(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】金型プレス装置及び金型プレス方法
(51)【国際特許分類】
B30B 15/04 20060101AFI20220831BHJP
B30B 1/26 20060101ALI20220831BHJP
B30B 15/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B30B15/04 B
B30B1/26 C
B30B15/04 E
B30B15/02 M
(21)【出願番号】P 2019062954
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】成川 広
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-198700(JP,A)
【文献】特開2015-077609(JP,A)
【文献】特開2003-230993(JP,A)
【文献】特開昭59-007500(JP,A)
【文献】特開2000-176697(JP,A)
【文献】特開昭63-256298(JP,A)
【文献】特開2016-198819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/04
B30B 1/26
B30B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を加工する金型の上型を上下に動作させるスライドと、
前記スライドに対向し前記上型と対になる前記金型の下型を保持するボルスタと、
前記スライドを上下に移動させるための動力を発生する駆動手段と、
複数のタイロッドと、
前記タイロッドに締結されるナットと、
前記複数のタイロッド及びナットによって締結される、コラム部を含む複数のフレームと、
を備える金型プレス装置であって、
前記コラム部及び前記コラム部よりも上部に連結されるフレームの上下方向に設けられ、前記金型プレス装置の外側に向けて開放された開口を有し、前記金型プレス装置の側方から前記開口に前記タイロッドを挿入するための挿入部を備え、
前記コラム部は、前記タイロッドが前記挿入部に挿入されたときの前記タイロッドの中心から前記金型プレス装置の外側に向かう部分の断面係数が、前記タイロッドの中心から前記金型プレス装置の内側に向かう部分の断面係数よりも大きくなるように前記挿入部が形成されていることを特徴とする金型プレス装置。
【請求項2】
前記コラム部は、断面がコの字形状となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金型プレス装置。
【請求項3】
前記コラム部は、所定の板厚である場合に、前記タイロッドの中心から前記金型プレス装置の内側に向かう面までの距離をaとし、前記タイロッドの中心から前記開口が設けられている面までの距離をbとすると、
b>a
となるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の金型プレス装置。
【請求項4】
前記コラム部は、前記金型プレス装置の内側に向かう部分の板厚よりも、前記開口を形成している部分の板厚の方が厚いことを特徴とする請求項2に記載の金型プレス装置。
【請求項5】
前記コラム部は、前記開口を形成している部分に、前記開口から離れる方向に突出した突出部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金型プレス装置。
【請求項6】
前記上部に連結されるフレームはクラウン部であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型プレス装置。
【請求項7】
前記コラム部の下部に連結されるベッド部を備え、
前記ベッド部は、少なくとも所定の位置から前記ベッド部の上部までの上下方向に前記挿入部を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型プレス装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の金型プレス装置を用いて実施される金型プレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型プレス装置及び金型プレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型のプレス装置は、重量が重いためプレス装置をそのまま1台で搬送することができない。大型のプレス装置を搬送しやすくするために、1台のプレス装置を分割することができるよう、タイロッド締結式の分割フレーム構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、プレス装置は、ベッド(下部)、コラム(中間部)、クラウン(上部)の3つのフレームに分割される。ベッド、コラム、クラウンには、それぞれタイロッドを挿入する孔が設けられている。分割された3つのフレームは、この孔に挿入されたタイロッドによって連結される。各タイロッドは、上下の2箇所においてナットによって締め付けられる。
【0003】
図8はプレス装置S’の組み立て手順を示す図である。
図8に示すように、プレス装置S’を設置場所に設置するためにプレス装置S’のフレームを組み立てる場合、次の手順で作業が行われる。
図8(a)に示すようにプレス装置S’はクラウン100’、コラム200’等に分割されている。
図8(a)にはナット53、スライド12、タイロッド51も示している。
図8(b)に示すように、ピット500上にベッド300’を配置し、ベッド300’の上から孔50hにタイロッド51を挿入し、タイロッド51を一旦ピット500に潜り込ませる。このとき、タイロッド51の下方の端部はナット53により締結しておく。タイロッド51をピット500に潜り込ませた状態で、タイロッド51の上からコラム200’の孔50hにタイロッド51を挿入しつつ、コラム200’をベッド300’上に配置する。なお、
図8(b)にはコラム200’(及び孔50h)とタイロッド51の断面図も示している。タイロッド51をピット500に潜り込ませたままの状態で、タイロッド51の上からクラウン100’の孔50hにタイロッド51を挿入しつつ、クラウン100’をコラム200’上に配置する。その後、
図8(c)に示すように、ピット500に潜り込ませていたタイロッド51を上昇させて(矢印方向)、タイロッド51の上方の端部をナット53により締め付ける。従来の組み立て手順では、プレス装置S’の組み立てのために、高さh2を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の組み立て手順では、プレス装置S’の設置や分解の際に、タイロッド51を挿入させるスペースを確保するためにピット500を設ける必要がある。また、ピット500を設けるスペースを確保することができない場合には、タイロッド51とクラウン100’の高さよりも工場の天井の高さを高くする必要があり、プレス装置S’の設置又は分解の作業のために工場の設備変更が必要となり、コスト面で不利である。
【0006】
ピット500を必要とせず、またタイロッド51を挿入する際の高さが必要ないように、例えば
図9(a)に示すように、左右方向の側方からタイロッド51を挿入できるように、フレーム(コラム200’)に設ける孔を例えばU字形(コの字形)の切り欠き50kにする方法がある。スライド(又は金型)エリア12Aのサイズは、
図9(a)に示すように、前後方向よりも左右方向の方が大きい。したがって、プレス加工時には前後方向よりも左右方向のフレーム変形が大きくなることが知られている。このため、側方からタイロッド51を挿入できるように孔50hをU字形の切り欠き50kにすると、切り欠き50kの部分の剛性が弱くなる。なお、Oはプレス装置S’の中心を示す。
【0007】
図9(b)はプレス装置S’の正面図を示し、二点鎖線は、プレス荷重がかかったときのベッド300’、コラム200’、クラウン100’の各部の変形を示す図である。ストレートサイドフレームのプレス装置S’では、プレス荷重が加わると、クラウン100’は上側へ変形し、ベッド300’は下側へ変形することが知られている。また、コラム200’は内側に変形することが知られている。コラム200’の変形は孔50hに挿入されているタイロッド51の変形でもあり、タイロッド51の変形によってフレーム剛性が低下するおそれがある。フレームの剛性が低下すると加工の精度が低下するおそれがある。この変形が少なくなるように、例えばコラム200’の板厚を厚くすることにより、フレームの剛性を確保することが考えられる。しかし、コラム200’などフレームの板厚を厚くするとプレス装置S’の質量が増加し、またコストアップの要因ともなる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、組み立てを容易にし、かつ、コラムの変形を抑制することを可能とする金型プレス装置及び金型プレス方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の趣旨を有する。
【0010】
[趣旨1]
本発明の金型プレス装置は、
対象物を加工する金型の上型を上下に動作させるスライドと、
前記スライドに対向し前記上型と対になる前記金型の下型を保持するボルスタと、
前記スライドを上下に移動させるための動力を発生する駆動手段と、
複数のタイロッドと、
前記タイロッドに締結されるナットと、
前記複数のタイロッド及びナットによって締結される、コラム部を含む複数のフレームと、
を備える金型プレス装置であって、
前記コラム部及び前記コラム部よりも上部に連結されるフレームの上下方向に設けられ、前記金型プレス装置の外側に向けて開放された開口を有し、前記金型プレス装置の側方から前記開口に前記タイロッドを挿入するための挿入部を備え、
前記コラム部は、前記タイロッドが前記挿入部に挿入されたときの前記タイロッドの中心から前記金型プレス装置の外側に向かう部分の断面係数が、前記タイロッドの中心から前記金型プレス装置の内側に向かう部分の断面係数よりも大きくなるように前記挿入部が形成されている。
【0011】
[趣旨2]
前記コラム部は、断面がコの字形状となるように形成されていてもよい。
【0012】
[趣旨3]
前記コラム部は、所定の板厚である場合に、前記タイロッドの中心から前記金型プレス装置の内側に向かう面までの距離をaとし、前記タイロッドの中心から前記開口が設けられている面までの距離をbとすると、
b>a
となるように形成されていてもよい。
【0013】
[趣旨4]
前記コラム部は、前記金型プレス装置の内側に向かう部分の板厚よりも、前記開口を形成している部分の板厚の方が厚くてもよい。
【0014】
[趣旨5]
前記コラム部は、前記開口を形成している部分に、前記開口から離れる方向に突出した突出部を有してもよい。
【0015】
[趣旨6]
前記上部に連結されるフレームはクラウン部でもよい。
【0016】
[趣旨7]
前記コラム部の下部に連結されるベッド部を備え、
前記ベッド部は、少なくとも所定の位置から前記ベッド部の上部までの上下方向に前記挿入部を有してもよい。
【0017】
[趣旨8]
趣旨1から趣旨7のいずれか1項に記載の金型プレス装置を用いて実施される金型プレス方法である。
【0018】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、組み立てを容易にし、かつ、コラムの変形を抑制することを可能とする金型プレス装置及び金型プレス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態のプレス装置のクラウン、コラム、ベッドを示す(a)正面図、(b)上面図
【
図3】(a)実施形態のコラムの挿入部の構成を示す断面図及びコラムの正面図、(b)従来例の挿入部を示す断面図及びコラムの正面図、(c)従来例の切り欠きのある場合の挿入部を示す断面図及びコラムの正面図
【
図5】実施形態のコの字形状の断面係数を説明する図
【
図6】実施形態の(a)分解された各部を示す図、(b)組み立ての様子を示す図、(c)組み立て後のプレス装置を示す図
【
図7】(a)(b)他の実施形態のコラムの挿入部の構成を示す断面図
【
図8】従来例の(a)分解された各部を示す図、(b)組み立ての様子を示す図、(c)組み立て後のプレス装置を示す図
【
図9】従来例の(a)タイロッドの挿入部がU字形の切り欠きの場合を示す断面図、(b)フレームの変形を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態]
(プレス装置の全体構成)
図1は、本実施形態のストレートサイド式金型プレス装置(以下、プレス装置という)Sを説明する図である。
図1(a)は、プレス装置Sを正面から見た図であり、(b)はプレス装置Sを上から見た上面図である。なお、
図1には、上下方向、左右方向、前後方向を矢印で示す。プレス装置Sのフレームは、大きく3つの部分に分割されている。すなわち、プレス装置Sは、上から下に向かって、クラウン100、コラム200、ベッド300に分割されている。クラウン100、コラム200及びベッド300は、
図1(b)に示すように、フレームの4つの角部(すなわち四隅)に挿入された4本のタイロッド51と8つのナット53によって締結される。
【0022】
クラウン100、コラム200及びベッド300には、それぞれタイロッド51を挿入するための挿入部50が設けられている。本実施形態では、タイロッド51を側方から挿入する。より詳細には、
図1(b)に破線矢印で示すように、フレームの左側に設けられた挿入部50にはタイロッド51を左側方から挿入する。フレームの右側に設けられた挿入部50にはタイロッド51を右側方から挿入する。挿入部50については詳細を後述する。このように、本実施形態のプレス装置Sには、タイロッド締結式分割フレームが採用されている。プレス装置Sは、スライド12、ボルスタ22も備えている。1本のタイロッド51は、上下の端部近傍においてそれぞれナット53により締結されている。タイロッド51及びナット53の締結部分を、以下、締結部という。
【0023】
(プレス装置の詳細な説明)
図2は、本実施形態のプレス装置Sの概略図である。なお、
図2においては、タイロッド51、ナット53、挿入部50の描画を省略している。
図2を用いてプレス装置Sについて説明する。プレス装置Sは、筐体2(フレームでもある)の内外に、駆動手段である駆動モータ4、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12を有して構成される。また、プレス装置Sは、コントローラ14、記憶部15、表示部16、入力部18、を有している。
【0024】
駆動モータ4は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10を介して後述する金型3を上下移動させるものである。伝達機構6は、例えばギヤやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ4のモータ軸の回転をクランク軸8へと伝達するものである。駆動モータ4への制御信号はコントローラ14から送られるようになっている。
【0025】
クランク軸8及びコンロッド10は、伝達機構6により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態では、上下移動。)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸8が回転し、クランク軸8に一端近傍が連結されたコンロッド10にその回転が伝達されてコンロッド10が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0026】
コンロッド10の他端近傍にはスライド12が連結されている。コンロッド10の上下移動に伴いスライド12がギブ(不図示)に沿って上下移動するようになっている。プレス装置Sにおいては、スライド12と対向するようにボルスタ22が配置されている。スライド12のボルスタ22と対向する側の面(本実施形態では下面。)に金型3の一部としての上型3aが装着される。ボルスタ22のスライド12と対向する側の面(本実施形態では上面。)に金型3の一部として、上型3aと対になる下型3bが装着される。
【0027】
上型3aと下型3bとの間に加工の対象物としてのワークWを配置し、上型3aと下型3bとで押圧することにより、プレス装置SによるワークWに対するプレス加工が行われる。詳しくは、コントローラ14により制御されて駆動モータ4が回転する。駆動モータ4の回転が伝達機構6、クランク軸8を介してコンロッド10へと伝達され、スライド12が上下移動する。スライド12の下方移動によって上型3aが下型3bに押圧され、ワークWのプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置Sにおいて、駆動モータ4、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12がプレス部を構成する。伝達機構6には、クランク軸8の回転数を検知するための回転数検知手段であるロータリーエンコーダ25が設けられている。なお、ロータリーエンコーダ25は、駆動モータ4の回転軸に設けられていてもよい。
【0028】
制御手段であるコントローラ14は、記憶部15に記憶されている各種プログラムに従ってプレス装置Sを制御する。表示部16は、プレス装置Sの状態を示すデータを表示する。入力部18は、プレス装置Sを操作するために必要なデータを入力するために用いられる。
【0029】
[タイロッドの挿入部の構成]
図3は、(a)実施形態のコラム200の挿入部50の構成を示す断面図及びコラム200の正面図、(b)従来例の挿入部50aを示す断面図及びコラム200aの正面図、(c)従来例の切り欠きのある場合の挿入部50bを示す断面図及びコラム200bの正面図である。正面図の一点鎖線はタイロッド51の中心を示している。なお、
図3は、いずれも、プレス装置Sの4つのコラムのうち、前側かつ左側のコラムについて説明する図である(
図9(a)の左前のコラムに対応)。
【0030】
(従来の挿入部)
まず、従来の挿入部50a、50bについて説明する。
図3(b)に示す従来のコラム200aには、タイロッド51を挿入する挿入部50a(
図8の孔50hに対応)が設けられている。挿入部50aは、左側の内側面50ail、右側の内側面50airを含む4つの面によって形成されている。また、コラム200aは、左側の外側面50aol、右側の外側面50aorを含む4つの面を有している。内側面50ailと外側面50aolとの距離、又は内側面50airと外側面50aorとの距離、言い換えれば、コラム200の板厚をtとする。挿入部50aは、コラム200aを上下方向に貫通する孔であり、この孔にタイロッド51が上方から挿入される。
【0031】
図3(b)では、コラム200aの中心とタイロッド51の中心とは一致している。ここで、タイロッド51の中心から左側の外側面50aolまでの距離と、タイロッド51の中心から右側の外側面50aorまでの距離とは略等しく、この距離をaとする。
図3(b)に示す従来の構成では、正面図に示すように、荷重(例えば、数トン~数100トン)がかかったときにコラム200aの変形は生じないが、
図8で説明したように側面(横)からタイロッド51を挿入することができない。
【0032】
そこで、
図3(b)の断面図にハッチングで示す部分50dを切り欠いて側面(横)からタイロッド51を挿入することができるようにした従来の構成を
図3(c)に示す。挿入部50bは、左側の内側面は切り欠かれ、孔と切り欠きが連結しており(
図9(a)の切り欠き50kに対応)、右側の内側面50birを含む3つの面によって形成されている。また、コラム200bは、左側の外側面50bolの一部が切り欠かれて開口を形成しており、右側の外側面50borを含む3つの面と一部が切り欠かれた外側面50bolとを有している。
【0033】
図3(c)においてもコラム200bの板厚はtである。
図3(c)でも、コラム200bの中心とタイロッド51の中心とは一致しており、タイロッド51の中心から左側の外側面50bolまでの距離と、タイロッド51の中心から右側の外側面50borまでの距離とは略等しくaである。
【0034】
図3(c)に示す従来の構成では、正面図に示すように、荷重がかかったときに切り欠きが設けられた側、すなわち力に対して弱い側に曲がってしまい、コラム200bに変形が生じる。このように、
図3(c)の構成では、側面(横)からタイロッド51を挿入することはできるが、コラム200bの剛性が低下してしまう。
【0035】
(本実施形態の挿入部)
図3(a)に、本実施形態のコラム200を示す。本実施形態の挿入部50は、左側の内側面は切り欠かれ、孔と切り欠きが連結しており、右側の内側面50irを含む3つの面によって形成されている。また、コラム200は、左側の外側面50olの一部が切り欠かれて開口を形成しており、右側の外側面50orを含む3つの面と一部が切り欠かれた外側面50olとを有している。挿入部50の開口は、プレス装置Sの外側に向けて開放されている。内側面50irと外側面50orとの距離、言い換えれば、コラム200の板厚は従来と同じt(所定の板厚)である。
【0036】
図3(a)では、コラム200の中心とタイロッド51の中心とが一致しておらず、タイロッド51の中心は、コラム200の中心よりもプレス装置Sの中心に向かう側に寄っている。すなわち、タイロッド51の中心から左側の外側面50olまでの距離と、タイロッド51の中心から右側の外側面50orまでの距離とが異なる。タイロッド51の中心から右側の外側面50orまでの距離は上述した距離aと略等しく、タイロッド51の中心から左側の外側面50olまでの距離をbとすると、距離bは距離aよりも大きい(b>a)。
【0037】
図3(a)に示す本実施形態の構成では、正面図に示すように、荷重がかかったときのコラム200の変形は生じない。このように、本実施形態のように構成することで、側面(横)からタイロッド51を挿入することができ、かつ、コラム200の剛性を低下させないようにすることができる。このため、コラム200の板厚tを厚くすることなく、剛性を上げることができるため、軽量化を実現することもできる。
【0038】
以上、プレス装置Sの4つのコラム200のうち、前側かつ左側のコラム200について説明した。前側かつ右側のコラム200については、
図3(a)の説明を左右対称にして適用すればよい。また、後側かつ左側のコラム200については、
図3(a)の説明を前後対称にして適用すればよい。更に、後側かつ右側のコラム200については、
図3(a)の説明を左右対称かつ前後対称にして適用すればよい。
図4は本実施形態のプレス装置Sの挿入部50を有するコラム200における断面図である。いずれの挿入部50もプレス装置Sの内側の距離aが外側の距離bよりも小さい。
【0039】
[断面係数について]
図5は、コの字形状の挿入部50を有するコラム200の断面係数について説明するための図である。なお、
図5は
図3(a)の断面図を90度右に回転した図に対応するものであり、
図5には、
図3(a)の本実施形態の挿入部50の説明に用いた符号も付している。
【0040】
ここで、切り欠かれた上側(
図3(a)では左側)の外側面50olの厚さ(板厚)をc/2とする。外側面50olの切り欠かれた部分(すなわち開口)、言い換えれば下側(
図3(a)では右側)の内側面50irの大きさをdとする。タイロッド51の中心から下側(
図3(a)では右側)の外側面50orまでの距離aをe
1とする。タイロッド51の中心から上側(
図3(a)では左側)の外側面50olまでの距離bをe
2とする。内側面50irから外側面50orまでの距離、すなわちこの部分の板厚をtとする。タイロッド51の中心から内側面50irまでの距離、すなわち距離a(e
1)から板厚tを減じた距離をhとする。また、外側面50olから外側面50orまでの距離、すなわち距離a(e
1)と距離b(e
2)との和をHとする。更に、外側面50orの長さをBとする。
【0041】
この場合、コの字形状のコラム200の断面積Aは、以下のように表される。
A=H×B-d×(e2+h)
また、コラム200にかかる慣性モーメント(断面二次モーメント)Iは、以下のように表される。
I=1/3×(B×e1
3-d×h3+c×e2
3)
更に、距離aの部分の断面係数Z1と距離bの部分の断面係数Z2は、以下のように表される。
Z1=I/e1
Z2=I/e2
【0042】
図3(a)に示すように、本実施形態のコラム200では、距離b(e
2)>距離a(e
1)としている。また、コラム200の板厚tは一定であるため、c/2=tである。これは、言い換えれば、コラム200の挿入部50において、外側の断面係数Z2を内側の断面係数Z1より大きくすることに対応している。より詳細には、本実施形態では、タイロッド51の中心に対して、挿入部50の開口が設けられた外側に向かう部分の断面係数Z2を、挿入部50のプレス装置Sの中央(又は内側)に向かう部分の断面係数Z1よりも大きくする。すなわち、「外側の断面係数」>「内側の断面係数」となるように、コラム200をコの字形状の構成とする。これにより、本実施形態では、側面(横)からタイロッド51を挿入することができ、かつ、コラム200の剛性を低下させないようにすることができる。
【0043】
[プレス装置の組み立て(又は分解)の手順]
図6は、本実施形態の(a)分解された各部を示す図、(b)組み立ての様子を示す図、(c)組み立て後のプレス装置Sを示す図である。本実施形態では、コラム200に
図3(a)で説明した挿入部50が上から下まで形成されている。また、クラウン100にも
図3(a)で説明した挿入部50が上から下まで形成されている。一方、ベッド300には、
図3(a)で説明した挿入部50が所定の位置から上部まで(
図3(b)のy2)形成されている。ベッド300は、所定の位置から下部まで(
図3(b)のy1)は従来のような開口がない孔50hのみの挿入部が形成されている。
【0044】
図6に示すように、プレス装置Sを設置場所に設置するためにプレス装置Sのフレームを組み立てる場合、本実施形態では、次の手順で作業が行われる。
図6(a)に示すようにプレス装置Sはクラウン100、コラム200等に分割されている。
図6(a)にはナット53、スライド12、タイロッド51も示している。
【0045】
図6(b)に示すように、本実施形態ではピットを必要としない。本実施形態では、ベッド300の上にコラム200を載せ、コラム200の上にクラウン100を載せる。ベッド300、コラム200及びクラウン100のそれぞれの挿入部50が上下方向に連なった状態で、タイロッド51を
図6(a)に示す高さで側方、すなわち、
図6(b)に矢印Xで示すように挿入部50に挿入する。このため、上述したように、ベッド300はy2の部分に本実施形態の挿入部50が形成されていればよい。なお、
図6(b)では左側のタイロッド51のみを図示しているが、右側のタイロッド51の挿入の手順も同様である。
【0046】
タイロッド51が挿入部50に挿入されると、
図6(b)に示すy1の部分の孔50hに沿ってタイロッド51が下方に移動し、タイロッド51の下方の端部近傍をナット53により締め付けることが可能となる。また、クラウン100の上方に突出したタイロッド51の上方の端部近傍をナット53により締め付ける。タイロッド51の挿入を、プレス装置Sの四隅において実施する。
【0047】
以上により、
図6(c)に示すように、分割されたフレームが4本のタイロッド51によって締結されたプレス装置Sの組み立てが完了する。本実施形態の組み立て手順では、プレス装置Sの組み立てのために、高さh1を要している(
図6(a)参照)。高さh1は従来の高さh2よりも低くなっている(h1<h2)。このように、本実施形態の挿入部50とすることによって、ピットを必要とせず、かつ、工場の天井を高くする必要もない。
【0048】
[他の実施形態]
(板厚が異なる場合)
上述した実施形態では、コラム200の板厚tが均一(厚さが略等しい(
図5において、c/2=t))の場合について説明した。
図7(a)を用いて、コラム200の板厚が異なる場合について説明する。
図7(a)の挿入部60は、左側の内側面は切り欠かれ、孔と切り欠きが連結しており、右側の内側面60ir、後側の内側面60ib、前側の内側面60ifの3つの面によって形成されている。
【0049】
また、コラム200は、左側の外側面60olの一部が切り欠かれて開口を形成しており、右側の外側面60or、後側の外側面60ob、前側の外側面60ofと一部が切り欠かれた外側面60olとを有している。後側の内側面60ibと後側の外側面60obとの距離、及び、前側の内側面60ifと前側の外側面60ofとの距離、言い換えれば、この部分の板厚はt1である。板厚t1は、
図5のc/2に相当する(t1=c/2)。一方、右側の内側面60irと右側の外側面60orとの距離、言い換えれば、この部分の板厚はt2である。板厚t2は、
図5のtに相当する(t2=t)。板厚t2は板厚t1よりも薄い(t2<t1)。
【0050】
図7(a)のような挿入部60においても、
図3(a)と同様に、プレス荷重がかかってもフレームの変形を抑制することが可能である。なお、
図7(a)の挿入部60において、板厚t2を0とした場合に(t2≒0)、距離aと距離bとが略等しくなったときに(a≒b)、タイロッド51の中心から外側のコラム200の剛性とタイロッド51の中心から内側のコラム200の剛性とは略等しくなる。
【0051】
(切り欠き部に突出部がある場合)
図7(b)を用いて、コラム200の切り欠き部に、切り欠き部を曲げて形成した突出部がある場合について説明する。
図7(b)の挿入部70は、左側の内側面は切り欠かれ、孔と切り欠きが連結しており、右側の内側面70ir、後側の内側面70ib、前側の内側面70ifの3つの面によって形成されている。
【0052】
また、コラム200は、左側の外側面70olの一部が切り欠かれて開口を形成しており、右側の外側面70or、後側の外側面70ob、前側の外側面70ofと一部が切り欠かれた外側面70olとを有している。ここで、
図7(b)では、コラム200は、後側の外側面70ob及び前側の外側面70ofから、それぞれ更に後側、更に前側に距離C突出した突出部70Cを有している。突出部70Cは、コラム200のコの字形状の開口部を外側に折り曲げた曲げ部ともいえる。なお、
図7(b)のコラム200の板厚はいずれもtで均一としている。しかし、
図7(a)のように板厚をt1、t2(t1>t2)のように異ならせてもよい。
【0053】
図7(b)のような挿入部70においても、
図3(a)と同様に、プレス荷重がかかってもフレームの変形を抑制することが可能である。なお、
図7(b)の挿入部70のように突出部70Cを有する構成では、距離aと距離bとが略等しい場合であっても(a=b)、タイロッド51の中心から外側のコラム200の剛性の方がタイロッド51の中心から内側のコラム200の剛性よりも大きくなる。
【0054】
以上、プレス装置Sの4つのコラム200のうち、前側かつ左側のコラム200について説明した。しかし、前側かつ右側のコラム200については、
図7の説明を左右対称にして適用すればよい。また、後側かつ左側のコラム200については、
図7の説明を前後対称にして適用すればよい。更に、後側かつ右側のコラム200については、
図7の説明を左右対称かつ前後対称にして適用すればよい。
【0055】
以上のように、
図7(a)、(b)のような構成でも、タイロッド51の中心に対して、挿入部60、70の開口が設けられた側(外側)の断面係数を、挿入部60、70のプレス装置Sの中央に向かう側(内側)の断面係数以上にすることができる。これにより、
図7(a)、(b)の構成でも、側面(横)からタイロッド51を挿入することができ、かつ、コラム200の剛性を低下させないようにすることができる。このため、コラム200の板厚を厚くすることなく、剛性を上げることができるため、軽量化を実現することもできる。更に、プレス装置Sの組み立て時に要する高さを従来よりも低くすることができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能であり、例えば以下のような変形例がある。
【0057】
本実施形態では、プレス装置Sを3つのフレームに分割したが、分割数は3に限定されず、他の分割数であってもよい。この場合、コラムの上に配置されるフレームには、本発明の挿入部50が上から下まで形成される。
【0058】
また、実施形態では、ベッド300の所定の位置から下部まで(
図6(b)のy1)は従来のような開口がない孔50hのみの挿入部とした。しかし、ベッド300も本発明の挿入部50が上から下まで形成されていてもよい。これにより、更に、プレス装置Sの組み立て時に要する高さを低くすることができる。
【0059】
以上、実施形態によれば、組み立てを容易にし、かつ、コラムの変形を抑制することを可能とする金型プレス装置及び金型プレス方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
2 筐体
3 金型
3a 上型
3b 下型
4 駆動モータ
6 伝達機構
8 クランク軸
10 コンロッド
12 スライド
12A スライドエリア
14 コントローラ
15 記憶部
16 表示部
18 入力部
22 ボルスタ
25 ロータリーエンコーダ
50 挿入部
50a 挿入部
50ail 内側面
50air 内側面
50aol 外側面
50aor 外側面
50b 挿入部
50bir 内側面
50bol 外側面
50bor 外側面
50d 部分
50h 孔
50ir 内側面
50k 切り欠き
50ol 外側面
50or 外側面
51 タイロッド
53 ナット
60 挿入部
60ib 内側面
60if 内側面
60ir 内側面
60ob 外側面
60of 外側面
60ol 外側面
60or 外側面
70 挿入部
70C 突出部
70ib 内側面
70if 内側面
70ir 内側面
70ob 外側面
70of 外側面
70ol 外側面
70or 外側面
100 クラウン
100’ クラウン
200 コラム
200’ コラム
200a コラム
200b コラム
300 ベッド
300’ ベッド
500 ピット
S プレス装置
S’ プレス装置
W ワーク