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特許7132938保護膜形成用複合シート、及び半導体チップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シート、及び半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220831BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20220831BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B32B27/00 B
H01L23/00 C
H01L21/78 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019551233
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039642
(87)【国際公開番号】W WO2019082961
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2017208434
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小橋 力也
(72)【発明者】
【氏名】稲男 洋一
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073627(WO,A1)
【文献】特開2017-194633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C09J
H01L21/301
H01L21/54
H01L21/78
H01L23/00-23/04
H01L23/06-23/10
H01L23/16-23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シートと、前記支持シート上に備えられたエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムとを含む、保護膜形成用複合シートであって、
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有し、
前記支持シート中の前記保護膜形成用フィルムと接触する層が、樹脂成分(X)を含有し、
前記樹脂成分(X)のHSPの極性項δが7.5MPa1/2以下であり、
HSP空間を定め、前記HSP空間内において、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球を作製したとき、前記エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれる、保護膜形成用複合シート。
【請求項2】
前記支持シートが、基材と、前記基材上に備えられた粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層が、前記保護膜形成用フィルムと接触する層である、請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付することと、
前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射することによって保護膜を形成することと、
前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜又は前記保護膜形成用フィルムを切断して、切断後の保護膜又は切断後の保護膜形成用フィルムを備えた複数個の半導体チップを得ることと、
前記切断後の保護膜又は前記切断後の保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップすることと、を含む、半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用複合シート、及び半導体チップの製造方法に関する。
本願は、2017年10月27日に、日本に出願された特願2017-208434号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用した半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプ等の電極を有する半導体チップが用いられ、前記電極が基板と接合される。このため、半導体チップの回路面とは反対側の裏面は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなった半導体チップの裏面には、保護膜として、有機材料を含有する樹脂膜が形成され、保護膜付き半導体チップとして半導体装置に取り込まれることがある。
保護膜は、ダイシング工程やパッケージングの後に、半導体チップにおいてクラックが発生するのを防止するために利用される。
【0004】
このような保護膜を形成するためには、例えば、支持シート上に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムを備えてなる保護膜形成用複合シートが使用される。保護膜形成用フィルムは、硬化によって保護膜を形成可能である。また、支持シートは、保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体ウエハを、半導体チップへ分割するときに、半導体ウエハを固定するために使用できる。さらに支持シートは、ダイシングシートとしても利用可能であって、保護膜形成用複合シートは、保護膜形成用フィルムとダイシングシートとが一体化されたものとして使用することも可能である。
【0005】
保護膜形成用複合シートは、その中の保護膜形成用フィルムによって、半導体ウエハの裏面に貼付される。この後、適したタイミングで、保護膜形成用フィルムの硬化による保護膜の形成、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断、半導体ウエハの半導体チップへの分割、切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜形成用フィルム付き半導体チップ又は保護膜付き半導体チップ)の、支持シートからのピックアップ等が適宜行われる。そして、保護膜形成用フィルム付き半導体チップをピックアップした場合には、これは保護膜形成用フィルムの硬化によって、保護膜付き半導体チップとされ、最終的に保護膜付き半導体チップを用いて、半導体装置が製造される。
【0006】
このような保護膜形成用複合シートとしては、例えば、加熱により硬化することで保護膜を形成する熱硬化性の保護膜形成用フィルムを備えたものが、これまでに主に利用されている。しかし、熱硬化性の保護膜形成用フィルムの加熱硬化には、通常数時間程度と長時間を要するため、硬化時間の短縮が望まれている。これに対して、紫外線等のエネルギー線の照射により硬化可能な(エネルギー線硬化性の)保護膜形成用フィルムを保護膜の形成に用いることが検討されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/068042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、エネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートを用いた場合には、保護膜形成用フィルム又は保護膜と、支持シートと、の間の粘着力が、経時によって大きく変化することがあるという問題点がある。このように粘着力が変化してしまうと、同じ保護膜形成用複合シートを用いた場合であっても、保護膜形成用フィルム付き半導体チップ又は保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップするときの再現性が低下してしまい、工程が不安定化してしまう。
【0009】
本発明は、エネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムと、支持シートと、を備えた保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用フィルム又はその硬化物である保護膜と、支持シートと、の間の粘着力の、経時による変化が抑制される保護膜形成用複合シート、及び、前記保護膜形成用複合シートを用いた半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、支持シートを備え、前記支持シート上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムを備えた、保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有し、前記支持シート中の前記保護膜形成用フィルムと接触する層が、樹脂成分(X)を含有し、前記樹脂成分(X)のHSPの極性項δが7.5MPa1/2以下であり、HSP空間内において、前記エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれる、保護膜形成用複合シートを提供する。
【0011】
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記支持シートが、基材を備え、前記基材上に粘着剤層を備えており、前記粘着剤層が、前記保護膜形成用フィルムと接触する層であることが好ましい。
また、本発明は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して、保護膜を形成する工程と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムを切断して、切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムを備えた複数個の半導体チップを得る工程と、前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程と、を有する、半導体チップの製造方法を提供する。
【0012】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1] 支持シートと、前記支持シート上に備えられたエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムとを含む、保護膜形成用複合シートであって、
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有し、
前記支持シートにおける前記保護膜形成用フィルムと接触する層が、樹脂成分(X)を含有し、
前記樹脂成分(X)のHSPの極性項δが7.5MPa1/2以下であり、
HSP空間を定め、前記HSP空間内において、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球を作製したとき、前記エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれる、保護膜形成用複合シート。
[2] 前記支持シートが、基材と、前記基材上に備えられた粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層が、前記保護膜形成用フィルムと接触する層である、[1]に記載の保護膜形成用複合シート。
[3] [1]又は[2]に記載の保護膜形成用複合シートにおける保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付することと、
前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して、保護膜を形成することと、
前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムを切断することによって、切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムを備えた複数個の半導体チップを得ることと、
前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップすることと、を含む、半導体チップの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムと、支持シートと、を備えた保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用フィルム又はその硬化物である保護膜と、支持シートと、の間の粘着力の、経時による変化が抑制される保護膜形成用複合シート、及び、前記保護膜形成用複合シートを用いた半導体チップの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シート上に備えられたエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムとを含む、保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有し、前記支持シートにおける前記保護膜形成用フィルムと接触する層が、樹脂成分(X)を含有し、前記樹脂成分(X)のHSPの極性項δ(本明細書においては、特に「δP1」と略記することがある)が7.5MPa1/2以下であり、HSP空間を定め、前記HSP空間内において、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球を作製したとき、前記エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれる保護膜形成用複合シートである。
【0016】
前記保護膜形成用複合シートは、上記のとおり、δP1が特定範囲の値であり、かつ、HSP空間内において、エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、特定の領域に存在することにより、前記保護膜形成用フィルムと支持シートとの間の粘着力の経時による変化が抑制され、同様に、保護膜形成用フィルムの硬化物である保護膜と、支持シートと、の間の粘着力の経時による変化が抑制される。
【0017】
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線の照射によって硬化し、保護膜となる。この保護膜は、半導体ウエハ又は半導体チップの裏面(電極形成面とは反対側の面)を保護するためのものである。保護膜形成用フィルムは、軟質であり、貼付対象物に容易に貼付できる。
【0018】
なお、本明細書において、「保護膜形成用フィルム」とは硬化前のものを意味し、「保護膜」とは、保護膜形成用フィルムを硬化させたものを意味する。
【0019】
本発明においては、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シート及び保護膜形成用フィルムの硬化物(換言すると、支持シート及び保護膜)の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0020】
本明細書において、「HSP」とは、ハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)を意味する。
HSP(符号「δ」で表すことがある)(MPa1/2)は、下記式により算出される。
δ=((δ+(δ+(δ1/2
(式中、δは分散項であり、δは極性項であり、δは水素結合項である。)
【0021】
前記保護膜形成用複合シートにおいては、エネルギー線硬化性成分(a0)、非エネルギー線硬化性重合体(b)及び樹脂成分(X)について、HSPを考慮する。
前記エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)は、いずれも保護膜形成用フィルムの含有成分である。一方、前記樹脂成分(X)は、支持シート中の保護膜形成用フィルムと接触する層の含有成分である。
【0022】
これら対象成分のHSPは、公知の方法で求められる。具体的には、以下のとおりである。
すなわち、まず、HSPが既知である複数種の溶媒を選択し、前記対象成分のこれら溶媒への溶解性を確認する。
【0023】
前記溶媒は、HSPが判明しているものであれば、特に限定されない。
前記溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の鎖状又は環状ケトン;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン等の芳香族炭化水素;エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、シクロヘキサノール等の一価脂肪族アルコール;プロピレングリコール等の多価脂肪族アルコール;ベンジルアルコール等の一価又は多価芳香族アルコール;ジメチルホルムアミド等のアミド;キノリン等の芳香族複素環化合物(すなわち、芳香族複素環式基を有する化合物);酢酸エチル等の鎖状脂肪族エステル(すなわち、鎖状カルボン酸エステル);γ-ブチロラクトン等の環状脂肪族エステル(すなわち、ラクトン);安息香酸エチル等の芳香族エステル(すなわち、芳香族カルボン酸エステル);テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素;ジエチレングリコール等のジアルキレングリコール;アセトニトリル等のニトリル;ニトロベンゼン等のニトロ化合物(すなわち、ニトロ基を有する化合物);オルトケイ酸テトラエチル等のオルトケイ酸エステル等が挙げられる。
【0024】
対象成分の溶媒への溶解性は、例えば、以下の方法により確認できる。
すなわち、容器中において、23℃の温度条件下で温度を安定化させた2mLの溶媒に、15mgの対象成分を添加し、容器に蓋を装着して、密封する。この密封後の容器を50回転倒させることで内容物を混合し、次いで、容器(換言すると得られた中間混合物)を4時間静置し、次いで、上記と同様に容器を50回転倒させることで内容物(換言すると前記中間混合物)を混合し、次いで、容器(換言すると得られた最終混合物)を1日静置する。この間、これら混合及び静置の操作は、すべて23℃の温度条件下で行う。次いで、直ちに、前記最終混合物中での対象成分の溶解の有無を確認する。このときの溶解の有無の確認方法は、正確に確認できる限り特に限定されない。例えば、前記最終混合物を目視することによって確認してもよいし、前記最終混合物をろ過して不溶物の有無を確認してもよい。ただし、これらは一例である。また、対象成分と溶媒の使用量は、上記のものに限定されず、例えば、上記の使用量比率(溶媒2mLあたり対象成分15mg)が同じであれば、溶媒及び対象成分の使用量をともに増大させてもよいし、削減してもよい。
【0025】
上述の方法により、前記最終混合物中に対象成分の不溶物(溶け残り)がたとえ僅かでも認められた場合には、対象成分は「不溶」と判定し、前記最終混合物中に対象成分の不溶物が全く認められなかった場合には、対象成分は「溶解」と判定する。
以上により、対象成分の溶媒への溶解性を確認できる。
【0026】
前記混合物を得るために用いる溶媒、すなわち、対象成分の添加対象となる溶媒は、2種以上の溶媒を混合して得られた混合溶媒ではなく、1種単独の溶媒である。
【0027】
対象成分の溶解性を確認する前記溶媒は、20種以上であることが好ましく、21~30種であることがより好ましい。前記溶媒種が前記下限値以上であることで、対象成分のHSPがより高い精度で求められる。前記溶媒種が前記上限値以下であることで、対象成分のHSPがより効率的に求められる。
【0028】
対象成分の溶媒への溶解性を確認した後は、次いで、解析ソフト「HSPiP」を用い、溶媒のHSPと、この溶媒を用いたときの対象成分の「不溶」又は「溶解」との判定結果と、を入力することにより、この対象成分のHSPを求める。
【0029】
対象成分のHSPを求めるときには、δ(分散項)、δ(極性項)及びδ(水素結合項)の3次元空間であるHSP空間を定め、このHSP空間内において、溶媒のHSPと、対象成分の溶解性の判定結果と、をプロットする。そして、HSP空間内において球を想定し、対象成分が溶解した溶媒のプロットが球の表面と内側に存在し、対象成分が溶解しなかった溶媒のプロットが球の外側に存在するように、大きさが最大となる球を作製する。この球の表面には、必ず、対象成分が溶解した溶媒のプロットが存在する。この球は、ハンセン(Hansen)溶解球(ハンセン3次元球、ハンセン相互作用球等とも称する)である。そして、ハンセン溶解球の中心が対象成分のHSPである。また、ハンセン溶解球の半径は相互作用半径Rであり、Rが大きい場合には、対象成分を溶解させる溶媒種が多く、反対にRが小さい場合には、対象成分を溶解させる溶媒種が少ないことを意味する。
【0030】
前記保護膜形成用複合シートにおいては、前記樹脂成分(X)のδ(δP1)は7.5MPa1/2以下であり、7.3MPa1/2以下であることが好ましく、例えば、7.0MPa1/2以下、6.7MPa1/2以下、及び6.5MPa1/2以下のいずれかであってもよい。通常使用される非エネルギー線硬化性重合体(b)の種類を考慮すると、δP1が前記上限値以下であることで、非エネルギー線硬化性重合体(b)及び樹脂成分(X)は相溶性が低くなる。一方で、本実施形態においては、後述するように、エネルギー線硬化性成分(a0)の、非エネルギー線硬化性重合体(b)との相溶性の程度が規定されている。結果として、δP1が前記上限値以下であることで、エネルギー線硬化性成分(a0)は、樹脂成分(X)との相溶性が低くなる。
【0031】
δP1の下限値は、特に限定されない。保護膜形成用複合シートの製造がより容易である点では、δP1は、1MPa1/2以上であることが好ましく、例えば、3MPa1/2以上であってもよい。
【0032】
δP1は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、δP1は、好ましくは1~7.5MPa1/2、より好ましくは1~7.3MPa1/2であり、例えば、1~7MPa1/2、1~6.7MPa1/2、及び1~6.5MPa1/2のいずれかであってもよい。また、一実施形態において、δP1は、好ましくは3~7.5MPa1/2、より好ましくは3~7.3MPa1/2であり、例えば、3~7MPa1/2、3~6.7MPa1/2、及び3~6.5MPa1/2のいずれかであってもよい。ただし、これらは一例である。
また別の側面として1MPa1/2以上7.26MPa1/2以下であってもよく、1MPa1/2以上6.4MPa1/2以下であってもよい。
【0033】
前記保護膜形成用複合シートにおいては、HSP空間内において、エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれる。このような条件を満たすことにより、保護膜形成用複合シートの製造直後においては、保護膜形成用フィルム中に存在しているエネルギー線硬化性成分(a0)は、非エネルギー線硬化性重合体(b)との相溶性が高い。
一方で、上記のように、δP1が特定値以下であることにより、保護膜形成用複合シートの製造直後においては、保護膜形成用フィルム中に存在している非エネルギー線硬化性重合体(b)は、隣接する支持シート中の樹脂成分(X)とは、相溶性が低い。そのため、非エネルギー線硬化性重合体(b)との相溶性が高いエネルギー線硬化性成分(a0)も、樹脂成分(X)とは、相溶性が低くなる。
結果として、エネルギー線硬化性成分(a0)は、保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルム中及び保護膜中に安定して留まり、隣接する支持シートへの移行が抑制される。
【0034】
このように、保護膜形成用複合シートにおいては、エネルギー線硬化性成分(a0)の支持シートへの移行が抑制され、保護膜形成用複合シートの製造直後から、保護膜形成用フィルム、保護膜及び支持シートの組成の変化が抑制される。そのため、これら各層(保護膜形成用フィルム、保護膜及び支持シート)は、経時による特性の変化が抑制され、保護膜形成用フィルム及び支持シート間の粘着力の経時変化、並びに保護膜及び支持シート間の粘着力の経時変化が、抑制される。
【0035】
保護膜形成用フィルム及び保護膜から支持シートへ移行し易い成分は、これらフィルム及び膜において析出していない成分、分子量が比較的小さい成分等である。HSPが上述のようには規定されていないエネルギー線硬化性成分(a0)は、これらのいずれかに該当し、かつ、支持シートへ移行した場合に、保護膜形成用フィルムと支持シートとの間の粘着力、並びに保護膜と支持シートとの間の粘着力に、無視できない程度の大きい影響を及ぼす。一方、エネルギー線硬化性成分(a0)以外の成分は、保護膜形成用フィルム及び保護膜から支持シートへ移行し難いか、又は移行した場合であっても、上記の粘着力に、影響を及ぼさないか、若しくは無視し得る程度の極めて小さい影響を及ぼすに過ぎない。
本実施形態においては、エネルギー線硬化性成分(a0)として、そのHSPが上述のように規定されているものを用いることにより、保護膜形成用複合シートは先の説明のように優れた効果を奏する。
【0036】
例えば、後述する任意成分である光重合開始剤(c)自体は、上記の様に支持シートへ移行した場合に、保護膜形成用フィルムと支持シートとの間の粘着力、並びに保護膜と支持シートとの間の粘着力に、無視できない程度の大きい影響を及ぼす可能性がある。ただし、光重合開始剤(c)を用いる場合には、通常、保護膜形成用フィルム及び保護膜の光重合開始剤(c)の含有量は極めて少ない。したがって、光重合開始剤(c)を用いた場合であっても、そのこと自体によって、通常は、上記の粘着力に影響は無いか、若しくは無視し得る程度の極めて小さい影響を受けるに過ぎない。
【0037】
光重合開始剤(c)を用いたことによる、保護膜形成用フィルムと支持シートとの間の粘着力の経時による変化を抑制し、同様に、保護膜形成用フィルムの硬化物である保護膜と、支持シートと、の間の粘着力の経時による変化を抑制するためには、エネルギー線硬化性成分(a0)の場合と同様に、HSP空間内において、光重合開始剤(c)のHSPが、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれるようにすればよい。
すなわち、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シート上に備えられたエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムとを含む保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a0)、非エネルギー線硬化性重合体(b)及び光重合開始剤(c)を含有し、前記支持シート中の前記保護膜形成用フィルムと接触する層が、樹脂成分(X)を含有し、樹脂成分(X)のHSPの極性項δが7.5MPa1/2以下であり、HSP空間を定め、前記HSP空間内において、前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球を作製したとき、前記エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPと、前記光重合開始剤(c)のHSPと、が前記非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれるものであってもよい。
【0038】
前記保護膜形成用複合シートにおいては、HSP空間内において、光重合開始剤(c)のHSPが、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれる場合、保護膜形成用複合シートの製造直後においては、保護膜形成用フィルム中に存在している光重合開始剤(c)は、非エネルギー線硬化性重合体(b)との相溶性が高い。
一方で、上記のように、δP1が特定値以下であることにより、保護膜形成用複合シートの製造直後においては、保護膜形成用フィルム中に存在している非エネルギー線硬化性重合体(b)は、隣接する支持シート中の樹脂成分(X)とは、相溶性が低い。そのため、非エネルギー線硬化性重合体(b)との相溶性が高い光重合開始剤(c)も、樹脂成分(X)とは、相溶性が低くなる。
結果として、光重合開始剤(c)を用いた場合には、エネルギー線硬化性成分(a0)の場合と同様に、光重合開始剤(c)は、保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルム中及び保護膜中に安定して留まり、隣接する支持シートへの移行が抑制される。
【0039】
ただし、先に説明したとおり、たとえ光重合開始剤(c)を用いた場合であっても、通常は、エネルギー線硬化性成分(a0)が上述のHSPの条件を満たしていれば、光重合開始剤(c)が上述のHSPの条件を満たしていなくても、前記保護膜形成用複合シートは、十分に本発明の効果を奏する。
【0040】
本実施形態においては、樹脂成分(X)の種類(例えば、構成単位の構造、官能基の有無又は種類、分子量等)を調節することで、δP1の値を調節できる。
【0041】
本実施形態においては、エネルギー線硬化性成分(a0)の種類(例えば、主骨格の構造、官能基の有無又は種類、分子量等)を調節することで、エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれるように、調節できる。そして、非エネルギー線硬化性重合体(b)の種類(例えば、構成単位の構造、官能基の有無又は種類、分子量等)を調節することでも、エネルギー線硬化性成分(a0)のHSPが、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれるように、調節できる。
【0042】
本実施形態においては、光重合開始剤(c)の種類(例えば、主骨格の構造、官能基の有無又は種類、分子量等)を調節することで、光重合開始剤(c)のHSPが、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれるように、調節できる。そして、非エネルギー線硬化性重合体(b)の種類(例えば、構成単位の構造、官能基の有無又は種類、分子量等)を調節することでも、光重合開始剤(c)のHSPが、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の領域に含まれるように、調節できる。
【0043】
前記保護膜形成用複合シートにおいて、下記方法で算出された、経時の前後での、保護膜と支持シートとの間の粘着力の変化率は、30%以下であることが好ましく、27.5%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましく、例えば、22.5%以下、及び20%以下のいずれかであってもよい。また、保護膜と支持シートとの間の粘着力の変化率は、23%以下であってもよく、14%以下であってもよい。
前記粘着力の変化率の下限値は、特に限定されない。例えば、前記粘着力の変化率が5%以上である保護膜形成用複合シートは、より容易に製造できる。
1つの側面として、保護膜と支持シートとの間の粘着力の変化率は、5%以上30%以下であってもよく、5%以上27.5%以下であってもよく、5%以上25%以下であってもよく、5%以上23%以下であってもよく、5%以上22.5%以下であってもよく、5%以上20%以下であってもよく、5%以上14%以下であってもよい。
本発明の1つの側面は、下記方法で評価されたとき、保護膜と支持シートとの間の粘着力の変化率が5%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下である保護膜形成用複合シートにおける保護膜形成用フィルム及び支持シートの化学組成とそれぞれ同じ化学組成を有する保護膜形成用フィルム及び支持シートを含む保護膜形成用複合シートである。すなわち、前記同じ化学組成を有する保護膜形成用フィルム及び支持シートを含む保護膜形成用複合シートであれば、下記方法における保護膜形成用複合シートの幅及び保護膜形成用フィルムの厚さとは異なる幅及び厚さを有していてもよい。
【0044】
<保護膜と支持シートとの間の粘着力の変化率の算出方法>
保護膜形成用複合シート中のすべての層の幅が25mmであり、保護膜形成用フィルムの厚さが25μmである保護膜形成用複合シートを、その保護膜形成用フィルムによってシリコンウエハに貼付する。次いで、照度200mW/cm、光量200mJ/cmの条件で、貼付後の保護膜形成用フィルムに紫外線を照射することで、保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜としたものを試験片として、経時前及び経時後の試験片をそれぞれ作製する。次いで、これら経時前後の試験片について、23℃の条件下で、前記シリコンウエハに貼付されている保護膜から支持シートを、保護膜及び支持シートの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度300mm/minで引き剥がす、いわゆる180°剥離を行う。そして、このときの剥離力(N/25mm)を粘着力として採用し、経時前の試験片についての経時前粘着力と、経時後の試験片についての経時後粘着力を求め、これら粘着力から下記式により、保護膜と支持シートとの間の粘着力の変化率を算出する。
[粘着力の変化率(%)]={[経時前粘着力(N/25mm)]-[経時後粘着力(N/25mm)]}/[経時前粘着力(N/25mm)]×100
経時前の試験片としては、保護膜形成用複合シートを作製してから1時間後のものを用いる。経時後の試験片としては、保護膜形成用複合シートを作製してから48時間後のもので、且つ、試験片とした後に、その経時後粘着力を測定するまでの間、21~25℃、相対湿度45~65%の条件下で静置保存したものを用いる。
なお、本明細書において、「厚さ」とは、任意の5箇所で、接触式厚み計で厚さを測定した平均で表される値を意味する。
【0045】
以下、保護膜形成用複合シートの構成について、詳細に説明する。
【0046】
◎支持シート
2層以上の複数層からなる支持シートにおいて、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0047】
なお、本明細書においては、支持シートの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0048】
好ましい支持シートとしては、例えば、基材を備え、前記基材上に粘着剤層が直接接触して積層されてなるもの(基材及び粘着剤層がこの順に直接接触して積層されてなるもの);基材、中間層及び粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において直接接触して積層されてなるもの等が挙げられる。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0050】
ここに示す保護膜形成用複合シート1Aは、基材11を備え、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム13を備えている。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用複合シート1Aは、換言すると、支持シート10の一方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に保護膜形成用フィルム13が積層された構成を有する。また、保護膜形成用複合シート1Aは、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム15を備えている。
【0051】
保護膜形成用複合シート1Aにおいては、基材11の一方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の一方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aの全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の一方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16の表面16a(上面及び側面)に、剥離フィルム15が積層されている。
【0052】
保護膜形成用複合シート1Aにおいて、保護膜形成用フィルム13は、エネルギー線硬化性であり、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有する。
また、支持シート10中の保護膜形成用フィルム13と接触する層、すなわち粘着剤層12は、樹脂成分(X)を含有する。
【0053】
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造のものであってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造のものであってもよい。
【0054】
図1に示す保護膜形成用複合シート1Aは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の表面16aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0055】
図2は、本発明の他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
ここに示す保護膜形成用複合シート1Bは、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、図1に示す保護膜形成用複合シート1Aと同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Bにおいては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の第1面12aの全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの全面に剥離フィルム15が積層されている。
【0057】
保護膜形成用複合シート1Bにおいて、保護膜形成用フィルム13は、エネルギー線硬化性であり、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有する。
また、支持シート10中の保護膜形成用フィルム13と接触する層、すなわち粘着剤層12は、樹脂成分(X)を含有する。
【0058】
図2に示す保護膜形成用複合シート1Bは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、中央側の一部の領域に半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0059】
図3は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Cは、保護膜形成用フィルムの形状が異なる点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート1Bと同じものである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Cは、基材11を備え、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム23を備えてなる。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用複合シート1Cは、換言すると、支持シート10の第1面10a上に保護膜形成用フィルム23が積層された構成を有する。また、保護膜形成用複合シート1Cは、さらに保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム15を備えている。
【0060】
保護膜形成用複合シート1Cにおいては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の第1面12aの一部、すなわち、中央側の領域に保護膜形成用フィルム23が積層されている。そして、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域と、保護膜形成用フィルム23の表面23a(上面及び側面)の上に、剥離フィルム15が積層されている。
【0061】
保護膜形成用複合シート1Cを上方から見下ろして平面視したときに、保護膜形成用フィルム23は粘着剤層12よりも表面積が小さく、例えば、円形状等の形状を有する。
【0062】
保護膜形成用複合シート1Cにおいて、保護膜形成用フィルム23は、エネルギー線硬化性であり、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有する。
また、支持シート10中の保護膜形成用フィルム23と接触する層、すなわち粘着剤層12は、樹脂成分(X)を含有する。
【0063】
図3に示す保護膜形成用複合シート1Cは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の表面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0064】
なお、図3に示す保護膜形成用複合シート1Cにおいては、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域に、図1に示すものと同様に治具用接着剤層が積層されていてもよい(図示略)。このような治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シート1Cは、図1に示す保護膜形成用複合シートと同様に、治具用接着剤層の表面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0065】
このように、保護膜形成用複合シートは、支持シート及び保護膜形成用フィルムがどのような形態であっても、治具用接着剤層を備えたものであってもよい。ただし、通常は、図1に示すように、治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートとしては、保護膜形成用フィルム上に治具用接着剤層を備えたものが好ましい。
【0066】
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、図1図3に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1図3に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0067】
例えば、図1図3に示す保護膜形成用複合シートにおいては、基材11と粘着剤層12との間に中間層が設けられていてもよい。すなわち、本発明の保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートは、基材、中間層及び粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなるものであってもよい。ここで中間層としては、目的に応じて任意のものを選択できる。
また、図1図3に示す保護膜形成用複合シートは、前記中間層以外の層が、任意の箇所に設けられていてもよい。
また、保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルムと、この剥離フィルムと直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
また、保護膜形成用複合シートにおいては、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0068】
なお、図1図3に示す保護膜形成用複合シートにおいては、支持シート中の保護膜形成用フィルムと接触する層が粘着剤層であるが、支持シート中の保護膜形成用フィルムと接触する層が粘着剤層以外の他の層である場合には、この他の層が樹脂成分(X)を含有する。
【0069】
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、後述するように、粘着剤層等の、支持シート中の保護膜形成用フィルムと直接接触している層が、非エネルギー線硬化性であることが好ましい。このような保護膜形成用複合シートは、切断後の保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜付き半導体チップ)の、支持シートからのより容易なピックアップを可能とする。
【0070】
支持シートは、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
なかでも、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する本発明においては、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0071】
例えば、支持シートにおいて、波長375nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルムにエネルギー線(紫外線)を照射したときに、保護膜形成用フィルムの硬化度がより向上する。
一方、支持シートにおいて、波長375nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
1つの側面として、支持シートにおける波長375nmの光の透過率は30%以上95%以下であることが好ましく、50%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上95%以下であることが特に好ましい。
【0072】
また、支持シートにおいて、波長532nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルム又は保護膜にレーザー光を照射して、これらに印字したときに、より明りょうに印字できる。
一方、支持シートにおいて、波長532nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
1つの側面として、支持シートにおける波長532nmの光の透過率は30%以上95%以下であることが好ましく、50%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上95%以下であることが特に好ましい。
【0073】
また、支持シートにおいて、波長1064nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルム又は保護膜にレーザー光を照射して、これらに印字したときに、より明りょうに印字できる。
一方、支持シートにおいて、波長1064nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
1つの側面として、支持シートにおける波長1064nmの光の透過率は30%以上95%以下であることが好ましく、50%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上95%以下であることが特に好ましい。
【0074】
半導体ウエハを分割して半導体チップを得る一つの方法として、例えば、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するようにレーザー光を照射して、半導体ウエハの内部に改質層を形成し、次いで、この改質層が形成され、かつ裏面には保護膜形成用フィルム又は保護膜が貼付されている半導体ウエハを、これらフィルム又は膜とともに、これらフィルム又は膜の表面方向にエキスパンドして、これらフィルム又は膜を切断するとともに、改質層の部位において半導体ウエハを分割し、個片化することで、半導体チップを得る方法が知られている。
前記保護膜形成用複合シートをこのような方法へ適用する場合には、支持シートにおいて、波長1342nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートと、保護膜形成用フィルム又は保護膜とを介して、半導体ウエハにレーザー光を照射して、半導体ウエハに改質層をより容易に形成できる。
一方、支持シートにおいて、波長1342nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
1つの側面として、支持シートにおける波長1342nmの光の透過率は30%以上95%以下であることが好ましく、50%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上95%以下であることが特に好ましい。
【0075】
前記支持シートは、基材を備え、前記基材上に粘着剤層を備えているものが好ましい。
そして、前記保護膜形成用複合シートにおいては、前記支持シートが、基材と、前記基材上に備えられた粘着剤層とを含み、前記粘着剤層が、前記保護膜形成用フィルムと接触する層である(前記保護膜形成用フィルムが、前記粘着剤層に直接接触して積層されている)ことが好ましい。
【0076】
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
【0077】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。 前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPEと略すことがある)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPEと略すことがある)、高密度ポリエチレン(HDPEと略すことがある)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0078】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
【0079】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0080】
基材は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0081】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~150μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0082】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0083】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0084】
基材の光学特性は、先に説明した支持シートの光学特性を満たすようになっていることが好ましい。例えば、基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
そして、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する本発明においては、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0085】
基材は、その上に設けられる粘着剤層等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。
また、基材は、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;保護膜形成用複合シートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
【0086】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0087】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。 前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
粘着剤層は、樹脂成分(X)を含有している場合、前記粘着剤として樹脂成分(X)を含有していることが好ましい。
すなわち、1つの側面として、樹脂成分(X)は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート及びエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
また、別の側面として、樹脂成分(X)は、後述の粘着性樹脂(I-1a)、エネルギー線硬化性化合物、及び粘着性樹脂(I-2a)からなる群から選択される少なくとも1つの成分であることが好ましい。
【0088】
なお、本発明において、「粘着性樹脂」とは、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方を含む概念であり、例えば、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含む。
【0089】
粘着剤層は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
粘着剤層が複数層からなり、粘着剤層が樹脂成分(X)を含有している場合には、これら複数層のうち、少なくとも、保護膜形成用フィルムと直接接触する層が、樹脂成分(X)を含有していることが好ましく、すべての層が樹脂成分(X)を含有していてもよい。
【0090】
粘着剤層の厚さは1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0091】
粘着剤層の光学特性は、先に説明した支持シートの光学特性を満たすようになっていることが好ましい。例えば、粘着剤層は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
そして、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する本発明においては、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0092】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を、容易に調節できる。
【0093】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0094】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0095】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒間~5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0096】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する粘着剤組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0097】
<粘着剤組成物(I-1)>
前記粘着剤組成物(I-1)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
また、別の側面として、粘着剤組成物(I-1)は、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)と、エネルギー線硬化性化合物と、所望により、架橋剤、光重合開始剤、その他の添加剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含有する。
【0098】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0099】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
【0100】
粘着剤層の粘着力が向上する点から、前記アクリル系重合体は、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましい。そして、粘着剤層の粘着力がより向上する点から、前記アルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。また、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0101】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0102】
官能基含有モノマー中の前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
すなわち、官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0103】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール(すなわち、(メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0104】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0105】
官能基含有モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0106】
前記アクリル系重合体を構成する官能基含有モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0107】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量(総質量)に対して、1~40質量%であることが好ましく、2~37質量%であることがより好ましく、3~34質量%であることが特に好ましい。
【0108】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0109】
前記アクリル系重合体を構成する前記他のモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0110】
前記アクリル系重合体は、上述の非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)として使用できる。
一方、前記アクリル系重合体中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基(エネルギー線重合性基)を有する不飽和基含有化合物を反応させたものは、上述のエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)として使用できる。
【0111】
粘着剤組成物(I-1)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0112】
粘着剤組成物(I-1)において、粘着性樹脂(I-1a)の含有量は、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対して、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0113】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物は、分子量が比較的大きく、粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させにくいという点では、ウレタン(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0114】
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0115】
前記粘着剤組成物(I-1)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、前記粘着剤組成物(I-1)の総質量に対して、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0116】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0117】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士を架橋するものである。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(すなわち、イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(すなわち、グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(すなわち、アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(すなわち、金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(すなわち、イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0118】
粘着剤組成物(I-1)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0119】
前記粘着剤組成物(I-1)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0120】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0121】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0122】
粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0123】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0124】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0125】
粘着剤組成物(I-1)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0126】
粘着剤組成物(I-1)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0127】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0128】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(すなわち、カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0129】
前記溶媒としては、例えば、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものを粘着性樹脂(I-1a)から取り除かずに、そのまま粘着剤組成物(I-1)において用いてもよいし、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものと同一又は異なる種類の溶媒を、粘着剤組成物(I-1)の製造時に別途添加してもよい。
【0130】
粘着剤組成物(I-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0131】
粘着剤組成物(I-1)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0132】
粘着剤組成物(I-1)において、樹脂成分(X)となり得るものとしては、例えば、粘着性樹脂(I-1a)、エネルギー線硬化性化合物が挙げられる。
【0133】
<粘着剤組成物(I-2)>
前記粘着剤組成物(I-2)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)を含有する。
また、別の側面として、前記粘着剤組成物(I-2)は、前記粘着性樹脂(I-2a)と、所望により、架橋剤、光重合開始剤、その他の添加剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含有する。
【0134】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0135】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基ともいう)、アリル基(2-プロペニル基ともいう)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0136】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0137】
粘着剤組成物(I-2)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0138】
粘着剤組成物(I-2)において、粘着性樹脂(I-2a)の含有量は、粘着剤組成物(I-2)の総質量に対して、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、10~90質量%であることが特に好ましい。
【0139】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0140】
粘着剤組成物(I-2)における前記架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0141】
前記粘着剤組成物(I-2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0142】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-2)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-2)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0143】
粘着剤組成物(I-2)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0144】
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0145】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0146】
粘着剤組成物(I-2)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0147】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-2)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-2)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0148】
粘着剤組成物(I-2)において、樹脂成分(X)となり得るものとしては、例えば、粘着性樹脂(I-2a)が挙げられる。
【0149】
<粘着剤組成物(I-3)>
前記粘着剤組成物(I-3)は、上述の様に、前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
また、別の側面として、前記粘着剤組成物(I-3)は、前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、所望により、架橋剤、光重合開始剤、その他の添加剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含有する。
【0150】
粘着剤組成物(I-3)において、粘着性樹脂(I-2a)の含有量は、粘着剤組成物(I-3)の総質量に対して、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0151】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられ、粘着剤組成物(I-1)が含有するエネルギー線硬化性化合物と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0152】
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましく、0.03~200質量部であることがより好ましく、0.05~100質量部であることが特に好ましい。
【0153】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-3)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0154】
粘着剤組成物(I-3)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0155】
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0156】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-3)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0157】
粘着剤組成物(I-3)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0158】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-3)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-3)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-3)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0159】
粘着剤組成物(I-3)において、樹脂成分(X)となり得るものとしては、例えば、粘着性樹脂(I-2a)、エネルギー線硬化性化合物が挙げられる。
【0160】
<粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物>
ここまでは、粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)及び粘着剤組成物(I-3)について主に説明したが、これらの含有成分として説明したものは、これら3種の粘着剤組成物以外の全般的な粘着剤組成物(本明細書においては、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物」と称する)でも、同様に用いることができる。
【0161】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)が挙げられ、アクリル系樹脂を含有するものが好ましい。
【0162】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、1種又は2種以上の架橋剤を含有することが好ましく、その含有量は、上述の粘着剤組成物(I-1)等の場合と同様とすることができる。
【0163】
<粘着剤組成物(I-4)>
粘着剤組成物(I-4)で好ましいものとしては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)と、架橋剤と、を含有するものが挙げられる。なお、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物である粘着剤組成物(I-4)には、前記粘着剤組成物(I-1)におけるエネルギー線硬化性化合物は含まれない。
また、別の側面として、粘着剤組成物(I-4)は、前記粘着性樹脂(I-1a)と、架橋剤と、所望により、その他の添加剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含有する。
【0164】
[粘着性樹脂(I-1a)]
粘着剤組成物(I-4)における粘着性樹脂(I-1a)としては、粘着剤組成物(I-1)における粘着性樹脂(I-1a)と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0165】
粘着剤組成物(I-4)において、粘着性樹脂(I-1a)の含有量は、粘着剤組成物(I-4)の総質量に対して、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0166】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0167】
粘着剤組成物(I-4)における架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0168】
前記粘着剤組成物(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0169】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0170】
粘着剤組成物(I-4)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0171】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-4)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-4)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-4)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0172】
粘着剤組成物(I-4)において、樹脂成分(X)となり得るものとしては、例えば、粘着性樹脂(I-1a)が挙げられる。
【0173】
前記保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層は非エネルギー線硬化性であることが好ましい。これは、粘着剤層がエネルギー線硬化性であると、エネルギー線の照射によって保護膜形成用フィルムを硬化させるときに、粘着剤層も同時に硬化するのを抑制できないことがあるためである。粘着剤層が保護膜形成用フィルムと同時に硬化してしまうと、硬化後の保護膜形成用フィルム及び粘着剤層がこれらの界面において剥離不能な程度に貼り付いてしまうことがある。その場合、硬化後の保護膜形成用フィルム、すなわち保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜付き半導体チップ)を、硬化後の粘着剤層を備えた支持シートから剥離させることが困難となり、保護膜付き半導体チップを正常にピックアップできなくなってしまう。前記支持シートにおいて、粘着剤層を非エネルギー線硬化性のものとすることで、このような不具合を確実に回避でき、保護膜付き半導体チップをより容易にピックアップできる。
【0174】
ここでは、粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合の効果について説明したが、支持シートの保護膜形成用フィルムと直接接触している層が粘着剤層以外の層であっても、この層が非エネルギー線硬化性であれば、同様の効果を奏する。
【0175】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)や、粘着剤組成物(I-4)等の粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0176】
◎保護膜形成用フィルム
前記保護膜形成用フィルムは、先の説明のように、エネルギー線硬化性であり、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有する。
エネルギー線硬化性成分(a0)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0177】
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性であることにより、熱硬化性の保護膜形成用フィルムよりも、短時間での硬化によって保護膜を形成できる。
【0178】
本発明において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本発明において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0179】
保護膜形成用フィルムは1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合には、これら複数層のうち、少なくとも、支持シートと直接接触する層が、エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有していることが好ましく、すべての層がエネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有していてもよい。
【0180】
保護膜形成用フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~75μmであることがより好ましく、5~50μmであることが特に好ましい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。また、保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0181】
保護膜形成用フィルムの、波長350nmの光の透過率は、0%以上20%以下であることが好ましく、0%以上15%以下であることがより好ましく、0%以上8%以下であることがさらに好ましく、0%以上5%以下であることが特に好ましく、0%であってもよい。前記光の透過率が前記上限値以下であることで、保管中の保護膜形成フィルムにおいて、蛍光灯等を光源とする光に含まれる紫外光の作用によって、紫外線硬化性成分の目的外の硬化反応が進行することを抑制できる。
【0182】
保護膜形成用フィルム及び保護膜において、同じ波長の光の透過率は、互いにほぼ又は全く同じとなる。
例えば、波長350nmの光の透過率が上述の範囲である保護膜形成用フィルムを硬化して形成された保護膜において、波長350nmの光の透過率は、好ましくは0%以上20%以下、より好ましくは0%以上15%以下、さらに好ましくは0%以上8%以下、特に好ましくは0%以上5%以下であり、0%であってもよい。
【0183】
保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、保護膜形成用フィルムの硬化時における、エネルギー線の照度は、4~280mW/cmであることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、3~1000mJ/cmであることが好ましい。
【0184】
<<保護膜形成用組成物>>
前記保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムの形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に保護膜形成用フィルムを形成できる。
保護膜形成用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムの前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0185】
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0186】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒間~5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0187】
<保護膜形成用組成物(IV-1)>
保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a0)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)等が挙げられる。
【0188】
[エネルギー線硬化性成分(a0)]
エネルギー線硬化性成分(a0)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a0)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物が挙げられる。
【0189】
エネルギー線硬化性成分(a0)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0190】
エネルギー線硬化性成分(a0)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0191】
エネルギー線硬化性成分(a0)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート)、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0192】
エネルギー線硬化性成分(a0)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分(h)を構成する樹脂にも該当するが、本発明においてはエネルギー線硬化性成分(a0)として取り扱う。
【0193】
エネルギー線硬化性成分(a0)の分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0194】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するエネルギー線硬化性成分(a0)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0195】
[エネルギー線硬化性成分(a1)]
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムは、目的に応じて、エネルギー線硬化性成分(a0)以外のエネルギー線硬化性成分(a1)(本明細書においては、単に「エネルギー線硬化性成分(a1)」と称することがある)を含有していてもよい。
【0196】
エネルギー線硬化性成分(a1)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するための成分でもある。
【0197】
エネルギー線硬化性成分(a1)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体が挙げられる。エネルギー線硬化性成分(a1)は、その少なくとも一部が、後述する架橋剤(f)によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0198】
エネルギー線硬化性成分(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が重合してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0199】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(例えば、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0200】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(すなわち、非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0201】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0202】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール(すなわち、(メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0203】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0204】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0205】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0206】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0207】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0208】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0209】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0210】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量(総質量)に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0211】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0212】
アクリル系樹脂(a1-1)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)のアクリル系樹脂(a1-1)の含有量は、保護膜形成用組成物(IV-1)の総質量に対して、1~40質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。
【0213】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0214】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0215】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0216】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0217】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量(モル数)に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量(モル数)の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、硬化により形成された保護膜の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0218】
エネルギー線硬化性成分(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
【0219】
エネルギー線硬化性成分(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤(f)によって架橋されたものである場合、エネルギー線硬化性成分(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤(f)と反応する基を有するモノマーが重合して、架橋剤(f)と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0220】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するエネルギー線硬化性成分(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0221】
保護膜形成用組成物(IV-1)において、エネルギー線硬化性成分(a0)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a1)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0222】
[非エネルギー線硬化性重合体(b)]
非エネルギー線硬化性重合体(b)は、エネルギー線硬化性基を有しない重合体である。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が後述する架橋剤(f)によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0223】
非エネルギー線硬化性重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVAと略すことがある)、ブチラール樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。
【0224】
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。アクリル系重合体である前記重合体(b)と、δが7.5MPa1/2以下である樹脂成分(X)と、の組み合わせは、本実施形態において特に好ましく、このような組み合わせを選択した場合、保護膜形成用フィルム及び支持シート間の粘着力の経時変化、並びに保護膜及び支持シート間の粘着力の経時変化が、より顕著に抑制される。
また、前記重合体(b)がアクリル系重合体である場合、特に高極性のアクリル系重合体である場合には、保護膜形成用フィルムと半導体ウエハとの密着性、並びに、保護膜形成用フィルムと半導体チップとの密着性が、より向上し、保護膜と半導体ウエハとの密着性、並びに、保護膜と半導体チップとの密着性が、より向上する。ここで、「高極性のアクリル系重合体」としては、例えば、分極構造を有するアクリル系重合体や、SP値(Solubility Parameter、溶解パラメーター)が高いアクリル系重合体等が挙げられる。
【0225】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(すなわち、非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0226】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0227】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0228】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0229】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0230】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0231】
少なくとも一部が架橋剤(f)によって架橋された非エネルギー線硬化性重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤(f)と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤(f)の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤(f)がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤(f)がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0232】
前記反応性官能基を有する非エネルギー線硬化性重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0233】
反応性官能基を有する非エネルギー線硬化性重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量(総質量)に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~25質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0234】
非エネルギー線硬化性重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、保護膜形成用組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。
【0235】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する非エネルギー線硬化性重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0236】
保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量(総質量)に対する、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムの、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)の合計含有量)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、15~70質量%であることが特に好ましく、例えば、20~60質量%、25~50質量%、25~39質量%のいずれかであってもよい。前記合計含有量の割合がこのような範囲であることで、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0237】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、非エネルギー線硬化性重合体(b)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a0)及びエネルギー線硬化性成分(a1)の総含有量100質量部に対して、50~400質量部であることが好ましく、100~350質量部であることがより好ましく、150~300質量部であることが特に好ましく、150~280質量部であることが極めて好ましい。前記重合体(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0238】
[他の成分]
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムは、目的に応じて、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)のいずれにも該当しない、他の成分をさらに含有していてもよい。
【0239】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する前記他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0240】
前記他の成分としては、例えば、光重合開始剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、着色剤(g)、熱硬化性成分(h)、硬化促進剤(i)、汎用添加剤(z)等が挙げられる。
例えば、熱硬化性成分(h)を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)を用いることにより、形成される保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、この保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
【0241】
(光重合開始剤(c))
光重合開始剤(c)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のベンゾフェノン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、光重合開始剤(c)としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0242】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する光重合開始剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0243】
光重合開始剤(c)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、光重合開始剤(c)の含有量は、エネルギー線硬化性化合物(a0)及びエネルギー線硬化性成分(a1)の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~15質量部であることがより好ましく、0.05~10質量部であることが特に好ましい。
【0244】
(充填材(d))
保護膜形成用フィルムが充填材(d)を含有することにより、保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となる。そして、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、保護膜形成用フィルムが充填材(d)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
充填材(d)としては、例えば、熱伝導性材料からなるものが挙げられる。
【0245】
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0246】
充填材(d)の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01~20μmであることが好ましく、0.1~15μmであることがより好ましく、0.3~10μmであることが特に好ましい。充填材(d)の平均粒子径がこのような範囲であることで、保護膜の形成対象物に対する接着性を維持しつつ、保護膜の光の透過率の低下を抑制できる。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0247】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0248】
充填材(d)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量(総質量)に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムの充填材(d)の含有量)は、10~85質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~75質量%であることが特に好ましく、例えば、40~70質量%、及び45~65質量%のいずれかであってもよい。充填材(d)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0249】
(カップリング剤(e))
カップリング剤(e)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(e)を用いることで、保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0250】
カップリング剤(e)は、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)、非エネルギー線硬化性重合体(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0251】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0252】
カップリング剤(e)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(e)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上等、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0253】
(架橋剤(f))
架橋剤(f)を用いて、上述のエネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)又は非エネルギー線硬化性重合体(b)を架橋することにより、保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0254】
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(すなわち、金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(すなわち、アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0255】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0256】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0257】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0258】
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)又は非エネルギー線硬化性重合体(b)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)又は非エネルギー線硬化性重合体(b)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)とエネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)又は非エネルギー線硬化性重合体(b)との反応によって、保護膜形成用フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0259】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0260】
架橋剤(f)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、架橋剤(f)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a0)、エネルギー線硬化性成分(a1)及び非エネルギー線硬化性重合体(b)の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。
【0261】
(着色剤(g))
着色剤(g)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0262】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0263】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0264】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0265】
着色剤(g)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの着色剤(g)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、着色剤(g)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、印字視認性を調節する場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量(総質量)に対する着色剤(g)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムの着色剤(g)の含有量)は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.4~7.5質量%であることがより好ましく、0.8~5質量%であることが特に好ましい。着色剤(g)の前記含有量が前記下限値以上であることで、着色剤(g)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、着色剤(g)の前記含有量が前記上限値以下であることで、着色剤(g)の過剰使用が抑制される。
【0266】
(熱硬化性成分(h))
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0267】
熱硬化性成分(h)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0268】
*エポキシ系熱硬化性樹脂
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)からなる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0269】
・エポキシ樹脂(h1)
エポキシ樹脂(h1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0270】
エポキシ樹脂(h1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0271】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基ともいう)、2-プロペニル基(アリル基ともいう)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0272】
エポキシ樹脂(h1)の数平均分子量は、特に限定されないが、保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
本明細書において、「数平均分子量」は、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値で表される数平均分子量を意味する。
エポキシ樹脂(h1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~800g/eqであることがより好ましい。
本明細書において、「エポキシ当量」とは1当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数(g/eq)を意味し、JIS K 7236:2001の方法に従って測定することができる。
【0273】
エポキシ樹脂(h1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0274】
・熱硬化剤(h2)
熱硬化剤(h2)は、エポキシ樹脂(h1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(h2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0275】
熱硬化剤(h2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0276】
熱硬化剤(h2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(h2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0277】
熱硬化剤(h2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(h2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0278】
熱硬化剤(h2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。 熱硬化剤(h2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0279】
熱硬化剤(h2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0280】
熱硬化性成分(h)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(h2)の含有量は、エポキシ樹脂(h1)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0281】
熱硬化性成分(h)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(h)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)の総含有量)は、非エネルギー線硬化性重合体(b)の含有量100質量部に対して、1~500質量部であることが好ましい。
【0282】
(硬化促進剤(i))
硬化促進剤(i)は、保護膜形成用フィルムの硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(i)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0283】
硬化促進剤(i)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
硬化促進剤(i)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの硬化促進剤(i)の含有量は、特に限定されず、併用する成分に応じて適宜選択すればよい。
【0284】
(汎用添加剤(z))
汎用添加剤(z)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0285】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(z)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
汎用添加剤(z)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(z)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0286】
(溶媒)
保護膜形成用組成物(IV-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オールともいう)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(すなわち、アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0287】
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する溶媒は、保護膜形成用組成物(IV-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン又は酢酸エチル等であることが好ましい。
【0288】
保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒、非エネルギー線硬化性重合体(b)、充填材(d)及び着色剤(g)のいずれにも該当しない全ての成分の総含有量(合計質量)に対する、エネルギー線硬化性成分(a0)及び光重合開始剤(c)の合計含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムにおける、非エネルギー線硬化性重合体(b)、充填材(d)及び着色剤(g)のいずれにも該当しない全ての成分の総含有量に対する、エネルギー線硬化性成分(a0)及び光重合開始剤(c)の合計含有量の割合)は、好ましくは85質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下であってもよく、100質量%であってもよい。前記合計含有量の割合がこのような数値であることで、保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルム及び支持シート間の粘着力の経時変化、並びに保護膜及び支持シート間の粘着力の経時変化が、より抑制される。
【0289】
<<保護膜形成用組成物の製造方法>>
保護膜形成用組成物(IV-1)等の保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0290】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
【0291】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、前記組成物から形成された層の上に、さらに組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。
ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に前記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0292】
例えば、基材上に粘着剤層が積層され、前記粘着剤層上に保護膜形成用フィルムが積層されてなる保護膜形成用複合シート(支持シートが基材及び粘着剤層の積層物である保護膜形成用複合シート)を製造する場合には、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層しておき、別途、剥離フィルム上に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に保護膜形成用フィルムを形成しておく。そして、この保護膜形成用フィルムの露出面を、基材上に積層済みの粘着剤層の露出面と貼り合わせて、保護膜形成用フィルムを粘着剤層上に積層することで、保護膜形成用複合シートが得られる。
【0293】
なお、基材上に粘着剤層を積層する場合には、上述の様に、基材上に粘着剤組成物を塗工する方法に代えて、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、粘着剤層を基材上に積層してもよい。
いずれの方法においても、剥離フィルムは目的とする積層構造を形成後の任意のタイミングで取り除けばよい。
【0294】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0295】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、保護膜形成用複合シートが得られる。
【0296】
◇半導体チップの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、半導体チップの製造に用いることができる。
このときの半導体チップの製造方法としては、例えば、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(以下、「貼付工程」と略記することがある)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射することによって、保護膜を形成する工程(以下、「保護膜形成工程」と略記することがある)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜又は前記保護膜形成用フィルムを切断して、切断後の保護膜又は切断後の保護膜形成用フィルムを備えた複数個の半導体チップを得る工程(以下、「分割工程」と略記することがある)と、前記切断後の保護膜又は前記切断後の保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(以下、「ピックアップ工程」と略記することがある)と、を含む方法が挙げられる。 前記製造方法においては、前記貼付工程後に、前記保護膜形成工程、分割工程及びピックアップ工程を行う。そして、分割工程後にピックアップ工程を行うが、この点を除けば、保護膜形成工程、分割工程及びピックアップ工程を行う順序は、目的に応じて任意に設定できる。
すなわち、前記半導体チップの製造方法は、1つの側面として、前記貼付工程後に、前記保護膜形成工程、前記分割工程、前記ピックアップ工程の順に行ってもよいし、前記貼付工程後に、前記分割工程、前記ピックアップ工程、前記保護膜形成工程の順に行ってもよいし、前記貼付工程後に、前記分割工程、前記保護膜形成工程、前記ピックアップ工程の順に行ってもよい。
【0297】
前記保護膜形成用複合シートの使用対象である半導体ウエハの厚さは、特に限定されないが、後述する半導体チップへの分割がより容易となる点では、30~1000μmであることが好ましく、100~400μmであることがより好ましい。
【0298】
以下、図面を参照しながら、上述の製造方法について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。ここでは保護膜形成用複合シートが図1に示すものである場合の製造方法を例に挙げて、説明する。
本実施形態の製造方法(本明細書においては、「製造方法(1)」と称することがある)は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(貼付工程)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して、保護膜を形成する工程(保護膜形成工程)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜を切断して、切断後の保護膜を備えた複数個の半導体チップを得る工程(分割工程)と、前記切断後の保護膜を備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(ピックアップ工程)と、を有する。
【0299】
製造方法(1)の前記貼付工程においては、図4(a)に示すように、半導体ウエハ9の裏面9bに、保護膜形成用複合シート1A中の保護膜形成用フィルム13を貼付する。
保護膜形成用複合シート1Aは、剥離フィルム15を取り除いて用いる。
前記貼付工程においては、保護膜形成用フィルムを加熱することにより軟化させて、半導体ウエハ9に貼付してもよい。
なお、ここでは、半導体ウエハ9において、回路面上のバンプ等の図示を省略している。
【0300】
製造方法(1)の貼付工程後は、前記保護膜形成工程において、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射して、図4(b)に示すように、保護膜13’を形成する。このとき、エネルギー線は、支持シート10を介して保護膜形成用フィルム13に照射する。
なお、ここでは、保護膜形成用フィルム13が保護膜13’となった後の保護膜形成用複合シートを、符号1A’で示している。これは、以降の図においても同様である。
【0301】
保護膜形成工程において、保護膜形成用フィルム13に照射するエネルギー線の照度及び光量は、先に説明したとおりである。
【0302】
保護膜形成用複合シート1Aにおいては、先に説明したとおり、エネルギー線硬化性成分(a0)が、保護膜形成用フィルム13中に安定して留まり、この成分の隣接する支持シート10への移行が抑制される。したがって、保護膜形成用複合シート1Aの製造直後から、保護膜形成工程の開始時まで、保護膜形成用フィルム13の組成の変化が抑制される。そして、保護膜形成工程においては、保護膜形成用フィルム13が十分に硬化して、硬化度が高い保護膜13’が形成される。
【0303】
製造方法(1)の前記分割工程においては、半導体ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断して、図4(c)に示すように、切断後の保護膜130’を備えた複数個の半導体チップ9’を得る。このとき、保護膜13’は半導体チップ9’の周縁部に沿った位置で切断(分割)される。
【0304】
前記分割工程において、半導体ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断する方法は、公知の方法でよい。
このような方法としては、例えば、ダイシングブレードを用いて、半導体ウエハ9を保護膜13’ごと分割(切断)する方法;半導体ウエハ9の内部に設定された焦点に集束するようにレーザー光を照射して、半導体ウエハ9の内部に改質層を形成し、次いで、この改質層が形成され、かつ裏面9bには保護膜13’が貼付された半導体ウエハ9を、この保護膜13’とともに、保護膜13’の表面方向にエキスパンドして、保護膜13’を切断するとともに、改質層の部位において半導体ウエハ9を分割する方法等が挙げられる。
【0305】
製造方法(1)の前記ピックアップ工程においては、図4(d)に示すように、切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’を、支持シート10から引き離してピックアップする。ここでは、ピックアップの方向を矢印Iで示しているが、これは以降の図においても同様である。半導体チップ9’を保護膜130’ごと支持シート10から引き離すための引き離し手段8としては、真空コレット等が挙げられる。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
【0306】
製造方法(1)で用いた保護膜形成用複合シート1Aは、先に説明したとおり、保護膜形成用フィルム13と支持シート10との間の粘着力の経時による変化が抑制され、同様に、保護膜13’(切断後の保護膜130’)と支持シート10との間の粘着力の経時による変化が抑制される。したがって、製造方法(1)においては、前記ピックアップ工程において、保護膜付き半導体チップ(切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’)を支持シート10からピックアップするときの再現性が向上し、工程が安定化する。
【0307】
製造方法(1)においては、保護膜形成工程後に分割工程を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、保護膜形成工程を行わずに分割工程を行い、分割工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(2)」と称することがある)。
すなわち、本実施形態の製造方法(製造方法(2))は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(貼付工程)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜形成用フィルムを切断して、切断後の保護膜形成用フィルムを備えた複数個の半導体チップを得る工程(分割工程)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルム(切断後の保護膜形成用フィルム)にエネルギー線を照射して、保護膜を形成する工程(保護膜形成工程)と、前記切断後の保護膜を備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(以下、「ピックアップ工程」と略記することがある)と、を有する。
図5は、このような半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
【0308】
製造方法(2)の前記貼付工程は、図5(a)に示すように、製造方法(1)の貼付工程と同様の方法で(図4(a)に示すように)行うことができる。
【0309】
製造方法(2)の前記分割工程においては、半導体ウエハ9を分割し、保護膜形成用フィルム13を切断して、図5(b)に示すように、切断後の保護膜形成用フィルム130を備えた複数個の半導体チップ9’を得る。このとき、保護膜形成用フィルム13は半導体チップ9’の周縁部に沿った位置で切断(分割)される。この切断後の保護膜形成用フィルム13を符号130で示している。
【0310】
製造方法(2)で用いた保護膜形成用複合シート1Aは、先に説明したとおり、保護膜形成用フィルム13と支持シート10との間の粘着力の経時による変化が抑制される。したがって、製造方法(2)においては、前記分割工程において、保護膜形成用フィルム付き半導体チップ(切断後の保護膜形成用フィルム130を備えた半導体チップ9’)の支持シート10からの剥離が抑制される等、分割の再現性が向上し、工程が安定化する。
【0311】
製造方法(2)の前記保護膜形成工程においては、支持シート10を介して保護膜形成用フィルム130にエネルギー線を照射して、図5(c)に示すように、半導体チップ9’に保護膜130’を形成する。
製造方法(2)における保護膜形成工程は、上述の製造方法(1)における保護膜形成工程と同様の方法で行うことができる。そして、本工程においては、切断後の保護膜形成用フィルム130が十分に硬化して、硬化度が高い保護膜130’が形成される。
本工程を行うことにより、製造方法(1)の分割工程終了後、すなわち、図4(c)と同じ状態の保護膜付き半導体チップが得られる。
【0312】
製造方法(2)の前記ピックアップ工程においては、図5(d)に示すように、切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’を、支持シート10から引き離してピックアップする。
製造方法(2)におけるピックアップ工程は、上述の製造方法(1)におけるピックアップ工程と同様の方法で(図4(d)に示すように)行うことができる。そして、本工程においては、保護膜付き半導体チップ(切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’)を支持シート10からピックアップするときの再現性が向上し、工程が安定化する。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
【0313】
製造方法(1)及び(2)においては、保護膜形成工程後にピックアップ工程を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、保護膜形成工程を行わずにピックアップ工程までを行い、ピックアップ工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(3)」と称することがある)。
すなわち、本実施形態の製造方法(製造方法(3))は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(貼付工程)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜形成用フィルムを切断して、切断後の保護膜形成用フィルムを備えた複数個の半導体チップを得る工程(分割工程)と、前記切断後の保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(ピックアップ工程)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルム(切断及びピックアップ後の保護膜形成用フィルム)にエネルギー線を照射して、保護膜を形成する工程(保護膜形成工程)と、を有する。
図6は、このような半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
【0314】
製造方法(3)の前記貼付工程及び分割工程は、図6(a)~図6(b)に示すように、製造方法(2)の貼付工程及び分割工程と同様の方法で(図5(a)~図5(b)に示すように)行うことができる。
【0315】
製造方法(3)の前記ピックアップ工程においては、図6(c)に示すように、切断後の保護膜形成用フィルム130を備えた半導体チップ9’を、支持シート10から引き離してピックアップする。
製造方法(3)におけるピックアップ工程は、上述の製造方法(1)及び(2)におけるピックアップ工程と同様の方法で(図4(d)及び図5(d)に示すように)行うことができる。そして、本工程においては、保護膜形成用フィルム付き半導体チップ(切断後の保護膜形成用フィルム130を備えた半導体チップ9’)を支持シート10からピックアップするときの再現性が向上し、工程が安定化する。
【0316】
製造方法(3)の前記保護膜形成工程においては、ピックアップ後の保護膜形成用フィルム130にエネルギー線を照射して、図6(d)に示すように、半導体チップ9’に保護膜130’を形成する。
製造方法(3)における保護膜形成工程は、保護膜形成用フィルム130へのエネルギー線の照射を、支持シート10を介して行う必要がない点以外は、上述の製造方法(1)及び(2)における保護膜形成工程と同様の方法で行うことができる。そして、本工程においては、切断後の保護膜形成用フィルム130が十分に硬化して、硬化度が高い保護膜130’が形成される。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
【0317】
製造方法(1)~(3)においては、先に説明したとおり、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’を得る方法として、ダイシングブレードを用いずに、半導体ウエハ9の内部に改質層を形成し、この改質層の部位において半導体ウエハ9を分割する方法を適用できる。この場合、前記分割工程のうち、半導体ウエハ9の内部に改質層を形成する工程は、改質層の部位において半導体ウエハ9を分割する工程より前の段階であれば、いずれの段階で行ってもよく、例えば、貼付工程の前、貼付工程と保護膜形成工程との間、等のいずれかの段階で行うことができる。
【0318】
ここまでは、図1に示す保護膜形成用複合シート1Aを用いた場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、本発明の半導体チップの製造方法は、これに限定されない。
例えば、本発明の半導体チップの製造方法は、図2図3に示す保護膜形成用複合シート1B~1Cや、さらに前記中間層を備えた保護膜形成用複合シート等、図1に示す保護膜形成用複合シート1A以外のものを用いても、同様に半導体チップを製造できる。
このように、他の実施形態の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、これらシートの構造の相違に基づいて、上述の製造方法において、適宜、工程の追加、変更、削除等を行って、半導体チップを製造すればよい。
【0319】
◇半導体装置の製造方法
上述の製造方法により、保護膜付き半導体チップを得た後は、公知の方法により、この半導体チップを、基板の回路面にフリップチップ接続した後、半導体パッケージとし、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を作製すればよい(図示略)。
【0320】
本発明の1つの側面は、保護膜形成用複合シートが、支持シートと、前記支持シート上に備えられたエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムとを含み、
前記保護膜形成用フィルムは、
エネルギー線硬化性成分(a0)として、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物、好ましくはε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート(含有量:保護膜形成用組成物(IV-1)の溶媒以外の成分の総質量に対して、好ましくは5~15質量%)と、
非エネルギー線硬化性重合体(b)として、アクリル系重合体、好ましくはアクリル酸メチルとアクリル酸2-ヒドロキシエチルを共重合してなるアクリル系重合体(含有量:保護膜形成用組成物(IV-1)の溶媒以外の成分の総質量に対して、好ましくは25~30質量%)と、を含み;
前記支持シート中の前記保護膜形成用フィルムと接触する層は、
樹脂成分(X)として、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と官能基含有モノマー由来の構成単位とを有するアクリル系重合体、より好ましくはメタクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合体(含有量:前記支持シート中の前記保護膜形成用フィルムと接触する層を構成する成分の総質量に対して、好ましくは100質量%)、
を含む。
さらに、前記保護膜形成用複合シートは、前記保護膜と前記支持シートとの間の粘着力の変化率が5%以上30%以下であることが好しく、5%以上23%以下であってもよく、14~23%であってもよい。
【実施例
【0321】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0322】
<モノマー>
略記しているモノマーの正式名称を、以下に示す。
MA:アクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
MMA:メタクリル酸メチル
2EHMA:メタクリル酸-2-エチルヘキシル
2EHA:アクリル酸-2-エチルヘキシル
AAc:アクリル酸
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
Vac:酢酸ビニル
【0323】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[エネルギー線硬化性成分(a0)]
(a0)-1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製「A-9300-1CL」、3官能紫外線硬化性化合物)
[非エネルギー線硬化性重合体(b)]
(b)-1:MA(85質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量300000、ガラス転移温度6℃)。
[光重合開始剤(c)]
(c)-1:2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン(BASF社製「Irgacure(登録商標)369」)
[充填材(d)]
(d)-1:シリカフィラー(溶融石英フィラー、平均粒子径8μm)
[カップリング剤]
(e)-1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM-503」、シランカップリング剤)
[着色剤(g)]
(g)-1:フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)32質量部と、イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)18質量部と、アントラキノン系赤色色素(Pigment Red 177)50質量部とを混合し、前記3種の色素の合計量/スチレンアクリル樹脂量=1/3(質量比)となるように顔料化して得られた顔料。
【0324】
[実施例1]
<保護膜形成用複合シートの製造>
(保護膜形成用組成物(IV-1)の製造)
エネルギー線硬化性成分(a0)-1、重合体(b)-1、光重合開始剤(c)-1、充填材(d)-1、カップリング剤(e)-1及び着色剤(g)-1を、これらの含有量(固形分量、質量部)が表1に示す値となるようにメチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、固形分濃度が50質量%である保護膜形成用組成物(IV-1)を調製した。
【0325】
(粘着剤組成物(I-4)の製造)
アクリル系重合体(X)-1(100質量部、固形分)、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物)(5質量部、固形分)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有する、固形分濃度が30質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-1を調製した。前記アクリル系重合体(X)-1は、2EHMA(80質量部)、及びHEA(20質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が600000の重合体である。
【0326】
(支持シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-4)-1を塗工し、120℃で2分間加熱乾燥させることにより、厚さ10μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層の露出面に、基材としてポリプロピレン系フィルム(厚さ80μm)を貼り合せることにより、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる支持シートを得た。
【0327】
(保護膜形成用複合シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET382150」、厚さ38μm)の前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(IV-1)を塗工し、100℃で2間分乾燥させることにより、厚さ25μmのエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
さらに、得られた保護膜形成用フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成用フィルムの一方の表面に第1剥離フィルムを備え、他方の表面に第2剥離フィルムを備えた積層フィルムを得た。
【0328】
次いで、上記で得られた支持シートの粘着剤層から剥離フィルムを取り除いた。また、上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成用フィルムの露出面と、を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる、図2に示す構造を有する保護膜形成用複合シートを作製した。
【0329】
<保護膜形成用複合シートの評価>
(エネルギー線硬化性成分(a0)、非エネルギー線硬化性重合体(b)及び樹脂成分(X)のHSPの算出、並びに、非エネルギー線硬化性重合体(b)のハンセン溶解球の作製)
保護膜形成用フィルムの含有成分であるエネルギー線硬化性成分(a0)-1及び非エネルギー線硬化性重合体(b)-1、並びに粘着剤層の含有成分であるアクリル系重合体(X)-1について、HSPを算出した。より具体的には、以下のとおりである。
対象成分の溶解性を確認する溶媒として、HSPが既知であるアセトン、シクロヘキサノン、トルエン、2-プロパノール、プロピレングリコール、ジメチルホルムアミド、キノリン、ベンジルアルコール、安息香酸エチル、ヘキサン、テトラクロロエチレン、ジエチレングリコール、アセトニトリル、シクロヘキサノール、ニトロベンゼン、1-ブタノール、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、オルトケイ酸テトラエチレル及びγ-ブチロラクトンを用いた。
これらの溶媒を1種ずつ容器中に入れ、23℃の温度条件下で温度を安定化させたこれら溶媒(2mL)に、対象成分(15mg)を添加し、容器に蓋を装着して、密封した。
この密封後の容器を50回転倒させることで内容物を混合し、次いで、容器(換言すると前記中間混合物)を4時間静置し、次いで、上記と同様に容器を50回転倒させることで内容物(換言すると前記中間混合物)を混合し、次いで、容器(換言すると得られた最終混合物)を1日静置した。この間、これら混合及び静置の操作は、すべて23℃の温度条件下で行った。
次いで、直ちに、前記最終混合物中での対象成分の溶解の有無を、目視によって確認した。そして、前記最終混合物中に対象成分の不溶物(溶け残り)がたとえ僅かでも認められた場合には、対象成分は「不溶」と判定し、前記最終混合物中に対象成分の不溶物が全く認められなかった場合には、対象成分は「溶解」と判定した。
【0330】
次いで、解析ソフト「HSPiP(バージョン4.1)」を用い、すべての溶媒について、そのHSPと、上記の判定結果と、を入力し、対象成分のHSPを算出し、さらに、非エネルギー線硬化性重合体(b)-1について、HSP空間内においてハンセン溶解球を作製した。そして、エネルギー線硬化性成分(a0)-1のHSPが、HSP空間内において、この非エネルギー線硬化性重合体(b)-1のハンセン溶解球の領域に含まれるか否かを確認した。結果を表1に示す。表1には、アクリル系重合体(X)-1のδ(δP1)もあわせて示している。
【0331】
(保護膜と支持シートとの間の粘着力の変化率の算出)
上記で得られた保護膜形成用複合シートを、そのすべての層の幅が25mmである短冊状に裁断した。
次いで、この裁断後の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから、第2剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面を、6インチシリコンウエハ(厚さ300μm)の#2000研磨面に貼付した。このとき、保護膜形成用フィルムは70℃に加熱して貼付した。
【0332】
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD2000m/8」)を用いて、照度200mW/cm、光量200mJ/cmの条件で、前記基材及び粘着剤層を介して保護膜形成用フィルムに紫外線を3回照射することで、保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜とし、得られたものを試験片とした。
【0333】
保護膜形成用複合シートを作製してから1時間後に、この試験片について、保護膜と支持シート(粘着剤層)との間の経時前粘着力を測定した。
保護膜と支持シート(粘着剤層)との間の経時前粘着力は、以下の方法で測定した。すなわち、23℃の条件下で、精密万能試験機(島津製作所製「オートグラフAG-IS」)を用いて、前記シリコンウエハに貼付されている保護膜から支持シートを、保護膜及び支持シート(換言すると粘着剤層)の互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度300mm/minで引き剥がす、いわゆる180°剥離を行った。そして、このときの剥離力(N/25mm)を測定して、この測定値を保護膜と支持シートとの間の経時前粘着力とした。
【0334】
さらに、上記と同じ方法で、別途試験片を作製し、保護膜形成用複合シートを作製してから48時間後に、保護膜と支持シート(粘着剤層)との間の経時後粘着力を、上記の経時前粘着力の場合と同じ方法で測定した。なお、作製後の試験片は、経時後粘着力を測定するまで、21~25℃、相対湿度45~65%の条件下で静置保存した。
【0335】
次いで、下記式に従って、保護膜と支持シート(粘着剤層)との間の粘着力の変化率(%)を算出した。結果を表1に示す。
[粘着力の変化率(%)]={[経時前粘着力(N/25mm)]-[経時後粘着力(N/25mm)]}/[経時前粘着力(N/25mm)]×100
【0336】
<保護膜形成用複合シートの製造及び評価>
[実施例2、比較例1~2]
粘着剤組成物の種類を、表1に示すように変更した点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0337】
なお、表1中、「粘着剤組成物(I-4)-2」とは、アクリル系重合体(X)-2(100質量部、固形分)、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物)(5質量部、固形分)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有する、固形分濃度が30質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物である。前記アクリル系重合体(X)-2は、2EHMA(70質量部)、及びHEA(30質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が600000の重合体である。
また、「粘着剤組成物(I-4)-3」とは、アクリル系重合体(X)-3(100質量部、固形分)、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物)(5質量部、固形分)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有する、固形分濃度が30質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物である。前記アクリル系重合体(X)-3は、2EHA(40質量部)、Vac(40質量部)及びHEA(20質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が600000の重合体である。
また、「粘着剤組成物(I-4)-4」とは、アクリル系重合体(X)-4(100質量部、固形分)、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物)(5質量部、固形分)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有する、固形分濃度が30質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物である。前記アクリル系重合体(X)-4は、2EHA(20質量部)、MMA(78質量部)、AAc(1質量部)及びHEMA(1質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が600000の重合体である。
【0338】
【表1】
【0339】
上記結果から明らかなように、実施例1~2においては、樹脂成分(X)の極性項δ(δP1)が7.26MPa1/2以下(6.4~7.26MPa1/2)であった。また、エネルギー線硬化性成分(a0)-1のHSPが、HSP空間内において、非エネルギー線硬化性重合体(b)-1のハンセン溶解球の領域に含まれていた。そして、保護膜と支持シート(粘着剤層)との間の粘着力の変化率が23%以下(14~23%)と低く、前記粘着力の経時による変化が抑制されていた。
【0340】
これに対して、比較例1~2においては、樹脂成分(X)の極性項δ(δP1)が7.9MPa1/2以上(7.9~9.8MPa1/2)であり、これら比較例では、保護膜と支持シート(粘着剤層)との間の粘着力の変化率が34%以上(34~39%)と高く、前記粘着力の経時による変化が抑制されていなかった。
比較例1でこのような結果が得られたのは、アクリル系重合体(X)-3の使用が不適切であったためであると考えられる。
一方、比較例2でこのような結果が得られたのは、アクリル系重合体(X)-4の使用が不適切であったためであると考えられる。
【0341】
これら実施例及び比較例の結果から、保護膜と支持シートとの間の粘着力の経時による変化は、樹脂成分(X)の極性項δの影響を受けることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0342】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能であるので産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0343】
1A,1A’,1B,1C・・・保護膜形成用複合シート、10・・・支持シート、10a・・・支持シートの表面(第1面)、11・・・基材、11a・・・基材の表面(第1面)、12・・・粘着剤層、12a・・・粘着剤層の表面(第1面)、13,23・・・保護膜形成用フィルム、130・・・切断後の保護膜形成用フィルム、13a,23a・・・保護膜形成用フィルムの表面(第1面)、13b・・・保護膜形成用フィルムの表面(第2面)、13’・・・保護膜、130’・・・切断後の保護膜、15・・・剥離フィルム、16・・・治具用接着剤層、16a・・・治具用接着剤層の表面、9・・・半導体ウエハ、9b・・・半導体ウエハの裏面、9’・・・半導体チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6