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  • 特許-電子写真機器用導電性ロール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】電子写真機器用導電性ロール
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20220831BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220831BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20220831BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20220831BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20220831BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20220831BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/00 551
G03G15/08 221
G03G15/02 101
G03G15/16 103
C08L9/02
C08L33/16
C08K5/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019083491
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020181065
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙伍
(72)【発明者】
【氏名】池上 慶一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-225914(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050494(WO,A1)
【文献】特開2018-077432(JP,A)
【文献】特開2019-012207(JP,A)
【文献】特開2014-209176(JP,A)
【文献】特開2004-233607(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0002537(KR,A)
【文献】米国特許第5810705(US,A)
【文献】国際公開第2019/188893(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/16
C08L 9/02
C08L 33/16
C08K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周に形成された表層と、を備え、
前記表層が、下記の(a)~(c)を含有し、
前記(b)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、3.0質量部以上60質量部以下であることを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
(a)アクリロニトリル量が31質量%以上36質量%以下であるアクリロニトリル-ブタジエンゴムからなるバインダー
(b)イオン導電剤
(c)シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体
【請求項2】
前記(b)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、3.0質量部以上40質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項3】
前記(a)のアクリロニトリル量が、32質量%以上35質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項4】
前記(c)は、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有する重合体セグメントと、シリコーン基およびフッ素含有基を有しない重合体セグメントと、からなるアクリル系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項5】
前記(c)は、シリコーン基およびフッ素含有基の両方を有するアクリル系重合体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項6】
前記(a)は、架橋体であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項7】
電子写真機器用現像ロールとして用いられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、感光ドラムの周囲には、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが配設されている。導電性ロールとしては、軸体と、軸体の外周に形成された弾性体層と、弾性体層の外周に形成された表層と、を備えたものが知られている。
【0003】
例えば現像ロールは、高耐久化、高速化が進んできている。現像ロールでは、耐久によるロールの表面欠陥や表面劣化に起因した画像悪化を抑えるため、トナー荷電性やトナー搬送性の安定化が求められている。トナーの荷電量が高いと、現像ロールがトナーを必要以上に保持するため、トナー搬送性が不安定になり、画質悪化につながる。トナー荷電性を安定させるためには、現像ロールを低抵抗にする必要があり、例えば表層にイオン導電剤を添加してトナーの荷電上昇を抑える方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4215155号公報
【文献】特開2018-025609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現像ロールの表層に添加できるイオン導電剤の量は、イオン導電剤のブリードアウトの発生リスクから制約があり、現像ロールはこれまで十分な低抵抗化を実現できていなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、低抵抗化とイオン導電剤のブリードアウトの抑制を両立できる電子写真機器用導電性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周に形成された表層と、を備え、前記表層が、下記の(a)~(c)を含有し、前記(b)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、3.0質量部以上60質量部以下であることを要旨とするものである。
(a)アクリロニトリル量が31質量%以上36質量%以下であるアクリロニトリル-ブタジエンゴムからなるバインダー
(b)イオン導電剤
(c)シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体
【0008】
前記(b)の含有量は、前記(a)100質量部に対し、3.0質量部以上40質量部以下であることが好ましい。前記(a)のアクリロニトリル量は、32質量%以上35質量%以下であることが好ましい。前記(c)は、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有する重合体セグメントと、シリコーン基およびフッ素含有基を有しない重合体セグメントと、からなるアクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。前記(c)は、シリコーン基およびフッ素含有基の両方を有するアクリル系重合体であることが好ましい。前記(a)は、架橋体であることが好ましい。そして、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、電子写真機器用現像ロールとして好適に用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロールによれば、表層が上記の(a)~(c)を特定割合で含有することから、低抵抗化とイオン導電剤のブリードアウトの抑制を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロール(以下、単に導電性ロールということがある。)について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【0012】
導電性ロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、導電性ロール10のベースとなる層(基層)である。表層16は、導電性ロール10の表面に現れる層となっている。また、特に図示しないが、必要に応じて、抵抗調整層等の中間層が、弾性体層14と表層16の間に形成されていてもよい。
【0013】
表層16は、下記の(a)~(c)を含有する。(b)の含有量は、(a)100質量部に対し、3.0質量部以上60質量部以下である。
(a)アクリロニトリル量が31質量%以上36質量%以下であるアクリロニトリル-ブタジエンゴムからなるバインダー
(b)イオン導電剤
(c)シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体
【0014】
(a)は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)からなるバインダーであり、アクリロニトリル量が31質量%以上36質量%以下のものである。(a)は、比較的高アクリロニトリル量であることで、(b)イオン導電剤のカチオンと引き合う相互作用が大きくなり、(b)イオン導電剤の表層16からのブリードアウトが抑えられる。(a)のアクリロニトリル量が31質量%未満であると、(b)イオン導電剤の表層16からのブリードアウトを抑える効果が十分でない。一方、(a)のアクリロニトリル量が36質量%超であると、アクリロニトリル量が多くなりすぎてニトリル基間の相互作用が強くなり、(b)イオン導電剤のカチオンと引き合う相互作用が小さくなり、(b)イオン導電剤の表層16からのブリードアウトを抑える効果が十分でない。(a)のアクリロニトリル量としては、(b)イオン導電剤の表層16からのブリードアウトを抑える効果が向上するなどの観点から、より好ましくは32質量%以上35質量%以下である。
【0015】
(a)は、架橋体であることが好ましい。(a)を架橋体とするための架橋剤は、特に限定されるものではなく、ジエン系ゴムの架橋剤であれば適用可能である。このような架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、樹脂架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0016】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0017】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0018】
樹脂架橋剤としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、アミノ樹脂、グアナキミン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの従来より公知の樹脂架橋剤を挙げることができる。
【0019】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~70質量部の範囲内、より好ましくは0.3~60質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~50質量部の範囲内である。
【0020】
(b)は、イオン導電剤である。表層16は、(b)を含有することで、低抵抗にすることができる。十分な低抵抗化を実現する観点から、(b)の含有量は、(a)100質量部に対し3.0質量部以上である。また、(b)の含有量は、十分な低抵抗化を実現する観点から、(a)100質量部に対し、5.0質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上などとすることができる。(b)の含有量が多いほど、表層16をより低抵抗にすることができる。本発明においては、(b)の含有量をこれほど多くしても、(b)のブリードアウトを抑えることができる。一方で、(b)の含有量は、(a)100質量部に対し60質量部以下である。(b)の含有量が60質量部超となると、(a)および(c)の調整によっても(b)のブリードアウトを抑えることができない。(b)の含有量は、(a)100質量部に対し、55質量部以下、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下などとすることができる。
【0021】
イオン導電剤としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、ピリジニウム塩、ホウ酸塩などが挙げられる。イオン導電剤は、常温で固体の固体イオン導電剤であってもよいし、常温で液体の液体イオン導電剤であってもよい。これらのうちでは、分散性により優れるなどの観点から、常温で液体の液体イオン導電剤がより好ましい。
【0022】
第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩としては、例えば、炭素数1~18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有するものであって、ハロゲンイオン、ClO 、BF 、SO 2-、HSO 、CSO 、CFCOO、CFSO 、(CFSO、PF 、(CFCFSO、CF(CFSO 、(CFSO、CF(CFCOOなどの陰イオンを含むものなどが挙げられる。
【0023】
第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩のアニオンとしては、高温高湿環境下(HH環境下)におけるトナー荷電性に優れるなどの観点から、フッ素を含有するアニオンが好ましい。上記アニオンでは、CFCOO、CFSO 、(CFSO、PF 、(CFCFSO、CF(CFSO 、(CFSO、CF(CFCOOが特に好ましい。
【0024】
ピリジニウム塩は、芳香族のいずれの炭素にも置換基がなく、また、N-置換基のない、非置換のピリジニウム塩であってもよいし、芳香環の任意の炭素に炭素数1~18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有し、N-置換基のない、置換基を有するピリジニウム塩であってもよいし、芳香環のいずれの炭素にも置換基はないが、N位に炭素数1~18程度のアルキル基またはアリール基を有する、置換基を有するピリジニウム塩であってもよい。ピリジニウム塩のアニオンは第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩のアニオンとして例示したものが挙げられる。
【0025】
ホウ酸塩としては、例えば、炭素数1~18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有するものであって、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンを含むものなどが挙げられる。
【0026】
(c)は、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体である。(c)は、アクリル系重合体であることから、(メタ)アクリロイル基に起因する炭化水素鎖の部分を有する。アクリル系重合体は、(メタ)アクリレートの重合体や、(メタ)アクリルアミドの重合体、(メタ)アクリレートと(メタ)アクリルアミドの共重合体などを表す。(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタアクリレートを総称するものである。また、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドとメタアクリルアミドを総称するものである。また、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基とメタクリロイル基を総称するものである。
【0027】
(c)は、(メタ)アクリロイル基に起因する炭化水素鎖の部分が(a)のブタジエン部分に起因する炭化水素鎖と相溶する(相互作用により引き合う)ことで、表層16に固定化されるため、(c)のブリードアウトが抑えられる。そして、(c)のシリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種は、(a)のブタジエン部分に起因する炭化水素鎖と相溶しないため、表層16の極表面に配向する。表層16の極表面に配向したシリコーン基やフッ素含有基は、極性の高い(b)のイオン導電剤と親和性が低いため、イオン導電剤が表層16の極表面に移動しにくくなり、イオン導電剤のブリードアウトをブロックする効果を発揮することができる。また、(c)は、表層16の極表面に配向したシリコーン基やフッ素含有基により、表層16の表面に滑り性や荷電性などの機能を付与することができる。(c)は、カチオン基を有するものであってもよいし、カチオン基を有しないものであってもよい。
【0028】
(c)としては、シリコーン基やフッ素含有基の表面配向性と(メタ)アクリロイル基に起因する炭化水素鎖の部分の(a)との相溶効果に優れるなどの観点から、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有する重合体セグメントと、シリコーン基およびフッ素含有基を有しない重合体セグメントと、からなるアクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有する重合体セグメントは、例えば、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有する化合物と他の重合体とから形成することができる。シリコーン基およびフッ素含有基を有しない重合体セグメントは、他の重合体から形成することができる。
【0029】
(c)としては、(c1)シリコーン基を有するアクリル系重合体、(c2)フッ素含有基を有するアクリル系重合体、(c3)シリコーン基とフッ素含有基とを有するアクリル系重合体が挙げられる。これらは、(c)として1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(c1)は、シリコーン基を有する(メタ)アクリレートおよび/またはシリコーン基を有する(メタ)アクリルアミドを重合することにより得ることができる。(c1)は、上記成分の他、シリコーン基やフッ素基を有していない、非変性の(メタ)アクリレートまたは非変性の(メタ)アクリルアミドを共重合成分として1種または2種以上含む共重合体であってもよい。非変性の(メタ)アクリレートまたは非変性の(メタ)アクリルアミドを共重合成分として含むと、(a)に対する相溶性などの点で利点がある。
【0031】
シリコーン基を有する(メタ)アクリレートおよびシリコーン基を有する(メタ)アクリルアミドは、(メタ)アクリロイル基を1または2以上有するオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンは、(メタ)アクリロイル基に加えて、有機基を有する。有機基は、1価の置換または非置換の炭化水素基である。非置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、β-フェニルエチル基、β-フェニルプロピル基などのアラルキル基などが挙げられる。置換の炭化水素基としては、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などが挙げられる。オルガノポリシロキサンとしては、一般的には、有機基としてメチル基を有するものが、合成のしやすさ等から多用される。オルガノポリシロキサンは、直鎖状のものが好ましいが、分岐状もしくは環状のものであっても良い。オルガノポリシロキサンの分子量は、特に限定されるものではないが、数平均分子量で、200~30000の範囲のものなどを好適に用いることができる。
【0032】
(c1)において、共重合可能な非変性の(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうちでは、共重合反応性などの観点から、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
(c1)において、共重合可能な非変性の(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、2-エチルヘキシル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらのうちでは、共重合反応性などの観点から、メチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0034】
(c2)は、フッ素含有基を有する(メタ)アクリレートおよび/またはフッ素含有基を有する(メタ)アクリルアミドを重合することにより得ることができる。(c2)は、上記成分の他、シリコーン基やフッ素基を有していない、非変性の(メタ)アクリレートまたは非変性の(メタ)アクリルアミドを共重合成分として1または2以上含む共重合体であってもよい。
【0035】
フッ素含有基を有する(メタ)アクリレートおよびフッ素含有基を有する(メタ)アクリルアミドにおいて、フッ素含有基としては、炭素数1~20のフルオロアルキル基が挙げられる。フルオロアルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であってもよいし、アルキル基の一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフルオロアルキル基であってもよい。これらのうちでは、表層16の表面に偏在しやすいなどの観点から、パーフルオロアルキル基が好ましい。
【0036】
炭素数1~20のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロブチル基などが挙げられる。
【0037】
フッ素含有基を有する(メタ)アクリレートおよびフッ素含有基を有する(メタ)アクリルアミドは、例えば下記の一般式(1)のように示すことができる。
【化1】
式(1)中、AはOまたはNHであり、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1~20のフルオロアルキル基である。
【0038】
(c3)は、シリコーン基を有する(メタ)アクリレートおよび/またはシリコーン基を有する(メタ)アクリルアミドと、フッ素含有基を有する(メタ)アクリレートおよび/またはフッ素含有基を有する(メタ)アクリルアミドと、を共重合することにより得ることができる。(c3)は、上記成分の他、シリコーン基やフッ素基を有していない、非変性の(メタ)アクリレートまたは非変性の(メタ)アクリルアミドを共重合成分としてさらに1または2以上含む共重合体であってもよい。
【0039】
シリコーン基を有する(メタ)アクリレートおよびシリコーン基を有する(メタ)アクリルアミドは、(c1)で例示したものを挙げることができる。フッ素含有基を有する(メタ)アクリレートおよびフッ素含有基を有する(メタ)アクリルアミドは、(c2)で例示したものを挙げることができる。
【0040】
(c)において、シリコーン基の含有量は、(c)が表層16の表面に偏在しやすいなどの観点から、0.01~60mol%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.05~50mol%、さらに好ましくは0.1~30mol%である。また、フッ素含有基の含有量は、(c)が表層16の表面に偏在しやすいなどの観点から、0.01~60mol%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.05~50mol%、さらに好ましくは0.1~30mol%である。各含有量は、GC-MS分析、NMR分析などにより測定することができる。
【0041】
(c)のうち、シリコーン基を有するアクリル系重合体の含有量は、(b)のブリードアウトを抑える効果に優れるなどの観点から、(a)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。一方、荷電制御性により優れるなどの観点から、(a)のバインダー100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましい。より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0042】
また、(c)のうち、フッ素含有基を有するアクリル系重合体の含有量は、(b)のブリードアウトを抑える効果に優れるなどの観点から、(a)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。一方、荷電制御性により優れるなどの観点から、(a)のバインダー100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましい。より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0043】
表層16は、本発明に影響を与えない範囲において、電子導電剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、他のポリマー成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、表面粗さを形成するための粗さ形成用粒子を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、添加剤を含んでいてもよい。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン,導電性酸化亜鉛,導電性酸化スズなどの導電性酸化物などが挙げられる。電子導電剤の含有量は、(a)100質量部に対し、0.1~5.0質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5~3.0質量部の範囲内である。添加剤としては、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離形剤、染料、顔料、難燃剤などが挙げられる。
【0044】
表層16は、表層16の形成用材料を弾性層14の外周面に塗工し、必要に応じて熱処理や架橋処理などを施すことにより形成することができる。表層16の形成用材料は、希釈溶媒を含んでいてもよい。希釈溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、イソプロピルアルコール(IPA),メタノール,エタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン,トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチルなどの酢酸系溶媒、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。
【0045】
表層16の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~50μmの範囲内、より好ましくは0.1~30μmの範囲内、さらに好ましくは0.3~20μmの範囲内である。表層16の厚みは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製、「VK-9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、弾性体層14の表面から表層16の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0046】
表層16は、バインダーの種類、イオン導電剤の種類、配合量などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。表層16の体積抵抗率は、10~1014Ω・cm、10~1013Ω・cm、10~1012Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。
【0047】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。
【0048】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。
【0049】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0050】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0051】
非極性ゴムとしては、シリコーンゴム(Q)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。非極性ゴムのうちでは、低硬度でへたりにくい(弾性回復性に優れる)などの観点から、シリコーンゴムがより好ましい。
【0052】
架橋剤としては、樹脂架橋剤、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0053】
樹脂架橋剤としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、アミノ樹脂、グアナキミン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの従来より公知の樹脂架橋剤を挙げることができる。
【0054】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0055】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0056】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0057】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部の範囲内、より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0058】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2-メルカプトベンゾチアゾール塩、2-メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0059】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0060】
弾性体層14には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c-TiO、c-ZnO、c-SnO(c-は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0061】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて10~1010Ω・cm、10~10Ω・cm、10~10Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0062】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0063】
弾性体層14は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。
【0064】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0065】
以上の構成の導電性ロール10によれば、表層16が、(a)アクリロニトリル量が31質量%以上36質量%以下であるアクリロニトリル-ブタジエンゴムからなるバインダーと、(b)イオン導電剤と、(c)シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体と、を含有し、(b)の含有量が、(a)100質量部に対し3.0質量部以上60質量部以下であることから、低抵抗化とイオン導電剤のブリードアウトの抑制を両立することができる。これにより、トナー荷電性やトナー搬送性が安定化するので、画質悪化が抑えられる。これは、(a)が比較的高アクリロニトリル量のNBRであることで(b)イオン導電剤のカチオンと引き合う相互作用が大きく(b)イオン導電剤が表層16の表面に移動しにくくなっていること、(c)のシリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種が表層16の極表面に配向することでイオン導電剤のブリードアウトをブロックする効果を発揮すること、で(b)イオン導電剤の含有量が多くなっても(b)イオン導電剤の表層16からのブリードアウトが抑えられるためと推察される。
【0066】
導電性ロール10は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器の帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールとして好適であり、特に現像ロールとして好適である。
【実施例
【0067】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0068】
(実施例1~13、比較例1~5)
<弾性体層用組成物の調製>
導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、「X-34-264A/B、混合質量比A/B=1/1」)をスタティックミキサーにて混合することにより、弾性体層用組成物を調製した。
【0069】
<弾性体層の作製>
軸体として直径6mmの中実円柱状の鉄棒を準備し、その外周面に接着剤を塗布した。この軸体をロール成形用金型の中空空間にセットした後、調製した弾性体層用組成物を中空空間内に注入し、190℃で30分間加熱して硬化させ、脱型した。これにより、軸体の外周面に沿って導電性シリコーンゴムよりなるロール状の弾性体層(厚み3mm)を形成した。
【0070】
<表層の作製>
表1に記載の配合割合(質量部)で、バインダー(NBR)と、架橋剤と、イオン導電剤と、アクリル重合体と、を配合し、固形分濃度(14質量%)となるように希釈溶媒(MIBK)で濃度調整し、表層用組成物を調製した。次いで、表層用組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層(厚み10μm)を形成した。これにより、導電性ロールを作製した。
【0071】
表層材料として用いた材料は以下の通りである。
(a)成分
・NBR<1>:日本ゼオン製「Nipol DN3335」、アクリロニトリル含有量33.0質量%
・NBR<2>:日本ゼオン製「Nipol DN202」、アクリロニトリル含有量31.0質量%
・NBR<3>:JSR製「JSR N230S」、アクリロニトリル含有量35.0質量%
(他のNBR)
・NBR<4>:JSR製「JSR N241」、アクリロニトリル含有量29.0質量%
・NBR<5>:日本ゼオン製「Nipol DN4050」、アクリロニトリル含有量40.0質量%
(架橋剤)
・フェノール樹脂:DIC製「5592」
(b)成分
・イオン導電剤<1>:富士フイルム和光純薬製「ブチルトリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド」
・イオン導電剤<2>:富士フイルム和光純薬製「テトラブチルホスホニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」
・イオン導電剤<3>:富士フイルム和光純薬製「1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」
(c)成分
・アクリル重合体<1>:シリコーン基およびフッ素含有基を有するアクリル重合体(下記合成品)
・アクリル重合体<2>:フッ素含有基を有するアクリル重合体「日油製「モディパーF206」」
・アクリル重合体<3>:シリコーン基を有するアクリル重合体「日油製「モディパーFS710-1」」
【0072】
(アクリル重合体<1>の合成)
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、「X-22-174DX」)1.66g(0.36mmol)と、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(ダイキン工業(株)製、「R-1620」)5.61g(13mmol)と、メタクリル酸メチル(純正化学工業(株)製)8.67g(86.64mmol)と、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)(和光純薬工業(株)製、「VE-73」)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)14.06gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MEK26.04gを仕込み、固形分で30%のシリコーン基およびフッ素含有基を有するアクリル重合体を含有する溶液を得た。
【0073】
調製した表層用組成物からシート状サンプル(厚み2mm)を作製し、ブリード耐性を評価した。また、作製した導電性ロールを現像ロールとして用いて画質を評価した。表層材料の配合組成(質量部)と評価結果を以下の表に示す。
【0074】
(ブリード耐性)
市販のトナーカートリッジ(ブラザー工業製「TN-493C」)に導電性ロールを組み込み、50℃×95%RHの環境下に7日間放置した。その後、各導電性ロールを、上記カートリッジから取り出し、6時間以上養生した後、市販のカラーレーザープリンター(ブラザー工業製「HL-L9319CDW」)に組み込み、そのプリンターでベタ黒画像の印字(10枚)を実施した。そして、そのベタ黒画像における層形成ブレードやトナー供給ロールとの当接部位に対応する箇所にスジが1枚目から全く発生しなかったものを「◎」、スジが10枚で消失したものを「○」、スジがひどく10枚で消失しなかったものを「×」とした。
【0075】
(画質評価)
各導電性ロールを、HH環境(32.5℃×85%RH)で4時間養生した後、市販のカラーレーザープリンター(ブラザー工業製「HL-L9319CDW」)に組み込み、ベタ白画像を10000枚連続印字した後、ベタ黒画像を印字して、耐久印字評価により画質の評価を行った。ベタ黒画像にかすれやガサツキが見られなかったものを良好「○」、極めて良好な画質を得られたものを「◎」とし、ベタ黒画像にかすれやガサツキが見られたものを不良「×」とした。
【0076】
【表1】
【0077】
各実施例は、導電性ロールの表層が、アクリロニトリル量が31質量%以上36質量%以下であるアクリロニトリル-ブタジエンゴムからなるバインダーと、イオン導電剤と、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体と、を含有し、イオン導電剤の含有量がバインダー100質量部に対し3.0質量部以上60質量部以下である。これに対し、比較例1は、バインダーのNBRのアクリロニトリル量が29.0質量%である。比較例2は、バインダーのNBRのアクリロニトリル量が40.0質量%である。比較例3は、表層がシリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体を含有していない。比較例4は、イオン導電剤の含有量がバインダー100質量部に対し1.0質量部である。比較例5は、イオン導電剤の含有量がバインダー100質量部に対し70質量部である。比較例1,2は、バインダーのNBRのアクリロニトリル量が適正範囲外であるため、ブリード耐性に劣っている。比較例3は、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される少なくとも1種を有するアクリル系重合体を含有していないため、ブリード耐性に劣っている。比較例4は、イオン導電剤の量が少ないため、低抵抗にできず、画質に劣っている。比較例5は、イオン導電剤の量が多いため、ブリード耐性に劣っている。このような実施例、比較例から、本発明によれば、低抵抗化とイオン導電剤のブリードアウトの抑制を両立できることがわかる。
【0078】
そして、実施例どうしの比較から、表層におけるイオン導電剤の含有量が3.0~30質量部の範囲内であると、ブリード耐性に特に優れることがわかる。また、表層におけるイオン導電剤の含有量が30~60質量部の範囲内であると、低抵抗化による画質悪化の抑制効果に優れることがわかる。
【0079】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 導電性ロール
12 軸体
14 弾性体層
16 表層
図1