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特許7132814成形装置及びその成形装置による成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】成形装置及びその成形装置による成形方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20220831BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20220831BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B22D17/22 G
B22D17/22 C
B22D17/22 F
B22C9/06 P
B22C9/06 C
B29C33/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018191231
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020059037
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幸典
(72)【発明者】
【氏名】神原 真
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-290232(JP,A)
【文献】特開2007-038454(JP,A)
【文献】実開平05-065459(JP,U)
【文献】実開昭63-000816(JP,U)
【文献】特開2004-298910(JP,A)
【文献】特開2008-080391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B22C 9/06
B29C 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のキャビティを形成可能な第1成形型及び第2成形型と、
前記第1成形型及び第2成形型における前記キャビティの内側に形成されるとともに、前記キャビティと連通する流路を形成可能とされ、当該流路にて前記キャビティ内で生じたガス及び溶湯を流通させ得る第1ブロック及び第2ブロックと、
前記第1ブロック及び第2ブロックの少なくとも一方に形成され、前記流路にて流通したガスを外部に排出可能な排出孔と、
を具備し、前記キャビティに溶湯を流し込んで環状の成形品を得るための成形装置において、
前記第1ブロック及び第2ブロックは、前記流路の形成面が前記キャビティの内周形状に倣った外周形状とされるとともに、前記第1ブロック及び第2ブロックのそれぞれに形成された溝形状を対峙させることにより、前記排出孔の周囲に凹凸状の前記流路を形成するものとされ、且つ、前記溝形状は、前記排出孔を中心として同心状に複数形成されたことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記第1成形型及び第2成形型には、前記キャビティの内側において当該キャビティの内周形状に倣った貫通部がそれぞれ形成されるとともに、当該貫通部に前記第1ブロック及び第2ブロックが配設されたことを特徴とする請求項1記載の成形装置。
【請求項3】
前記第1ブロック又は第2ブロックの略中央位置に前記排出孔が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の成形装置。
【請求項4】
前記キャビティの内周形状及び前記流路の形成面の外周形状は、円形から成ることを特徴とする請求項1~の何れか1つに記載の成形装置。
【請求項5】
環状のキャビティを形成可能な第1成形型及び第2成形型と、
前記第1成形型及び第2成形型における前記キャビティの内側に形成されるとともに、前記キャビティと連通する流路を形成可能とされ、当該流路にて前記キャビティ内で生じたガス及び溶湯を流通させ得る第1ブロック及び第2ブロックと、
前記第1ブロック及び第2ブロックの少なくとも一方に形成され、前記流路にて流通したガスを外部に排出可能な排出孔と、
を具備し、前記キャビティに溶湯を流し込んで環状の成形品を得るための成形装置による成形方法において、
前記第1ブロック及び第2ブロックは、前記流路の形成面が前記キャビティの内周形状に倣った外周形状とされるとともに、前記第1ブロック及び第2ブロックのそれぞれに形成された溝形状を対峙させることにより、前記排出孔の周囲に凹凸状の前記流路を形成するものとされ、且つ、前記溝形状は、前記排出孔を中心として同心状に複数形成され、前記キャビティ内で生じたガスを前記流路を通過させて前記排出孔から外部に排出させることを特徴とする成形装置による成形方法。
【請求項6】
前記第1成形型及び第2成形型には、前記キャビティの内側において当該キャビティの内周形状に倣った貫通部がそれぞれ形成されるとともに、当該貫通部に前記第1ブロック及び第2ブロックが配設されたことを特徴とする請求項記載の成形装置による成形方法。
【請求項7】
前記第1ブロック又は第2ブロックの略中央位置に前記排出孔が形成されることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の成形装置による成形方法。
【請求項8】
前記キャビティの内周形状及び前記流路の形成面の外周形状は、円形から成ることを特徴とする請求項5~7の何れか1つに記載の成形装置による成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティに溶湯を流し込んで環状の成形品を得るための成形装置及びその成形装置による成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに近接又は衝合することによりキャビティを形成可能な固定型及び可動型を有し、キャビティ内にアルミ等の溶湯を流し込んで成形品を得るための成形装置(鋳造装置)は、通常、キャビティ内で生じたガスを外部に放出し得るオーバーフローやベントと称される部位を具備している。しかし、かかるオーバーフローやベントでは、キャビティ内で生じたガスを十分に排出することができない場合があり、ガスが成形品内に残って鋳巣となってしまう虞がある。
【0003】
特に、環状の成形品を成形する場合、キャビティの内側に空気が残り易くなっていることから、従来、キャビティ内で生じたガスを外部に排出するための排出孔をキャビティの内側に設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来の成形装置は、キャビティの内側に凹凸状の流路を構成するブロックを配設し、その流路にてキャビティ内のガスを流通させた後、排出孔から外部に排出し得るよう構成されていた。これにより、キャビティで生じたガスをブロックの流路にて流動させた後、排出孔から外部に排出させることができるとともに、キャビティに流し込まれた溶湯が流路を流通する過程で冷却固化されるので、排出孔まで溶湯が至ってしまうのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-80391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、ブロックに形成された流路にてキャビティの内側からガスを排出させることができるものの、その流路の面積が溶湯を冷却固化させるに足りない場合があった。しかして、溶湯が流路を流れる過程で冷却固化しない場合があり、排出孔まで溶湯が至ってしまい、当該排出孔内で冷却固化して閉塞させてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、キャビティ内で生じたガスを排出孔を介して円滑且つ十分に外部に排出することができるとともに、溶湯が排出孔に至ってしまうのを抑制することができる成形装置及びその成形装置による成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、環状のキャビティを形成可能な第1成形型及び第2成形型と、前記第1成形型及び第2成形型における前記キャビティの内側に形成されるとともに、前記キャビティと連通する流路を形成可能とされ、当該流路にて前記キャビティ内で生じたガス及び溶湯を流通させ得る第1ブロック及び第2ブロックと、前記第1ブロック及び第2ブロックの少なくとも一方に形成され、前記流路にて流通したガスを外部に排出可能な排出孔とを具備し、前記キャビティに溶湯を流し込んで環状の成形品を得るための成形装置において、前記第1ブロック及び第2ブロックは、前記流路の形成面が前記キャビティの内周形状に倣った外周形状とされるとともに、前記第1ブロック及び第2ブロックのそれぞれに形成された溝形状を対峙させることにより、前記排出孔の周囲に凹凸状の前記流路を形成するものとされ、且つ、前記溝形状は、前記排出孔を中心として同心状に複数形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の成形装置において、前記第1成形型及び第2成形型には、前記キャビティの内側において当該キャビティの内周形状に倣った貫通部がそれぞれ形成されるとともに、当該貫通部に前記第1ブロック及び第2ブロックが配設されたことを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の成形装置において、前記第1ブロック又は第2ブロックの略中央位置に前記排出孔が形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか1つに記載の成形装置において、前記キャビティの内周形状及び前記流路の形成面の外周形状は、円形から成ることを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、環状のキャビティを形成可能な第1成形型及び第2成形型と、前記第1成形型及び第2成形型における前記キャビティの内側に形成されるとともに、前記キャビティと連通する流路を形成可能とされ、当該流路にて前記キャビティ内で生じたガス及び溶湯を流通させ得る第1ブロック及び第2ブロックと、前記第1ブロック及び第2ブロックの少なくとも一方に形成され、前記流路にて流通したガスを外部に排出可能な排出孔とを具備し、前記キャビティに溶湯を流し込んで環状の成形品を得るための成形装置による成形方法において、前記第1ブロック及び第2ブロックは、前記流路の形成面が前記キャビティの内周形状に倣った外周形状とされるとともに、前記第1ブロック及び第2ブロックのそれぞれに形成された溝形状を対峙させることにより、前記排出孔の周囲に凹凸状の前記流路を形成するものとされ、且つ、前記溝形状は、前記排出孔を中心として同心状に複数形成され、前記キャビティ内で生じたガスを前記流路を通過させて前記排出孔から外部に排出させることを特徴とする。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項記載の成形装置による成形方法において、前記第1成形型及び第2成形型には、前記キャビティの内側において当該キャビティの内周形状に倣った貫通部がそれぞれ形成されるとともに、当該貫通部に前記第1ブロック及び第2ブロックが配設されたことを特徴とする。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項5又は請求項6記載の成形装置による成形方法において、前記第1ブロック又は第2ブロックの略中央位置に前記排出孔が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項5~7の何れか1つに記載の成形装置による成形方法において、前記キャビティの内周形状及び前記流路の形成面の外周形状は、円形から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、の発明によれば、第1ブロック及び第2ブロックは、流路の形成面がキャビティの内周形状に倣った外周形状とされたので、キャビティの内側の領域をほとんど流路として利用することができ、キャビティ内で生じたガスを排出孔を介して円滑且つ十分に外部に排出することができるとともに、溶湯が排出孔に至ってしまうのを抑制することができる。
また、第1ブロック及び第2ブロックは、それぞれ溝形状が形成されるとともに、当該溝形状を対峙させることにより、排出孔の周囲に凹凸状の流路を形成するので、キャビティから排出孔に至る流路の面積をより大きく形成することができ、溶湯が排出孔に至ってしまうのをより確実に回避することができる。
【0018】
請求項2、の発明によれば、第1成形型及び第2成形型には、キャビティの内側において当該キャビティの内周形状に倣った貫通部がそれぞれ形成されるとともに、当該貫通部に第1ブロック及び第2ブロックが配設されたので、第1成形型及び第2成形型に対して第1ブロック及び第2ブロックを容易に配設することができる。
【0020】
請求項3、7の発明によれば、第1ブロック又は第2ブロックの略中央位置に排出孔が形成されるので、第1ブロック又は第2ブロックの流路の形成面をより有効に活用することができる。
【0021】
請求項4、8の発明によれば、キャビティの内周形状及び流路の形成面の外周形状は、円形から成るので、流路にて冷却固化したバリの強度を向上させることができ、離型性を向上させることができるとともに、当該バリを一括して除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る成形装置の第1成形型としての固定型を示す平面図
図2図1におけるII-II線断面図
図3】同固定型における第1ブロックを取り外した状態を示す平面図
図4図3におけるIV-IV線断面図
図5】同固定型に取り付けられる第1ブロックを示す平面図及び側面図
図6図5におけるVI-VI線断面図
図7】本発明の実施形態に係る成形装置の第2成形型としての可動型を示す平面図
図8図7におけるVIII-VIII線断面図
図9】同可動型における第2ブロックを取り外した状態を示す平面図
図10図9におけるX-X線断面図
図11】同可動型に取り付けられる第2ブロックを示す平面図及び側面図
図12図11におけるXII-XII線断面図
図13】同固定型と可動型とによって形成されるキャビティ、及び第1ブロック及び第2ブロックによって形成される流路を示す模式図
図14】本発明の実施形態に係る成形装置で成形された成形品を示す平面図及び裏面図
図15図14におけるXV-XV線断面図
図16】本発明の他の実施形態に係る成形装置を示す模式図
図17】本発明の更に他の実施形態に係る成形装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る成形装置は、キャビティに溶融したアルミ等の溶湯を流し込んで環状の成形品(円環状の鋳造品)を得るための鋳造装置であり、図1~13に示すように、固定型D1(第1成形型)及び可動型D2(第2成形型)と、固定型D1に取り付けられた第1ブロックB1(固定入子)及び可動型D2に取り付けられた第2ブロックB2(可動入子)とを具備して構成されている。
【0024】
固定型D1及び可動型D2は、同種複数成形(同種の成形品を複数(本実施形態においては2個)同時に成形)するための金型から成り、これら固定型D1及び可動型D2が合致することにより、環状の成形品W(図14、15参照)の形状が形成された複数のキャビティC(図13参照)を形成可能なものである。なお、固定型D1及び可動型D2は、同種複数成形が可能なものに限らず、同種且つ1つのキャビティCを形成可能なもの、異種且つ複数のキャビティCを形成可能なもの、或いは異種且つ1つのキャビティCを形成可能なものであってもよい。
【0025】
固定型D1は、図1~4に示すように、ビスケット1と、ランナー2と、ゲート3と、製品部4と、オーバーフロー5と、エアベント6とが形成された金型から成り、固定型D1の製品部4と可動型D2の製品部7とが合致してキャビティCが形成されるようになっている。かかる固定型D1におけるキャビティC(製品部4)の内側には、キャビティCの内周形状(円形状)に倣った形状及び寸法の貫通部H1(貫通孔)が形成されており、当該貫通部H1には、第1ブロックB1が挿入されて取り付けられている。
【0026】
可動型D2は、図7~10に示すように、製品部7が形成された金型から成り、固定型D1の製品部4と可動型D2の製品部7とが合致してキャビティCが形成されるようになっている。かかる可動型D2におけるキャビティC(製品部7)の内側には、キャビティCの内周形状(円形状)に倣った形状及び寸法の貫通部H2(貫通孔)が形成されており、当該貫通部H2には、第2ブロックB2が挿入されて取り付けられている。
【0027】
第1ブロックB1及び第2ブロックB2は、既述のように、固定型D1及び可動型D2におけるキャビティCの内側(内径側)に形成される円筒状部材から成る。これら第1ブロックB1及び第2ブロックB2は、貫通部H1、H2にそれぞれ挿通されて各突端面に形成された溝形状B1a、B2aを対峙させ得るよう構成されており、当該溝形状B1a、B2aが対峙することにより、図13に示すように、キャビティCと連通する流路Rを形成し得るようになっている。
【0028】
すなわち、第1ブロックB1の流路Rの形成面(突端面)には、図5、6に示すように、凹部から成る複数の溝形状B1aが同心円状に複数形成されるとともに、第2ブロックB2の流路Rの形成面(突端面)には、図11、12に示すように、凹部から成る複数の溝形状B2aが同心円状に複数形成されており、図13に示すように、固定型D1及び可動型D2にてキャビティCが形成されると、第1ブロックB1及び第2ブロックB2にて凹凸状の流路Rが形成されるのである。そして、この流路Rによって、キャビティC内で生じたガス及び溶湯を流通させ得るようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態に係る第2ブロックB2には、図8、11、12に示すように、その流路Rの形成面の略中央にて開口した排出孔B2bが形成されている。かかる排出孔B2bは、第2ブロックB2の突端面(流路Rの形成面)の略中央位置に形成されるとともに、第2ブロックB2の軸方向に延設されており、流路Rにて流通したガスを外部に排出可能とされている。すなわち、第2ブロックB2の略中央位置に排出孔B2bが形成されるとともに、当該排出孔B2bの周囲に溝形状B2aが複数形成されているのである。
【0030】
しかして、第2ブロックB2の突端面(流路Rの形成面)の略中央位置に排出孔B2bが形成されるとともに、その排出孔B2bの開口を中心として同心円状に複数の溝形状B2aが形成されているので、キャビティCから流れ込んだ溶湯は、溝形状B1a、B2aで構成される流路Rを流通する過程で冷却固化されるとともに、キャビティC内で生じたガスは、排出孔B2bから外部に排出されることとなる。なお、本実施形態に係る排出孔B2bは、第2ブロックB2に形成されているが、第1ブロックB1に形成されていてもよく、第1ブロックB1及び第2ブロックB2の両方に形成されていてもよい。
【0031】
一方、可動型D2には、製品部7と貫通部H2との間の境界には、円弧状の凸部aが形成されるとともに、その一部が切欠きbとされている。凸部aは、ゲート3側に位置してキャビティCと流路Rとを区分けするとともに、切欠きbは、ゲート3と反対側(遠い側)に位置してキャビティCと流路Rとを連通するようになっている。これにより、キャビティCに流し込まれた溶湯は、図1の矢印で示すように、円環状のキャビティCに沿って流れ、ゲート3に対して遠い側の位置(切欠きbの位置)で流路Rに向かって流れるようになっている。
【0032】
ここで、本実施形態に係る第1ブロックB1及び第2ブロックB2は、流路Rの形成面(対峙する突端面)がキャビティCの内周形状(本実施形態においては円形)に倣った外周形状とされている。より具体的には、固定型D1(第1成形型)及び可動型D2(第2成形型)には、キャビティCの内側において当該キャビティCの内周形状(円形)に倣った貫通部(H1、H2)がそれぞれ形成されるとともに、当該貫通部(H1、H2)に第1ブロックB1及び第2ブロックB2が配設されており、これら第1ブロックB1及び第2ブロックB2の外周形状が貫通部(H1、H2)の内周形状、すなわちキャビティCの内周形状に倣って形成されているのである。
【0033】
これにより、キャビティCの内側の部位の略全域に亘って流路Rとすることができ、円環状の成形品の中央の貫通部分を利用して、流路Rの面積を最大限大きく設定することができるので、キャビティCから流路Rに流れ込んだ溶湯は、比較的長い寸法の流路Rを流れる過程で冷却固化することとなり、溶湯が排出孔B2bまで至ってしまうのを抑制することができる。特に、本実施形態においては、排出孔B2bの周囲に複数の円環状の溝形状B2a(凹凸状の流路R)が形成されているので、外側の溝形状B2aから内側の溝形状B2aに亘って順次に溶湯が流れることとなり、溶湯が中心位置の排出孔B2bに至ってしまうのをより確実に抑制することができる。
【0034】
本実施形態に係る成形装置(鋳造装置)によって、図14、15に示すように、バリWaを有した成形品W(鋳造品)を得ることができる。かかるバリWaは、流路Rを流通する過程で冷却固化した部位から成り、本鋳造装置から取り出された後、例えばトリミング加工装置にて他のバリと同様にトリミングされることとなり、円環状の製品を得ることができるようになっている。
【0035】
上記実施形態によれば、第1ブロックB1及び第2ブロックB2は、流路Rの形成面がキャビティCの内周形状に倣った外周形状(円形)とされたので、キャビティCの内側の領域をほとんど流路Rとして利用することができ、キャビティC内で生じたガスを排出孔B2bを介して円滑且つ十分に外部に排出することができるとともに、溶湯が排出孔B2bに至ってしまうのを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る固定型D1(第1成形型)及び可動型D2(第2成形型)には、キャビティCの内側において当該キャビティCの内周形状に倣った貫通部(H1、H2)がそれぞれ形成されるとともに、当該貫通部(H1、H2)に第1ブロックB1及び第2ブロックB2が配設されたので、固定型D1(第1成形型)及び可動型D2(第2成形型)に対して第1ブロックB1及び第2ブロックB2を容易に配設することができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る第1ブロックB1及び第2ブロックB2は、それぞれ溝形状(B1a、B2a)が形成されるとともに、当該溝形状(B1a、B2a)を対峙させることにより、排出孔B2bの周囲に凹凸状の流路Rを形成するので、キャビティCから排出孔B2bに至る流路Rの面積をより大きく形成することができ、溶湯が排出孔B2bに至ってしまうのをより確実に回避することができる。
【0038】
またさらに、第1ブロックB1(又は第2ブロックB2)の略中央位置に排出孔B2bが形成されるとともに、当該排出孔B2bの周囲に溝形状(B1a、B2a)が複数形成されるので、第1ブロックB1又は第2ブロックB2の流路の形成面をより有効に活用することができる。また、本実施形態において、キャビティCの内周形状及び流路Rの形成面の外周形状(第1ブロックB1及び第2ブロックB2の突端面の外周形状)は、円形から成るので、流路Rにて冷却固化したバリWa(図14、15参照)の強度を向上させることができ、離型性を向上させることができるとともに、当該バリを一括して除去することができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、第1ブロックB1及び第2ブロックB2における流路Rの形成面が環状のキャビティCの内周形状に倣った外周形状とされていれば足りる。例えば図16に示すように、環状のキャビティCの内周形状が矩形状とされ、第1ブロックB1及び第2ブロックB2における流路Rの形成面が当該矩形状に倣った外周形状とされたものであってもよい。また、例えば図17に示すように、複数の溝形状B1a、B2aが互いに異なった中心を有するものであってもよい。
【0040】
さらに、本実施形態においては、溶融したアルミ等の溶湯をキャビティCに流し込んで成形品を得る鋳造装置に適用されているが、他の金属を溶融して溶湯としたもの、或いは溶融した樹脂材等をキャビティCに流し込んで成形品を得るダイカスト装置等、他の成形装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
第1ブロック及び第2ブロックの流路の形成面がキャビティの内周形状に倣った外周形状とされた成形装置及びその成形装置による成形方法であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ビスケット
2 ランナー
3 ゲート
4 製品部
5 オーバーフロー
6 エアベント
7 製品部
D1 固定型(第1成形型)
D2 可動型(第2成形型)
a 凸部
b 切欠き(連通部)
H1、H2 貫通部
B1 第1ブロック
B1a 溝形状
B2 第2ブロック
B2a 溝形状
B2b 排出孔
C キャビティ
R 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17