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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】癌の治療のための合理的併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/52 20060101AFI20220831BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220831BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 45/06 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
A61K31/52 ZMD
A61K31/337
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
G01N33/574 A
A61K45/06
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018536719
(86)(22)【出願日】2016-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 US2016055594
(87)【国際公開番号】W WO2017062520
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-10-04
(31)【優先権主張番号】62/237,470
(32)【優先日】2015-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チオシス, ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】タルドーン, トニー
(72)【発明者】
【氏名】シュレスタ, リザ
(72)【発明者】
【氏名】コーレン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス-ダガマ, エリカ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロディナ, アナ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】Blood (2007) vol.110, issue 11, 1399
【文献】Cancer Chemother. Pharmacol. (2012) vol.69, issue 4, p.1089-1097
【文献】Cancer Res. (2003) vol.63, issue 9, p.2139-2144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 45/06
A61P 35/00
A61P 35/02
A61K 31/52
A61K 31/337
G01N 33/574
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PU-H71又はその薬学的に許容される塩を含む、癌を治療するための組成物であって、前記組成物がタキサンによる前処置後に癌患者投与されることを特徴とし、前記タキサンが、エピシャペロームの形成を増大するために前記組成物の投与前の十分な時点で投与され、前記タキサンは、前記PU-H71又はその薬学的に許容される塩の投与前少なくとも6時間から24時間以内に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
癌を治療するための組成物であって、PU-H71又はその薬学的に許容される塩を含み、前記組成物が、エピシャペロームの形成を増大するために前記組成物の投与前の十分な時点でタキサンを受けている癌患者に投与され、前記タキサンは、前記PU-H71又はその薬学的に許容される塩の投与前少なくとも6時間から24時間以内に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
癌を治療するための組成物であって、タキサンを含み、前記組成物が、PU-H71又はその薬学的に許容される塩を受けている癌患者に、エピシャペロームの形成を増大するために前記PU-H71又はその薬学的に許容される塩の投与前の十分な時点で投与され、前記タキサンは、前記PU-H71又はその薬学的に許容される塩の投与前少なくとも6時間から24時間以内に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項4】
前記PU-H71の塩がHCl塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物がHSP70阻害剤と共に投与されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記HSP70阻害剤が前記タキサンの後に投与されることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記HSP70阻害剤が、前記PU-H71の前記投与と同時に又はその前に投与されることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記癌が、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
癌を治療するための組み合わせ物であって、タキサンと、PU-H71又はその薬学的に許容される塩とを含み、前記組み合わせ物が7~31日のサイクルにわたって投与されることを特徴とし、前記組み合わせ物が、前記サイクルにわたって少なくとも1回投与されることを特徴とし、前記タキサンの各投与の少なくとも6時間から24時間以内後に前記PU-H71又はその薬学的に許容される塩が投与されることを特徴とする、組み合わせ物。
【請求項10】
前記治療サイクルが7日である、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
前記組み合わせ物が前記治療サイクルの第1日にのみ投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
前記治療サイクルが21日である、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
前記組み合わせ物が前記治療サイクルの第1日にのみ投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項14】
前記PU-H71の塩がHCl塩である、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
前記組み合わせ物がHSP70阻害剤と共に投与されることを特徴とする、請求項~1のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項16】
前記HSP70阻害剤が前記タキサンの後に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項17】
前記HSP70阻害剤が前記PU-H71の投与と同時に又はその前に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項18】
前記癌が、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫から選択される、請求項~1のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項19】
癌を治療する方法において使用するための、PU-H71を含む組成物であって、前記方法が、
癌患者からのサンプル中におけるエピシャペロームの存在を検出するステップ、
前記癌患者に前記組成物を投与するステップ
を含む組成物。
【請求項20】
前記エピシャペロームがタキサンによる前記癌患者の前処置後に検出される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記エピシャペロームが、ネイティブ多量体タンパク質複合体の等電点電気泳動と、その後の1つ又は複数の抗体による固定化複合体のプロービングとによって検出される、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記1つ又は複数の抗体がHSP90抗体を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、タキサンによる前処置後に投与されることを特徴とし、前記タキサンが、前記組成物の投与前少なくとも6時間から24時間以内の、前記エピシャペロームの形成を増大するために前記組成物の投与前の十分な時点で投与されることを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記患者が、前記組成物の投与前に前記エピシャペロームの形成を増大するために前記組成物の投与前の十分な時点でタキサンを受けている、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
PU-H71又はその薬学的に許容される塩を含む、癌を治療するための組成物であって、前記組成物が7~31日のサイクルにわたって投与されることを特徴とし、前記組成物が、前記サイクルにわたって少なくとも1回投与されることを特徴とし、前記組成物は、タキサンと組み合わせて投与するものであり、前記タキサンの各投与の少なくとも6時間から24時間以内後に前記組成物が投与されることを特徴とする、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年10月5日に提出された米国仮出願第62/237,470号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の恒常性は、シャペローム、分子シャペロン及びコシャペロンのネットワーク並びにそれらの機能を補助する折り畳み酵素の協調的作用によって維持される。哺乳動物の細胞では、200超の遺伝子が、細胞の総ポリペプチド質量の計約10%を占めるシャペロームのメンバーをコードする。これらの大部分は、ヒートショックタンパク質(HSP)であり、シャペローム質量の50~60%を構成するHSP90及びHSP70を含む。癌で複製による不死化を可能にするものなどの異常細胞プロセスは、プロテオーム機能不全により課された負荷を解消するためにシャペロームを抑制すことができる。しかしながら、逸脱したストレスシャペローム種は、依然として十分に特性決定されておらず、そのため、疾患生物学における重要な発展が妨げられている。
【0003】
恒常性を維持するために、細胞は、明確な機能を実行するようにプログラムされた数千のタンパク質からなる複雑な分子機構を使用する。誤発現又は突然変異によるこれらの経路の異常調節は、悪性の表現型を付与する生物学的利点をもたらし得る。細胞レベルでこうした異常調節は有利であり得る(すなわち、生存率を高める)が、分子レベルでは、これにより、細胞は、これらのタンパク質の安定性及び機能を維持することにエネルギーを使う必要がある。これらのタンパク質を擬似安定状態で維持するために、癌細胞は、HSP90をはじめとする分子シャペロンを利用すると考えられる。
【0004】
この恒常性の支持に際して、HSP90は、形質転換された表現型を維持する上で重要な役割を果たすことが認識されている。HSP90とその関連コシャペロンとは、集合的に「クライアントタンパク質」と呼ばれる細胞タンパク質の正しい構造的折り畳みを補助するが、クライアントタンパク質の多くは、細胞増殖、分化、DNA損傷応答、及び細胞生存を制御するシグナル伝達経路のエフェクターである。従って、脱調節タンパク質(例えば、突然変異、異常発現、不適切な細胞転位などによる)への腫瘍細胞嗜癖(addiction)は、極めてHSP90依存性であり得る。
【0005】
様々な癌の形態におけるHSP90療法の根拠は、現在、標準療法に対して抵抗性の疾患に関するものをはじめとする前臨床及び臨床試験によって十分に支持されている。例えば、研究により、HSP90阻害剤に対する特定のHER2+腫瘍の顕著な感受性が証明されている。これらの腫瘍では、17-AAG(タネスピマイシン(Tanespimycin)とも呼ばれる)及び17-DMAG(アルベスピマイシン))は、トラスツズマブ療法後の進行性疾患を有する患者において、並びに特にそうした患者でも応答を誘発した。PU-H71などの他のHSP90阻害剤は、いくつかのトリプルネガティブ乳癌マウスモデルにおいて、臨床前に試験された際、この難治性乳癌サブタイプでこれまで報告された最も強力な標的単剤抗腫瘍効果を送達した。
【0006】
国際公開第2013/009655号パンフレットでは、HSP90発現単独によって指令されない特定の「発癌性HSP90」種の存在量は、HSP90阻害療法に対する感受性を予測させるものであり、従ってHSP90療法のバイオマーカであることが明らかにされた。「発癌性HSP90」は、シャペロン複合体の細胞ストレス特異的形態を代表するHSP90部分として定義され、これは、拡大して、腫瘍細胞環境に構成的に維持され、悪性表現型を維持するのに必要な機能を実行し得る。このような役割は、過剰発現(すなわち、HER2)、突然変異(すなわち、mB-Raf)又はキメラタンパク質(すなわち、Bcr-Abl)のフォールディングを調節するだけでなく、異常に活性化されたシグナル伝達複合体(すなわち、STAT5、BCL6)に関与する分子のスカフォールディング及び複合体形成を促進することでもある。腫瘍は、HSP90発癌性タンパク質のネットワーク上での生存に対して嗜癖性になると同時に、これらのタンパク質は、機能性及び安定性に関して「発癌性HSP90」に依存性になる。この共生相互依存は、HSP90発癌性タンパク質に対する腫瘍の依存が、「発癌性HSP90」に対する依存と等しいことを示唆する。
【0007】
さらに、国際公開第2013/009655号パンフレットでは、HSP90は、悪性細胞において生化学的に異なる複合体を形成することが明らかされた。癌細胞HSP90の主要部分は、正常な細胞と類似する「ハウスキーピング」シャペロンを保持するが、癌細胞中で濃縮又は拡大された機能的に異なるHSP90プール(すなわち、「発癌性HSP90」)は、腫瘍細胞生存、異常増殖特性、並びに浸潤性及び転移性挙動を維持するために必要な発癌性タンパク質と特異的に相互作用する。
癌細胞及び正常細胞におけるHSP90含有シャペローム複合体の構成の不一致は、当初、上方制御されたメンバーの発現であると考えられていた。しかしながら、現在では、後成的修飾がストレス修飾シャペロームの組成物を指令することが提唱されている。以下を参照されたい:Taldone,T.,Ochiana,S.O.,Patel,P.D.&Chiosis,G.Selective targeting of the stress chaperome as a therapeutic strategy.Trends Pharmacol Sci 35,592-603(2014)及びMollapour,M.&Neckers,L.Post-translational modifications of Hsp90 and their contributions to chaperone regulation.Biochimica et biophysica acta 1823,648-655(2012)。そうではなく、特に翻訳後修飾などの化学的修飾、又はコシャペロン及びアダプタータンパク質の前動員による生化学的変更は、ストレスシャペローム種の明らかな特徴であり得る。その組成物及び安定性は、ネイティブ腫瘍に見出される内在性条件に高度に依存性である可能性があり、細胞環境を破壊又は改変して、分析を容易にする方法には制限があるため、こうしたストレスシャペローム種は、既存の実験室的アプローチによる研究を妨げている。
癌細胞におけるHSP90機能の生物学の理解が近年進歩したにもかかわらず、HSP90の根本的な性質、構造及び機能並びにシャペローム内でのその役割は依然として十分にわかっていない。シャペロームについてのより根本的な理解は、癌治療のための新規の標的療法を開発する上で有益となるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/009655号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Taldone,T.,Ochiana,S.O.,Patel,P.D.&Chiosis,G.Selective targeting of the stress chaperome as a therapeutic strategy.Trends Pharmacol Sci 35,592-603(2014)
【文献】Mollapour,M.&Neckers,L.Post-translational modifications of Hsp90 and their contributions to chaperone regulation.Biochimica et biophysica acta 1823,648-655(2012)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、腫瘍細胞に対するタンパク質毒性ストレスを増大する薬剤又はシャペロームの生化学的再接続を誘導する薬剤と組み合わせて、HSP90阻害剤などのシャペロンタンパク質の阻害剤を使用する方法を提供する。
【0011】
本開示では、本発明者らは、悪性形質転換などのストレスの条件下でシャペロームが生化学的に「再接続されて」、安定した生存促進性高分子量複合体を形成することを明らかにする。正常な生理的条件は、シャペロームアセンブリの一時的存在を誘導するが、本発明者らは、特定の癌細胞において安定した多シャペローム集塊(エピシャペロームと呼ばれる)の蓄積を明示するデータを提供する。具体的に、本発明者らは、癌細胞が、異常細胞中での増大した活性を見込んで、その全ての付随物(コシャペロン及び補助因子)と共に事前形成されたシャペローム複合体の貯留(reservoir)を有することを示す。さらに、本発明者らは、生化学的に再接続されて、これらの多重シャペローム集塊(エピシャペローム)を形成する癌細胞が、生存のためにエピシャペロームに依存性であることも明らかにする。
【0012】
さらには、本発明者らは、適切なタンパク質毒性ストレスの誘導により、前述の安定した多シャペローム集塊(エピシャペローム)を形成するように癌細胞を誘導し得ることも示す。特定の状況では、タンパク質毒性ストレスは、本明細書で定義するエピシャペローム複合体中に、正常な生理条件下で存在する一過性シャペロームアセンブリを形質転換することができる。他の状況下では、タンパク質毒性ストレスは、既に形成されたエピシャペロームの安定性を増大することができる。いずれの場合にも、タンパク質毒性ストレスは、実際に癌細胞を、生存のためにHSP90並びにエピシャペローム中の他のシャペロン及びコシャペロンタンパク質に対してより依存性にする。本発明者らは、本明細書において、ストレスを受けた癌細胞が、エピシャペロームを形成する少なくとも1つのタンパク質の阻害剤、例えばHSP90阻害剤などによる治療を有意に受けやすいことを明らかにする。そのため、エピシャペロームを形成するタンパク質(例えば、HSP90)の1つの阻害剤を投与する前の十分な時点で腫瘍をタンパク質毒性ストレッサーで前処理することにより、タンパク質毒性ストレッサーで処理しなかった腫瘍と比較して、腫瘍を阻害療法に対して有意に感受性にすることを証明した。加えて、本発明者らは、エピシャペロームを形成するタンパク質の1つの阻害剤を投与する前の十分な時点で腫瘍をタンパク質毒性ストレッサーで前処理することは、細胞毒性ストレス因子と、エピシャペロームを形成するタンパク質の1つ(例えば、HSP90)の阻害剤とを同時に投与するよりも有意に効果的であることも明らかにする。
【0013】
Taxol(登録商標)又はドキソルビシンと17-AAGとを組み合わせて、癌細胞株にアポトーシスを誘導するという報告がある。Muenster et al.Clin.Cancer Res.Vol.7,2228-2236,Aug.2001;Solit et al.Cancer Res.Vol.63,2139-2144,May 2003;及び米国特許第7,211,562号明細書(集合的に「Rosenら」とする)を参照されたい。しかしながら、本開示と異なり、Rosenらは、組合せの効果が細胞中の網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)発現の状態に依存的であることを見出した。特に、Rosenらは、17-AAGによるTaxol(登録商標)誘導のアポトーシス増大が突然変異Rb又はRb陰性細胞中で投与スケジュールと無関係であったことを示す。同様の結果が異種移植片実験で観測された。しかしながら、本発明の方法は、Rb状態に依存的でなく、Rb状態と無関係に優れた結果をもたらす。Rosenらはまた、アポトーシスに対して癌細胞を感受性にする上で細胞周期の役割にも注目する。しかし、本開示は、癌細胞の感受性化をもたらす主要因子としてのエピシャペロームの誘導に関する。
【0014】
さらに、本発明とは対照的に、Rosenらは、いくつかの組合せ、例えばドキソルビシンと17-AAGとの場合、投与の順序が無関係であることを見出した。しかし、続く実施例は、タンパク質毒性ストレッサー(例えば、ドキソルビシン)をHsp90阻害剤の前に投与すると、その逆の順序と比較して投与スケジュール(すなわち、連続的治療)が優れた結果をもたらすことを示す。
【0015】
Rosenらはまた、17-AAGをTaxol(登録商標)と同時に投与した場合とその直後に投与した場合とでは、その組合せがRb-陽性(例えば、野生型Rb)癌細胞に対して同様の結果をもたらすことも述べている。Muenster et al.pg.2234を参照されたい。これに対し、本発明は、タンパク質毒性ストレッサーの後に投与されたHsp90阻害剤が、他の投与スケジュールと比較して予想外に優れた効果をもたらすという認識も包含する。
【0016】
従って、本開示は、特定のタンパク質毒性ストレッサーの投与により癌細胞に対するタンパク質毒性ストレスを増加すると、HSP90阻害療法に対する細胞の感受性が増大するというエビデンスを提供する。タンパク質毒性ストレッサーは、癌細胞を、それらがHSP90並びに他のシャペロン及びコシャペロンタンパク質に対する依存を高める状態に移行させることができる。従って、本開示は、タンパク質毒性ストレッサーとHSP90阻害剤との合理的併用療法を用いて癌を治療する方法を提供し、この併用療法は、タンパク質毒性ストレッサーとHSP90阻害剤との適切なタイミングに依存する。
【0017】
一態様では、本開示は、タンパク質毒性ストレッサーによる前処置後、HSP90の阻害剤を癌患者に投与することによって癌を治療する方法を提供する。エピシャペローム複合体の形成を最大にし、それによって腫瘍をHSP90阻害療法に対して最も脆弱性にするために、タンパク質毒性ストレッサーがHSP90阻害剤の投与前の十分な時点で投与される。これに対し、エピシャペローム複合体が形成されたかなり後の時点でHSP90阻害剤を投与すると、腫瘍は、生存のためにエピシャペロームに対してそれほど依存性ではなくなるため、HSP90阻害剤の効果が軽減され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも1時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも2時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも3時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも4時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも5時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも6時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも7時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも8時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも9時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも10時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも12時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも18時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも24時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与後24時間以内の時点で投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも36時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与後36時間以内の時点で投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも48時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与後48時間以内の時点で投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーは、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、HSP90阻害剤の投与の約1~3時間前、HSP90阻害剤の投与の約2~4時間前、HSP90阻害剤の投与の約3~5時間前、HSP90阻害剤の投与の約2~6時間前、HSP90阻害剤の投与の約3~6時間前、HSP90阻害剤の投与の約4~6時間前、HSP90阻害剤の投与の約4~8時間前、HSP90阻害剤の投与の約4~10時間前、HSP90阻害剤の投与の約5~7時間前等の範囲内の時点で投与される。
【0019】
特定の実施形態では、タンパク質毒性薬剤は、非経口(例えば、静脈内)投与される。こうした実施形態では、HSP90阻害剤は、非経口投与の完了後のある時点で投与される。例えば、HSP90阻害剤は、タンパク質毒性薬剤の経口投与から1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、又は12時間後に投与され得る。いくつかの実施形態では、HSP90阻害剤は、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から18、24、36、又は48時間後に投与され得る。いくつかの実施形態では、HSP90は、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約1~3時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約2~4時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約3~5時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約2~6時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約3~6時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約4~6時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約4~8時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約4~10時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約5~7時間後等の範囲内の時点で投与される。
【0020】
別の実施形態では、シャペロームの生化学的再接続を誘導する細胞にストレスを与える以外の手段により、HSP90又は別のシャペロンタンパク質を誘導して安定なエピシャペローム複合体を形成することができる。例えば、エピシャペローム複合体の安定性は、HSP90の翻訳後修飾(PTM)のモジュレータで癌細胞を前処理することによって増大することができる。1つのこうした実施形態では、翻訳後修飾は、シャペロームタンパク質のリン酸化の量を制限することによって達成される。例えば、ホスファターゼを添加することにより、リン酸基を除去することができる。或いは、HSP90阻害剤の投与前のある時点でキナーゼ阻害剤を添加して、シャペロンタンパク質のリン酸化を低減することができる。1つのこうした実施形態では、HSP90阻害剤の投与前に薬剤PD407824、すなわちチェックポイントキナーゼChk1及びWee1の阻害剤で癌細胞を前処理する。
【0021】
本明細書に開示される方法を用いて、限定されないが、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫を含む様々な癌を治療することができる。
【0022】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、網膜芽細胞腫(Rb)欠失又はRb陰性癌を治療することができる。一部の施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫を含む様々な癌を治療することができ、ここで、癌は、網膜芽細胞腫(Rb)欠失又はRb陰性癌である。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、小細胞肺癌、トリプルネガティブ乳癌、HPV陽性頭部及び頚部癌、網膜芽細胞腫、膀胱癌、前立腺癌、骨肉腫、又は子宮頸癌を治療することができ、ここで、癌は、網膜芽細胞腫(Rb)欠失又はRb陰性癌である。
【0023】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、網膜芽細胞腫(Rb)発現、Rb陽性、及び/又はRb野生型癌を治療することができる。一部の施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、網膜芽細胞腫、骨肉腫、又は小細胞肺癌以外の癌を治療することができる。一部の施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、Rb陽性である、乳癌以外の癌を治療することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、HER2を過剰発現する、乳癌以外の癌を治療することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、Rb陽性であり、且つHER2を過剰発現する、乳癌以外の癌を治療することができる。HER2過剰発現の決定には、適切な基準との比較を使用してもよく、この基準が、一部の実施形態では、中度、低度、又は検出不可能なHER2発現を有する乳癌であり、他の実施形態では、中度、低度、又は検出不可能なHER2発現を有する別の癌であることは理解されるであろう。
【0024】
一実施形態では、HSP90の前に投与されるタンパク質毒性ストレッサーは、化学療法薬である。特定の化学療法試薬としては、限定されないが、微小管安定剤、プロテアソーム阻害剤、抗代謝薬、アントラサイクリン、及びアルキル化剤が挙げられる。化学療法薬は、細胞中に形成されるエピシャペロームのレベルを増加することができる用量で提供される。一実施形態では、化学療法薬は、癌患者に一般に投与される用量で投与され得る。一部の実施形態では、化学療法薬(例えば、Abraxane(登録商標)などのタキサン)は、化学療法薬についての添付文書(例えば、薬剤ラベル)に表示されるのと同じ用量で投与される。別の実施形態では、化学療法薬は、癌患者に典型的に投与される量より少ない用量で投与され得る。例えば、癌患者に投与される化学療法薬の用量は、化学療法薬の添付文書に表示される量の80%、その量の70%、その量の60%、その量の50%、その量の40%、その量の30%、又はその量の20%であってよい。いくつかの実施形態では、化学療法薬は、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、化学療法薬の添付文書に表示される量の20%~80%、化学療法薬の添付文書に表示される量の40%~80%、化学療法薬の添付文書に表示される量の50%~70%、化学療法薬の添付文書に表示される量の50%~60%等の量で投与され得る。
【0025】
こうした一実施形態では、HSP90阻害剤の前に投与される化学療法薬は、微小管安定剤である。具体的な微小管安定剤としては、限定されないが、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、イキサベピロン、ビンクリスチン、ラウリマリド、ジスコデルモリド、及びエポチロンが挙げられる。一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーは、Abraxane(登録商標)などのタンパク質結合パクリタキセル組成物である。他の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーは、クレマフォールを基剤とするパクリタキセル組成物(例えば、Taxol(登録商標))である。
【0026】
別のこうした実施形態では、HSP90阻害剤の前に投与される化学療法薬は、プロテアソーム阻害剤である。具体的なプロテアソーム阻害剤としては、限定されないが、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びCEP-18770(デランゾミブ)が挙げられる。
【0027】
別のこうした実施形態では、HSP90阻害剤の前に投与される化学療法薬は、ペメトレキセド、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、レナリドミド、アピオシリブ、PD407824、及びMK1775から選択される化学療法薬である。
【0028】
一実施形態では、被験者は、本開示に従う投与レジメンの投与前に1つ又は複数の化学療法薬の投与を受けるか又は以前に受けている。患者が特定の化学療法薬の投与レジメンを現在受けている場合、投与レジメンを本開示に従って修正する必要もあり得る。従って、本開示は、癌を治療する方法を提供し、前記方法は、HSP90の阻害剤を癌患者に投与するステップを含み、患者は、エピシャペロームの形成を増大するためにHSP90阻害剤の投与前の十分な時点でタンパク質毒性ストレッサーを受けている。
【0029】
本開示の一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、患者の癌細胞中に存在するHSP90の発癌形態(すなわち、発癌性HSP90)に直接且つ優先的に結合するHSP90阻害剤である。本開示の一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、8-(6-ヨード-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルスルファニル)-9-(3-イソプロピルアミノ-プロピル)-9H-プリン-6-イルアミン(PU-H71)又はその薬学的に許容される塩(例えば、HCl塩)である。PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約5mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与され得る。本開示によれば、タンパク質毒性ストレッサーは、一般に、PU-H71の各投与前に予め定めた時点で投与される。特定の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約20mg/m~60mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約60mg/m~150mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約200mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約250mg/m~300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週2回の投与スケジュールに従って約250mg/m~300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回の投与スケジュールに従って約300mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。
【0030】
PU-H71は、週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回から選択される投与スケジュールに従って約5mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与され得る。本開示によれば、タンパク質毒性ストレッサーは、一般に、PU-H71の各投与前に予め定めた時点で投与される。特定の実施形態では、PU-H71は、週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回から選択される投与スケジュールに従って約20mg/m~60mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回から選択される投与スケジュールに従って約60mg/m~150mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回から選択される投与スケジュールに従って約200mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回から選択される投与スケジュールに従って約250mg/m~300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、3週に1回の投与スケジュールに従って約250mg/m~300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、3週に1回の投与スケジュールに従って約300mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。
【0031】
他の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、SNX-5422、SNX-2112、KW-2478、AT13387、及びSTA-9090から選択される。
【0032】
一態様では、本開示は、7日~31日の治療サイクルにわたってタンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)とHSP90阻害剤との組合せを投与することによって癌を治療する方法を提供し、ここで、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)及びHSP90阻害剤は、前記サイクルにわたって少なくとも1回投与され、前記ンパク質毒性ストレス因子(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の各投与後に前記HSP90阻害剤が投与される。本開示によれば、HSP90阻害剤の投与は、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)によって誘導されるエピシャペローム形成の増加後に始める。一部の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも1時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも2時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも3時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも4時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも5時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも6時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも7時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも8時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも9時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも10時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも12時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも18時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも24時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも36時間後に投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)の投与から少なくとも48時間後に投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質毒性ストレッサー又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)は、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、HSP90阻害剤の投与の約1~3時間前、HSP90阻害剤の投与の約2~4時間前、HSP90阻害剤の投与の約3~5時間前、HSP90阻害剤の投与の約2~6時間前、HSP90阻害剤の投与の約3~6時間前、HSP90阻害剤の投与の約4~6時間前、HSP90阻害剤の投与の約4~8時間前、HSP90阻害剤の投与の約4~10時間前、HSP90阻害剤の投与の約5~7時間前等の範囲内の時点で投与される。
【0033】
一部の実施形態では、治療サイクルは、21日サイクルであってよく、その際、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)及びHSP90阻害剤は、サイクルの第1日にのみ投与される。一部の実施形態では、治療サイクルは、21日サイクルであってよく、その際、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)及びHSP90阻害剤は、サイクル期間中に2回、3回、4回、5回、6回、7回又は8回投与される。一部の実施形態では、治療サイクルは、14日サイクルであってよく、その際、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)及びHSP90阻害剤は、サイクル期間にわたって1回、2回、3回、4回、5回、又は6回投与される。一部の実施形態では、治療サイクルは、28日サイクルであってよく、その際、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)及びHSP90阻害剤は、サイクル期間中に2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回投与される。一部のこうした実施形態では、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)及びHSP90阻害剤は、28治療サイクルの第1、第8、及び第15日に投与され得る。別の実施形態では、治療サイクルは、7日サイクルであってよく、その際、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)及びHSP90阻害剤は、サイクルの第1日に投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、HSP90阻害剤(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)は、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)が投与される日にのみ投与される。別の実施形態では、HSP90阻害剤は、タンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)が投与される日及びタンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)が投与されない日に投与される。例えば、2週間サイクルの場合、HSP90阻害剤及びタンパク質毒性ストレッサー(又はHSP90の翻訳後修飾のモジュレータ)は、サイクルの第1及び第8日に投与され得、HSP90阻害剤は、サイクルの第4及び第11日に単独で投与され得る。
【0035】
別の実施形態では、エピシャペロームが腫瘍中に存在するか否かを決定する方法を提供する。出願者は、癌細胞中のエピシャペロームの形成量が大きいほど、癌細胞が生存及び増殖のためにエピシャメロームに対して依存的になることを見出した。本開示は、腫瘍中のエピシャペロームの検出を可能にする生化学アッセイを提供する。このように、エピシャペロームは、バイオマーカとして利用することができる生化学的シグネチャーをもたらす。遺伝的又は組織属性とは無関係に、いくつかの腫瘍タイプにおいてそれが起こることから、このバイオマーカは、既に臨床又は後期前臨床評価において数種のHSP90及びHSP70阻害剤に応答するであろう腫瘍の同定のための患者階層化の手段を提供する。本開示はまた、エピシャペロームの発生を有する腫瘍が、エピシャペローム複合体のない腫瘍よりも、シャペロン及びコシャペロンメンバー(例えば、HSP90又はHSP70)をターゲッティングする薬物に対する治療をはるかに受けやすいことも立証する。さらに、本明細書に開示される生化学的技術によって測定されるエピシャペローム複合体の存在量は、シャペロームメンバーをターゲッティングする薬物に応答する癌細胞の脆弱性を示すものである。
【0036】
一実施形態では、エピシャペローム複合体の存在又はその欠乏は、等電点電気泳動をイムノブロット能力と組み合わせるキャピラリーベースのプラットホームを用いて決定される。この方法は、固定化したpH勾配を用いて、等電点(pI)に基づいてネイティブ多量体タンパク質複合体を分離した後、特定の抗体を含む固定化複合体のプロービングを行う。さらに、これは、微量のサンプルのみを使用するため、1次試料の検査が可能になる。別の実施形態では、エピシャペローム複合体の存在又はその欠如は、ネイティブPAGEを用いて決定される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
タンパク質毒性ストレッサーによる前処置後、HSP90の阻害剤を癌患者に投与することによって癌を治療する方法であって、前記タンパク質毒性ストレッサーが、エピシャペロームの形成を増大するために前記HSP90阻害剤の投与前の十分な時点で投与される、方法。
(項目2)
癌を治療する方法であって、HSP90の阻害剤を癌患者に投与するステップを含み、前記患者が、エピシャペロームの形成を増大するために前記HSP90阻害剤の投与前の十分な時点でタンパク質毒性ストレッサーを受けている、方法。
(項目3)
癌を治療する方法であって、Hsp90の阻害剤を受けている癌患者に、エピシャペロームの形成を増大するために前記HSP90阻害剤の投与前の十分な時点でタンパク質毒性ストレッサーを投与するステップを含む方法。
(項目4)
前記HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも1時間後に投与される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記タンパク質毒性ストレッサーが化学療法薬である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記化学療法薬が微小管安定剤である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記化学療法薬がプロテアソーム阻害剤である、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記タンパク質毒性ストレッサーが放射線である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記タンパク質毒性ストレッサーが、温熱療法を誘導する薬剤である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータによる前処置後にHSP90の阻害剤を癌患者に投与することによって癌を治療する方法。
(項目11)
前記HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータが、エピシャペローム複合体の形成を増大するために前記HSP90阻害剤の投与前の十分な時点で投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記HSP90阻害剤が、前記HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも1時間後に投与される、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータがホスファターゼである、項目11又は12に記載の方法。
(項目14)
前記HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータがキナーゼ阻害剤である、項目11又は12に記載の方法。
(項目15)
前記キナーゼ阻害剤がPD407824である、項目14項に記載の方法。
(項目16)
前記HSP90阻害剤が8-(6-ヨード-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルスルファニル)-9-(3-イソプロピルアミノ-プロピル)-9H-プリン-6-イルアミン(PU-H71)又はその薬学的に許容される塩である、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記PU-H71の塩がHCl塩である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記HSP90阻害剤がSNX-5422、SNX-2112、AT13387、KW-2478、又はSTA-9090である、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記HSP90阻害剤が、図16又は図17に示される化合物である、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記HSP90阻害剤がGRP94を選択的に阻害する、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
HSP70阻害剤を投与するステップをさらに含む、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記HSP70阻害剤が前記タンパク質毒性ストレッサーの後に投与される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記HSP70阻害剤が、前記HSP90阻害剤の前記投与と同時に又はその前に投与される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記癌が、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫から選択される、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
7~31日のサイクルにわたってタンパク質毒性ストレッサーとHSP90阻害剤との組合せを投与することによって癌を治療する方法であって、前記タンパク質毒性ストレッサー及び前記HSP90阻害剤が、前記サイクルにわたって少なくとも1回投与され、前記タンパク質毒性ストレッサーの各投与後に前記HSP90阻害剤が投与される、方法。
(項目26)
前記治療サイクルが7日である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が前記治療サイクルの第1日にのみ投与される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記治療サイクルが21日である、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が前記治療サイクルの第1日にのみ投与される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記タンパク質毒性ストレッサーが化学療法薬である、項目25~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記化学療法薬が微小管安定剤である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記化学療法薬がプロテアソーム阻害剤である、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びCEP-18770(デランゾミブ)から選択される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記HSP90阻害剤の前に投与される前記化学療法薬が、ペメトレキセド、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、レナリドミド、アピオシリブ、PD407824及びMK1775から選択される化学療法薬である、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記タンパク質毒性ストレッサーが放射線である、項目25~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記タンパク質毒性ストレッサーが、温熱療法を誘導する薬剤である、項目25~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記HSP90阻害剤が8-(6-ヨード-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルスルファニル)-9-(3-イソプロピルアミノ-プロピル)-9H-プリン-6-イルアミン(PU-H71)又はその薬学的に許容される塩である、項目25~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記PU-H71の塩がHCl塩である、項目37に記載の方法。
(項目39)
HSP70阻害剤を投与するステップをさらに含む、項目25~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記HSP70阻害剤が前記タンパク質毒性ストレッサーの後に投与される、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記HSP70阻害剤が前記HSP90阻害剤の投与と同時に又はその前に投与される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記癌が、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫から選択される、項目26~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
癌を治療する方法であって、
癌患者からのサンプル中におけるエピシャペロームの存在を検出するステップ、
前記癌患者にHSP90の阻害剤を投与するステップ
を含む方法。
(項目44)
前記エピシャペロームがタンパク質毒性ストレッサーによる前記癌患者の前処置後に検出される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記エピシャペロームが、ネイティブ多量体タンパク質複合体の等電点電気泳動と、その後の1つ又は複数の抗体による固定化複合体のプロービングとによって検出される、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記1つ又は複数の抗体がHSP90抗体を含む、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記HSP90の阻害剤が、タンパク質毒性ストレッサーによる前処置後に投与され、前記タンパク質毒性ストレッサーが、前記エピシャペロームの形成を増大するために前記HSP90阻害剤の投与前の十分な時点で投与される、項目43に記載の方法。
(項目48)
前記患者が、前記エピシャペロームの形成を増大するために前記HSP90阻害剤の投与前の十分な時点でタンパク質毒性ストレッサーを受けている、項目43に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1-1】いくつかの癌細胞を示すが、その全てが、HSP90が重要な成分であるマルチシャペローム複合体が豊富というわけではない。1a、1b)ネイティブキャピラリー等電点電気泳動分離条件下で細胞ホモジネートを分析し、HSP90α及びHSP90βに対する抗体でプロービングした。PT;原発性腫瘍、NPT;腫瘍と隣接する正常組織。2つの技術的反復から得た平均±s.d.を示す。1c)培養細胞及び原発性腫瘍のHSP90の生化学的プロフィール。TBNC、トリプルネガティブ乳癌。1d)ネイティブ及び変性ゲル条件下でのいくつかのシャペロームメンバーの生化学的プロフィール。IB、イムノブロッティング。全てのデータは、2又は3回の独立した実験を代表するものである。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図2-1】相互接続し、安定した多量体シャペローム複合体がタイプ1癌細胞中に存在することを示す。2a)タイプ1、2及び非形質転換細胞中の重要なシャペロームメンバー同士の機能及び生化学的関係性に関する研究を示す概略図。2b)HSP70、HSC70、及びHOPに対する抗体が欠失したタイプ1癌細胞ホモジネート、並びにAHA-1が特定のsiRNAによりノックダウンされた細胞についての多量体シャペローム複合体の変化。2c)表示される細胞ホモジネートからそれぞれの化学ベイトによって単離されたHSP90及びHSP70のカーゴ又は相互作用タンパク質。ホモジネート及び単離物中のタンパク質のレベルは、ウエスタンブロットによりプロービングした。全てのデータは、2又は3回の独立した実験を代表するものである。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
図3-1】エピシャペロームが癌細胞生存を促進することを立証する。3a)表示の細胞:MDAMB468(タイプ1、高エピシャペローム、HSP90阻害剤に対して感受性)、ASPC1(タイプ2、低からゼロエピシャペローム、HSP90阻害剤に耐性)及びHMEC(非形質転換)の溶解物をPU-H71ビーズ(固体支持体に結合させたPU-H71)と共にその量を増加させながら、又は対照ビーズ(不活性化学物質を結合させたビーズ)と一緒にインキュベートした。3b)~3d)PU-H71捕捉により測定されるエピシャペローム存在量と、アネキシンV染色により測定されるPU-H71による48時間処理時点の細胞生存能との相関分析。各データポイントは、細胞株を示し;データは、2回の技術反復から得られる平均である。3e)siRNA又はスクランブルコントロールによってAHA-1レベル低下したPU-H71感受性。PU-H71と一緒にその濃度を増加させながら、細胞を24時間処理した。2回の技術反復からの平均±s.d.及び代表的なウエスタンブロットを示す。3f)図3dに対応する遺伝子損傷。3g)アネキシンV染色により測定される、表示のHSP90剤で48時間処理したタイプ1及びタイプ2癌細胞のアポトーシス感受性。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
図3-4】同上。
図3-5】同上。
図3-6】同上。
図3-7】同上。
図4】実施例6の処理の概略的エクスビボ試験を示す。
図5-1】エピシャペローム陽性腫瘍がHSP90阻害に対して感受性であることを明らかにするエクスビボ試験を示す。5a)は、HSP90阻害剤PU-H71でエクスビボ処理した原発性乳癌試料の感受性及びエピシャペローム発現を示す。5b)PU-H71でエクスビボ処理した原発性乳癌試料の代表的な例。5c)PU-H71でエクスビボ処理した急性骨髄性白血病試料の代表的な例。5d)HSP90阻害剤PU-H71でエクスビボ処理した急性骨髄性白血病試料の感受性。5e)Hsp90阻害剤PU-H71でエクスビボ処理した原発性乳癌試料の感受性及びエピシャペローム発現をさらに示す。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図5-4】同上。
図5-5】同上。
図5-6】同上。
図5-7】同上。
図6-1】全ての腫瘍が、エピシャペロームに依存するわけではないが、過半数がそうであることを立証する。a~c)95の癌細胞株(a)及び40の原発性AML(b)の群ではPU-FITCにより、並びに50の固形腫瘍ではPU-PETにより決定されたエピシャペローム存在量。PU-PETの場合、代表的な固形腫瘍の横断面CT及びPU-PET画像を各々同じ横断面で示す。腫瘍の位置は矢印で示される。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
図7-1】タンパク質毒性ストレッサーの導入による癌細胞のストレスの増大が癌細胞の薬理学的脆弱性を増すことを明らかにする。左側の図は、細胞をタンパク質毒性ストレッサーの導入後にHSP嗜癖の状態にさせると、安定したシャペローム複合体が形成されることを示す。左下に示すように、ストレス状態の細胞(すなわち、エピシャペローム形成がより大きい)は、HSP90療法に対してより脆性である。右側の図は、化学療法薬の添加又はHSP90及び/若しくはその相互作用シャペロームの翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータでの前処理をはじめとする、エピシャペローム形成を増大するいくつかの手段を示す。
図7-2】同上。
図8-1】HSP90阻害剤(PU-H71について例示)の添加前にタキサンで乳癌及び膵臓癌を処理すると、いずれかの化合物を単独で又は反対の順序で添加した場合と比較してストレスシャペロームレベルが増加することを立証する。8a、8b)ビヒクル、正の対照、パクリタキセル若しくはボルテゾミブで処理した細胞における、ネイティブ及び変性ゲル条件下でのHSP90及びいくつかのシャペロームメンバーの生化学的プロフィール。8c)表示される通りにビヒクル、PU-H71及びドセタキセルの連続的組合せで処理したMiaPaCa2膵臓癌細胞の脆弱性。72時間時点の細胞生存能は、スルホローダアミン(sulforhodamine)Bアッセイを用いて測定した。タキサンの前のPUが拮抗性であることに留意されたい。8d)ネイティブ条件下でのHSP90の生化学的プロフィール。パクリタキセルで胞を1時間細前処理した後、薬剤を洗い落として、インビボ条件を模倣した。エピシャペロームレベル(標識上部>二量体)は、釣鐘状を描き、5~7時間時点でピークが認められ、その後24時間までに内在性レベルに減少することに留意されたい。8e、8f)表示される化学療法薬で処理した表示の癌細胞(乳癌、膵臓癌及び肺癌を示す)における、ネイティブ及び変性ゲル条件下でのHSP90の生化学的プロフィール。エピシャペロームの増加をもたらした実験条件を星印で示す。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
図8-5】同上。
図8-6】同上。
図9-1】翻訳後修飾改変 - リン酸化の作用によるエピシャペロームの調節を立証する。9a)ビヒクル又はホスファターゼ(LPP)で処理した癌細胞溶解物における、ネイティブ及び変性ゲル条件下でのHSP90の生化学的プロフィール。右側、固体支持体に結合させたPU-H71の結合プロフィール。LPPで処理した溶解物中のストレスHSP90の増加(エピシャペロームの形成の阻害又は制限におけるリン酸化の潜在的役割を示唆する)に留意されたい。9b)表示されるキナーゼ阻害剤及び化学療法薬で処理した表示の乳癌細胞における、ネイティブゲル条件下でのHSP90の生化学的プロフィール。全てではないが、いくつかのキナーゼの阻害がエピシャペロームの細胞レベルの増加をもたらすことに留意されたい。YK198は、アロステリックHSP70阻害剤である。
図9-2】同上。
図10】エピシャペローム形成を誘導することができる特定のタンパク質毒性ストレッサーを示す。
図11-1】異種移植MiaPaca2膵臓癌腫瘍を担持するマウスに、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71及びAbraxane(登録商標)の効果及び安全性をモニターするインビボ試験を示す。11a、11b)連続的(投与)は、Abraxane(登録商標)、その6時間後のPU-H71を示す。Ab、abraxane(登録商標)、PU、PU-H71。腫瘍体積は、A.平均±SD及びB.個々のマウスの腫瘍体積として示す。薬剤は、ip注射により週1回(1×wk)投与した。11c、11d)マウスは、週2回モニターした。11e)Abraxane(登録商標)とPU-H71との同時投与、又はAbraxane(登録商標)の1時間、3時間若しくは6時間後それぞれのPU-H71の連続的投与の腫瘍退縮に対する作用。表示される治療パラダイムの第28日に測定した異種移植腫瘍の体積測定値(11f)及びマウス体重(11g)。
図11-2】同上。
図11-3】同上。
図11-4】同上。
図12】異種移植されたMiaPaca2膵臓癌腫瘍を担持するマウスに、表示される治療パラダイムで投与した場合のPU-H71及びArabaxane(登録商標)の治療レジメンの5週間時点で撮影された代表的なマウスの写真を示す。Arabaxane(登録商標)投与から6時間後のPU-H71の連続的処理によって治癒が達成されたのに対し、PU-H71とArabaxane(登録商標)との同時処理では、停滞又は退縮が達成された。
図13-1】異種移植NCI-H1975 EGFR突然変異非小細胞肺癌腫瘍を担持するマウスに、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71及びAbraxaneの効果及び安全性をモニターするインビボ試験を示す。13a)PU-H71は、Arabaxane(登録商標)の6時間~24時間前(PU→6時間後Ab;PU→24時間後Ab)又はその逆(Ab→6時間後PU、Ab→24時間後PU)に投与した。各薬剤は、単独で又は同時併用でも投与した。薬剤は、ip注射により週1回(1×wk)投与した。13b)同時及びAb→6時間後PUアームを処置し、表示のようにモニターした。同時アームでは全てのマウスが第100日前後で再発したのに対し、連続的Ab→6時間後PUアームでは治癒が認められたことに留意されたい。13c)Arabaxane(登録商標)に関して、腫瘍再発に対するAb→6時間後PUの作用。体重減少は記録されなかった(示していない)。表示される治療パラダイムの第14日(13d)及び第28日(13e)の異種移植腫瘍の体積測定値。
図13-2】同上。
図13-3】同上。
図14-1】異種移植乳癌腫瘍を担持するマウスに、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71及びAbraxane(登録商標)の効果及び安全性をモニターするインビボ試験を示す。14a、14c、及び14d)HCC-1806腫瘍モデルの結果を示し;14b)MDA-MB-231腫瘍モデルの結果を示す。
図14-2】同上。
図15】Inucyte速度論的増殖アッセイ(実施例11)の結果を示す。
図16-1】本開示の方法に従って投与されるHSP90阻害剤の構造を示す。
図16-2】同上。
図16-3】同上。
図16-4】同上。
図16-5】同上。
図16-6】同上。
図17-1】本開示の方法に従って投与されるHSP90阻害剤の構造を示す。
図17-2】同上。
図17-3】同上。
図17-4】同上。
図17-5】同上。
図18-1】ケモプロテオームストレッサーの後に投与されるHSP90阻害剤の効果をさらに立証する。18aは、PU-H71の添加前にドキシルビシン(DOX)の階段希釈物に曝露されたバーキットリンパ腫細胞の生存能を示す。18bは、DLBCL細胞に対する次の組合せ:DOX、続いてPU-H71(茶色の丸)、PU-71、続いてDOX(青色の丸)又は同時投与(黒い丸)の投与の併用係数を示す。18cは、表示される薬剤組合せに曝露されたDLBCL細胞においてフローサイトメトリーにより測定されるカスパーゼ-3活性化を示す。
図18-2】同上。
図19-1】表示される異種移植腫瘍を担持するマウス(n=3~5)に、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71及びAbraxane(登録商標)の効果及び安全性をさらに立証する。腫瘍体積は、平均±SD又は個々のマウスの腫瘍体積として示す。薬剤は、週1回(1×wk)投与した。PU;PU-H71、75mpk、ip;Ab、Abraxane(登録商標)、30mpk、ip;Ab→PU連続的(投与)は、Arabaxane(登録商標)、その6時間後のPU-H71を示す。前述の治療パラダイムでの腫瘍成長(19a~19c)及びマウス体重(19d、次の順に表示される:「ビヒクル」、左端の欄、続いて「PU(1×wk)」、「Ab(1×wk)」、Ab+PU同時(1×wk)」、及び右端に「Ab→6時間後PU(1×wk)」)を、表示される腫瘍:a、NCI-H1975肺癌、b、HCC-1806、トリプルネガティブ乳癌、c、MDA-MB-231、トリプルネガティブ乳癌においてモニターした。長期体重モニタリングについては図20c及び20dを参照されたい。
図19-2】同上。
図20-1】表示される異種移植腫瘍を担持するマウス(n=5)に、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71及びAbraxane(登録商標)の効果及び安全性をさらに立証する。腫瘍体積は、個々のマウスについて示し(A、B)、マウス体重は、平均±SEMとして示す(C、D)。薬剤は、週1回(1×wk)投与した。PU;PU-H71、75mpk、ip;Ab、Abraxane(登録商標)、30mpk、ip;Ab→PU連続的は、Arabaxane(登録商標)の6時間後PU-H71を示す。マウスは、20サイクル超連続した毎週連続的Abraxane(登録商標)/PU-H71を受けたが、毒性の臨床徴候及び体重減少は認められなかった。
図20-2】同上。
図21】異種移植MiaPaCa2 4膵臓癌腫瘍を担持するマウス(n=4~5)に、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71及びAbraxane(登録商標)(30mg/kg)の効果及び安全性をさらに立証する。処置の第28日の腫瘍体積(a)及びマウス体重(b)の値は、平均±SEMとして示す。データは、左から右の欄へと次の順に表示される:「第21日までビヒクル、その後AB>6時間後PUに変更(14F)」、「Abraxane(1×wk)30mpk iv」、「Abraxane(1×wk)30mpk iv」、「Abraxane(1×wk)30mpk iv>6時間後PU-H71(1×wk)75mpk ip」、「Abraxane(1×wk)30mpk iv>同時PU-H71(1×wk)75mpk ip」、「Abraxane(1×wk)30mpk iv>6時間後PU-H71(1×wk)75mpk ip」、「Abraxane(1×wk)30mpk iv>6時間後PU-H71(2×wk)75mpk ip」、「ビヒクル」。
図22-1】異種移植MiaPaCa2 4膵臓癌腫瘍を担持するマウス(n=4~5)に、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71及びAbraxane(登録商標)の効果及び安全性をさらに立証する。処置期間中の腫瘍体積(a)及びマウス体重(b、c)の値は、平均±SEMとして示す。Sidakの多重比較検定を含む二元配置分散分析を適用して14Fと14Gを比較した。14F=Ab>PU(6時間)Arabaxane(登録商標)30mg/kg iv 1×wvPU-H71 75mg/kg ip 1×wk、Abの6時間後;14G=Ab>PU(6時間)Arabaxane(登録商標)30mg/kg iv 1×wk PU-H71 75mg/kg ip 2×wk、Abの6時間後。
図22-2】同上。
図23】異種移植HCC1806トリプルネガティブ乳癌腫瘍を担持するマウス(n=5)に、表示の治療パラダイムで投与される場合のPU-H71(75mg/kg)及びAbraxane(登録商標)(30mg/kg)の効果及び安全性をさらに立証する。処置期間中の腫瘍体積(a)及びマウス体重(b)の値は、平均±SEMとして示す。Sidakの多重比較検定を含む二元配置分散分析を適用して15Fと15Gを比較した。15F=Ab>PU(6時間)Arabaxane(登録商標)30mg/kg iv 1×wvPU-H71 75mg/kg ip 1×wk、Abの6時間後;15G=Ab>PU(6時間)Arabaxane(登録商標)30mg/kg iv 1×wk PU-H71 75mg/kg ip 2×wk、Abの6時間後。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、タンパク質毒性ストレッサーによる前処理後、治療有効量のHSP90の阻害剤を癌患者に投与することによって癌を治療する方法を提供する。
【0039】
本出願で使用されるとき、「治療」という用語は、症状の発症を遅らせ、重症度を軽減するか、又は癌の症状の進行を遅らせることを指す。疾患の治癒が治療の範囲内にある必要はない。さらに、これらの治療目標の具体的な結果が個体によって変わること、一部の個体が、代表的集団の統計平均よりも高い又は低い利益を被り得ることは理解されるであろう。このように、治療は、治療利益を得ることを期待して、それを必要とする個体への組成物の投与を指す。
【0040】
「投与する」という用語は、治療組成物を個体に導入する行為を指す。一般に、任意の投与経路を使用することができる。従って、治療しようとする状態の性質に応じて経口投与、髄腔内、静脈内、筋肉内又は非経口注射が適切である。また、BBB毛細血管を有することなく、鼻の上方に脳と連絡する区画があるため、吸入による脳への投与を実施することも可能である。この投与法の場合、血液脳関門を通過する化合物が好ましいが、この特徴が必ずしも要求されるわけではない。
【0041】
「治療有効量」という用語は、個体の疾患を予防する、その重症度を軽減する、又はその進行を遅らせるという結果をもたらす化合物の投与量及び投与スケジュールの両方を包含する。理解されるように、好ましい量は、治療効果及び投与法と毒性/耐容性とを均衡させるために、化合物によって変動し得る。投与回数及び頻度に関する最大耐性量及び治療レジメンの決定は、化合物の早期臨床評価のルーチンの一部である。
【0042】
実施例1~5に記載されるように、本発明者らは、エピシャペローム、すなわち、起源となる組織又は原因となる遺伝子突然変異とは無関係に、腫瘍の過半数に存在する修飾シャペロームを同定し、特性決定した。本発明者らは、生化学的修飾により、エピシャペロームが正常細胞に特有のハウスキーピングシャペロームから識別されることを立証する。正常細胞中に見出される一過性シャペローム複合体は、形成されると急速に分解するが、その比較的短い存在時間は、非形質転換細胞の増殖需要を満たす速度でタンパク質を折り畳み、安定化させるそれらの役割と一致する速度論的プロフィールを表す。これに対して、形質転換細胞中の永続的シャペローム複合体(すなわち、エピシャペローム)は、比較的長い半減期を有し、これにより、これらはシグナル伝達及び転写複合体を活性構成に維持して、連続的増殖及び代謝を適応させる癌シャペロームの役割により良好に適するようになる。実施例1~3に記載されるように、エピシャペロームは、HSP90、HSP70、HSC70、HOP、AHA-1、CDC37、HSP40及びHSP110をはじめとするシャペロン及びコシャペロンタンパク質中で富化される。さらに、実施例3に示すように、安定した多量体エピシャペローム複合体は、HSP90上に核を形成し、物理的且つ機能的にHSP70及びHSP90機構の成分を集合させる。
【0043】
さらに、本発明者らは、実施例6及び7において、HSP90阻害剤が高エピシャペローム細胞においてアポトーシスを有意に増大することを明らかにするが、これは、この細胞機構に対する細胞の依存性を表す。管弦すれば、本発明者らは、エピシャペロームの存在量と、HSP90阻害剤に対するこれらの癌細胞の感受性との間に有意な相関があることを明らかにする。実施例6及び7で述べるように、エピシャペロームの存在量が減少すると、細胞はHSP90阻害剤による殺傷を受けにくくなる。これらの実験から、本発明者らは、エピシャペロームが豊富な細胞が、エピシャペロームのレベルが低い細胞と比較して、HSP90阻害剤に曝露されたときに死滅する可能性が高いことを見出した。乳癌、肺癌、膵臓癌及び胃癌、並びに白血病及びリンパ腫を含む90超の癌細胞株において、本発明者らは、エピシャペロームの存在量と、HSP90阻害に対するこれらの細胞の感受性との間に有意な相関(P<0.0001)を見出した(図3d及び3f)。
【0044】
さらに、AHA-1タンパク質のレベルを低下させ、従ってエピシャペロームタンパク質の安定性を低下させることによってエピシャペロームの存在量が減少すると、細胞はHSP90阻害剤による殺傷を受けにくくなる(図3e)。
【0045】
これらの知見により、HSP90阻害剤による治療を受けやすい患者を決定するために使用される新規のバイオマーカの開発に到った。エピシャペロームは、こうしたバイオマーカとして用いられる生化学的シグネチャーをもたらす。遺伝的又は組織属性とは無関係に、いくつかの腫瘍タイプにおいてそれが起こることから、このバイオマーカは、HSP90療法、或いは別のシャペロン又はコシャペロンタンパク質を利用する療法に応答するであろう患者についての患者階層化の手段を提供する。
【0046】
本発明者らのプロテオーム及び遺伝子研究では、特定の癌細胞中に観測されるエピシャペロームの富化と特異的に関連する病変の存在は明らかにされなかった。PU-H71に対して感受性の腫瘍に、p53、ras-、myc-、HER-、PI3K/AKT-及びJAK-細胞周期に関連する欠陥が見出されたが、これらは、PU-H71耐性細胞でも明らかであった(図3f)。これは、シャペローム再構成、並びにシャペローム依存性腫瘍に特有のエピシャペロームに対する細胞の依存を招くプロテオーム改変が多様な遺伝子起源を有し得るか、又は遺伝的背景に非依存的であり得ることを示唆する。HSP90複合体(SNX2112)及び(NVP-AUY-922)に対する様々な選択性の化学的に異なるHSP90指向性薬剤がPU-H71のプロフィールを再現したことから、この作用はPU-H71治療に限定されなかった。これらのHSP90阻害剤の構造については図16を参照されたい。タイプ1腫瘍もこれらの薬剤によって有効に殺傷されたが、タイプ2腫瘍は不応性のままであった(図3g)。総合すると、以上の観測結果から、これらの腫瘍における生存を促進する手段としてのエピシャペロームが確認される。
【0047】
これらの観察された作用は、文献にあるいくつかの報告、例えば、Hsp90阻害剤17-AAGと化学療法薬(例えば、Taxol(登録商標)又はドキソルビシン)の様々な組合せによる癌細胞株のインビトロ試験(Muenster et al.Clin.Cancer Res.Vol.7,2228-2236,Aug.2001を参照されたい)とは対照的である。上で述べたように、この参照文献は、化合物を同時に投与するか、又は17-AAGをTaxol(登録商標)の直後に投与したとき、Taxol(登録商標)と17-AAGとの組合せによるアポトーシスに対する細胞の感受性が最も顕著になったことを報告している。さらに、Taxol(登録商標)と17-AAGとの組合せに関してMuenster et al.が観察した作用は、Rb依存的であった。その上、以下に記載する結果とは対照的に、Muenster et al.は、ドキソルビシンと17-AAGとの組合せに対する細胞の感受性が化合物の添加の順序又はタイミングに依存的ではなかったことも報告している。
【0048】
次に、本発明者らは、エクスビボ試験を用いて、原発性腫瘍中のエピシャペロームの機能的重要性を確認した(例えば、原発性乳房腫瘍及び急性骨髄性白血病については実施例6を参照されたい)。エクスビボで原発性乳房腫瘍(n=4)をPU-H71で処理した(処理の概略図を図4に示す)ところ、本発明者らは、安定した多量体エピシャペローム形態を発現するものがPU-H71によって最も効果的に殺傷されることを見出した。例えば、乳房腫瘍を有する4人の患者(患者1066、患者1067、患者1068、患者1069)について試験を実施した(図5a、左)。左上は、等電点電気泳動法により測定した4つの乳房腫瘍の生化学的シグネチャーを示す。左中央は、HSP90阻害によるこれらのサンプルの感受性を示す。左下は、4つの分析済乳癌腫瘍の受容体状態を示す。この試験で、患者1066は、電荷ベースのネイティブゲル(等電点電気泳動法)により決定される通り、安定した多量体エピシャペローム形態が豊富な腫瘍を有していた(図5aを参照されたい)。患者1066の癌細胞は、PU-H71の導入後、容易にアポトーシスを被った。図5aに示すように、対照と比較したアポトーシスの程度は、PU-H71の濃度に依存的であった。対照的に、また培養細胞での本発明者らの知見と同様に、安定した多量体エピシャペローム形態を発現しない腫瘍は、大部分が影響されないままであった。例えば、患者1067、1068及び1069は、安定したエピシャペローム複合体が豊富な腫瘍を有していなかったが、これらの腫瘍は、患者1066の腫瘍と比べ、PU-H71阻害に対してはるかに感受性が低かった(図5a)。さらに、乳房試料の事例において隣接する良性組織は、エピシャペロームをほとんど乃至全く含有しておらず、従ってPU-H71に対して非感受性であった。
【0049】
別の患者由来の乳房腫瘍サンプルについての試験によって前述の観測をさらに進めた(図5e)。図5eの左パネルは、等電点電気泳動法による8人の患者の乳房腫瘍サンプル(PT59、PT60、PT61、PT66、PT14、PT30、PT18、及びPT62)の生化学的シグネチャーの分析を示す。PT59、PT66、及びPT18からのサンプルは、電荷ベースのネイティブゲル(等電点電気泳動)により決定される通り、安定した多量体エピシャペローム形態の富化を示した。特に、これらの患者の癌細胞は、PU-H71の導入後にアポトーシスを容易に受けた(図5e、右パネル)。さらに、これまでの結果を確認すると、安定した多量体エピシャペローム形態を発現しない腫瘍は、大部分が影響されないままであった。例えば、患者PT60、PT61、PT14、PT30、及びPT62からのサンプルは、安定したエピシャペローム複合体が豊富な腫瘍を有していなかったが、これらの腫瘍は、PU-H71処理に対してはるかに感受性が低かった(図5e、右パネル)。
【0050】
別の実験では、3つの原発性トリプルネガティブ乳房腫瘍(TNBC#1、TNBC#2及びTNBC#3)の生化学的シグネチャーをサイズベースのネイティブゲルにより分析した後、HSP90、HSC70、AHA1及びCD36を含むエピシャペロームの存在量を測定した(図5a、右パネル)。生化学的シグネチャーに基づき、3つの腫瘍のうちの1つのみ(TNBC#1)に有意な程度まで、もう1つ(TNBC#3)に中程度まで多量体複合体が観測された。特に、TNBC#2は、エピシャペローム形成を示す多量体複合体の形成が微少から皆無であった。図5aの右下パネルに示されるように、HSP90阻害に対して最も感受性であった腫瘍は、最も安定した多量体HSP90中心複合体を含む腫瘍であった。特に、ごくわずかなエピシャペローム形成を示したTNBC#2は、HSP90療法に対して抵抗性であった。
【0051】
図3aに示されるように、PU-H71は、エピシャペローム複合体中にあるとき、HSP90に対してより高い親和性及び選択性で結合する。例えば、最もPU-H71感受性の高いHSP90複合体を捕捉するために、固体支持体固定化PU-H71を細胞ホモジネートと一緒にインキュベートした。次に、上清(すなわち、残滓又はPU-H71に対して最も感受性が低い)を等電点電気泳動法により分析した。図3aは、エピシャペローム複合体中のHSP90がPU-H71に対して最も感受性が高い(図3a、少量のPUビーズが高分子量の安定したHSP90複合体を著しく減少させるが、HSP90二量体はそうではない、MDAMB468細胞を参照されたい)のに対し、ハウスキーピングHSP90は不変のままである(等電点電気泳動によるHSP90シグネチャーに変化がないHMEC細胞を参照されたい)ことを示す。図3bは、PU-H71のこの特性を、エピシャペロームレベルを測定する代替的方法としてどのように使用できるかを説明する。例えば、図3bは、これらの細胞の総HSP90は類似している(図3b、SDS PAGE)ものの、高エピシャペロームを含む細胞(タイプ1)において、標識PU-H71(蛍光標識PU-FITCなど)がタイプ2細胞よりも多くのHSP90を捕捉する(図3c、y軸)ことを示す。また図3cも、HSP90阻害剤によってこれらの細胞中に誘導されたアポトーシスを測定すると(x軸、アネキシン対染色)、高エピシャペロームを含む細胞(等電点電気泳動図3b、及び/又はPU-H71染色、図3cによって測定される)が、HSP90阻害剤で処理した場合に死滅する傾向が高いことを示す。図3dは、PU-H71染色を用いた原発性急性骨髄性白血病の群におけるエピシャペロームの測定を示す。これは、PU-H71で処理した場合のこれらの細胞の生存能(アネキシンV染色によるアポトーシス測定)も示す。最終的に、これは、エピシャペロームレベルとアポトーシスを相関させて、これらの細胞中のエピシャペロームレベルが高いほど、HSP90阻害剤で処理すると死滅しやすいことを明らかにする。
【0052】
以上の発見に基づき、本発明者らは、癌細胞を誘導して、前述の安定した多重シャペローム集塊(エピシャペローム)を形成することができると仮定した。エピシャペローム導入の一手段は、適切なタンパク質毒性ストレスの付加によるものである。その結果、エピシャペロームがほとんど乃至全くない癌細胞を誘導して、エピシャペロームを含有させ、これによりHSP90阻害剤などのエピシャペローム阻害剤に対するそれらの感受性を高めることができる。加えて、エピシャペロームの形成に既に幾分依存性の癌細胞を誘導して、エピシャペロームに極めて依存性にすることもできる。さらに、本発明者らは、癌細胞が生存、シグナル伝達を維持すると共に、連続的増殖及び代謝を支持するためにエピシャペローム(例えば、HSP90及びHSP70の阻害)に最大限に依存性であるとき、形成されるエピシャペローム複合体の安定性は、タンパク質毒性ストレッサーの投与又は導入後のある時点で最大になるであろうことも仮定した。このように、再接続されてエピシャペロームを形成するシャペロンに対する細胞の最大依存の時点を過ぎると、エピシャペローム複合体の安定性は次第に低下し、シャペロンタンパク質は、タンパク質を折り畳み、安定化させるその伝統的な役割を担う。
【0053】
さらにまた、本発明者らは、タンパク質毒性ストレッサーの投与又は導入後、癌細胞が実質的なストレスの状態にある時点で、エピシャペローム複合体を含む特定のタンパク質をターゲッティングする阻害剤を投与し得ることも仮定した。阻害剤は、癌細胞中のエピシャペロームの機能を低減又は排除し、これにより細胞の生存能を破壊し、細胞をアポトーシスに対して脆弱にすることができる。基本的な概念を図7に描く。図7の左上に示すように、正常な「ハウスキーピング」又は他の機能を果たすために、単にシャペロン及びコシャペロンタンパク質に依存性の癌細胞を、生存のためにエピシャペロームに嗜癖性の細胞に形質転換することができる。嗜癖状態は、エピシャペローム複合体の形成で予測される。さらには、図7の右下に示すように、嗜癖状態にある細胞は、依存状態にある細胞より、HSP90阻害に対してはるかに脆弱である。従って、HSP90阻害の前に、タンパク質毒性ストレッサーの投与によって癌細胞中のエピシャペロームの量を増加すれば、HSP90療法の効果に顕著な作用をもたらす。さらに、タンパク質毒性ストレッサーは、癌細胞の生存能を含む固有の活性を有する。従って、タンパク質毒性ストレッサーとHSP90阻害剤との組合せは、本開示の方法に従い投与されると相乗効果を示す。
【0054】
癌細胞に対するタンパク質毒性ストレッサーの影響を試験するために、本発明者らは、セクション5、実施例1で述べる生化学的技術を適用した。実施例8に示されるように、タンパク質毒性ストレッサーとしての化学療法薬の存在下又は非存在下で様々な癌を培養した。化学療法薬で前処理した細胞と、前処理していない細胞(ビヒクル)とをNative PAGEに付して、シャペローム複合体の性質を決定した。図7~9に示され、また実施例8に記載するように、数種の化学療法薬は、より安定したエピシャペロームの形成と一致する安定多量体シャペローム複合体の形成を誘導することができた。化学療法薬の全てが安定多量体シャペローム複合体の形成を誘導したわけではない。図10は、エピシャペローム複合体の形成に向けて癌細胞を誘導するその能力について試験された特定の化学療法薬の表を示す。
【0055】
タンパク質毒性ストレッサーの添加の代わりに、HSP90並びに他のシャペロン及びコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータで癌細胞を前処理することにより、エピシャペローム複合体の安定性を増大することができる。シャペロン及びコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾に影響を与える1つの手段は、リン酸化に影響を与えることによるものである。本発明者らは、リン酸化がエピシャペローム複合体の形成を阻害することを証明する。図9Aに示されるように、適切なホスファターゼの導入により、リン酸基の量を低減すると、エピシャペローム形成の量を増加することができる。図9Bに示されるように、全てのキナーゼ阻害剤で効果が認めらたわけではないが、特定のキナーゼ阻害剤で細胞を前処理することによってリン酸化を低減しても、エピシャペローム形成の増加をもたらし、これは、エピシャペローム形成の調節に特定のエピトープが関与することを示唆する。
【0056】
特定のタンパク質毒性薬剤が、より安定したエピシャペローム複合体の形成を誘導し得ることが証明されたことから、本発明者らは、次に、PU-H71、ドセタキセル、又はPU-H71/ドセタキセルの組合せで処理したときの、MiaPaCa2膵臓癌細胞の生存能を測定するためにインビトロアッセイを開発した(実施例9及び14を参照されたい)。組合せに関して、各々PU-H71及びドセタキセルの濃度を変えて2つのアッセイを実施した。一方のアッセイでは、PU-H71の投与の6時間前にドセタキセルを投与した。図8cに示されるように、PU-H71の投与の6時間前のドセタキセルによる膵臓癌細胞の前処理は、ドセタキセルの投与前のPU-H71による癌細胞の前処理よりも有意に強力であった。実際に、後者の投与計画は拮抗的であることが証明された。
【0057】
タンパク質毒性薬剤とHsp90阻害剤との組合せの効力をさらに証明するために、ドキソルビシン(DOX)で処理したリンパ腫細胞に対してインビトロアッセイを実施した。DOXは、DNA中に挿入されて、DNA損傷及び酸化ストレスを誘導するトポイソメラーゼ阻害剤である。相乗効果の標準的基準である、半数効果/併用係数(CI)法を用いて、DOX及びPU-H71の相互作用を評価した。曝露の連続的又は同時スケジュールにおける相互作用についてDOX:PU-H71の複数の比を体系的にテストするための手段として、用量応答マトリックスを使用した。DOXに事前に曝露しておいたDLBCL及びバーキットリンパ腫細胞へのPU-H71の添加(DOX→PU-H71)は、複数の薬剤比で相乗的であったのに対し、薬剤(DOX+PU-H71)の同時投与、又はDOX前のPU-H71の曝露(PU-H71→DOX)は、相加的から拮抗的相互作用をもたらした(図18a、b及び図示なし)。SUDHL4DLBCL細胞などの低から中度エピシャペロームレベルを有するリンパ腫細胞における細胞周期及びアポトーシスに対する各薬剤及びそれらの組合せの作用を評価した(図18c)。これらの細胞中、1μMのPU-H71への24時間曝露は、G1/S停止を引き起こした。IC50を下回るDOXの用量に対する24時間曝露は、アポトーシスを示す、sub-G1DNA内容物を示す細胞の小さい分画と共にS期分画の減少及びG2/Mの蓄積をもたらした。DOXに曝露した細胞にPU-H71を24時間遅らせて添加すると、G2/MDNA内容物を有する細胞の減少と、断片化sub-G1DNA内容物を有する細胞の出現とが観測された。全てにおいて、PU-H71とDOXとの組合せは、PU-H71の前に細胞をDOX化学療法薬に曝露したとき、カスパーゼ-3活性化及びアポトーシスの誘導で最も有効であった。
【0058】
実施例10、13、及び14に記載されるように、インビボ動物実験を実施して、開示される併用投与計画の効果を決定した。動物モデルには、肺癌を評価するためのH1975腫瘍モデル、膵臓癌を評価するためのMiaPaca2腫瘍モデル、並びにトリプルネガティブ乳癌を評価するためのHCC-1806及びMDA-MB-231腫瘍モデルが含まれた。実施例10に記載されるモデルでは、HSP90阻害剤としてPU-H71を使用し、化学療法薬としてAbraxane(登録商標)を使用した。様々な試験において動物には対照ビヒクル、PU-H71、Abraxne又はPU-H71とAbraxane(登録商標)との組合せのいずれかを投与した。連続的投与の場合、Abraxane(登録商標)を初めに投与した後にPU-H71を投与するか、又はPU-H71を初めに投与した後にAbraxane(登録商標)を投与した。予め選択した時点で、動物の腫瘍体積を評価した。
【0059】
図11~14及び19~23に示されるように、インビボ動物モデルにおいて、Abraxane(登録商標)の投与から6時間後のPU-H71の投与は、PU-H71とAbraxane(登録商標)との同時投与、又はPU-H71の6時間後のAbraxane(登録商標)の投与と比較して有意に増大した効果を示した。さらに、図13a(H1975腫瘍モデル)に示されるように、PU-H71の投与の6時間前のAbraxane(登録商標)のマウスへの投与は、PU-H71の投与の24時間前のマウスへの投与と比較して有意に増大した効果を示した。この結果から、エピシャペローム複合体の安定性が、ストレッサー(例えば、化学療法薬)の投与から特定の時点で最大となり、その後徐々に消失することがわかる。Abraxane(登録商標)の前投与の場合、細胞に対するタンパク質毒性ストレスは、6時間~24時間のある時点で減少し始める。
【0060】
エピシャペローム安定性の時間依存性は、MiaPAca2腫瘍モデルを用いても示されている(図11eを参照されたい)。この場合、PU-H71をAbraxane(登録商標)と同時に、又はAbraxane(登録商標)の投与から1時間、3時間若しくは6時間前の時点で毎週投与した。開始から36日後に腫瘍の退縮率(%)を測定した。Abraxane(登録商標)をPU-H71の前に投与した全ての事例で、36日後の退縮率は、PU-H71とAbraxane(登録商標)を同時に投与したときよりも高かった。Abraxane(登録商標)とPU-H71の時間間隔が1~6時間で増加するにつれて、退縮率も増加した(図11eを参照されたい)。
【0061】
HSP90阻害剤とタキサンを同時投与する以前の実験では、停滞又は退縮などの控え目な結果が達成された(例えば、Proia et al,Clin Cancer Res;20(2);413-24を参照されたい)。本発明は、開示される組合せでHSP90阻害剤とタキサンとを使用する治療的処理計画の初めての実証を提供する。実施例8及び13並びに図11~14及び19~23に示されるように、H1975肺癌、MiaPaca2膵臓癌、HCC-1806トリプルネガティブ乳癌、又はMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌の異種移植片を担持するマウスを最初にAbraxane(登録商標)、その6時間後にPU-H71の投与により処理すると、優れた結果が得られた。重要なことに、モデルへのAbraxane(登録商標)とPU-H71との同時投与では、一般に、特定の期間後に腫瘍の再発が起こる。例えば、H1975腫瘍モデル、HCC-1806腫瘍モデル及びMiaPaCa2腫瘍モデルにおいて、Abraxane(登録商標)とPU-H71との同時投与から約100日後に再発が観察される(図11bを参照されたい)。しかし、これらの同じモデルに、Abraxane(登録商標)をPU-H71の6時間前に投与すると、概して再発は観察されない(図11bを参照されたい)。例えば、H1975腫瘍モデルでは、Abraxane(登録商標)の6時間後のPU-H71の投与により処置したマウスには腫瘍成長が観察されなかった。この場合、Abraxane(登録商標)とPU-H71との処置を薬剤の最初の投与から165日目に停止し、最初の投与から421日目までマウスをモニターしたが、腫瘍成長は観察されなかった。この結果から、開示される投与レジメンの使用により、単に停滞をもたらすのではなく、治癒を達成し得ることがわかる。この点を立証するために、図12は、異種移植されたMiaPaca2膵臓癌腫瘍を担持するマウスに、表示される治療パラダイムで投与した場合のPU-H71及びAbraxane(登録商標)の治療レジメンにおいて5週間にわたり撮影された代表的なマウスの写真を示す。Abraxane(登録商標)投与から6時間後のPU-H71の連続的処理によって治癒が達成されたのに対し、Abraxane(登録商標)とPU-H71との同時処置では、停滞又は退縮が達成された。同様の結果がH1975肺癌モデル(図13bを参照されたい)及びHCC-1806及びMDA-MB-231腫瘍モデル(図14a及び14bを参照されたい)でも得られた。
【0062】
従って、本開示は、タンパク質毒性ストレッサーと、エピシャペローム複合体の一部であるシャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤との合理的併用療法を用いて癌を治療する方法を提供する。投与は、タンパク質毒性ストレッサーとシャペロン又はコシャペロン阻害剤との適切なタイミングに依存する。エピシャペローム複合体を形成するタンパク質の具体的な阻害剤としては、HSP90阻害剤、HSP70阻害剤、AHA-1阻害剤、CDC37阻害剤、HOP阻害剤、HSP40阻害剤及びHSP110阻害剤又はそれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、HSP90阻害剤である。一実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、グルコース調節タンパク質94(Grp94)と呼ばれるHSP90パラログである。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、HSP70阻害剤である。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、国際公開第2011/022440号パンフレット又は国際公開第2015/175707号パンフレットに(各々の全内容が参照により本明細書に組み込まれる)開示されているHSP70阻害剤である。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、HSP90阻害剤とHSP70阻害剤との組合せである。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、AHA-1阻害剤である。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、CDC37阻害剤である。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤は、HOP阻害剤である。
【0063】
一部の実施形態では、提供される方法は、治療対象の癌の部分的又は完全な寛解をもたらす。一部の実施形態では、寛解は、癌の徴候及び症状が軽減されるか、又は検出不可能になることを特徴とする。一部の実施形態では、提供される方法は、癌のあらゆる徴候及び症状を消失させる。一部の実施形態では、提供される方法は、癌の再発が治療後に観察されないことを特徴とする。一部の実施形態では、提供される方法は、腫瘍の単なる停滞又は退縮を超える実質的に改善された結果をもたらすことを特徴とする。一部の実施形態では、提供される方法は、治療対象の癌の治癒を達成する。一部の実施形態では、提供される方法により、治療後に検出可能な腫瘍がなくなる。
【0064】
一態様では、本開示は、タンパク質毒性ストレッサーによる前処理後、エピシャペローム複合体の一部であるシャペロン又はコシャペロンタンパク質の阻害剤を癌患者に投与することによって癌を治療する方法を提供する。タンパク質毒性ストレッサーは、エピシャペローム複合体の形成を増加又は最大にし、それによって腫瘍をシャペロン又はコシャペロン阻害療法に対して最も脆弱にするために、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与前の十分な時点で投与される。様々なタンパク質毒性ストレッサーが異なる薬物動態及び薬力学プロフィールを有し、これらがその投与のタイミングに影響を与え得ることは理解されるであろう。例えば、生物学的半減期、代謝及び組織分布などの因子は、タンパク質毒性ストレッサーの作用の開始及び持続時間に影響を与えるため、安定化エピシャペローム複合体の形成のタイミングに影響を与えることになる。投与方法(例えば、静脈内対経口)などの他の因子もエピシャペローム複合体の形成に影響を与えるであろう。同様に、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の薬物動態及び薬力学プロフィールは、こうした阻害剤のタイミング及び投与に影響を与え得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも1時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも2時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも3時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも3、4時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも3、5時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも6時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも7時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも8時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも9時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも10時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも12時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも18時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも24時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも36時間後に投与される。別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤の投与から少なくとも48時間後に投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーは、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約1~3時間前、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約2~4時間前、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約3~5時間前、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約2~6時間前、HSP90阻害剤の投与の約3~6時間前、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約4~6時間前、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約4~8時間前、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約4~10時間前、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の投与の約5~7時間前等の範囲内の時点で投与される。
【0066】
特定の実施形態では、タンパク質毒性薬剤は、非経口(例えば、静脈内)投与される。このような実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、非経口投与の完了後のある時点で投与される。例えば、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間又は12時間後に投与され得る。いくつかの実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤は、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約1~3時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約2~4時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約3~5時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約2~6時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約3~6時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約4~6時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約4~8時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約4~10時間後、タンパク質毒性薬剤の非経口投与の完了から約5~7時間後等の範囲内の時点で投与される。
【0067】
本開示の一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるシャペロン又はコシャペロン阻害剤は、HSP90阻害剤である。こうした実施形態の1つでは、HSP90阻害剤は、8-(6-ヨード-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルスルファニル)-9-(3-イソプロピルアミノ-プロピル)-9H-プリン-6-イルアミン(PU-H71)又はその薬学的に許容される塩である。
【化1】
【0068】
タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与され得るPU-H71は、8-(6-ヨード-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルスルファニル)-9-(3-イソプロピルアミノ-プロピル)-9H-プリン-6-イルアミン(PU-H71)又はその薬学的に許容される塩(例えば、HCl塩)である。PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約5mg/m~約350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与され得る。本開示によれば、タンパク質毒性ストレッサーは、一般に、PU-H71の各投与前の予め定めた時点で投与される。特定の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約20mg/m~約60mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約60mg/m~約150mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約200mg/m~約350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回、週2回、週3回、週4回、又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約250mg/m~約300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週2回の投与スケジュールに従って約250mg/m~約300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。別の実施形態では、PU-H71は、週1回の投与スケジュールに従って約300mg/m~約350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される。
【0069】
別の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーHsp90阻害剤の投与後に投与されるHSP90阻害剤は、式I:
【化2】
の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、式中:
各Yは、独立にCH又はNであり;
Rは、任意選択で1若しくは複数個のヘテロ原子、又はリンカーを介してN9に結合されたターゲッティング部分を含む水素、C~C10アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり;
は、水素又はハロゲンであり;
は、CH、CF、S、SO、SO、O、NH、又はNRであり、ここで、Rは、アルキルであり;
は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ピロリル、任意選択で置換されたアリールオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバミル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、アシルアミノ、アルキルスルホニルアミド、トリハロメトキシ、トリハロ炭素(trihalocarbon)、チオアルキル、COO-アルキル、NH、OH、CN、SO、NO、NO、C=SR、NSO、C=ORであり、ここで、Xは、F、NH、アルキル又はHであり、Rは、アルキル、NH、NH-アルキル又はO-アルキルであり;
は、アリール基の4’及び5’位に配置される、同じでも異なっていてもよい2つの置換基を表し、ここで、Xは、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ピロリル、任意選択で置換されたアリールオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバミル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、アシルアミノ、アルキルスルホニルアミド、トリハロメトキシ、トリハロ炭素(trihalocarbon)、チオアルキル、SO-アルキル、COO-アルキル、NHOH、CN、SO、NO、NO、C=SR、NSO、C=ORであり、ここで、Xは、F、NH、アルキル又はHから選択され、Rは、アルキル、NH、NH-アルキル、又はO-アルキル、C~Cアルキル若しくはアルコキシであるか、又はXは、式-O-(CH-O-を有し、ここで、nは、0~2の整数であり、酸素の一方は5’位で結合され、他方はアリール環の4’-位で結合される。
【0070】
本開示の別の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーHsp90阻害剤の投与後に投与されるHSP90阻害剤は、式II:
【化3】
の化合物であり、式中:
Y’は、-CH-又はSであり;Xは、水素又はハロゲンであり;Rは、アミノ窒素上で、任意選択で、アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基からなる群から独立に選択される1又は2個の炭素含有置換基により置換されたアミノアルキル部分であり、ここで、アミノアルキル部分中の炭素の総数は、1~9である。
【0071】
本開示の別の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、式III又はIV:
【化4】
の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、式中:
(a)Z、Z及びZ、の各々は、独立にCH又はNであり;
(b)Yは、CH、O、又はSであり;
(c)Xa、Xb、Xc及びXdは、原子価を満たすように、CH、CH、O、N、NH、S、カルボニル、フルオロメチレン、及びジフルオロメチレンから独立に選択され、ここで、X基との各結合は、単一結合又は二重結合のいずれかであり;
(d)Xは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、飽和若しくは不飽和複素環、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン化アルコキシ、アルケニルオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルバミル、アミド、ジアルキルアミド、アルキルアミド、アルキルスルホンアミド、スルホンアミド、トリハロ炭素、-チオアルキル、SO-アルキル、-COO-アルキル、OH又はアルキル-CNであり;
(e)Xは、水素又はハロゲンであり;
(f)Rは、-(CH-N-R101112又は-(CH-N-R1011であり、ここで、mは、2又は3であり、R10~R12は、水素、メチル、エチル、エテニル、エチニル、プロピル、ヒドロキシアルキル、イソプロピル、t-ブチル、イソブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、窒素を含む3員環又はNと任意選択で原子価を満たすための置換基を有する別のヘテロ原子とを含む6員環から独立に選択され、但し、R10~R12の全てが存在する場合、化合物は、薬学的に許容される対イオンをさらに含む。
【0072】
本開示の別の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、ゲルダナマイシンである。本開示の別の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)である。
【0073】
他の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、17-DMAG、合成化合物CNF-2024(BIIB021)、及び合成化合物PU-DZ13から選択される。
【0074】
他の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、SNX-5422、SNX-2112、及びKW-2478から選択される。これらの化合物の構造は、図16及び17に描かれている。
【0075】
別の実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、STA-9090である。STA-9090は、以下の構造:
【化5】
を有する。
【0076】
一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、図16又は17に描かれる化合物である。
【0077】
一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるHSP90阻害剤は、国際公開第2006/084030号パンフレット、国際公開第2008/005937号パンフレット、国際公開第2011/044394号パンフレット、国際公開第2012/138894号パンフレット、又は国際公開第2012/138896号パンフレット(各々の全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている化合物である。
【0078】
本開示の一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーの投与後に投与されるシャペロン又はコシャペロン阻害剤は、HSP90阻害剤である。本開示の方法に従って投与されるGRP94阻害剤の具体的な例は、国際公開第2015023976A2号パンフレットに記載されており、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
一実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の前に投与されるタンパク質毒性ストレッサーは、化学療法薬である。具体的な化学療法試薬としては、限定されないが、微小管安定剤、プロテアソーム阻害剤、抗代謝薬、アントラサイクリン、及びアルキル化剤が挙げられる。化学療法薬は、細胞中に形成されるエピシャペメームのレベルを増加することができる用量で供給される。一実施形態では、化学療法薬は、癌患者に一般に投与される用量で投与され得る。別の実施形態では、化学療法薬は、癌患者に一般に投与される量より低い用量で投与され得る。
【0080】
こうした一実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の前に投与される化学療法薬は、微小管安定剤である。具体的な微小管安定剤としては、限定されないが、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、イキサベピロン、ビンクリスチン、ラウリマリド、ジスコデルモリド及びエポチロンが挙げられる。一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーは、Abraxane(登録商標)などのタンパク質結合パクリタキセル組成物である。
【0081】
別のこうした実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の前に投与される化学療法薬は、プロテアソーム阻害剤である。具体的なプロテアソーム阻害剤としては、限定されないが、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びCEP-18770(デランゾミブ)が挙げられる。
【0082】
別のこうした実施形態では、シャペロン又はコシャペロン阻害剤の前に投与される化学療法薬は、ペメトレキセド、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、レナリドミド、アピオシリブ、PD407824及びMK1775から選択される化学療法薬である。
【0083】
別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の前に投与されるタンパク質毒性ストレッサーは、放射線療法によって供給される。放射線は、身体外部の機械によって送達してもよく(体外照射療法)、又は身体内の癌細胞近傍に配置された放射性物質から放出させてもよい(内部放射線療法)。
【0084】
別の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の前に投与されるタンパク質毒性ストレッサーは、温熱療法によって供給される。温熱療法は、身体外部の機械から身体表面付近の腫瘍に向けられる高エネルギーによって外部から誘導することができる。或いは、温熱療法は、腫瘍内に配置された針又はプローブによって体内で誘導することもできる。
【0085】
本開示の一実施形態では、PU-H71は、パクリタキセル又はドセタキセルの投与後に投与される。1つの具体的な実施形態では、PU-H71は、Taxol(登録商標)(クレモホール中のパクリタキセル)の投与後の特定の時点で投与される。別の実施形態では、パクリタキセルは、LEP-ETU(NeoPharm)、EndoTAG(登録商標)-1(Medigene)又は;Lipusu(登録商標)(Luye Pharma Group)などのリポソーム製剤中で投与される。一実施形態では、パクリタキセルは、ナノ分散液として投与される。こうしたナノ分散液ベースのパクリタキセル注射の一例は、PICN(ナノ分散液用パクリタキセル注射)(Sun Pharma)である。
【0086】
特定の一実施形態では、PU-H71は、パクリタキセルの投与後の指定された時点で投与される。パクリタキセルは、様々な方法によって製剤化することができる。例えば、パクリタキセルは、Abraxane(登録商標)などのタンパク質結合パクリタキセル組成物又はTaxol(登録商標)などのクレモホールベースの製剤として製剤化することができる。こうした実施形態では、パクリタキセルは、一般に、静脈内投与される。パクリタキセルの各静脈内投与は、予め定められた期間にわたって行われるが、これは、患者及び用量に応じて変わり得る。例えば、パクリタキセルは、1時間~96時間の範囲の期間にわたって注入され得る。特定の実施形態では、パクリタキセルは、1、3、又は24時間かけて注入される。次に、パクリタキセルの静脈内投与の完了後、指定された時点でPU-H71が投与され得る。例えば、PU-H71は、パクリタキセルの投与完了から少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間又は少なくとも12時間後に投与され得る。一部の実施形態では、PU-H71は、パクリタキセルの投与完了から少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間後に投与され得る。一部の実施形態では、PU-H71は、パクリタキセルの投与後12時間以内に投与される。具体的な実施形態では、PU-H71は、パクリタキセルの投与後24時間以内に投与される。具体的な実施形態では、PU-H71は、パクリタキセルの投与後48時間以内に投与される。別の実施形態では、PU-H71は、パクリタキセルの投与後5~7時間後に投与される。
【0087】
PU-H71がAbraxane(登録商標)の投与後に投与される実施形態では、Abraxane(登録商標)の投与量及びタイミングは、一般に、Abraxane(登録商標)の静脈内投与後の指定された時点でPU-H71が投与される限り、Abraxane(登録商標)についての添付文書で指示されるスケジュールに従うことができる。例えば、転移性乳癌の場合、Abraxane(登録商標)の推奨される用量は、3週間毎に静脈内で30分間260mg/mである。非小細胞肺癌の場合、Abraxane(登録商標)の推奨される用量は、各21日サイクルの第1、8及び‘5日に静脈内で30分間100mg/mである。膵臓の腺癌の場合、Abraxane(登録商標)の推奨される用量は、28日サイクルの第1、8及び15日に静脈内で125mg/mである。しかしながら、添付文書に示される投与量及びタイミングがそれから変動し得ることは理解されるであろう。例えば、PU-H71をAbraxane(登録商標)の後に投与する場合に呈示される相乗効果は、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される用量に比してAbraxane(登録商標)の用量の減少を可能にするであろう。このように、本開示の方法に従って投与されるAbraxane(登録商標)及びPU-H71のレジメンで、癌患者に投与されるAbraxane(登録商標)の用量は、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の80%、その量の70%、その量の60%、その量の50%、その量の40%、その量の30%又はその量の20%であり得る。いくつかの実施形態では、Abraxane(登録商標)は、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の20%~100%、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の40%~100%、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の60%~100%、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の20%~80%、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の40%~80%、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の50%~70%、Abraxane(登録商標)の添付文書に示される量の50%~60%等の量で投与され得る。
【0088】
PU-H71がTaxol(登録商標)の投与後に投与される実施形態では、Taxol(登録商標)とPU-H71は、限定されないが、3週に1用量、2週に1用量又は毎週1用量などの様々な投与スケジュールで投与され得る。3週及び2週実行スケジュールは、一般に、3時間、24時間又は96時間の注入で135~250mg/mのTaxol(登録商標)用量を利用する。1週間投与スケジュールは、一般に、40~100mg/mのTaxol(登録商標)の1時間注入を利用する。例えば、Taxol(登録商標)は、毎週40mg/m、50mg/m、60mg/m、70mg/m、80mg/m、90mg/m又は100mg/mの用量で投与され得る。
【0089】
タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ(例えば、HSP90)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、治療サイクルと呼ばれる一定の間隔で投与され得る。治療サイクルは、投与スケジュールが、その反復を開始する日数として定義される。タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、一般に、治療サイクルの第1日に投与され、その治療サイクルの別の日に投与され得る。例えば、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、7日、10日、14日、21日、28日又は30日の投与スケジュールにわたって1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は10回投与され得る。週1回の薬剤投与が処方されている場合、治療サイクルは、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とがサイクルの第1日に投与され、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)、又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質阻害剤が治療サイクルの第2~6日に投与されない、7日の期間として定義される。3週に1回の薬剤投与が処方されている場合、治療サイクルは、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とがサイクルの第1日に投与され、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)、又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質阻害剤が治療サイクルの第2~21日に投与されない、21日の期間として定義される。タンパク質毒性ストレッサーとシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とが28日投与スケジュールの第1、8及び15日に投与されるように処方されている場合、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)、又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質阻害剤は、各サイクルの第16~28日に投与すべきではない。
【0090】
一態様では、本開示は、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤との組合せを7日~31日の治療サイクルにわたって投与することにより癌を治療する方法を提供し、ここで、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、前記サイクルにわたって少なくとも1回投与され、前記タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)の各投与後、前記シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤が投与される。本開示によれば、シャペロン又はコシャペロンタンパク質の投与は、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)によって誘導されるエピシャペローム形成の増加後に開始する。一部の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも1時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも2時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも3時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも3、4時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも5時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも6時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも7時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも8時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも9時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも10時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも12時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも24時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも36時間後に投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)を投与してから少なくとも48時間後に投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質毒性ストレッサー又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)は、前述の実施形態のいずれかの間、例えば、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約1~3時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約2~4時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約3~5時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約2~6時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約3~6時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約4~6時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約4~8時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約4~10時間前、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤の投与の約5~7時間前等の範囲内の時点で投与される。
【0091】
一部の実施形態では、治療サイクルは、21日サイクルであってよく、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、サイクルの第1日にのみ投与される。一部の実施形態では、治療サイクルは、21日サイクルであってよく、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、サイクル期間中、2回、3回、4回、5回、6回、7回又は8回投与される。一部の実施形態では、治療サイクルは、14日サイクルであってよく、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、サイクル期間中、1回、2回、3回、4回、5回、又は6回投与される。一部の実施形態では、治療サイクルは、28日サイクルであってよく、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、サイクル期間中、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は10回投与される。いくつかのこうした実施形態では、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、28治療サイクルの第1、8及び15日に投与され得る。他の実施形態では、治療サイクルは、7日サイクルであってよく、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とシャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、サイクルの第1日に投与される。
【0092】
一部の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)は、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)が投与される日にのみ投与される。他の実施形態では、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、タンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)が投与される日、並びにタンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)が投与されない日に投与される。例えば、2週間サイクルの場合、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤とタンパク質毒性ストレッサー(又はシャペロン若しくはコシャペロンタンパク質の翻訳後修飾のモジュレータ)とは、サイクルの第1及び8日に投与され得、シャペロン又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、サイクルの第4及び11日に単独で投与され得る。
【0093】
タンパク質毒性ストレッサーとシャペロンタンパク質阻害剤又はコシャペロンタンパク質阻害剤とを投与する方法としては、限定されないが、内皮、筋肉内、腹腔内、経口、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、経口、舌下、大脳内、膣内、経皮、直腸、吸入による、又は局所、特に耳、鼻、眼、若しくは皮膚が挙げられる。
【0094】
タンパク質毒性ストレッサーとシャペロンタンパク質阻害剤又はコシャペロンタンパク質阻害剤は、各々薬学的に許容される組成物として投与され得る。組成物は、任意選択で、治療を受ける患者への適切な投与のための形態を提供するように、好適な量の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。こうした医薬賦形剤は、希釈剤、懸濁剤、可溶化剤、結合剤、崩壊剤、防腐剤、着色剤、潤滑剤などであってよい。医薬賦形剤は、液体、例えば、水、又は石油、動物、植物、若しくは合成由来の油をはじめとする油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであってよい。医薬賦形剤は、食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであってよい。加えて、補助、安定化、増粘、潤滑、及び着色剤を使用することができる。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、動物に投与される場合、無菌である。
【0095】
食塩水及び水性デキストロース及びグリセロ―ル溶液も液体賦形剤として、特に注射液の場合に使用することができる。好適な医薬賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、EtOHなども挙げられる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含んでもよい。経口剤形を製剤化するために使用することができる薬学的に許容される担体及び賦形剤の具体的な例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,(Amer.Pharmaceutical Ass’n,Washington,DC,1986)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0096】
組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、ペレット、液体を含むカプセル、粉末、徐放性製剤、坐薬、乳剤、エアゾル、スプレー、懸濁体、又は使用に適した他の任意の形態をとることができる。
【0097】
化合物を非経口注射する場合、これは、例えば、滅菌等張液の形態であってよい。或いは、本開示の化合物を吸入させる場合、これを乾燥エアゾルに製剤化するか、又は水溶液若しくは部分水溶液に製剤化することができる。
【0098】
一実施形態では、タンパク質毒性ストレッサーとシャペロンタンパク質阻害剤又はコシャペロンタンパク質阻害剤とは、静脈内投与のために個別に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性バッファーを含む。必要に応じて、組成物は、可溶化剤をさらに含んでもよい。一般に、成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェットなどの密封容器内の乾燥凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、単位剤形中に個別に又は混合して供給される。化合物を注入により投与する場合、例えば、滅菌医薬グレード水又は食塩水の入った注入ボトルを用いて化合物を分散させることができる。注射により化合物を投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用の滅菌水又は食塩水のアンプルを用意することができる。
【実施例
【0099】
5.1 実施例1:シャペローム複合体の同定
5.1.1 材料及び方法
細胞株。細胞株は、WCMC又はMSKCCの研究室から取得し、これらは、本来American Type Culture Collection(ATCC)又はDSMZから購入された。供給者の推奨する培養条件に従って細胞を培養した。短いタンデム反復プロファイリングを用いて、細胞を確認した後、マイコプラズマ(mycoplasma)についてテストした。
【0100】
原発性乳癌試料。患者の組織の入手は、メモリアルスローンケタリング癌センター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)(New York,NY)の治験審査委員会承認生体試料プロトコル#09-121によって認可された。表示濃度のPU-H71で試料を24時間処理した。処理後、切片を4%ホルマリン溶液中に1時間固定してから、70%エタノール中に保存した。組織分析のために、切片をパラフィン包埋し、切断し、スライドに載せ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。組織スライドは、腫瘍中に存在するアポトーシス並びに正常細胞に対する作用を正確に測定する乳癌病理学者によって盲検的に評価された。
【0101】
NanoProキャピラリーベースの免疫アッセイプラットホームによるタンパク質分析。プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含有する20mM HEPES pH7.5、50mM KCl、5mM MgCl、0.01%NP40、20mM NaMoOバッファー中で細胞を溶解させた。電荷ベースの分離のために、自動システムのNanoPro(商標)1000Simple Western(ProteinSimple(登録商標))で全タンパク質アッセイを実施した。手短には、1×Premix G2 pH3~10分離勾配(Protein simple(登録商標))及び1×等電点標準ラダー(ProteinSimple(登録商標))を含有するマスターミックスを用いて、全細胞溶解物を250ng/μlの最終濃度まで希釈した。このようにして希釈したサンプルはその自然電荷状態を維持し、これらをキャピラリー(ProteinSimple(登録商標))中にロードし、21,000μWattの定電力で、それらの等電点に基づいて40分間分離した。Simple Westernシステムに埋め込まれた紫外線により固定化を実施した後、抗HS90β(SMC-107A,StressMarq Biosciences)又は抗HS90α(ab2928,Abcam)と一緒に、続いてHRP共役抗マウスIgG(1030-05,SouthernBiotech)又はHRP共役抗ウサギIgG(4010-05,SouthernBiotech)と一緒にインキュベートした。SuperSignal(登録商標)West Dura Extended Duration Substrate(Thermo Scientific)、並びにSimple Westernシステムのデジタルイメージング及び関連ソフトウェア(Compass)を用いた化学発光によってタンパク質シグナルを定量した。
【0102】
発現データを収集し、システムにより提供されるソフトウェアCompassにより分析した。MDA-MB-468(Hsp90阻害剤に感受性、高エピシャペロームレベル)、Aspc1(Hsp90阻害剤に対して耐性、低からゼロエピシャペローム)及びHMEC(非形質転換)細胞中に異なるHSP90複合体が検出された。
【0103】
いくつかのnanopro条件を試験した。3~10+5~8両性電解質の混合物は、標準条件と類似のプロフィールを有したが、所望のものより広いピーク分離をもたらした。
【0104】
製造業者によって推奨される20mM Bicine pH7.6、0.6%CHAPSバッファー(バッファー1)及びTris緩衝食塩水(バッファー2)をタンパク質抽出バッファーとして試験した。pl5(Hsp90の標準pl)を超えるピック(picks)は、バッファー1及び2中に溶解させたMDA-MB-468細胞中で有意に減少したが、これは、上記の条件がこれらのタンパク質種の効率的な抽出のために好適でないことを示す。
【0105】
Abcamからのab2927をはじめとするいくつかのHsp90特異的抗体をテストしたところ、H90-10プロフィールと同等のものが得られた。EnzoSPA-830及びSPA-845抗体は、検出可能なシグナルをもたらさなかった。
【0106】
ウエスタンブロッティング。プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を添加した20mM Tris pH7.4、150mM NaCl、1%NP-40バッファーで培養した細胞からタンパク質を抽出した。10~15μgの全タンパク質をSDS-PAGEに付し、ニトロセルロース膜上に移し、表示の抗体と一緒にインキュベートした。HSP90β及びHSP110抗体は、Stressmarqから;HSP70、HSC70、HIP、HOP、及びHSP40は、Enzoから;HSP90β、HSP90α、及びAHA-1はAbcamから;切断PARPは、Promegaから;CDC37は、Cell Signaling Technologyから;並びにβ-アクチンは、Sigma-Aldrichからそれぞれ購入した。ブロットは、TBS/0.1%tween 20で洗浄してから、適切なHRP共役二次抗体と一緒にインキュベートした。製造業者の指示に従ってEnhanced Chemiluminescence Detection System(GE Healthcare)で化学発光シグナルを検出した。
【0107】
ネイティブゲル電気泳動。ネイティブHsp90複合体の抽出のために少量の洗剤を含む溶解バッファー(20mM Tris pH7.4、20mM KCl、5mM MgCl2、0.01%NP40及び10%グリセロール)を選択して、溶解工程中、それらを保存した。凍結融解法によって細胞を溶解させた。50~100gのタンパク質を4~10%ネイティブ勾配ゲルにロードし、4℃で分離させた。0.1%SDS含有の転写バッファー中のニトロセルロース上にタンパク質を1時間転移させ、抗Hsp90抗体と一緒にイムノブロッティングした。いくつかの転移条件を試験して、高分子量HSP90複合体の転移及び検出を可能にするものを決定した。本発明者らは、標準条件下での転移前に25mM Tris、192mMグリシン、0.1%SDS中でゲルを15分間にわたり室温でインキュベートし(条件#1);0.05%SDS含有の転写バッファー中で転移を実施し(条件#2)、0.1%SDS含有の転写バッファー中で転移を実施した(条件#3)。陽性対照及びAHA1ノックダウンサンプルの使用により、シグナルの特異性を試験した。
【0108】
いくつかのHsp90特異的抗体を、それらが高分子量Hsp90種を認識する能力について試験した。その中には、StressMarqからのH90-10クローン(SMC-107A)、Abcamからのab2928、BD Transduction laboratoriesからの610418及びAbcamからのab2927が含まれた。
【0109】
5.1.2 結果
類似組成物及びサイズの複合体を分離する上でのタンパク質分離の限界を克服するために、本発明者らは、等電点電気泳動とイムノブロッティング能力とを併せ持つキャピラリーベースプラットホームの利点を利用した。Fan,A.C.et al.Nanofluidic proteomic assay for serial analysis of oncoprotein activation in clinical specimens Nat Med 15,566-571(2009)。この方法は、その等電点(pI)に基づいてネイティブ多量体タンパク質複合体を分離するために固定化pH勾配を使用し、従って、特定の抗体を含む固定化複合体のプロービングを可能にする。さらに、上記の方法は、これを実施するのに微量のサンプルのみを使用するため、一次試料の検査が可能になる。
【0110】
この方法を用いて、本発明者らは、初めに、ヒト細胞中最も豊富なシャペロームメンバーであるHSP90を分析した。培養された非形質転換細胞(図1a)及び正常乳房組織(図1b)において、HSP90は、4.9の予測pIに主に単一種として集中した。反対に、この方法で分析した癌細胞株は、pI範囲が4.5~6にまたがるHSP90種の複合体混合物を含有した。HSP90α及びHSP90βアイソフォームはいずれも、これらの複合体の一部であった。さらに、癌細胞株は、4.9を下回るpI値を有するいくつかのHSP90複合体を含有していたが、細胞株のサブセットは、5以上の稀有なpIを有するHSP90複合体が豊富であり、これらを本明細書では「タイプ1」細胞と呼ぶ(図1a)。2つの乳房腫瘍に見られるように、高い(タイプ1)及び低い(タイプ2)pIのHSP90複合体のこの区別も原発性乳癌試料で明らかであった(図1b)。興味深いことに、SDS-PAGEにより測定される通り、HSP90の総レベルは、それらがタイプ1又はタイプ2細胞のいずれであるかにかかわらず、分析した全ての細胞でほぼ同一であった(図1a、上部)。
【0111】
2つのタイプのタンパク質修飾、化学及び生化学は、所与のタンパク質の等電点を変えることができる。HSP90は、HSP70及びHSC70(それぞれ誘導性及び構成性細胞質ゾルHSPファミリーメンバーである)、HSP70-HSP90組織化タンパク質(HOP)(ストレス誘導性リンタンパク質1[STIP1]としても知られる)、Hsp90ATPase1のアクチベータ(AHA-1又はAHSA-1)、並びに細胞分裂周期37(CDC37)をはじめとするいくつかのコシャペロンと相互作用することがわかっている。これらのコシャペロンの各々は、異なる役割を有し、CDC37は、HSP90によりキナーゼの活性化を促進し、AHA-1は、そのATPase活性を増大し、HSP70及びHOPは、HSP90と共に様々なタンパク質のシャペロン化に参加する。実際に、ネイティブPAGEにおいてサイズによりHSP90複合体を分離すると、高いpIのHSP90種が豊富な細胞は、高分子量HSP90含有複合体も豊富であることが観察された(図1c)。類似の条件下で、本発明者らは、非形質転換細胞中に1つの主要な種を検出した。これは、正常組織中に一過性HSP90オリゴマー形態(ネイティブ電気泳動条件下で、より小さい二量体及び単量体に解離された)を見出した以前の研究と一致して、HSP90二量体であると推定される。
【0112】
5.2 実施例2:シャペロームメンバーの多量体形態の同定
本発明者らは、続いて、抗シャペローム抗体の群を、そのネイティブ形態で標的タンパク質と相互作用したものについてスクリーニングした。本発明者らは、これらの抗体が、シャペロームメンバーの安定した多量体形態を捕捉する傾向がより高いと判断した。これらのネイティブ-コグネイト抗体を用いて、高分子量HSP90複合体の細胞含有量が高いほど、HSP70、HOP、AHA-1、CDC37、HSP40及びHSP110などの他の必須シャペロームの多量体形態も豊富である(図1d、下部)ことが観察された。シャペロームの四次状態はまちまちであったが、各シャペロームメンバーの全体レベルは比較的一定のままであった(図1d、上部)。
【0113】
5.2 実施例3:HSP90及びHSP70は、マルチシャペローム複合体の核を形成する
5.3.1 材料及び方法
siRNAノックダウン。6ウェルプレート当たり1×10で細胞を平板培養し、ヒトAHS1に対するsiRNA(Qiagen)、又はLipofectamine RNAiMAX試薬(Invitrogen)を含む負の対照でトランスフェクトし、72時間インキュベートした後、さらなる分析に付した。
【0114】
タンパク質欠失。タンパク質溶解物をHSP70(Enzo)、HSC70(Enzo)若しくはHOPのいずれか、又は負の対照として同じ種の正常な抗体(Santa Cruz)で3回連続的に免疫沈降させた。得られた上清を収集し、ネイティブ又は変性ゲル上で泳動させた。
【0115】
5.3.2 結果
タイプ1腫瘍中の安定した多量体シャペローム複合体の組成物を明らかにし、それらの成分同士の関係を調べるために、本発明者らは、個々のシャペロームメンバー、すなわちHSP70、HSC70、HOP、及びAHA-1の細胞発現を改変するか、又はHSP90及びHSP70に対して特異的なベイトを用いて複合体参加成分を捕捉した(実施例4を参照されたい)。本発明者らは、免疫欠失によってHSP70又はHSC70のレベルを低減すると、HSC70の低減が、最も頑健な作用を有し、高分子量シャペローム種の再構成が起こった(図2b)。これらの複合体において、免疫ブロッティングにより、HSP40、熱ショック105kDa/110kDaタンパク質1(HS105若しくはHSP110)、及びHSC70相互作用タンパク質(HIP)(別名ST13、腫瘍原性の抑制剤)の量の変化が確認されたが、これらは全て既知のHSC70相互作用コシャペロンである。本発明者らはまた、HSP90、HOP、及び驚くことに、HSP90活性と関連するコシャペロンであるAHA-1及びCDC37のレベルの変化も観察した(図2b)。シャペロームの実質的な再構成は、総シャペロームレベルに若干影響を与えたに過ぎない。本発明者らは、HOPが免疫欠失した溶解物(HSP40、HSP110、及びCDC37の変化を測定することができた)、並びにAHA-1が欠失したもの(HSP70コシャペロン機構に有意な再構築が認められなかった)において同様の結果を見出した。総合すると、これらのデータは、タイプ1細胞中のHSP90及びHSP70シャペロン機構の機能的相互作用を示す(図2a、b)。
【0116】
5.4.実施例4:親和性によるプロテオミクスを用いたエピシャペロームのタンパク質の捕捉
5.4.1 材料及び方法
化学ベイトプロテオミクス。PU-H71ビーズ(Moulick,K.et al.Affinity-based proteomics reveal cancer-specific networks coordinated by Hsp90.Nature chemical biology 7,818-826(2011)及びYKビーズ(Rodina et al.,ACS Chem Biol.2014 Aug 15;9(8):1698-705)を他の箇所に記載されるように作製した。PU-H71ビーズプルダウンの場合の20mM HEPES pH7.5、50mM KCl、5mM MgCl、1%NP40、及び20mM NaMoO、又はYKビーズプルダウンの場合の20mM Tris pH7.4、150mM NaCl、及び1%NP40のいずれかでタンパク質抽出物を調製した。サンプルは、PU-H71ビーズと一緒に3~4時間、又はYKビーズと一緒に4℃で一晩インキュベートした後、洗浄し、SDS-PAGE、続くイムノブロッティング及びウエスタンブロット分析に付した。公開されているプロトコルを用いて、プロテオーム解析を実施した(Moulick,K.et al.Affinity-based proteomics reveal cancer-specific networks coordinated by Hsp90.Nature chemical biology 7,818-826(2011)及びNayar,U.et al.Targeting the Hsp90-associated viral oncoproteome in gammaherpesvirus-associated malignancies.Blood 122,2837-2847(2013)。対照ビーズは、不活性分子を含有した。
【0117】
バイオインフォマティクス分析。定量的プロテオミクス測定値の代替物である排他的スペクトルカウント値をタンパク質分析に使用した。CHIP及びPP5を調べ、サンプル同士の内部品質対照として使用した。R(バージョン3.1.3)を用いて統計分析を実施した。Bioconductorのlimmaパッケージからの調整線形モデルを用いてタンパク質富化差異分析を実施した。タンパク質存在量の対数値をタンパク質富化差異分析に使用した。コントラストフィットモデルを用いた実証的ベイズ(Bayesian)統計学を使用して、タイプ1及び組合せタイプ2並びに非形質転換細胞同士のタンパク質存在量の差を表すp値を計算した。パッケージ「gplots」及び「lattice」を用いて、最終候補タンパク質を示すためにヒートマップを作製した。
【0118】
タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)ネットワーク。ヒートマップに示されるタンパク質をSTRINGデータベースにアップロードして、PPIネットワークを作成した。エッジの厚さは、機能性結合の信頼性スコアを示す。次の4つの基準:共発現、実験及び生化学的検証、精選されたデータベースでの関連、及びPubMed要約中の同時言及に基づいてスコアを計算した。隣接する相互作用のないタンパク質は示さなかった。ノード中のカラースケールは、それぞれタイプ1、タイプ2、及び非形質転換細胞中のタンパク質の平均富化(排他的スペクトルカウントとして測定される)を示す。Cytoscapeのエッジ加重スプリング-電子レイアウトを用い、視覚化を改善するためにマージナルノードを若干調節して、タイプ1腫瘍のネットワークレイアウトを作成した。タイプ2及び非形質転換細胞のレイアウトは、よりよい比較のためにタイプ1のレイアウトを保持した。平均相対存在量の値が1未満のタンパク質は、分析から削除した。それらが参加する生物学的プロセス及びタイプ1腫瘍中で富化されたタンパク質の機能性は、遺伝子オントロジー用語、並びにUniProtKB、STRING、及び/又はI2Dデータベースからのそれらの指定インタラクトーム(interactome)に基づいて割り当てた。
【0119】
5.4.2 結果
本発明者らは、HSP90及びその関連インタラクトーム(Moulick,K.et al.Affinity-based proteomics reveal cancer-specific networks coordinated by Hsp90.Nature chemical biology 7,818-826(2011))、又はHSC70/HSP70及びそのインタラクトーム(Rodina,A.et al.Affinity purification probes of potential use to investigate the endogenous Hsp70 interactome in cancer.ACS Chem Biol 9,1698-1705(2014))を捕捉する化学ベイトを用いて、タイプ1、タイプ2、及び非形質転換細胞から内在性シャペローム複合体を単離した。次に、単離物を主要シャペロームメンバー、特にHSP40及びHSP110などのHSP70、並びにAHA-1及びCDC37などのHSP90の既知調節因子についてプロービングした。さらに、本発明者らは、HSP70とHSP90機構の架橋コシャペロンであるHOPについてもプロービングした(図2a、c)。これらの実験から2つの主要な知見が得られた。第1に、タイプ1腫瘍中のHSP90及びHSC70/HSP70核形成複合体の富化を見出した。対照的に、同じ実験条件下で、タイプ2癌細胞及び非形質転換細胞で単離されたこのような複合体は少なかった。第2に、タイプ1細胞では、予想外なことに、HSP90コシャペロンであるAHA-1及びCDC37は、HSP70指向性ベイト上で富化されたのに対し、HSP110及びHSP40などのHSP70コシャペロンが、HSP90指向性ベイト上で富化されることが判明した。これらの観測結果は、HSP90及びHSP70機構の物理的相互作用を示す(図2a、c)。
【0120】
HSP90機構の作用について現在容認されているメカニズムは、早期、中間期及び後期のシャペロン複合体の一過性集合及び解体に関与する連続的なものである。早期では、HSP70は、HSP40コシャペロンの1つと一緒に新生又は変性タンパク質を捕捉する。次に、クライアントタンパク質が、HSP70複合体からHSP90複合体に転移した中間複合体が形成される。ヌクレオチド及びコシャペロンにより調節される立体構造的変化はこれを成熟複合体に移行し、そこで活性クライアントタンパク質が放出される。HOP及びCDC37は、経路へのクライアントの進入を制御する中間期コシャペロンであり、p23及びAHA-1は、クライアントタンパク質成熟をもたらす周期の後期に関与する(Rehn,A.B.&Buchner,J.in The Networking of Chaperones by Co-chaperones 113-131(Springer,2015))。
【0121】
しかしながら、連続的に作用して、ホメオスタシス中にタンパク質を折り畳む一過性HSP90及びHSP70シャペローム複合体のモデルは、タイプ1腫瘍におけるいくつかのHSP90及びHSP70-中心複合体の同時存在を説明するものではない。そうではなく、本発明者らのデータは、タイプ1腫瘍に特有の認識が起こって、タイプ2腫瘍及び正常細胞中に見られるものと異なるシャペロームをもたらすことを示す。タイプ1シャペロームは、両機構のコシャペロンを同時に組み込む安定なHSP90及びHSP70-中心複合体の存在を特徴とし;これは、ネイティブPAGE条件下でのそれらの安定性、さらには両ベイトによるそれらの捕捉によって立証される。
【0122】
タイプ1腫瘍中のシャペロームの特異的再構成を支持する生化学的メカニズムを理解し、さらにはこれらの多量体複合体の成分を同定するために、本発明者らは、非バイアスプロテオーム解析を実施した。具体的には、HSP90ベイトを用いて、タイプ1(n=6)及びタイプ2(n=3)癌細胞、並びに非形質転換(n=3)細胞からのホモジネートをプロービングした。HSP90複合体を捕捉することを確実にするために、本発明者らは、HSP90-ベイト飽和の条件下でこれらの試験を実施した。次に、タンパク質単離物を質量スペクトル分析に供したところ、クライアントタンパク質及びモジュレータをはじめとする多様なHSP90相互作用を見出したた。これらのうち、本発明者らは、バイオインフォマティクス分析のために110のタンパク質を選択したが、それらには、シャペロン、コシャペロン、スカフォールディング、フォルダーゼ、及びイソメラーゼタンパク質として機能することがわかっており、従ってタイプ1腫瘍中に観察されるシャペローム再構成に参加する可能性が高いタンパク質が含まれる。
【0123】
5.5.実施例5:エピシャペロームは、癌細胞生存を促進する
5.5.1 材料及び方法
試薬。PU-H71、NVP-AUY-922、SNX-2112、及びYKをはじめとする、本試験で使用するHSP90及びHSP70阻害剤は、以前報告されている通りに合成した(Moulick,K.et al.Affinity-based proteomics reveal cancer-specific networks coordinated by Hsp90.Nature chemical biology 7,818-826(2011)及びTaldone,T.et al.Heat shock protein 70 inhibitors.2.2,5’-thiodipyrimidines,5-(phenylthio)pyrimidines,2-(pyridin-3-ylthio)pyrimidines,and 3-(phenylthio)pyridines as reversible binders to an allosteric site on heat shock protein Journal of medicinal chemistry 57,1208-1224(2014))。STA-9090は、MedKoo Biosciencesから、CUDC-305は、ChemieTekから購入した。
【0124】
表示の細胞:MDAMB468(タイプ1、高エピシャペローム、HSP90嗜癖性、HSP90阻害剤に感受性)、ASPC1(タイプ2、低~ゼロのエピシャペローム、HSP90依存性、HSP90阻害剤耐性)及びHMEC(非形質転換)の溶解物をPU-H71ビーズ(固体支持体に結合させたPU-H71)と共にその量を増加させながら、又は対照ビーズ(不活性化学物質を結合させたビーズ)と一緒にインキュベートした(図3a)。上清をネイティブゲル分離に適用した後、HSP90及びその他のエピシャペローム複合体成分を用いたイムノブロッティング(左、MDAMB468についての例)、又はnanopro等電点電気泳動及びイムノブロッティング(左、3つの細胞全てについて示す)を実施した。各実験条件の2回反復を表示する。データをグラフ化し、3つの細胞タイプに発現される、HSP90種に対するPU-H71の相対結合親和性を示した。
【0125】
表示の癌細胞(乳癌、リンパ腫、膵臓癌が示される)におけるネイティブ及び変性ゲル条件下でのHSP90の生化学的プロフィールである。nanoproによる等電点電気泳動は、タイプ1(嗜癖性、HSP90阻害剤に感受性)及びタイプ2(依存性、HSP90阻害剤に抵抗性)癌細胞中のエピシャペローム複合体の存在量を示す(図3b)。
【0126】
PU-FITCフローサイトメトリーアッセイにより決定されたエピシャペローム存在量。(図3c)。細胞を1μM PU-H71-FITCで処理した。処理から4時間後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄した。生存細胞中のPU-H71-FITC結合を測定するために、室温において細胞をFACSバッファー中の7-AADで10分間染色してから、フローサイトメトリー(BD Biosciences)により分析した。アネキシンv染色を用いて細胞生存能を決定した。1μM PUH71処理から48時間後、細胞をアネキシンV-V450(BD Biosciences)及びアネキシンVバッファー中の7-AADで染色した後、フローサイトメトリーに供して、アネキシンV/7AAD二重ネガティブゲートにより決定される生存能を測定した。
【0127】
5.5.2 結果
図3aに示すように、固体支持体に結合したPU-H71は、等電点電気泳動によって測定される通り、エピシャペローム形成の量を有効に低減することができた。PU-H71の濃度が増加するにつれて、溶解物中のエピシャペロームの量に明瞭な用量依存的減少が見られた。図3bにおいて、本発明者らは、HSP90阻害剤に対して感受性の細胞におけるエピシャペローム複合体の存在量が、HSP90阻害剤に対して感受性ではない細胞より有意に高いことを示す。図3cにおいて、本発明者らは、HSP90阻害剤PU-H71が、ハウスキーピング、正常細胞HSP90よりも、ストレスHSP90種に対して高い親和性を有するため、適切に標識されたPU-H71を用いて、生存細胞中のストレスHSP90の存在量を定量し得ることを明らかにする。
【0128】
さらに、本発明者らは、エピシャペロームが豊富な細胞は、エピシャペロームのレベルがより低い細胞と比較して、PU-H71に曝露されると死滅する傾向が高いことも見出した(図3d)。乳癌、肺癌、膵臓癌及び胃癌、並びに白血病及びリンパ腫を含む90超の癌細胞株において、本発明者らは、エピシャペロームの存在量と、HSP90阻害剤に対するこれらの癌細胞の感受性との間に有意な相関(P<0.0001)を見出した。AHA-1タンパク質のレベルを低減することによってエピシャペロームの存在量を低下させると、細胞はPU-H71による殺傷を被りにくくなった(図3e)。HSP90複合体に対して様々な選択性を有する、化学的に異なるHSP90指向性薬剤がPU-H71のプロフィールを再現したことから、この作用は、PU-H71処理に限定されなかった。タイプ1腫瘍もこれらの薬剤により有効に殺傷されるが、タイプ2腫瘍は、不応性のままであった(図3g)。総合すると、これらの観測結果から、エピシャペロームが、これらの腫瘍における生存を促進する手段として確認される。
【0129】
5.6. 実施例6:エクスビボ試験
5.6.1 材料及び方法
原発性乳房腫瘍プロトコル。この試験で使用されるエクスビボプロトコルを図4に概略的に示す。サンプル調製及び処理は、治療薬の前臨床及び臨床試験のための原発性腫瘍及び/又は関連転移のエクスビボ治療応答に詳述されている。Corben AD,Uddin MM,Crawford B,Farooq M,Modi S,Gerecitano J,Chiosis G,Alpaugh ML.J Vis Exp.2014 Oct 2;(92):e52157。
【0130】
白血病サンプルのPU-FITCフローアッセイ(図5c)。以前記載されている通りにPU-FITCアッセイを実施した(Taldone,T.et al.Synthesis of purine-scaffold fluorescent probes for heat shock protein 90 with use in flow cytometry and fluorescence microscopy.Bioorganic&medicinal chemistry letters 21,5347-5352(2011)。手短には、細胞を1μM PU-FITCと一緒に37℃で4時間インキュベートした。次に、細胞をFACSバッファー(PBS/0.5%FBS)で2回洗浄してから、1μg/mlのDAPIを含有するFACSバッファー中に再懸濁させた。処理済み生存AML細胞(DAPI-ve)中のPU-FITCの平均蛍光強度(MFI)をフローサイトメトリーにより評価した。原発性AML試料の場合、芽細胞及びリンパ球集団を同定するために細胞を抗CD45-APC-H7(BD biosciences)でも染色した。SSC対CD45に基づき、芽細胞及びリンパ球集団をゲーティングした。負の対照としてFITC誘導体FITC9を使用した。
【0131】
原発性乳癌試料。患者組織の入手は、メモリアルスローンケタリング癌センター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)(New York,NY)の治験審査委員会承認生体試料プロトコル#09-121によって認可された。表示濃度のPU-H71で試料を24時間処理した。処理後、切片を4%ホルマリン溶液中に1時間固定してから、70%エタノール中に保存した。組織分析のために、切片をパラフィン包埋し、切断し、スライドに載せ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。組織スライドは、腫瘍中に存在するアポトーシス並びに正常細胞に対するあらゆる作用を正確に測定する乳癌病理学者によって盲検的に評価された。
【0132】
原発性急性骨髄性白血病。凍結保存一次AMLサンプルは、インフォームドコンセント及びワイルコーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)治験審査委員会の承認を得て、ペンシルバニア大学幹細胞及び異種移植片コア施設(University of Pennsylvania Stem&Xenograft Core Facility)から取得した。サンプルを解凍し、37℃で1時間培養した後、以前記載されている通りに処理を施した(Hassane,D.C.et al.Chemical genomic screening reveals synergism between parthenolide and inhibitors of the PI-3 kinase and mTOR pathways.Blood 116,5983-5990(2010))。
【0133】
PU-FITCフローサイトメトリーアッセイによって決定されるエピシャペローム存在量。細胞を1μM PU-H71-FITCで処理した。処理から4時間後、細胞をFACSバッファー(PBS-0.5%FBS)で2回洗浄した。生存細胞中のPU-H71-FITC結合を測定するために、室温においてFACSバッファー中の7-AADで細胞を10分間染色してから、BD-LSR-II又はBD-Cantoサイトメトリー(BD Biosciences)を用いて分析した。アネキシンV染色により細胞生存能を決定した。1μM PUH71処理から48時間後、アネキシンV BD Horizon-V450(BD Biosciences)及びアネキシンVバッファー中の7-AADで細胞を染色した後、フローサイトメトリーに供して、アネキシンV/7AAD二重ネガティブゲートにより決定される生存能を測定した。
【0134】
5.6.2 結果
本発明者らは、エクスビボで原発性腫瘍におけるエピシャペロームの機能的重要性を検証した(図5a~5d)。原発性乳房腫瘍(n=4)(図5a、図5b)及び急性骨髄性白血病(n=40)(図5c、5d)をPU-H71でエクスビボ処理したところ、本発明者らは、安定した多量体エピシャペローム形態を発現するものがPU-H71により最も効果的に殺傷されることを見出した。対照的に、また培養細胞での本発明者らの知見と同様に、タイプ2腫瘍は、ほとんど影響を受けないままであった。AMLサンプル中の乳房試料及び非悪性リンパ腫の場合、隣接する良性組織は、エピシャペロームをほとんど又は全く含有せず、従ってPU-H71に非感受性である(図5a及び5b)。
【0135】
5.7. 実施例7:エピシャペロームに対する腫瘍の依存性
5.7.1 材料及び方法
フローサイトメトリーアッセイ:以前記載されている通りにPU-FITCアッセイを実施した(Taldone,T.et al.Synthesis of purine-scaffold fluorescent probes for heat shock protein 90 with use in flow cytometry and fluorescence microscopy.Bioorganic&medicinal chemistry letters 21,5347-5352(2011))。手短には、細胞を1μM PU-FITCと一緒に37℃で4時間インキュベートした。次に、細胞をFACSバッファー(PBS/0.5%FBS)で2回洗浄してから、1μg/mlのDAPIを含有するFACSバッファー中に再懸濁させた。処理済み生存AML細胞(DAPI-ve)中のPU-FITCの平均蛍光強度(MFI)をフローサイトメトリーにより評価した。
【0136】
循環腫瘍細胞(CTC)のフローサイトメトリー分析。NCT01393509臨床試験の通り、PU-H71処理前及び処理後に末梢血をEDTAチューブ(10ml)中に収集した。フィコール勾配分離によってバフィーコートを取得した。前述のように、PU-FITC結合アッセイを実施した。手短には、2百万個の細胞を1μM PU-FITC又は対照と一緒に37℃で6時間処理した。次に、細胞を洗浄(1×PBS/5%FBS)してから、氷上においてEpCAM-PE(BD Biosciences)、CD14-APC-Cy7及びCD45-APC(ebiosciences,CA)で45分間染色した。細胞を洗浄してから、4℃においてDAPI(1μg/ml)で30分間染色した。BD LSRIIフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて少なくとも百万の事象を取得した。
【0137】
5.7.2 結果
本発明者らは、エピシャペローム複合体が豊富な腫瘍の出現率を評価した。本発明者らは、膵臓癌、胃癌、肺癌、乳癌、リンパ腫、及び白血病を含む95の癌細胞株についてPU-FITCを用いたフローサイトメトリーを実施し、約60~70%が中~高レベルのエピシャペローム複合体を呈示することを見出した、図6a。この試験を患者の腫瘍サンプルで反復すると、原発性液性腫瘍(n=40)、及びリンパ腫などの固形腫瘍について類似の結果が得られた(図6b及び6c)。これは、腫瘍の過半数が、そのサブタイプ、起源、及び遺伝的背景とは無関係に、エピシャペロームを使用することを証明するものである。これは、腫瘍が異なるレベルのエピシャペローム、従ってエピシャペローム成分の阻害、すなわちHSP90阻害剤などの薬剤の単剤投与に対して異なる感受性を発現することもさらに証明した。
【0138】
5.8 実施例8:エピシャペローム形成の誘導
5.8.1 材料及び方法
実施例1に記載した手順を用いて細胞を培養した。タンパク質毒性ストレッサー(例えば、パクリタキセル又はボルテゾミブ)を6時間かけて添加した後、細胞を溶解させた。ネイティブ条件下、ホモジネートを分離のためにゲル上に塗布した。
【0139】
洗い落し試験(図8d)のために細胞を培養し、その後、パクリタキセル(図中、PACと称される)で1~2時間処理してインビボ条件を模倣した。次に、パクリタキセルを洗い落として、どの程度長くエピシャペロームがインビトロで維持されるかを決定した。
【0140】
5.8.2 結果
タンパク質毒性ストレッサーとして化学療法薬を用いる試験の結果を図8a、8b、8e、8f及び10に示す。結果については上のセクション4で論述した。図8dを参照すると、HSP90の生化学的プロフィールをネイティブ条件下で評価した。細胞をパクリタキセルで1時間前処置した後、薬剤を洗い落としてインビボ条件を模倣した。エピシャペロームレベル(標識上部>二量体)は釣鐘状を描き、5~7時間時点でピークが認められ、その後24時間時点までに内在性レベルまで減少する。
【0141】
ホスファターゼ又はリン酸化阻害剤の作用を調べた結果をそれぞれ図9a及び9bに示す。これらの結果は、上のセクション4で論述した。
【0142】
5.9 実施例9:ドセタキセル/PU-H71の組合せ(MiaCa2膵臓癌細胞)
5.9.1 材料及び方法
表示される通りにビヒクル、PU-H71及びドセタキセルの連続的組合せで処理したMiaPaCa2膵臓癌細胞の生存能。Sulforhodamine Bアッセイを用いて、72時間時点での細胞生存能を測定した。
【0143】
5.9.2 結果
MiaPaCa2膵臓癌細胞を用いた試験の結果を図8cに示す。これらの結果は、上のセクション4で論述した。
【0144】
5.10 実施例10:インビボ動物試験
5.10.1 材料及び方法
4~6週齢のnu/nu無胸腺雌マウスをHarlan Laboratoriesから取得した。実験は、全てMSKCCの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により承認されたプロトコルに従って実施し、実験動物の適正且つ人道的使用のための委員会指針を遵守した。22ゲージ針を用いて、H1975(3×10細胞)又はMia-Paca2(5×10細胞)をマウスの右脇腹に皮下移植し、増殖させた。全てのマウスは、処置中、その飼料中にドキシサイクリンを投与された。処置前に腫瘍を50~150mmの体積に到達させた。マウスは、ランダムにビヒクル、Abraxane(登録商標)、PU-H71又は様々なAbraxane(登録商標)+PU-H71組合せにグループ分けした。投与前にPU-H71の溶液を10mMリン酸バッファー(pH約6.4)中で調製した。予め調製したAbraxane(登録商標)(5mg/ml)を使用した。H1975又はMiaPaca2腫瘍を担持するマウスに、Abraxane(登録商標)(30mg/kg)及び/若しくはPU-H71(75mg/kg)を単独で又は組み合わせて、腹腔内(i.p.)注射により投与した。ノギスを用いて週2回腫瘍サイズを測定し、腫瘍体積をその(長さ×幅)/2の積として計算した。処置に関連して見た目に明らかな毒性がないことを確実にするために週2回体重も測定した。
【0145】
5.10.2 結果
異種移植MiaPaCa2(膵臓癌、ゲムシタビン耐性)又はH1975非小細胞肺癌(mut EGFR、エルロチニブ耐性)腫瘍を担持するマウスを表示の薬剤単独で週1回スケジュールで処置するか、又はAbraxane(登録商標)とPU-H71を同時に混合して投与するか、若しくはAbraxane(登録商標)、その6時間後にPU-H71を順次投与した(腹腔内(i.p.)注射による単独での又は組み合わせたAbraxane(登録商標)(30mg/kg)及び/若しくはPU-H71(75mg/kg);n=5匹グループ)。腫瘍体積をモニターし、処置時間に対してグラフ化した。図11では、上方のパネルは、各グループ中の5匹のマウスの平均値を示し、一方、下方のパネルは、モニターした個々のマウスについてのデータを示す。Abraxane(登録商標)の投与から6時間後にPU-H71で処置したマウスの腫瘍体積は、Abraxane(登録商標)及びPU-H71の単剤療法及び同時投与と比較して実質的に減少した。図12の写真は、処置レジメンの5週間時点で撮影され、各処置アームからの代表的マウスを示す。同時投与は、腫瘍の停滞退縮をもたらしたが、Abraxane(登録商標)、次いでPU-H71の連続的投与は治癒を達成し、マウスには検出可能な腫瘍がないことが明らかである。図13は、H1975肺癌モデルについての結果を示す。図14は、HCC-1806及びMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌モデルの結果を示す。これらのモデルから得られた結果は、MiaPaCa2膵臓癌モデルで得られた結果と一致している。
【0146】
5.11 実施例11:Incucyte速度論的アッセイ
5.11.1 材料及び方法
MDA-MD-231及びBT20トリプルネガティブ乳癌細胞を組織培養処理皿に接種した。容器の表面積の約50%まで密集したら、2μMパクリタキセル、5μMPU-H71、ビヒクル(DMSO)、又は2μMパクリタキセルと5μMPU-H71との組合せ(同時若しくは順次)を含有する培地で細胞を処理した。標準的な細胞培養インキュベータ内に収容されたEssen IncuCyte内で上記条件下において細胞を増殖させた。計316時間にわたって2時間毎に各条件につき9枚ずつ画像を収集した。前述の処理条件下で24時間後、パクリタキセル処理細胞を5μMPU-H71若しくは対照ビヒクル含有培地で処理し、PU-H71処理細胞を2μMパクリタキセル若しくは対照ビヒクル含有培地で処理し、ビヒクル、並びにPU-H71とパクリタキセルとの組合せで処理した細胞は、対照ビヒクル含有培地で処理した。初期処理を含む既存の培地に、全ての二次薬剤添加物を加えた。既存の培地をさらに対照ビヒクル含有培地で2倍超希釈し;各希釈は、その前の希釈の24時間後に行った。培養して96時間後、培地を各ウェルから吸引し、薬剤を含まない細胞に適した培地に取り換えた。前述したように、細胞を計316時間(すなわち、薬剤の完全な除去から200時間)にわたってモニターした。
【0147】
5.11.2 結果
インビトロ実験はインビボ治療パラダイムを再現することはできないが、この実験は、上のインビボでの実施例と同様に、パクリタキセル-HSP90阻害剤の連続的添加が、いずれかの薬剤を単独で又は両薬剤の組合せを同時に添加するよりも細胞傷害性が高いことを示す。BT20トリプルネガティブ乳癌細胞は、中間レベルのエピシャペローム(前述の通り測定して)を有し、タキサンに対して感受性である。図15からわかるように、細胞密集を記録する顕微鏡検査(IncuCyteシステム)によってモニターすると、各薬剤は単独でこれらの細胞において細胞傷害作用を有する。約130時間の時点で、培地を取り換え、死滅細胞及び細胞残屑(浮遊細胞、細胞残屑は、洗浄により除去し、急激なシグナル降下によって示される)を除去した。130時間から約230時間までの間、計器は、各処理群に生存細胞が残っているかどうか、及びそれらが増殖する能力を有するかどうかを記録する。PU-H71及びPac単独について見られるように少数の生存細胞が存在し、これらの細胞は、再増殖を開始する(曲線は上方に向かう)。PacとPUとの同時添加よりも、連続的Pac→PUを受けた群の方が生存細胞は少ない。230時間後[培地の交換後の第2の急激なシグナル降下]に収集したデータは、計器の感受性限界のために信頼性がない。
【0148】
5.12 実施例12:ドキシルビシン/PU-H71の組合せ(リンパ腫)
5.12.1 材料及び方法
BJABバーキットリンパ腫細胞を500nM PU-H71の添加の24時間前にDOXの階段希釈物に曝露した。標準的MTSアッセイを用いて24時間後に生存能を測定した。6回反復データ点を平均し、非処理(DOX単独)又はPU-H71処理(DOXの後、PU-H71)対照に対して正規化した。データは、平均±SDとして示す。500nM PU-H71をDOXの後に連続して添加すると、DOXのIC50が400nM(塗りつぶした丸)から75nM(白い丸)にシフトすることに留意されたい(図18a)。
【0149】
ペア毎の薬剤相互作用を、CompuSynを用いて6ずつの用量応答マトリックス分析で体系的に評価し、複数の薬物比率で25の個別の組合せが得られた。Farage DLBCL細胞を次の組合せに曝露した:DOX、その24時間後にPU-H71を添加(茶色の丸、DOX→PU-H71)、PU-H71、その24時間後にDOXを添加(青色の丸、PU-H71→DOX)、又は同時投与(黒い丸、DOX+PU-H71)。薬物相互作用をFa-CIプロットで評価したが、ここで、相加性、相乗性、及び拮抗性は、それぞれCI=1、CI<1、及びCI>1として定義される。CompuSyn Softwareを用いて実験生存データから併用係数(CI)値を計算し、影響を受けた割合(Fa、組合せによって殺傷された細胞の割合)の関数として示す。CompuSynを用いて、5%~95%(線)のFa値の範囲全体にわたってCI値をシミュレートすることによってFa-CIプロットを構築した(図18b)。
【0150】
SUDHL4DLBCL細胞を、表示される様々なスケジュールでPU-H71及びDOX又は組合せに曝露した。PE結合抗活性カスパーゼ-3抗体を用いたフローサイトメトリーにより、カスパーゼ-3活性化を測定した(図18C)。細胞周期分析を並行して実施し、各散布図左上の差し込み図に示す。低二倍体集団の頻度を示す。
【0151】
5.12.2 結果
リンパ腫細胞を用いた試験の結果を図18に示す。これらの結果については上のセクション4で論述される。
【0152】
5.13 実施例13:Abraxane(登録商標)/PU-H71の組合せ(肺、TNBC)
これらの実験は、長期投与での連続的(Abraxane(登録商標)→6時間後PU-H71)処置の効果及び安全性をさらに証明するものであり、処置停止後の腫瘍再発又は欠如を評価することを目的とする。Abraxane(登録商標)及びPU-H71の単独投与、同時投与、又はAbraxane(登録商標)後のPU-H71の連続的投与による6時間の時点での腫瘍成長(図19a~c及び図20a、b)並びにマウス体重に対する影響(図19d及び図20c、d)を分析した。異種移植NCI-H1975肺癌、HCC1806、トリプルネガティブ乳癌又はMDA-MB-231、トリプルネガティブ乳癌腫瘍を担持するマウス(n=3~5)に、PU-H71(75mg/kg)及びAbraxane(登録商標)(30mg/kg)を単独で又は組み合わせて週1回腹腔内投与した。試験中、有害な作用は観察されなかった。動物は、全て予定された終点まで生存し、投与時点から試験終了まで健康に見え、正常体重を維持し、挙動も正常であった。同時及び連続的併用療法のいずれも腫瘍成長を有意に抑制したが、同時Abraxane(登録商標)+PU-H71で処置した腫瘍は、全て治療中及び/又は治療停止後再発した。連続的(Abraxane(登録商標)→6時間後PU-H71)で処置した数匹のマウスは、処置停止から数ヵ月後腫瘍がないままであった(図20a、b)。例えば、5匹のHCC1806担持マウスのうちの3匹は、処置停止から100日後も腫瘍がなく、5匹のMDA-MB-231マウスのうちの2匹は、処置停止から120日後も腫瘍がなかった。
【0153】
5.14 実施例14:Abraxane(登録商標)/PU-H71の組合せ(膵臓)
これらの実験は、Abraxane(登録商標)を静脈内投与する場合の連続的(Abraxane(登録商標)→6時間後PU-H71)処置の効果及び安全性をさらに証明する。これはまた、Abraxane(登録商標)との連続的投与で週1回又は2回投与されるPU-H71の効果を比較するためにも設計される。異種移植MiaPaca2膵臓癌腫瘍を担持するマウス(n=5)を以下に記載のようにAbraxane(登録商標)及びPU-H71で処置した。処置中、腫瘍体積及びマウスの体重をモニターし、40日の処置期間にわたってそれぞれ図21a及び図21bにグラフ化した(また、図22b、cも参照されたい)。PU-H71(75mpk)は、単独で又は組み合わせて週1回(1×wk)又は週2回(2×wk、月~木)腹腔内注射により投与した。Abraxane(登録商標)は、表示の通り、単独で又は組み合わせて30mpkで1×wk、静脈内若しくは腹腔内投与した。組み合わせる場合、PU-H71及びAbraxane(登録商標)は、同時に又はAb→6時間後PUの連続的計画を用いて投与した。9匹のマウスにビヒクル対照を処置の第21日に投与し、8匹のうちの5匹は、連続的(Abraxane(登録商標)(iv)→6時間後PU-H71)に変更し、残る4匹は、ビヒクルで続行した。
【0154】
試験中、有害な作用は観察されなかった。動物は、全て予定された終点まで生存し、投与時点から試験終了まで健康に見え、正常体重を維持すると共に、挙動も正常であった。
【0155】
Abraxane(登録商標)と併用してPU-H71を週1回又は2回投与した場合、効果に差は認められなかった。
【0156】
連続的(Abraxane(登録商標)(iv)→6時間後PU-H71)の1回用量を受けた大きい腫瘍(1319±583mm3)は、2日で817.9±515mm3に退縮し(38%退縮)、2回目の用量の後は452.1±236mm3(65%退縮)まで退縮し、処置の継続と共に縮小し続けた(図22a)。
【0157】
実施例15:Abraxane(登録商標)/PU-H71の組合せ(TNBC)
これらの実験は、Abraxane(登録商標)を静脈内投与する場合の連続的(Abraxane(登録商標)→6時間後PU-H71)処置の効果及び安全性をさらに証明する。これはまた、Abraxane(登録商標)との連続的投与で週1回又は2回投与されるPU-H71の効果を比較するために設計される。異種移植HCC1806トリプルネガティブ乳癌腫瘍を担持するマウス(n=5)を以下に記載のようにAbraxane(登録商標)及びPU-H71で処置した。処置中、腫瘍体積及びマウスの体重をモニターし、40日の処置期間にわたってそれぞれ図23a及び図23bにグラフ化した。PUH71(75mpk)は、単独で又は組み合わせて週1回(1×wk)又は週2回(2×wk、月~木)腹腔内注射により投与した。Abraxane(登録商標)は、表示の通り、単独で又は組み合わせて30mpkで1×wk、静脈内投与した。組み合わせる場合、PU-H71及びAbraxane(登録商標)は、同時に又はAb→6時間後PUの連続的計画を用いて投与した。5匹のマウスにはビヒクル対照を投与した。
【0158】
試験中、有害な作用は観察されなかった。動物は、全て予定された終点まで生存し、投与時点から試験終了まで健康に見え、正常体重を維持すると共に、挙動も正常であった。
【0159】
Abraxane(登録商標)と併用してPU-H71を週1回又は2回投与した場合、効果に差は認められなかった。
【0160】
実施形態
本発明のいくつかの実施形態を、以下の番号付けパラグラフに列挙される下記実施例により例示する:
1.タンパク質毒性ストレッサーによる前処置後、HSP90の阻害剤を癌患者に投与することによって癌を治療する方法であって、タンパク質毒性ストレッサーが、エピシャペロームの形成を増大するためにHSP90阻害剤の投与前の十分な時点で投与される、方法。
2.癌を治療する方法であって、HSP90の阻害剤を癌患者に投与するステップを含み、患者が、エピシャペロームの形成を増大するためにHSP90阻害剤の投与前の十分な時点でタンパク質毒性ストレッサーを受けている、方法。
3.癌を治療する方法であって、Hsp90の阻害剤を受けている癌患者に、エピシャペロームの形成を増大するためにHSP90阻害剤の投与前の十分な時点でタンパク質毒性ストレッサーを投与するステップを含む方法。
4.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも1時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも2時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
6.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも3時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
7.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも4時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
8.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも6時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
9.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも7時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
10.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも8時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
11.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも10時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
12.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも12時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
13.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約2時間~約4時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
14.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約3時間~約5時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
15.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約5時間~約7時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
16.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約4時間~約8時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
17.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約4時間~約12時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
18.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約6時間~約12時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
19.タンパク質毒性ストレッサーが化学療法薬である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
20.化学療法薬が微小管安定剤である、実施形態19に記載の方法。
21.微小管安定剤がドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、イキサベピロン、ビンクリスチン、ラウリマリド、ジスコデルモリド及びエポチロンから選択される、実施形態20に記載の方法。
22.化学療法薬がパクリタキセルである、実施形態21に記載の方法。
23.パクリタキセルがAbraxane(登録商標)として製剤化される、実施形態21に記載の方法。
24.パクリタキセルがTaxol(登録商標)として製剤化される、実施形態22に記載の方法。
25.化学療法薬がプロテアソーム阻害剤である、実施形態20に記載の方法。
26.プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びCEP-18770(デランゾミブ)から選択される、実施形態25に記載の方法。
27.HSP90阻害剤の前に投与される化学療法薬が、ペメトレキセド、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、レナリドミド、アピオシリブ、PD407824及びMK1775から選択される化学療法薬である、実施形態20に記載の方法。
28.タンパク質毒性ストレッサーが放射線である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
29.タンパク質毒性ストレッサーが、温熱療法を誘導する薬剤である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
30.HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータによる前処置後にHSP90の阻害剤を癌患者に投与することによって癌を治療する方法。
31.HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータが、エピシャペローム複合体の形成を増大するためにHSP90阻害剤の投与前の十分な時点で投与される、実施形態30に記載の方法。
32.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも1時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
33.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも2時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
34.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも3時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
35.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも4時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
36.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも6時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
37.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも7時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
38.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも8時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
39.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも10時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
40.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも12時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
41.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から約2~4時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
42.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から約3~5時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
43.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から約5~7時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
44.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から約4~8時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
45.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から約4~12時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
46.HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータがホスファターゼである、実施形態31~45のいずれか1つに記載の方法。
47.HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータがキナーゼ阻害剤である、実施形態31~45のいずれか1つに記載の方法。
48.キナーゼ阻害剤がPD407824である、実施形態47に記載の方法。
49.HSP90阻害剤が8-(6-ヨード-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルスルファニル)-9-(3-イソプロピルアミノ-プロピル)-9H-プリン-6-イルアミン(PU-H71)又はその薬学的に許容される塩である、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
50.PU-H71の塩がHCl塩である、実施形態49に記載の方法。
51.PU-H71が、週1回、週2回、週3回、週4回又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約5mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される、実施形態49又は50に記載の方法。
52.PU-H71が、週1回、週2回、週3回、週4回又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約200mg/m~300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される、実施形態49又は実施形態50に記載の方法。
53.PU-H71が250mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される、実施形態49又は実施形態50に記載の方法。
54.PU-H71が週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回投与される、実施形態49又は実施形態50に記載の方法。
55.HSP90阻害剤がSNX-5422、SNX-2112、AT13387、KW-2478又はSTA-9090である、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
56.HSP90阻害剤が、図16又は図17に示される化合物である、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
57.HSP90阻害剤がGRP94を選択的に阻害する、実施形態1~56のいずれか1つに記載の方法。
58.HSP70阻害剤を投与するステップをさらに含む、実施形態1~57のいずれか1つに記載の方法。
59.HSP70阻害剤がタンパク質毒性ストレッサーの後に投与される、実施形態58に記載の方法。
60.HSP70阻害剤がHSP90阻害剤の投与と同時に又はその前に投与される、実施形態59に記載の方法。
61.癌が、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫から選択される、実施形態1~60のいずれか1つに記載の方法。
62.7~31日のサイクルにわたってタンパク質毒性ストレッサーとHSP90阻害剤との組合せを投与することによって癌を治療する方法であって、タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が、前記サイクルにわたって少なくとも1回投与され、前記タンパク質毒性ストレッサーの各投与後に前記HSP90阻害剤が投与される、方法。
63.治療サイクルが7日である、実施形態62に記載の方法。
64.タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が治療サイクルの第1日にのみ投与される、実施形態63に記載の方法。
65.治療サイクルが21日である、実施形態62に記載の方法。
66.タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が治療サイクルの第1日にのみ投与される、実施形態65に記載の方法。
67.タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が治療サイクルの第1、8、及び15日にのみ投与される、実施形態65に記載の方法。
68.治療サイクルが28日である、実施形態62に記載の方法。
69.タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が治療サイクルの第1、8、及び15日にのみ投与される、実施形態68に記載の方法。
70.タンパク質毒性ストレッサー及びHSP90阻害剤が治療サイクルの第1、8、15、及び21日にのみ投与される、実施形態68に記載の方法。
71.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも1時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
72.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも2時間後に投与される、実施形態62~70に記載の方法。
73.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも3時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
74.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも4時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
75.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも6時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
76.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも7時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
77.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも8時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
78.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも10時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
79.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも12時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
80.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約2時間~約4時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
81.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約3時間~約5時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
82.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約5時間~約7時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
83.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約4時間~約8時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
84.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約4時間~約12時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
85.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから約6時間~約12時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
86.タンパク質毒性ストレッサーが化学療法薬である、実施形態62~85のいずれか1つに記載の方法。
87.化学療法薬が微小管安定剤である、実施形態86に記載の方法。
88.微小管安定剤がドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、イキサベピロン、ビンクリスチン、ラウリマリド、ジスコデルモリド、及びエポチロンから選択される、実施形態87に記載の方法。
89.化学療法薬がパクリタキセルである、実施形態88に記載の方法。
90.パクリタキセルがAbraxane(登録商標)として製剤化される、実施形態89に記載の方法。
91.パクリタキセルがTaxol(登録商標)として製剤化される、実施形態89に記載の方法。
92.化学療法薬がプロテアソーム阻害剤である、実施形態86に記載の方法。
93.プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びCEP-18770(デランゾミブ)から選択される、実施形態92に記載の方法。
94.HSP90阻害剤の前に投与される化学療法薬が、ペメトレキセド、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、レナリドミド、アピオシリブ、PD407824及びMK1775から選択される化学療法薬である、実施形態86に記載の方法。
95.タンパク質毒性ストレッサーが放射線である、実施形態62~85のいずれか1つに記載の方法。
96.タンパク質毒性ストレッサーが、温熱療法を誘導する薬剤である、実施形態62~85のいずれか1つに記載の方法。
97.HSP90阻害剤が8-(6-ヨード-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルスルファニル)-9-(3-イソプロピルアミノ-プロピル)-9H-プリン-6-イルアミン(PU-H71)又はその薬学的に許容される塩である、実施形態62~96のいずれか1つに記載の方法。
98.PU-H71の塩がHCl塩である、実施形態97に記載の方法。
99.PU-H71が、週1回、週2回、週3回、週4回又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約5mg/m~350mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される、実施形態97又は実施形態98に記載の方法。
100.PU-H71が、週1回、週2回、週3回、週4回又は週5回から選択される投与スケジュールに従って約200mg/m~300mg/mの用量でヒト患者に静脈内投与される、実施形態97又は実施形態98に記載の方法。
101.PU-H71が250mg/mの用量でヒト患者に週2回静脈内投与される、実施形態97又は実施形態98に記載の方法。
102.PU-H71が週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回投与される、実施形態97又は実施形態98に記載の方法。
103.HSP70阻害剤を投与するステップをさらに含む、実施形態62~101のいずれか1つに記載の方法。
104.HSP70阻害剤がタンパク質毒性ストレッサーの後に投与される、実施形態103に記載の方法。
105.HSP70阻害剤がHSP90阻害剤の投与と同時に又はその前に投与される、実施形態104に記載の方法。
106.癌が、乳癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、子宮頸癌、結腸癌、絨毛癌、膀胱癌、子宮頸癌、基底細胞癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部及び頚部癌、急性リンパ性癌(ACL)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄性白血病、多発性骨髄腫、T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、ホジキン病、リンパ性リンパ腫、神経芽細胞腫、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、黒色腫などの皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、骨髄増殖性疾患、胃腸間質性腫瘍、食道癌、胃癌、膀胱癌、肛門癌を含む消化管癌、神経膠腫を含む脳腫瘍、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むリンパ腫から選択される、実施形態62~105のいずれか1つに記載の方法。
107.癌を治療する方法であって、
癌患者からのサンプル中におけるエピシャペロームの存在を検出するステップ、
癌患者にHSP90の阻害剤を投与するステップ
を含む方法。
108.エピシャペロームがタンパク質毒性ストレッサーによる癌患者の前処置後に検出される、実施形態107に記載の方法。
109.エピシャペロームが、ネイティブ多量体タンパク質複合体の等電点電気泳動と、その後の1つ又は複数の抗体による固定化複合体のプロービングとによって検出される、実施形態107の方法。
110.1つ又は複数の抗体がHSP90抗体を含む、実施形態109に記載の方法。
111.癌がRb陰性である、実施形態1~105のいずれか1つに記載の方法。
112.癌がRb陽性である、実施形態1~105のいずれか1つに記載の方法。
113.癌がトリプルネガティブ乳癌である、実施形態61又は106に記載の方法。
114.癌が肺癌である、実施形態61又は106に記載の方法。
115.癌が膵臓癌である、実施形態61又は106に記載の方法。
116.癌が網膜芽細胞腫、骨肉腫、又は小細胞肺癌ではない、実施形態1~60又は62~105のいずれか1つに記載の方法。
117.癌がRb陽性であり、且つ/又はHER2を過剰発現する乳癌ではない、実施形態1~60又は62~105のいずれか1つに記載の方法。
118.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも18時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
119.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも24時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
120.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも36時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
121.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも48時間後に投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
122.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも18時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
123.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも24時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
124.HSP90阻害剤が、HSP90の翻訳後修飾(PTM)状態のモジュレータの投与から少なくとも48時間後に投与される、実施形態31に記載の方法。
125.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから18時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
126.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも24時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
127.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも36時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
128.HSP90阻害剤が、腫瘍細胞にタンパク質毒性ストレスを誘導する薬剤を投与してから少なくとも48時間後に投与される、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法。
129.治療が癌の部分的又は完全な寛解をもたらす、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
130.治療が癌の完全な寛解をもたらす、実施形態129に記載の方法。
131.治療が癌のあらゆる徴候及び症状を消失させる、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
132.癌の再発が治療後に観察されない、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
133.治療が、単なる腫瘍の停滞又は退縮を超える実質的に改善された結果をもたらすことを特徴とする、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
134.治療が癌の治癒をもたらす、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
135.治療後に検出可能な腫瘍が存在しない、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
136.HSP90の阻害剤がHSP90の発癌形態と直接且つ優先的に結合する、実施形態1~135のいずれか1つに記載の方法。
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