(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ペプチドエポキシケトン免疫プロテアソーム阻害剤の結晶塩
(51)【国際特許分類】
C07K 5/117 20060101AFI20220831BHJP
C07C 57/145 20060101ALI20220831BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20220831BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220831BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220831BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220831BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220831BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220831BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220831BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220831BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220831BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220831BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220831BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220831BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220831BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220831BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220831BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220831BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220831BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220831BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220831BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220831BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220831BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220831BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220831BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20220831BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220831BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220831BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220831BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220831BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220831BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20220831BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20220831BHJP
C07D 303/32 20060101ALI20220831BHJP
C07C 57/15 20060101ALN20220831BHJP
C07C 59/255 20060101ALN20220831BHJP
C07C 59/265 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
C07K5/117
C07C57/145
A61K38/07
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/22
A61P43/00 111
A61P37/06
A61P29/00
A61P17/06
A61P17/00
A61P1/04
A61P25/00
A61P13/12
A61P11/06
A61P37/08
A61P9/10 101
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P3/10
A61P5/14
A61P31/04
A61P21/00
A61P7/06
A61P21/04
A61P7/04
C07D405/12
C07D409/12
C07D303/32
C07C57/15
C07C59/255
C07C59/265
(21)【出願番号】P 2018568267
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 US2017039961
(87)【国際公開番号】W WO2018005772
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-17
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518455077
【氏名又は名称】ケザール ライフ サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】KEZAR LIFE SCIENCES
【住所又は居所原語表記】4000 Shoreline Court Ste. 300 South San Francisco, CA 94080 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, エバン
(72)【発明者】
【氏名】ダルジール, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】マクミン, ダスティン
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515509(JP,A)
【文献】C.G.WERMUTH編,「最新 創薬化学 下巻」,347~365頁,株式会社 テクノミック,1999年
【文献】Saal C., Becker A.,Pharmaceutical salts: A summary on doses of salt formers from the Orange Book,European Journal of Pharmaceutical Sciences,2013年,Vol. 49,p. 614-623
【文献】Brittain, H. G.,Developing an Appropriate Salt Form for an Active Pharmaceutical Ingredient, Americal Pharmaceutical Review,Americal Pharmaceutical Review,2009年,[令和3年5月10日検索], インターネット <URL: https://www.americanpharmaceuticalreview.com/Featured-Articles/117788-Developing-an-Appropriate-Salt-Form-for-an-Active-Pharmaceutical-Ingredient/>
【文献】STAHLY,P.,医薬品の塩選択,結晶多形のスクリーニングの重要性について,薬剤学,2006年,Vol.66,No.6,p.435-439
【文献】平山令明編,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年07月25日,p.57-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 201/00-521/00
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】
(式中、X
-がマレイン酸イオンを含む)を有する結晶塩であって、
前記結晶塩が、
4.9、 6.8、 6.9、 7.7、 10.9、 12.4、 13.5、 14.2、 16.1、 16.4、 17.3、 17.8、 18.5、 21.0、 22.0、 23.4、 23.7、 24.5、及び25.2±0.2
o
2θにピークを含む、CuKα線を用いた粉末X線回折(「XRPD」)パターンを有する、結晶塩(『形態A』)。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶塩を調製する方法であって、
(a)化合物G:
【化2】
(b)マレイン酸、および
(c)溶媒
を混合して懸濁液を形成することを含む、方法。
【請求項3】
化合物Gとマレイン酸とのモル比は、1:0.5~1:2の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モル比は1:1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒は、メタノール(「MeOH」)、エタノール(「EtOH」)、イソプロパノール(「IPA」)、酢酸エチル(「EtOAc」)、酢酸イソプロピル(「IPAc」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MTBE」)、アセトン/n-ヘプタン、アセトン、ジエチルエーテル(「Et
2O」)/EtOAc、ヘキサン/EtOAc、MTBE/EtOAc、トルエン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(「ACN」)、1-ブタノール、上記の水性混合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は、EtOAc、IPAc、EtOH、それらの水性混合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合は、0℃~80℃の範囲の温度で行われる、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合は、40℃~60℃の範囲の温度で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合は、最長6時間行われる、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記懸濁液を0℃に冷却することをさらに含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁液を濾過してケーキを形成することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ケーキを洗浄すること、乾燥させること、または洗浄することおよび乾燥させることの両方をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ケーキを再結晶化させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)前記ケーキから化合物Gを再形成すること、ならびに
(ii)前記再形成された化合物G、マレイン酸、および溶媒を混合して結晶塩を形成すること、をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の結晶塩と、一つ以上の賦形剤とを含む、製剤。
【請求項16】
液体製剤としての請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
凍結乾燥製剤としての請求項15に記載の製剤であって、前記凍結乾燥製剤は液体形態に再構成され得る、製剤。
【請求項18】
前記結晶塩は、結晶塩の遊離塩基の重量に基づいて、1mg/ml~150mg/mlの範囲の濃度で前記液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤中に存在する、請求項16または17に記載の製剤。
【請求項19】
前記濃度は、10mg/ml~70mg/mlの範囲である、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記濃度は、30mg/ml~50mg/mlの範囲である、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記一つ以上の賦形剤は、界面活性剤、張性剤、緩衝剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15~20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
前記凍結乾燥製剤は、凍結保護剤、増量剤、またはその両方をさらに含み得る、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記界面活性剤は、ポリソルベート、ポリオキシルヒマシ油、ポリ(アルキレン)グリコール、カプリロカプロイルポリオキシグリセリド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、およびそれらの組み合わせである、請求項21に記載の製剤。
【請求項24】
前記張性剤は、塩、ポリオール、またはそれらの組み合わせである、請求項21に記載の製剤。
【請求項25】
前記液体製剤または前記再構成された凍結乾燥製剤は等張性である、請求項15~24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
前記緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の製剤。
【請求項27】
前記液体製剤または前記再構成された凍結乾燥製剤は、3.0~8.0の範囲のpHを示す、請求項15~24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
前記pHは、4.0~6.5の範囲である、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
前記液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤は、対象への非経口投与に適している、請求項15~28のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項30】
前記非経口投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下である、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記非経口投与は皮下である、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
前記対象はヒトである、請求項29に記載の製剤。
【請求項33】
前記製剤は、少なくとも55%のバイオアベイラビリティを示す、請求項15~32のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項34】
前記製剤は、少なくとも60%のバイオアベイラビリティを示す、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
前記製剤は、少なくとも65%のバイオアベイラビリティを示す、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
障害の治療のための医薬の製造における請求項1に記載の結晶塩、または、請求項15~35のいずれか一項に記載の製剤の使用であって、前記障害は自己免疫疾患または炎症である、使用。
【請求項37】
障害の治療のための医薬の製造における請求項1に記載の結晶塩、または、請求項15~35のいずれか一項に記載の製剤の使用であって、前記障害は、乾癬、皮膚炎、全身性強皮症、硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群、髄膜炎;脳炎;ぶどう膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹、喘息、慢性炎症;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球減少症を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;全身硬直症候群;ベーチェット病;病巨細胞性動脈炎;免疫複合腎炎;IgA腎症;IgMポリニューロパチー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症である、使用。
【請求項38】
障害の治療のための医薬の製造における請求項1に記載の結晶塩、または、請求項15~35のいずれか一項に記載の製剤の使用であって、前記障害は、狼瘡、ループス腎炎、関節リウマチ、糖尿病、強皮症、強直性脊椎炎、乾癬、多発性硬化症、橋本病、髄膜炎、または炎症性腸疾患である、使用。
【請求項39】
前記障害は、狼瘡またはループス腎炎である、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
免疫プロテアソーム活性を阻害するための医薬の製造における請求項1に記載の結晶塩、または、請求項15~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項41】
前記免疫プロテアソームは、免疫プロテアソームLMP7である、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
異常な免疫プロテアソーム活性に関連する障害に罹患している対象の治療のための医薬の製造における請求項1に記載の結晶塩、または、請求項15~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミドの新規結晶塩、またはその塩水和物、医薬組成物、それらの調製方法、およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物、(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(「化合物G」)は、免疫プロテアソーム阻害剤として有用である。
【化1】
【0003】
真核生物において、タンパク質分解は、ユビキチン経路を介して主に媒介され、そこで、破壊の標的となるタンパク質が76アミノ酸のポリペプチドユビキチンに連結される。ひとたび標的化されると、ユビキチン化されたタンパク質は、次いで、多触媒性プロテアーゼである26Sプロテアソームの基質として機能し、その3つの主要なタンパク質分解活性の作用によりタンパク質を短いペプチドに切断する。細胞内タンパク質代謝回転における一般的な機能を有する一方で、プロテアソーム媒介性分解は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI抗原提示、アポトーシス、細胞増殖調節、NF-κB活性化、抗原プロセシング、および炎症促進性シグナルの伝達等の多くのプロセスにおいても重要な役割を果たす。
【0004】
PCT公開番号国際公開第2014/152134号は、トリペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤、および異常な免疫プロテアソーム活性に関連する疾患および状態を治療するためにこれらの化合物を使用する方法を記載している。化合物G等のトリペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤は患者の疾患および状態を治療するのに有用であるため、それらの製造、輸送、保管、および投与のためにこれら化合物の非常に可溶性かつ安定な形態が必要である。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本開示は、以下の構造を有する結晶塩を提供する
【化2】
、(式中、X
-は対イオンである)。いくつかの実施形態において、X
-は、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、シュウ酸イオン、リンゴ酸イオン、硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、2-ナフタレンスルホン酸イオン、リン酸イオン、ハロゲン化物イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、トシラートイオン、プロピオン酸イオン、および/または安息香酸イオンを含む。種々の場合において、塩は塩水和物である。
【0006】
場合によっては、X-はマレイン酸イオンを含む。例えば、結晶塩はモノマレイン酸塩であり得る。
【0007】
形態Aいくつかの実施形態において、モノマレイン酸結晶塩は、(a)約6.9、17.3、および17.8±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いた粉末X線回折(「XRPD」)パターン、または(b)約6.9、17.3、17.8、4.9、6.8、6.9、7.7、17.2、および17.6±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(c)約6.9、17.3、17.8、4.9、6.8、6.9、7.7、17.2、17.6、10.9、12.4、13.5、14.2、16.1、16.4、18.5、21.0、22.0、23.4、23.7、24.5、および25.2±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(d)実質的に
図1に示すようなXRPDパターン、または(e)実質的に
図2に示すような示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラムによって特徴付けられる形態Aを呈する。
【0008】
形態Bいくつかの実施形態において、モノマレイン酸結晶塩は、(a)約7.2、18.4、および22.0±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(b)約6.8、7.2、18.4、6.6、13.6、22.0、17.4、14.5、18.0、および5.0±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(c)実質的に
図13に示すようなXRPDパターン、または(d)実質的に
図17に示すようなDSCサーモグラムによって特徴付けられる形態Bを呈する。
【0009】
形態Cいくつかの実施形態において、モノマレイン酸結晶塩は、(a)約7.4、13.2、および20.1±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(b)約6.6、13.2、7.4、20.1、13.6、6.9、16.9、3.7、17.9、および19.9±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(c)実質的に
図7に示すようなXRPDパターン、または(d)実質的に
図8に示すようなDSCサーモグラムによって特徴付けられる形態Cを呈する。
【0010】
形態Dいくつかの実施形態において、モノマレイン酸結晶塩は、(a)約4.9、7.7、10.9、12.4、13.6、および15.3±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(b)約6.8、4.9、17.4、15.3、7.7、3.4、17.7、13.6、12.4、および10.9±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(c)実質的に
図9に示すようなXRPDパターン、または(d)実質的に
図10に示すようなDSCサーモグラムによって特徴付けられる形態Dを呈する。
【0011】
形態Eいくつかの実施形態において、モノマレイン酸結晶塩は、(a)約6.4、7.3、および19.8±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(b)約6.5、3.3、7.3、19.8、6.8、16.5、12.1、21.5、4.0、および13.0±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(c)実質的に
図11に示すようなXRPDパターン、または(d)実質的に
図12に示すようなDSCサーモグラムによって特徴付けられる形態Eを呈する。
【0012】
形態Fいくつかの実施形態において、モノマレイン酸結晶塩は、(a)約6.3、19.0、および19.6±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(b)約6.3、7.1、19.0、17.5、19.6、17.9、22.0、13.5、18.2、および15.5±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または(c)実質的に
図19に示すようなXRPDパターン、または(d)実質的に
図20に示すようなDSCサーモグラムによって特徴付けられる形態Fを呈する。
【0013】
場合によっては、X-はフマル酸イオンを含む。例えば、結晶塩はモノフマル酸塩であり得る。
【0014】
形態Gいくつかの実施形態において、モノフマル酸結晶塩は、(a)約6.4、7.2、13.8、16.0、17.4、18.5、18.7、20.0、20.9、21.9、24.5、および25.8±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターン、または、(b)実質的に
図21に示すようなXRPDパターン、または(c)実質的に
図22に示すようなDSCサーモグラムによって特徴付けられる形態Gを呈する。場合によっては、モノフマル酸塩は、モノフマル酸水和物を含み、水和物と非水和物(または無水物)との混合物であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、X-はシュウ酸イオンを含む。種々の実施形態において、X-はリンゴ酸イオンを含む。場合によっては、X-は硫酸イオンを含む。種々の場合において、X-はメタンスルホン酸イオンを含む。いくつかの実施形態において、X-は2-ナフタレンスルホン酸イオンを含む。種々の実施形態において、X-はリン酸イオンを含む。場合によっては、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)イオンである。種々の場合において、X-は酒石酸イオンを含む。いくつかの実施形態において、X-はクエン酸イオンを含む。種々の実施形態において、X-はトシラートイオンを含む。場合によっては、X-はプロピオン酸イオンを含む。種々の場合において、X-は安息香酸イオンを含む。これらの場合のいずれにおいても、塩は、水和物として、または水和物と非水和物(または無水物)との混合物として存在する。
【0016】
別の態様において、本開示は、
(a)化合物G、
【化3】
、
(b)マレイン酸、および
(c)溶媒
を混合して懸濁液を形成することによって本明細書に開示される結晶塩を調製する方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、化合物Gとマレイン酸とのモル比は、約1:0.5~1:2または約1:1の範囲である。種々の場合において、溶媒は、メタノール(「MeOH」)、エタノール(「EtOH」)、イソプロパノール(「IPA」)、酢酸エチル(「EtOAc」)、酢酸イソプロピル(「IPAc」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MTBE」)、アセトン/n-ヘプタン、アセトン、ジエチルエーテル(「Et2O」)/EtOAc、ヘキサン/EtOAc、MTBE/EtOAc、トルエン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(「ACN」)、1-ブタノール、上記の水性混合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、溶媒は、EtOAc、IPAc、EtOH、それらの水性混合物、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、混合は、0℃~80℃の範囲の温度、または40℃~60℃の範囲の温度で行われる。混合は、最長約6時間行うことができる。種々の実施形態において、方法は、懸濁液を0℃に冷却することを任意選択的に含む。場合によっては、方法は、懸濁液を濾過してケーキを形成することを任意選択的に含む。種々の場合において、方法は、ケーキを洗浄すること、乾燥させること、または洗浄することおよび乾燥させることの両方を任意選択的に含む。方法は、ケーキを再結晶化させることをさらに含み得る。追加的または代替的に、方法は、(i)ケーキから化合物Gを再形成すること、ならびに(ii)再形成された化合物G、マレイン酸、および溶媒を混合して結晶塩を形成することをさらに含み得る。
【0018】
本開示はさらに、本明細書に開示される結晶塩と、1つ以上の賦形剤とを含む製剤をさらに提供する。いくつかの実施形態において、製剤は液体製剤であり得る。場合によっては、製剤は凍結乾燥製剤であり得、凍結乾燥製剤は液体形態に再構成され得る。場合によっては、結晶塩は、結晶塩の遊離塩基の重量に基づいて、約1mg/ml~約150mg/ml、または約10mg/ml~約70mg/ml、または約30mg/ml~約50mg/mlの範囲の濃度で液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤中に存在する。
【0019】
いくつかの実施形態において、製剤中の1つ以上の賦形剤は、界面活性剤、張性剤、緩衝剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。場合によっては、凍結乾燥製剤は、凍結保護剤、増量剤、またはその両方を任意選択的に含み得る。種々の実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート、ポリオキシルヒマシ油、ポリ(アルキレン)グリコール、カプリロカプロイルポリオキシグリセリド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、およびそれらの組み合わせである。種々の場合において、張性剤は、塩、ポリオール、またはそれらの組み合わせである。場合によっては、液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤は等張性である。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。種々の場合において、液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤は、約3.0~約8.0、または約4.0~約6.5の範囲のpHを示す。種々の実施形態において、液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤は、対象(例えば、ヒト)への非経口投与に適している。場合によっては、非経口投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下であり得る。例えば、非経口投与は皮下であり得る。いくつかの実施形態において、製剤は、少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%のバイオアベイラビリティを示す。
【0020】
本開示の別の態様は、細胞を本明細書に開示される結晶塩またはその製剤と接触させることを含む、細胞の免疫プロテアソームを阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態において、免疫プロテアソームLMP7が阻害される。場合によっては、接触はインビボである。種々の実施形態において、接触させることは、異常な免疫プロテアソーム活性に関連する障害に罹患している対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、障害は自己免疫疾患または炎症である。場合によっては、疾患は、乾癬、皮膚炎、全身性強皮症、硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群、髄膜炎;脳炎;ぶどう膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹、喘息、慢性炎症;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球減少症を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;全身硬直症候群;ベーチェット病;病巨細胞性動脈炎;免疫複合腎炎;IgA腎症;IgMポリニューロパチー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症である。種々の場合において、障害は、狼瘡、ループス腎炎、関節リウマチ、糖尿病、強皮症、強直性脊椎炎、乾癬、多発性硬化症、橋本病、髄膜炎、または炎症性腸疾患である。
【0021】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明の考察から当業者に明らかとなるであろう。本明細書に開示される方法は、種々の形態の実施形態の影響を受けるが、以下の説明は、本開示が例示であるという理解の下に特定の実施形態を含むものであり、本発明が本明細書に記載される特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】形態A(酢酸エチル中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)の粉末X線回折(XRPD)パターンを示す。
【
図2】形態A(酢酸エチル中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを示す。
【
図3】形態A(酢酸エチル中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)の熱重量分析(「TGA」)トレースを示す。
【
図4】形態AのDVS等温線図(相対湿度40%~相対湿度95%)を示す。
【
図5】形態B(95%エタノール中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)のXRPDパターンを示す。
【
図6】形態B(95%エタノール中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)のDSCサーモグラフを示す。
【
図7】形態C(アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図8】形態C(アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のTGAトレース(上のトレース)およびDSCサーモグラフ(下のトレース)を示す。
【
図9】形態D(アセトニトリル中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図10】形態D(アセトニトリル中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のTGAトレース(上のトレース)およびDSCサーモグラフ(下のトレース)を示す。
【
図11】形態E(イソプロピルアルコール中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図12】形態E(イソプロピルアルコール中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のTGAトレース(上のトレース)およびDSCサーモグラフ(下のトレース)を示す。
【
図13】形態B(3%水/アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)のXRPDパターンを示す。
【
図14】図示した乾燥条件下での形態B(3%水/アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)のXRPDパターンを示す。
【
図15】図示した乾燥条件下での形態B(3%水/アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)のXRPDパターンを示す。
【
図16】室温で一晩乾燥させた後の形態B(3%水/アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)のTGAトレース(上のトレース)およびDSCサーモグラフ(下のトレース)を示す。
【
図17】30℃で一晩乾燥させた後の形態B(3%水/アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)のTGAトレース(上のトレース)およびDSCサーモグラフ(下のトレース)を示す。
【
図18】形態B(3%水/アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)の動的蒸気収着(「DVS」)等温線図を示す。
【
図19】形態F(MeOH/MTBE中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図20】形態F(MeOH/MTBE中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のTGAトレース(上のトレース)およびDSCサーモグラフ(下のトレース)を示す。
【
図21】形態G(化合物Gのモノフマル酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図22】形態G(化合物Gのモノフマル酸塩)のTGAトレース(上のトレース)およびDSCサーモグラフ(下のトレース)を示す。
【
図23】図示した比のマレイン酸を用いて、図示した溶媒中で調製され(形態AおよびB)、室温で真空乾燥させた化合物Gのモノマレイン酸塩のXRPDパターンを示す。
【
図24】真空乾燥させ、100℃に加熱した後の形態F(MBTE中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを形態Aと比較して示す。
【
図25】真空乾燥させ、100℃に加熱した後の形態C(アセトン中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図26】図示した乾燥条件後の形態A(EtOAc中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを示す。
【
図27】DVS試験の前および後の形態A(EtOAc中で調製された化合物Gのモノマレイン酸塩)のXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
プロテアソーム阻害剤として有用な(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(「化合物G」)の新規結晶塩形態およびその水和物が本明細書に提供される。
【化4】
【0024】
本明細書に開示される化合物Gの結晶塩形態は、たとえ高濃度であっても、溶液中で可溶性かつ安定である。したがって、化合物Gの結晶塩形態は、例えば、非経口投与に適した医薬製剤において有用である。化合物Gの塩の水和物もまた、医薬製剤に有用である。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「結晶性」は、構成原子、分子、またはイオンが、三次元で規則正しい順序の繰り返しパターンに配列された固体を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「水和物」は、物質と水との会合を含む物質の形態を指す。水和物は結晶性であり得る。本明細書で使用される場合、用語「一水和物」は、1分子の基質当たり1分子の水を含む水和物を指す。
【0027】
「予防的または治療的」処置という用語は、当該技術分野において認識されており、主題の組成物のうちの1つ以上の宿主への投与を含む。主題の組成物が望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床的発現の前に投与される場合、その処置は予防的であり(すなわち、それは望ましくない状態の発症から宿主を保護する)、本組成物が望ましくない状態の発現後に投与される場合、その処置は治療的である(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を軽減、改善、または安定化することを意図している)。
【0028】
主題の治療方法に関する化合物の「治療有効量」は、所望の投与計画の一部として(患者に、例えば、ヒトに)投与されたときに、例えば任意の医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で、治療される疾患もしくは状態の臨床的に許容される標準または美容目的に従って、症状を軽減する、状態を改善する、または病状の発症を遅らせる調製物中の化合物(複数可)の量を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「治療すること」または「治療」は、患者の状態を改善または安定化する様式で、症状、臨床徴候、および状態の基礎病理を逆転、軽減、または阻止することを含む。
【0030】
本明細書に開示される化合物は、本明細書に記載されるそれらの化学構造および/または化学名のいずれかによって同定され得る。化学構造と化学名が矛盾する場合、化学構造がその化合物の同一性を決定付ける。
【0031】
別途指示のない限り、本明細書で使用される用語および略語は、関連分野におけるそれらの通常の慣習的な意味を含む。
【0032】
本開示の貢献は、本明細書に開示される特定の実施形態または態様に限定されないため、本開示は、種々の用途および条件に適応するための変更および修正を含む追加の実施形態を当業者に提供する。例えば、本明細書に記載される材料、合成方法、または手順に対する変更および修正は、当業者には明らかであろう。
【0033】
分子量等の物理的特性または化学式等の化学的特性について本明細書で範囲が使用される場合、範囲およびその中の特定の実施形態の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせが含まれることが意図される。
【0034】
化合物Gの結晶塩およびその水和物
一態様において、本開示は、以下の構造を有する化合物Gの結晶塩を提供する
【化5】
、(式中、X
-は対イオンである)。X
-の例として、例えば、
【化6】
(「マレイン酸イオン」)、
【化7】
(「フマル酸イオン」)、
【化8】
(「シュウ酸イオン」)、
【化9】
(「リンゴ酸イオン」)、SO
4
2-(「硫酸イオン」)、
【化10】
(「メタンスルホン酸イオン」)、
【化11】
(「2-ナフタレンスルホン酸イオン」)、PO
4
3-(「リン酸イオン」)、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物)イオン、
【化12】
(「酒石酸イオン」)、
【化13】
(「クエン酸イオン」)、
【化14】
(「トシラートイオン」)、
【化15】
(「プロピオン酸イオン」)、
【化16】
(「安息香酸イオン」)
が挙げられる。いくつかの実施形態において、Xはジアニオン(X
2-)であり得る。これらの実施形態において、架橋塩は、化合物Gの2つの分子の各々とイオン結合を形成するX
2-の1つの分子と形成することができる。
【化17】
【0035】
別の態様において、本開示は、化合物Gの水和物、例えば、化合物Gの一水和物、または化合物Gの塩水和物を提供する。
【0036】
化合物Gのモノマレイン酸塩および水和物
いくつかの実施形態において、X-はマレイン酸イオンである。これらの実施形態において、化合物Gの結晶塩はモノマレイン酸塩(下に示す)であり得る。化合物Gのモノマレイン酸塩は、586.7g/molの分子量、5のpKaを有し、白色から黄色の固体として見える。化合物Gのモノマレイン酸塩は、100mg/mlを超える高い水溶解度を示す。そのような高い溶解度は、形態Aを非経口医薬組成物において高濃度で使用することを可能にするため有利である。
【0037】
マレイン酸は2つの酸性プロトンを有し、その各々が化合物G上のモルホリノ基とイオン結合を形成して架橋マレイン酸塩(下に示す)を形成することができるため、モノマレイン酸塩の形成は驚くべきことであった。しかしながら、モノマレイン酸塩は、その調製中にマレイン酸と化合物Gとの0.5:1のモル比または1:1のモル比が用いられるかにかかわらず、架橋化合物上に形成される。したがって、使用されるマレイン酸出発材料の比に関係なく、またマレイン酸がその調製中に化合物Gに加えられるにつれて形成する反応混合物の不均一性にもかかわらず、モノマレイン酸塩は製造中に確実に結晶化され得る。
【化18】
【0038】
化合物Gのモノマレイン酸塩(結晶性)は、その結晶化度のためだけでなく、それが水中で改善された溶解度を有するために、化合物G(非晶質)よりも有利である。例えば、化合物Gのモノマレイン酸塩は、周囲温度(例えば、20℃~25℃)で100mg/mlを超える水中での溶解度を示す。対照的に、水中での化合物Gの溶解度はわずか8.9mg/mlである。化合物Gの追加の溶解度データについては下の表1を、また化合物Gのモノマレイン酸塩の追加の溶解度データについては下の表2を参照されたい。
【表1】
【表2】
【0039】
結晶塩は、非晶質形態(化合物G)よりも熱力学的に安定であり、水中での溶解度が低いと予想されるため、水中での化合物Gのモノマレイン酸塩の高い水溶解度は驚くべきことである。さらに、既知の化合物(例えば、アルプレノロールおよびプラゾシン)のマレイン酸塩は、フマル酸イオン等の他の対イオンと比較して低い溶解度を示した。例えば、Olovson et al.,Acta Pharmacol Toxicol 58(1):55-60(1986)and Kumar et al.,AAPS PHarmSciTech 14(1):141-150(2013)を参照されたい。
【0040】
化合物Gのモノマレイン酸塩は、例えば、酢酸エチル(「形態A」)、95%エタノールまたは3%水/アセトンから結晶化させて、一水和物(「形態B」)、アセトン(「形態C」)、アセトニトリル(「形態D」)、イソプロピルアルコール(「形態E」)、またはMeOH/MTBE(「形態F」)を形成することができる。これらの形態の各々は、後述のパラメータによって特徴付けることができる。各形態は、粉末X線回折(「XRPD」)、示差走査熱量測定(「DSC」)、または熱重量分析(「TGA」)によって特徴付けることができ、各々、後述の方法の項に記載される通りである。DSCおよびTGAの両方で起こる結晶形の脱水は、実験パラメータによって影響を受ける動力学的事象である。
【0041】
形態A(酢酸エチルから結晶化)。形態Aは、方法の項に記載されるように得られる、約6.9、17.3、および17.8±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けることができる。形態Aはまた、約4.9、6.8、6.9、7.7、17.2、および17.6±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによっても特徴付けることができる。形態Aは、任意選択的に、約10.9、12.4、13.5、14.2、16.1、16.4、18.5、21.0、22.0、23.4、23.7、24.5、および25.2±0.2°2θに追加のピークを有する、CuKα線を用いた粉末X線回折パターンによってさらに特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Aは、実質的に
図1に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。
【0042】
追加的または代替的に、形態Aは、方法の項に記載されるように得られるDSCによって特徴付けることができる。形態Aは、形態A(酢酸エチルから結晶化)をアルミニウムパン中で加熱したときに約135℃~約150℃の範囲で開始する脱水吸熱を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。例えば、形態Aが約30℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態Aは、
図2に示すように、開始が約148℃であり、約152℃でピークとなる融解事象を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる(酢酸エチルから結晶化)。いくつかの実施形態において、形態Aは、実質的に
図2に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる(酢酸エチルから結晶化)。
【0043】
追加的または代替的に、形態Aは、方法の項に記載されるように得られるTGAによって特徴付けることができる。形態Aは、約10℃~約30℃の範囲の開始温度、約1.5%~約2.5%の範囲の重量損失によって特徴付けることができる。例えば、形態A(酢酸エチルから結晶化)は、
図3に示すように、約34℃で開始する約0.8%の重量損失によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態A(酢酸エチルから結晶化)は、実質的に
図3に示すようなTGAトレースによって特徴付けることができる。
【0044】
追加的または代替的に、形態Aは動的蒸気収着(「DVS」)によって特徴付けることができる。例えば、方法の項に記載されるように、DVSに供されると、形態Aは、
図4に示すように、約40%~約95%の相対湿度で約3.5重量%の総重量増加を示した。湿度範囲にわたる形態A1モル当たり約1モルの水の取り込み、脱水時のこれの可逆性、程度の低いヒステリシス、および
図2ではなく、融解事象未満の温度範囲における
図6の脱水吸熱の存在に基づいて、形態Aは、湿度条件に基づいて形態Aの無水型と水和物型との間で容易に相互変換すると理解される。無水状態は、水混和性が低い溶媒(例えば、酢酸エチル等)を用いて結晶化させることができる。水和物型は、水を含む溶媒(例えば、95%エタノール/5%水または3%アセトン/水等)を用いて結晶化させることができる。形態間の相互変換は、制御された湿度曝露によって結晶化後に達成され得る。
【0045】
形態B(95%エタノールから結晶化させた化合物Gのモノマレイン酸塩水和物)。いくつかの実施形態において、形態B(95%エタノールから結晶化)は、約6.1、6.6、7.2、7.7、9.4、9.9、10.8、12.8、14.5、16.0、16.4、17.0、17.4、18.4、18.8、19.8、20.6、21.8、23.4、26.6、27.0、および42.0±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDによって特徴付けることができる。場合によっては、形態B(95%エタノールから結晶化)は、実質的に
図5に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態B(95%エタノールから結晶化)は、方法の項に記載されるように、DSCによって特徴付けることができる。例えば、形態B(95%エタノールから結晶化)が約30℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態B(95%エタノールから結晶化)は、
図6に示すように、開始が約148℃であり、約152℃でピークとなる融解事象を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。具体的には、形態B(95%エタノールから結晶化)は、実質的に
図6に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。化合物Gのモノマレイン酸塩水和物である形態Bも、3%水/アセトンから結晶化させることができる。これらの実施形態において、形態Bは、方法の項に記載されるように得られる、約7.2、18.4、および22.0±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けることができる。形態B(3%水/アセトンから結晶化)はまた、約6.8、7.2、18.4、6.6、13.6、22.0、17.4、14.5、18.0、および5.0±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによっても特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態B(3%水/アセトンから結晶化)は、実質的に
図13に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態B(3%水/アセトンから結晶化)は、実施例9に示すように、さらなる処理に供し、乾燥させて残渣を形成することができる。
図14および15に示すように、乾燥条件は回折パターンに影響を及ぼさなかった。追加的または代替的に、形態B(3%水/アセトンから結晶化)は、方法の項に記載されるように、DSCによって特徴付けることができる。例えば、形態B(3%水/アセトンから結晶化)が約30℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態B(3%水/アセトンから結晶化)は、実施例9に記載され、それぞれ
図16、17、および18に示されるように、DSC、TGA、およびDVSによって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態B(3%水/アセトンから結晶化)は、実質的に
図17に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態B(3%水/アセトンから結晶化)は、方法の項に記載されるように、TGAによって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態B(3%水/アセトンから結晶化)は、実質的に
図17に示すようなTGAトレースによって特徴付けることができる。
【0046】
形態C(アセトンから結晶化)。形態Cは、方法の項に記載されるように得られる、約7.4、13.2、および20.1±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けることができる。形態Cはまた、約6.6、13.2、7.4、20.1、13.6、6.9、16.9、3.7、17.9、および19.9±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによっても特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Cは、実質的に
図7に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Cは、方法の項に記載されるように、DSCによって特徴付けることができる。例えば、形態Cが約30℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態Cは、
図8に示すように、開始が約142℃であり、約159℃でピークとなる融解事象を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。具体的には、形態Cは、実質的に
図8に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Cは、方法の項に記載されるように、TGAによって特徴付けることができる。したがって、形態Cは、
図8に示すように、約29℃~130℃までの約6.0%の重量損失によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Cは、実質的に
図8に示すようなTGAトレースによって特徴付けることができる。
【0047】
形態D(アセトニトリルから結晶化)。形態Dは、方法の項に記載されるように得られる、約4.9、7.7、10.9、12.4、13.6、および15.3±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けることができる。形態Dはまた、約6.8、4.9、17.4、15.3、7.7、3.4、17.7、13.6、12.4、および10.9±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによっても特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Dは、実質的に
図9に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Dは、方法の項に記載されるように、DSCによって特徴付けることができる。例えば、形態Dが約30℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態Dは、
図10に示すように、開始が約149℃であり、約152℃でピークとなる融解事象を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。具体的には、形態Dは、実質的に
図10に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Dは、方法の項に記載されるように、TGAによって特徴付けることができる。したがって、形態Dは、
図10に示すように、約27℃~130℃までの約0.3%の重量損失によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Dは、実質的に
図10に示すようなTGAトレースによって特徴付けることができる。
【0048】
形態E(イソプロピルアルコールから結晶化)。形態Eは、方法の項に記載されるように得られる、約6.4、7.3、および19.8±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けることができる。形態Eはまた、約6.5、3.3、7.3、19.8、6.8、16.5、12.1、21.5、4.0、および13.0±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによっても特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Eは、実質的に
図11に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Eは、方法の項に記載されるように、DSCによって特徴付けることができる。例えば、形態Eが約30℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態Eは、
図12に示すように、開始が約138℃であり、約148℃でピークとなる融解事象を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。具体的には、形態Eは、実質的に
図12に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Eは、方法の項に記載されるように、TGAによって特徴付けることができる。したがって、形態Eは、
図12に示すように、約32℃~99℃までの約0.9%の重量損失によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Eは、実質的に
図12に示すようなTGAトレースによって特徴付けることができる。
【0049】
形態F(MeOH/MTBEから結晶化)。形態Fは、方法の項に記載されるように得られる、約6.3、19.0、および19.6±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けることができる。形態Fはまた、約6.3、7.1、19.0、17.5、19.6、17.9、22.0、13.5、18.2、および15.5±0.2°2θにピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによっても特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Fは、実質的に
図19に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Fは、方法の項に記載されるように、DSCによって特徴付けることができる例えば、形態Eが約30℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態Eは、
図20に示すように、開始が約128℃であり、約135℃でピークとなる融解事象を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。具体的には、形態Fは、実質的に
図20に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。追加的または代替的に、形態Fは、方法の項に記載されるように、TGAによって特徴付けることができる。したがって、形態Fは、
図20に示すように、約32℃~99℃までの約1.4%の重量損失によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Fは、実質的に
図20に示すようなTGAトレースによって特徴付けることができる。
【0050】
化合物Gのモノフマル酸塩
いくつかの実施形態において、X
-はフマル酸イオンである。これらの実施形態において、化合物Gの結晶塩はモノフマル酸塩(下に示す)であり得る。化合物Gのモノフマル酸塩の特定の結晶形は形態Gである。
【化19】
【0051】
形態Gは、後述のパラメータのうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0052】
形態Gは、方法の項に記載されるように得られる、約6.4、7.2、13.8、16.0、17.4、18.5、18.7、20.0、20.9、21.9、24.5、および25.8±0.2°にピークを有する、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けることができる。実施形態において、形態Gは、実質的に
図21に示すような粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。
【0053】
追加的または代替的に、形態GはDSCによって特徴付けることができる。DSCサーモグラフは、方法の項に記載されるように得られた。形態Gの脱水は、実験パラメータによって影響を受ける動力学的事象である。よって、形態Gは、形態Gをクリンプしたアルミニウムパン中で加熱したときに約75℃~約90℃の範囲で開始する脱水吸熱を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。例えば、形態Gが約25℃から約10℃/分の速度で加熱される実施形態において、形態Gは、
図22に示すように、開始が約82℃であり、約101℃でピークとなる脱水吸熱を有するDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、形態Gは、実質的に
図22に示すようなDSCサーモグラフによって特徴付けることができる。
【0054】
化合物Gのシュウ酸塩
いくつかの実施形態において、X-はシュウ酸イオンである。場合によっては、化合物Gの結晶塩はモノシュウ酸塩であり得る。種々の場合において、シュウ酸イオンは2つの異なる化合物G分子上のモルホリノ基と反応して架橋塩を形成する。化合物Gのシュウ酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0055】
化合物Gのリンゴ酸塩
いくつかの実施形態において、X-はリンゴ酸イオンである。場合によっては、化合物Gの結晶塩はモノリンゴ酸塩であり得る。種々の場合において、リンゴ酸イオンは2つの異なる化合物G分子上のモルホリノ基と反応して架橋塩を形成する。化合物Gのリンゴ酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0056】
化合物Gの硫酸塩
いくつかの実施形態において、X-は硫酸イオンである。化合物Gの硫酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0057】
化合物Gのメタンスルホン酸塩
いくつかの実施形態において、X-はメタンスルホン酸イオンである。化合物Gのメタンスルホン酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0058】
化合物Gの2-ナフタレンスルホン酸塩
いくつかの実施形態において、X-は2-ナフタレンスルホン酸イオンである。化合物Gの2-ナフタレンスルホン酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0059】
化合物Gのリン酸塩
いくつかの実施形態において、X-はリン酸イオンである。化合物Gのリン酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0060】
化合物Gのハロゲン化物塩
いくつかの実施形態において、X-はハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物)イオンである。化合物Gのハロゲン化物塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0061】
化合物Gの酒石酸塩
いくつかの実施形態において、X-は酒石酸イオンである。化合物Gの酒石酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0062】
化合物Gのクエン酸塩
いくつかの実施形態において、X-はクエン酸イオンである。化合物Gのクエン酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0063】
化合物Gのトシル酸塩
いくつかの実施形態において、X-はトシラートイオンである。化合物Gのトシル酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0064】
化合物Gのプロピオン酸塩
いくつかの実施形態において、X-はプロピオン酸イオンである。化合物Gのプロピオン酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0065】
化合物Gの安息香酸塩
いくつかの実施形態において、X-は安息香酸イオンである。化合物Gの安息香酸塩は、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0066】
化合物Gの塩水和物
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物Gの塩水和物、または化合物Gの遊離塩基一水和物を提供する。化合物Gの塩水和物または遊離塩基一水和物は、結晶性であり得、方法の項に後述するパラメータ(例えば、XRPD、DSC、TGA、および/またはDVS)のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
【0067】
化合物Gの結晶塩、水和物、および塩水和物の調製方法
化合物Gの結晶塩、水和物、および塩水和物は、結晶分野で既知の様々な方法で形成することができる。化合物Gの結晶塩に関する以下の議論は、結晶塩水和物の形成、および遊離塩基化合物Gの結晶水和物に適用することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、化合物G(非晶質形態)は、X-対イオンの対応する酸、HX(例えば、マレイン酸、フマル酸、塩酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、トルエンスルホン酸、プロピオン酸、安息香酸)と溶媒中で混合されて懸濁液を形成する。化合物GとHXとのモル比は、約1:5~約1:2の範囲、例えば約1:1であり得る。
【0069】
化合物GおよびHXに加えられる溶媒は、所望の結晶塩が形成され得る任意の溶媒であり得る。好適な溶媒として、限定されないが、メタノール(「MeOH」)、エタノール(「EtOH」)、イソプロパノール(「IPA」)、酢酸エチル(「EtOAc」)、酢酸イソプロピル(「IPAc」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MTBE」)、アセトン/n-ヘプタン、アセトン、ジエチルエーテル(「Et2O」)/EtOAc、ヘキサン/EtOAc、MTBE/EtOAc、トルエン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(「ACN」)、1-ブタノール、上記の水性混合物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、溶媒は、EtOAc、IPAc、EtOH、それらの水性混合物、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、溶媒はEtOAcであり得る。
【0070】
混合ステップは、約0℃~80℃、または約30℃~70℃、または約40℃~60℃の範囲の温度(例えば、約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80℃)で行うことができる。場合によっては、混合ステップは50℃で行われる。
【0071】
混合ステップは、最長約6時間、または最長約5時間、または最長約4時間、または最長約3時間、または最長約2時間、または最長約1時間の期間にわたって行うことができる。いくつかの実施形態において、混合ステップは、少なくとも15分、または少なくとも30分、または少なくとも45分、または少なくとも1時間、または少なくとも2時間、または少なくとも3時間、または少なくとも4時間、または少なくとも5時間行われる。種々の場合において、混合ステップは、約1時間~約6時間、または約4時間~約6時間、または約3時間~約5時間行われる。
【0072】
化合物Gの結晶塩は、懸濁液を約-10℃~約10℃、または約-5℃~約5℃、または約0℃に冷却することにより懸濁液から単離することができる。いくつかの実施形態において、冷却した懸濁液を濾過してケーキを形成することができる。ケーキはその後、任意選択的に洗浄すること、乾燥させること、またはその両方が可能である。
【0073】
場合によっては、化合物Gの結晶塩は、再結晶化によって精製される。種々の場合において、化合物Gの結晶塩は、(i)ケーキから化合物Gを再形成すること、ならびに(ii)再形成された化合物GをHXおよび溶媒と混合して化合物Gの結晶塩を再形成することによって精製される。
【0074】
後述の実施例の項に示すように、複数の溶媒が、良好な収率および純度の化合物Gの結晶化塩、例えば、化合物Gのモノマレイン酸塩の調製において有用であると同定されている。
【0075】
化合物Gの結晶塩の医薬組成物および投与
本開示の別の態様は、本明細書に記載の結晶塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物(あるいは全体を通して製剤と呼ばれる)を提供する。「薬学的に許容される」という表現は、健全な医学的判断の範囲において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のない、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適したリガンド、材料、組成物および/または剤形を指すために本明細書で用いられる。本明細書に記載の組成物は、任意の投与形態用に製剤化することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、製剤は非経口投与用に製剤化されている。本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与される」という表現は、腸内および局所投与以外の、通常注射による投与様式を意味するために本明細書で使用され、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内および胸骨内の注射および注入を含む。例えば、非経口投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下注射を含み得る。非経口医薬製剤は、非経口注射用に液体に再構成することができる液体製剤または凍結乾燥製剤であり得る。
【0077】
本明細書に記載の化合物Gの結晶塩の高い溶解度は、該塩を皮下投与に適したものにする。皮下投与は有利な投与形態である:なぜなら、それらの製剤は(注入のために医療施設に移動しなくてはならないのではなく)自宅で自己投与することができるため患者にとって都合がよく、またそれらは他の種類の液体投与(例えば、静脈内または筋肉内)よりも副作用が少ない(例えば、注射部位の疼痛または皮下出血が少ない)からである。皮下製剤の便利さと副作用の少なさの両方が、より良好な患者コンプライアンスが得られる。しかしながら、皮下投与は、約0.3~約1.5mL、例えば約1.0mLという実用的な注射体積の限界を有する。したがって、治療有効量の原薬を送達するためには、しばしば、不活性成分を高濃度の原薬を有する皮下製剤に含める必要がある。例えば、自己免疫疾患の治療のための約10mg~約100mgの化合物Gの送達は、約6mg/ml~約100mg/mlの皮下注射濃度に相当する。したがって、本明細書に開示される化合物G結晶塩の高い溶解度(100mg/mlを超える)は、それらを皮下投与に適したものにする。
【0078】
したがって、いくつかの実施形態において、医薬製剤は、約0.1mg/ml~約200mg/ml、または約1mg/ml~約150mg/ml、または10mg/ml~約70mg/ml、または約30mg/ml~約50mg/ml、または約100mg/ml~約200mg/ml、または約75mg/ml~約125mg/mlの範囲の濃度で化合物Gの結晶塩を含む。例えば、濃度は、約30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150mg/mlであり得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、1つ以上の賦形剤は、界面活性剤、張性剤、緩衝剤、またはそれらの組み合わせを含む。製剤が凍結乾燥製剤である場合の実施形態において、1つ以上の賦形剤は、凍結保護剤、増量剤、またはその両方をさらに含み得る。好適な凍結保護剤として、限定されないが、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、コロイド状二酸化シリコン、マルトース、ポリ(ビニルピロリドン)、フルクトース、デキストラン、グリセロール、ポリ(ビニルアルコール)、グリシン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、およびゼラチンが挙げられる。好適な増量剤として、限定されないが、マンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、グルコース、およびラフィノース等の糖、アルギニン、グリシン、およびヒスチジン等のアミノ酸、ならびにデキストランおよびポリエチレングリコール等のポリマーが挙げられる。
【0080】
1つ以上の賦形剤は、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤を含み得る。非イオン性界面活性剤は、出荷時のストレスおよび保存による劣化から製剤を安定化させるのに有用であり得る。医薬製剤に含めるのに適した界面活性剤は、限定されないが、ポリソルベートおよびポリエーテルを含む。例えば、界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80またはポリソルベート20)、ポリオキシルヒマシ油、ポリ(アルキレン)グリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、カプリロカプロイルポリオキシグリセリド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン)、およびそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)等の共溶媒をさらに含み得る。
【0081】
1つ以上の賦形剤は、張性剤(等張剤と称されることもある)を含み得る注射部位における組織損傷を最小限におさえるためまたは予防するために、張性剤を皮下製剤に含めて、製剤が患者の細胞と一致する浸透圧(例えば、250~350mOsm)を有することを確実にすることができる。張性剤は、塩およびポリオール(例えば、非還元糖、糖アルコール、および糖酸等の糖)を含む。具体的に企図される張性剤として、限定されないが、NaCl、KCl、グルコース、フルクトース、サッカロース、マルトース、ラクトース、スクロース、マンノース、ラフィノース、マンニトール、キシリトール、ガラクチトール、グルシトール、イノシトール、ソルビトール、トレハロースおよびグリセリンが挙げられる。したがって、等張性の医薬製剤もまた本明細書に提供される。
【0082】
1つ以上の賦形剤は緩衝剤を含み得る。薬学的に許容される緩衝剤として、限定されないが、クエン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、製剤のpHは、約3.0~8.0、または約4.0~7.0、または約4.0~6.5の範囲である。
【0083】
本明細書に開示される結晶塩の製剤は、ヒト対象または動物対象等の対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、これらの製剤は、少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%のバイオアベイラビリティを示す。場合によっては、本明細書に開示される製剤は、最大約90%、または最大約85%、または最大約80%、または最大約75%、または最大約65%、または最大約60%のバイオアベイラビリティを示す。例えば、製剤は、約45%~約90%、または約50%~約70%、または約50%~約65%のバイオアベイラビリティを示すことができる。
【0084】
本明細書に開示される結晶塩はまた、後に詳述する形態を有し、後に詳述する賦形剤を含む医薬組成物に製剤化され得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という表現は、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料等の薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という文言は、薬学的投与に適合する、緩衝剤、注射用滅菌水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤等を含む。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例として、以下が挙げられる:(1)ラクトース、グルコース、およびスクロース等の糖、(2)トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、および置換もしくは非置換のβ-シクロデキストリン等のデンプン、(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバターおよび座剤用ワックス等の賦形剤、(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、ダイズ油等の油、(10)プロピレングリコール等のグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール等のポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張食塩水、(18)リンガー液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、ならびに(21)医薬製剤に用いられる他の非毒性適合物質。特定の実施形態において、本明細書に提供される医薬組成物は非発熱性であり、すなわち患者に投与されたときに著しい体温上昇を引き起こさない。
【0086】
湿潤剤、乳化剤、および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、賦形剤として組成物中に存在し得る。
【0087】
薬学的に許容される抗酸化剤の例として、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム塩、メタ亜重硫酸ナトリウム塩、亜硫酸ナトリウム等、(2)油溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸パルミチン酸塩、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール等、および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等が挙げられる。
【0088】
医薬組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤等のアジュバントも含み得る。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることによって確実にすることができる。糖等の等張調節剤を組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン等の吸収を遅らせる薬剤を含めることによって、注射用医薬形態の長期吸収をもたらすことができる。
【0089】
場合によっては、本明細書に提供される1つ以上の化合物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅らせることが望ましい。例えば、非経口的に投与される化合物の吸収遅延は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成することができる。
【0090】
組成物は、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の混入作用から保護されなければならない。微生物作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の様々な抗細菌剤および抗真菌剤によって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウム等を含めることが好ましいであろう。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0091】
滅菌注射液は、必要量の活性化合物を、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒に組み込み、その後、必要に応じて滅菌濾過することによって調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒および上に列挙したものから必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法はフリーズドライ(凍結乾燥)であり、活性成分の粉末および任意の追加の所望の成分が、予め濾過滅菌されたその溶液から得られる。
【0092】
注射用デポー剤形は、ポリラクチド-ポリグリコリド等の生分解性ポリマー中に本明細書で提供される化合物のマイクロカプセルまたはナノカプセルマトリックスを形成することによって作製することができる。薬物とポリマーとの比、および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソーム、マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョン中に薬物を封入することによっても調製される。
【0093】
一実施形態において、治療用結晶塩は、治療用化合物を体からの急速な排泄から保護する担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤とともに調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤は、標準的な技術を用いて調製されてもよいか、または例えばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手されてもよい。リポソーム懸濁液(細胞抗原に対するモノクローナル抗体で選択した細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0094】
医薬組成物は、投与説明書と一緒に容器、パック、またはディスペンサーに含まれてもよい。
【0095】
化合物Gの結晶塩を使用する方法
本明細書に開示される結晶塩は、免疫プロテアソーム(iP)の阻害剤として作用することができる。場合によっては、本明細書に開示される結晶塩は、iPサブユニットLMP7を阻害する。LMP7の活性は、実施例に後述するようなプロテアソームサブユニットアッセイにおいて測定した場合、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%阻害され得る。1つ以上のさらなるiPサブユニットが、LMP2、MECL-1、β1、β2、およびβ5等の本明細書に開示される結晶塩によって阻害され得る。種々の実施形態において、本明細書に開示される結晶塩は、LMP7ならびにLMP2およびMECL-1の一方または両方を阻害する。本明細書に開示される化合物は、サイトカインの活性または発現、例えばIL-2、MHC-I、IL-6、TNFα、およびIFN-βのうちの1つ以上を減少させることができる。したがって、本明細書に開示される化合物がIL-2、MHC-I、IL-6、TNFα、およびIFN-βのうちの1つ以上の発現または活性を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%阻害する方法が提供される。
【0096】
細胞を本明細書に記載の結晶塩またはその組成物のうちの1つ以上と接触させることにより細胞中の免疫プロテアソームを阻害する方法が本明細書にさらに提供される。いくつかの実施形態において、免疫プロテアソームLMP7サブユニットが阻害される。本明細書に記載の接触ステップは、インビボまたはインビトロで行うことができる。
【0097】
プロテアソーム阻害の生物学的影響は数多く存在する。プロテアソーム阻害は、限定されないが、神経毒性/変性疾患、アルツハイマー病、虚血性疾患、炎症、自己免疫疾患、HIV、臓器移植片拒絶反応、敗血症性ショック、抗原提示の阻害、ウイルス遺伝子発現の低下、寄生虫感染症、アシドーシスに関連する状態、黄斑変性症、肺疾患、筋消耗性疾患、線維性疾患、ならびに骨および毛髪成長疾患を含む多数の疾患の予防および/または治療として提案されている。したがって、本明細書に記載の結晶塩を含む医薬製剤は、これらの状態を治療するために患者に塩を投与する手段を提供する。
【0098】
したがって、本明細書に開示される方法の接触ステップは、異常な免疫プロテアソーム活性に関連する障害に罹患している対象に、本明細書に記載される結晶塩またはその組成物の1つ以上を投与することを含み得る。後にさらに詳細に記載されるように、障害は自己免疫疾患または炎症であり得る。いくつかの実施形態において、疾患は、乾癬、皮膚炎、全身性強皮症、硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群、髄膜炎;脳炎;ぶどう膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹、喘息、慢性炎症;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球減少症を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;全身硬直症候群;ベーチェット病;病巨細胞性動脈炎;免疫複合腎炎;IgA腎症;IgMポリニューロパチー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症である。場合によっては、障害は、狼瘡、ループス腎炎、関節リウマチ、糖尿病、強皮症、強直性脊椎炎、乾癬、多発性硬化症、橋本病、髄膜炎、または炎症性腸疾患であり得る。
【0099】
プロテアソームはNF-κBを調節し、それは次に免疫および炎症反応に関与する遺伝子を調節する。例えば、NF-κBは、免疫グロブリン軽鎖κ遺伝子、IL-2受容体α鎖遺伝子、クラスI主要組織適合遺伝子複合体遺伝子、ならびに例えばIL-2、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子、およびIFN-βをコードする多数のサイトカイン遺伝子の発現に必要である(Palombella et al.,Cell(1994)78:773-785)。したがって、IL-2、MHC-I、IL-6、TNFα、IFN-β、または他の前述のタンパク質のいずれかの発現レベルに影響を及ぼす方法が本明細書に提供され、各方法は、本明細書に開示される治療有効量の結晶塩または組成物を患者に投与することを含む。
【0100】
本明細書に記載の治療有効量の結晶塩を投与することを含む、患者における自己免疫疾患を治療する方法もまた本明細書に提供される。本明細書で使用される「自己免疫疾患」は、個体自身の組織から生じ、かつそれに向かう疾患または障害である。自己免疫疾患の例として、限定されないが、乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患等の炎症反応、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎等)に関連する反応、呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む)、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、湿疹および喘息等のアレルギー状態ならびにT細胞の浸潤および慢性的な炎症反応を伴う他の状態、アテローム性動脈硬化症、白血球接着不全、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、真性糖尿病(例えば、I型真性糖尿病またはインスリン依存性真性糖尿病)、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、アレルギー性脳脊髄炎、シェーグレン症候群、若年発症糖尿病、ならびに典型的には結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症および血管炎に見られるサイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫応答、悪性貧血(アジソン病)、白血球減少症を伴う疾患、中枢神経系(CNS)炎症性疾患、多臓器損傷症候群、溶血性貧血(クリオグロビン血症またはクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない)、重症筋無力症、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質症候群、アレルギー性神経炎、グレーブス病、ランバート・イートン筋無力症候群、類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病、全身硬直症候群、ベーチェット病;病巨細胞性動脈炎;免疫複合腎炎;IgA腎症;IgMポリニューロパチー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症が挙げられる。
【0101】
免疫系は、ウイルス感染しているか、発癌性の形質転換を受けているか、またはそれらの表面になじみのないペプチドを提示している自己細胞をスクリーニングする。細胞内タンパク質分解によって、Tリンパ球に提示される小型ペプチドが産生され、MHCクラスI媒介免疫応答が誘導される。したがって、細胞を本明細書に記載の化合物に曝露する(または患者に投与する)ことを含む、細胞における抗原提示を阻害または変更するための免疫調節剤として本明細書に提供される結晶塩または組成物を使用する方法が本明細書に提供される。特定の実施形態は、治療有効量の本明細書に記載の化合物を投与することを含む、患者における移植片対宿主病または宿主対移植片病等の移植片または移植関連疾患を治療する方法を含む。本明細書で使用される「移植片」という用語は、レシピエントへの移植のためのドナーに由来する生物学的材料を指す。移植片は、例えば、膵島細胞等の単離された細胞、新生児の羊膜等の組織、骨髄、造血前駆細胞、角膜組織等の眼組織、ならびに皮膚、心臓、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺葉、肺、腎臓、および管状臓器(例えば、腸、血管、または食道)等の臓器等の多様な材料を含む。管状臓器は、食道、血管、または胆管の損傷部分を置き換えるために使用することができる。皮膚移植片は、火傷だけでなく、損傷した腸に対する被覆材として、または横隔膜ヘルニア等の特定の欠陥を閉じるためにも使用することができる。移植片は、死体からであるか生体ドナーからであるかにかかわらず、ヒトを含むあらゆる哺乳動物起源に由来する。場合によっては、ドナーとレシピエントは同じ患者である。いくつかの実施形態において、移植片は骨髄または心臓等の臓器であり、移植片のドナーおよび宿主はHLAクラスII抗原が一致している
【0102】
プロテアソーム阻害はまた、NF-κB活性化の阻害およびp53レベルの安定化にも関連してきた。したがって、本明細書に提供される結晶塩およびその組成物は、NF-κB活性化を阻害し、細胞培養中のp53レベルを安定化するためにも使用され得る。NF-κBは炎症の主要調節因子であるため、抗炎症治療的介入のための魅力的な標的である。そのため、本明細書に提供される結晶塩およびその組成物は、限定されないが、COPD、乾癬、喘息、気管支炎、肺気腫、および嚢胞性線維症を含む炎症に関連する状態の治療に有用であり得る。
【0103】
開示される結晶塩およびその組成物は、筋肉消耗等のプロテアソームのタンパク質分解機能によって直接媒介されるか、またはNF-κB等のプロテアソームによってプロセシングされるタンパク質を介して間接的に媒介される状態を治療するために使用することができる。プロテアソームは、細胞制御(細胞周期、遺伝子転写、および代謝経路)、細胞間コミュニケーション、および免疫応答(例えば、抗原提示)に関与するタンパク質(例えば、酵素)の急速な排除および翻訳後プロセシングに関与する。後に論じる具体例は、β-アミロイドタンパク質および調節タンパク質、例えば、サイクリンおよび転写因子NF-κB等を含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される結晶塩またはその組成物は、限定されないが、脳卒中、神経系への虚血性損傷、神経外傷(例えば、打撃性脳損傷、脊髄損傷、神経系の外傷性損傷)、多発性硬化症および他の免疫介在性神経障害(例えば、ギランバレー症候群およびその変異形、急性運動性軸索型ニューロパチー、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ならびにフィッシャー症候群)、HIV/AIDS認知症複合、軸索障害(axonomy)、糖尿病性ニューロパチー、パーキンソン病、ハンチントン病、細菌性、寄生虫性、真菌性、およびウイルス性髄膜炎、脳炎、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、レビー小体型認知症、ピック病等の前頭葉認知症、皮質下認知症(ハンチントンまたは進行性核上性麻痺等)、局所的皮質萎縮症候群(原発性失語症等)、代謝毒性認知症(慢性甲状腺機能低下症またはB12欠乏症等)、ならびに感染症(梅毒または慢性髄膜炎等)によって引き起こされる認知症を含む神経変性疾患および状態の治療に有用である。
【0105】
アルツハイマー病は、老人斑および脳血管におけるβ-アミロイドタンパク質(β-AP)の細胞外沈着物によって特徴付けられる。β-APは、アミロイドタンパク質前駆体(APP)由来の39~42アミノ酸のペプチド断片である。APPの少なくとも3つのアイソフォームが知られている(695、751、および770アミノ酸)。mRNAの選択的スプライシングによりアイソフォームが産生される:正常なプロセシングはβ-AP配列の一部に影響を及ぼし、それによりβ-APの産生を妨げる。プロテアソームによる異常なタンパク質プロセシングは、アルツハイマー脳における豊富なβ-APに寄与すると考えられている。ラットにおけるAPPプロセシング酵素は、約10の異なるサブユニット(22kDa~32kDa)を含む。25kDaサブユニットは、X-Gln-Asn-Pro-Met-X-Thr-Gly-Thr-SerのN末端配列を有し、これはヒトマクロパインのβ-サブユニットと同一である(Kojima,S.et al.,Fed.Eur.Biochem.Soc.,(1992)304:57-60)。APPプロセシング酵素はGln15-Lys16結合を切断し、カルシウムイオンの存在下で、酵素はまた、Met-1-Asp1結合およびAsp1-Ala2結合を切断してβ-APの細胞外ドメインを放出する。
【0106】
したがって、本明細書に開示される治療有効量の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含む、アルツハイマー病を治療する方法が本明細書に提供される。そのような治療は、β-APプロセシングの速度を低下させること、β-APプラーク形成の速度を低下させること、β-AP産生の速度を低下させること、およびアルツハイマー病の臨床徴候を減少させることを含む。
【0107】
悪液質および筋肉消耗性疾患を治療する方法も本明細書に提供される。プロテアソームは、成熟中の網状赤血球および成長中の線維芽細胞において多くのタンパク質を分解する。インスリンまたは血清が枯渇した細胞では、タンパク質分解の速度はほぼ2倍になる。プロテアソームを阻害することによりタンパク質分解が減少し、それによって筋肉タンパク質の損失および腎臓または肝臓への窒素負荷の両方が減少する。ペプチドプロテアソーム阻害剤(例えば、本明細書に提供される化合物または組成物)は、慢性感染疾患、発熱、筋力低下(萎縮)および除神経、神経損傷、絶食、アシドーシスに関連する腎不全、腎臓病、ならびに肝不全等の状態の治療に有用である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるGoldbergの米国特許第5,340,736号を参照されたい。治療方法は、細胞における筋肉タンパク質分解の速度を低下させること、細胞内タンパク質分解の速度を低下させること、および細胞におけるp53タンパク質の分解の速度を低下させることを含む。これらの方法の各々は、細胞(インビボまたはインビトロ、例えば患者の筋肉)を有効量の本明細書に開示される医薬組成物に接触させて、細胞における筋肉タンパク質分解の速度を低下させること、細胞における細胞内タンパク質分解の速度を低下させること、および/または細胞におけるp53タンパク質の分解の速度を低下させることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に開示される治療有効量の結晶塩またはその医薬組成物を患者に投与することを含む。
【0108】
線維症は、過剰増殖性の線維芽細胞増殖に起因する瘢痕組織の過剰かつ持続的な形成であり、TGF-βシグナル伝達経路の活性化と関連している。線維症は、細胞外マトリックスの広範な沈着を含み、事実上任意の組織内で、またはいくつかの異なる組織にわたって起こり得る。通常、TGF-β刺激により標的遺伝子の転写を活性化する細胞内シグナル伝達タンパク質(Smad)のレベルは、プロテアソーム活性によって調節される。しかしながら、TGF-βシグナル伝達成分の分解の加速が、過剰増殖状態において観察されている。したがって、特定の実施形態において、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、IgA腎症、肝硬変、胆道閉鎖症、鬱血性心不全、強皮症、放射線誘発線維症、および肺線維症(特発性肺線維症、膠原血管疾患、サルコイドーシス、間質性肺疾患、および外因性肺疾患)等の過剰増殖状態を治療するための方法が提供される。火傷被害者の治療は、しばしば線維症によって妨げられるため、いくつかの実施形態において、本明細書に提供される化合物は、火傷を治療するために局所または全身投与によって投与され得る。手術後の創抱合は、しばしば美観を損なう瘢痕を伴うが、これは線維症の抑制によって予防することができる。したがって、特定の実施形態において、本明細書に開示される結晶塩またはその組成物を投与することによって瘢痕を予防または軽減する方法が本明細書に提供される。
【0109】
プロテアソームによってプロセシングされる別のタンパク質は、Relタンパク質ファミリーのメンバーであるNF-κBである。転写活性化因子タンパク質のRelファミリーは、2つの群に分けることができる。第一の群は、タンパク質分解プロセシングを必要とし、p50(NF-κB1、105kDa)およびp52(NF-κ2、100kDa)を含む。第二の群はタンパク質分解プロセシングを必要とせず、p65(RelA、Rel(c-Rel)、およびRelB)を含む。ホモ二量体およびヘテロ二量体の両方が、Relファミリーメンバーによって形成され得、例えば、NF-κBはp50~p65ヘテロ二量体である。IκBおよびp105のリン酸化およびユビキチン化の後、2つのタンパク質はそれぞれ分解およびプロセシングされ、細胞質から核に移動する活性NF-κBを生成する。ユビキチン化されたp105は、精製プロテアソームによってもプロセシングされる(Palombella et al,Cell(1994)78:773-785)。活性NF-κBは、他の転写活性化因子、例えばHMG I(Y)と立体特異的エンハンサー複合体を形成し、特定の遺伝子の選択的発現を誘導する。
【0110】
NF-κBは、免疫および炎症反応、ならびに有糸分裂事象に関与する遺伝子を制御する。例えば、NF-κBは、免疫グロブリン軽鎖κ遺伝子、IL-2受容体α鎖遺伝子、クラスI主要組織適合遺伝子複合体遺伝子、ならびに例えば、IL-2、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子、およびIFN-βをコードする多数のサイトカイン遺伝子の発現に必要とされる(Palombella et al,Cell(1994)78:773~785)。いくつかの実施形態は、IL-2、MHC-I、IL-6、TNFα、IFN-β、または他の前述のタンパク質のいずれかの発現レベルに影響を及ぼす方法を含み、各方法は、本明細書に開示される治療有効量の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含むp50を含む複合体は、急性炎症反応および免疫反応の迅速なメディエーターである(Thanos,D.and Maniatis,T.,Cell(1995)80:529-532)。
【0111】
NF-κBはまた、E-セレクチン、P-セレクチン、ICAM、およびVCAM-1をコードする細胞接着遺伝子の発現にも関与する(Collins,T.,Lab.Invest.(1993)68:499-508)。いくつかの実施形態において、細胞を有効量の結晶塩または医薬組成物と接触させることを含む、細胞接着(例えば、E-セレクチン、P-セレクチン、ICAM、またはVCAM-1によって媒介される細胞接着)を阻害するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療有効量の医薬組成物を患者に投与することを含む、細胞接着(例えば、E-セレクチン、P-セレクチン、ICAM、またはVCAM-1によって媒介される細胞接着)を阻害するための方法が提供される。
【0112】
虚血および再潅流傷害は、体の組織に到達する酸素が欠乏した状態である低酸素症をもたらす。この状態はIκ-Bαの分解の増加を引き起こし、それによってNF-κBの活性化をもたらす。低酸素症をもたらす傷害の重症度は、プロテアソーム阻害剤の投与により低減され得ることが実証されている。したがって、本明細書に提供される治療有効量の結晶塩またはその組成物をそのような治療を必要とする患者に投与することを含む、虚血状態または再灌流障害を治療する方法が本明細書に提供される。そのような状態または損傷の例として、限定されないが、急性冠症候群(不安定プラーク)、動脈閉塞性疾患(心臓、脳、末梢動脈、および血管閉塞)、アテローム性動脈硬化症(冠状動脈硬化症、冠状動脈疾患)、梗塞、心不全、膵炎、心筋肥大、狭窄、および再狭窄が挙げられる。
【0113】
NF-κBはまた、HIVエンハンサー/プロモーターに特異的に結合する。mac239のNefと比較すると、pbj14のHIV調節タンパク質Nefは、タンパク質キナーゼ結合を制御する領域において2つのアミノ酸が異なる。タンパク質キナーゼは、IκBのリン酸化をシグナル伝達し、ユビキチン-プロテアソーム経路を介してIκBの分解を誘発すると考えられている。分解後、NF-κBは核内に放出され、ひいてはHIVの転写を強化する(Cohen,J.,Science,(1995)267:960)。患者におけるHIV感染を阻害または減少させるための方法、およびウイルス遺伝子発現のレベルを低下させるための方法が本明細書に提供され、各方法は治療有効量の本明細書に開示の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含む。
【0114】
ウイルス感染は、多くの疾患の病理に寄与する。進行中の心筋炎および拡張型心筋症等の心疾患は、コクサッキーウイルスB3と関連付けられている。感染マウスの心臓の比較全ゲノムマイクロアレイ分析において、慢性心筋炎を発症したマウスの心臓で特定のプロテアソームサブユニットが一様に上方制御された(Szalay et al,Am J Pathol 168:1542-52、2006)。いくつかのウイルスは、ウイルスがエンドソームから細胞質ゾル内に放出されるウイルス侵入段階においてユビキチン-プロテアソーム系を用いる。マウス肝炎ウイルス(MHV)はコロナウイルス科に属し、これはまた重症急性呼吸器症候群(SARS)コロンウイルスも含む。Yu and Lai(J Virol 79:644-648、2005)は、MHVに感染した細胞のプロテアソーム阻害剤を用いた処理がウイルス複製の減少をもたらし、未処理細胞のものと比較してウイルス力価の減少と相関することを実証した。ヘパドナウイルス科のメンバーであるヒトB型肝炎ウイルス(HBV)も、同様に、増殖するためにウイルスによってコードされたエンベロープタンパク質を必要とする。プロテアソーム分解経路の阻害は、分泌されるエンベロープタンパク質の量の著しい減少を引き起こす(Simsek et al,J Virol 79:12914-12920,2005)。HBVに加えて、他の肝炎ウイルス(A、C、DおよびE)もまた、分泌、形態形成および発病にユビキチン-プロテアソーム分解経路を利用し得る。したがって、特定の実施形態において、細胞を有効量の本明細書に開示の結晶塩またはその組成物と接触させることを含む、SARSまたはA、B、C、DおよびE型肝炎等のウイルス感染を治療するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療有効量の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含む、SARSまたはA、B、C、DおよびE型肝炎等のウイルス感染を治療するための方法が提供される。
【0115】
TNFα等のリポ多糖(LPS)誘導性サイトカインの過剰産生は、敗血症性ショックに関連するプロセスの中心となると考えられている。さらに、LPSによる細胞の活性化における第一段階は、LPSの特異的膜受容体への結合であることが一般に認められている。20Sプロテアソーム複合体のα-およびβ-サブユニットは、LPS結合タンパク質として同定されており、LPS誘導シグナル伝達が敗血症の治療または予防における重要な治療標的であり得ることが示唆される(Qureshi,N. et al.,J.Immun.(2003)171:1515-1525)。したがって、特定の実施形態において、本明細書に提供される結晶塩およびその組成物は、敗血症性ショックを予防および/または治療するためにTNFαの阻害に使用され得る。
【0116】
細胞内タンパク質分解によって、Tリンパ球に提示される小型ペプチドが産生され、MHCクラスI媒介免疫応答が誘導される。免疫系は、ウイルス感染しているかまたは発癌性の形質転換を受けている自己細胞をスクリーニングする。一実施形態は、細胞を本明細書に記載の組成物に曝露することを含む、細胞における抗原提示を阻害する方法である。いくつかの実施形態において、細胞を本明細書に提供される有効量の化合物または組成物と接触させて、細胞における抗原提示を阻害する。さらなる実施形態は、治療有効量の本明細書に記載の組成物を患者に投与することを含む、患者の免疫系を抑制する(例えば、移植拒絶反応、アレルギー、喘息の抑制)ための方法である。本明細書に提供される結晶塩および組成物はまた、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、ならびに潰瘍性大腸炎およびクローン病等の炎症性腸疾患等の自己免疫疾患を治療するためにも使用することができる。
【0117】
別の実施形態は、プロテアソームまたは多触媒活性を有する他のNtnによって産生される抗原性ペプチドのレパートリーを変更するための方法である。例えば、20SプロテアソームのPGPH活性が選択的に阻害される場合、いずれの酵素阻害もなしに、または、例えば、プロテアソームのキモトリプシン様活性の選択的阻害によって生成および提示されたであろうものとは異なるセットの抗原ペプチドが、プロテアソームにより生成され、細胞の表面上のMHC分子において提示される。
【0118】
特定のプロテアソーム阻害剤は、インビトロおよびインビボでユビキチン化NF-κBの分解およびプロセシングの両方を遮断する。プロテアソーム阻害剤はまた、IκB-α分解およびNF-κB活性化を遮断する(Palombella,et al.Cell(1994)78:773-785、およびTraenckner,et al.,EMBOJ.(1994)13:5433-5441)。いくつかの実施形態において、細胞を本明細書に記載の結晶塩またはその組成物と接触させることを含む、IκB-α分解を阻害するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、細胞を有効量の結晶塩またはその組成物と接触させてIκB-α分解を阻害する。さらなる実施形態は、細胞、筋肉、臓器、または患者を本明細書に記載の結晶塩またはその組成物と接触させることを含む、細胞、筋肉、臓器、または患者におけるNF-κBの細胞含有量を減少させるための方法である。いくつかの実施形態において、細胞を有効量の組成物と接触させて、細胞におけるNF-κBの細胞含有量を減少させる。
【0119】
タンパク質分解プロセシングを必要とする他の真核生物転写因子は、基本転写因子TFIIA、単純ヘルペスウイルスVP16アクセサリータンパク質(宿主細胞因子)、ウイルス誘導性IFN調節因子2タンパク質、および膜結合ステロール調節エレメント結合タンパク質1を含む。
【0120】
細胞を本明細書に開示される組成物に(インビトロまたはインビボで)曝露することを含む、サイクリン依存性の真核細胞周期に影響を及ぼすための方法が本明細書に提供される。サイクリンは、細胞周期制御に関与するタンパク質である。プロテアソームは、サイクリンの分解に関与する。サイクリンの例として、有糸分裂サイクリン、G1サイクリン、およびサイクリンBが挙げられる。サイクリンの分解により、細胞は、1つの細胞周期段階(例えば有糸分裂)から出て別の細胞周期段階(例えば分裂)に入ることが可能となる。全てのサイクリンがp34cdc2タンパク質キナーゼまたは関連キナーゼに関連していると考えられている。タンパク質分解標的化シグナルは、アミノ酸42-RAALGNISEN-50(破壊ボックス)に局在する。サイクリンがユビキチンリガーゼの影響を受けやすい形態に変換されること、またはサイクリン特異的リガーゼが有糸分裂中に活性化されることの証拠が存在する(Ciechanover,A.,Cell,(1994)79:13-21)。プロテアソームの阻害はサイクリン分解を阻害し、ひいては細胞増殖を阻害する(Kumatori et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:7071-7075)。本明細書に開示される治療有効量の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含む、患者における増殖性疾患(例えば、乾癬または再狭窄)を治療するための方法が本明細書に提供される。また、本明細書に記載の治療有効量の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含む、患者におけるサイクリン関連炎症を治療する方法も本明細書に提供される。
【0121】
別の実施形態において、開示される組成物は、原虫寄生虫によって引き起こされる感染症等の寄生虫感染症の治療に有用である。これらの寄生虫のプロテアソームは、主に細胞分化および複製活性に関与していると考えられる(Paugam et al.,Trends Parasitol.2003、19(2):55-59)。さらに、エントアメーバ種は、プロテアソーム阻害剤に曝露されると、被嚢脳を失うことが示されている(Gonzales,et al.,Arch.“Med.”Res.1997,28,Spec No:139-140)。そのような特定の実施形態において、開示される結晶塩およびその組成物は、プラスモジウム属(マラリアを引き起こすP.falciparum、P.vivax、P.malariae、およびP.ovaleを含む)トリパノソーマ属(シャーガス病を引き起こすT.cruzi、およびアフリカ睡眠病を引き起こすT.brucei)、リーシュマニア属(L.amazonesis、L.donovani、L.infantum、L.mexicana等)、ニューモシスティスカリニ(AIDSおよび他の免疫抑制患者において肺炎を引き起こすことが知られている原生生物)、トキソプラズマゴンディ、エントアメーバ・ヒストリティカ、エントアメーバ・インヴァデンス、およびジアルジア・ランブリアから選択される原虫寄生虫によって引き起こされるヒトにおける寄生虫感染症の治療に有用である。特定の実施形態において、開示される結晶塩およびその組成物は、プラスモディウム・ヘルマニ、クリプトスポリジウム属、エキノコッカス・グラニュローサス、エイメリア・テネラ、サルコシスティス・ニューロナ、およびアカパンカビから選択される原虫寄生虫によって引き起こされる動物および家畜における寄生虫感染症の治療に有用である。寄生虫病の治療におけるプロテアソーム阻害剤として有用な他の化合物は、その全体が本明細書に組み込まれるWO98/10779に記載されている。
【0122】
特定の実施形態において、開示される結晶塩およびそれらの組成物は、寄生虫におけるプロテアソーム活性を不可逆的に阻害する。そのような不可逆的な阻害は、赤血球および白血球において回復することなく酵素活性の停止を誘導することが示されている。そのような特定の実施形態において、血球の長い半減期は、寄生虫への反復曝露に対する治療に関して長期的な防御を提供し得る。特定の実施形態において、血球の長い半減期は、将来の感染に対する化学的予防法に関して長期的な防御を提供し得る。
【0123】
原核生物は、真核生物の20Sプロテアソーム粒子の均等物を有する。原核生物の20S粒子のサブユニット組成は、真核生物の組成よりも単純であるにもかかわらず、同様の様式でペプチド結合を加水分解する能力を有する。例えば、ペプチド結合に対する求核攻撃は、βサブユニットのN末端上のスレオニン残基を介して起こる。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される治療有効量の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含む、原核生物感染を治療する方法が提供される。原核生物感染は、マイコバクテリア(結核、ハンセン病またはブルリ潰瘍等)または古細菌のいずれかによって引き起こされる疾患を含み得る。
【0124】
20Sプロテアソームに結合する阻害剤が骨器官培養物における骨形成を刺激することもまた実証されている。さらに、そのような阻害剤をマウスに全身投与した場合、特定のプロテアソーム阻害剤が骨量および骨形成速度を70%超増加させた(Garrett,I.R.et al.,J.Clin.Invest.(2003)111:1771-1782)ため、ユビキチン-プロテアソーム機構が骨芽細胞の分化および骨形成を調節することが示唆される。したがって、開示される結晶塩およびその組成物は、骨粗鬆症等の骨量減少に関連する疾患の治療および/または予防に有用であり得る。
【0125】
本明細書に提供される結晶塩またはその組成物を投与することを含む、自己免疫疾患、移植片またはインプラント関連疾患、神経変性疾患、線維症関連疾患、虚血性関連疾患、感染症(ウイルス、寄生虫または原核生物)、および骨量減少に関連する疾患から選択される疾患または状態を治療するための方法が本明細書に提供される。
【0126】
骨組織は、骨細胞を刺激する能力を有する因子の優れた供給源である。したがって、ウシ骨組織の抽出物は、骨の構造的完全性を維持することに関与する構造タンパク質だけでなく、骨細胞が増殖するように刺激することができる生物学的に活性な骨成長因子も含む。これらの後者の因子の中には、骨形成タンパク質(BMP)と呼ばれるタンパク質の最近記述されたファミリーがある。これらの成長因子は全て、他の種類の細胞、および骨細胞に影響を及ぼし、Hardy,M.H.らのTrans Genet(1992)8:55-61は、骨形成タンパク質(BMP)が、発達中に毛包において差次的に発現されるという証拠について記載している。Harris,SE.らのJ Bone Miner Res(1994)9:855-863は、骨細胞におけるBMP-2および他の物質の発現にTGF-βが及ぼす影響を記載している。成熟毛包におけるBMP-2発現は、成熟中および細胞増殖期後にも起こる(Hardy,et al.(1992、上記参照)。したがって、本明細書に提供される結晶塩およびその組成物は、毛包成長刺激にも有用であり得る。
【0127】
本明細書に開示される化合物を投与することによってリソソーム蓄積症を治療するための方法もまた本明細書に提供される。リソソーム蓄積症は、スフィンゴ糖脂質、グリコーゲン、ムコ多糖、および糖タンパク質を含む、種々の基質の異常な代謝から生じる一群の疾患である。外因性および内因性の高分子量化合物の代謝は、通常、リソソーム内で起こり、そのプロセスは、通常、分解酵素による段階的なプロセスにおいて調節される。したがって、1つの酵素における活性欠損がプロセスの障害となり、特定の基質の蓄積がもたらされる。プロテアソームの阻害は、リソソーム蓄積症に罹患する患者において特定の基質の機能を改善し得ることが示されている(Y.Shimada et al、Biochem.Biophys.Res.Commun.(2011)415(2):274-8)。これらの疾患のほとんどは、i)乳児発症型、ii)若年発症型、またはiii)遅発型のサブタイプに臨床的に分類することができる。乳児発症型は、最も重症であることが多く、通常、残存酵素活性が認められない。遅発型は、より軽度であることが多く、低いが検出可能な残存酵素活性が認められる。若年発症型の重症度は、乳児発症型と遅発型の中間である。そのような障害の非限定的な例として、ポンペ病、ゴーシェ病、ファブリー病、GM1-ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、ニーマン・ピック病、クラッベ病、ファーバー病、異染性白質ジストロフィー、ハーラー・シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病A、サンフィリポ病B、サンフィリポ病C、サンフィリポ病D、モルキオ病A、モルキオ病B、マロトー・ラミー病、スライ病、αマンノース症、βマンノース症、フコシドーシス、シアリドーシス、およびシンドラー・神崎病が挙げられる。したがって、一実施形態は、本明細書に提供される治療有効量の結晶塩またはその組成物を患者に投与することを含む、ポンペ病を治療する方法である。
【0128】
開示される結晶塩およびその組成物はまた、プロテアソームを含むNtnヒドロラーゼによってプロセシングされるタンパク質(例えば、酵素、転写因子)をスクリーニングするための(例えば、診断キット内の、または臨床検査室で使用するための)診断薬としても有用である。開示される結晶塩およびそれらの組成物はまた、X/MB1サブユニットまたはα鎖を特異的に結合させ、それに関連するタンパク質分解活性を阻害するための研究試薬としても有用である。例えば、プロテアソームの他のサブユニット(およびその特異的阻害剤)の活性を決定することができる。
【0129】
ほとんどの細胞タンパク質は、成熟または活性化の間にタンパク質分解プロセシングに供される。本明細書に開示される酵素阻害剤は、細胞の発達プロセスもしくは生理学的プロセス、または細胞出力が、特定のNtnヒドロラーゼのタンパク質分解活性によって調節されるかどうかを判定するために使用することができる。そのような方法の1つは、生物、無傷の細胞調製物、または細胞抽出物を得ること、生物、細胞調製物、または細胞抽出物を本明細書に開示される組成物に曝露すること、化合物に曝露された生物、細胞調製物、または細胞抽出物をシグナルに曝露すること、およびプロセスまたは出力をモニタリングすることを含む。本明細書に開示される化合物の高い選択性は、所与の細胞の発達プロセスまたは生理学的プロセスにおけるNtn(例えば、20Sプロテアソーム)の迅速かつ正確な排除または関連付けを可能にする。
【実施例】
【0130】
以下の実施例は、例示のために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0131】
実施例1:特徴付け方法
粉末X線回折(「XRPD」)データは、PANalytical X’Pert3 X線(
図1、21、および22~27)、Shimadzu XRD-7000(
図5)、またはBruker D8Advance粉末X線回析計(
図1、9、11、13~15、および19)で得られた。CuKα線(1.54Å)を用いて40kVおよび40mAで、0.02°のステップサイズで4~40°(2θ)から連続モードで試料を走査した(
図1)。CuKα線(1.54Å)を用いて45kVおよび40mAで、0.013°のステップサイズで3~40°(2θ)から連続モードで試料を走査した(
図21および23~27)。CuKα線(1.54Å)を用いて40kVおよび35mAで、0.02°のステップサイズで5~70°(2θ)から連続モードで試料を走査した(
図5)。CuKα線(1.54Å)を用いて40kVおよび40mAで、0.02°のステップサイズで3~40°(2θ)から連続モードで試料を走査した(
図1、9、11、13~15、および19)。
【0132】
示差走査熱量測定(「DSC」)は、乾燥窒素下で、クリンプしたアルミニウムパン内のTA Instruments Q2000熱量計(
図22)、Tzero低質量パン内のTA Q20 DSC(
図2)、またはTzeroアルミニウムパン内のTA Instruments Q20(
図6)、またはクリンプしたアルミニウムパンを使用するDynamic Vapor Sorption Advantage System(
図8、10、12、16、17、および20)で行われた。
【0133】
熱重量分析(TGA)は、乾燥窒素下で、白金パン(
図22)またはTzeroアルミニウムパン(
図3)内のTA Instruments Q500分析器(
図22)またはNETZSCH TG209 F1(
図3)で行われた。
【0134】
水分収着データは、SMS(表面測定システム)DVSIntrintic(
図4)またはDynamic Vapor Sorption Advantage System(
図18)を用いて収集した。平衡基準は、最長平衡時間180分で10分以内に±0.002%(
図4)の重量変化に設定した。
【0135】
1H NMRは、Varian 400MHz機器で行った。固体試料をDMSO-d6に溶解し、分析のためにNMRチューブに移した。
【0136】
実施例2:化合物Gの塩スクリーニング
化合物Gを、それぞれ6つの異なる溶媒系中で6つの異なる酸と反応させ(合計36回のスクリーニング実験)、化合物Gの結晶塩が形成され得るかどうかを判定した。
【0137】
具体的には、約15mgの化合物Gおよび等モル量の酸を2.0mLガラスバイアル中で混合した。約1.0mLの対応する溶媒系をバイアルに加えた。得られた懸濁液を、室温で約2日間約600rpmで撹拌した。次いで、懸濁液を遠心分離してXRPD分析のために固体を単離した。スクリーニング実験の結果は、表3に見出すことができる。試験した6つの酸のうち、2つが化合物Gの結晶塩:マレイン酸およびフマル酸の形成をもたらした。
【表3】
【0138】
実施例3:化合物Gの追加の塩スクリーニング
化合物G(20mg、140μLの溶媒に予め溶解したもの)に1当量の酸(溶媒中40~240μLに予め溶解したもの)を加え、混合物を密封バイアル中で96時間にわたって放置した。以下の溶媒を用いた:トルエン、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ヘキサン/酢酸エチル(1:1)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、1-ブタノール、酢酸エチル、アセトン、MTBE/酢酸エチル(1:1)、およびジエチルエーテル/酢酸エチル(1:1)。以下の酸を利用した:硫酸、メタンスルホン酸、トシル酸(一水和物)、2-ナフタレンスルホン酸、L-リンゴ酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸、およびリン酸。表4に示される組み合わせで固体沈殿物が観察された。
【表4】
【0139】
実施例4:化合物Gマレイン酸塩のスケールアップ
化合物Gのモノマレイン酸塩形態の調製は以下のようにスケールアップした。両方の出発材料を秤量してガラスバイアルに入れることにより、化合物G(約200mg)を1:1または1:2のモル比でマレイン酸と反応させた。一定体積のMTBEまたはアセトンを各ガラスバイアルに加え、得られた懸濁液を磁気プレート上で撹拌した。次いで、懸濁液を室温で真空乾燥させて形態Bを得た。
【0140】
また、溶媒としてEtOAcを用いて、化合物G(約200mg)をマレイン酸(約20mg、モル比1:0.5)と反応させた。得られた懸濁液を、磁気プレート上で、室温で約600rpmで撹拌した。撹拌後に白色固体が砕けた場合、約9.0mLのEtOAcを懸濁液に加えた。懸濁液を2日間撹拌し、次いで遠心分離により単離した。単離した固体を空気中でまたは真空下50℃で一晩乾燥させて形態Aを得た。
【0141】
スケールアップ実験で作製された化合物Gのマレイン酸塩の概要は、表5に見出すことができる。
【表5】
【0142】
スケールアップ実験のXRPDの結果を
図23に示す。同じ溶媒からのマレイン酸塩に一貫したXRPDパターンが観察された。MTBEからのマレイン酸塩(形態A)は弱い結晶化度を示し、アセトンからのマレイン酸塩(形態B)は、EtOAc中で結晶化したもの(形態A)とはわずかに異なるXRPDを示した。しかしながら、
図24および25に示すように、TGAにより100℃に加熱処理した後、MTBE(形態A)およびアセトン(形態B)から結晶化した化合物Gのモノマレイン酸塩のXRPDは、EtOAcから結晶化したモノマレイン酸塩(形態A)のXRPDと十分に一致していた。
【0143】
実施例5:形態Aのさらなる処理および特徴付け
異なる乾燥条件(空気乾燥、真空乾燥、湿度サイクル)を用いて形態A(EtOAcから結晶化)を処理した。得られた結晶塩は、XRPD(
図25および26)、DSC、およびTGAによって特徴付けを行った。真空乾燥後のマレイン酸塩も、
1H NMRによって特徴付けを行い、遊離塩基/マレイン酸の化学量論を決定した。
図26のXRPDの結果は、異なる乾燥条件下で全ての試料が同じ回折パターンを有していたことを示している。
図4に示すように、動的蒸気収着試験(DVS)もまた、EtOAcからの形態Aを特徴付けるために適用された。これらの実験についての特徴付けデータを表6に要約する。
【表6】
【0144】
実施例6:合成手順
手順1:酢酸イソプロピル/エタノールを用いた化合物Gのモノマレイン酸塩の調製
化合物G(37.88kgのIPAc中3.6kg)にEtOH(11.5kg)を加えた。得られた溶液を50℃に加熱し、マレイン酸(EtOH中12.4重量%の溶液1.62kg)を15分で加え、続いて所望の化合物の種晶(18.0g)を加えた。懸濁液を50℃で0.5時間撹拌し、マレイン酸(EtOH中13.4重量%の溶液4.90kg)を3時間かけて加えた。混合物を50℃で4時間撹拌し、9.5時間かけて-3℃に冷却し、-2~3℃で2時間維持し、濾過し、-5~5℃のIPAc/EtOH(2:1、12.0kg)で洗浄した。湿潤ケーキを40~45℃で17時間真空乾燥させ、化合物Gのモノマレイン酸塩(3.86kg、純度99.0%)を得た。
【0145】
手順2:酢酸エチルを用いて形態Aを産生するための塩分解
形態A(3.56kg)に、15~25℃のIPAc(37.8kg)を加え、続いて3.5%NaHCO
3(37.8kg)を加え、得られた懸濁液を1時間撹拌して溶液を得た。水層を除去し、有機層を15~25℃の5%Na
2SO
4(水溶液、36.9kg)で洗浄した。水層を除去し、有機層を45℃未満で4~7Lに濃縮した。有機層を15~25℃で酢酸エチル(32.0kg)で3回チェイスし、溶液を45℃未満で約7~11Lに濃縮した。次いで、酢酸エチル(28.8kg)を加え、溶液を45~55℃に加熱した。マレイン酸(720g)を19.4kgの酢酸エチルに溶解し、この溶液の1/10を45~55℃で30分かけて加えた。種晶(9.09g)を45~55℃で加え、混合物を30分間撹拌した。残りのマレイン酸溶液を45~55℃で1時間かけて加えた。混合物を45~55℃でさらに2時間撹拌し、次いで8時間かけて1℃に冷却した。混合物を-5~5℃で1時間撹拌し、次いで濾過し、酢酸エチル(13.0kg)で洗浄し、真空下40~50℃で26~28時間乾燥させて、3.42kgのマレイン酸塩(純度99.1%)を無色の固体として得た。XRPDパターンを
図1に示し、特徴的なDSCデータを
図2に示し、TGAデータを
図3に示す。
【0146】
手順3:0.5当量のマレイン酸を用いた化合物Gのモノマレイン酸塩の調製(形態A)
THF(0.5mL)中の化合物G(100mg、0.170mmol)に、THF(0.5mL)中のマレイン酸0.085mmol、9.9mg)を加えた。混合物を一晩放置し、濾過して化合物Gのモノマレイン酸塩(50.5mg)を無色の固体として得た。
【0147】
手順4:化合物Gのモノマレイン酸塩の再結晶化
形態A(0.05g、0.0852mmol)にエタノール(0.5mL)を加え、溶液を5分間加熱還流し、一晩で20℃に冷却した。精製した化合物を無色の固体として単離した(42mg)。
【0148】
以下の溶媒を用いて同様の再結晶法を行い、化合物Gのモノマレイン酸塩:THF、iPrOH-EtOAc(1:1)、iPrOH、iPrOH-トルエン(1:1)、ジオキサン、およびアセトニトリルを得た。
【0149】
実施例7:形態Aを用いた薬物動態試験
表7に記載されるように、形態Aを45mg/mlの濃度で皮下投与用に製剤化した。各製剤を約3mg/kgの単回皮下用量としてカニクイザル(雄3匹/用量)に投与したときの形態Aのパーセントバイオアベイラビリティ(%F)も表7に見出すことができる。
【表7】
【0150】
実施例8:多形スクリーン
方法A:約30mgの化合物Gを表8に示す溶媒に加え、次いで、50℃で700rpmの速度で振盪した。化合物の残渣を遠心分離(9,000rpmで5分間)により分離し、7日後に、表8および
図7~13に示すように、XRPD、DSC、およびTGAによって調べた。
【0151】
方法B:50mgの化合物Gにメタノール(1.0mL)を加え、続いてMTBE(0.5mL)を加えた。混合物を一晩放置した後、沈殿物を回収し、表8ならびに
図19および20に示すように、XRPD、DSC、およびTGAによって調べた。
【表8】
【0152】
実施例9:形態Bのさらなる処理および特徴付け
手順:2gの化合物Gをアセトン(20mL)中3%の水に加え、次いで50℃で700rpmの速度で一晩振盪した。残渣をXRPD、DSC、およびTGAによって調べた。
【0153】
室温または30℃で、1時間、4時間、または24時間、残渣を真空乾燥させた。
図14~15のXRPDの結果は、異なる乾燥条件下で全ての試料が同じ回折パターンを有することを示している。室温で一晩乾燥させた試料のDSC/TGA結果を
図16に示し、30℃で一晩乾燥させたものを
図17に示す。
図18に示すように、動的蒸気収着試験(DVS)もまた3%H
2O/アセトンからの形態Fを特徴付けるために適用された。室温で一晩乾燥させた後、カールフィッシャー試験により、形態Fが2.51%の含水量を有することが示された。
【0154】
例10:形態AおよびC~Gの特徴的なピーク
下の表9は、各多形に固有のXRPDピークを含む。
【表9】
【0155】
実施例11:形態Aの安定性
形態Aおよびその遊離塩基の安定性を、周囲条件(25℃および40%相対湿度「RH」)、ならびに高温および高湿度(40℃および75%RH)で1ヶ月の期間にわたって試験した。遊離塩基形態は、高温および高湿度で急速な分解を示した。しかしながら、同じ条件でかつ同じ期間にわたって、形態Aには有意な変化は観察されなかった。下の表10を参照されたい。したがって、形態Aは、その遊離塩基よりも安定性が高い。
【表10】
【0156】
上記の説明は、理解を明確にするために示されているに過ぎず、本発明の範囲内の修正は当業者に明らかであり得るため、そこから不必要な限定が理解されるべきではない。
【0157】
本明細書および続く特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解釈する必要のない限り、「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」等の変形例は、記載の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むが、他のいずれの整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外しないことを意味するものと理解されよう。
【0158】
本明細書を通して、組成物が構成成分または材料を含むものとして記載される場合、その組成物は、別途記載のない限り、列挙される構成成分もしくは材料の任意の組み合わせから本質的になるか、またはそれらからなってもよいことが企図される。同様に、方法が特定のステップを含むものとして記載される場合、その方法は、別途記載のない限り、列挙されるステップの任意の組み合わせから本質的になるか、またはそれらからなってもよいことが企図される。本明細書において例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素またはステップの非存在下で、好適に実施され得る。
【0159】
本明細書に開示される方法、およびそれらの個々のステップの実施は、手動で、および/または電子機器によって提供される自動化の助けにより行われ得る。プロセスは、特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者は、方法に関連する行為を実施する他の手段が使用され得ることを容易に認識するであろう。例えば、様々なステップの順序は、別途記載のない限り、その方法の範囲または主旨から逸脱することなく変更されてもよい。加えて、個々のステップの一部を、組み合わせること、省略すること、またはさらなるステップにさらに再分割することができる。
【0160】
本明細書で引用した全ての特許、刊行物、および参考文献は、参照により完全に本明細書に組み込まれる。本開示と、組み込まれる特許、刊行物、および参考文献との間に矛盾がある場合は、本開示が優先されるべきである。