投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2の少なくとも一方を変化させる。
【0129】
この構成では、サイクル毎に投入側洗浄回転数DN1及び排出側洗浄回転数DN2の少なくとも一方が変更される。このように、サイクル毎に投入側洗浄回転数DN1や排出側洗浄回転数DN2を変更することでミキサドラム2内を移動する水の流れに緩急をつけ、洗浄力を向上させることができる。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0131】
100・・・ミキサドラム洗浄装置、1・・・ミキサ車、2・・・ミキサドラム、2a・・・開口部、4・・・駆動装置、5・・・油圧ポンプ、6・・・油圧モータ、7・・・減速機、10・・・エンジン、20・・・コントローラ、31・・・パーキングブレーキ、32・・・操作装置