(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】光硬化型三次元印刷方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20220831BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20220831BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20220831BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220831BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220831BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220831BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/124
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019539227
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2018076797
(87)【国際公開番号】W WO2018133883
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】516165859
【氏名又は名称】プリズムラボ チャイナ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホウ フェン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-100937(JP,A)
【文献】特開平10-138349(JP,A)
【文献】特開平03-193433(JP,A)
【文献】特開平08-034063(JP,A)
【文献】米国特許第05198159(US,A)
【文献】特開2002-086575(JP,A)
【文献】特開2007-298990(JP,A)
【文献】特開2003-195511(JP,A)
【文献】特表2007-536131(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105666885(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103213282(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104802400(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02241430(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型三次元印刷方法であって、
印刷対象の三次元データモデルを取得するステップと、
前記三次元データモデルを複数層に分割するステップと、
前記三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップと、
前記三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、寸法が一定の閾値に達した底部ケース領域と前記底部ケース領域を支持するための1つ又は複数の支持部の前記層における島型領域を識別するステップと、
各島型領域と前記底部ケース領域との間に分割領域を画定するステップと、
各層の露出領域に対しては層毎にそれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップと、
第1期間に各島型領域と前記底部ケース領域を露光し、第2期間に各分割領域を露光するステップであって、前記第1期間が前記第2期間より早いステップと、を含む光硬化型三次元印刷方法。
【請求項2】
内部領域の露光されていない層において、露光して複数の支持柱を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記露光工程は、
内部領域を相補的な第1パターンと第2パターンに分割することと、
第1回露光ステップにより前記第1パターンを露光することと、
第2回露光ステップにより前記第2パターンを露光することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記露光工程は、
内部領域を相補的な第1パターンと第2パターンに分割することと、
前記第2パターンを露光せず、前記第1パターンのみを露光することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記三次元データモデルの各層の第1パターンと第2パターンの間に変位があることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記変位はランダムであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1パターンと前記第2パターンは碁盤目において対角となる格子であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
各格子の一次元寸法は2~20個の画素であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1パターンは井桁状ストライプストライプで仕切られた格子であり、前記第2パターンは井桁状ストライプストライプであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項10】
各格子の一次元寸法は10~50個の画素であり、各井桁状ストライプストライプの幅は2~10個の画素であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1回露光ステップと前記第2回露光ステップとの時間は部分的に重なっていることを特徴とする請求項3又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1回露光ステップと前記第2回露光ステップとの時間は重なっていないことを特徴とする請求項3又は9に載の方法。
【請求項13】
前記露出領域に第1露光強度を与え、前記内部領域に第2露光強度を与えることと、
前記第1露光強度で前記露出領域を露光し、前記第2露光強度で前記内部領域を露光することと、をさらに含み、前記第1露光強度が前記第2露光強度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2露光強度は前記第1露光強度の66%以下であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記露出領域は上部ケース、側縁及び/又は底部ケースを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記露出領域の法線方向の厚さは1~5個の画素であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記三次元データモデルの底層からの数層に前記第1露光強度を一様に与えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第2期間の少なくとも一部は前記第1期間と重なっていることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
前記第2期間は前記第1期間と重なっていないことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項20】
前記三次元データモデルの底層からの数層に対して、層全体を同時に露光することを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項21】
光硬化型三次元印刷装置であって、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、
印刷対象の三次元データモデルを取得するステップと、
前記三次元データモデルを複数層に分割するステップと、
前記三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップと、
前記三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、寸法が一定の閾値に達した底部ケース領域と前記底部ケース領域を支持するための1つ又は複数の支持部の前記層における島型領域を識別するステップと、
各島型領域と前記底部ケース領域との間に分割領域を画定するステップと、
各層の露出領域に対しては層毎にそれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップと、
第1期間に各島型領域と前記底部ケース領域を露光し、第2期間に各分割領域を露光するステップであって、前記第1期間が前記第2期間より早いステップと、
を実施するように前記コンピュータ可読命令を実行するプロセッサと、を含む光硬化型三次元印刷装置。
【請求項22】
光硬化型三次元印刷装置であって、
印刷対象の三次元データモデルを取得するためのモジュールと、
前記三次元データモデルを複数層に分割するためのモジュールと、
前記三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するためのモジュールと、
前記三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、寸法が一定の閾値に達した底部ケース領域と前記底部ケース領域を支持するための1つ又は複数の支持部の前記層における島型領域を識別するためのモジュールと、
各島型領域と前記底部ケース領域との間に分割領域を画定するためのモジュールと、
各層の露出領域に対しては層毎にそれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うためのモジュールと、
第1期間に各島型領域と前記底部ケース領域を露光し、第2期間に各分割領域を露光するためのモジュールであって、前記第1期間が前記第2期間より早いモジュールと、を含む光硬化型三次元印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元印刷技術、特に光硬化型三次元印刷方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元印刷技術は、コンピュータによる三次元設計モデルを基礎とし、ソフトウェアによる階層離散化、数値制御成形システムを介して、レーザービームやホットメルト型ノズルなどの手段によって、金属粉末、セラミックス粉末、プラスチック、細胞組織などの特殊な材料に対して1層ずつ積層と接着を行い、最終的に積層成形して実製品を製造する従来の製造業において金型や旋削フライスなどの機械加工方式によって素材に対して定型や切削を行うことで最終的に製品を製造することと異なり、三次元印刷では三次元実体を複数の二次元平面に変換し、材料を処理して1層ずつ積層して製造することで、製造の複雑さを大幅に低減する。このようなデジタル化製造モードでは、複雑なプロセスや大きな工作機械や多くのマンパワーを必要とせず、コンピュータの図面データから様々な複雑形状の部品を直接的に製造することができるため、生産製造をより広い範囲の製造業に携わる人々へ普及させる。
【0003】
現在、三次元印刷技術の成形方式は継続的に発展しつつあり、使用される材料も様々である。様々な成形方式において、光硬化法が比較的成熟した方式である。光硬化法とは、光硬化性樹脂が紫外線に照射された後に硬化するという原理を利用し、材料を積層して成形する方法であり、成形精度や表面光沢度や材料利用率が高いなどの特徴を有する。
【0004】
図1は光硬化型三次元印刷装置の基本構造を示す。この三次元印刷装置100は、光硬化性樹脂を収容するための原料タンク110と、光硬化性樹脂を硬化させるための画像露光システム120及び成形したワークを接続させるための昇降台130を含む。画像露光システム120は原料タンク110の上方に位置し、ビーム画像を照射して原料タンク110の液面の1層の樹脂を硬化させることができる。画像露光システム120がビーム画像を照射して1層の樹脂を硬化させるように毎回実施した後、昇降台130は、成形したその樹脂層を少々降下させ、スクレーパ131で、硬化したワークの上面に光硬化性樹脂を均一に敷き、次の照射を待つ。このように繰り返して動作すると、1層ずつ積層成形された三次元ワークを得る。
【0005】
しかしながら、硬化過程において光硬化性樹脂に一定の収縮が生じ、通常に収縮率が2~8%であり、その生じた収縮応力によって周囲の光硬化性樹脂に対して付勢力を発生する。このような付勢力は三次元ワークの各層における各位置の樹脂の間に存在し、各層の樹脂の間にも存在する。大面積の樹脂を一括して硬化させる場合、このような応力が極めて顕著になるため、硬化後の樹脂に反りや変形が生じることを引き起こしてしまう。
【発明の概要】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、光硬化性樹脂の反りや変形の問題を改善できる光硬化型三次元印刷方法及び装置を提供することである。
【0007】
本発明は、印刷対象の三次元データモデルを取得するステップと、該三次元データモデルを複数層に分割するステップと、該三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップと、各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップと、を含む光硬化型三次元印刷方法を提供する。
【0008】
本発明の一実施例において、上記方法はさらに内部領域の露光されていない層において、露光して複数の支持柱を形成するステップを含む。
【0009】
本発明の一実施例において、該露光工程は、内部領域を相補的な第1パターンと第2パターンに分割することと、第1回露光ステップにより該第1パターンを露光することと、第2回露光ステップにより該第2パターンを露光することと、を含む。
【0010】
本発明の一実施例において、該露光工程は、内部領域を相補的な第1パターンと第2パターンに分割することと、該第2パターンを露光せず、該第1パターンのみを露光することと、を含む。
【0011】
本発明の一実施例において、該三次元データモデルの各層の第1パターンと第2パターンの間に変位がある。
【0012】
本発明の一実施例において、該変位はランダムである。
【0013】
本発明の一実施例において、該第1パターンと該第2パターンは碁盤目において対角となる格子である。
【0014】
本発明の一実施例において、各格子の一次元寸法が2~20個の画素である。
【0015】
本発明の一実施例において、該第1パターンは井桁状ストライプで仕切られた格子であり、該第2パターンは井桁状ストライプである。
【0016】
本発明の一実施例において、該第1回露光ステップと該第2回露光ステップとの時間は部分的に重なっている。
【0017】
本発明の一実施例において、該第1回露光ステップと該第2回露光ステップとの時間は重なっていない。
【0018】
本発明の一実施例において、各格子の一次元寸法は10~50個の画素であり、各井桁状ストライプの幅は2~10個の画素である。
【0019】
本発明の一実施例において、上記方法は、該露出領域に第1露光強度を与え、該内部領域に第2露光強度を与えることと、第1露光強度で該露出領域を露光し、第2露光強度で該内部領域を露光することと、をさらに含み、該第1露光強度が該第2露光強度より大きい。
【0020】
本発明の一実施例において、該第2露光強度は該第1露光強度の66%以下である。
【0021】
本発明の一実施例において、該露出領域は上部ケース、側縁及び/又は底部ケースを含む。
【0022】
本発明の一実施例において、該露出領域の法線方向の厚さが1~5個の画素である。
【0023】
本発明の一実施例において、該三次元データモデルの底層からの複数層に該第1露光強度を一様に与える。
【0024】
本発明の一実施例において、上記方法は、該三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、寸法が閾値に達する底部ケース領域と該底部ケース領域を支持するための1つ又は複数の支持部の該層における島型領域を識別することと、各島型領域と該底部ケース領域の間に分割領域を画定することと、第1時期に各島型領域と該底部ケース領域を露光し、第2時期に各分割領域を露光することと、をさらに含み、該第1時期が該第2時期より早い。
【0025】
本発明の一実施例において、該第2時期の少なくとも一部は該第1時期と重なっている。
【0026】
本発明の一実施例において、該第2時期は該第1時期と重なっていない。
【0027】
本発明の一実施例において、該三次元データモデルの底層からの複数層に対して、層全体を同時に露光する。
【0028】
本発明は、メモリとプロセッサを含む光硬化型三次元印刷装置を提供する。メモリはコンピュータ可読命令を記憶する。プロセッサは、印刷対象の三次元データモデルを取得するステップと、該三次元データモデルを複数層に分割するステップと、該三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップと、各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップとを実施するように該コンピュータ可読命令を実行する。
【0029】
本発明は、さらに光硬化型三次元印刷装置を提供し、印刷対象の三次元データモデルを取得するためのモジュールと、該三次元データモデルを複数層に分割するためのモジュールと、該三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するためのモジュールと、各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うためのモジュールと、を含む。
【0030】
本発明は、以上の技術的解決手段を用いるため、従来技術に比べて、印刷の垂直方向において間隔をあけて露光を行うことによって、て露光工程における各層の収縮による他層への影響を小さくすることができる。
【0031】
また、本発明は、大面積領域を水平方向において領域毎に露光し、露光するたびに互に隣接していない小さい領域を露光するため、大面積の領域を露光して硬化させる時の収縮蓄積を顕著に低下させる。
【0032】
また、三次元データモデルの露出領域と内部領域を区分し、異なる露光強度で露光し、それにより内部領域の露光強度が露出領域より小さくなるようにすることができる。そうすることで、露出領域の露光強度は内部領域より大幅に大きくなり、変形が生じる主な原因である内部実体領域の収縮量が顕著に低下し、昇温が減少することによって、三次元モデルの反りや変形の問題が改善される。
【0033】
また、それらの大面積の底部ケース領域と既に成形した支持部で接続された島型領域とを識別することで、両者の間に分割領域を画定する。露光時に、まずその他の領域を露光し、次に分割領域を露光し、それにより大面積領域の全体を露光する時の収縮による支持部への引張応力を可能な限りに減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下の実施例及びその図面により、本発明の特徴、性能をさらに説明する。
【
図2】本発明の一実施例の光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
【
図3A】本発明の一実施例による三次元データモデルを示す。
【
図3B】本発明の一実施例による三次元データモデルの階層図を示す。
【
図4A】本発明の一実施例による三次元データモデルの領域識別を示す図である。
【
図4B】本発明の別の実施例による三次元データモデルの領域識別を示す図である。
【
図5A】本発明の一実施例による複数層おきに印刷することを示す図である。
【
図5B】本発明の一実施例による複数層おきに印刷することを示す図である。
【
図5C】本発明の一実施例による複数層おきに印刷することを示す図である。
【
図5D】本発明の一実施例による複数層おきに印刷することを示す図である。
【
図5E】本発明の一実施例による支持柱を有する印刷構成図を示す。
【
図6】本発明の一好ましい実施例の内部領域の露光工程を示す。
【
図7】本発明の一実施例によるパターン識別を示す図である。
【
図8A】本発明の一実施例による分割露光工程を示す。
【
図8B】本発明の一実施例による分割露光工程を示す。
【
図9】本発明の別の実施例によるパターン識別を示す図である。
【
図10A】本発明の別の好ましい実施例の内部領域の露光工程を示す。
【
図10B】本発明の別の好ましい実施例の内部領域の露光工程を示す。
【
図11】本発明の別の好ましい実施例の内部領域の露光工程を示す。
【
図12】本発明の別の実施例の光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
【
図13】本発明の別の実施例の光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
【
図14A】本発明の一実施例による三次元データモデルの領域識別を示す図である。
【
図14B】本発明の一実施例による三次元データモデルの領域識別を示す図である。
【
図15】本発明の別の実施例による光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施例は、光硬化型三次元印刷方法を説明し、大面積の光硬化性樹脂を硬化させる時に発生した内部応力を減少させ、被印刷ワークの反りや変形の程度を改善することができる。
【0036】
図1は光硬化型3D印刷装置の基本構造を示す。該3D印刷装置100は、光硬化性樹脂を収容するための原料タンク110と、光硬化性樹脂を硬化させるための
画像露光システム120と、成形したワークを接続させるための昇降台130とを含む。画像露光システム120は原料タンク110の上方に位置し、ビーム画像を照射して原料タンク110の液面の1層の光硬化性樹脂を硬化させることができる。画像露光システム120はビーム画像を照射することで1層の光硬化性樹脂を硬化させるように毎回実施した後、昇降台130は、成形したその光硬化性樹脂層を少々降下させ、スクレーパ131で硬化したワークの上面に光硬化性樹脂を均一に敷き、次の照射を待つ。このように繰り返して動作すると、1層ずつ積層成形された三次元ワークを得る。
【0037】
画像露光システム120はビーム画像を光硬化性樹脂に照射し、必要な露光パターンを形成することができる。画像露光システム120にはビーム画像を形成可能な様々な公知技術を用いてよい。
【0038】
例えば、一実施例において、画像露光システム120にはデジタル光処理(Digital Light Procession、DLP)投影技術を用いてよい。DLP投影イメージング技術はデジタルマイクロミラー素子(Digital Micromirror Device、DMD)を使用して光に対する反射を制御することで達成される。デジタルマイクロミラー素子は鏡面と見なされてよい。該ミラーは数十万から数百万個のマイクロミラーで構成されている。それぞれのマイクロミラーは1つの画素を示し、画像はこれらの画素で構成される。
【0039】
別の実施例において、画像露光システム120にはさらに液晶(LCD)投影技術を用いてよい。液晶パネルは多くの画素を含み、各画素は偏光の偏光方向を単独で制御することができ、液晶パネル両側の偏光フィルタに合わせて、ある画素の光線が通過するか否かを制御できるため、液晶パネルシステムを経たビームは画像化されたものである。
【0040】
印刷対象の三次元データモデルを光硬化型3D印刷装置100に入力し、さらに三次元データモデルを多くの二次元画像に分解し、これらの画像を画像露光システム120に送信した後、後者を介して投影する。
【0041】
いかなる成形物体である印刷対象に対しても、1つの露出面で1つの内部実体を被覆して構成されるものであると考えられる。ここで、印刷対象のほとんどの部分が実体である。変形は材料の体積収縮による内部応力により引き起こされ、内部応力は、反応熱の熱応力、層間横方向収縮力、現在層の硬化収縮による下層の硬化済みモデルに対する引張り応力という3つの部分で引き起こされる。現在層の露光光線は下層の硬化済みモデルに透過することで、下層のモデルがさらに収縮する。これらの収縮原理に基づいて、実体の露光強度を小さくし、実体の放熱を減少させることができ、あるいは、水平分割により、大面積の実体を碁盤目、井桁状ストライプ、島型体に分割し、横方向収縮で発生する変形を減少させ、垂直分割により、上下層の接続強度を小さくし、現在層の硬化収縮による下層の硬化済みモデルに対する引張を小さくすることができ、垂直分割により、現在層の露光光線が下層の硬化済みモデルに透過する露光強度を小さくすることもできる。以下、本発明の各態様の特徴をそれぞれ説明する。
【0042】
本発明の実施例に基づいて、三次元データモデルに対する領域識別に必要な前処理した後、画像露光システム120に送信して、画像露光システム120で露光する。
【0043】
図2は本発明の一実施例の光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
図2に示すように、方法は、
印刷対象の三次元データモデルを取得するステップ201と、
三次元データモデルを複数層に分割するステップ202と、
三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップ203と、
各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップ204と、を含む。
【0044】
図3Aは本発明の一実施例による三次元データモデルを示す。
図3Aに示すように、三次元データモデル300は部屋モデルであり、基礎301、複数の支柱302と屋根303を含む。
図3Bは本発明の一実施例による三次元データモデルの階層図であり、例えば、
図3Bに示すように、ステップ202において、三次元データモデル300を複数層310、320、330、……、560のように分割する。各層は3D印刷を行う時に1回樹脂を硬化させ、1層の光硬化した樹脂を生成するのに用いられる。例えば、硬化の手順は、例えば、310から、順に320、330、……、560までである。各層の二次元平面は数百個の画素、さらに数万個の画素を含んでもよい。
【0045】
図4Aは本発明の一実施例による三次元データモデルの領域識別を示す図である。
図4Aに示すように、ステップ203において、三次元データモデル300の少なくとも一部の層、例えば、層490に対して、その露出領域311と内部領域312を識別する。露出領域とは、その文字通り、成形したワークにおいて被覆されていない領域である。露出領域は上部ケース、側縁と底部ケースを含んでもよい。
図4Aに示すように、層490の下には4本の支柱302のみ(
図4Aにおいて2本)により支持されるため、露出領域311は支柱以外の底部ケース(図中、斜線のハッチング)である。内部領域は被覆された領域である。例えば、内部領域312の底面はその支持部に被覆され、両側は露出領域311に被覆され、表面はその他の内部領域に被覆される。
【0046】
層500から560までの領域識別については、以上のように類推することができるため、ここでの説明を省略する。
図4Aにおいてこれらの層の識別された露出領域を示し、斜線のハッチングで示される。露出領域ではその法線方向の厚さは、例えば、1~5個の画素に設定することができる。
図4Bに示すように、露出領域321は層490から層500まで貫通する。
【0047】
例えば、前記ステップ204において、各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行う。
図5A~5Dは本発明の一実施例による複数層おきに印刷することを示す図である。まず
図5Aに示すように、層490の露出領域(斜線のハッチング領域)321を露光し、
内部領域312(点のハッチング領域)を露光し、その後、
図5Bに示すように、層500の露出領域(斜線のハッチング領域)321を露光するが、
内部領域312を露光せず、その後
図5Cに示すように、同様に層510の露出領域(斜線のハッチング領域)321を露光するが、
内部領域312を露光せず、また
図5Dに示すように、層520の露出領域(斜線のハッチング領域)を露光し、
内部領域(点のハッチング領域)を露光する。そうすることで、2層おきに1回の露光工程を行うことで、各層の樹脂の間の収縮で発生する影響を抑えることができる。例えば、層500が露光されていないため、層490に対して収縮力を生成することがなく、層520を露光することで発生した収縮力は未露光の層510に作用され、層510がそれに伴って収縮することがなく、収縮力を層490に伝達することもない。光硬化性樹脂の硬化には光に面した面の硬化強度が高く、他方の面の強度が低い勾配がある。実施する時、間隔を開けた層の数は樹脂硬化深さに基づいて調整することができる。例えば、層厚さ0.1mmに対して、樹脂硬化深さが0.3mmである場合、2層の間隔を開けることができる。このように硬化済みモデルとの接触領域においては完全に液体でもなく、完全に固体でもなく、ワークは一定の強度を有するが、層間で摺動することもでき、上層による下層への影響が非常に小さい。
【0048】
好ましくは、実体領域の未露光の層において完全に露光されていないわけではなく、
図5Eに示すように、局所で露光することで、幾つかの支持柱313を形成することができる。それにより、該層の強度を向上させることができ、上下の2層が接続されることを保証する。
【0049】
体積が大きいワークに対して、単層の大面積の露光は収縮と発熱の問題を有するため、本発明の好ましい実施例において、さらに単層における分割露光の技術を導入する。
【0050】
図6は本発明の好ましい実施例の内部領域の露光工程を示す。
図6に示すように、該過程は、
内部領域を相補的な第1パターンと第2パターンに分割するステップ601と、
第1回露光ステップにより第1パターンを露光するステップ602と、
第2回露光ステップにより第2パターンを露光するステップ603と、を含む。
【0051】
図7は本発明の一実施例によるパターン識別を示す図である。
図7に示すように、本実施例の第1パターン71と第2パターン72が碁盤目70において対角となる格子である。第1パターン71と第2パターン72は相補的であり、それぞれ接続されていない大きさが同じである格子で構成される。ここで、格子の大きさは任意に設定することができ、格子の大きさが2~20個の画素であることが好ましい。
【0052】
図8Aと
図8Bは本発明の一実施例による分割露光工程を示す。
図8Aと
図8Bに示すように、第1回露光ステップにおいてまず第1パターン71を露光し、第2回露光ステップにおいてさらに第2パターン72を露光し、もちろん順序は逆であってもよい。層間の影響を考慮しなければ、第1回露光では露光した部分が完全に接続されていないため、その収縮による全体の変形への影響がなく、第2回露光では収縮で露光済み部分の実体を接続させ、変形を引き起こすが、全体的に改善される。
【0053】
図9は本発明の別の実施例によるパターン識別を示す図である。
図9に示すように、本実施例のパターン90において第1パターン91は井桁状ストライプで仕切られた格子であり、第2パターン92は井桁状ストライプである。ここでは、格子を10~50個の画素に設定することができ、井桁状ストライプストライプを2~10個の画素に設定することが好ましい。
【0054】
図10Aと
図10Bは本発明の別の
好ましい実施例による
内部領域の露光を示す図である。
図10Aと
図10Bに示すように、まず第1回露光ステップにおいて第1パターン91を露光し、第2回露光ステップにおいてさらに第2パターン92を露光する。層間の影響を考慮しないと、第1回露光格子では、露光した部分が完全に接続されていないため、その収縮により全体の変形に与える影響がなく、第2回露光では収縮で露光済み部分の実体を接続させ、変形を引き起こすが、井桁状ストライプが格子に対して非常に小さく、この影響を無視することができる。
【0055】
ステップ602と603において、装置は画像露光システム120が第1回と第2回露光を行うように制御することができる。ここで、第1回と第2回露光の時間は部分的に重なってもよく、完全に重ならなくてもよい。
【0056】
図11は本発明の別の好ましい実施例の内部領域の露光工程を示す。
図11に示すように、該過程は、
内部領域を相補的な第1パターンと第2パターンに分割するステップ1101と、
露光ステップにより第1パターンのみを露光して第2パターンを露光しないステップ1102と、を含む。
【0057】
この実施例は、露光工程を行った実体領域の層において、さらに露光しない領域を設定して、実体領域の収縮による相互影響をより大幅に減少させる。この実施例は、第2パターンの寸法が第1パターンより小さくなるように制御し、実体領域の強度が顕著に低下しないことが望ましい。この実施例に好適な第1パターンと第2パターンの組み合わせは、
図9に示すような組み合わせである。
【0058】
上記の各実施例において、三次元データモデルの各層の第1パターンと第2パターンの間に変位がある。この変位はランダムであってもよく、それにより露光されていない領域を接続させることができる。代替的な実施例において、三次元データモデルの各層の第1パターンと第2パターンの間に変位が生じなくてもよく、このように格子は完全に接続されない。しかしながら、井桁状ストライプラインと格子との組み合わせの実例に対して、井桁状ストライプラインが十分に細く、実際の格子の間にも弱く接続されることがある。
【0059】
さらに、本発明の実施例に基づいて、印刷対象の露出領域と内部領域に対して異なる露光強度を与えることができ、具体的には、内部領域の露光強度は露出領域の露光強度より小さい。内部実体は被印刷ワークのほとんどの部分を占めるため、全体的な発熱と収縮を大幅に低減することができる。
【0060】
図12は本発明の別の実施例の光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
図12に示すように、方法は、
印刷対象の三次元データモデルを取得するステップ1201と、
三次元データモデルを複数層に分割するステップ1202と、
三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップ1203と、
露出領域に第1露光強度を与え、内部領域に第2露光強度を与えるステップ1204と、
各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、第1露光強度で露出領域を露光するステップ1205と、
各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行い、第2露光強度で内部領域を露光するステップ1206と、を含む。
【0061】
ステップ1204において、露出領域に与える第1露光強度と内部領域に与える第2露光強度は、各層のデータにより変換した画像の輝度を設定することで達成されてもよく、異なる露光の時間を用いることで達成されてもよく、又は異なる輝度と時間を同時に用いることで達成されてもよい。ここで、第1露光強度は第2露光強度より大きい。すなわち、露出領域の露光強度は内部領域の露光強度より大きい。好ましくは、第2露光強度は第1露光強度の66%以下である。
【0062】
ただし、全体の被印刷ワークの強度及び昇降台130との確実な接続を維持するために、三次元データモデル300の底層からの複数層に対して、より大きい第1露光強度を一様に与える。
【0063】
ステップ1205と1206において、装置は画像露光システム120が第1露光強度で露出領域を露光し、第2露光強度で内部領域を露光するように制御することができる。
【0064】
多くの三次元モデル、例えば、建物と透かし彫りの彫刻品はいずれも複雑な構造を有する。これらの三次元モデルにおいて、様々な支持部、特に細くて小さい支持部はモデルの精度に対して顕著な影響を与える。しかしながら、大面積の底部ケースを支持する支持部は大面積の底部ケースが露光される時に収縮することで、変形しやすい。本発明の好ましい実施例によって、大面積の底部ケースの異なる領域に対して異なる時期で露光を行い、それにより大面積の底部ケースが露光される時に収縮する程度を顕著に減少させる。
【0065】
図13は本発明の別の実施例の光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
図13に示すように、方法は、
印刷対象の三次元モデルデータを取得するステップ1301と、
三次元データモデルを複数層に分割するステップ1302と、
三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップ1303と、
三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、寸法が閾値に達した底部ケース領域と底部ケース領域を支持するための1つ又は複数の支持部の該層における島型領域を識別するステップ1304と、
各島型領域と底部ケース領域の間に分割領域を画定するステップ1305と、
各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップ1306と、
各島型領域と底部ケース領域を露光する時、第1露光時期に各分割領域以外の領域を露光し、第2露光時期に各分割領域を露光するステップ1307と、を含み、第1露光時期は第2露光時期より早く且つ両者が重ならない。
【0066】
ステップ1301、1302、1303、1306の詳細は前の実施例を参照することができ、ここでの説明を省略する。
【0067】
図14A、14Bは本発明の一実施例による三次元データモデルの領域識別を示す図である。まず
図14Aに示すように、ステップ1304において、三次元データモデル300の少なくとも一部の層、例えば、層490と500において底部ケース領域314と島型領域312を識別する。底部ケース領域314は各層の490、500において三次元データモデル300の底部ケースとする領域である。この領域は三次元データモデル300の下部表面に露出される。底部ケース領域314の法線方向の厚さが、例えば、1~5層であり、図中は2層を示す。底部ケース領域314の寸法は閾値に達する必要がある。例えば、底部ケース領域314の面積は閾値Sに達する必要がある。当然ながら、さらに底部ケース領域314の何れかの方向の寸法はある閾値に達する必要があるように規定してもよい。島型領域312は底部ケース領域314を支持するための支持部(本実施例において4つの支柱302である)が底部ケース領域の存在する層を占める領域である。島型領域312はそれに対応する支持部に接続される。各底部ケース領域314は対応する支持部(図中は4本の支柱のうちの2本を示す)により支持されることができるため、島型領域312も1つ又は幾つかある。各支持部は三次元モデル300のエッジ部に位置してもよく、三次元モデル300の非エッジ部に位置してもよい。
【0068】
1層の底部ケース領域314と島型領域312を識別する時、該層をその前の層と比較して、該層において前の層によって遮断されていない部分は底部ケース領域であり、この領域の寸法が閾値に達した時にステップ1304で識別される結果となる。また、該底部ケース領域によって横方向に取り囲まれた領域は島型領域であり、該領域は前の層の支持部に接続されることを意味する。
【0069】
底部ケース領域は露出領域と部分的に重なっており、島型領域は内部領域と重なってもよいことは、理解し得ることである。
【0070】
図14Bに示すように、ステップ1305において、各島型領域312と底部ケース領域314の間に分割領域313を画定する。分割領域313は各島型領域312と底部ケース領域314を仕切るのに用いられる。分割領域313の幅が、例えば、2~10個の画素である。分割領域313は全て底部ケース領域314から分割されてもよい。そうすることで、底部ケース領域314は対応的に小さくなっている。又は分割領域316は、一部が各島型領域312から分割され、一部が底部ケース領域314から分割されてもよい。このようにして、底部ケース領域314と各島型領域312は対応的に小さくなる。
【0071】
例えば、ステップ1307、各島型領域312と底部ケース領域314を露光する時、まず第1露光時期に各分割領域313以外の領域、すなわち底部ケース領域314と島型領域312(
図14Bにおいて斜線のハッチングと点のハッチング部分)を含む領域を露光し、その後第2露光時期に各分割領域313を露光する。すなわち、第1露光時期は第2露光時期より早い。
【0072】
ステップ1307において、装置は画像露光システム120が各島型領域と該底部ケース領域を露光する時、第1露光時期に各分割領域以外の領域を露光し、第2露光時期に各分割領域を露光するように制御することができ、該第1露光時期は該第2露光時期より早い。
【0073】
本実施例において、第1露光時期に露光した底部ケース領域314と島型領域312は既に分離したため、大面積の底部ケース領域314の収縮により各島型領域312に影響を与えることがなく、それにより本層の島型領域312に接続される、前の層における支持部に影響を与えることがない。これに対して、第2露光時期に分割領域313の寸法が非常に小さく、その収縮が支持部に与える影響が非常に小さい。
【0074】
上記内容で説明した露光工程は大面積の底部ケース領域314とそれに取り囲まれた島型領域312のみに関し、本層の他の領域の露光は従来又は他の方式に応じて行ってもよい。例えば、他の領域は第1露光時期に露光してもよく、又は第2露光時期に露光してもよく、又は第1露光時期と第2露光時期に同時に露光し且つ適切に露光強度を制御してもよい。
【0075】
本実施例において、第1露光時期と第2露光時期は完全に重なっておらず、すなわち、第1露光時期が終了した後、第2露光時期が開始する。
【0076】
また、接続強度及びモデルとプラットフォーム131との確実な接続を考慮し、三次元モデル300の最初の複数層に対する露光において、本実施例の方法を使用しなくてもよい。すなわち、各層は同じ露光時期に全体的に露光してもよい。
【0077】
図15は本発明の別の実施例による光硬化型三次元印刷方法のフローチャートを示す。
図15に示すように、方法は、
印刷対象の三次元モデルデータを取得するステップ1501と、
三次元データモデルを複数層に分割するステップ1502と、
三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップ1503と、
三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、寸法が閾値に達した底部ケース領域と底部ケース領域を支持するための1つ又は複数の支持部の該層における島型領域を識別するステップ1504と、
各島型領域と底部ケース領域の間に分割領域を画定するステップ1505と、
各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップ1506と、
各島型領域と底部ケース領域を露光する時、第1露光時期に各分割領域以外の領域を露光し、第2露光時期に各分割領域を露光するステップ1507と、を含み、第1露光時期は第2露光時期より早く且つ両者が部分的に重なっている。
【0078】
ステップ1301、1302、1303、1306の詳細は前の実施例を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0079】
図14A、14Bは本発明の一実施例による三次元データモデルの領域識別を示す図である。まず
図14に示すように、ステップ1504において、三次元データモデル300の少なくとも一部の層、例えば、層490と500において底部ケース領域314と島型領域312を識別する。底部ケース領域314は各層の490、500において三次元データモデル300の底部ケースとする領域である。この領域は三次元データモデル300の下部表面に露出される。底部ケース領域314の法線方向の厚さが、例えば、1~5層であり、図中は2層を示す。底部ケース領域314の寸法は閾値に達する必要がある。例えば、底部ケース領域314の面積は閾値Sに達する必要がある。当然のことながら、さらに底部ケース領域314の何れかの方向の寸法が一定の閾値に達する必要があるように規定してもよい。島型領域312は底部ケース領域314を支持するための支持部(本実施例において4つの支柱302である)が底部ケース領域の存在する層を占める領域である。島型領域312はそれに対応する支持部に接続される。各底部ケース領域314は対応する支持部(図中は4本の支柱のうちの2本を示す)により支持されることができるため、島型領域312も1つ又は幾つかある。各支持部は三次元モデル300のエッジ部に位置してもよく、三次元モデル300の非エッジ部に位置してもよい。
【0080】
1層の底部ケース領域314と島型領域312を識別する時、該層をその前の層と比較して、該層において前の層によって遮断されていない部分は底部ケース領域であり、この領域の寸法が閾値に達した時にステップ1504で識別される結果となる。また、該底部ケース領域によって横方向に取り囲まれた領域は島型領域であり、該領域が前の層の支持部に接続されることを意味する。
【0081】
図14Bに示すように、ステップ1505において、各島型領域312と底部ケース領域314の間に分割領域313を画定する。分割領域313は各島型領域312と底部ケース領域314を仕切るのに用いられる。分割領域313の幅が、例えば、2~10個の画素である。分割領域313は全て底部ケース領域314から分割されてもよい。そうすることで、底部ケース領域314は対応的に小さくなっている。又は分割領域313は、一部が各島型領域312から分割され、一部が底部ケース領域314から分割されてもよい。このようにして、底部ケース領域314と各島型領域312は対応的に小さくなる。
【0082】
ステップ1507において、装置は画像露光システム120が露光を行うように制御することができる。
【0083】
本実施例において、第1露光時期に露光した底部ケース領域314と島型領域312は既に分離したため、大面積の底部ケース領域314の収縮により各島型領域312に影響を与えることがなく、それにより本層の島型領域312に接続される、前の層における支持部に影響を与えることがない。第2露光時期に分割領域31の寸法が非常に小さく、分割領域313と同時に露光した底部ケース領域314及び島型領域312は既に露光されて収縮したため、露光強度を増加させても、その収縮量も既に非常に小さいので、その収縮により支持部に与える影響が非常に小さい。
【0084】
本実施例において、第1露光時期と第2露光時期は部分的に重なっており、すなわち、第1露光時期が終了する前、第2露光時期が既に開始した。さらに、第1露光時期は第2露光時期が終了するまで続ける。この過程に、まず第1露光時期に各分割領域313以外の領域、すなわち底部ケース領域314(
図4Bにおいて、斜線のハッチング部分)と島型領域312(
図14Bにおいて、点のハッチング部分)を含む領域を露光し、第1露光時期が所定の時間(例えば、途中まで)で続ける場合、第2露光時期を開始し、分割領域3163は
図14Bにおいて、余白部分)を露光し、最後、第1露光時期と第2露光時期は共に終了する。
【0085】
上記内容で説明した露光工程は大面積の底部ケース領域314とそれによって取り囲まれた島型領域312のみに関し、本層の他の領域の露光は従来又は他の方式に応じて行ってもよい。例えば、他の領域は第1露光時期に露光してもよく、又は第2露光時期に露光してもよく、又は第1露光時期と第2露光時期に同時に露光し且つ適切に露光強度を制御してもよい。
【0086】
また、接続強度を考慮し、三次元モデル300の最初の複数層に対する露光において、本実施例の方法を使用しなくてもよい。
【0087】
また
図1に示すように、光硬化型三次元印刷装置100はコンピュータを含み、係る方法、ステップを実行することができる。コンピュータはメモリとプロセッサを含んでよい。メモリはコンピュータ可読命令を記憶する。プロセッサは、印刷対象の三次元データモデルを取得するステップと、該三次元データモデルを複数層に分割するステップと、該三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するステップと、各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うステップと、を実行するように該コンピュータ可読命令を実行。そうすることで、コンピュータは画像露光システム120が必要な露光を行うように制御することができる。
【0088】
別の態様において、本発明は、光硬化型三次元印刷装置を提供し、印刷対象の三次元データモデルを取得するためのモジュールと、該三次元データモデルを複数層に分割するためのモジュールと、該三次元データモデルの少なくとも一部の層に対して、各層の露出領域と内部領域を識別するためのモジュールと、各層の露出領域に対しては層毎にぞれぞれ露光を行い、各層の内部領域に対しては複数層おきに1回の露光工程を行うためのモジュールと、を含む。
【0089】
本発明の上記実施例は、印刷の垂直方向において間隔をあけて露光を行い、それにより露光工程における各層の収縮により他の層に与える影響を小さくすることができる。
【0090】
また、本発明は、大面積領域を水平方向において領域毎に露光し、露光するたびに互に隣接していない小さい領域を露光するため、大面積の領域を露光して硬化させる時の収縮蓄積が顕著に低下する。
【0091】
また、三次元データモデルの露出領域と内部領域を識別し、異なる露光強度で露光し、それにより内部領域の露光強度が露出領域より小さくなるようにすることができる。そうすることで、露出領域の露光強度は内部領域より大幅に大きくなり、変形が生じる主な原因である内部実体領域の収縮量が顕著に低下し、昇温が減少することによって、三次元モデルの反りや変形の問題が改善される。
【0092】
また、それらの大面積の底部ケース領域及び既に成形した支持部を介して接続される島型領域を識別し、両者の間に分割領域を画定する。露光する時にまずその他の領域を露光し、次に分割領域を露光し、それにより大面積領域の全体を露光する時の収縮による支持部への引張応力を可能な限りに減少させる。
【0093】
上記のように基本概念について記載してきたが、もちろん、前述の詳細な開示は、単なる例示的なものに過ぎず、本願を限定するものではないことが、当業者であれば明らかである。本明細書で明示的に記載していないが、当業者は様々な変更、改善及び修正を行ってもよい。これらの変更、改善及び修正は、本願において提案されているため、本願の例示的な実施例の趣旨及び範囲に含まれる。
【0094】
さらに、本願の実施例を説明するために、幾つかの特定の用語を使用している。例えば、「一つの実施例」、「一実施例」及び/又は「幾つかの実施例」という用語は、その実施例に関連する特徴、構造又は特性を指す。そのため、本明細書の異なる箇所で「一実施例」、「一つの実施例」又は「代替的な実施例」を2回以上言及される場合、必ずしも全てが同じ実施例を指すというわけではないことを強調して、理解されたい。さらに、本願の1つ又は複数の実施例における特定の特徴、構造又は特性を適宜組み合わせてもよい。
【0095】
さらに、本願の各態様について、任意の新規で有用な工程、機械、製品、若しくは組成物又はそれらの任意の新規で有用な改善を含む、幾つかの特許可能性のあるいくつかの種類又は状況で、本出願の各態様が説明、記述できることを理解されたい。それに応じて、本願の態様を、完全にハードウェアで実施してもよく、完全にソフトウェアで(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)で実施してもよく、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて実施してもよい。前記ハードウェア又はソフトウェアは全て「データブロック」、「モジュール」、「エンジン」、「ユニット」、「アセンブリ」又は「システム」と呼ぶ場合がある。さらに、本願の各態様は、コンピュータ可読プログラムコードを有する1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の中のコンピュータプログラム製品の形態で表現されることがある。
【0096】
本発明について具体的な実施例を参照して説明したが、以上の実施例は本発明を説明するものに過ぎず、本発明の趣旨から逸脱しない限り、様々な変更や置き換えを行うことができることは、当業者が理解し得ることであるため、本発明の実質的な趣旨範囲内において上記実施例に対して行われた変更や変形が何れも本願の特許請求の範囲に含まれるべきである。