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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】係合部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/08 20060101AFI20220831BHJP
   F16B 21/08 20060101ALI20220831BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20220831BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20220831BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
F16B2/08 U
F16B21/08
F16B19/00 Q
F16B2/08 B
H02G3/30
B60R16/02 623H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018195429
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020063771
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】平川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】高田 和昇
(72)【発明者】
【氏名】大下 慎史
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-89329(JP,A)
【文献】特開2003-134647(JP,A)
【文献】実開平5-45372(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0144899(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/08
F16B 21/08
F16B 19/00
H02G 3/30
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の配策材を取り付けるための取付部材と、
車体側の固定孔に挿入組み付けされる係合部と、前記取付部材に組み付けられる組付け部と、を一体に有した係合部材本体と、
を備え、
前記取付部材は、取り付けた前記配策材の長手方向と前記係合部の前記固定孔への挿入方向との双方に直交する直交方向の両外側に、前記直交方と前記長手方向とのいずれにも弾性変形が可能な弾性変形部を有しており、
前記係合部材本体は、前記組付け部が前記取付部材における前記直交方向の両外側の前記弾性変形部を該直交方向の外側から挟む形で前記取付部材に組み付けられ、それら弾性変形部の前記弾性変形によって前記取付部材に対し前記直交方向と前記長手方向とに移動可能とされていることを特徴とする係合部材。
【請求項2】
前記組付け部は、前記直交方向の両外側の前記弾性変形部に対し、該直交方向の外側から狭圧する形で組み付けられる請求項1に記載の係合部材。
【請求項3】
前記弾性変形部は、前記長手方向の途中区間に前記直交方向の外向きに突出する組付け凸部が設けられる請求項2に記載の係合部材。
【請求項4】
前記弾性変形部は、前記長手方向の途中区間に前記直交方向の内向きに凹む組付け凹部が設けられ、
前記組付け部は、前記直交方向の両外側の前記弾性変形部の前記組付け凹部に嵌合する形で前記取付部材に組み付けられる請求項2に記載の係合部材。
【請求項5】
前記弾性変形部は、前記取付部材の前記長手方向の第一側から少なくとも前記直交方向の外側に延び出す第一側端部と、前記取付部材の前記長手方向の第一側とは逆の第二側から少なくとも前記直交方向の外側に延び出す第二側端部と、それらを連結する前記組付け凹部と、を有した撓み部であり、
前記組付け凹部は、第一側端部の先端から屈曲して前記直交方向の内向きに延び出す第一側内向き延出部と、前記第二側端部の先端から屈曲して前記直交方向の内向きに延び出す第二側内向き延出部と、前記第一側内向き延出部及び前記第二側内向き延出部の内側端同士を接続するよう前記長手方向に延び出す中央延出部と、を有する請求項4に記載の係合部材。
【請求項6】
前記組付け部は、前記取付部材の前記挿入方向の両側と前記直交方向の両側を覆う環状部をなして、前記取付部材の一方の端部から挿通される形で前記弾性変形部に組付け可能であり、
前記取付部材は、前記組付け凹部に組み付けられた前記係合部材本体に対し、前記長手方向の第一側とその逆の第二側とで抜け止めする抜け止め部を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の係合部材。
【請求項7】
前記組付け部は、前記取付部材の前記挿入方向の両側と前記直交方向の両側を覆う環状部をなして、前記取付部材の一方の端部から挿通される形で前記弾性変形部に組付け可能であり、
前記取付部材は、前記長手方向の両外側において外向きに延び出し、別体の結束部材によって前記配策材と共に取り巻かれて結束保持される被結束部を有しており、
前記被結束部は、前記長手方向の端部において前記結束部材が該長手方向の外向きに脱落することを防ぐように突出する脱落阻止部を有する一方、前記脱落阻止部の突出側とは異なる側の面には、前記長手方向の端部において該長手方向の外側ほど薄肉となるように下るテーパー面が形成されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の係合部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は係合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、信号線や電源線を有した配線群からなるワイヤーハーネスを結束状態で車体に保持するために、特許文献1等のようなクランプが使用されている。
【0003】
こうした係合部材は、ベルトやテープ等によってワイヤーハーネスと共に結束保持されることにより、ワイヤーハーネスに対し一体となる形で取り付けられる。そして、ワイヤーハーネスと一体となった係合部材は、係合部が車体側の固定孔に挿入されて車体側に組み付けられる。こうした係合部材は、ワイヤーハーネスに対しその長手方向の所定位置に複数取り付けられ、それぞれが車体側に設けられた対応する位置の固定孔に挿入されて組み付く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-282352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、信号線をなすワイヤーハーネスと、電源線をなす平型配策材とをそれぞれ別に用意して車体に配策されることがある。しかしながら、平型配策材が用いられる場合、従来の係合部材には次のような問題がある。
【0006】
即ち、従来の係合部材は、可撓性を有するワイヤーハーネスに対して取り付けられるため、係合部と車体側の固定孔との間に多少の位置ずれがあったとしても、ワイヤーハーネスを撓ませることによってそのずれを吸収できるから、係合部を車体側の固定孔に確実に挿入させることが可能であった。ところが、剛性の高い平型配策材が採用されると、撓ませることによる位置ずれの吸収はできない。その結果、平型配策材を含む配策材に対し係合部材を取り付ける際に、係合部を車体側の固定孔に確実に挿入できるよう、その取り付け位置をシビアに管理する必要が生じ、平型配策材を含む配策材に対し係合部材を取り付ける作業の効率が大きく落ちる可能性がある。
【0007】
また、可撓性を有するワイヤーハーネスを用いる場合であっても、これまでよりも、より確実に係合部を車体側の固定孔に挿入できることが望まれている。
【0008】
本発明の課題は、配策材を係合部材に取り付けて車体側に配策するにあたって、係合部材の係合部を車体側の固定孔に確実に挿入でき、かつ配策材に対し係合部材を取り付ける際の作業性の低下が生じにくくなるような、係合部材の組み付け構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するための配策材の結束構造は、
長手状の配策材を取り付けるための取付部材と、
車体側の固定孔に挿入組み付けされる係合部と、前記取付部材に組み付けられる組付け部と、を一体に有した係合部材本体と、
を備え、
前記取付部材は、取り付けた前記配策材の長手方向と前記係合部の前記固定孔への挿入方向との双方に直交する直交方向の両外側に、前記直交方向と前記長手方向とのいずれにも弾性変形が可能な弾性変形部を有しており、
前記係合部材本体は、前記組付け部が前記取付部材における前記直交方向の両外側の前記弾性変形部を該直交方向の外側から挟む形で前記取付部材に組み付けられ、それら弾性変形部の前記弾性変形によって前記取付部材に対し前記直交方向と前記長手方向とに移動可能とされていることを特徴とする。
【0010】
上記本発明によれば、取付部材に設けられた上記の長手方向と直交方向とに弾性変形する弾性変形部を設け、その弾性変形部に係合部を有する係合部材本体を組み付けることにより、係合部を配策材に対し上記の長手方向と直交方向とに移動させることが可能になる。このため、係合部と車体側の固定孔との間に多少の位置ずれがあったとしても、弾性変形を利用した係合部の移動によってその位置ずれを吸収できるから、係合部を車体側の固定孔に確実に挿入させることができる。また、上記のように位置ずれを吸収することが可能であるから、高剛性の配策材への係合部材の取り付けも従来と変わりない方法ででき、取り付け作業性が低下することもない。
【0011】
上記本発明における前記係合部材本体の前記組付け部は、前記直交方向の両外側の前記弾性変形部に対し、該直交方向の外側から狭圧する形で組み付けることができる。この構成によれば、組付け部は、弾性変形部を内向きに押し付ける形で組み付くから外れにくい。また、長手方向や直交方向に移動した後も、移動時に作用させた力を解除すれば弾性復帰するため、予め定められた初期位置に自動復帰させることができる。
【0012】
上記本発明における前記取付部材の前記弾性変形部は、前記長手方向の途中区間に前記直交方向の外向きに突出する組付け凸部が設けることができる。この構成によれば、組付け部が弾性変形部を内向きに押し付ける力を増すことができ、組付け部が弾性変形部からより外れにくくなる。一方で、組付け部に組付け凸部を収容する収容凹部を設け、組み付け時に組付け凸部を収容凹部内に収容する構成とすれば、組付け部が弾性変形部からより一層外れにくくなる。
【0013】
上記本発明における前記取付部材の前記弾性変形部は、前記長手方向の途中区間に前記直交方向の内向きに凹む組付け凹部が設けられ、前記組付け部は、前記直交方向の両外側の前記弾性変形部の前記組付け凹部に嵌合する形で前記取付部材に組み付けられるようにできる。この構成によれば、弾性変形を生じる弾性変形部の凹部(組付け凹部)に対し係合部材本体を嵌合によって組み付けることができるから、組み付け状態からの係合部材本体の脱落を確実に防ぐことができる。
【0014】
上記本発明における前記取付部材の前記弾性変形部は、前記取付部材の前記長手方向の第一側から少なくとも前記直交方向の外側に延び出す第一側端部と、前記取付部材の前記長手方向の第一側とは逆の第二側から少なくとも前記直交方向の外側に延び出す第二側端部と、それらを連結する前記組付け凹部と、を有した撓み部であり、前記組付け凹部は、第一側端部の先端から屈曲して前記直交方向の内向きに延び出す第一側内向き延出部と、前記第二側端部の先端から屈曲して前記直交方向の内向きに延び出す第二側内向き延出部と、前記第一側内向き延出部及び前記第二側内向き延出部の内側端同士を接続するよう前記長手方向に延び出す中央延出部と、を有して形成できる。この構成によれば、撓み部(弾性変形部)が、第一側端部、第一側内向き延出部、中央延出部、第二側内向き延出部、第二側端部の順で形成される線状の撓み部となっているため、非常に撓みやすく、係合部の移動がより容易になっている。一方で、第一側内向き延出部、中央延出部、第二側内向き延出部が形成する凹形状の組付け凹部は、撓み部(弾性変形部)の撓み中においても、係合部材本体の組付け部を確実に保持することができ、係合部材本体の脱落を防ぐことができる。
【0015】
上記本発明における前記係合部材本体の前記組付け部は、前記取付部材の前記挿入方向の両側と前記直交方向の両側を覆う環状部をなして、前記取付部材の一方の端部から挿通される形で前記弾性変形部に組付け可能であり、前記取付部材は、前記組付け凹部に組み付けられた前記係合部材本体に対し、前記長手方向の第一側とその逆の第二側とで抜け止めする抜け止め部を有するようにできる。この構成によれば、取付部材において弾性変形しやすい弾性変形部に組み付けられた係合部材の脱落を、第一側及び第二側の抜け止め部が確実に防ぐことができる。また、第一側及び第二側の抜け止め部は、自身の突出方向とは逆向きの弾性変形が可能な弾性変形片をなすため、係合部材本体が取付部材の一方の端部から挿通された際、弾性変形することでその挿通を妨げなくできる。
【0016】
上記本発明における前記係合部材本体の前記組付け部は、前記取付部材の前記挿入方向の両側と前記直交方向の両側を覆う環状部をなして、前記取付部材の一方の端部から挿通される形で前記弾性変形部に組付け可能であり、
前記取付部材は、前記長手方向の両外側において外向きに延び出し、別体の結束部材によって前記配策材と共に取り巻かれて結束保持される被結束部を有しており、前記被結束部は、前記長手方向の端部において前記結束部材が該長手方向の外向きに脱落することを防ぐように突出する脱落阻止部を有する一方、前記脱落阻止部の突出側とは異なる側の面には、前記長手方向の端部において該長手方向の外側ほど薄肉となるように下るテーパー面が形成されるようにできる。なお、被結束部の端部において長手方向の外側ほど薄肉となるとは、当該端部における脱落阻止部の肉厚を含まないものとする。この構成によれば、係合部材本体の環状の組付け部を、板状の取付部の端部から挿通する際に、その端部に突出部をなす脱落阻止部があったとしても、テーパー面があることで容易に挿通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例をなす係合部材に、配策材を取り付けたときの上側から見た斜視図。
図2図1の係合部材を下側から見た斜視図。
図3図1の係合部材の係合部材本体を示した斜視図。
図4図1の係合部材の取付部材を示した斜視図。
図5】本発明の係合部材が挿入固定される車体側の固定孔を示した側面図。
図6図5の固定孔に図1の係合部材の係合部が挿入される前後の状態を、係合部材の正面から見た正面図。
図7図5の固定孔に図1の係合部材の係合部が挿入される前後の状態を、係合部材の側面から見た側面図。
図8図5の固定孔に係合部材の係合部が挿入された状態を配策材側から見た底面図。
図9図1の係合部材本体が取付部材に対し配策材の長手方向の一方側に移動した状態を示した底面図。
図10図1のA-A断面を用いて図9の状態を示した断面図。
図11図1の係合部材本体を取付部材に組み付ける手順を示した平面図。
図12図1のA-A断面と同じ断面を用いて図11を示した断面図。
図13】本発明の係合部材の第一変形例を示した平面図。
図14図13の係合部材を上側から見た斜視図。
図15図14の取付部材を示した斜視図。
図16】本発明の係合部材の第二変形例を示した平面図。
図17図16の取付部材を示した平面図。
図18】本発明の係合部材の第三及び第四変形例を示した平面図。
図19】本発明の第三実施例の取付部材を示した平面図。
図20】本発明の第四実施例の取付部材を示した平面図。
図21】本発明の係合部材の第五変形例を示した斜視図。
図22図21の取付部材を示した平面図。
図23】本発明の係合部材の第六変形例を示した底面図。
図24図23の取付部材を示した底面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施例では、図1に示すように、第一の配策材をなす可撓性配策材2と、第二の配策材をなし、可撓性配策材2よりも高剛性で平板状の平型配策材3と、長手状の配策材2、3を結束する結束部材5R、5Lと、配策材2、3を取り付けるための取付部材410と、車体100(図6及び図7参照)側に組み付けるための係合部40と取付部材410を組み付けるための組付け部48とを有した係合部材4と、を備えた配策材の結束構造1が形成される。
【0020】
可撓性配策材2は、長手状に延出する複数の配線が束をなした可撓性を有する部材である。ここでの可撓性配策材2は、信号線を形成するワイヤーハーネスである。なお、本発明の可撓性配策材2は、ワイヤーハーネスに限るものではない。
【0021】
平型配策材3は、平板状をなして長手状に延出し、可撓性配策材2よりも高剛性かつ低撓性を有する部材である。ここでの平型配策材3は、電源線を形成する金属製のバスバーである。平型配策材3は、外周面を形成する四面がそれぞれ平型配策材3自身の長手方向に延びる平面として形成されている。なお、本発明の平型配策材3は、フラット電線をなすFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuit)でもよく、バスバーに限るものではない。
【0022】
係合部材4から取付部材410を除いた部位である係合部材本体400は、図1図3に示すように、車体100側に組み付けるための係合部40を有する。
【0023】
係合部40は、車体100側に設けられた固定部101の所定の固定孔101H(図5参照)に挿入されることにより、その固定孔101Hに対し、抜け止め状態となるよう係合して組み付くアンカー部である。ここでの係合部40は、図6及び図7に示すように、固定孔101Hに挿入される柱部40Bと、柱部40Bと共に固定孔101Hに挿入され、挿入した先で固定孔101Hの周辺部101Rに対し抜け止め状態となるよう係合する弾性係止片40Aと、その抜け止め状態において固定孔101Hの周辺部101Rを弾性係止片40Aとの間で挟み込む当接部40Cと、を有する。
【0024】
なお、係合部40は、配策材2、3が結束部材5R、5Lによって被結束部41R、41Lと共に結束保持された結束保持状態において、係合部材4の可撓性配策材2側ではなく平型配策材3側(図10の破線Qよりも上側の領域)から突出して形成されている。
【0025】
弾性係止片40Aは、柱部40Bの先端側(図6及び図7の柱部40Bの上側)からその基端側(図6及び図7の柱部40Bの下側)に向かうほど柱部40Bから離れる側に拡がる形状をなし、その基端側が柱部40Bに接近する弾性変形が可能とされている。弾性係止片40Aは、固定孔101Hに対し所定の挿入方向Zに向けて挿入されると、固定孔101Hの周辺部101Rによって孔内向き(図6の矢印R側)に押し込まれ、柱部40Bに接近する弾性変形が生じるが、所定位置まで挿入されると、固定孔101Hの周辺部101Rに対し挿入方向Zの奥側(図6及び図7上側)から係止し、挿入方向Zの逆向きへの抜けが阻止された抜け止め状態となる。
【0026】
当接部40Cは、柱部40Bの基端側から挿入方向Zに向けて皿状に広がる形状をなしており、固定孔101Hの周辺部101Rに対し環状をなして当接する。当接部40Cは、その抜け止め状態において、固定孔101Hの周辺部101Rに対し挿入方向Zの手前側(図6及び図7下側)から当接し、弾性係止片40Aとの間で当該周辺部101Rを挟み込む。これにより、係合部40は、固定孔101Hに対し抜け止め状態となって組み付く。また、当接部40Cは、固定孔101Hの挿入方向Zの奥側(図6及び図7上側)から手前側(図6及び図7下側)へと固定孔101Hを通って進入する異物(埃等)を防ぐ役割も果たしている。
【0027】
また、係合部材本体400は、図1図3に示すように、長手状の配策材2、3を取り付ける取付部材410を組み付けるための組付け部48を有する。
【0028】
組付け部48は、図1及び図2に示すように、それら直交方向Yの両外側の弾性変形部としての撓み部412を、該直交方向Yの外側から挟んで取付部材410に組み付けられる。これにより、係合部材本体400は、図8及び図9に示すように、それら撓み部412の撓み変形(弾性変形)によって取付部材410に対し直交方向Yと長手方向Xとに移動可能とされている。また、組付け部48は、直交方向Yの両外側の撓み部412を挟圧する形で挟んでいるため、係合部材本体40を移動させる力が解除されると撓み状態から復帰(弾性復帰)して、予め定められた初期位置に戻る。ここでの組付け部48は、その組付け凹部412Cに嵌合する形で取付部材410に組み付けられている。
【0029】
組付け部48は、図3に示すように、取付部材410の挿入方向Zの両側と直交方向Yの両側を覆う環状部をなす。係合部材本体400を取付部材410に組み付ける際には、図11及び図12に示すように、環状部をなす係合部材本体400の組付け部48を、板状の取付部材410(取付部材本体411)の一方の端部から挿通させ、撓み部412を撓ませる形で組付け凹部412Cに嵌め込む。
【0030】
取付部材410は、図1図2及び図4に示すように、配策材2、3の長手方向Xに延びる板状の取付部材本体411と、その長手方向Xと係合部40の固定孔101Hへの挿入方向Zとの双方に直交する直交方向Yにおける取付部材本体411の両外側に、直交方向Yと長手方向Xとのいずれにも撓み変形が可能な撓み部412と、を有する。
【0031】
ここでの撓み部412は、図4に示すように、取付部材本体411の長手方向Xの第一側から、直交方向Yの両外側に拡がる形で延び出すとともに、長手方向Xの上記第一側とは逆の第二側へと延び出して取付部材本体411に接続されている。具体的に言えば、撓み部412は、取付部材410の長手方向Xの第一位置から直交方向Yの外側に延び出す第一側端部412Aと、取付部材410の長手方向Xの第一位置とは異なる第二位置から直交方向Yの外側に延び出す第二側端部412Bと、それら端部412A、412Bを連結する組付け凹部412Cと、を有する。
【0032】
組付け凹部412Cは、撓み部412における長手方向Xの途中区間において、直交方向Yの内向きに凹む凹部として設けられている。ここでの組付け凹部412Cは、第一側端部412Aの先端から屈曲して直交方向Yの内向きに延び出す第一側内向き延出部412C1と、第二側端部412Bの先端から屈曲して直交方向Yの内向きに延び出す第二側内向き延出部412C2と、第一側内向き延出部412C1及び第二側内向き延出部412C2の内側端同士を接続するよう長手方向Xに延び出す中央延出部412C0と、を有する。
【0033】
なお、第一側内向き延出部412C1及び第二側内向き延出部412C2には、撓み部412の残余部分よりも厚肉の厚肉部412Dが形成され、残余部分よりも撓みにくくなっている。このため、組付け凹部412Cの形状が崩れにくくなっている。
【0034】
上述したように、取付部材本体411は、図1図2及び図4に示すように、長手方向Xの両外側において外向きに延び出す板状部材であり、中央凹部411Hと、その両外側の被結束部41R,41Lと、を有する。
【0035】
被結束部41R,41Lは、取付部材本体411の長手方向Xの両外側において外向きに延び出し、別体の結束部材5R、5Lによって配策材2、3と共に取り巻かれて結束保持される(図1参照)。被結束部41R,41Lは、長手方向Xの端部において結束部材5R、5Lの長手方向Xの外側からの脱落を阻止するように突出する脱落阻止部41Sを有する。また、被結束部41R,41Lは、脱落阻止部41Sの突出側とは異なる側の面(ここでは裏面)に、長手方向Xの端部において該長手方向Xの外側ほど薄肉となるように下るテーパー面41sが形成されている。ただし、被結束部41R、41Lの端部において長手方向Xの外側ほど薄肉となるとは、当該端部における脱落阻止部41Sの肉厚を含まないものとする。テーパー面41sが設けられていることで、図12に示すように、係合部材本体400の組付け部48を、板状の取付部材410(取付部材本体411)の一方の端部から挿通させやすい。
【0036】
なお、結束部材5R(第一側結束部材)は、図1に示すように、係合部材4の係合部40に対し上記長手方向Xの第一側(図1右側)で、平型配策材3と可撓性配策材2と共に被結束部41Rを結束する。他方、結束部材5L(第二側結束部材)は、第一側とは逆の長手方向Xの第二側(図1左側)で、平型配策材3と可撓性配策材2と共に被結束部41Lを結束する。
【0037】
ここでの結束部材5R、5Lは、可撓性を有した長手状の部材であり、結束対象と対面する側の面(結束対象を取り巻いたときの内周面)が接着面(図示なし)をなすテープ部材である。結束部材5R、5Lは、取り巻いた結束対象との接触部分に対し接着するとともに、自身の両端部が重なる形で互いに接着することにより結束状態となる。
【0038】
このように結束部材5R、5Lは、平型配策材3と可撓性配策材2と共に被結束部41R、41Lを結束することにより、平型配策材3と可撓性配策材2とが係合部材4に取り付けられて保持された結束保持状態とする。
【0039】
また、中央凹部411Hは、取付部材本体411において長手方向Xの撓み部412が設けられる区間を含む所定区間にわたって、挿入方向Z側(ここでは係合部材本体400の係合部40側)に凹む凹部として形成されている(図12参照)。環状部をなす係合部材本体400の組付け部48は、組付け凹部412Cに組み付く際に、挿入方向Zの逆側の壁部をこの中央凹部411Hの内側に進入させることにより、取付部材本体411の長手方向Xの両外側に抜けにくくなる。
【0040】
さらにいえば、取付部材本体411は、図11及び図12に示すように、組付け凹部412Cに組み付けられた係合部材本体400に対し、長手方向Xの第一側とその逆の第二側で抜け止めするとともに弾性変形によってその抜け止め状態が解除される一対の抜け止め部411Tを有する。各抜け止め部411Tは、長手方向Xの第一側と第二側との両側において、組付け凹部412Cに組み付けられた係合部材本体400に対向するよう挿入方向Z側に突出形成されている(図11下図参照)。
【0041】
また、ここでの抜け止め部411Tは、自身の突出方向の逆側に弾性変形可能とされている。具体的にいえば、抜け止め部411Tは、図11に示すように、長手方向Xの外側で取付部材本体411と連結し、その連結部を支点にして長手方向Xの内側が下方に沈むよう弾性変形可能な弾性片として形成されている(図12中央図参照)。さらに、抜け止め部411Tは、自身の突出側の面のうち長手方向Xの外側が、取付部材本体411の主面411aに続くよう長手方向Xの外向きに下る傾斜面411t(図12上図及び中央図参照)として形成されている。これにより、係合部材本体400を取付部材410に組み付ける際に、環状部をなす係合部材本体400の組付け部48が、板状の取付部材410(取付部材本体411)の一方の端部から挿通されるにあたって、環状部をなす組付け部48が抜け止め部411Tの傾斜面411tを押し付け、さらには該傾斜面411t上を摺動して、抜け止め部411Tを下方に押し下げることにより(図12中央図参照)、抜け止め部411Tを乗り越えて、組付け凹部412Cに組み付く。抜け止め部411Tは、組付け凹部412Cを越えるのに伴い弾性復帰して、組付け凹部412Cに組み付いた係合部材本体400を抜け止め状態とする(図12下図参照)。
【0042】
ところで、図6及び図7には、長手状の配策材2、3を保持する係合部材4を車体100側の固定孔101Hに挿入して組み付ける係合部材4の組み付け構造10が示されている。この組み付け構造10において、固定孔101Hは、図5に示すように、予め定められた長幅方向Hに長く開口する長孔形状をなしており、係合部材4の係合部40は、図7下図に示すように、その固定孔101Hに挿入されて係合して組み付けられている。
【0043】
図6及び図7に示すように、係合部40は、固定孔101Hに挿入されるときの先頭面40Ba(挿入方向Zの前方側の先端面)が、外周側ほどその挿入方向Zの後方側に位置するように傾斜した傾斜面をなす。これにより、係合部40を車体100側の固定孔101Hに挿入する際に、係合部40の挿入方向Zの先端が固定孔101Hの内側にさえ位置していれば、係合部材4を挿入方向Zに押し込んでいくだけで、固定孔101Hの内縁が傾斜面をなす先頭面40Ba上を滑って、矢印Z0のような方向に沿って挿入が進む。このとき、係合部40は、固定孔101Hの内縁によって押し付けられるが、上述したように係合部材4は2方向X、Yへの位置移動が可能となっているので、押し付けに伴い自らの位置を変えながら係合部40を挿入可能な位置まで到達させることができる。そして、最終的に係合部40は、固定孔101H内に挿入係止される形で車体100側に組み付けられる。
【0044】
また、図1に示すように、係合部40が固定孔101Hに挿入されて組み付けられた際に、係合部材本体400において固定孔101Hに挿入されない非挿入部(ここでは係合部40の組付け部48)は、直交方向Yにおいて配策材2、3よりも外側に突出する突出部48Y、48Yを有する。この構成によれば、係合部材4が車体100の固定孔101Hに組み付けられた状態であっても、図8に示すように、固定孔101Hの挿入方向Zの手前側から(即ち、係合部材4を組み付ける作業者の側から)、突出部48Y、48Yを視認することができる。
【0045】
また、固定孔101Hの孔周辺部101Rは、図8に示すように、係合部40が挿入されてくる側の面101aの、固定孔101Hを挟んだ直交方向Yの双方の側において、該固定孔101Hの長幅方向Hの中間位置から直交方向Yに所定距離離れた位置に目印部101Q、101Qを有するように形成される。この構成によれば、直交方向Yにおける突出部48Yと目印部101Qとの対向間隔によって、係合部40が固定孔101Hに対し直交方向Yにおいてどの位置に組み付いているのか、目印部101Q、101Qのうちのどちら側に偏った位置で組み付いているのかがわかりやすい。また、固定孔101Hに対する係合部40の組み付いた位置は、係合部40を挿入組み付けした作業者の側から見ることができる利点もある。目印部101Q、101Qは、凹凸により形成することができ、ここでは面101aに対し円筒状に凹む凹部として形成されている。
【0046】
また、ここでの突出部48Yは、図3に示すように、上記非挿入部(ここでは組付け部48)から直交方向Yの双方の側に突出形成され、目印部101Qは、図8に示すように、固定孔101Hを挟んだ直交方向Yの双方の側に設けられている。そして、それら突出部48Y、48Y及び目印部101Q、101Qは、固定孔101Hを係合部40が挿入されてくる側から正面視したときに、直交方向Yに延びる同一直線上に位置して見える。つまり、突出部48Y、48Y及び目印部101Q、101Qは、直交方向Yに直線状に並んでいるから、それらの対向間隔をより把握しやすくなっている。
【0047】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0048】
以下、上記した実施例とは別の実施例やそれら実施例の変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と、下記変形例及び別実施例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0049】
例えば、本発明において可撓性配策材2を省略し、平型配策材3のみとすることが可能である。逆に平型配策材3を省略し、可撓性配策材2のみとすることも可能である。
【0050】
また、上記実施例における被結束部は、被結束部41R、41Lの2つであるが、1つであってもよい。また、上記実施例において、結束部材5R、5Lは、それぞれ第一側結束部材と第二側結束部材として機能するが、いずれか一方のみであってもよい。
【0051】
また、撓み部412は、上記実施例のような形状に限るものではない。例えば、組付け凹部412Cが凹部(凹形状)をなしていないものでもよく、例えば図13図15に示すように、第一側端部412Aと第二側端部412Bとを連結する中間部412Eを非凹形状(ここでは直線状)としてもよい。この場合、例えば図14のように、撓み部412を若干撓ませる形で係合部材本体400を非凹形状をなす中間部412Eに組み付けて、係合部材本体400の直交方向Yの移動に伴い撓み部412が撓む構成でもよいし、撓み部412の中央を直交方向Yに撓ませて挟圧する形で係合部材本体400を組み付けて、係合部材本体400の直交方向Yと長手方向Xのそれぞれの移動に伴い撓み部412が撓む構成(図示なし)でもよい。
【0052】
また、上記実施例の撓み部412は、取付部材本体411の長手方向Xの第一側からその逆の第二側へと延び出し、延び出した先で取付部材本体411と接続しているが、図16及び図17に示すように、第二側で取付部材本体411と非接続とされていてもよい。
【0053】
また、上記実施例の撓み部412は、取付部材本体411の直交方向Yの両側にそれぞれ1つずつ形成されていたが、図18に示すように、取付部材本体411の直交方向Yの両側、かつ長手方向Xの第一側と第二側に併設されて、それらにまたがるよう係合部材本体400の組付け部48が組み付いてもよい。また、長手方向Xの第一側と第二側に併設される撓み部412は、図19に示すように、両端が取付部材本体411と接続されていてもよいし、図20に示すように、一端側が取付部材本体411と非接続とされていてもよい。
【0054】
また、上記実施例の撓み部412は、例えば図21及び図22に示すように、長手方向Xの途中区間において直交方向Yの外向きに突出する組付け凸部412Fが設けることができる。この構成によれば、係合部材本体400の組付け部48が撓み部412を内向きに押し付ける力を増すことができる。一方で、組付け部48には、直交方向Yの両端において、係合部材本体400が取付部材410に組み付けられる際に組付け凸部412Fを直交方向Yの内側から収容する収容部48Fを設けことができる。ここでの収容部48Fは、直交方向Yの両端を貫通して形成され、組付け凸部412Fが内側から挿通されているが、直交方向Yの両端の内壁面から内向きに凹む凹部として形成してもよい。
【0055】
また、上記実施例の撓み部412は、取付部材本体411の長手方向Xの第一側からその逆の第二側へと延び出すように形成されているが、図24に示すように、取付部材本体411の直交方向Yの両外側から外向きに膨出形成された弾性変形部413としてもよい。この場合、弾性変形部413は、エラストマー等によって形成され、取付部材本体411に対し一体化されている。係合部材本体400は、図23に示すように、それら弾性変形部413の中間部を狭んで圧縮変形させる形で組み付けられる。この場合も、係合部材本体400は、弾性変形部413の弾性変形を利用することで取付部材本体411に対し長手方向Xと直交方向Yのいずれにも移動可能となる。なお、ここでの弾性変形部413には、直交方向Yの内向きに凹む組付け凹部413Cが設けられており、係合部材本体400は、この組付け凹部413Cに組付け部48を嵌合させる形で取付部材410に組み付けられている。
【符号の説明】
【0056】
1 配策材の結束構造
10 係合部材の組み付け構造
2 可撓性配策材
3 平型配策材
4 係合部材
400 係合部材本体
40 係合部
48 組付け部
410 取付部材
411 取付部材本体
411T 抜け止め部
41R,41L 被結束部
41S 脱落阻止部
41s テーパー面
412 撓み部(弾性変形部)
412C 組付け凹部
412C0 中央延出部
412C1 第一側内向き延出部
412C2 第二側内向き延出部
413 弾性変形部
100 車体
101H 固定孔
X 長手方向
Y 直交方向
Z 挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
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