(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】トランスデューサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 19/02 20060101AFI20220831BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H04R19/02
H04R31/00 C
(21)【出願番号】P 2018181451
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 新也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-089496(JP,A)
【文献】特開2014-027756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01L 1/00- 1/26
G01L 25/00
H01L 29/84
H01L 49/00-49/02
H04R 1/00- 1/02
H04R 1/06
H04R 1/20- 1/34
H04R 1/40
H04R 1/44
H04R 3/00
H04R 9/00
H04R 11/00-11/06
H04R 11/14
H04R 13/00-15/02
H04R 17/00
H04R 17/10
H04R 19/00-19/04
H04R 21/00-21/02
H04R 23/00-23/02
H04R 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、
複数の第一貫通孔を備え、前記誘電体層の第一面側に配置される第一電極シートと、
融着材料により形成されており、前記誘電体層のうち前記第一面側の少なくとも一部分として配置され又は前記誘電体層の前記第一面に別部材として接合され、前記誘電体層と前記第一電極シートとを前記融着材料の融着により接合する第一主融着層と、
前記第一電極シートと前記第一主融着層との間に部分的に配置され、前記第一主融着層が前記第一電極シートに融着することを規制し、前記第一電極シートの少なくとも一部を前記第一主融着層の外部に配置させる第一融着規制層と、
を備える、トランスデューサ。
【請求項2】
前記第一融着規制層は、前記融着材料の通過を規制可能な材料により形成されている、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記第一融着規制層の外縁部は、前記第一主融着層に埋設される、請求項1又は2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記第一主融着層は、前記第一融着規制層の存在しない領域において、前記第一電極シートの一部を埋設し、前記第一電極シートの前記一部を前記第一主融着層の外部に露出させないように配置される、請求項1-3の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記第一融着規制層は、前記第一電極シートに非接合状態で配置されている、請求項1-4の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記第一融着規制層は、前記融着材料の軟化点より高い軟化点を有する材料により形成されている、請求項1-5の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記第一融着規制層は、樹脂シートである、請求項6に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
前記トランスデューサは、さらに、
前記第一電極シートのうち前記第一融着規制層により前記第一主融着層の外部に配置している部分に電気的に接続される第一リード線を備える、請求項1-7の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
前記トランスデューサは、さらに、
前記第一融着規制層に面する領域において、前記第一電極シートと前記第一リード線とを電気的に接続した状態で固着し、導電性接合材からなる第一固着層を備える、請求項8に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
前記トランスデューサは、さらに、
前記第一融着規制層に面する領域において前記第一電極シート及び前記第一リード線を被覆する第一接続保護層を備える、請求項8又は9に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
前記トランスデューサは、さらに、
融着材料により形成されており、前記第一接続保護層の少なくとも一部分として配置され又は前記第一接続保護層に別部材として接合され、前記融着材料の融着により前記第一電極シートと前記第一接続保護層とを接合する第一接続融着層を備える、請求項10に記載のトランスデューサ。
【請求項12】
前記第一リード線の導通部は、前記第一融着規制層に面する領域において、前記第一電極シートに絡められている、請求項8-11の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
請求項1-12の何れか一項に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記誘電体層、前記第一主融着層の素材、前記第一融着規制層、前記第一電極シートの順となるように積層することにより積層体を形成し、
前記積層体に対して前記第一電極シートの第一外面側から加熱することにより前記第一主融着層の前記素材を溶融して、前記第一融着規制層に面する領域を除く領域において前記第一主融着層により前記誘電体層と前記第一電極シートとを接合すると共に、前記第一融着規制層に面する領域において前記第一電極シートを露出させた状態とする、トランスデューサの製造方法。
【請求項14】
請求項9に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記誘電体層、前記第一主融着層の素材、前記第一融着規制層、前記第一電極シートの順となるように積層することにより積層体を形成し、
前記積層体に対して前記第一電極シートの第一外面側から加熱することにより前記第一主融着層の前記素材を溶融して、前記第一融着規制層に面する領域を除く領域において前記第一主融着層により前記誘電体層と前記第一電極シートとを接合すると共に、前記第一融着規制層に面する領域において前記第一電極シートを露出させた状態とし、
前記第一融着規制層に面する領域において露出している前記第一電極シートと前記第一リード線とを前記第一固着層により電気的に接続した状態で固着する、トランスデューサの製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記誘電体層、前記第一主融着層の素材、前記第一融着規制層、前記第一電極シートの順となるように積層することにより積層体を形成し、
前記積層体に対して前記第一電極シートの第一外面側から加熱することにより前記第一主融着層の前記素材を溶融して、前記第一融着規制層に面する領域を除く領域において前記第一主融着層により前記誘電体層と前記第一電極シートとを接合すると共に、前記第一融着規制層に面する領域において前記第一電極シートを露出させた状態とし、
前記第一融着規制層に面する領域において前記第一電極シートに前記第一リード線を接続した状態において、前記第一接続保護層により前記第一電極シート及び前記第一リード線を被覆する、トランスデューサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層型ピエゾアクチュエータにおけるワイヤメッシュ形状の外部電極の自由端に、半田付けや溶接によって、リード線を接続する構成が開示されている。特許文献2には、積層型圧電素子における外部電極の端部に、半田や導電性樹脂等の導電性接合材によりリード線を接続し、外部電極の端部とリード線との接続部を樹脂で覆う構成が開示されている。
【0003】
特許文献3には、ポリマー圧電体に多孔シート状の電極が埋設された圧電素子が開示されている。この圧電素子は、ポリマー圧電体フィルム又はシートの表面をアセトン等の有機溶媒で処理し、その後に処理表面に多孔シート状の電極を積層して圧着することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-500486号公報
【文献】特許第5465337号公報
【文献】特許第3105645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献3のように、電極が埋設された状態において、電極にリード線を接続することは容易ではない。本発明は、電極とリード線との接続を容易にすることができるトランスデューサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトランスデューサは、誘電体層と、複数の第一貫通孔を備え、前記誘電体層の第一面側に配置される第一電極シートと、融着材料により形成されており、前記誘電体層のうち前記第一面側の少なくとも一部分として配置され又は前記誘電体層の前記第一面に別部材として接合され、前記誘電体層と前記第一電極シートとを前記融着材料の融着により接合する第一主融着層と、前記第一電極シートと前記第一主融着層との間に部分的に配置され、前記第一主融着層が前記第一電極シートに融着することを規制し、前記第一電極シートの少なくとも一部を前記第一主融着層の外部に配置させる第一融着規制層とを備える。
【0007】
第一融着規制層によって、第一主融着層が第一電極シートの一部に接合されず、第一電極シートの一部が第一主融着層の外部に配置される。従って、第一電極シートに第一リード線等を電気的に接続することが、容易且つ確実となる。
【0008】
また、本発明に係るトランスデューサの製造方法は、前記誘電体層、前記第一主融着層の素材、前記第一融着規制層、前記第一電極シートの順となるように積層することにより積層体を形成し、前記積層体に対して前記第一電極シートの第一外面側から加熱することにより前記第一主融着層の前記素材を溶融して、前記第一融着規制層に面する領域を除く領域において前記第一主融着層により前記誘電体層と前記第一電極シートとを接合すると共に、前記第一融着規制層に面する領域において前記第一電極シートを第一主融着層の外部に配置させた状態とする。当該製造方法によれば、確実に、第一電極シートの一部を第一主融着層の外部に配置させることができる。従って、第一電極シートに第一リード線等を電気的に接続することが、容易且つ確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】トランスデューサを構成する静電シートを示す斜視図である。
【
図2】トランスデューサを構成する静電シートの平面図である。
【
図4】第一例の静電シートにおける
図2のIV-IV断面図であって、静電シートの製造方法における接続保護層配置工程の状態を示す図でもある。
【
図5】第二例の静電シートにおける
図2のIV-IV断面図であって、静電シートの製造方法における接続保護層配置工程の状態を示す図でもある。
【
図7】静電シートの製造方法における積層体形成工程の状態を示す図である。
【
図8】静電シートの製造方法における加圧加熱工程の状態を示す図である。
【
図9】静電シートの製造方法におけるリード線配置工程の状態を示す図である。
【
図10】静電シートの製造方法における固着層形成工程の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.トランスデューサ1の構成)
トランスデューサ1について、
図1~
図6を参照して説明する。トランスデューサ1は、静電型である。つまり、トランスデューサ1は、電極間の静電容量の変化を利用して、振動や音等を発生させるアクチュエータとして機能させることができる。また、トランスデューサ1は、電極間の静電容量の変化を利用して、外部からの押込力等を検出するセンサ(外力検出センサ)、電位を有する導電体の接触又は接近を検出するセンサ(接触接近センサ)として機能させることができる。
【0011】
トランスデューサ1がアクチュエータとして機能する場合には、電極に電圧が印加されることにより、電極間の電位に応じて誘電体が変形し、誘電体の変形に伴って振動が発生する。トランスデューサ1が外力検出センサとして機能する場合には、外部からの押込力や振動や音などの入力に起因して誘電体が変形することにより電極間の静電容量が変化し、電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、外部からの押込力等を検出する。また、トランスデューサ1が接触接近センサとして機能する場合には、電位を有する導電体の接触又は接近により、電極間の静電容量が変化し、変化した電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触又は接近を検出する。
【0012】
図1に示すように、トランスデューサ1は、シート状に形成された静電シートを備える。ただし、トランスデューサ1は、
図1に示す基本構成である静電シートを複数積層するようにしてもよい。トランスデューサ1は、シート本体部10と、第一接続部20と、第二接続部30とにより構成された静電シートを備える。
【0013】
シート本体部10は、静電型のトランスデューサ1として機能するための主要な部分を構成する。シート本体部10は、アクチュエータ又はセンサとして機能する範囲を構成するトランスデューサ部10aと、トランスデューサ部10aの縁に接続される端子部10bとを備える。シート本体部10は、誘電体層11、第一電極シート12、第一主融着層13、第一主保護層14、第二電極シート15、第二主融着層16、第二主保護層17を備える。
【0014】
第一接続部20は、第一リード線21を含み、第一リード線21をシート本体部10に接続する部分を構成する。第一接続部20は、第一リード線21、第一融着規制層22、第一固着層23、第一接続保護層24、第一接続融着層25を備える。第二接続部30は、第二リード線31を含み、第二リード線31をシート本体部10に接続する部分を構成する。第二接続部30は、第二リード線31、第二融着規制層32、第二固着層33、第二接続保護層34、第二接続融着層35を備える。
【0015】
なお、トランスデューサ1は、第二電極シート15に関する要素を備えない構成としてもよい。すなわち、トランスデューサ1は、第二電極シート15、第二主融着層16、第二主保護層17、第二リード線31、第二融着規制層32、第二固着層33、第二接続保護層34を備えない構成としてもよい。この場合、トランスデューサ1を構成する静電シートは、誘電体層11と、第一電極シート12に関する要素とを備える構成となる。すなわち、トランスデューサ1は、シート本体部10として、誘電体層11、第一電極シート12、第一主融着層13、第一主保護層14を備えると共に、第一接続部20を備える。そして、トランスデューサ1は、第二電極シート15に相当する変形不能な導電部材(図示せず)を備える構成とすることもできる。
【0016】
シート本体部10の構成について説明する。誘電体層11は、弾性変形可能な誘電材料により形成される。詳細には、誘電体層11は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより形成されている。誘電体層11は、シート状で、所望の外形に形成されている。誘電体層11は、厚み方向に伸縮すると共に、厚み方向の伸縮に伴って面方向に伸縮する構造を有する。
【0017】
第一電極シート12及び第二電極シート15は、導電性を有しつつ、柔軟性及び面方向に伸縮性を有する。第一電極シート12及び第二電極シート15は、例えば、導電性布である。導電性布とは、導電性繊維により形成された織物又は不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電性材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレン等の樹脂繊維の表面に、銅やニッケルなどをメッキすることにより形成される。
【0018】
第一電極シート12は、繊維により布を形成されることで、複数の第一貫通孔12a(
図2に示す)を備えると共に、柔軟性を有し、面方向に伸縮可能である。第二電極シート15は、第一電極シート12と同様に、複数の第二貫通孔15a(
図2に示す)を備える。
【0019】
図2においては、第一電極シート12及び第二電極シート15は、導電性織物である場合を例にあげるが、導電性不織布を適用することもできる。第一電極シート12は、例えば、
図2に示すように、導電性織物の場合には、導電性繊維を縦糸と横糸として織ることにより形成されている。縦糸と横糸により囲まれる領域が、第一貫通孔12aとなる。第二貫通孔15aも同様である。
【0020】
なお、第一電極シート12が導電性不織布である場合には、第一貫通孔12aが不規則に形成される。また、第一電極シート12及び第二電極シート15は、導電性布の他に、柔軟性及び伸縮性を有する薄膜のパンチングメタルを適用することもできる。この場合、第一貫通孔12a及び第二貫通孔15aは、パンチにより打ち抜かれた部位となる。また、第一電極シート12は、導電性材料を含有し、複数の貫通孔を備えるエラストマーシート(ゴムシートを含む)を適用することもできる。なお、本例において、エラストマーとは、弾性を有する高分子材料であり、ゴム弾性体、及び、ゴム弾性体以外のゴム状を有する弾性体を含む意味で用いている。
【0021】
第一電極シート12及び第二電極シート15は、同程度の大きさに形成され、且つ、誘電体層11の外形と同様の外形に形成されている。ただし、端子部10bにおいては、第一電極シート12及び第二電極シート15は、異なる形状であることが許容される。第一電極シート12は、誘電体層11の第一面(
図1の上面)側に配置される。第二電極シート15は、誘電体層11の第二面(
図1の下面)側に配置される。従って、少なくともトランスデューサ部10aにおいては、第一電極シート12及び第二電極シート15は、誘電体層11を挟んだ状態で、対向して配置されている。
【0022】
ここで、第一電極シート12において、第二電極シート15に対向する側の面を第一内面12bとし、第二電極シート15と反対側の面を第一外面12cとする。また、第二電極シート15において、第一電極シート12に対向する側の面を第二内面15bとし、第一電極シート12と反対側の面を第二外面15cとする。
【0023】
図3に示すように、第一電極シート12は、誘電体層11の第一面側(
図3の上側)に配置されている。第一電極シート12と誘電体層11とは、融着材料により形成された第一主融着層13により接合されている。
【0024】
図3においては、第一電極シート12は、誘電体層11の素材11a(
図7に示す)の第一面側に埋設されている。つまり、誘電体層11のうち第一面側の一部分が、誘電体層11の本体部分と第一電極シート12とを接合する第一主融着層13として機能する。換言すると、第一主融着層13は、誘電体層11のうち第一面側の少なくとも一部分として配置され、第一電極シート12と誘電体層11の本体部分とを接合する。なお、第一主融着層13は、誘電体層11の第一面に別部材として接合され、第一電極シート12と誘電体層11とを接合することもできる。
【0025】
また、上述したように、第一電極シート12は、誘電体層11の素材11aの第一面側に埋設されている。つまり、第一主融着層13は、誘電体層11の本体部分と第一電極シート12の第一内面12bとの境界部位、及び、誘電体層11の本体部分と第一電極シート12の複数の第一貫通孔12aの内周面との境界部位を接合する。
【0026】
さらに、第一主保護層14が、第一電極シート12の第一外面12cに接合した状態で、第一外面12cを被覆している。誘電体層11の素材11aのうち第一面側の一部分が、第一主保護層14として機能する。つまり、第一主保護層14は、第一主融着層13と同様に、誘電体層11の素材11aの第一面側の一部分として配置され、融着材料の融着により第一外面12cを被覆する。なお、第一主保護層14は、誘電体層11の第一面側に別部材として配置され、第一外面12cを被覆することもできる。なお、第一電極シート12の第一外面12cは、外側に露出するようにしてもよい。
【0027】
また、
図3に示すように、第二電極シート15は、第一電極シート12と同様に、誘電体層11の素材11aの第二面側(
図3の下側)に埋設されている。つまり、誘電体層11のうち第二面側の一部分が、誘電体層11の本体部分と第二電極シート15とを接合する第二主融着層16として機能する。換言すると、第二主融着層16は、誘電体層11のうち第二面側の少なくとも一部分として配置され、融着材料の融着により第二電極シート15と誘電体層11の本体部分とを接合する。なお、第二主融着層16は、誘電体層11の第二面に別部材として接合され、融着材料の融着により第二電極シート15と誘電体層11とを接合することもできる。
【0028】
また、上述したように、第二電極シート15は、誘電体層11の素材11aの第二面側に埋設されている。つまり、第二主融着層16は、誘電体層11の本体部分と第二電極シート15の第二内面15bとの境界部位、及び、誘電体層11の本体部分と第二電極シート15の複数の第二貫通孔15aの内周面との境界部位を接合する。
【0029】
さらに、第二主保護層17が、第二電極シート15の第二外面15cに接合した状態で、第二外面15cを被覆している。誘電体層11の素材11aのうち第二面側の一部分が、第二主保護層17として機能する。つまり、第二主保護層17は、第二主融着層16と同様に、誘電体層11の素材11aの第二面側の一部分として配置され、融着材料の融着により第二外面15cを被覆する。なお、第二主保護層17は、誘電体層11の第二面側に別部材として配置され、第二外面15cを被覆することもできる。なお、第二電極シート15の第二外面15cは、外側に露出するようにしてもよい。
【0030】
ここで、
図3においては、第一主融着層13及び第二主融着層16は、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体層11の素材に熱を加えることにより形成されている。そのため、第一主融着層13及び第二主融着層16は、誘電体層11と同一材料成分により構成されている。つまり、誘電体層11の材料成分が実質的に変化することなく、第一主融着層13及び第二主融着層16が形成されている。このことは、第一主融着層13及び第二主融着層16に、揮散型接着剤や有機溶媒等の成分が含まれていないことを意味する。
【0031】
第一接続部20の構成について、
図4及び
図5を参照して説明する。第一リード線21は、導線を絶縁材により被覆する第一リード線本体21aと、先端側に配置されており導線を露出する第一導通部21bとを備える。第一リード線21の第一リード線本体21aは、第一電極シート12における誘電体層11と反対側の面(第一外面12c)側に配置されている。第一リード線21の第一導通部21bは、誘電体層11の第一面側に配置されている。第一導通部21bは、
図4に示すように、第一電極シート12の第一外面12c側に配置してもよい。また、第一導通部21bは、
図5に示すように、第一電極シート12に絡ませて配置してもよい。いずれの場合にも、第一導通部21bは、第一電極シート12に電気的に接続されている。
【0032】
第一融着規制層22は、シート状に形成されており、第一主融着層13を構成する融着材料の通過を規制可能な材料により形成されている。第一融着規制層22は、第一主融着層13を構成する融着材料の軟化点よりも高い軟化点を有する材料により形成されている。軟化点を有しない材料は、無限大の軟化点を有する材料であることに相当する。例えば、第一融着規制層22は、樹脂シート、耐熱紙等により形成されている。
【0033】
第一融着規制層22は、第一電極シート12と第一主融着層13との間に部分的に配置されている。詳細には、第一融着規制層22は、第一リード線21が配置される領域に配置されている。従って、第一融着規制層22は、第一リード線21が配置される領域において、第一主融着層13が第一電極シート12に融着することを規制する。つまり、第一融着規制層22の中央部は、第一主融着層13が存在しない状態とされている。従って、第一融着規制層22は、中央部において、第一電極シート12の少なくとも一部を第一主融着層13の外側に露出させる。
【0034】
ここで、第一融着規制層22の外面における中央部は、第一主融着層13に接合されておらず、且つ、第一電極シート12に非接合状態で配置されている。一方、第一融着規制層22の内面は、第一主融着層13に接合されている。ただし、第一融着規制層22の外面における外縁部は、第一主融着層13に接合されている。つまり、第一融着規制層22の外縁部は、第一主融着層13に埋設されている。従って、第一融着規制層22は、第一主融着層13によって位置決めがされている。
【0035】
従って、第一主融着層13は、第一融着規制層22が存在する領域において、第一電極シート12に接合されていない。従って、第一主融着層13は、第一融着規制層22が存在する領域において、第一電極シート12を外側に露出させている。一方、第一主融着層13は、第一融着規制層22が存在しない領域において、第一電極シート12の一部を埋設し、第一電極シート12の当該一部を外側に露出させないように配置されている。そして、第一電極シート12のうち第一融着規制層22により外側に露出している部分に、第一リード線21の第一導通部21bが電気的に接続される。
【0036】
第一固着層23は、第一融着規制層22に面する領域において、第一リード線21の第一導通部21bを第一電極シート12に電気的に接続した状態で、第一リード線21の第一導通部21bを第一電極シート12に固着させる。第一固着層23は、例えば、半田や導電性樹脂等の導電性接合材である。つまり、第一固着層23により、第一リード線21の第一導通部21bが、第一電極シート12に対して、広範囲に且つ確実に、電気的に接続される状態となる。
【0037】
第一接続保護層24は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより、シート状に形成されている。第一接続保護層24は、
図2に示すように、第一リード線21のうち第一電極シート12上に位置する領域、及び、第一固着層23が存在する領域に対応する形状に形成されている。第一接続保護層24は、
図4及び
図5に示すように、第一電極シート12における誘電体層11と反対側の面(第一電極シート12の第一外面12c)に配置され、第一リード線21の第一導通部21b及び第一固着層23を保護する。特に、第一接続保護層24は、第一電極シート12のうち第一主保護層14により保護されていない部分を被覆する。
【0038】
そして、第一接続保護層24は、融着材料により形成された第一接続融着層25により接合されている。詳細には、
図4-
図6に示すように、第一接続保護層24は、第一接続融着層25により、第一リード線21、第一電極シート12の第一外面12cのうち露出している部分、及び、第一固着層23に接合されている。
【0039】
つまり、第一接続融着層25は、第一接続保護層24と第一リード線21との境界部位を接合する。さらに、第一接続融着層25は、第一接続保護層24と第一電極シート12との境界部位を接合する。詳細には、第一接続融着層25は、第一電極シート12の第一外面12c及び第一貫通孔12aの内周面を含む境界部位を接合する。
【0040】
ここで、本例においては、第一接続保護層24の一部分が、第一リード線21等と接合する第一接続融着層25として機能する。換言すると、第一接続融着層25は、第一接続保護層24の一部分として配置され、第一リード線21等と第一接続保護層24とを接合する。なお、第一接続融着層25は、第一接続保護層24に別部材として接合され、第一リード線21等と第一接続保護層24とを接合することもできる。
【0041】
さらに、第一接続保護層24の一部は、第一接続融着層25により、第一主保護層14にも接合されている。従って、第一接続保護層24は、シート本体部10と一体的となる。さらに、第一接続保護層24の一部は、第一電極シート12の第一貫通孔12aを介して、第一接続融着層25により、第一融着規制層22にも接合されている。
【0042】
第一接続融着層25は、上述したように、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一接続保護層24の素材に熱を加えることにより形成されている。そのため、第一接続融着層25は、第一接続保護層24と同一材料成分により構成されている。つまり、第一接続保護層24の材料成分が実質的に変化することなく、第一接続融着層25が形成されている。このことは、第一接続融着層25に、揮散型接着剤や有機溶媒等の成分が含まれていないことを意味する。
【0043】
ここで、上記の例においては、第一固着層23により第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとが電気的に接続されることとした。この他に、トランスデューサ1は、第一固着層23を有しない構成とすることもできる。つまり、第一接続保護層24が、第一接続融着層25により、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとを電気的に接続させた状態で固着することもできる。この場合、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとが接触した状態において、第一接続保護層24が、第一接続融着層25により、第一電極シート12及び第一リード線21の第一導通部21bとに接合する。さらに、第一接続保護層24が、第一接続融着層25により、第一融着規制層22に接合することにより、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとを確実に固着させることができる。
【0044】
第二接続部30の構成について説明する。第二接続部30は、実質的に、第一接続部20と同様の構成からなる。第二リード線31は、導線を絶縁材により被覆する第二リード線本体31aと、導線を露出する第二導通部31bとを備える。第二リード線31の第二リード線本体31aは、第二電極シート15における誘電体層11と反対側の面(第二外面15c)側に配置されている。第二リード線31の第二導通部31bは、誘電体層11の第二面側に配置されている。第二導通部31bは、第二電極シート15の第二外面15c側に配置してもよいし、第二電極シート15に絡ませて配置してもよい。そして、第二導通部31bが、第二電極シート15に電気的に接続されている。
【0045】
第二融着規制層32、第二固着層33、第二接続保護層34、第二接続融着層35は、それぞれ、第一融着規制層22、第一固着層23、第一接続保護層24、第一接続融着層25と実質的に同様に構成される。そのため、これらの詳細な説明は省略する。
【0046】
(2.静電シートの製造方法)
トランスデューサ1を構成する静電シートの製造方法について、
図4、
図5、
図7-
図10を参照して説明する。以下において、主として、シート本体部10及び第一接続部20を含む部分について説明する。ここで、第二接続部30は、第一接続部20と同様に製造されるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
まず、シート本体部10を構成する誘電体層11の素材11a、第一電極シート12、及び、第二電極シート15を準備する。ここで、誘電体層11の素材11aは、
図7の下面側から、第二主保護層17の素材、第二主融着層16の素材、誘電体層11、第一主融着層13の素材、及び、第一主保護層14の素材を構成する。
【0048】
さらに、第一接続部20を構成する第一リード線21、第一融着規制層22、第一接続保護層24の素材を準備する。ここで、第一接続保護層24の素材は、第一接続融着層25の素材、第一接続保護層24を構成する。さらに、第二接続部30を構成する第二リード線31、第二融着規制層32、第二接続保護層34の素材を準備する。ここで、第二接続保護層34の素材は、第二接続融着層35、第二接続保護層34を構成する。
【0049】
次に、
図7に示すように、(a)第二電極シート15、(b)誘電体層11の素材11a、(c)第一融着規制層22、(d)第一電極シート12の順に積層することにより、積層体が形成される(積層体形成工程:S1)。つまり、
図7においては、第二電極シート15、第二主保護層17の素材、第二主融着層16の素材、誘電体層11、第一主融着層13の素材、第一主保護層14の素材、第一融着規制層22、第一電極シート12の順となるように積層されている。
【0050】
また、図示しないが、第一融着規制層22から誘電体層11の素材11aの面方向にオフセットされた部位においては、第一融着規制層22と表裏対象となるように、第二電極シート15側に第二接続部30を構成する第二融着規制層32が配置されている。
【0051】
続いて、積層体全体が、厚み方向に加圧されながら、加熱される(加圧加熱工程:S2)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体層11の素材11aの第一面側が溶融する。そうすると、
図8に示すように、第一融着規制層22に面する領域を除く領域において、第一電極シート12が誘電体層11の素材11aの第一面側に埋設される。このようにして、誘電体層11の素材11aの一部分が、第一主融着層13を形成し、誘電体層11と第一電極シート12とを接合する。つまり、第一融着規制層22に面する領域を除く領域において、第一主融着層13が、誘電体層11と第一電極シート12とを接合する。さらに、第一融着規制層22に面する領域を除く領域において、誘電体層11の素材11aの一部分が、第一電極シート12の第一外面12c側を被覆することにより、第一主保護層14が形成される。
【0052】
さらに、第一融着規制層22に面する領域において、誘電体層11の素材11aが、第一主融着層13を形成し、誘電体層11と第一融着規制層22の内面とを接合する。ここで、第一融着規制層22は、第一主融着層13が第一電極シート12に融着することを規制する。そのため、第一融着規制層22によって、第一主融着層13が第一電極シート12の一部に接合されず、第一電極シート12の一部が第一主融着層13の外部に露出した状態で配置される。
【0053】
そして、第一融着規制層22の外面側の少なくとも中央部には、第一主融着層13は存在しない。一方、第一融着規制層22の外面側の外縁部には、第一主融着層13が回り込んで配置される。つまり、第一融着規制層22の外縁部は、第一主融着層13により埋設される。
【0054】
さらに、誘電体層11の素材11aの第二面側の一部分が溶融する。そうすると、図示しないが、第二融着規制層32に面する領域を除く領域において、第二電極シート15が誘電体層11の素材11aの第二面側に埋設される。つまり、第二融着規制層32に面する領域を除く領域において、第二主融着層16が、誘電体層11と第二電極シート15とを接合する。さらに、第二融着規制層32に面する領域を除く領域において、誘電体層11の素材11aの一部分が、第二電極シート15の第二外面15c側を被覆することにより、第二主保護層17が形成される。また、第二融着規制層32に面する領域においては、第一融着規制層22に面する領域と同様である。
【0055】
続いて、
図9に示すように、第一リード線21が第一電極シート12の第一外面12c側に配置される(リード線配置工程:S3)。第一リード線21と同様に、第二リード線31が第二電極シート15側に配置される(リード線配置工程:S3)。
【0056】
ここで、
図4に示す第一例の静電シートを製造する場合には、
図9に示すように、第一リード線21の第一導通部21b全体が、第一電極シート12の第一外面12c側に配置される。このようにして、第一リード線21の第一導通部21bが、第一電極シート12に電気的に接続された状態となる。
【0057】
一方、
図5に示す第二例の静電シートを製造する場合には、図示しないが、第一リード線21の第一導通部21bは、第一電極シート12に絡ませて配置される。なお、
図5に示す第二例の静電シートを製造する場合には、第一リード線21の第一導通部21bを第一電極シート12に絡ませる工程は、上述した加圧加熱工程の前に予め行うこともできる。
【0058】
続いて、
図10に示すように、第一リード線21の第一導通部21bと第一電極シート12との接続領域において、半田又は導電性樹脂等の導電性接合材により、第一固着層23が形成される(固着層形成工程:S4)。つまり、第一融着規制層22に面する領域において露出している第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとが、第一固着層23により電気的に接続した状態で固着される。第一融着規制層22の存在により第一電極シート12が露出しているため、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとが、容易且つ確実に電気的に接続される。さらに、第一固着層23の形成と同様に、第二リード線31の第二導通部31bと第二電極シート15とが第二固着層33により電気的に接続される(S4)。
【0059】
続いて、
図4及び
図5に示すように、第一融着規制層22に面する領域において、第一接続保護層24によって、第一電極シート12、第一リード線21の第一導通部21b、及び、第一固着層23が被覆される(接続保護層配置工程:S5)。
【0060】
本例においては、第一接続保護層24の素材が、第一電極シート12、第一リード線21の第一導通部21b、及び、第一固着層23の外側に配置され、厚み方向に加圧されながら、加熱される(接続保護層融着工程:S6)。そうすると、第一接続保護層24の素材が溶融することにより形成された第一接続融着層25が、第一電極シート12、第一リード線21の第一導通部21b、第一固着層23、第一融着規制層22を接合する。さらに、第一接続融着層25の一部が、第一主保護層14にも接合される。このようにして、第一接続保護層24が、第一融着規制層22に面する領域を被覆する。
【0061】
また、第一接続保護層24と同様に、第二接続保護層34が、第二接続融着層35により、第二電極シート15、第二リード線31の第二導通部31b、第二固着層33、第二融着規制層32、及び、第二主保護層17の一部分に接合される(接続保護層配置工程:S5、接続保護層融着工程:S6)。
【0062】
従って、第一融着規制層22によって、第一主融着層13が第一電極シート12の一部に接合されず、第一電極シート12の一部が確実に第一主融着層13の外部に配置された状態となる。従って、第一電極シート12に第一リード線21の第一導通部21bを電気的に接続することが、容易且つ確実となる。さらに、第一電極シート12の一部が第一主融着層13の外部に配置されることにより、第一固着層23又は第一接続保護層24により、第一電極シート12と第一リード線21の第一導通部21bとが電気的に接続された状態を固定することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:トランスデューサ、10:シート本体部、10a:トランスデューサ部、10b:端子部、11:誘電体層、11a:素材、12:第一電極シート、12a:第一貫通孔、12b:第一内面、12c:第一外面、13:第一主融着層、14:第一主保護層、15:第二電極シート、15a:第二貫通孔、15b:第二内面、15c:第二外面、16:第二主融着層、17:第二主保護層、20:第一接続部、21:第一リード線、21a:第一リード線本体、21b:第一導通部、22:第一融着規制層、23:第一固着層、24:第一接続保護層、25:第一接続融着層、30:第二接続部、31:第二リード線、31a:第二リード線本体、31b:第二導通部、32:第二融着規制層、33:第二固着層、34:第二接続保護層、35:第二接続融着層