(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】変形爪矯正具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/11 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
A61F5/11
(21)【出願番号】P 2019519450
(86)(22)【出願日】2017-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2017040988
(87)【国際公開番号】W WO2018216244
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2017104167
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月8日及び5月17日にマルホ株式会社が慶應義塾大学医学部皮膚科に試作品▲2▼を提供したことにより公開された
(73)【特許権者】
【識別番号】591206108
【氏名又は名称】マルホ発條工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000113908
【氏名又は名称】マルホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】人見 泰行
(72)【発明者】
【氏名】滝野 創紀
(72)【発明者】
【氏名】中橋 義弘
(72)【発明者】
【氏名】本多 宣子
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0120012(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102013013011(DE,A1)
【文献】特表2010-501314(JP,A)
【文献】特開平08-313820(JP,A)
【文献】特開2014-113322(JP,A)
【文献】国際公開第2008/039028(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202012007619(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形爪を矯正するための変形爪矯正具であって、
前記変形爪の幅方向一端に取り付け可能に構成された第1フックと、
前記変形爪の幅方向他端に取り付け可能に構成された第2フックと、
一端側が前記第1フックに接合され、他端側が前記第2フックに接合されたパイプ形状の可撓性部材と、
前記可撓性部材に挿入された超弾性特性を有するワイヤー部材と、
を備え、
前記可撓性部材は、
可撓性および伸縮性を有するコイルであり、当該コイル自身が伸縮することで前記第1フックと前記第2フックとの間隔を変更でき
、
前記ワイヤー部材は、直線形状であり、湾曲すると当該直線形状に回復しようとし、
前記第1フックは、第1フック本体部と、前記第1フック本体部の上面に形成された第1拡張部と、を有し、
前記第1拡張部は、前記上面から起立した第1面を有し、
前記第2フックは、第2フック本体部と、前記第2フック本体部の上面に形成された第2拡張部と、を有し、
前記第2拡張部は、前記上面から起立した第2面を有し、
前記コイルは、前記一端側が前記第1面に対向し、かつ前記他端側が前記第2面に対向するように、前記一端側の下部が前記第1フック本体部の前記上面に接合され、かつ前記他端側の下部が前記第2フック本体部の前記上面に接合される
ことを特徴とする変形爪矯正具。
【請求項2】
前記
コイルは、前記一端側の外面が溶接されてなる第1溶接部と、前記他端側の外面が溶接されてなる第2溶接部と、前記第1溶接部と前記第2溶接部の間の中間部と、を備え
、
前記第1溶接部および前記第2溶接部は、前記中間部よりも剛性が大き
い
ことを特徴とする請求項
1に記載の変形爪矯正具。
【請求項3】
前記第1フックおよび前記第2フックは、先端側にかえし部を備える
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の変形爪矯正具。
【請求項4】
前記第1拡張部は、前記第1面に形成された、前記ワイヤー部材の一端が収容される第1溝を有し、
前記第2拡張部は、前記第2面に形成された、前記ワイヤー部材の他端が収容される第2溝を有する
ことを特徴とする請求項
1~3のいずれか一項に記載の変形爪矯正具。
【請求項5】
前記第1フック本体部は、湾曲部分の内面側に第1凹部を有し、
前記第2フック本体部は、湾曲部分の内面側に第2凹部を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の変形爪矯正具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き爪や陥入爪等の変形爪を矯正するための変形爪矯正具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変形爪矯正具としては、例えば、L字状のクロスバーが溶接された2枚の弾性プレートと、これら2枚の弾性プレートを結束する糸と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この変形爪矯正具は、変形爪に装着されると2枚の弾性プレートが変形爪に沿って湾曲した状態になり、2枚の弾性プレートに復元力(元の形状に戻ろうとする力)が発生する。この復元力を長期にわたって維持することで、変形爪を矯正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の変形爪矯正具の装着方法は、まず、一方の弾性プレートのフックを変形爪の幅方向一端に取り付け、他方の弾性プレートのフックを変形爪の幅方向他端に取り付ける。次いで、一方の弾性プレートを他方の弾性プレートのクロスバーの下にはめ込み、かつ他方の弾性プレートを一方の弾性プレートのクロスバーの下にはめ込む。最後に、各クロスバーに糸をかけて2枚の弾性プレートを結束する。このように、上記従来の変形爪矯正具は、装着作業が複雑で手間がかかる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、容易に装着することが可能な変形爪矯正具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る変形爪矯正具は、
変形爪を矯正するための変形爪矯正具であって、
前記変形爪の幅方向一端に取り付け可能に構成された第1フックと、
前記変形爪の幅方向他端に取り付け可能に構成された第2フックと、
一端側が前記第1フックに接合され、他端側が前記第2フックに接合されたパイプ形状の可撓性部材と、
前記可撓性部材に挿入された超弾性特性を有するワイヤー部材と、
を備え、
前記可撓性部材は、前記第1フックと前記第2フックとの間隔を変更できるように伸縮可能に構成されたことを特徴とする。
【0008】
上記変形爪矯正具では、
前記可撓性部材は、前記一端側に前記第1フックの末端が挿入された状態で前記第1フックに接合され、かつ前記他端側に前記第2フックの末端が挿入された状態で前記第2フックに接合されていてもよい。
【0009】
上記変形爪矯正具では、
前記第1フックが、前記末端が開口した中空形状であり、
前記第2フックが、前記末端が開口した中空形状である場合、
前記ワイヤー部材は、一端が前記第1フック内にスライド可能に挿入され、かつ他端が前記第2フック内にスライド可能に挿入されていることが好ましい。
【0010】
上記変形爪矯正具では、
前記可撓性部材が、前記一端側の外面が溶接されてなる第1溶接部と、前記他端側の外面が溶接されてなる第2溶接部と、前記第1溶接部と前記第2溶接部の間の中間部と、を備えたコイルである場合、
前記第1溶接部および前記第2溶接部は、前記中間部よりも剛性が大きく、
前記ワイヤー部材は、一端が前記第1溶接部の領域に位置し、他端が前記第2溶接部の領域に位置することが好ましい。
【0011】
上記変形爪矯正具では、
前記可撓性部材が、前記一端側の第1剛体部と、前記他端側の第2剛体部と、螺旋状の切り込みが形成された中間部と、を備えた螺旋パイプである場合、
前記第1剛体部および前記第2剛体部は、前記中間部よりも剛性が大きく、
前記ワイヤー部材は、一端が前記第1剛体部の領域に位置し、他端が前記第2剛体部の領域に位置することが好ましい。
【0012】
上記変形爪矯正具では、
前記第1フックおよび前記第2フックは、先端側にかえし部を備えていてもよい。
【0013】
上記変形爪矯正具では、
前記ワイヤー部材は、円弧形状であり、変形すると当該円弧形状に回復しようとしてもよい。
【0014】
上記変形爪矯正具では、
前記可撓性部材は、前記一端側および/または前記他端側から前記ワイヤー部材を出し入れできるように、前記一端側の外面が前記第1フックに接合され、かつ前記他端側の外面が前記第2フックに接合されていてもよい。
【0015】
上記変形爪矯正具では、
前記第1フックは、第1フック本体部と、前記第1フック本体部の上面に形成された第1拡張部と、を有し、
前記第1拡張部は、前記上面から起立した第1面を有し、
前記第2フックは、第2フック本体部と、前記第2フック本体部の上面に形成された第2拡張部と、を有し、
前記第2拡張部は、前記上面から起立した第2面を有し、
前記可撓性部材は、前記一端側の開口が前記第1面に対向し、かつ前記他端側の開口が前記第2面に対向するように、前記一端側の下部が前記第1フック本体部の前記上面に接合され、かつ前記他端側の下部が前記第2フック本体部の前記上面に接合されることが好ましい。
【0016】
上記変形爪矯正具では、
前記ワイヤー部材は、前記可撓性部材の自然長よりも長く、
前記第1拡張部は、前記第1面に形成された、前記ワイヤー部材の一端が収容される第1溝を有し、
前記第2拡張部は、前記第2面に形成された、前記ワイヤー部材の他端が収容される第2溝を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易に装着することが可能な変形爪矯正具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)第1実施形態に係る変形爪矯正具の非装着状態を示す図である。(B)第1実施形態に係る変形爪矯正具の装着状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図4】第3実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図5】第4実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図6】第5実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図7】第6実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図8】第7実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図9】第8実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図10】第9実施形態に係る変形爪矯正具の構造を示す図である。
【
図11】第9実施形態に係る変形爪矯正具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る変形爪矯正具の各実施形態について説明する。本発明に係る変形爪矯正具は、巻き爪や陥入爪等の変形爪(特に、足の変形爪)を矯正するためのものである。
【0020】
[第1実施形態]
図1(A)に、本発明の第1実施形態に係る変形爪矯正具1Aの正面図を示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Aは、第1フック2と、第2フック3と、本発明の「可撓性部材」に相当するコイル4と、を備える。
【0021】
図1(B)に、変形爪100に装着された変形爪矯正具1Aの正面図を示す。
図1(B)は、足の指の変形爪100を示しているが、指は省略している。変形爪矯正具1Aは、変形爪100に装着された状態(以下、装着状態)において、変形爪100に沿って湾曲し、矯正力を発揮する。
【0022】
第1フック2は、
図1(B)に示すように、変形爪100の幅方向一端に取り付け可能に構成されている。具体的には、第1フック2は、先端側を変形爪100の幅方向一端の裏側に引っ掛けることができるように、先端側がU字形状に湾曲している。第1フック2は、円柱形状のステンレス鋼(例えば、SUS304)からなる。
【0023】
第2フック3は、
図1(B)に示すように、変形爪100の幅方向他端に取り付け可能に構成されている。具体的には、第2フック3は、先端側を変形爪100の幅方向他端の裏側に引っ掛けることができるように、先端側がU字形状に湾曲している。第2フック3は、円柱形状のステンレス鋼(例えば、SUS304)からなる。
【0024】
図2に、変形爪矯正具1Aの構造を示す。
図2は、第1フック2側において内部構造(断面図)を示し、第2フック3側において外部構造(正面図)を示している。同図に示すように、変形爪矯正具1Aは、コイル4にスライド可能に挿入された円柱形状のワイヤー部材5を備える。このワイヤー部材5が、矯正力を発揮する。
【0025】
コイル4は、一端側に第1フック2の末端が挿入された状態で第1フック2に接合され、かつ他端側に第2フック3の末端が挿入された状態で第2フック3に接合されている。本実施形態では、レーザ溶接によって、コイル4の一端の内面と第1フック2の末端側の外面とが接合されている(
図2の溶接部6参照)。同様に、レーザ溶接によって、コイル4の他端の内面と第2フック3の末端側の外面とが接合されている(図示略)。コイル4は、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304)からなる。
【0026】
コイル4は、可撓性および伸縮性を有する。コイル4は、一端から他端までの長さを変更できるように、言い換えれば、第1フック2と第2フック3との間隔を変更できるように、伸縮可能に構成されている。例えば、第1フック2が変形爪100の幅方向一端に取り付けられた状態で、第2フック3が引っ張られると、コイル4が伸びて第1フック2と第2フック3との間隔が大きくなる。これにより、変形爪100の幅方向他端への第2フック3の取り付けは、容易になる。本実施形態では、自然長17[mm]のコイル4が使用される。
【0027】
ワイヤー部材5は、超弾性特性を有し、変形爪100を矯正する役割を果たす。超弾性特性とは、例えば、負荷時に応力誘起マルテンサイト変態によって生じた変形が、除荷時の逆変態によって回復する特性をいう。本実施形態では、ワイヤー部材5は、直線形状であり、装着状態において湾曲すると、当該直線形状に回復しようとする。変形爪矯正具1Aは、この超弾性特性を利用して、変形爪100を矯正する。ワイヤー部材5は、例えば、Ni-Ti合金からなる。
【0028】
結局、本実施形態に係る変形爪矯正具1Aは、第1フック2と第2フック3との間隔を変更できるように伸縮可能に構成されたコイル4を備えているので、コイル4の伸縮性を利用することで、変形爪100への装着が容易になる。
【0029】
[第2実施形態]
図3に、本発明の第2実施形態に係る変形爪矯正具1Bを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Bは、第1フック12と、第2フック13と、コイル4と、ワイヤー部材5と、を備える。コイル4およびワイヤー部材5は、第1実施形態のものと同一であるため、ここでは説明を省略する。なお、
図3は、第1フック12側において内部構造(断面図)を示し、第2フック13側において外部構造(正面図)を示している。
【0030】
第1フック12は、変形爪100の幅方向一端に取り付け可能に構成されている。具体的には、第1フック12は、先端側を変形爪100の幅方向一端の裏側に引っ掛けることができるように、先端側がU字形状に湾曲している。第1フック12は、先端および末端が開口した円管形状のステンレス鋼(例えば、SUS304)からなる。第1フック12の末端側には、ワイヤー部材5の一端がスライド可能に挿入されている。
【0031】
第2フック13は、変形爪100の幅方向他端に取り付け可能に構成されている。具体的には、第2フック13は、先端側を変形爪100の幅方向他端の裏側に引っ掛けることができるように、先端側がU字形状に湾曲している。第2フック13は、先端および末端が開口した円管形状のステンレス鋼(例えば、SUS304)からなる。第2フック13の末端側には、ワイヤー部材5の他端がスライド可能に挿入されている。
【0032】
装着状態において、ワイヤー部材5は元の直線形状に回復しようとするため、ワイヤー部材5の一端および他端には上方向の反発力が生じる。本実施形態では、ワイヤー部材5の一端および他端がそれぞれ第1フック12および第2フック13に挿入されているため、第1フック12および第2フック13が、上記反発力を受ける。したがって、本実施形態に係る変形爪矯正具1Bによれば、上記反発力によりコイル4が屈曲してしまうのを防ぐことができる。
【0033】
また、本実施形態に係る変形爪矯正具1Bによれば、第1実施形態と同様に、コイル4の伸縮性を利用することで、変形爪100への装着が容易になる。
【0034】
[第3実施形態]
図4に、本発明の第3実施形態に係る変形爪矯正具1Cを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Cは、第1フック2と、第2フック3と、コイル14と、ワイヤー部材5と、を備える。第1フック2、第2フック3およびワイヤー部材5は、第1実施形態のものと同一であるため、ここでは説明を省略する。なお、
図4は、第1フック2側において内部構造(断面図)を示し、第2フック3側において外部構造(正面図)を示している。
【0035】
コイル14は、一端側に第1フック2の末端が挿入された状態で第1フック2に接合され、かつ他端側に第2フック3の末端が挿入された状態で第2フック3に接合されている。本実施形態では、レーザ溶接によって、コイル14の一端の内面と第1フック2の末端側の外面とが接合されている(
図4の溶接部6参照)。同様に、レーザ溶接によって、コイル14の他端の内面と第2フック3の末端側の外面とが接合されている(図示略)。コイル14は、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304)からなる。
【0036】
コイル14は、一端側の第1溶接部14aと、他端側の第2溶接部14bと、中間部14cとを含む。第1溶接部14aは、レーザ溶接によって、外面の上下2箇所が溶接されている(
図4の溶接部7参照)。第2溶接部14bは、レーザ溶接によって、外面の上下2箇所が溶接されている(
図4の溶接部7参照)。第1溶接部14aおよび第2溶接部14bは、中間部14cよりも剛性が大きく、可撓性および伸縮性を有しない。
【0037】
ワイヤー部材5は、コイル14にスライド可能に挿入されているが、常に、一端が第1溶接部14aの領域に位置し、他端が第2溶接部14bの領域に位置する。このため、第1溶接部14aおよび第2溶接部14bが、装着状態においてワイヤー部材5の一端および他端に生じる反発力を受ける。したがって、本実施形態に係る変形爪矯正具1Cによれば、上記反発力によりコイル14が屈曲してしまうのを防ぐことができる。
【0038】
コイル14の中間部14cは、可撓性および伸縮性を有する。すなわち、中間部14cは、第1フック2と第2フック3との間隔を変更できるように伸縮可能に構成されている。例えば、第1フック2が変形爪100の幅方向一端に取り付けられた状態で、第2フック3が引っ張られると、中間部14cが伸びて第1フック2と第2フック3との間隔が大きくなる。これにより、変形爪100の幅方向他端への第2フック3の取り付けは、容易になる。結局、本実施形態に係る変形爪矯正具1Cによれば、コイル14の中間部14cの伸縮性を利用することで、変形爪100への装着が容易になる。
【0039】
[第4実施形態]
図5に、本発明の第4実施形態に係る変形爪矯正具1Dを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Dは、第1フック2と、第2フック3と、螺旋パイプ24と、ワイヤー部材5と、を備える。第1フック2、第2フック3およびワイヤー部材5は、第1実施形態のものと同一であるため、ここでは説明を省略する。なお、
図5は、第1フック2側において内部構造(断面図)を示し、第2フック3側において外部構造(正面図)を示している。
【0040】
螺旋パイプ24は、一端側に第1フック2の末端が挿入された状態で第1フック2に接合され、かつ他端側に第2フック3の末端が挿入された状態で第2フック3に接合されている。本実施形態では、レーザ溶接によって、螺旋パイプ24の一端の内面と第1フック2の末端側の外面とが接合されている(
図5の溶接部6参照)。同様に、レーザ溶接によって、螺旋パイプ24の他端の内面と第2フック3の末端側の外面とが接合されている(図示略)。螺旋パイプ24は、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304)からなる。
【0041】
螺旋パイプ24は、一端側の第1剛体部24aと、他端側の第2剛体部24bと、中間部24cとを含む。螺旋状の切り込みは、中間部24cにのみ形成されている。第1剛体部24aおよび第2剛体部24bは、中間部24cよりも剛性が大きく、可撓性および伸縮性を有しない。
【0042】
ワイヤー部材5は、螺旋パイプ24にスライド可能に挿入されているが、常に、一端が第1剛体部24aの領域に位置し、他端が第2剛体部24bの領域に位置する。このため、第1剛体部24aおよび第2剛体部24bが、装着状態においてワイヤー部材5の一端および他端に生じる反発力を受ける。したがって、本実施形態に係る変形爪矯正具1Dによれば、上記反発力により螺旋パイプ24が屈曲してしまうのを防ぐことができる。
【0043】
螺旋パイプ24の中間部24cは、可撓性および伸縮性を有する。すなわち、中間部24cは、螺旋状の切り込みにより伸縮可能に構成され、第1フック2と第2フック3との間隔を変更できる。したがって、本実施形態に係る変形爪矯正具1Dによれば、螺旋パイプ24の中間部24cの伸縮性を利用することで、変形爪100への装着が容易になる。
【0044】
[第5実施形態]
図6に、本発明の第5実施形態に係る変形爪矯正具1Eを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Eは、第1フック22と、第2フック23と、コイル4と、ワイヤー部材5と、を備える。コイル4およびワイヤー部材5は、第1実施形態のものと同一であるため、ここでは説明を省略する。なお、
図6は、第1フック22側において内部構造(断面図)を示し、第2フック23側において外部構造(正面図)を示している。
【0045】
第1フック22は、先端側にかえし部22aを備える点を除いて、第1実施形態の第1フック2と共通している。かえし部22aは、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)のかえしを含む。第1フック22は、かえし部22aを備えることで、変形爪100への取り付けの確実性が高まる。
【0046】
第2フック23は、先端側にかえし部23aを備える点を除いて、第1実施形態の第2フック3と共通している。かえし部23aは、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)のかえしを含む。第2フック23は、かえし部23aを備えることで、変形爪100への取り付けの確実性が高まる。
【0047】
結局、本実施形態に係る変形爪矯正具1Eは、かえし部22a、23aを備えることで、変形爪100への装着の確実性が高まる。なお、かえし部22a、23aは、他の全ての実施形態に適用することができる。
【0048】
[第6実施形態]
図7に、本発明の第6実施形態に係る変形爪矯正具1Fを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Fは、第1フック2と、第2フック3と、コイル4と、ワイヤー部材15と、を備える。第1フック2、第2フック3およびコイル4は、第1実施形態のものと同一であるため、ここでは説明を省略する。なお、
図7は、第1フック2側において内部構造(断面図)を示し、第2フック3側において外部構造(正面図)を示している。
【0049】
ワイヤー部材15は、例えば、円柱形状のNi-Ti合金からなり、超弾性特性を有する。本実施形態では、人間の正常な爪が円弧形状であることを考慮して、ワイヤー部材15は、円弧形状に形成されている。ワイヤー部材15は、装着状態において湾曲すると、当該円弧形状に回復しようとする。このため、ワイヤー部材15は、直線形状に回復しようとするワイヤー部材5と比較すると、矯正力が小さくなる。したがって、本実施形態に係る変形爪矯正具1Fによれば、変形爪100が過度に矯正されること(例えば、爪の反り返り)を防ぐことができる。なお、ワイヤー部材15は、他の全ての実施形態に適用することができる。
【0050】
コイル4は、可撓性を有するため、ワイヤー部材15が挿入されると円弧形状になる。コイル4は、円弧形状になっても伸縮性は失われない。したがって、本実施形態に係る変形爪矯正具1Fによれば、コイル4の伸縮性を利用することで、変形爪100への装着が容易になる。
【0051】
[第7実施形態]
図8に、本発明の第7実施形態に係る変形爪矯正具1Gを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Gは、第1フック2と、第2フック3と、コイル4と、ワイヤー部材5と、を備える。
図8は、第1フック2側において内部構造(断面図)を示し、第2フック3側において外部構造(正面図)を示している。
【0052】
本実施形態に係る変形爪矯正具1Gは、コイル4と第1フック2および第2フック3との接合関係を除き、第1実施形態と同一の関係である。本実施形態では、レーザ溶接によって、コイル4の一端の外面と第1フック2の末端側の外面とが接合されている(
図8の溶接部16参照)。同様に、レーザ溶接によって、コイル4の他端の外面と第2フック3の末端側の外面とが接合されている(図示略)。
【0053】
装着状態において、コイル4は、第1フック2および第2フック3の上方に位置する。また、コイル4の一端および他端の開口は開放状態となる。このため、本実施形態に係る変形爪矯正具1Gでは、装着状態において、コイル4の一端側および他端側からのワイヤー部材5の出し入れが可能になる。
【0054】
例えば、外径の小さいワイヤー部材5がコイル4に挿入されることで、矯正力が小さくなる一方、外径の大きいワイヤー部材5がコイル4に挿入されることで、矯正力が大きくなる。すなわち、本実施形態に係る変形爪矯正具1Gによれば、装着状態において矯正力の調整が可能になる。なお、この構成(コイル4と第1フック2および第2フック3との接合関係)は、他の全ての実施形態に適用することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る変形爪矯正具1Gによれば、第1実施形態と同様に、コイル4の伸縮性を利用することで、変形爪100への装着が容易になる。
【0056】
[第8実施形態]
図9に、本発明の第8実施形態に係る変形爪矯正具1Hを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Hは、第1フック32と、第2フック33と、コイル34と、ワイヤー部材35と、を備える。
図9は、第1フック32側において内部構造(断面図)を示し、第2フック33側において外部構造(正面図)を示している。
【0057】
第1フック32は、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304)からなり、コイル34の一端側に設けられる。第1フック32は、外周のエッジ部分が面取りされている。第1フック32は、断面略U字状に湾曲した板状のフック本体部32aと、フック本体部32aの上面側に形成された拡張部32bと、で構成される。第1フック32の幅は、コイル34の外径よりもわずかに大きい。
【0058】
フック本体部32aは、変形爪100の幅方向一端の表側に位置する上側部分の下面と、変形爪100の幅方向一端の裏側に位置する下側部分の上面に、複数(本実施形態では、上側部分に4つ、下側部分に2つ)のかえし32cを含む。かえし32cは、幅方向に延びるように形成されている。かえし32cは、
図6のかえし部22a、23aと同様に、変形爪100への装着の確実性を高める。なお、かえし32cの数および形状は、適宜変更できる。
【0059】
フック本体部32aの上側部分は、コイル34の一端から離れるほど(コイル34の中間部分に近づくほど)、コイル34の下部との隙間が大きくなる。また、フック本体部32aの湾曲部分は、内面の中央部分に幅方向に延びる凹部32dを有する。
【0060】
拡張部32bは、正面からみて略三角形状に形成されており、フック本体部32aの上面から起立した第1面(本実施形態では、垂直に起立した垂直面)を有する。第1面は、コイル34の一端側からワイヤー部材35が抜け落ちないように、コイル34の一端側の開口に対向している。
【0061】
第2フック33は、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304)からなり、コイル34の他端側に設けられる。第2フック33は、外周のエッジ部分が面取りされている。第2フック33は、第1フック32と同様に、断面略U字状に湾曲した板状のフック本体部33aと、フック本体部33aの上面側に形成された拡張部33bと、で構成される。第2フック33の幅は、第1フック32の幅と同じである。
【0062】
フック本体部33aは、変形爪100の幅方向他端の表側に位置する上側部分の下面と、変形爪100の幅方向他端の裏側に位置する下側部分の上面に、複数(本実施形態では、上側部分に4つ、下側部分に2つ)のかえし33cを含む。かえし33cは、幅方向に延びるように形成されている。かえし33cは、
図6のかえし部22a、23aと同様に、変形爪100への装着の確実性を高める。なお、かえし33cの数および形状は、適宜変更できる。
【0063】
フック本体部33aの上側部分は、コイル34の他端から離れるほど(コイル34の中間部分に近づくほど)、コイル34の下部との隙間が大きくなる。また、フック本体部33aの湾曲部分は、内面の中央部分に幅方向に延びる凹部33dを有する。
【0064】
拡張部33bは、正面からみて略三角形状に形成されており、フック本体部33aの上面から起立した第2面(本実施形態では、垂直に起立した垂直面)を有する。第2面は、コイル34の他端側からワイヤー部材35が抜け落ちないように、コイル34の他端側の開口に対向している。
【0065】
コイル34は、ステンレス鋼(例えば、SUS304)またはコバルト基合金からなる。コイル34は、ワイヤー部材35を内包した状態で、一端側の下部が第1フック32のフック本体部32aの上面に接合され、他端側の下部が第2フック33のフック本体部33aの上面に接合されている。本実施形態では、所定の金属を供給しながらレーザ溶接を行うレーザ肉盛溶接によって、コイル34と第1フック32および第2フック33とを接合している(
図9の肉盛溶接部8参照)。
【0066】
コイル34は、一端側の上部および他端側の上部にも、レーザ肉盛溶接によって肉盛溶接部8が形成されている。コイル34の肉盛溶接部8が形成されている部分(一端部および他端部)は、可撓性および伸縮性を有しないが、コイル34の肉盛溶接部8が形成されていない部分(中間部分)は、可撓性および伸縮性を有する。コイル34の一端部および他端部は、コイル34の中間部分よりも剛性が大きく、厚みも大きい。
【0067】
ワイヤー部材35は、超弾性特性を有し、変形爪100を矯正する役割を果たす。ワイヤー部材35は、直線形状であり、装着状態において湾曲すると、当該直線形状に回復しようとする。変形爪矯正具1Hは、この超弾性特性を利用して、変形爪100を矯正する。ワイヤー部材35は、例えば、Ni-Ti合金からなる。ワイヤー部材35の長さは、コイル34の自然長(本実施形態では、18[mm])と同じであるが、コイル34の自然長より短くてもよい。
【0068】
[第9実施形態]
図10および
図11に、本発明の第9実施形態に係る変形爪矯正具1Iを示す。同図に示すように、変形爪矯正具1Iは、第1フック42と、第2フック43と、コイル44と、ワイヤー部材45と、を備える。
図10は、第1フック42側において内部構造(断面図)を示し、第2フック43側において外部構造(正面図)を示している。
【0069】
コイル44およびワイヤー部材45は、ワイヤー部材45の長さがコイル44の自然長よりも長い点を除き、第8実施形態のコイル34およびワイヤー部材35と同一である。また、コイル44は、第8実施形態と同様に、第1フック42および第2フック43にレーザ肉盛溶接によって接合されている。
図10および
図11では、コイル44の一端部および他端部に形成された肉盛溶接部8を省略している。
【0070】
第1フック42は、断面略U字状に湾曲した板状のフック本体部42aと、フック本体部42aの上面側に形成された拡張部42bと、で構成される。第1フック42は、外周のエッジ部分が面取りされている。フック本体部42aは、第8実施形態のフック本体部32aと同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
拡張部42bは、コイル44の一端側の開口に対向している面、すなわちフック本体部42aの上面から起立した第1面を有する。第1面には、ワイヤー部材45の一端が収容される第1溝42eが形成されている。第1溝42eは、装着状態においてワイヤー部材45の一端に生じる反発力を受ける。したがって、上記反発力によりコイル44が傷ついたり、屈曲したりしてしまうのを防ぐことができる。第1溝42eは、本実施形態では幅方向全体に形成されているが、幅方向の一部にのみ形成されていてもよい。
【0072】
第2フック43は、断面略U字状に湾曲した板状のフック本体部43aと、フック本体部43aの上面側に形成された拡張部43bと、で構成される。第2フック43は、外周のエッジ部分が面取りされている。フック本体部43aは、第8実施形態のフック本体部33aと同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0073】
拡張部43bは、コイル44の他端側の開口に対向している面、すなわちフック本体部43aの上面から起立した第2面を有する。第2面には、ワイヤー部材45の他端が収容される第2溝43eが形成されている。第2溝43eは、装着状態においてワイヤー部材45の他端に生じる反発力を受ける。したがって、上記反発力によりコイル44が傷ついたり、屈曲したりしてしまうのを防ぐことができる。第2溝43eは、本実施形態では幅方向全体に形成されているが、幅方向の一部にのみ形成されていてもよい。
【0074】
以上、本発明に係る変形爪矯正具の各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。
【0075】
本発明の第1フックは、変形爪100の幅方向一端に取り付け可能に構成されるのであれば、その形状、材料等を適宜変更することができる。同様に、本発明の第2フックは、変形爪100の幅方向他端に取り付け可能に構成されるのであれば、その形状、材料等を適宜変更することができる。
【0076】
本発明の可撓性部材は、本発明のワイヤー部材を挿入することができるパイプ形状で、一端側が本発明の第1フックに接合され、かつ他端側が本発明の第2フックに接合された状態で、伸縮して第1フックと第2フックとの間隔を変更できるのであれば、コイルや螺旋パイプ以外のものを使用してもよい。また、コイルの材質は、ステンレス鋼(例えば、SUS304)またはコバルト基合金が好ましいが、可撓性および伸縮性を有するのであれば適宜変更できる。
【0077】
可撓性部材と第1フックおよび第2フックとの接合は、レーザ溶接以外の方法を適用できる。例えば、圧着、ロー付接着または樹脂接着剤等の方法を適用できる。
【0078】
本発明のワイヤー部材は、超弾性特性を有し、可撓性部材に挿入できるものであれば、その形状、材料等を適宜変更することができる。例えば、Ni-Ti-Co合金またはNi-Ti-Fe合金、等の超弾性金属が使用されてもよい。また、高強度、高靱性のエンジニアリングプラスチックが使用されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1A~1I 変形爪矯正具
2、12、22、32、42 第1フック
3、13、23、33、43 第2フック
4、14、34、44 コイル
24 螺旋パイプ
5、15、35、45 ワイヤー部材
6、7、16 溶接部
8 肉盛溶接部
32a、33a、42a、43a フック本体部
32b、33b、42b、43b 拡張部
32c、33c、42c、43c かえし
32d、33d、42d、43d 凹部
42e 第1溝
43e 第2溝
100 変形爪