IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電子磁気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法 図1
  • 特許-磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法 図2
  • 特許-磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法 図3
  • 特許-磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法 図4
  • 特許-磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法 図5
  • 特許-磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法 図6
  • 特許-磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/91 20060101AFI20220831BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01N21/91 B
G01N21/954 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019143858
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025878
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591011775
【氏名又は名称】電子磁気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【復代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】茂木 良祥
(72)【発明者】
【氏名】小林 光弘
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-236100(JP,A)
【文献】特開2007-017377(JP,A)
【文献】特開2013-160507(JP,A)
【文献】特開2018-044787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0284889(US,A1)
【文献】特開2001-141664(JP,A)
【文献】特開平01-216237(JP,A)
【文献】特開2018-179786(JP,A)
【文献】特開平04-301755(JP,A)
【文献】特開2007-304011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ切り鋼管のネジ部を磁化する磁化部と、
前記ネジ部に磁粉を供給する磁粉供給部と、
前記ネジ切り鋼管の軸方向に並設され、前記ネジ部を撮像する複数の撮像装置と、
複数の前記撮像装置により撮像された撮像画像を合成する画像処理部と、を備え、
複数の前記撮像装置は、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向の撮像端部領域により前記ネジ部におけるネジ山の頂面、底面、及び側面が撮像されるように配置され、
前記画像処理部は、複数の前記撮像装置による前記撮像端部領域を繋ぎ合わせて前記撮像画像を合成する、磁粉探傷装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向に垂直な方向に対する中心領域を切り出して前記撮像画像を合成する、請求項1に記載の磁粉探傷装置。
【請求項3】
前記ネジ切り鋼管を円周方向に回転させる回転装置を備え、
前記画像処理部は、複数の前記撮像装置により前記円周方向の所定幅ごとに撮像される前記撮像画像に基づいて合成画像を生成する、請求項1又は2に記載の磁粉探傷装置。
【請求項4】
前記磁粉供給部及び複数の前記撮像装置は、前記ネジ切り鋼管の内周面及び外周面の両方に対して設けられている、請求項1乃至3のいずれかに記載の磁粉探傷装置。
【請求項5】
前記磁粉は、蛍光磁粉であり、
前記ネジ部に紫外線を照射する紫外線照射部を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の磁粉探傷装置。
【請求項6】
前記撮像装置及び前記紫外線照射部は、互いに遮蔽板を隔てて配置される、請求項5に記載の磁粉探傷装置。
【請求項7】
ネジ切り鋼管のネジ部を磁化する磁化工程と、
前記ネジ部に磁粉を供給する磁粉供給工程と、
前記ネジ切り鋼管の軸方向に亘る前記ネジ部の複数の画像を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により撮像された複数の撮像画像を合成する画像処理工程と、を含み、
前記撮像工程においては、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向の撮像端部領域により前記ネジ部におけるネジ山の頂面、底面、及び側面が撮像され、
前記画像処理工程においては、複数の前記撮像画像の前記撮像端部領域を繋ぎ合わせて前記撮像画像を合成する、磁粉探傷方法。
【請求項8】
前記画像処理工程においては、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向に垂直な方向に対する中心領域を切り出して前記撮像画像を合成する、請求項7に記載の磁粉探傷方法。
【請求項9】
前記ネジ切り鋼管を円周方向に回転させる回転工程を含み、
前記画像処理工程においては、前記撮像工程により前記円周方向の所定幅ごとに撮像される前記ネジ部の前記撮像画像に基づいて合成画像を生成する、請求項7又は8に記載の磁粉探傷方法。
【請求項10】
前記磁粉供給工程及び前記撮像工程は、前記ネジ切り鋼管の内周面及び外周面の両方に対して同時に行われる、請求項7乃至9のいずれかに記載の磁粉探傷方法。
【請求項11】
前記磁粉は、蛍光磁粉であり、
前記ネジ部に紫外線を照射する紫外線照射工程を含む、請求項7乃至10のいずれかに記載の磁粉探傷方法。
【請求項12】
前記撮像工程及び前記紫外線照射工程は、互いに遮蔽板を隔てて行われる、請求項11に記載の磁粉探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁粉探傷装置、及び磁粉探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊検査方法の一例として、磁化装置で被検査体を磁化し、磁化した被検査体に磁粉を散布し、当該被検査体に付着した磁粉の分布状態から、当該被検査体の傷や割れを検出する磁粉探傷方法が公知である。
【0003】
このような磁粉探傷方法は、例えば鋼管の内表面の検査にも用いることができ、鋼管を円周方向に回転させつつ鋼管の内部に挿入した撮像装置により当該内表面の傷検査を行う磁粉探傷装置が開示されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-219069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような鋼管の1つとして、油井管などに使用されるネジ切り鋼管が知られている。ネジ切り鋼管は、鋼管同士の内部を連通させつつ互いを連結させることができるよう管端部にネジ部が形成されている。このため、ネジ切り鋼管に対しては上記のような従来技術に係る磁粉探傷方法を適用したとしても、ネジ部による凹凸によって撮像装置からの死角が形成され得るため、ネジ部の形状及検査部分によっては磁粉探傷による傷や割れの検出が出来ない虞が生じる。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ネジ部の形状及び検査部分によらずネジ切り鋼管の磁粉探傷が可能な磁粉探傷装置及び磁粉探傷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、ネジ切り鋼管のネジ部を磁化する磁化部と、前記ネジ部に磁粉を供給する磁粉供給部と、前記ネジ切り鋼管の軸方向に並設され、前記ネジ部を撮像する複数の撮像装置と、複数の前記撮像装置により撮像された撮像画像を合成する画像処理部と、を備え、複数の前記撮像装置は、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向の撮像端部領域により前記ネジ部が連続的に撮像されるように配置され、前記画像処理部は、複数の前記撮像装置による前記撮像端部領域を繋ぎ合わせて前記撮像画像を合成する、磁粉探傷装置である。
【0008】
磁粉探傷装置は、ネジ切り鋼管のネジ部を磁化すると共に、当該ネジ部に磁粉を供給することにより、ネジ部の欠陥個所に磁粉を集める。その上で、磁粉探傷装置は、ネジ切り鋼管の軸方向に並ぶ複数の撮像装置により、撮像画像の端部領域が当該ネジ部を連続的に撮像するように軸方向に重複的にネジ部を撮像する。そして、磁粉探傷装置は、それぞれの撮像画像における軸方向の撮像端部領域を繋ぎ合わせて探傷用の合成画像を生成する。このとき、探傷用の合成画像は、ネジ部の撮像領域に対して斜めの角度から撮像された部分画像を繋ぎ合わせることにより形成されているため、ネジ山の頂面及び底面のみならず側面を含めて撮像されていることになる。したがって、本発明の第1の態様に係る磁粉探傷装置によれば、ネジ部の形状及び検査部分によらずネジ切り鋼管の磁粉探傷を行うことができる。
【0009】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記画像処理部は、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向に垂直な方向に対する中心領域を切り出して前記撮像画像を合成する、磁粉探傷装置である。
【0010】
磁粉探傷装置により生成された探傷用の合成画像は、ネジ部の撮像領域に対して斜めの角度から撮像された部分画像からなる。一般的に、撮像画像は、特に広角レンズを用いて撮像される場合には、四隅に近い領域ほど歪が顕著になることが知られている。そこで、本発明の第2の態様に係る磁粉探傷装置は、撮像画像の端部領域についての部分画像のうち、軸方向に垂直な方向に対する中心領域を更に切り出して探傷用の合成画像を生成している。したがって、本発明の第2の態様に係る磁粉探傷装置によれば、歪の影響が抑制された探傷用の合成画像を生成することができるため、磁粉探傷の検査精度を向上させることができる。
【0011】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第1又は2の態様において、前記ネジ切り鋼管を円周方向に回転させる回転装置を備え、前記画像処理部は、複数の前記撮像装置により前記円周方向の所定幅ごとに撮像される前記撮像画像に基づいて合成画像を生成する、磁粉探傷装置である。
【0012】
軸方向に並設された複数の撮像装置は、ネジ切り鋼管の円周方向に対して画角により撮像範囲が制限され、内周面又は外周面の全体を一度に撮像することができない。また、上記のように、撮像画像から軸方向に垂直な方向に対する中心領域を切り出して探傷用の合成画像を生成する場合には、円周方向に対して撮像できる撮像範囲が更に制限されることになる。このため、磁粉探傷装置は、ネジ切り鋼管を円周方向に回転させる回転装置を備えることにより、複数の撮像装置を移動させることなくネジ切り鋼管の内周面又は外周面の全体を撮像する。したがって、本発明の第3の態様に係る磁粉探傷装置によれば、複数の撮像装置によるブレの影響を低減してネジ切り鋼管の内周面又は外周面の全体を探傷することができる。
【0013】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第1乃至3のいずれかの態様において、前記磁粉供給部及び複数の前記撮像装置は、前記ネジ切り鋼管の内周面及び外周面の両方に対して設けられている、磁粉探傷装置である。
【0014】
本発明の第4の態様に係る磁粉探傷装置によれば、ネジ切り鋼管が内周面及び外周面の両方にネジ部が形成されている場合であっても、当該ネジ切り鋼管の内外双方のネジ部に対して同時に磁粉探傷を行うことができる。
【0015】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上記した本発明の第1乃至4のいずれかの態様において、前記磁粉は、蛍光磁粉であり、前記ネジ部に紫外線を照射する紫外線照射部を備える、磁粉探傷装置である。
【0016】
本発明の第5の態様に係る磁粉探傷装置によれば、ネジ切り鋼管に供給される蛍光磁粉を紫外線で発光させてネジ部を撮像することにより、より微小な欠陥部を検出しやすくすることができる。
【0017】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第5の態様において、前記撮像装置及び前記紫外線照射部は、互いに遮蔽板を隔てて配置される、磁粉探傷装置である。
【0018】
本発明の第6の態様に係る磁粉探傷装置によれば、複数の撮像装置による撮像画像は、紫外線照射部からの紫外線の影響を制限することができるため、画質の低下を抑制することができる。
【0019】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、ネジ切り鋼管のネジ部を磁化する磁化工程と、前記ネジ部に磁粉を供給する磁粉供給工程と、前記ネジ切り鋼管の軸方向に亘る前記ネジ部の複数の画像を撮像する撮像工程と、前記撮像工程により撮像された複数の撮像画像を合成する画像処理工程と、を含み、前記撮像工程においては、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向の撮像端部領域により前記ネジ部が連続的に撮像され、前記画像処理工程においては、複数の前記撮像画像の前記撮像端部領域を繋ぎ合わせて前記撮像画像を合成する、磁粉探傷方法である。
【0020】
本発明の第7の態様に係る磁粉探傷方法は、ネジ切り鋼管のネジ部を磁化すると共に、当該ネジ部に磁粉を供給することにより、ネジ部の欠陥個所に磁粉を集める。その上で、磁粉探傷方法は、前記ネジ切り鋼管の軸方向に亘る複数の撮像画像の撮像端部領域が当該ネジ部を連続的に撮像するように軸方向に重複的にネジ部を撮像する。そして、磁粉探傷方法は、それぞれの撮像画像における軸方向の撮像端部領域を繋ぎ合わせて探傷用の合成画像を生成する。このとき、探傷用の合成画像は、ネジ部の撮像領域に対して斜めの角度から撮像された部分画像を繋ぎ合わせることにより形成されているため、ネジ山の頂面及び底面のみならず側面を含めて撮像されていることになる。したがって、本発明の第7の態様に係る磁粉探傷方法によれば、ネジ部の形状及び検査部分によらずネジ切り鋼管の磁粉探傷を行うことができる。
【0021】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第7の態様において、前記画像処理工程においては、それぞれの前記撮像画像における前記軸方向に垂直な方向に対する中心領域を切り出して前記撮像画像を合成する、磁粉探傷方法である。
【0022】
磁粉探傷方法により生成される探傷用の合成画像は、ネジ部の撮像領域に対して斜めの角度から撮像された部分画像からなる。一般的に、撮像画像は、特に広角レンズを用いて撮像される場合には、四隅に近い領域ほど歪が顕著になることが知られている。そこで、本発明の第8の態様に係る磁粉探傷方法は、撮像画像の撮像端部領域についての部分画像のうち、軸方向に垂直な方向に対する中心領域を更に切り出して探傷用の合成画像を生成している。したがって、本発明の第8の態様に係る磁粉探傷方法によれば、歪の影響が抑制された探傷用の合成画像を生成することができるため、磁粉探傷の検査精度を向上させることができる。
【0023】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、上記した本発明の第7又は8の態様において、前記ネジ切り鋼管を円周方向に回転させる回転工程を含み、前記画像処理工程においては、前記撮像工程により前記円周方向の所定幅ごとに撮像される前記ネジ部の前記撮像画像に基づいて合成画像を生成する、磁粉探傷方法である。
【0024】
軸方向に沿って撮像される複数の撮像画像は、ネジ切り鋼管の円周方向に対して画角により撮像範囲が制限され、内周面又は外周面の全体を一度に撮像することができない。また、上記のように、撮像画像から軸方向に垂直な方向に対する中心領域を切り出して探傷用の合成画像を生成する場合には、円周方向に対して撮像できる撮像範囲が更に制限されることになる。このため、磁粉探傷方法においては、ネジ切り鋼管を円周方向に回転させることにより、ネジ切り鋼管の内周面又は外周面の全体の撮像画像を定位置で撮像する。したがって、本発明の第9の態様に係る磁粉探傷装置によれば、撮像のブレの影響を低減してネジ切り鋼管の内周面又は外周面の全体を探傷することができる。
【0025】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、上記した本発明の第7乃至9のいずれかの態様において、前記磁粉供給工程及び前記撮像工程は、前記ネジ切り鋼管の内周面及び外周面の両方に対して同時に行われる、磁粉探傷方法である。
【0026】
本発明の第10の態様に係る磁粉探傷方法によれば、ネジ切り鋼管が内周面及び外周面の両方にネジ部が形成されている場合であっても、当該ネジ切り鋼管の内外双方のネジ部に対して同時に磁粉探傷を行うことができる。
【0027】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様は、上記した本発明の第7乃至10のいずれかの態様において、前記磁粉は、蛍光磁粉であり、前記ネジ部に紫外線を照射する紫外線照射工程を含む、磁粉探傷方法である。
【0028】
本発明の第11の態様に係る磁粉探傷方法によれば、ネジ切り鋼管に供給される蛍光磁粉を紫外線で発光させてネジ部を撮像することにより、より微小な欠陥部を検出しやすくすることができる。
【0029】
<本発明の第12の態様>
本発明の第12の態様は、上記した本発明の第11の態様において、前記撮像工程及び前記紫外線照射工程は、互いに遮蔽板を隔てて行われる、磁粉探傷方法である。
【0030】
本発明の第12の態様に係る磁粉探傷方法によれば、撮像画像に対する紫外線照射の影響を制限することができるため、画質の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ネジ部の形状及び検査部分によらずネジ切り鋼管の磁粉探傷が可能な磁粉探傷装置及び磁粉探傷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る磁粉探傷装置の概略構成を示す側面図である。
図2】磁粉探傷装置にセットされたネジ切り鋼管の断面を示す断面図である。
図3】複数の撮像装置による画像取得方法を示す模式図である。
図4】複数の撮像装置による撮像画像から必要な領域を切り出す手順を示す説明図である。
図5】複数の撮像装置により撮像された複数の撮像画像を合成した探傷用画像を模式的に表す図である。
図6】ネジ切り鋼管2の内周面に対してネジ山が直角でない場合のネジ部を示す部分断面図である。
図7】変形例に係る磁粉探傷装置にセットされたネジ切り鋼管の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略などを行なっており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0034】
図1は、本発明に係る磁粉探傷装置1の概略構成を示す側面図である。磁粉探傷装置1は、ネジ切り鋼管2がセットされることにより、ネジ切り鋼管2に生じた数mm程度の傷を検出する検査装置である。
【0035】
ネジ切り鋼管2は、磁粉探傷が可能な強磁性体からなる金属製の円筒体であり、本実施形態においては管端部2a付近の内周面にネジ部2bが形成された被検査体である。以下、ネジ切り鋼管2の円筒長手方向を「軸方向」と呼ぶこととし、軸方向のうち、ネジ切り鋼管2の内部から管端部2aへ向く方向を管端方向X1、ネジ切り鋼管2の管端部2aから内部へ向く方向を深さ方向X2と呼ぶこととする。また、軸方向に垂直な面内でネジ切り鋼管2の円周に沿う向きを「円周方向」と呼ぶこととする。
【0036】
磁粉探傷装置1は、探傷部10、磁化部20、制御装置30、及び表示部40を備える。また、探傷部10は、台座部11、複数のローラ部12、水平支持部材13、複数の撮像装置14a~14h、紫外線照射部15、磁粉供給部16、及び鉛直支持部材17を含む。
【0037】
探傷部10は、台座部11に回転可能に支持された複数のローラ部12にネジ切り鋼管2が載置され、且つ水平支持部材13がネジ切り鋼管2の内部に挿通されるようにセットされることにより、ネジ切り鋼管2のネジ部2bに対して紫外線照射部15から紫外線を照射しつつ複数の撮像装置14a~14hによりネジ部2bを撮像する。
【0038】
ここで、複数のローラ部12のうち少なくとも1つは、「回転装置」として回転駆動され、これにより、載置されたネジ切り鋼管2を一定の速度で連続的に円周方向に回転させることができる。回転駆動の機構は種々の形態が可能であり、図示しないモータによりローラ部12の回転軸を回転させてもよく、又は当該モータからローラ部12へ掛け渡されたベルトによりローラ部12を回転させてもよい。
【0039】
また、複数の撮像装置14a~14hは、ネジ切り鋼管2の軸方向における管端方向X1から深さ方向X2に亘り直線上に並設されつつ水平支持部材13に固定され、詳細を後述するように、ネジ切り鋼管2のネジ部2bを軸方向に対して重複的に撮像するカメラである。撮像装置14a~14hは、カラー画像を撮像することができ、例えばCMOSイメージセンサを搭載すると共に、広角レンズにより比較的広い画角を有する広角カメラであることが好適である。尚、本実施形態においては探傷部10が8つのカメラを含む例を示しているが、カメラの台数は複数である限りこれに限定されるものではない。また、本実施形態における複数の撮像装置14a~14hは、例えば30cm×120cmの面積を有するネジ切り鋼管2の内周面に対し、1ピクセル当たり0.1mm四方の撮像範囲となる解像度で撮像する。
【0040】
紫外線照射部15は、所謂ブラックライトであり、後述する蛍光磁粉を発光させるための光源である。紫外線照射部15は、本実施形態においては、長手方向がネジ切り鋼管2の軸方向に平行な棒状である例を示しているが、ネジ切り鋼管2のネジ部2bに紫外線を照射できる限り、形状が限定されるものではない。
【0041】
磁粉供給部16は、ネジ切り鋼管2の内周面に蛍光磁粉を供給するためのチューブ状部材であり、水平支持部材13に沿って軸方向に延在しつつ、水平支持部材13の先端部において鉛直下方に向けて開口している。磁粉供給部16は、磁粉を含む水からなる磁粉液を図示しない磁粉液供給源からネジ切り鋼管2の内部における水平支持部材13の先端部に供給する。これにより、磁粉供給部16の開口部から供給された磁粉液は、ネジ切り鋼管2の内周面を伝って管端部2aから流れ出る過程で、ネジ切り鋼管2の内周面に万遍なく磁粉が散布される。尚、磁粉液は、ネジ切り鋼管2のネジ部2bにスプレー状に散布されてもよい。また、管端部2aから流れ出る磁粉液は、磁粉液供給源に回収されてもよい。
【0042】
鉛直支持部材17は、台座部11に対して鉛直方向に固定され、水平支持部材13の高さを調整しつつ水平支持部材13を支持する柱体である。ここで、ネジ切り鋼管2は、後述する磁化部20から受ける磁界により、又はローラ部12による回転駆動により、僅かに振動する場合がある。そして、当該振動は、台座部11及び鉛直支持部材17を介して水平支持部材13に伝搬することにより、複数の撮像装置14a~14hに対する撮像の妨げになることが考えられる。この場合には、台座部11は、ローラ部12を支持する部分と、鉛直支持部材17を支持する部分とに分離された構成であってもよい。
【0043】
磁化部20は、例えば3極ヨーク型磁化器のようにコイルが巻回された継鉄からなる公知の磁化器であり、回転磁界を発生させることにより、探傷部10にセットされたネジ切り鋼管2を磁化する。尚、磁化部20が発生させる磁界は、回転磁界に限られるものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。
【0044】
制御装置30は、CPU、メモリ、記憶装置、信号入出力装置等から構成される電子計算機であり、探傷部10、磁化部20、及び表示部40にそれぞれ接続されることにより磁粉探傷装置1の全体を統括制御する。より具体的には、制御装置30は、記憶装置に格納された磁粉探傷プログラムをメモリに読み出して実行することにより、磁粉探傷に係る一連の制御手順を介して、ネジ切り鋼管2のネジ部2bにおける探傷用画像を取得する。
【0045】
ここで、本実施形態における制御装置30は、回転制御部31、撮像制御部32、及び画像処理部33を含む。回転制御部31は、ネジ切り鋼管2又は上記したローラ部12に接続される図示しないエンコーダによりネジ切り鋼管2の円周方向の向きを検出しながら、ネジ切り鋼管2を回転させる制御を行う。撮像制御部32は、ネジ切り鋼管2が所定の微小角度Δθだけ回転するごとにエンコーダから出力される信号に同期して、複数の撮像装置14a~14hによりネジ部2bを撮像する制御を行う。画像処理部33は、詳細を後述するように、撮像装置14a~14hにより撮像されたそれぞれの撮像画像から一部を切り出しつつ合成することにより探傷のための合成画像を生成する。
【0046】
また、本実施形態における磁粉探傷制御の実行中では、磁粉供給部16及び磁化部20が連続的に稼働している。そして、表示部40は、画像処理部33が生成した合成画像を表示することにより検査員に探傷用画像を提示するディスプレイである。尚、探傷については、表示部40に表示された探傷用画像により検査員が目視で行なってもよく、又は制御装置30が自動的に行なってもよい。
【0047】
次に、磁粉探傷装置1による磁粉探傷方法について、より具体的に説明する。図2は、磁粉探傷装置1にセットされたネジ切り鋼管2の断面を示す断面図である。より具体的には、図2は、水平支持部材13の先端部を管端方向X1に向かって見た場合のネジ切り鋼管2の断面図である。
【0048】
ここで、水平支持部材13は、図2に示す断面においては、撮像装置14a~14hを収容しつつ固定する形状を有すると共に、紫外線照射部15及び磁粉供給部16を支持する支持板が形成されている。
【0049】
磁粉探傷装置1は、回転制御部31の制御に基づいてローラ部12を回転させることにより、ネジ切り鋼管2に対する円周方向の回転制御を行う(回転工程)。また、磁粉探傷装置1は、矢印a1で示すように磁化部20から磁界を発生させることにより、ネジ切り鋼管2のネジ部2bを磁化する(磁化工程)。尚、磁化部20がネジ切り鋼管2の外側に配置されている場合であっても、磁化部20の大きさ及び磁界の強さを適宜設定することにより、ネジ切り鋼管2の内周面に対しても十分に磁化することができる。
【0050】
また、磁粉探傷装置1は、矢印a2で示すように、磁粉供給部16から上記した経路でネジ切り鋼管2の磁化されたネジ部2bに磁粉液を均一に供給する(磁粉供給工程)。これにより、ネジ切り鋼管2のネジ部2bに傷や割れが発生している場合には、その不連続性に伴う漏洩磁場に磁粉が集まることになる。
【0051】
そして、磁粉探傷装置1は、ネジ部2bのうち磁化工程及び磁粉供給工程を経た撮像領域2cに対して矢印a3で示すように紫外線照射部15から紫外線を照射すると共に(紫外線照射工程)、矢印a4で示すように撮像装置14a~14hによりネジ切り鋼管2の軸方向に亘る撮像領域2cの複数の画像を円周方向の所定幅ごとに撮像する(撮像工程)。当該撮像工程において撮像された撮像画像は、画像処理部33により後述する画像処理工程に係る画像処理が施される。
【0052】
ここで、撮像領域2cに対向する水平支持部材13の面には、撮像装置14a~14hの円周方向の画角を制限するように遮蔽板18が形成されている。そして、撮像装置14a~14h及び紫外線照射部15は、互いに遮蔽板18を隔てて配置されている。このため、撮像装置14a~14hの撮像画像は、紫外線照射部15からの紫外線の影響を受けることなく、また、撮像領域2c以外からの入射光を制限することができるため、画質の低下を抑制することができる。
【0053】
図3は、撮像装置14a~14hによる画像取得方法を示す模式図である。より具体的には、図3は、ネジ切り鋼管2のネジ部2bに対向するように軸方向に並設された撮像装置14a~14hのうちの一部(撮像装置14c~14e)について、画角及び互いの相対配置を示している。
【0054】
撮像装置14a~14hのそれぞれは、ネジ切り鋼管2の軸方向に対して角度φ1の画角を有し、このうち管端方向X1から角度φ2の範囲によって撮像される撮像画像の撮像端部領域によりネジ部2bの撮像領域A~Hが連続的に撮像される。例えば、図3においては、撮像装置14c~14eによりそれぞれ撮像される撮像画像のうち、角度φ2の範囲で撮像されるネジ部2bの領域が撮像領域C~Eで表され、これらが軸方向に対して連続している。そして、撮像装置14a~14hは、このような関係が成立するように、予め任意に設定される角度φ2に対して相互の離間間隔が調整される。
【0055】
続いて、撮像装置14a~14hにより撮像された複数の撮像画像が画像処理部33において画像処理される画像処理工程について説明する。図4は、撮像装置14a~14hによる撮像画像から必要な領域を切り出す手順を示す説明図である。図4においては、撮像装置14cにより取得された撮像画像Img-c、撮像装置14dにより取得された撮像画像Img-d、及び撮像装置14eにより取得された撮像画像Img-eを例として、必要な領域の切り出し部分を示している。
【0056】
より具体的には、撮像装置14cにより取得された撮像画像Img-cは、本実施形態においては図3に示したように、軸方向に対して角度φ1の画角によってネジ部2bの撮像領域C~Fを含むように撮像されている。そして、画像処理部33は、撮像画像Img-cのうち撮像領域Cで示される軸方向の撮像端部領域を切り出すことにより、撮像領域Cに対して後述するようにネジ山の側面を斜めの角度から撮像した部分画像を取得することができる。
【0057】
さらに、画像処理部33は、撮像画像Img-cの撮像領域Cのうち、軸方向に垂直な方向に対して、円周方向の微小角度Δθに相当する中心領域を切り出す。すなわち、画像処理部33は、撮像画像Img-cのうち部分画像pImg-cを切り出して探傷用画像として採用する。これにより、画像処理部33は、広角レンズの使用に伴い撮像画像の四隅に特に表れる歪の影響を抑制することができる。
【0058】
同様に、画像処理部33は、撮像装置14a~14hにより撮像された撮像画像Img-a乃至Img-hから部分画像pImg-a乃至pImg-hをそれぞれ切り出し、これらを軸方向に沿って繋ぎ合わせることにより、撮像領域A~Hが撮像された帯状画像bImg-1を生成する。
【0059】
ここで、上記の帯状画像bImg-1は、ネジ切り鋼管2が円周方向に微小角度Δθだけ回転する度に撮像された撮像画像Img-a乃至Img-hから生成されている。このため、ネジ切り鋼管2が円周方向に微小角度Δθだけ回転する度に、同様の手順により帯状画像bImg-2、帯状画像bImg-3、・・・が順次生成されることになる。そして、画像処理部33は、ネジ切り鋼管2が円周方向に一回転する間に得られるこれらの帯状画像bImg-1~帯状画像bImg-nをつなぎ合わせることにより、ネジ切り鋼管2の内周面におけるネジ部2bの疑似的な展開図が得られることになる(画像処理工程)。
【0060】
図5は、撮像装置14a~14hにより撮像された複数の撮像画像を合成した探傷用画像I-X1を模式的に表す図である。ここで、探傷用画像I-X1においては、行方向に円周方向ごとの帯状画像bImg-1~帯状画像bImg-nが接続され、列方向にネジ切り鋼管2の軸方向の撮像領域が接続されている。
【0061】
また、図5に示す探傷用画像I-X1においては、縦の実線がネジ部2bのネジ山の位置を模式的に表し、横の破線が帯状画像bImg-1~帯状画像bImg-nの境界を表している。図5に示す探傷用画像I-X1は、ネジ切り鋼管2の内周面に対する撮像画像のうち管端方向X1寄りの撮像端部領域を切り出して生成されている。このため、撮像領域A~Hのそれぞれにおいては、深さ方向X2から管端方向X1に向かう程、ネジ山の間隔が狭くなるように映ることになる。
【0062】
そして、ネジ切り鋼管2のネジ部2bにおいてクラックCrが生じている場合には、探傷用画像I-X1におけるクラックCrの位置において集まった蛍光磁粉により、当該クラックCrの検出及び大きさの見積もりが可能となる。
【0063】
また、ここでは、撮像画像Img-a乃至Img-hのうち管端方向X1寄りの撮像端部領域を切り出して探傷用画像I-X1を合成する例を説明したが、同様の手順によりネジ切り鋼管2の深さ方向X2寄りの撮像端部領域を切り出して探傷用画像I-X2を併せて合成することにより、ネジ切り鋼管2のネジ部2bを死角なく磁粉探傷することができる。
【0064】
図6は、ネジ切り鋼管2の内周面に対してネジ山が直角でない場合のネジ部2bを示す部分断面図である。より具体的には、図6においては、頂面2d、側面2e、底面2fからなる複数のネジ山により形成されるネジ部2bについて、底面2fと側面2eとの角度Ψが直角未満である場合を示している。
【0065】
ここで、ネジ部2bが図6のような形状である場合には特に、ネジ山の側面2eと底面2fとの境界Pから鋼管の厚み方向にクラックCrが生じやすい。しかしながら、上記説明した磁粉探傷方法によれば、ネジ部2bがこのような形状であっても、撮像装置14a~14hにより撮像される画像から角度φ2に相当する撮像端部領域を切り出して探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2を合成する。これにより、探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2には、ネジ山の頂面2d及び底面2fだけでなく、側面2eとその境界部分の撮像も可能になるため、撮像装置14a~14hからの死角なくクラックCrを検出することができる。
【0066】
以上のように、本発明に係る磁粉探傷装置1は、ネジ切り鋼管2のネジ部2bを磁化すると共に、ネジ部2bに磁粉を供給することにより、ネジ部の欠陥個所に磁粉を集める。その上で、磁粉探傷装置1は、ネジ切り鋼管2の軸方向に並ぶ複数の撮像装置14a~14hにより、撮像画像Img-a乃至Img-hの撮像端部領域がネジ部2bを連続的に撮像するように軸方向に重複的にネジ部2bを撮像する。そして、磁粉探傷装置1は、それぞれの撮像画像Img-a乃至Img-hにおける軸方向の撮像端部領域を繋ぎ合わせて探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2を生成する。このとき、探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2は、ネジ部2bの撮像領域A~Hに対して斜めの角度から撮像された部分画像pImg-a乃至pImg-hを繋ぎ合わせることにより形成されているため、ネジ山の頂面2d及び底面2fのみならず側面2eを含めて撮像されていることになる。したがって、本発明に係る磁粉探傷装置1によれば、ネジ部2bの形状及び検査部分によらずネジ切り鋼管2の磁粉探傷を行うことができる。
【0067】
また、本発明に係る磁粉探傷装置1は、図4に示したように、撮像画像Img-a乃至Img-hにおける軸方向に垂直な方向に対する中心領域を部分画像pImg-a乃至pImg-hとして切り出し、これにより探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2を生成している。したがって、本発明に係る磁粉探傷装置1によれば、歪の影響が抑制された探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2を生成することができるため、磁粉探傷の検査精度を向上させることができる。
【0068】
更に、本発明に係る磁粉探傷装置1は、ネジ切り鋼管2を円周方向に回転させつつ、円周方向ごとに撮像される撮像画像Img-a乃至Img-hに基づいて探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2を生成する。したがって、本発明に係る磁粉探傷装置1によれば、複数の撮像装置14a~14hによるブレの影響を低減してネジ切り鋼管2の内周面の全体を探傷することができる。
【0069】
そして、本発明に係る磁粉探傷装置1は、磁粉供給部16から蛍光磁粉を供給しつつ、ネジ部2bに紫外線を照射する紫外線照射部15を備えることにより、ネジ切り鋼管に供給される蛍光磁粉を紫外線で発光させて、より微小な欠陥部を検出しやすくすることができる。
【0070】
このとき、本発明に係る磁粉探傷装置1は、撮像装置14a~14hと紫外線照射部15とを互いに遮蔽板18を隔てて配置しているため、撮像画像に対する紫外線照射部15からの紫外線の影響を制限することができ、画質の低下を抑制することができる。
【0071】
<変形例>
続いて、本発明の変形例について説明する。変形例に係る磁粉探傷装置3は、上記の実施形態における磁粉探傷装置1において、水平支持部材13、複数の撮像装置14a~14h、紫外線照射部15、及び磁粉供給部16に相当する構成要素がネジ切り鋼管2の外側においても設けられている点が、第1実施形態とは異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
図7は、変形例に係る磁粉探傷装置3にセットされたネジ切り鋼管2の断面を示す断面図である。より具体的には、図7は、水平支持部材13の先端部を管端方向X1に向かって見た場合のネジ切り鋼管2の断面図である。
【0073】
変形例に係る磁粉探傷装置3は、水平支持部材13、複数の撮像装置14a~14h、及び紫外線照射部15からなるユニットが、ネジ切り鋼管2の内部のみならず、外周面に対向するように設けられている。また、変形例に係る磁粉探傷装置3の磁粉供給部16´は、蛍光磁粉を含む磁粉液をネジ切り鋼管2の外周面における広い範囲に亘って均一に散布するよう構成されている。
【0074】
このように、変形例に係る磁粉探傷装置3は、ネジ切り鋼管2の内周面及び外周面に対して上記した磁粉供給工程及び前記撮像工程を同時に行うことができる。このため、ネジ切り鋼管2が内周面及び外周面の両方、又は外周面のみにネジ部2bが形成されている場合であってもネジ切り鋼管2に対する磁粉探傷を行うことができる。このとき、磁粉探傷装置3は、ネジ切り鋼管2の内周面についての上記した探傷用画像I-X1及び探傷用画像I-X2を生成すると共に、同様の画像処理工程によりネジ切り鋼管2の外周面についての探傷用画像O-X1及び探傷用画像O-X2を生成することになる。尚、変形例に係る磁粉探傷装置3の使用においては、蛍光磁粉及び紫外線照射部15を採用する場合には、暗室において磁粉探傷が行われるのが好適である。
【0075】
以上で本発明に係る実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば上記の実施形態では、ネジ切り鋼管2に蛍光磁粉を供給して紫外線を照射することにより磁粉探傷を行う形態を例示したが、蛍光でない磁粉を用いてもよい。この場合、紫外線照射部15に代えて、可視光を照射する照明装置を導入すればよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、管端方向X1寄りの撮像端部領域から探傷用画像I-X1を合成すると共に、深さ方向X2寄りの撮像端部領域を合成し、ネジ切り鋼管2の内周面におけるネジ部2bの全体に磁粉探傷を行う例を示したが、検査対象の部分及び撮像方向が特定されている場合には、その部分のみに磁粉探傷を行ってもよい。
【0077】
また、上記の実施形態におけるネジ切り鋼管2は、図6に示すように、外周面とネジ山の頂面2dとの距離(厚み)が全てのネジ山に亘り一定であるものとして説明したが、管端方向X1に向けて当該距離が短くなるようにネジ部2bが傾斜していてもよい。この場合には、複数の撮像装置14a~14hを支持する水平支持部材13は、ネジ部2bの傾斜面と並行になるように配置されることが好ましい。これにより、それぞれの撮像装置14a~14hは、ネジ部2bの軸方向の位置によらず、被写体との距離を一定に保つことができる。或いは、軸方向に平行に配置された水平支持部材13において、複数の撮像装置14a~14hをネジ部2bの傾斜に沿って階段状に設けることにより、撮像装置14a~14hと被写体との距離を一定に保つこともできる。
【符号の説明】
【0078】
1 磁粉探傷装置
2 ネジ切り鋼管
2b ネジ部
14a~14h 撮像装置
16 磁粉供給部
20 磁化部
33 画像処理部
Img-a~Img-h 撮像画像
pImg-a~pImg-h 部分画像
bImg-1~bImg-n 帯状画像
I-X1、I-X2 探傷用画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7