(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】流体制御機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 1/36 20060101AFI20220831BHJP
F16K 1/42 20060101ALI20220831BHJP
F16K 7/16 20060101ALN20220831BHJP
F16K 7/12 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
F16K1/36 Z
F16K1/42 Z
F16K7/16 Z
F16K7/12 A
(21)【出願番号】P 2019105707
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 広之
(72)【発明者】
【氏名】常塚 淳志
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065560(JP,A)
【文献】特開2017-125527(JP,A)
【文献】特開2009-101560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
7/00-7/20
13/00-13/10
25/00-25/04
29/00-29/02
33/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体が弁座に当接または離間することで、流体の流れを制御する流体制御機器の製造方法において、
弁体または弁座の
少なくともいずれか一方が、他方に当接する着座部材と、本体部材と、の結合体であること、
前記結合体は、前記着座部材の材料である着座部材材料と、前記本体部材の材料である本体部材材料と、を溶着した材料結合体を、削り出すことで形成されること、
前記溶着は、前記材料結合体の、前記着座部材材料と前記本体部材材料との接触面において、前記結合体の、前記着座部材と前記本体部材との接触面よりも広い範囲で行われるものであること、
を特徴とする流体制御機器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御機器の製造方法において、
前記着座部材材料は、射出成型または押出成型のいずれか一方により成型されたものであること、
前記着座部材は、前記弁体または前記弁座に当接する当接面を備え、前記当接面は、前記着座部材材料の成型面により形成されること、
を特徴とする流体制御機器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体制御機器の製造方法において、
前記材料結合体は、
前記本体部材材料に、前記着座部材材料を重ね合わせる工程と、
前記本体部材材料に、前記着座部材材料を重ね合わせたものに、さらに赤外線透過性固体を重ね合わせる工程と、
前記赤外線透過性固体により、前記着座部材材料を、前記本体部材材料に押し付けつつ、前記赤外線透過性固体側から、前記着座部材材料と前記本体部材材料とに対して赤外線ビームを照射することで、前記着座部材材料と前記本体部材材料を溶着する工程と、
により形成されること、
を特徴とする流体制御機器の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の流体制御機器の製造方法において、
前記材料結合体は、
前記本体部材材料と、前記着座部材材料との間に熱板を挟み込むことで、前記本体部材材料および前記着座部材材料の、前記熱板が接触する面を溶融させる工程と、
前記熱板を前記本体部材材料と前記着座部材材料との間から取り除く工程と、
前記本体部材材料と、前記着座部材材料との溶融した面同士を接触させ、該溶融した面に対して垂直方向から、前記本体部材材料と前記着座部材材料とを加圧しながら冷却することで、前記本体部材材料と前記着座部材材料を溶着する工程と、
により形成されること、
を特徴とする流体制御機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体が弁座に当接または離間することで、流体の流れを制御する流体制御機器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弁体が弁座に当接または離間することで、流体の流れを制御する流体制御機器としては、例えば半導体製造装置に用いられる薬液の流量制御を行う薬液弁などが考えられる。この薬液弁では、弁座に当接離間するダイアフラム弁体が用いられており、当該ダイアフラム弁体のダイアフラム部が弾性変形を繰り返すことで弁座と当接離間を行う。よって、ダイアフラム弁体には、屈曲耐久性の高いフッ素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が適用される。
【0003】
ここで、PTFEは射出成型を行うことができないため、パウダー状のPTFEを圧縮成形することでブロック状にされたものを削り出し加工し、ダイアフラム弁体を形成することとなる。しかし、パウダー状の材料を圧縮成形しているため、削り出し加工により発塵するおそれがある。ダイアフラム弁体が発塵すると、弁座との当接離間を繰り返すことでダイアフラム弁体から微細なゴミが剥がれ落ち、パーティクルとなって、薬液弁を流れる薬液に混入されるおそれがある。パーティクルは、半導体の配線パターンの欠陥を生じさせる等、半導体製造の歩留りに悪影響を与えるおそれがあるため、パーティクルの原因となり得るダイアフラム弁体の発塵を防止する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されるように、ダイアフラム弁体を、弁座と当接離間する着座部材と、ダイアフラム部を備える本体部材との結合体により構成されるものにすることが考えられる。すなわち、ダイアフラム弁体の、着座部材を、低発塵性材料であるフッ素樹脂(例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA))により製作し、当該着座部材を、PTFEにより製作された本体部材に溶着することで、弁体を構成するのである。低発塵性材料であるフッ素樹脂を着座部材に用いることで、削り出し加工による発塵を抑えることができ、パーティクルの発生を防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
従来のダイアフラム弁体41は、例えば
図17に示すように、ダイアフラム部411aを備える本体部材411と、環状の着座部材412と、からなっており、本体部材411および着座部材412は、ともに射出成型等により形成された後、光源44から照射されるレーザ光45によってお互いに溶着されて、ダイアフラム弁体41を構成している。
【0007】
このようなダイアフラム弁体41では、本体部材411と着座部材412との接触面の全てを溶着することができない。なぜならば、もし接触面の全てを溶着したとすると、
図19に示すように、溶着部43の樹脂のはみだし43aが発生し、当該はみだし43aが剥がれ落ちることでパーティクルとなるおそれがあるためである。
そこで、パーティクルの原因となり得るはみだし43aが生じないようにするため、
図18に示すよう、着座部材412の外周付近および内周付近を除いて溶着部42を形成し、着座部材412の外周付近および内周付近では溶着を行わない。
着座部材412の外周付近および内周付近で溶着を行わないため、着座部材412の外周付近および内周付近において、本体部材411と着座部材412との間に隙間が生じ、当該隙間が、薬液弁を流れる薬液の滞留の原因となるおそれがある。薬液が滞留すると、滞留した薬液が劣化することで薬液の含有成分が固形化し、パーティクルとなるおそれがある。パーティクルは、半導体の配線パターンの欠陥を生じさせる等、半導体製造の歩留りに悪影響を与えるおそれがある。
【0008】
また、特許文献1には、例えば
図20に示すように、弁部本体46と着座部材47との結合体により弁座が形成される場合についても開示されている。着座部材47は、低発塵性材料であるPFAにより製作され、当該着座部材47は、PTFEにより製作された弁部本体46に、光源44から照射されるレーザ光45により溶着されている。この場合も、溶着部の樹脂のはみだしを防止するために、弁部本体46と着座部材47との接触面の全てを溶着することができない。よって、弁部本体46と着座部材47との間に隙間が生じ、当該隙間により薬液の滞留が生じるおそれがあるという点で、上記のダイアフラム弁体41を本体部材411と着座部材412との結合体により構成する場合と同様である。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、着座部材と本体部材とが溶着されることで構成される弁体または弁座が、着座部材と本体部材との間に隙間を有することなく、流体の滞留の発生を防止することが可能な流体制御機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の流体制御機器の製造方法は、次のような構成を有している。
(1)弁体が弁座に当接または離間することで、流体の流れを制御する流体制御機器の製造方法において、弁体または弁座の少なくともいずれか一方が、他方に当接する着座部材と、本体部材と、の結合体であること、結合体は、着座部材の材料である着座部材材料と、本体部材の材料である本体部材材料と、を溶着した材料結合体を、削り出すことで形成されること、溶着は、材料結合体の、着座部材材料と本体部材材料との接触面において、結合体の、着座部材と本体部材との接触面よりも広い範囲で行われるものであること、を特徴とする。ここで、流体制御機器とは、流体制御機器に入力される流体の流れを制御することで、流体制御機器から出力される流体の流量制御や圧力制御を行う機器を指す。
【0011】
上記構成の流体制御機器の製造方法は、弁体または弁座のいずれか一方が、他方に当接する着座部材と、本体部材と、の結合体であり、当該結合体は、着座部材の材料である着座部材材料と、前記本体部材の材料である本体部材材料と、を溶着した材料結合体を削り出すことで形成される。そして、着座部材材料と本体部材材料との溶着は、前記結合体の、前記着座部材と前記本体部材との接触面よりも広い範囲で行われる。つまり、着座部材材料と本体部材材料とが溶着されている面積の範囲内で、削り出し加工を行った後の着座部材と前記本体部材との接触面が形成されるため、従来生じていた溶着部の樹脂のはみだしを生じさせることなく、着座部材と本体部材との接触面全体が溶着されることとなる。着座部材と本体部材との接触面全体が溶着されることにより、着座部材と本体部材との間には隙間が生じないため、従来懸念されていた薬液の滞留の発生を防止することが可能である。
【0012】
滞留の発生を防止することができれば、薬液の含有成分が固形化してパーティクルとなるおそれを防ぐことができる。そうすれば、半導体の配線パターンの欠陥を生じる等、半導体製造の歩留りに悪影響が出る可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の流体制御機器の製造方法によれば、着座部材と本体部材とが溶着されることで構成される弁体または弁座が、着座部材と本体部材との間に隙間を有することないため、流体(例えば薬液)の滞留の発生を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る流体制御機器の断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る流体制御機器のダイアフラム弁体の断面図である。
【
図3】
図2の本体部材と着座部材との溶着部を拡大した図である。
【
図4】(a)乃至(d)は、第1の実施形態に係るダイアフラム弁体を、赤外線ビームによる溶着によって製造する工程を説明する図である。
【
図5】赤外線ビームによって溶着を行う範囲について説明する図である。
【
図6】赤外線ビームによって溶着を行う範囲の変形例について説明する図である。
【
図7】(a)乃至(d)は、第1の実施形態に係るダイアフラム弁体を、熱板溶着によって製造する工程を説明する図である。
【
図8】第1の実施形態に係る流体制御機器の変形例を示す図である。
【
図9】
図8に示されるダイアフラム弁体を拡大した図である。
【
図10】第2の実施形態に係る流体制御機器の断面図である。
【
図11】第2の実施形態に係る流体制御機器の弁座部分の断面図である。
【
図12】
図11の本体部材(弁部本体)と着座部材との溶着部を拡大した図である。
【
図13】(a)乃至(d)は、第2の実施形態に係る弁部本体と着座部材との結合体を、赤外線ビームによる溶着によって製造する工程を説明する図である。
【
図14】(a)乃至(d)は、第2の実施形態に係る弁部本体と着座部材との結合体を、熱板溶着によって製造する工程を説明する図である。
【
図15】第2の実施形態に係る流体制御機器の変形例を示す図である。
【
図16】
図15の弁部本体と着座部材との結合体を拡大した図である。
【
図17】従来技術に係るダイアフラム弁体について説明する図である。
【
図18】
図17の本体部材と着座部材との溶着部を拡大した図である。
【
図19】従来技術に係るダイアフラム弁体について説明する図である。
【
図20】従来技術に係る弁部本体について説明する図である。
【
図21】第1の実施形態に係る流体制御機器の変形例を示す図である。
【
図22】(a)乃至(d)は、
図21に示されるダイアフラム弁体を、赤外線ビームによる溶着によって製造する工程を説明する図である。
【
図23】(a)乃至(d)は、
図21に示されるダイアフラム弁体を、熱板溶着によって製造する工程を説明する図である。
【
図24】
図21に示される流体制御機器(レギュレータ)の変形例を示す図である。
【
図25】第2の実施形態に係る流体制御機器の変形例を示す図である。
【
図26】(a)乃至(d)は、
図25に示される弁部本体と着座部材との結合体を、赤外線ビームによる溶着によって製造する工程を説明する図である。
【
図27】
図25に示される流体制御機器(レギュレータ)の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
本発明に係る流体制御機器の製造方法により製造される流体制御機器の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
第1の実施形態に係る流体制御機器は、半導体製造工程に用いられる薬液の流量制御を行う薬液弁1であり、
図1に示すように、駆動部11と弁部12とからなる。
【0016】
駆動部11は、第1ハウジング111と、第2ハウジング112とを備え、その内部にピストン113を備える。
第1ハウジング111は、
図1中の上端側が閉塞されている一方で、
図1中の下端側が開口された筒形状をなしている。外周面には、第1給排気口111aが形成されている。そして、第1ハウジング111の
図1中の下端部は、第2ハウジング112の
図1中の上端側に、Oリング115を介して気密的に嵌装されている。
【0017】
第2ハウジング112は、
図1中の上端側、下端側ともに開口された筒形状をなしており、外周面には第2給排気口112aが形成されている。
第1ハウジング111と第2ハウジング112とは同軸上に並んでおり、第1ハウジング111の中空部と、第2ハウジング112の中空部によりピストン室116が形成されている。
【0018】
ピストン室116には、ピストン113が、
図1中の上下方向に摺動可能に装填されている。ここで、
図1中の上方向は、開弁方向であり、
図1中の下方向は、閉弁方向である。
そして、ピストン室116は、ピストン113のピストン部113aにより、上室116aと、下室116bとに区画されている。ピストン部113aの外周と、ピストン室116の内壁の間にはOリング117が配置されており、上室116aと、下室116bとの間を気密に保っている。
【0019】
上室116aは、流路111bによって、第1給排気口111aに連通しており、下室116bは、流路112bによって、第2給排気口112aに連通している。
下室116bには、コイルスプリング114が配設されており、コイルスプリング114の
図1中の下端部は、下室116bの底面に当接し、コイルスプリング114の
図1中の上端部は、ピストン部113aの下端面に当接している。そして、弾性力により、ピストン113を開弁方向に付勢している。
【0020】
また、ピストン113は、ピストン部113aの上端側、下端側に、それぞれ、第1ピストンロッド113b、第2ピストンロッド113cを備えている。
【0021】
第1ピストンロッド113bは、第1ハウジング111の
図1中の下面側に設けられた溝部111cに挿入されており、ピストン113が、
図1中の上下方向に摺動する際に、ガイドされるようになっている。
【0022】
第2ピストンロッド113cは、第2ハウジング112の下端面と下室116bとを貫通する貫通孔112cに挿通されている。第2ピストンロッド113cの外周面と、貫通孔112cの内周面との間にはOリング118が配設され、下室116bを気密に保っている。そして、第2ピストンロッド113cの先端部には、弁部12を構成するダイアフラム弁体122(弁体の一例)が螺合されている。
【0023】
弁部12は、駆動部11の
図1中の下側に連結されており、弁部本体121と、ダイアフラム弁体122と、台座123とから構成される。
弁部本体121は、薬液等の流体が入力される入力流路121aと、入力された流体が出力される出力流路121bとを備える。そして、弁部本体121の
図1中の上端面中央には、弁室121cが穿設されており、弁室121cは、入力流路121aと出力流路121bを連通している。
弁室121cの底面には、ダイアフラム弁体122が当接離間する弁座121dが形成されている。
【0024】
ダイアフラム弁体122は、
図2に示すように、本体部材1221と、弁座121dと当接離間する着座部材1222と、の結合体である。
【0025】
本体部材1221は、ダイアフラム弁体122が上下動するに伴い弾性変形をするダイアフラム部1221aを備えている。ダイアフラム部1221aの外周には固定部1221bを備えており、固定部1221bは、第2ハウジング112と、弁部本体121とによって、
図1中の上下方向から挟持固定されている。
本体部材1221の
図1中の上端面には、ねじ部1221cが穿設されており、ねじ部1221cには、前述の通り第2ピストンロッド113cの先端部が螺合されている。
【0026】
着座部材1222は、本体部材1221に溶着されており、本体部材1221と着座部材1222の接触面は、
図3に示すように、溶着部32となっている。そして、着座部材1222の、溶着されている側と反対側の面は弁座121dに当接する当接面1222aとなっている。
【0027】
このような本体部材1221と着座部材1222との結合体であるダイアフラム弁体122は、削り出し加工により形成されるものであり、詳しくは以下のようにして形成される。
【0028】
まず、
図4(a)に示すように、支持体23に対向接触して、本体部材1221の材料であるブロック状の本体部材材料211を配置し、さらにその上に重ねるようにして、着座部材1222の材料である板状の着座部材材料212を、本体部材材料211に接触して配置する。ここで、本体部材材料211は、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品であり、着座部材材料212は、PFAの押出成形品である。
【0029】
次に、
図4(b)に示すように、積み重ねた本体部材材料211と着座部材材料212とに対し、支持体23とは反対側にヒートシンク作用を有する赤外線透過性固体22を、着座部材材料212に接触して配置する。ここで、赤外線透過固体22とは、セレン亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(Zns)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、サファイア(Al2O3)または砒素化ガリウム(GaAs)などの、熱伝導度15w/m・K以上を有する赤外結晶材料が挙げられる。
【0030】
そして、
図4(c)に示すように、矢印Fの方向に圧縮力を加えて本体部材材料211と着座部材材料212とを密着させながら、赤外線透過性固体22の側から、本体部材材料211と着座部材材料212とに対して、光源24から赤外線ビーム25を照射する。
【0031】
なお、赤外線ビーム25の波長域は、0.37μmから15μmであって、望ましくは、波長10.6μm若しくは10.6±0.5μmのCO2レーザ、又は、波長5.3μm若しくは5.3±0.5μmのCOレーザ、又は、波長375から2000nmの半導体レーザであって、半導体レーザの場合は、波長1.06μm若しくは1.06±0.5μmのYAGレーザ、又は、波長1.07μm若しくは1.07±0.5μmのファイバレーザ、又は、波長2.05μm若しくは2.05±0.5μmのツリウムレーザであることが望ましい。
【0032】
赤外線ビーム25を照射すると、温度分布が、赤外線透過性固体22と着座部材材料212との境界で低くなる一方で、本体部材材料211と着座部材材料212との境界で最高となる。つまり浸透した赤外線エネルギーにより内部に高温となった領域を発現できる。この結果、着座部材材料212の赤外線照射側表層での顕著な収縮、破れ、焼爛および熱分解などの熱損傷による表面性状の悪化を極力抑制しながら、短時間の内に、本体部材材料211と着座部材材料212とを溶着することができる。そして、本体部材材料211と着座部材材料212とが溶着されることで、材料結合体21が形成される。
【0033】
最後に、
図4(d)に示すように、材料結合体21を、破線で示すような形状に削り出し加工を行うことで、ダイアフラム弁体122を形成する。
【0034】
ここで、着座部材1222の当接面1222aは、削り出し加工により形成されるのではなく、着座部材材料212の成型面が残された状態である。
【0035】
例えば、当接面1222aを削り出し加工により形成するとした場合、切刃の痕が残ることで、当接面1222aの表面に微細な凹部および凸部が形成され、表面粗さが粗くなるおそれがある。表面粗さが粗くなった当接面1222aが、弁座121dへの当接離間を繰り返すと、上記微細な凸部が剥離し、パーティクル発生の原因となるおそれがある。
【0036】
そこで、本発明のように、当接面1222aを、押出成形による成型面で構成すると、表面粗さが粗くなることを防止することができるため、当接面1222aが弁座121dへの当接離間を繰り返しても、パーティクルが発生しにくくなる。
【0037】
なお、本実施形態に係る着座部材材料212は、PFAの押出成型品であることとしているが、PFAの射出成型品であっても良い。ただし、射出成型によって着座部材材料212を成型すると、当接面1222aの表面粗さが金型部品の表面粗さに左右されることや、金型内にガスが充満することで当接面に焼けが発生して、表面粗さが粗くなることが考えられるため、金型部品の影響を受けない押出成形によって着座部材材料212を成型することが、最も望ましいと言える。
【0038】
また、本体部材材料211と着座部材材料212とを溶着し、材料結合体21を形成する際、赤外線ビーム25によって溶着を行う範囲は、削り出し加工により形成されたダイアフラム弁体122の、本体部材1221と着座部材1222との接触面積よりも、広い範囲で行われる。
【0039】
詳しく説明すると、前述の通り、削り出し加工により形成されたダイアフラム弁体122の、本体部材1221と着座部材1222との接触面は、溶着部32となっている。この溶着部32を、上面視の材料結合体21上に仮想的に表すと、
図5中の破線に囲まれた範囲となる。そして、赤外線ビーム25による溶着が行われる範囲を、上面視の材料結合体21上に仮想的に表すと、
図5中の一点鎖線で囲まれた溶着範囲WA11となる。このように、溶着部32の範囲よりも広い範囲で赤外線ビーム25による溶着が行われることで、溶着部32は、
図3に示すように、本体部材1221と着座部材1222との接触面全体に形成されることとなり、削り出された後の本体部材1221と着座部材1222との間には、隙間が生じない。本体部材1221と着座部材1222との間に隙間が生じないことによって、従来懸念されていた滞留の発生を防止することが可能である。滞留の発生を防止することができれば、滞留した薬液が劣化することによって薬液の含有成分がパーティクルとなるおそれを防ぐことができ、半導体の配線パターンの欠陥を生じさせる可能性を低減することができる。
【0040】
なお、赤外線ビーム25による溶着を行う範囲は、溶着部32が含まれるようすれば良いため、例えば
図6に示すような溶着範囲WA12としても良いし、本体部材材料211と着座部材材料212との接触面全体を溶着しても良い。
【0041】
なお、赤外線ビーム25による溶着に用いられる支持体23とは、赤外線ビーム25の照射中に赤外線透過性固体22と本体部材材料211と着座部材材料212との接触状態を安定に保つためのものである。したがって、そのような機能を持つものであれば、支持体23の材質や形状はどのようなものであってもよい。例えば矢印Fで示すような圧縮力によっても塑性変形が生じにくく、適度な剛性を有したスチール、アルミニウム合金、銅合金などによる金属製のブロックや板を用いることが考えられる。
【0042】
さらに、支持体23は、赤外線ビーム25を照射する側の表層に、ゴムによる緩衝層を備えることとしてもよい。厚さが薄いまたは熱収縮性が高い、PFAやPTFE等の熱可塑性樹脂部材同士を溶着するに当たって、熱可塑性樹脂部材自身の表面起伏などにより赤外線透過性固体22と、本体部材材料211と、着座部材材料212との接触圧力および接触面積が不足し、溶着後に溶着部でボイドや破れ、収縮などの欠陥が生じるおそれがある。そこで、支持体23が緩衝層を備えるものとすれば、赤外線透過性固体22と、本体部材材料211と、着座部材材料212との接触圧力および接触面積を改善し、溶着後のボイドや破れ、顕著な収縮などの欠陥の発生を抑えることができる。
【0043】
上記の赤外線ビーム25による溶着の他、次に説明する熱板溶着によってダイアフラム弁体122を形成することとしても良い。
図7(a)に示すように、熱板31を挟むようにして本体部材材料211と着座部材材料212とを配置し、それぞれ熱板31に接触させる。これにより、本体部材材料211および着座部材材料212の、それぞれの熱板31と接触する端面が溶融する。
【0044】
次に、
図7(b)に示すように熱板31を取り除いた後、
図7(c)に示すように、本体部材材料211および着座部材材料212の溶融した面同士を密着させ、本体部材材料211および着座部材材料212の溶融した面に対して垂直方向(矢印F)から本体部材材料211および着座部材材料212を圧縮しながら冷却する。これにより、本体部材材料211と着座部材材料212とが溶着され、材料結合体21が形成される。
【0045】
そして、
図7(d)に示すように、材料結合体21を、破線で示すような形状に削り出し加工を行うことで、ダイアフラム弁体122を形成する。
【0046】
上記で説明した熱板溶着によれば、本体部材材料211と着座部材材料212との接触面全体が溶着されるため、溶着範囲は、削り出し加工により形成されたダイアフラム弁体122の、本体部材1221と着座部材1222との接触面である溶着部32の範囲よりも広くなる。よって、溶着部32は、
図3に示すように、本体部材1221と着座部材1222との接触面全体に形成されることとなり、本体部材1221と着座部材1222との間には、隙間が生じない。本体部材1221と着座部材1222との間に隙間が生じないことによって、従来懸念されていた滞留の発生を防止することが可能である。滞留の発生を防止することができれば、滞留した薬液が劣化することによって薬液の含有成分がパーティクルとなるおそれを防ぐことができ、半導体の配線パターンの欠陥を生じさせる可能性を低減することができる。
【0047】
また、本体部材1221と着座部材1222とを射出成型等により形成した後に溶着を行うことでダイアフラム弁体122を形成するとした場合は、着座部材1222を本体部材1221に対して位置決めしなければならず、正確な位置決めが行われない場合には、着座部材1222の位置がずれた状態で、本体部材1221に溶着されてしまうおそれがある。
この点、本実施形態に係るダイアフラム弁体122は、上記で説明したように、材料結合体21を削り出すことで形成されるため、着座部材1222を本体部材1221に対して位置決めする必要なく、着座部材1222の位置がずれた状態で本体部材1221に溶着されるというおそれが無い。
【0048】
次に薬液弁1の動作について説明する。
図1に示す薬液弁1は開弁状態にある。この状態で、操作エア供給源(図示せず)から操作エアを第1給排気口111aに供給すると、流路111bを通じて上室116aに操作エアが供給される。操作エアが供給されるに従い、上室116aの圧力が上昇していき、ピストン部113aの上端面が受ける圧力が、コイルスプリング114の付勢力を超えると、ピストン113がコイルスプリング114の付勢力に抗して閉弁方向(
図1中、下方向)に移動する。そして、ピストン113が閉弁方向に移動するに従い、下室116b内の空気は、ピストン部113aに圧縮され、流路112bおよび第2給排気口112aを通じて駆動部11の外部へ排気される。
ピストン113が閉弁方向に移動すると、第2ピストンロッド113cの先端に螺合されているダイアフラム弁体122が閉弁方向に移動する。そして、着座部材1222の当接面1222aが、弁座121dに当接すると、薬液弁1は閉弁状態となる。
【0049】
閉弁状態となった薬液弁1に対して、操作エアの供給を停止すると、コイルスプリング114の付勢力に抗していた上室116aの圧力が働かなくなり、コイルスプリング114の付勢力によりピストン113が開弁方向に移動する。すると、第2ピストンロッド113cの先端に螺合されているダイアフラム弁体122も開弁方向に移動され、着座部材1222が、弁座121dから離間して、開弁状態となる。
このとき、上室116aに充填されていた操作エアは、流路111bおよび第1給排気口111aを通じて駆動部11の外部へ排気され、下室116bには、第2給排気口112aおよび流路112bを通じて、駆動部11の外部の空気が流入する。
【0050】
なお、上記の第1の実施形態において、ダイアフラム弁体122を構成する着座部材1222は、材料結合体21を削り出すことで、円環状に形成されているが、
図8および
図9に示すダイアフラム弁体125の着座部材1252のように、板状としても良い。
このダイアフラム弁体125も、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品である本体部材材料211と、PFAの押出成形品である着座部材材料212とを溶着した材料結合体21から削り出すことにより形成されており、当該溶着は、本体部材1251と着座部材1252との接触面積より広い範囲で行われる。また、着座部材1252の当接面1252aは、着座部材1222の当接面1222aと同様に、成型面により形成されている。
このようなダイアフラム弁体125と、当接離間する弁座124dは、弁部本体124の弁室124cの底面に凸状に突出して形成される。
【0051】
ここまで、流体制御機器として、流量制御を行う薬液弁1を例に挙げているが、圧力制御を行う流体制御機器としても良い。圧力制御を行う流体制御機器としては、例えば
図21に示すようなレギュレータ5が挙げられる。このレギュレータ5は、半導体製造装置に用いられる流体制御機器であり、弁部本体521の内部において、操作エアにより駆動されるダイアフラム弁体524が、弁座521eと当接離間することにより、入力流路521aから入力され出力流路521bから出力される流体の圧力制御を行うものである。
【0052】
まず、レギュレータ5の構成について説明する。
レギュレータ5は、弁部本体521と、上カバー522と 、下カバー523とが、ボルト等の締結部材によって一体に組み付けられることにより構成されており、全体としては略直方体状をなしている。なお、弁部本体521は例えばフッ素系合成樹脂により成形され、上カバー522と、下カバー523は例えばポリプロピレン樹脂により成形されている。
【0053】
弁部本体521には、流体を入力する入力流路521aと、入力流路521aに入力された流体を出力する出力流路521bとが形成されている。
【0054】
弁部本体521の
図21中の下端面の中央部には、上流側流体室521cが穿設されており、上流側流体室521cの
図21中の上面には弁座521eが設けられている。また、弁部本体521の
図21中の上端面の中央部には、上流側流体室521cと連通する下流側流体室521dが穿設されており、入力流路521aと出力流路521bとが、上流側流体室521cと下流側流体室521dとにより連通されている。
【0055】
上流側流体室521cと下流側流体室521dには、
図21中の上下方向に往復動可能なダイアフラム弁体524が収容されている。このダイアフラム弁体524は、本体部材5241と着座部材5242との結合体である。
【0056】
本体部材5241は、ダイアフラム弁体524が上下動するに伴い弾性変形をするダイアフラム部5241aを備えている。ダイアフラム部5241aの外周には固定部5241bを備えており、固定部5241bは、弁部本体521と、下カバー523とによって、
図21中の上下方向から挟持固定されている。本体部材5241の
図21中の上端部には、結合軸5242bが設けられており、結合軸5242bにダイアフラム部材526が圧入されることで、ダイアフラム弁体524とダイアフラム部材526が一体化されている。
【0057】
着座部材5242は、本体部材5241に溶着されており、本体部材5241と着座部材5242の接触面は溶着部となっている。この溶着部は、
図3に示す溶着部32と同様に、本体部材5241と着座部材5242の接触面全体に形成されている。そして、着座部材5242の、溶着されている側と反対側の面は弁座521eに当接する当接面5242aとなっている。当接面5242aは、上述の薬液弁1に用いられるダイアフラム弁体122,125と同様に、着座部材5242の材料である着座部材材料612(
図22参照)の成型面により形成され、パーティクルの発生を防止している。
【0058】
このような本体部材5241と着座部材5242との結合体であるダイアフラム弁体524は、削り出し加工により形成されるものであり、詳しくは以下のようにして形成される。
【0059】
まず、
図22(a)に示すように、支持体23に対向接触して、本体部材5241の材料である本体部材材料611を配置し、さらにその上に重ねるようにして、着座部材5242の材料である板状の着座部材材料612を、本体部材材料611に接触して配置する。本体部材材料611は、結合軸5242bを形成するための突起611aを有しているため、着座部材5242は、突起611aが貫通するための貫通孔612aを有する。ここで、本体部材材料611は、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品であり、着座部材材料612は、PFAの押出成形品または射出成型品である。なお、着座部材材料612を押出成型品とする場合は、板状の材料を加工し、貫通孔612aを設けておく必要がある。
【0060】
次に、
図22(b)に示すように、積み重ねた本体部材材料611と着座部材材料612とに対し、支持体23とは反対側にヒートシンク作用を有する赤外線透過性固体62を、着座部材材料612に接触して配置する。
【0061】
そして、
図22(c)に示すように、矢印Fの方向に圧縮力を加えて本体部材材料611と着座部材材料612とを密着させながら、赤外線透過性固体62の側から、本体部材材料611と着座部材材料612とに対して、光源24から赤外線ビーム25を照射する。赤外線ビーム25を照射し、本体部材材料611と着座部材材料612とが溶着されることで、材料結合体61が形成される。赤外線ビーム25によって溶着を行う範囲が、削り出し加工により形成されたダイアフラム弁体524の、本体部材5241と着座部材5242との接触面積よりも、広い範囲で行われる点は、上述の薬液弁1に用いられるダイアフラム弁体122,125と同様である。これにより、本体部材5241と着座部材5242の接触面が全て溶着部となるため、本体部材5241と着座部材5242との間に隙間が生じず、流体(例えば薬液)の滞留の発生を防止することが可能となる。
【0062】
最後に、
図22(d)に示すように、材料結合体61を、破線で示すような形状に削り出し加工を行うことで、ダイアフラム弁体524を形成する。
【0063】
上記の赤外線ビーム25による溶着の他、次に説明する熱板溶着によってダイアフラム弁体524を形成することとしても良い。
図23(a)に示すように、熱板63を挟むようにして本体部材材料611と着座部材材料612とを配置し、それぞれ熱板63に接触させる。これにより、本体部材材料611および着座部材材料612の、それぞれの熱板63と接触する端面が溶融する。
【0064】
次に、
図23(b)に示すように熱板63を取り除いた後、
図23(c)に示すように、本体部材材料611および着座部材材料612の溶融した面同士を密着させ、本体部材材料611および着座部材材料612の溶融した面に対して垂直方向(矢印F)から本体部材材料611および着座部材材料612を圧縮しながら冷却する。これにより、本体部材材料611と着座部材材料612とが溶着され、材料結合体61が形成される。
【0065】
そして、
図23(d)に示すように、材料結合体61を、破線で示すような形状に削り出し加工を行うことで、ダイアフラム弁体524を形成する。
【0066】
熱板溶着によれば、本体部材5241と着座部材5242との間に隙間が生じず、従来懸念されていた滞留の発生を防止することが可能である点は、上述の薬液弁1に用いられるダイアフラム弁体122,125と同様である。
【0067】
また、ダイアフラム弁体524が、材料結合体61を削り出すことで形成されるため、着座部材5242を本体部材5241に対して位置決めする必要なく、着座部材5242の位置がずれた状態で本体部材5241に溶着されるというおそれが無いという点も、上述の薬液弁1に用いられるダイアフラム弁体122,125と同様である。
【0068】
次に、下カバー523は、内部に、コイルスプリング514が収容されている。コイルスプリング514の
図21中上側の端部はダイアフラム弁体524の
図21中下端部に組み付けられたばね受け部材525に当接しており、コイルスプリング514の付勢力によりダイアフラム弁体524が
図21中上方に付勢されるようになっている。つまり、コイルスプリング514の付勢力により、ダイアフラム弁体524を構成する着座部材5242が弁座521eに当接する状態が保持されるようになっている。
【0069】
下カバー523には、ダイアフラム部5241aから
図21中下側の空間を大気圧に保持するために大気開放する開放ポート523aが形成されている。開放ポート523aには不図示の配管が接続されており、半導体製造装置に悪影響のない場所で大気開放されるようになっている。これにより、ダイアフラム弁体524の上下動が円滑に行われる。
【0070】
ダイアフラム部材526は、ダイアフラム部526aを備え、その周縁部526bが弁部本体521と上カバー522とにより挟持固定されている。そして、上カバー522の
図21中の上端面には給気ポート522aが形成されている。給気ポート522aは、上カバー522とダイアフラム部材526とにより形成される空間である圧力操作室521fに連通している。給気ポート522aに、圧力供給源より操作エアが供給されると、ダイアフラム部材526は、ダイアフラム部526aが弾性変形することで、操作エアの操作圧力に応じて上下動するようになっている。
【0071】
次に流体レギュレータ5の動作について説明する。
レギュレータ5に操作エアが供給されていない初期状態では、コイルスプリング514が、ダイアフラム弁体524を、ばね受け部材525を介して
図21中上方向に付勢しているため、ダイアフラム弁体524が弁座521eに当接した閉弁状態にある。この状態では、上流側流体室521cと下流側流体室521dとの間が遮断され、上流側流体室521cと下流側流体室521dとの間の流体の流通が阻止されている。
【0072】
閉弁状態にあるレギュレータ5に対し、給気ポート522aから操作エアを給気すると、給気ポート522aに連通する圧力操作室521fの圧力が高まり、ダイアフラム部材526が、ダイアフラム部526aを弾性変形させながら、
図21中の下方向に移動する。
【0073】
ダイアフラム部材526は、ダイアフラム弁体524と一体となっているため、ダイアフラム部材526が、
図21中の下方向に移動するとともに、ダイアフラム弁体524も、コイルスプリング514の付勢力に抗して、
図21中の下方向に移動される。すると、ダイアフラム弁体524が弁座521eから離間し、レギュレータ5が開弁状態となる。この状態では、上流側流体室521cと下流側流体室521dとの間の流体の流通が許容されるため、入力流路521aに入力された流体が、上流側流体室521cと下流側流体室521dとを経由して、出力流路521bから出力される。
【0074】
そして、上流側流体室521cの圧力が高くなった場合には弁座521eに対してダイアフラム弁体524は
図21中の上側へ移動し、逆に上流側流体室521cの圧力が低くなった場合には弁座521eに対してダイアフラム弁体524は開放側へ移動して、下流側流体室521dの圧力を一定に保つように動作することとなる。このような動作により、圧力操作室521fに供給される操作エアの圧力を調整することで、下流側流体室521d内の流体、すなわち出力流路521bから出力される流体制御の圧力制御を行うことができる。
【0075】
そして、操作エアの給気を停止すると、コイルスプリング514の付勢力により、ダイアフラム弁体524が
図21中の上方向に移動し、ダイアフラム弁体524が弁座521eに当接することで、レギュレータ5が閉弁状態となる。
【0076】
なお、上記のレギュレータ5において、ダイアフラム弁体524を構成する着座部材5242は、材料結合体21を削り出すことで、断面が略三角形状の円環状に形成されているが、
図24に示すダイアフラム弁体528の着座部材5282のように、断面が長方形状に形成されるものとしてもよい。
このダイアフラム弁体528も、本体部材5281と着座部材5282との結合体であり、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品である本体部材材料611と、PFAの押出成形品または射出成型品である着座部材材料612とを溶着した材料結合体61から削り出すことにより形成される。本体部材材料611と着座部材材料612との溶着は、本体部材5281と着座部材5282との接触面積より広い範囲で行われる。また、着座部材5282の当接面5282aは、着座部材1222の当接面1222aと同様に、成型面により形成されている。
このようなダイアフラム弁体528と当接離間する、弁部本体527に設けられた弁座527eは、上流側流体室521cの図中上面において、着座部材5282に向かって角度が縮小するように形成される。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の流体制御機器の製造方法によれば、
(1)ダイアフラム弁体122(125,524,528)が弁座121d(124d,521e,527e)に当接または離間することで、流体の流れを制御する流体制御機器(薬液弁1,レギュレータ5)の製造方法において、ダイアフラム弁体122(125,524,528)が、弁座121d(124d,521e,527e)に当接する着座部材1222(1252,5242,5282)と、本体部材1221(1251,5241,5281)と、の結合体であること、結合体は、着座部材1222(1252,5242,5282)の材料である着座部材材料212(612)と、本体部材1221(1251,5241,5281)の材料である本体部材材料211(611)と、を溶着した材料結合体21(61)を、削り出すことで形成されること、溶着は、材料結合体21(61)の、着座部材材料212(612)と本体部材材料211(611)との接触面において、結合体の、着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との接触面よりも広い範囲で行われるものであること、を特徴とするので、着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)とが溶着されることで構成されるダイアフラム弁体122(125,524,528)が、着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との間に隙間を有することないため、流体(例えば薬液)の滞留の発生を防止することが可能である。
【0078】
本発明においては、ダイアフラム弁体122(125,524,528)が、弁座121d(124d,521e,527e)に当接する着座部材1222(1252,5242,5282)と、本体部材1221(1251,5241,5281)と、の結合体であり、当該結合体は、着座部材1222(1252,5242,5282)の材料である着座部材材料212と、本体部材1221(1251,5241,5281)の材料である本体部材材料211と、を溶着した材料結合体21(61)を削り出すことで形成される。そして、着座部材材料212(612)と本体部材材料211(611)との溶着は、結合体の、着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との接触面よりも広い範囲で行われる。つまり、着座部材材料212(612)と本体部材材料211(611)とが溶着されている面積の範囲内で、削り出し加工を行った後の着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との接触面が形成されるため、着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との接触面全体が溶着されることとなる。着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との接触面全体が溶着されることにより、着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との間には隙間が生じないため、従来懸念されていた薬液の滞留の発生を防止することが可能である。
【0079】
滞留の発生を防止することができれば、薬液の含有成分が固形化してパーティクルとなるおそれを防ぐことができる。そうすれば、半導体の配線パターンの欠陥を生じる等、半導体製造の歩留りに悪影響が出る可能性を低減することができる。
【0080】
(2)(1)に記載の流体制御機器(薬液弁1,レギュレータ5)の製造方法において、着座部材材料212(612)は、射出成型または押出成型のいずれか一方により成型されたものであること、着座部材1222(1252,5242,5282)は、弁座121d(124d,521e,527e)に当接する当接面1222a(1252a,5242a,5282a)を備え、当接面1222a(1252a,5242a,5282a)は、着座部材材料212(612)の成型面により形成されること、を特徴とするので、ダイアフラム弁体122(125,524,528)と、弁座121d(124d,521e,527e)が当接離間を繰り返すことによって着座部材1222(1252,5242,5282)が削れ、パーティクルが発生してしまうことを防止することができる。
【0081】
例えば、着座部材1222(1252,5242,5282)と本体部材1221(1251,5241,5281)との結合体を削り出し加工により形成する際、着座部材1222(1252,5242,5282)の当接面1222a(1252a,5242a,5282a)を削り出し加工により形成すると、切刃の痕が残ることで、当接面1222a(1252a,5242a,5282a)の表面に微細な凹部および凸部が形成され、表面粗さが粗くなるおそれがある。表面粗さが粗くなった当接面1222a(1252a,5242a,5282a)が、弁座121d(124d,521e,527e)への当接離間を繰り返すと、上記微細な凸部が剥離し、パーティクル発生の原因となるおそれがある。
【0082】
そこで、本発明のように、当接面1222a(1252a,5242a,5282a)を、射出成型または押出成形による成型面で構成すると、表面粗さが粗くなることを防止することができるため、当接面1222a(1252a,5242a,5282a)が弁座121d(124d,521e,527e)への当接離間を繰り返しても、パーティクルが発生しにくい。
なお、射出成型によって着座部材材料212(612)を成型すると、当接面1222a(1252a,5242a,5282a)の表面粗さが金型部品の表面粗さに左右されることや、金型内にガスが充満することで当接面1222a(1252a,5242a,5282a)に焼けが発生して、表面粗さが粗くなることが考えられるため、押出成形によって着座部材材料212(612)を成型することが、最も望ましい。
【0083】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御機器(薬液弁1,レギュレータ5)の製造方法において、材料結合体21(61)は、本体部材材料211(611)に、着座部材材料212(612)を重ね合わせる工程と、本体部材材料211(611)に、着座部材材料212(612)を重ね合わせたものに、さらに赤外線透過性固体22(62)を重ね合わせる工程と、赤外線透過性固体22(62)により、着座部材材料212(612)を、本体部材材料211(611)に押し付けつつ、赤外線透過性固体22(62)側から、着座部材材料212(612)と本体部材材料211(611)とに対して赤外線ビーム25を照射することで、着座部材材料212(612)と本体部材材料211(611)を溶着する工程と、により形成されること、を特徴とするので、赤外線ビーム25による局所的な加熱により、着座部材材料212(612)と本体部材材料211(611)とが溶着されるため、赤外線ビーム25照射側表層での顕著な収縮、破れ、焼爛および熱分解などの熱損傷による表面性状の悪化を極力抑制しながら、短時間の内に、本体部材材料211(611)と着座部材材料212(612)とを溶着することができる。
【0084】
(4)(1)または(2)に記載の流体制御機器(薬液弁1,レギュレータ5)の製造方法において、材料結合体21(61)は、本体部材材料211(611)と、着座部材材料212(612)との間に熱板31(63)を挟み込むことで、本体部材材料211(611)および着座部材材料212(612)の、熱板31(63)が接触する面を溶融させる工程と、熱板31(63)を本体部材材料211(611)と着座部材材料212(612)との間から取り除く工程と、本体部材材料211(611)と、着座部材材料212(612)との溶融した面同士を接触させ、溶融した面に対して垂直方向から、本体部材材料211(611)と着座部材材料212(612)とを加圧しながら冷却することで、本体部材材料211(611)と着座部材材料212(612)を溶着する工程と、により形成されること、を特徴とするので、溶着工程がより容易となる。
赤外線ビーム25による溶着は、赤外線ビーム25が照射される側に配置される材料には、赤外線ビーム25を透過しやすいよう、透過性のある材料を選択し、赤外線ビーム25が照射される側とは反対側に配置される材料には、赤外線ビーム25を吸収しやすいよう吸収性のある材料を選択しなければならない。しかし、熱板31による溶着であれば、上記のように透過性や吸収性を考慮する必要がなく、容易に溶着を行うことが可能となる。
【0085】
<第2の実施形態>
次に第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態に係る流体制御機器である薬液弁1においては、ダイアフラム弁体122(125)を、本体部材1221(1251)と着座部材1222(1252)との結合体としていたが、
図10乃至
図12に示す薬液弁2のように、弁座側において、本体部材としての弁部本体126と、着座部材127との結合体を用いることが可能である。
以下、第1の実施形態に係る薬液弁1と異なる点のみ説明する。
【0086】
弁部本体126は、
図10中の上端面中央に、弁室126cが穿設されており、弁室126cの底面に設けられた凸部126dに、着座部材127が溶着されることで、弁座132が形成されている。凸部126dと着座部材127の接触面は、
図12に示すように、溶着部33となっている。そして、着座部材127の、溶着されている側と反対側の面はダイアフラム弁体128の着座面128aに当接する当接面127aとなっている。
【0087】
このような弁部本体126と着座部材127との結合体は、削り出し加工により形成されるものであり、詳しくは以下のようにして形成される。
まず、
図13(a)に示すように、支持体23に対向接触して、弁部本体126の材料であるブロック状の本体部材材料261を配置する。本体部材材料261には、弁部本体126の弁室126cとなる凹部261aが形成された状態であり、当該凹部261aの底面に、着座部材127の材料である板状の着座部材材料262を、本体部材材料211に接触して配置する。ここで、本体部材材料261は、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品であり、着座部材材料262は、PFAの押出成形品である。なお、着座部材材料262が、射出成型品であっても良い点は、第1の実施形態と同様である。
【0088】
次に、
図13(b)に示すように、積み重ねた本体部材材料261と着座部材材料262とに対し、支持体23とは反対側にヒートシンク作用を有する赤外線透過性固体27を、着座部材材料262に接触して配置する。
【0089】
そして、
図13(c)に示すように、矢印Fの方向に圧縮力を加えて本体部材材料261と着座部材材料262とを密着させながら、赤外線透過性固体27の側から、本体部材材料261と着座部材材料262とに対して、光源24から赤外線ビーム25を照射する。
赤外線ビーム25を照射すると、本体部材材料261と着座部材材料262との境界で温度分布が最高となり、着座部材材料262の赤外線照射側表層での顕著な収縮、破れ、焼爛および熱分解などの熱損傷による表面性状の悪化を極力抑制しながら、短時間の内に、本体部材材料261と着座部材材料262とを溶着することができる。そして、本体部材材料261と着座部材材料262とが溶着されることで、材料結合体26が形成される。
【0090】
最後に、
図13(d)に示すように、材料結合体26を、破線で示すような形状に削り出し加工を行うことで、弁部本体126と着座部材127との結合体を形成する。
【0091】
ここで、着座部材127の、ダイアフラム弁体128の着座面128aに当接する当接面127aは、削り出し加工により形成されるのではなく、着座部材材料262の成型面が残された状態である。
【0092】
例えば、当接面127aを削り出し加工により形成するとした場合、切刃の痕が残ることで、当接面127aの表面に微細な凹部および凸部が形成され、表面粗さが粗くなるおそれがある。表面粗さが粗くなった当接面127aが、ダイアフラム弁体128との当接離間を繰り返すと、上記微細な凸部が剥離し、パーティクル発生の原因となるおそれがある。
【0093】
そこで、本実施形態のように、当接面127aを、押出成形による成型面で構成すると、表面粗さが粗くなることを防止することができるため、当接面127aがダイアフラム弁体128との当接離間を繰り返しても、パーティクルが発生しにくくなる。
【0094】
また、本体部材材料261と着座部材材料262とにより材料結合体26を形成する際、赤外線ビーム25による溶着は、削り出し加工により形成された弁部本体126と着座部材127との結合体の、弁部本体126と着座部材127との接触面積よりも、広い範囲で行われる点は、第1の実施形態と同様である。このようにすることで、溶着部33は、
図12に示すように、弁部本体126と着座部材127との接触面全体に形成されることとなり、削り出された後の弁部本体126と着座部材127との間には、隙間が生じない。弁部本体126と着座部材127の間に隙間が無いことによって、従来懸念されていた滞留の発生を防止することが可能である。滞留の発生を防止することができれば、滞留した薬液が劣化することによって薬液の含有成分がパーティクルとなるおそれを防ぐことができ、半導体の配線パターンの欠陥を生じさせる可能性が低減することができる。
【0095】
上記の赤外線ビーム25による溶着の他、次に説明する熱板溶着によって弁部本体126と着座部材127との結合体を形成することとしても良い。
図14(a)に示すように、本体部材材料261の凹部261aの底面と着座部材材料262とで、熱板31を挟むようにして配置し、凹部261aの底面と着座部材材料262とを、それぞれ熱板31に接触させる。これにより、凹部261aの底面および着座部材材料262の熱板31と接触する端面が溶融する
【0096】
次に、
図14(b)に示すように熱板31を取り除いた後、
図14(c)に示すように、本体部材材料261および着座部材材料262の溶融した面同士を密着させ、本体部材材料261および着座部材材料262の溶融した面に対して垂直方向(矢印F)から本体部材材料261および着座部材材料262を圧縮しながら冷却する。これにより、本体部材材料261と着座部材材料262とが溶着され、材料結合体26が形成される。
【0097】
そして、
図14(d)に示すように、材料結合体26を、破線で示すような形状に削り出し加工を行うことで、弁部本体126と着座部材127との結合体を形成する。
【0098】
上記で説明した熱板溶着によれば、本体部材材料261と着座部材材料262との接触面全体が溶着されるため、溶着範囲は、削り出し加工により形成された弁部本体126と着座部材127との結合体の、弁部本体126と着座部材127との接触面である溶着部33の範囲よりも広くなる。よって、溶着部33は、
図12に示すように、弁部本体126と着座部材127との接触面全体に形成されることとなり、弁部本体126と着座部材127との間には、隙間が生じない。弁部本体126と着座部材127との間に隙間が生じないことによって、従来懸念されていた滞留の発生を防止することが可能である。滞留の発生を防止することができれば、滞留した薬液が劣化することによって薬液の含有成分がパーティクルとなるおそれを防ぐことができ、半導体の配線パターンの欠陥を生じさせる可能性が低減することができる。
【0099】
上記の第2の実施形態において、着座部材127は、材料結合体26を削り出すことで、断面が略三角形状の円環状に形成されているが、
図15および
図16に示す着座部材130のように、断面を長方形状としても良い。
この場合、弁部本体129は、
図15中の上端面中央に、弁室129cが穿設されており、弁室129cの底面に設けられた凸部129dに、着座部材130が溶着されることで、弁座133が形成されている。
この弁部本体129と着座部材130の結合体も、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品である本体部材材料261と、PFAの押出成形品である着座部材材料262とを溶着した材料結合体26から削り出すことにより形成されており、当該溶着は、弁部本体129と着座部材130との接触面積より広い範囲で行われる。また、着座部材130の当接面130aは、着座部材127の当接面127aと同様に、成型面により形成されている。
このような弁座133と当接離間するダイアフラム弁体131は、
図15中の下端面に凸状に突出して形成される着座部131aを備えている。
【0100】
ここまで、流体制御機器として、流量制御を行う薬液弁2を例に挙げているが、例えば、
図25に示すように、圧力制御を行うレギュレータ6においても、弁座側において、本体部材としての弁部本体529と、着座部材530との結合体を用いることが可能である。
【0101】
弁部本体529は、
図25中の下端面中央に、上流側流体室521cが穿設されており、上流側流体室521cの上面に設けられた凸部529eに、着座部材530が溶着されることで、弁座532が形成されている。凸部529eと着座部材530の接触面は溶着部となっている。この溶着部は、
図12に示す溶着部33と同様に、凸部529eと着座部材530の接触面全体に形成されている。そして、着座部材530の、溶着されている側と反対側の面はダイアフラム弁体531の着座面531aに当接する当接面530aとなっている。当接面530aは、上述の薬液弁2に用いられる着座部材127と同様に、着座部材530の材料である着座部材材料712(
図26参照)の成型面により形成され、パーティクルの発生を防止している。
【0102】
このような弁部本体529と着座部材530との結合体は、削り出し加工により形成されるものであり、詳しくは以下のようにして形成される。
まず、
図26(a)に示すように、支持体23に対向接触して、弁部本体529の材料であるブロック状の本体部材材料711を配置する。本体部材材料711には、弁部本体529の上流側流体室521cとなる凹部711aが形成された状態であり、当該凹部711aの底面に、着座部材530の材料である板状の着座部材材料712を、本体部材材料711に接触して配置する。ここで、本体部材材料711は、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品であり、着座部材材料712は、PFAの押出成形品または射出成型品である。
【0103】
次に、
図26(b)に示すように、積み重ねた本体部材材料711と着座部材材料712とに対し、支持体23とは反対側に赤外線透過性固体64を、着座部材材料712に接触して配置する。
【0104】
そして、
図26(c)に示すように、矢印Fの方向に圧縮力を加えて本体部材材料711と着座部材材料712とを密着させながら、赤外線透過性固体27の側から、本体部材材料711と着座部材材料712とに対して、光源24から赤外線ビーム25を照射する。赤外線ビーム25を照射し、本体部材材料711と着座部材材料712とが溶着されることで、材料結合体71が形成される。赤外線ビーム25によって溶着を行う範囲が、削り出し加工により形成された弁部本体529と着座部材530との結合体の、弁部本体529と着座部材530との接触面積よりも、広い範囲で行われる点は、上述の薬液弁2に用いられる弁部本体126,129と同様である。これにより、弁部本体529と着座部材530の接触面が全て溶着部となるため、弁部本体529と着座部材530との間に隙間が生じず、流体(例えば薬液)の滞留の発生を防止することが可能となる。
【0105】
最後に、
図26(d)に示すように、材料結合体71を、破線で示すような形状に削り出し加工を行うことで、弁部本体529と着座部材530との結合体を形成する。
【0106】
上記の赤外線ビーム25による溶着の他、熱板溶着によって弁部本体529と着座部材530との結合体を形成することとしても良い。
熱板溶着の工程は、
図14に示す工程と同様である。
【0107】
本体部材材料711の凹部711aの底面と着座部材材料712とで、熱板を挟むようにして配置し、凹部711aの底面および着座部材材料712の熱板と接触する端面を溶融させる。
そして、熱板を取り除き、本体部材材料711および着座部材材料712の溶融した面同士を密着させ、本体部材材料711および着座部材材料712の溶融した面に対して垂直方向から本体部材材料711および着座部材材料712を圧縮しながら冷却する。これにより、本体部材材料711と着座部材材料712とが溶着され、材料結合体71が形成される。そして、材料結合体71を削り出し加工し、弁部本体529と着座部材530との結合体を形成する。
【0108】
熱板溶着によれば、弁部本体529と着座部材530との間に隙間が生じず、従来懸念されていた滞留の発生を防止することが可能である点は、上述の薬液弁2の弁座132,133と同様である。
【0109】
上記のレギュレータ6において、着座部材530は、材料結合体26を削り出すことで、断面が略三角形状の円環状に形成されているが、
図27に示す着座部材534のように、断面を長方形状としても良い。
この場合、弁部本体533は、
図27中の下端面中央に、上流側流体室521cが穿設されており、上流側流体室521cの底面に設けられた凸部533eに、着座部材534が溶着されることで、弁座536が形成されている。
この弁部本体533と着座部材534の結合体も、耐薬品性に優れるPTFEの圧縮成形品である本体部材材料711と、PFAの押出成形品または射出成型品である着座部材材料712とを溶着した材料結合体71から削り出すことにより形成されており、当該溶着は、弁部本体533と着座部材534との接触面積より広い範囲で行われる。また、着座部材534の当接面534aは、着座部材530の当接面530aと同様に、成型面により形成されている。
このような弁座536と当接離間するダイアフラム弁体535は、
図27に示すように、凸状に突出して形成される着座部535aを備えている。
【0110】
以上説明したように、第2の実施形態に係る流体制御機器(薬液弁2,レギュレータ6)の製造方法によれば、
(1)ダイアフラム弁体128(131,531,535)が弁座132(133,532,536)に当接または離間することで、流体の流れを制御する流体制御機器(薬液弁2,レギュレータ6)の製造方法において、弁座132(133,532,536)が、ダイアフラム弁体128(131,531,535)に当接する着座部材127(130,530,534)と、本体部材としての弁部本体126(129,529,533)と、の結合体であること、結合体は、着座部材127(130,530,534)の材料である着座部材材料262(712)と、弁部本体126(129,529,533)の材料である本体部材材料261(711)と、を溶着した材料結合体26(71)を、削り出すことで形成されること、溶着は、材料結合体26(71)の、着座部材材料262(712)と本体部材材料261(711)との接触面において、結合体の、着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との接触面よりも広い範囲で行われるものであること、を特徴とするので、着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)とが溶着されることで構成される弁座132(133,532,536)が、着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との間に隙間を有することがないため、流体(例えば薬液)の滞留の発生を防止することが可能である。
【0111】
本発明においては、弁座132(133,532,536)が、ダイアフラム弁体128(131,531,535)に当接する着座部材127(130,530,534)と、弁部本体126(129,529,533)と、の結合体であり、当該結合体は、着座部材127(130,530,534)の材料である着座部材材料262(712)と、弁部本体126(129,529,533)の材料である本体部材材料261(711)と、を溶着した材料結合体26(71)を削り出すことで形成される。そして、着座部材材料262(712)と本体部材材料261(711)との溶着は、結合体の、着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との接触面よりも広い範囲で行われる。つまり、着座部材材料262(712)と本体部材材料261(711)とが溶着されている面積の範囲内で、削り出し加工を行った後の着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との接触面が形成されるため、着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との接触面全体が溶着されることとなる。着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との接触面全体が溶着されることにより、着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との間には隙間が生じないため、従来懸念されていた薬液の滞留の発生を防止することが可能である。
滞留の発生を防止することができれば、薬液の含有成分が固形化してパーティクルとなるおそれを防ぐことができる。そうすれば、半導体の配線パターンの欠陥を生じる等、半導体製造の歩留りに悪影響が出る可能性を低減することができる。
【0112】
(2)(1)に記載の流体制御機器(薬液弁2,レギュレータ6)の製造方法において、着座部材材料262(712)は、射出成型または押出成型のいずれか一方により成型されたものであること、着座部材127(130,530,534)は、ダイアフラム弁体128(131,531,535)に当接する当接面127a(130a,530a,534a)を備え、当接面127a(130a,530a,534a)は、着座部材材料262(712)の成型面により形成されること、を特徴とするので、ダイアフラム弁体128(131,531,535)と弁座132(133,532,536)が当接離間を繰り返すことによって着座部材127(130,530,534)が削れ、パーティクルが発生してしまうことを防止することができる。
【0113】
例えば、着座部材127(130,530,534)と弁部本体126(129,529,533)との結合体を削り出し加工により形成する際、着座部材127(130,530,534)の当接面127a(130a,530a,534a)を削り出し加工により形成すると、切刃の痕が残ることで、当接面127a(130a,530a,534a)の表面に微細な凹部および凸部が形成され、表面粗さが粗くなるおそれがある。表面粗さが粗くなった当接面127a(130a,530a,534a)が、ダイアフラム弁体128(131,531,535)への当接離間を繰り返すと、上記微細な凸部が剥離し、パーティクル発生の原因となるおそれがある。
【0114】
そこで、本発明のように、当接面127a(130a,530a,534a)を、射出成型または押出成形による成型面で構成すると、表面粗さが粗くなることを防止することができるため、当接面127a(130a,530a,534a)がダイアフラム弁体128(131,531,535)への当接離間を繰り返しても、パーティクルが発生しにくい。
なお、射出成型によって着座部材材料262(712)を成型すると、当接面127a(130a,530a,534a)の表面粗さが金型部品の表面粗さに左右されることや、金型内にガスが充満することで当接面127a(130a,530a,534a)に焼けが発生して、表面粗さが粗くなることが考えられるため、押出成形によって着座部材材料262(711)を成型することが、最も望ましい。
【0115】
(3)(1)または(2)に記載の流体制御機器(薬液弁2,レギュレータ6)の製造方法において、材料結合体26(71)は、本体部材材料261(711)に、着座部材材料262(712)を重ね合わせる工程と、本体部材材料261(711)に、着座部材材料262(712)を重ね合わせたものに、さらに赤外線透過性固体27(63)を重ね合わせる工程と、赤外線透過性固体27(63)により、着座部材材料262(712)を、本体部材材料261(711)に押し付けつつ、赤外線透過性固体27(63)側から、着座部材材料262(712)と本体部材材料261(711)とに対して赤外線ビーム25を照射することで、着座部材材料262(712)と本体部材材料261(711)を溶着する工程と、により形成されること、を特徴とするので、赤外線ビーム25による局所的な加熱により、着座部材材料262(712)と本体部材材料261(711)とが溶着されるため、赤外線ビーム25照射側表層での顕著な収縮、破れ、焼爛および熱分解などの熱損傷による表面性状の悪化を極力抑制しながら、短時間の内に、本体部材材料261(711)と着座部材材料262(712)とを溶着することができる。
【0116】
(4)(1)または(2)に記載の流体制御機器(薬液弁2,レギュレータ6)の製造方法において、材料結合体26(71)は、本体部材材料261(711)と、着座部材材料262(712)との間に熱板31を挟み込むことで、本体部材材料261(711)および着座部材材料262(712)の、熱板31が接触する面を溶融させる工程と、熱板31を本体部材材料261(711)と着座部材材料262(712)との間から取り除く工程と、本体部材材料261(711)と、着座部材材料262(712)との溶融した面同士を接触させ、溶融した面に対して垂直方向から、本体部材材料261(711)と着座部材材料262(712)とを加圧しながら冷却することで、本体部材材料261(711)と着座部材材料262(712)を溶着する工程と、により形成されること、を特徴とするので、溶着工程がより容易となる。
赤外線ビーム25による溶着は、赤外線ビーム25が照射される側に配置される材料には、赤外線ビーム25を透過しやすいよう、透過性のある材料を選択し、赤外線ビーム25が照射される側とは反対側に配置される材料には、赤外線ビーム25を吸収しやすいよう吸収性のある材料を選択しなければならない。しかし、熱板31による溶着であれば、上記のように透過性や吸収性を考慮する必要がなく、容易に溶着を行うことが可能となる。
【0117】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、流体制御機器を、半導体製造工程に用いられる薬液弁1,2やレギュレータ5,6としているが、これらに限定されるものではなく、医用分析装置に用いられる薬液弁等の様々な流体制御機器に、本発明を応用することが可能である。
【0118】
また、着座部材材料212,262,612,712としてPFAを挙げているが、これに限定されるものではなく、その他の熱可塑性樹脂を用いることとしても良い。
さらにまた、本体部材材料211,261,611,711として、PTFEを挙げているが、これに限定されるものではなく、変性PTFEまたはPFAであってもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 薬液弁(流体制御機器の一例)
21 材料結合体
121d 弁座
122 ダイアフラム弁体(弁体の一例)
211 本体部材材料
212 着座部材材料
1221 本体部材
1222 着座部材