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特許7132942バルク酸化物の平坦化のための自己停止研磨組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】バルク酸化物の平坦化のための自己停止研磨組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220831BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20220831BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20220831BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019556638
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018024067
(87)【国際公開番号】W WO2018194792
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】62/486,219
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ダブリュ.ヘインズ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ティナ シー.リー
(72)【発明者】
【氏名】ビエット ラム
(72)【発明者】
【氏名】チー ツイ
(72)【発明者】
【氏名】サラ ブロスナン
(72)【発明者】
【氏名】ナム チョル ウ
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-094233(JP,A)
【文献】特開2014-051576(JP,A)
【文献】特表2008-539581(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0058586(KR,A)
【文献】国際公開第2017/011451(WO,A1)
【文献】特表2016-531429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨組成物であって、
(a)セリア、ジルコニア、およびそれらの組み合わせから選択される研削材と、
(b)マルトール、エチルマルトール、コウジ酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、カフェー酸、ソルビン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、デフェリプロン、2-ヒドロキシニコチン酸、2-ペンテン酸、3-ペンテン酸、他の飽和および不飽和アルキルカルボン酸、それらの塩、ならびにそれらの組み合わせから選択される自己停止剤と、
(c)水性キャリアと、
(d)カチオン性化合物であって、前記カチオン性化合物は、4級アミン、カチオン性ポリビニルアルコール、カチオン性セルロース、およびそれらの組み合わせから選択されるモノマーを含むポリマーまたはオリゴマーである、カチオン性化合物と、
を含み、
前記研磨組成物が3~9のpHを有する、化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記研磨組成物は速度向上剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
前記研削材が、前記研磨組成物中に0.001質量%~5質量%の濃度で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記自己停止剤が、前記研磨組成物中に1質量%以下の濃度で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記カチオン性化合物は、4級アミンモノマーを含むポリマーまたはオリゴマーであり、前記4級アミンモノマーは、ビニルイミダゾリウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド、ジアリルジメチルアンモニウムハライド、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記カチオン性化合物が、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウム、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)ハライド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ハライド、ポリクオタニウム-2、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-46、ポリクオタニウム-44、Luviquat Supreme、Luviquat Hold、Luviquat UltraCare、Luviquat FC 370、Luviquat FC 550、Luviquat FC 552、Luviquat Excellence、およびそれらの組み合わせから選択される、カチオン性オリゴマーまたはカチオン性ポリマーである、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記研磨組成物が6.0~8.5のpHを有する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項8】
前記研磨組成物が3~5のpHを有する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項9】
化学機械研磨組成物であって、
(a)セリア、ジルコニア、およびそれらの組み合わせから選択される研削材と、
(b)自己停止剤であって、式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環式アルキル、および複素環式アリールからなる群から選択され、これらは各々が置換または非置換であってもよい、式(I)の化合物から選択される自己停止剤と、
(c)カチオン性ポリマーと、
(d)水性キャリアと、を含み、
前記研磨組成物が7~9のpHを有する、化学機械研磨組成物。
【請求項10】
前記自己停止剤が、ヒドロキサム酸、アセトヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸およびそれらの組み合わせから選択される、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項11】
前記カチオン性ポリマーが、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウム、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)ハライド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド、ポリクオタニウム-2、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-46、ポリクオタニウム-44、Luviquat Supreme、Luviquat Hold、Luviquat UltraCare、Luviquat FC 370、Luviquat FC 550、Luviquat FC 552、Luviquat Excellence、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項12】
前記研磨組成物が速度向上剤をさらに含む、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項13】
前記自己停止剤が、前記研磨組成物中に1質量%以下の濃度で存在する、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項14】
前記研削材がセリアである、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項15】
前記研削材が、前記研磨組成物中に0.001質量%~5質量%の濃度で存在する、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項16】
基板を化学機械的に研磨する方法であって、
(i)基板を提供することであって、前記基板は、前記基板の表面上にパターン誘電体層を含む、基板を提供することと、
(ii)研磨パッドを提供することと、
(iii)請求項1に記載の化学機械研磨組成物を提供することと、
(iv)前記基板を前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物と接触させることと、
(v)前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物を前記基板に対して動かし、前記基板の表面上における前記パターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、前記基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械的に研磨する方法。
【請求項17】
基板を化学機械的に研磨する方法であって、
(i)基板を提供することであって、前記基板は、前記基板の表面上にパターン誘電体層を含む、基板を提供することと、
(ii)研磨パッドを提供することと、
(iii)請求項に記載の化学機械研磨組成物を提供することと、
(iv)前記基板を前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物と接触させることと、
(v)前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物を前記基板に対して動かし、前記基板の表面上における前記パターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、前記基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械的に研磨する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
集積回路および他の電子デバイスの製造において、導電性、半導体、および誘電体材料の複数の層が基板表面上に堆積され、または基板表面から除去される。材料の層が基板上に順次堆積され、基板から除去されるにつれて、基板の最上面は非平面状になり得、平坦化を必要とし得る。表面を平坦化すること、または表面を「研磨すること」は、材料が基板の表面から除去されて、概して均一で平坦な表面を形成するプロセスである。平坦化は、粗い表面、凝集した材料、結晶格子損傷、スクラッチ、および汚染された層または材料などの望ましくない表面トポグラフィーおよび表面欠陥を除去するのに有用である。平坦化はまた、フィーチャを充填するために使用される過剰に堆積された材料を除去することによって基板上にフィーチャを形成し、メタライズおよび加工の後続の平面のための均一な表面を提供するのに有用である。
【0002】
基板の表面を平坦化または研磨するための組成物および方法は、当該技術分野において周知である。化学機械平坦化、すなわち化学機械研磨(CMP)は、基板を平坦化するために使用される一般的な技術である。CMPは、基板から材料を選択的に除去するために、CMP組成物、またはより簡単に研磨組成物(研磨スラリーとも称される)として既知の化学組成物を利用する。研磨組成物は、通常、基板の表面を、研磨組物を十分にしみ込ませた研磨パッド(例えば、研磨布または研磨ディスク)と接触させることにより基板に適用される。基板の研磨は、典型的には、研磨組成物の化学的活性、および/または研磨組成物中に懸濁した、もしくは研磨用パッド(例えば、固定研削材研磨用パッド)に組み込まれている研削材の機械的活性によってさらに補助される。
【0003】
集積回路のサイズが縮小され、チップ上の集積回路の数が増加するにつれて、回路を構成する部品は、典型的なチップ上で利用可能な限られたスペースに適合するために、互いにより接近して配置されなければならない。最適な半導体性能を確保するには、回路間の効果的な分離が重要である。そのために、浅いトレンチが半導体基板内にエッチングされ、絶縁材料で充填されて、集積回路のアクティブ領域を隔離する。より具体的には、シャロートレンチアイソレーション(STI)は、窒化ケイ素層がシリコン基板上に形成され、浅いトレンチがエッチングまたはフォトリソグラフィを介して形成され、誘電体層が堆積されてトレンチを充填するプロセスである。このようにして形成されたトレンチの深さの変化に起因して、全トレンチの完全な充填を確実にするために、基板の上に過剰の誘電体材料を堆積させることが通常は必要である。誘電体材料(例えば、酸化ケイ素)は、下にある基板のトポグラフィーに適合する。
【0004】
したがって、誘電体材料が配置された後、堆積された誘電体材料の表面は、誘電体材料のトレンチによって分離された、誘電体材料の隆起領域の平らでない組み合わせを特徴とし、誘電体材料の隆起領域およびトレンチは下にある表面の対応する隆起領域およびトレンチと整合する。隆起した誘電体材料およびトレンチを含む基板表面の領域は、基板のパターンフィールド、例えば「パターン材料」、「パターン酸化物」、または「パターン誘電体」と呼ばれる。パターンフィールドは、誘電体材料のトレンチの高さに対する隆起領域の高さの差である「ステップ高さ」を特徴とする。
【0005】
過剰な誘電体材料は、典型的にはCMPプロセスによって除去され、それによってさらなる追加の加工のための平坦な表面が提供される。隆起した領域の材料を除去する際に、トレンチからも一定量の材料が除去される。このトレンチからの材料の除去は、「トレンチ侵食」または「トレンチ損失」と呼ばれる。トレンチ損失は、初期のステップ高さを除くことによりパターン誘電体材料の平坦化を達成する際に、トレンチから除去される材料の量である(例えば、オングストローム(Å)で表される厚さ)。トレンチ損失は、最初のトレンチの厚さから最終的なトレンチの厚さを引いたものとして計算される。トレンチからの材料の除去速度は、隆起領域からの除去速度よりもはるかに低いことが望ましい。したがって、隆起領域の材料が(トレンチから除去される材料と比較してより速い速度で)除去されると、パターン誘電体は、加工された基板表面の「ブランケット」領域、例えば、「ブランケット誘電体」または「ブランケット酸化物」と呼ぶことができる高度に平坦化された表面になる。
【0006】
研磨組成物は、その研磨速度(すなわち、除去速度)およびその平坦化効率に従って特徴付けることができる。研磨速度は、基板の表面から材料を除去する速度を指し、通常単位時間当たり(例えば、毎分)の長さの単位(例えば、オングストローム(Å)で表される厚さ)で表される。基板の異なる領域、または研磨ステップの異なる段階に関連する異なる除去速度は、プロセス性能を評価する上で重要になり得る。「パターン除去速度」は、基板が相当のステップ高さを示すプロセスの段階で、パターン誘電体層の隆起領域から誘電体材料を除去する速度である。「ブランケット除去速度」は、研磨ステップの終了時、ステップ高さが大幅に(例えば、本質的に完全に)減少したときに、パターン誘電体層の平坦化された領域(すなわち「ブランケット」)から誘電体材料を除去する速度を指す。平坦化効率は、基板から除去される材料の量に対するステップ高さの低減(すなわち、トレンチ損失で割ったステップ高さの低減)に関連する。具体的には、研磨表面、例えば研磨用パッドは、最初に表面の「高い点」に接触し、平坦な表面を形成するために材料を除去しなければならない。より少ない材料の除去により平坦な表面の達成をもたらすプロセスは、平坦性を達成するためにより多くの材料を除去する必要があるプロセスよりも効率的であると考えられる。
【0007】
多くの場合、酸化ケイ素パターン材料の除去速度は、STIプロセスにおける誘電体研磨工程の律速になる場合があり、したがって、デバイススループットを向上させるために、酸化ケイ素パターンの高い除去速度が所望される。しかし、ブランケット除去速度が速すぎる場合、露出したトレンチ内の酸化物の過剰研磨は、トレンチの侵食およびデバイス欠陥の増加を引き起こす。ブランケット除去速度を低下させれば、過剰研磨および関連するトレンチ損失を回避することができる。
【0008】
CMP組成物の特定の研磨用途では、表面の「高い点」(すなわち、隆起領域)の大部分が除去されると除去速度が低下するような「自己停止」挙動を示すことが望ましい。自己停止する研磨用途では、基板表面に著しいステップ高さが存在する間、除去速度は効果的に高くなり、その後、表面が効果的に平坦になると除去速度が低下する。さまざまな誘電体研磨ステップ(例えば、STIプロセスの)において、パターン誘電体材料(例えば、誘電体層)の除去速度は、通常プロセス全体の律速因子である。したがって、スループットを向上させるためには、パターン誘電体材料の高い除去速度が所望される。比較的低いトレンチ損失での高い効率も望ましい。さらに、平坦化を達成した後に誘電体の除去速度が高いままだと、過剰研磨が発生し、さらなるトレンチ損失が引き起こされる。
【0009】
自己停止スラリーの利点は、低下したブランケットの除去速度、それにより、終点のための長い観察期間が得られることに起因する。例えば、自己停止挙動により、誘電体膜厚が減少した基板の研磨が可能になり、それにより、構造化された下層の上に、材料の量を低減させて堆積させることが可能となる。また、モータートルクの終点検出を使用して、最終的なトポグラフィーをより効果的に監視することができる。平坦化後に誘電体の過剰研磨または不必要な除去を回避することにより、基板をより低いトレンチ損失で研磨することができる。
【0010】
現在、自己停止CMP組成物は、セリア/アニオン性高分子電解質系をベースに開発されている。例えば、米国特許出願公開第2008/0121839号は、無機研削材、ポリアクリル酸/マレイン酸コポリマー、およびジェミニ界面活性剤を含む研磨組成物を開示している。韓国特許第10-1524624号は、セリア、カルボン酸、および混合アミン化合物を含む研磨組成物を開示している(英語の要約)。国際特許出願公開第WO2006/115393号は、セリア、ヒドロキシカルボン酸、およびアミノアルコールを含む研磨組成物を開示している。しかし、半導体デバイスの構造がより複雑になり、特にNANDテクノロジーが2Dから3Dに移行するにあたり、現在の自己停止CMP組成物は、アニオン性ポリマーの使用のために、研削材と酸化ケイ素表面との間の静電反発力によりステップ高さ除去速度が制限される、という課題を抱えている。
【0011】
改善された平坦化効率も提供しながら有用な除去速度を提供する、酸化ケイ素含有基板の化学機械研磨のための組成物および方法の必要性が依然として残っている。本発明は、このような研磨組成物および方法を提供する。本発明のこれらの利点および他の利点、ならびに追加の発明的特徴は、本明細書で提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、研削材と、自己停止剤と、水性キャリアと、所望によりカチオン性化合物と、を含む化学機械研磨組成物、ならびに本発明の研磨組成物を使用して基板を研磨するために好適な方法を提供する。
【0013】
より具体的には、本発明は、化学機械研磨組成物であって、(a)研削材、(b)式Q-Bの自己停止剤であって、式中、Qは置換または非置換の疎水性基、または立体障害を与える基であってよく、Bは結合基であり、結合基はC(O)-X-OHまたは-C(O)-OHで、XはC1~C2アルキル基である構造を有する、自己停止剤、および(c)水性キャリアを含み、約3~約9のpHを有する研磨組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はまた、化学機械研磨組成物であって、(a)セリアを含む研削材、(b)コウジ酸(5-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-4H-ピラン-4-オン)、クロトン酸((E)-2-ブテン酸)、チグリン酸((2E)-2-メチルブタ-2-エン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、2-ペンテン酸、マルトール(3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン)、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、カフェー酸、エチルマルトール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、およびそれらの組み合わせから選択される自己停止剤、ならびに(c)水性キャリアを含み、約3~約9のpHを有する研磨組成物も提供する。
【0015】
本発明はまた、化学機械研磨組成物であって、(a)セリアを含む研削材と、(b)式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環式アルキル、および複素環式アリールからなる群から選択され、これらは各々が置換または非置換であってよい、式(I)の化合物、式(II)の化合物であって、
【化2】
式中、X~Xの各々が独立して、N、O、S、sp混成炭素、およびCYから選択され、YおよびYの各々が独立して、水素、ヒドロキシル、C~Cアルキル、ハロゲン、およびそれらの組合せから選択され、Z~Zの各々が独立して、水素、ヒドロキシル、C~Cアルキル、およびそれらの組合せから選択され、これらは各々が置換または非置換であってもよい、式(II)の化合物、式(III)の化合物であって、
Z-(C(X-COM (III)
式中、ZはC~C6アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、およびアリール(例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、アズレン、アントラセン、ピレンなど)から選択され、XおよびXは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、およびC~Cアルキルから選択され、XおよびXは、結合している炭素とともにsp混成炭素を形成することができ、nは1または2であり、pは0~4であり、Mは水素および好適な対イオン(例えば、第I族金属)から選択され、これらは各々が置換または非置換であってもよい、式(III)の化合物、ならびにそれらの組み合わせ、式(IV)の化合物であって、
【化3】
式中、X、YおよびZは独立して、H、O、S、NHおよびCHから選択され、R、RおよびRは独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、およびハロアルキルから選択され、Mは水素および好適な対イオンから選択される、式(IV)の化合物、から選択される自己停止剤と、(c)所望によりカチオン性ポリマーと、(d)水性キャリアとを含み、約3~約9のpHを有する、化学機械研磨組成物もまた提供する。
【0016】
本発明はさらに、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域(例えば、アクティブ領域対周辺領域)を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは酸化物の厚さ範囲(例えば、アクティブ対周辺)を表す、提供することと、(ii)研磨パッドを提供すること、(iii)本明細書に記載の化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨することと、を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】例示的な基板の断面図を示し、アクティブ領域、トレンチ領域、ステップ高さおよびトレンチ損失を示す(実寸ではない)。
図2】本発明の研磨組成物の研磨性能を、基板のピッチ幅とパターン密度の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、化学機械研磨組成物であって、(a)研削材、(b)式Q-Bの自己停止剤であって、式中、Qは置換または非置換の疎水性基、または立体障害を与える基であってよく、Bは結合基であり、結合基はC(O)-X-OHまたは-C(O)-OHで、XはC1~C2アルキル基である構造を有する、自己停止剤、および(c)水性キャリアを含み、研磨組成物は約3~約9のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供する。
【0019】
本発明の研磨組成物は研削材を含む。研磨組成物の研削材は、望ましくは、基板の非金属部分(例えば、パターン誘電体材料、ブランケット誘電体材料、パターン酸化物材料、ブランケット酸化物材料など)の研磨に好適である。好適な研削材には、セリア(例えば、CeO)、ジルコニア(例えば、ZrO)、シリカ(例えば、SiO)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
好ましい実施形態において、研削材は、セリア、ジルコニア、およびそれらの組合せから選択される。別の好ましい実施形態において、研削材はセリアである。
【0021】
セリア研削材とジルコニア研削材の両方は、CMPの技術分野でよく知られており、また市販されている。好適なセリア研削材の例には、とりわけ、湿式プロセスセリア、焼成セリア、および金属ドープセリアが含まれる。好適なジルコニア研削材の例には、とりわけ、金属ドープジルコニアおよび非金属ドープジルコニアが含まれる。金属ドープジルコニアの中では、セリウム、カルシウム、マグネシウム、またはイットリウムがドープされたジルコニアがあり、優先的に0.1~25質量%の範囲のドーパント元素を有する。
【0022】
本発明の研磨組成物で使用するのに適したセリア研削材、およびそれらの調製プロセスは、2015年3月5日に出願された「Polishing Composition Containing Ceria Abrasive」という名称の米国特許出願第14/639,564号、米国特許出願公開第2017/0014969号として公開される、「Methods and Compositions for Processing Dielectric Substrate」という名称の2016年7月12日に出願された米国特許第9,505,952号および米国特許出願第15/207,973号に記載され、その開示は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0023】
好ましい研削材は湿式プロセスセリア粒子である。研磨組成物は、サイズ、組成、調製方法、粒子径分布、または他の機械的または物理的性質に基づいて、単一の種類の研削材粒子または複数の異なる種類の研削材粒子を含むことができる。セリア研削材粒子は、さまざまな異なるプロセスで製造することができる。例えば、セリア研削材粒子は、沈降セリア粒子またはコロイド状セリア粒子を含む縮合重合セリア粒子であり得る。
【0024】
セリア研削材粒子は、任意の好適なプロセスで製造することができる。一例として、セリア研削材粒子は、以下のプロセスに従って作製された湿式プロセスセリア粒子であり得る。通常、湿式プロセスセリア粒子を合成する最初のステップは、セリア前駆体を水に溶解することである。セリア前駆体は、任意の好適なセリア前駆体であり得、任意の好適な電荷を有するセリア塩、例えばCe3+またはCe4+を含むことができる。好適なセリア前駆体には、例えば、硝酸セリウム(III)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、炭酸セリウム(III)、硫酸セリウム(IV)、および塩化セリウム(III)が含まれる。好ましくは、セリア前駆体は硝酸セリウム(III)である。
【0025】
通常はセリア前駆体溶液のpHを上昇させ、アモルファスCe(OH)を形成させる。溶液のpHは、任意の好適なpHに上昇させることができる。例えば、溶液のpHは、約10以上のpH、例えば、約10.5以上のpH、約11以上のpH、または約12以上のpHまで増加させることができる。通常、溶液は約14以下のpH、例えば約13.5以下のpH、または約13以下のpHを有するであろう。任意の好適な塩基を使用して、溶液のpHを上昇させることができる。好適な塩基には、例えば、KOH、NaOH、NHOH、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが含まれる。例えばエタノールアミンおよびジエタノールアミンなどの有機塩基もまた好適である。pHが上昇し、アモルファスCe(OH)が形成されると、溶液は白濁する。
【0026】
セリア前駆体溶液は通常、数時間混合される。例えば、溶液は約1時間以上、例えば約2時間以上、約4時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約12時間以上、約16時間以上、約20時間以上、または約24時間以上混合され得る。通常、溶液は約1時間~約24時間、例えば約2時間、約8時間、または約12時間混合される。混合が完了したら、溶液を加圧容器に移して加熱することができる。
【0027】
セリア前駆体溶液は、任意の好適な温度に加熱することができる。例えば、溶液は約50℃以上、例えば約75℃以上、約100℃以上、約125℃以上、約150℃以上、約175℃以上、または約200℃以上の温度に加熱することができる。あるいは、または加えて、溶液は約500℃以下、例えば、約450℃以下、約400℃以下、約375℃以下、約350℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約225℃、または約200℃以下の温度に加熱することができる。したがって、溶液は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の温度に加熱することができる。例えば、溶液は約50℃~約300℃、例えば約50℃~約275℃、約50℃~約250℃、約50℃~約200℃、約75℃~約300℃、約75℃~約250℃、約75℃~約200℃、約100℃~約300℃、約100℃~約250℃、または約100℃~約225℃の温度に加熱することができる。
【0028】
セリア前駆体溶液は通常、数時間加熱される。例えば、溶液は約1時間以上、例えば約5時間以上、約10時間以上、約25時間以上、約50時間以上、約75時間以上、約100時間以上、または約110時間以上加熱することができる。あるいは、または加えて、溶液は約200時間以下、例えば、約180時間以下、約165時間以下、約150時間以下、約125時間以下、約115時間以下、または約100時間以下加熱することができる。したがって、溶液は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の時間で加熱することができる。例えば、溶液は約1時間~約150時間、例えば、約5時間~約130時間、約10時間~約120時間、約15時間~約115時間、または約25時間~約100時間加熱することができる。
【0029】
加熱後、セリア前駆体溶液をろ過して、沈殿したセリア粒子を分離することができる。沈殿剤を過剰の水で洗浄し、未反応のセリア前駆体を除去することができる。沈殿剤と過剰な水の混合物を各洗浄ステップの後にろ過して、不純物を除去することができる。十分に洗浄した後、セリア粒子を追加のプロセス、例えば焼結のために乾燥させるか、セリア粒子を直接再分散させることができる。
【0030】
セリア粒子は、所望により、再分散に先立って乾燥および焼結させることができる。「焼結」および「か焼」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され、以下に記載される条件下でのセリア粒子の加熱を指す。セリア粒子の焼結は、結果として生じる結晶性に影響を与える。特定の理論に束縛されることは望まないが、セリア粒子を高温で長時間焼結すると、粒子の結晶格子構造の欠陥が減少すると考えられている。任意の好適な方法を使用して、セリア粒子を焼結させることができる。一例として、セリア粒子を乾燥させ、次に高温で焼結させることができる。乾燥は、室温または高温で実施することができる。特に、乾燥は約20℃~約40℃、例えば約25℃、約30℃、または約35℃の温度で実施することができる。あるいは、または加えて、乾燥は、約80℃~約150℃の高温、例えば、約85℃、約100℃、約115℃、約125℃、または約140℃で実施することができる。セリア粒子を乾燥した後、それらを粉砕して粉末を生成することができる。粉砕は、ジルコニアなどの任意の好適な粉砕材料を使用して実施することができる。
【0031】
セリア粒子は、任意の好適なオーブンで、任意の好適な温度で焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、約200℃以上、例えば、約215℃以上、約225℃以上、約250℃以上、約275℃以上、約300℃以上、約350℃以上、または約375℃以上の温度で焼結させることができる。あるいは、または加えて、セリア粒子は約1000℃以下、例えば、約900℃以下、約750℃以下、約650℃以下、約550℃以下、約500℃以下、約450℃以下、または約400℃以下の温度で焼結させることができる。したがって、セリア粒子は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の温度で焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、約200℃~約1000℃、例えば約250℃~約800℃、約300℃~約700℃、約325℃~約650℃、約350℃~約600℃、約350℃~約550℃、約400℃~約550℃、約450℃~約800℃、約500℃~約1000℃、または約500℃~約800℃の温度で焼結させことができる。
【0032】
セリア粒子は、任意の好適な時間、焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、約1時間以上、例えば約2時間以上、約5時間以上、または約8時間以上焼結させることができる。あるいは、または加えて、セリア粒子は、約20時間以下、例えば約18時間以下、約15時間以下、約12時間以下、または約10時間以下焼結させることができる。したがって、セリア粒子は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の時間で焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、約1時間~約20時間、例えば、約1時間~約15時間、約1時間~約10時間、約1時間~約5時間、約5時間~約20時間、約10時間~約20時間焼結させることができる。
【0033】
セリア粒子はまた、上述の範囲内の、さまざまな温度およびさまざまな時間で焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、セリア粒子をさまざまな時間にわたって1つ以上の温度にさらすゾーン炉で焼結させることができる。一例として、セリア粒子は約200℃~約1000℃の温度で約1時間以上焼結させることができ、次いで約200℃~約1000℃の範囲内の異なる温度で、約1時間以上にわたって焼結させることができる。
【0034】
セリア粒子は、通常、好適なキャリア、例えば、水性キャリア、特に水に再分散される。セリア粒子が焼結される場合、焼結の完了後にセリア粒子は再分散される。任意の好適なプロセスを使用して、セリア粒子を再分散することができる。通常、セリア粒子は、好適な酸を使用してセリア粒子と水の混合物のpHを下げることにより再分散される。pHが低下すると、セリア粒子の表面は陽イオン性のゼータ電位が発達する。この陽イオン性のゼータ電位は、セリア粒子間に反発力を生み出し、それがセリア粒子の再分散を促す。任意の好適な酸を使用して、混合物のpHを下げることができる。好適な酸には、例えば、塩酸および硝酸が含まれる。水溶性が高く、親水性官能基を有する有機酸も好適である。好適な有機酸には、例えば、酢酸が含まれる。HPOおよびHSOなどの多価アニオンを含む酸は、通常、好適ではない。混合物のpHは、任意の好適なpHに下げることができる。例えば、混合物のpHは、約2~約5、例えば、約2.5、約3、約3.5、約4、または約4.5に下げることができる。通常、混合物のpHは約2未満には低下させない。
【0035】
再分散されたセリア粒子は、通常、ミリングされて粒子径が小さくなる。好ましくは、セリア粒子は再分散と同時にミリングされる。ミリングは、ジルコニアなどの任意の好適なミリング材料を使用して実施することができる。ミリングはまた、超音波処理または湿式ジェット工程を使用して実施することができる。ミリング後、セリア粒子をろ過して、残っている大きな粒子を除去することができる。例えば、セリア粒子は、約0.3μm以上、例えば、約0.4μm以上、または約0.5μm以上の孔径を有するフィルターを使用してろ過することができる。
【0036】
研削材粒子(例えば、セリア研削材粒子)は、約40nm~約100nmの中央粒径を有することが好ましい。粒子の粒子径は、粒子を包含する最小球の直径である。研削材粒子の粒径は、任意の好適な手法を使用して測定することができる。例えば、研削材粒子の粒子径は、ディスク遠心分離機、すなわち分画遠心分離法(DCS)を使用して測定することができる。好適なディスク遠心分離機の粒子径測定機器は、例えばCPS Instruments(Prairieville,LA)から、CPS Disc Centrifuge Model DC24000UHRなどが市販されている。特に指示がない限り、本明細書で報告され、主張される中央粒径値は、ディスク遠心分離測定に基づく。
【0037】
例として、研削材粒子(例えばセリア研削材粒子)は、約40nm以上、例えば、約45nm以上、約50nm以上、約55nm以上、約60nm以上、約65nm以上、約70nm以上、約75nm以上、または約80nm以上の中央粒径を有することができる。あるいは、または加えて、研削材粒子は、約100nm以下、例えば、約95nm以下、約90nm以下、約85nm以下、約80nm以下、約75nm以下、約70nm以下、または約65nm以下の中央粒径を有することができる。したがって、研削材粒子は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の中央粒径を有することができる。例えば、研削材粒子は、約40nm~約100nm、例えば、約40nm~約80nm、約40nm~約75nm、約40nm~約60nm、約50nm~約100nm、約50nm~約80nm、約50nm~約75nm、約50nm~約70nm、約60nm~約100nm、約60nm~約80nm、約60nm~約85nm、または約65nm~約75nmの中央粒径を有することができる。好ましくは、研削材粒子は、約60nm~約80nmの中央粒径、例えば、約65nmの中央粒径、約70nmの中央粒径、または約75nmの中央粒径を有する。
【0038】
化学機械研磨組成物は、任意の好適な量の研削材を含むことができる。組成物が含む研削材が少なすぎる場合、組成物は十分な除去速度を示さない可能性がある。対照的に、研磨組成物が含む研削材が多すぎる場合、組成物は、望ましくない研磨性能を示す可能性があり、費用効果がない可能性があり、かつ/または安定性に欠ける可能性がある。したがって、研削材は、約5質量%以下、例えば、約4質量%以下、約3質量%以下、約2質量%以下、または約1質量%以下の濃度で研磨組成物中に存在することができる。あるいは、または加えて、研削材は、約0.001質量%以上、例えば、約0.005質量%以上、約0.01質量%以上、約0.05質量%以上、約0.1質量%以上、または約0.5質量%以上の濃度で研磨組成物中に存在することができる。したがって、研削材は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の濃度で研磨組成物中に存在することができる。例えば、研削材は、約0.001質量%~5質量%、例えば約0.005質量%~約4質量%、約0.01質量%~約3質量%、約0.05質量%~約2質量%、または約0.1質量%~約1質量%の濃度で研磨組成物中に存在することができる。
【0039】
通常、研磨組成物は、基板の表面上の金属(例えば、銅、銀、タングステンなど)を研磨するのに好適な相当量の研削材を含まない。例えば、研磨組成物は通常、金属表面を研磨するのに好適な相当量の特定の金属酸化物(例えば、アルミナ)を含まない。通常、研磨組成物は、研磨組成物中の研削材の総質量に基づいて、セリア研削材およびジルコニア研削材以外の研削材を0.1質量%未満含む。例えば、研磨組成物は、セリア研削材およびジルコニア研削材以外の研削材を0.05質量%以下、またはセリア研削材およびジルコニア研削材以外の研削材を0.01質量%以下含むことができる。より具体的には、研磨組成物は、セリアおよびジルコニア以外の金属酸化物を0.05質量%以下、またはセリアおよびジルコニア以外の金属酸化物を0.01質量%以下含むことができる。
【0040】
研削材は、望ましくは研磨組成物中、より具体的には研磨組成物の水性キャリア中にて懸濁される。より具体的には、研削材が粒子を含む場合、研削材粒子は望ましくは研磨組成物中にて懸濁され、かつ研削材粒子は好ましくはコロイド安定性である。コロイドという用語は、水性キャリア中の研削材粒子の懸濁液を指す。コロイド安定性とは、その懸濁液を経時的に維持することを指す。本発明との関係において、研削材粒子を100mLのメスシリンダーに入れ、2時間にわたって無撹拌で静置した際、メスシリンダー底部の50mL中の粒子濃度(g/mL換算で[B])とメスシリンダー上部の50mL中の粒子濃度(g/mL換算で[T])との間の差を、研削材組成物中の粒子の初期濃度(g/mL換算で[C])で割った値が、0.5以下(すなわち、{[B]-[T]}/[C]≦0.5)の場合、研削材粒子は、コロイド安定性と考えられる。[B]-[T]/[C]の値は、望ましくは0.3以下であり、好ましくは0.1以下である。
【0041】
本発明の研磨組成物は、自己停止剤を含む。自己停止剤は、比較的高いパターン除去速度と比較的低いブランケット除去速度を促進し、研磨中の平坦化においては、高いパターン除去速度から比較的低いブランケット除去速度への移行を促進する化合物である。特定の理論に束縛されることは望まないが、自己停止剤は、研削材(例えば、セリアまたはジルコニア)に結合する配位子として作用し、研削材と親水性酸化物の表面間に立体障害を付与することにより自己停止挙動を促進すると考えられる。自己停止剤の研削材への結合は、任意の好適な技法、例えば等温滴定カロリメトリー(ITC)を使用して評価することができる。
【0042】
特定の理論に拘束されることは望まないが、自己停止剤は、テトラエトキシシラン(TEOS)ブランケット誘電体材料上の所与のダウンフォース(DF)に対する非線形応答を促進すると考えられている。研磨中、パターン誘電体材料の、パッドと接触している一部のみに接触が広がるため、パターン誘電体材料はブランケット誘電体材料よりも高い有効なダウンフォース(DF)を受ける。TEOSパターン誘電体材料に適用される、より高い有効なDFは、約8000Å/分のTEOS除去速度を有する「高い」除去速度(例えば、パターン除去速度)の研磨過程をもたらし、一方、より低い有効なDFは約1,000Å/分以下のTEOS除去速度(例えば、ブランケット除去速度)を有する「停止」の研磨過程をもたらす。「高い」過程と「停止」過程の違いは、通常、所与のDFに対して「高い」除去速度または「停止」除去速度のいずれかが観察されることで区別される。したがって、自己停止剤は、適用されたDFが、ブランケットウェハにより決定された「停止」過程であるときでさえ、望ましくは「高い」除去速度(すなわち、パターン除去速度)を可能にすると考えられる。
【0043】
さらに、ブランケットウェハ上よりもトレンチ内の有効なDFが低いにもかかわらず、パターン誘電体材料上のトレンチ酸化物除去速度がブランケット除去速度よりも高いため、メカニズムがDFだけに依存するわけではないことにも留意した。例えば、いくつかの研磨用途では、自己停止剤の濃度が、低濃度では自己停止剤が速度向上剤(例えば、「高い」除去速度が観察される)として作用し、高濃度では、自己停止挙動(例えば、「停止」の除去速度が観察される)が観察されるため、観察された効果に影響する。したがって、一部の速度向上剤は二重の作用を有し得る。例として、研磨組成物が低濃度のピコリン酸を含む場合、ピコリン酸は速度向上剤として機能することができる。しかし、研磨組成物がより高濃度のピコリン酸を含む場合、ピコリン酸は自己停止剤として機能することができる。通常、ピコリン酸は、質量基準(例えば、約500ppm、約250ppmなど)で、約1000ppm未満の濃度で速度向上剤として機能する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、自己停止剤は式Q-Bのものであり、式中、Qは置換または非置換の疎水性基または立体障害を与える基であり、Bは-C(O)-C-OH、-C(O)-C-C-OHまたは-C(O)-OHなどの結合基である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、研削材、式Q-Bの自己停止剤、カチオン性化合物、および水性キャリア(例えば、水)を含む研磨組成物を提供し、研磨組成物は約3~約9のpH(例えば、約6.5~約8.5)を有する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、自己停止剤は式Q-Bのものであり、式中、Qは置換または非置換の疎水性基または立体障害を与える基であり、Bは結合基であり、結合基は-C(O)-X-OHまたは-C(O)-OHの構造を有する。式中、XはC1~C2アルキル基である。自己停止剤が本明細書に記載の式Q-Bの化合物である場合、Qは任意の好適な疎水性基、または立体障害を付与する任意の好適な基であり得る。好適な疎水基には、飽和疎水基および不飽和疎水基が含まれる。疎水性基は、直鎖または分岐鎖であることができ、直鎖または分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基ならびに芳香族、複素環、および縮合環系を含む環構造を含み得る。
【0046】
一実施形態において、Qは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、複素環式芳香族基、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0047】
Qはアルキル基であり得る。好適なアルキル基には、例えば、1~30個の炭素原子、例えば、少なくとも1個の炭素原子(すなわち、メチル)、少なくとも2個の炭素原子(例えば、エチル、ビニル)、少なくとも3個の炭素原子(例えば、プロピル、イソプロピル、プロペニルなど)、少なくとも4個の炭素原子(ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ブタンなど)、少なくとも5個の炭素原子(ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチルなど)、少なくとも6個の炭素原子(ヘキシルなど)、少なくとも7個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも9個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、少なくとも11個の炭素原子、少なくとも12個の炭素原子、少なくとも13個の炭素原子、少なくとも14個の炭素原子、少なくとも15個の炭素原子、少なくとも16個の炭素原子、少なくとも17個の炭素原子、少なくとも18個の炭素原子、少なくとも19個の炭素原子、少なくとも20個の炭素原子、少なくとも25個の炭素原子、または少なくとも30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和、置換または非置換の炭化水素基(例えば、C~C30アルキル基、C~C24アルキル基、C~C18アルキル基、C~C12アルキル基、またはC~Cアルキル基)が挙げられる。
【0048】
置換基とは、1つ以上の炭素結合水素が非水素原子で置換されている基を指す。例示的な置換基には、例えば、ヒドロキシル基、ケト基、エステル、アミド、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素)、アミノ基(1級、2級、3級、および/または4級)、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0049】
Qはシクロアルキル基であり得る。好適なシクロアルキル基は、例えば、3~20個の炭素原子(例えば、C~C20環状基)を有する飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基が挙げられる。例えば、好適なシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびそれらの組合せが含まれる。さらに、好適な不飽和シクロアルキル基には、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0050】
Qは芳香族基であり得る。好適な芳香族基には、例えば、1~20個の炭素原子を有する置換または非置換芳香族基が含まれる。例えば、好適な芳香族基には、フェニル、ベンジル、ナフチル、アズレン、アントラセン、ピレン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0051】
Qは複素環式芳香族基であり得る。「ヘテロ原子」は、本明細書では、炭素原子および水素原子以外の任意の原子として定義される。好適なヘテロ原子含有官能基には、例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基、エステル基、ケトン基、アミノ基(例えば、1級、2級、および3級アミノ基)、アミド基、イミド基、チオールエステル基、チオエーテル基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0052】
好適な複素環式基には、例えば、1~20個の炭素原子を含有し、かつ窒素、酸素、硫黄、リン、ホウ素、およびそれらの組み合わせを含有する環状炭化水素化合物が含まれる。複素環式化合物は、飽和および不飽和、置換または非置換であり得る。複素環式化合物とは、環系の一部として含有される1個以上のヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、またはB))を有する5、6、または7員環化合物を指す。例示的な複素環式化合物には、例えば、トリアゾール、アミノトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール-5-カルボン酸、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-5-ヒドラジノ-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、チアゾール、2-アミノ-5-メチルチアゾール、2-アミノ-4-チアゾール酢酸、複素環N-オキシド、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド、4-メチルモルホリン-N-オキシド、およびピコリン酸N-オキシドなどが挙げられる。他の例示的な複素環式化合物には、例えば、ピロン化合物、位置異性体および立体異性体を含むピリジン化合物、ピロリジン、デルタ-2-ピロリン、イミダゾリジン、デルタ-2-イミダゾリン、デルタ-3-ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
好適な複素環式芳香族基には、例えば、ピリジン、チオフェン、フラン、ピロール、2H-ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、フラザン、イソチアゾール、ピラン(2H)、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、イソベンゾフラン、インドリジン、インドール、3H-インドール、1H-インダゾール、プリン、イソインドール、4aH-カルバゾール、カルバゾール、ベータ-カルボリン、2H-クロメン、4H-キノリジン、イソキノリン、キノリン、キノキサリン、1,8-ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、キサンテン、フェノキサチイン、フェノチアジン、フェナジン、ペリミジン、1,7-フェナントロリン、フェナントリジン、アクリジン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態において、Qは1個以上の置換基で置換されている。好適な置換基には、例えば、本明細書に記載の任意の好適な化合物/基が含まれ得る。例えば、好適な置換基には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環式基、複素環式芳香族基、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0055】
いくつかの実施形態において、Qは非置換である。他の実施形態において、Qは立体障害を付与する基である。例えば、Qは特に疎水性ではない場合があるが、嵩高い成分であってよく、そうでない場合により小さいQ基を持つ関連分子で発生し得る、化学反応または相互作用を防ぐ。限定するものではないが、そのようなQ基を有する自己停止剤の例は、マルトール、エチルマルトール、およびコウジ酸であろう。
【0056】
いくつかの実施形態において、結合基Bは、カルボン酸基、ヒドロキサム酸基、ヒドロキシルアミン基、ヒドロキシル基、ケト基、硫酸基、リン酸基、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0057】
いくつかの実施形態において、自己停止剤Q-Bは、コウジ酸、マルトール、エチルマルトール、プロピルマルトール、ヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、カフェー酸、ソルビン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0058】
さらに、配合物Q-Bの自己停止剤の塩も、本発明の研磨組成物での使用に好適である。
【0059】
いくつかの実施形態において、自己停止剤は、コウジ酸、マルトール、エチルマルトール、プロピルマルトール、チグリン酸、アンゲリカ酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、カフェー酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態において、配合物Q-Bの自己停止剤は、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、式(IV)の化合物およびそれらの組み合わせから選択される。
【0061】
式(I)の化合物は、次の構造であって、
【化4】
式中、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環式アルキル、および複素環式アリールからなる群から選択され、これらは各々が置換または非置換であってよい、構造を有する。
【0062】
式(II)の化合物は、次の構造であって、
【化5】
式中、X~Xの各々が独立して、N、O、S、sp混成炭素、およびCYから選択され、YおよびYの各々が独立して、水素、ヒドロキシル、C~Cアルキル、ハロゲン、およびそれらの組合せから選択され、Z~Zの各々が独立して、水素、ヒドロキシル、C~Cアルキル、およびそれらの組み合わせから選択され、これらは各々が置換または非置換であってもよい、構造を有する。
【0063】
式(III)の化合物は、次の構造であって、
Z-(C(X-COM (III)
式中、ZはN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、およびアリール(例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、アズレン、アントラセン、ピレンなど)から選択され、XおよびXは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、およびC~Cアルキル、C~Cアルケニルから選択され、XおよびXは、結合している炭素とともにsp混成炭素を形成することができ、nは1または2であり、pは0~4であり、Mは水素および好適な対イオン(例えば、第I族金属)から選択され、これらは各々が置換または非置換であってもよい、構造を有する。
【0064】
式(IV)の化合物は、次の構造であって、
【化6】
式中、X、YおよびZは独立して、H、O、S、NHおよびCHから選択され、R、RおよびRは独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、およびハロアルキルから選択され、Mは水素および好適な対イオンから選択される、構造を有する。
【0065】
研磨組成物は、任意の好適な量の自己停止剤(例えば、式Q-Bの化合物)を含むことができる。組成物が含む自己停止剤が少なすぎる場合、組成物は好適な自己停止挙動を示さない可能性がある。対照的に、研磨組成物が含む自己停止剤が多すぎる場合、組成物は、望ましくない研磨性能を示す可能性があり、費用効果がない可能性があり、かつ/または安定性に欠ける可能性がある。したがって、研磨組成物は、約2質量%以下、例えば、約1質量%以下、約0.5質量%以下、約0.1質量%以下、または約0.01質量%以下の自己停止剤を含むことができる。あるいは、または加えて、研磨組成物は、約0.0001質量%以上、例えば、約0.0005質量%以上、約0.001質量%以上、約0.005質量%以上、約0.01質量%以上、または約0.05質量%以上の自己停止剤を含むことができる。したがって、研磨組成物は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の濃度で自己停止剤を含むことができる。例えば、自己停止剤は、約0.0001質量%~約2質量%、例えば、約0.0005質量%~約1質量%、約0.001質量%~約0.5質量%、約0.005質量%~約0.1質量%、または約0.01質量%~約0.05質量%の濃度で研磨組成物中に存在することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の研磨組成物は、約0.5質量%以下(例えば、約5,000ppm以下)の自己停止剤を含む。いくつかの実施形態において、研磨組成物は、約2,500ppm(0.25質量%)以下、例えば、約2,000ppm以下、約1,500ppm以下、約1,000ppm以下、または約500ppm以下の自己停止剤を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の研磨組成物は、トポグラフィー制御剤とも呼ばれる平坦化剤(すなわち、カチオン性化合物)と組み合わせた自己停止剤を含む。特定の理論に縛られることは望まないが、カチオン性化合物は通常、負に帯電した酸化物表面に結合することにより酸化物除去速度を低下させるため、カチオン性化合物は、研磨される基板のトポグラフィーを改善する平坦化剤として作用すると考えられている。カチオン性化合物はまた、より高いpHの研磨条件下(例えば、約6.5~約8.5のpHを有する、約7.0~8.5のpHを有する)で自己停止組成物の平坦化効率も改善する。
【0068】
カチオン性化合物は、4級アミン、カチオン性ポリビニルアルコール、カチオン性セルロース、およびそれらの組み合わせから選択されるモノマーを含むポリマーであり得る。したがって、カチオン性ポリマーは、4級アミン、カチオン性ポリビニルアルコール、カチオン性セルロース、およびそれらの組合せを含むことができる。
【0069】
好適な4級アミンモノマーには、例えば、ビニルイミダゾリウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド、ジアリルジメチルアンモニウムハライド、およびそれらの組み合わせが含まれる。したがって、好適なカチオン性ポリマーには、例えば、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)クロリド(polyMADQUAT)などのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)ハライド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(polyDADMAC)などのポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ハライド、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-alt-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素](すなわち、ポリクオタニウム-2)、ビニルピロリドンと4級化ジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマー(すなわち、ポリクオタニウム-11)、ビニルピロリドンと4級化ビニルイミダゾールのコポリマー(すなわち、ポリクオタニウム-16)、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、および4級化ビニルイミダゾールのターポリマー(すなわち、ポリクオタニウム-46)、および3-メチル-1-ビニルイミダゾリウムメチル硫酸-N-ビニルピロリドンコポリマー(すなわち、ポリクオタニウム-44)から選択される4級アミンが挙げられる。さらに、好適なカチオン性ポリマーには、Luviquat(登録商標)Supreme、Luviquat(登録商標)Hold、Luviquat(登録商標)UltraCare、Luviquat(登録商標)FC 370、Luviquat(登録商標)FC 550、Luviquat(登録商標)FC 552、Luviquat(登録商標)Excellenceおよびそれらの組み合わせ、などのパーソナルケア用のカチオン性ポリマーが含まれる。ここで言及したカチオン性ポリマーの任意の組み合わせを使用してもよい。
【0070】
一実施形態において、カチオン性ポリマーは4級アミンであり、カチオン性ポリマーはポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)ハライド、例えばpolyMADQUATである。
【0071】
一実施形態において、カチオン性ポリマーは4級アミンであり、カチオン性ポリマーはポリ(ビニルイミダゾリウム)である。
【0072】
カチオン性ポリマーは、任意の好適なカチオン性ポリビニルアルコールまたはカチオン性セルロースであり得る。好ましくは、カチオン性ポリマーはカチオン性ポリビニルアルコールである。例えば、カチオン性ポリビニルアルコールは、Nippon Gosei GOHSEFIMER K210(商標)ポリビニルアルコール製品であり得る。
【0073】
カチオン性ポリマー(すなわち、4級アミン、カチオン性ポリビニルアルコール、カチオン性セルロース、またはそれらの組み合わせ)は、存在する場合、任意の好適な濃度で研磨組成物中に存在することができる。通常、カチオン性ポリマーは、約1ppm~約500ppm、例えば、約1ppm~約475ppm、約1ppm~約450ppm、約1ppm~約425ppm、約1ppm~約400ppm、約1ppm~約375ppm、約1ppm~約350ppm、約1ppm~約325ppm、約1ppm~約300ppm、約1ppm~約275ppm、約1ppm~約250ppm、約1ppm~約225ppm、約1ppm~約200ppm、約1ppm~約175ppm、約1ppm~約150ppm、約1ppm~約125ppm、約1ppm~約100ppm、約1ppm~約75ppm、約1ppm~約50ppm、約1ppm~約40ppm、約1ppm~約25ppm、約5ppm~約225ppm、約5ppm~約100ppm、約5ppm~約50ppm、約10ppm~約215ppm、約10ppm~約100ppm、約15ppm~約200ppm、約25ppm~約175ppm、約25ppm~約100ppm、または約30ppm~約150ppmの濃度で研磨組成物中に存在する。特に指示しない限り、本明細書に挙げたppm濃度は、研磨組成物の総質量に対する、成分の質量を基準とした比率を反映している。
【0074】
カチオン性ポリマーがポリ(ビニルイミダゾリウム)である場合、カチオン性ポリマーは、好ましくは約1ppm~約10ppm、例えば、約2ppm、約5ppm、約6ppm、約7ppm、約8ppm、または約9ppmの濃度で研磨組成物中に存在する。より好ましくは、カチオン性ポリマーがポリ(ビニルイミダゾリウム)である場合、カチオン性ポリマーは、好ましくは約1ppm~約5ppm、例えば約2ppm、約3ppm、または約4ppmの濃度で研磨組成物中に存在する。
【0075】
研磨組成物は、所望によりカルボン酸モノマー、スルホン化モノマー、またはホスホン化モノマーとアクリレート、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルアルコールのアニオン性コポリマー(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸とメタクリル酸のコポリマー)、非イオン性ポリマーがポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールである、非イオン性ポリマー、シランがアミノシラン、ウレイドシラン、またはグリシジルシランである、シラン、官能化されたピリジンのN-オキシド(例えば、ピコリン酸N-オキシド)、デンプン、シクロデキストリン(例えば、アルファ-シクロデキストリンまたはベータ-シクロデキストリン)、およびそれらの組み合わせから選択される添加剤を含むことができる。
【0076】
添加剤が非イオン性ポリマーである場合、かつ非イオン性ポリマーがポリビニルピロリドンである場合、ポリビニルピロリドンは任意の好適な分子量を有することができる。例えば、ポリビニルピロリドンは、約10,000g/mol~約1,000,000g/mol、例えば、約20,000g/mol、約30,000g/mol、約40,000g/mol、約50,000g/mol、または約60,000g/molの分子量を有することができる。添加剤が非イオン性ポリマーである場合、かつ非イオン性ポリマーがポリエチレングリコールである場合、ポリエチレングリコールは任意の好適な分子量を有し得る。例えば、ポリエチレングリコールは、約200g/mol~約200,000g/mol、例えば約8000g/mol、または約100,000g/molの分子量を有することができる。
【0077】
添加剤がシランである場合、シランは、任意の好適なアミノシラン、ウレイドシラン、またはグリシジルシランであり得る。例えば、シランは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラントリオール、(N,N)-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、または3-グリシドプロピルジメチルエトキシシランであり得る。
【0078】
好ましくは、研磨組成物が添加剤を含む場合、添加剤は、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、ポリビニルピロリドン、アミノプロピルシラントリオール、ピコリン酸N-オキシド、デンプン、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0079】
添加剤(すなわち、全体でカルボン酸モノマー、スルホン化モノマー、またはホスホン化モノマーと、アクリレート、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルアルコールのアニオン性コポリマー、シラン、官能化ピリジンのN-オキシド、デンプン、シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせ)は、化学機械研磨組成物中に任意の好適な濃度で存在し得る。好ましくは、添加剤は約1ppm~約500ppm、例えば、約5ppm~約400ppm、約10ppm~約400ppm、約15ppm~約400ppm、約20ppm~約400ppm、約25ppm~約400ppm、約10ppm~約300ppm、約10ppm~約250ppm、約30ppm~約350ppm、約30ppm~約275ppm、約50ppm~約350ppm、または約100ppm~約300ppmの濃度で研磨組成物中に存在する。より好ましくは、添加剤は約1ppm~約300ppm、例えば、約1ppm~約275ppm、約1ppm~約250ppm、約1ppm~約100ppm、約1ppm~約50ppm、約10ppm~約250ppm、約10ppm~約100ppm、または約35ppm~約250ppmの濃度で研磨組成物中に存在する。
【0080】
研磨組成物は所望により、本明細書に記載の1種以上の添加剤、すなわち、カルボン酸モノマー、スルホン化モノマー、またはホスホン化モノマーとアクリレート、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルアルコールのアニオン性コポリマー、非イオン性ポリマー、シラン、官能化ピリジンのN-オキシド、デンプン、およびシクロデキストリンの1種以上に加えて、本明細書に記載のカチオン性ポリマーを含むことができる。あるいは、研磨組成物は上記の1種以上の添加剤なしで、すなわち、カルボン酸モノマー、スルホン化モノマー、またはホスホン化モノマーとアクリレート、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルアルコールの、アニオン性コポリマー、非イオン性ポリマー、シラン、官能化ピリジンのN-オキシド、デンプン、およびシクロデキストリンの1種以上なしで、カチオン性ポリマーを含むことができる。
【0081】
研磨組成物は水性キャリアを含む。水性キャリアは水(例えば、脱イオン水)を含み、1種以上の水混和性有機溶媒を含有してもよい。使用できる有機溶媒の例には、プロペニルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、1-プロパノール、メタノール、1-ヘキサノールなどのアルコール、アセチルアルデヒドなどのアルデヒド、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトンなどのケトン、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチルなどのエステル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリムなどのスルホキシドを含むエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどのアミド、エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールおよびその誘導体、ならびにアセトニトリル、アミルアミン、イソプロピルアミン、イミダゾール、ジメチルアミンなどの窒素含有有機化合物が挙げられる。好ましくは、水性キャリアは水のみ、すなわち有機溶媒は存在しない。
【0082】
本発明の研磨組成物は約3~約9のpHを有する。通常、研磨組成物は約3以上のpHを有する。また、研磨組成物のpHは通常、約9以下である。例えば、研磨組成物は、約3.5~約9、例えば、約4~約9、約4.5~約9、約5~約9、約5.5~約9、約6~約9、約6.5~約9、約7~約9、約7.5~約9、約8~約9または約8.5~約9のpHを有することができる。あるいは、研磨組成物は、約3~約8.5、例えば、約3~約8、約3~約7.5、約3~約7、約3~約6.5、約3~約6、約3~約5.5、約3~約5、約3~約4.5、約3~約4または約3~約3.5のpHを有することができる。したがって、研磨組成物は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内のpHを有することができる。
【0083】
好ましくは、研磨組成物は約3~約5、または約7.0~約8.5のpHを有する。例えば、好ましい実施形態において、研磨組成物は、研削材、本明細書に記載の式Q-Bの自己停止剤、および水性キャリアを含み、研磨組成物のpHは約3~約5である。
【0084】
別の好ましい実施形態では、研磨組成物は、研削材、本明細書に記載の式Q-Bの自己停止剤、カチオン性ポリマー、および水性キャリアを含み、研磨組成物のpHは約7.0~約9.0である。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の研磨組成物は、研削材、本明細書に記載の式(I)の自己停止剤、カチオン性ポリマー、および水性キャリアを含み、研磨組成物のpHは約7.0~約9.0である。
【0085】
研磨組成物は、pH調整剤およびpH緩衝剤を含むことができる。pH調整剤は、任意の好適なpH調整剤であり得る。例えば、pH調整剤は、アルキルアミン、アルコールアミン、4級アミン水酸化物、アンモニア、またはそれらの組み合わせであり得る。特に、pH調整剤は、トリエタノールアミン(TEA)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAHもしくはTMA-OH)、または水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAHもしくはTEA-OH)であり得る。いくつかの実施形態において、pH調整剤はトリエタノールアミンである。
【0086】
pH調整剤は、研磨組成物中に任意の好適な濃度で存在することができる。望ましくは、pH調整剤は、研磨組成物のpHを、例えば、約3~約9のpHを維持するために、約3~約5のpHを維持するために、約7.0~約8.5のpHを維持するために、本明細書に記載のpH範囲内で達成および/または維持するのに十分な濃度で研磨組成物中に存在する。
【0087】
研磨組成物は、任意の好適な緩衝剤を含有することができる。例えば、好適な緩衝剤には、ホスフェート類、サルフェート類、アセテート類、マロネート類、オキサレート類、ボラート類、アンモニウム塩、アゾール類などが含まれ得る。いくつかの実施形態において、緩衝剤は1H-ベンゾトリアゾールである。
【0088】
研磨組成物は、存在する場合、任意の好適な量の緩衝剤を含有してもよい。例えば、緩衝剤は、約0.0001質量%以上、例えば、約0.0005質量%以上、約0.001質量%以上、約0.005質量%以上、約0.01質量%以上、または約0.1質量%以上の濃度で研磨組成物中に存在することができる。あるいは、または加えて、緩衝剤は、約2質量%以下、例えば、約1.8質量%以下、約1.6質量%以下、約1.4質量%以下、約1.2質量%以下、または約1質量%以下の濃度で研磨組成物中に存在することができる。したがって、緩衝剤は、前述の端点のいずれか2つで区切られた範囲内の濃度で研磨組成物中に存在することができる。例えば、緩衝剤は、約0.0001質量%~約2質量%、例えば約0.005質量%~約1.8質量%、約0.01質量%~約1.6質量%、または約0.1質量%~約1質量%の濃度で研磨組成物中に存在することができる。
【0089】
研磨組成物は所望により、1種以上の他の追加の成分をさらに含む。例示的な追加成分には、速度向上剤、調整剤、スケール阻害剤、分散剤などが含まれる。速度向上剤は、望ましくは、超配位化合物(例えば、5配位ケイ素化合物または6配位ケイ素化合物)を形成することにより、研磨粒子または基板を活性化する有機カルボン酸である。好適な速度向上剤には、例えば、ピコリン酸および4-ヒドロキシ安息香酸が含まれる。研磨組成物は、界面活性剤ならびに/または、粘度増強剤および凝固剤(例えば、ウレタンポリマーなどのポリマーレオロジー調整剤)を含むレオロジー調整剤、分散剤、殺生物剤(例えば、KATHON(商標)LX)、などを含むことができる。好適な界面活性剤には、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、アニオン性高分子電解質、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素化界面活性剤、それらの混合物などが含まれる。例として、追加の成分には、Brij S20(ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル)およびポリエチレングリコール(例えば、PEG8000)が含まれ得る。
【0090】
研磨組成物は、その多くが当業者には既知である任意の好適な技術によって調製することができる。研磨組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスで調製することができる。通常、研磨組成物は、本明細書の成分を任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。本明細書で使用される「成分」という用語は、個別の成分(例えば、研削材、自己停止剤、カチオン性化合物など)および成分の任意の組み合わせ(例えば、研削材、自己停止剤、カチオン性化合物など)を含む。
【0091】
例えば、自己停止剤は、所望の濃度で水性キャリア(例えば、水)に加えることができる。次いで、pHを(所望に応じて)調整することができ、研削材を所望の濃度で混合物に添加して、研磨組成物を形成することができる。研磨組成物は、使用の直前に(例えば、使用前の約1分以内に、または使用前の約1時間以内に、または使用前の約7日以内に)1種以上の成分を研磨組成物に添加して、使用に先立って調製することができる。研磨組成物はまた、研磨作業中に基板の表面で成分を混合することによっても調製することができる。
【0092】
研磨組成物はまた、使用前に適切な量の水性キャリアで、特に水で希釈されることを意図した濃縮物として提供することもできる。このような実施形態において、研磨組成物濃縮物は、研削材、自己停止剤、カチオン性ポリマー(存在する場合)、および水性キャリアを、適切な量の水で濃縮物を希釈すると、研磨組成物の各成分が、上に列挙された各成分の適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在するようになる量で含むことができる。その上、当業者には理解されるように、濃縮物は、他の成分が少なくとも部分的にまたは完全に濃縮物中に溶解することを確実にするために、最終研磨組成物中に存在する水の好適な部分を含有することができる。
【0093】
研磨組成物は使用のかなり前に、または使用の少し前にさえ調製することができるが、研磨組成物はまた、使用地点またはその付近で研磨組成物の成分を混合することによって作製され得る。本明細書で使用される場合、用語「使用地点」は、研磨組成物が基板表面(例えば、研磨パッドまたは基板表面自体)に適用される点を指す。使用地点の混合を利用して研磨組成物を作製する場合、研磨組成物の成分は2つ以上の保管デバイスに別々に保管される。
【0094】
保管デバイスに収容される成分を混合して使用地点またはその付近で研磨組成物を作製するために、保管デバイスは通常、各保管デバイスから研磨組成物の使用地点(例えば、プラテン、研磨パッド、または基板表面)につながる1つ以上のフローラインとともに提供される。「フローライン」という用語は、個別の保管容器からそこに保管されている成分の使用地点までの、流れの経路を意味する。1つ以上のフローラインはそれぞれ使用地点に直接つながるか、または複数のフローラインが使用される状況では、2つ以上のフローラインを任意の地点で、使用地点に導く単一のフローラインに結合させることができる。さらに、1つ以上のフローライン(例えば、個別のフローラインまたは結合されたフローライン)のいずれかは、成分の使用地点に到達するに先立って、まず1つ以上の他のデバイス(例えば、ポンプデバイス、測定デバイス、混合デバイスなど)につながることができる。
【0095】
研磨組成物の成分は、独立して使用地点に送達されることができ(例えば、成分は基板表面に送達され、そこで研磨プロセス中に成分が混合される)、または成分は使用地点に送達される直前に混合することができる。成分は、それらの成分が使用地点に到達前の10秒未満で、好ましくは使用地点に到達前の5秒未満で、より好ましくは使用地点に到達前の1秒未満で、または使用地点に到達すると同時(例えば、成分が分注機で混合される)に混合される場合、「使用地点に送達される直前に」混合される。成分はまた、それらの成分が使用地点の5m以内、例えば、使用地点の1m以内で、さらには使用地点の10cm以内で(例えば、使用地点の1cm以内で)混合される場合、「使用地点に送達される直前に」混合される。
【0096】
研磨組成物の2種以上の成分が使用地点に到達する前に混合される場合、成分はフローラインで混合され、混合デバイスを使用せずに使用地点に送達されることができる。あるいは、1つ以上のフローラインは混合デバイスにつながり、2種以上の成分の混合を促進することができる。任意の好適な混合デバイスを使用することができる。例えば、混合デバイスは、2種以上の成分が流れるノズルまたはジェット(例えば、高圧ノズルまたは高圧ジェット)であり得る。あるいは、混合デバイスは、研磨組成物の2つ以上の成分がミキサーに導入される1つ以上の注入口と、混合された成分がミキサーから出て、直接または装置の他の要素(例えば、1つ以上のフローラインを介して)を介して、混合された成分がミキサーの出口まで送達される少なくとも1つの排出口と、を含む、容器型混合デバイスであり得る。さらに、混合デバイスは1つより多くのチャンバを備えることができ、各チャンバは少なくとも1つの注入口と少なくとも1つの排出口を有し、各チャンバで2つ以上の成分が混合される。容器型混合デバイスを使用する場合、混合デバイスは成分の混合をさらに促進するための、混合機構を備えることが好ましい。混合機構は当該技術分野で通常既知であり、スターラー、ブレンダー、撹拌機、パドル付きバッフル、ガススパージャーシステム、バイブレーターなどを含む。
【0097】
本発明はまた、本明細書に記載の本発明のCMP組成物を使用して基板を化学機械研磨する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域、および誘電体材料のトレンチ領域を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは、誘電体材料の隆起領域の高さと、誘電体材料のトレンチ領域の高さとの差である、提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)本明細書に記載の化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨すること、を含む、方法を提供する。
【0098】
より具体的には、本発明は、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域、および誘電体材料のトレンチ領域を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは、誘電体材料の隆起領域の高さと、誘電体材料のトレンチ領域の高さとの差である、提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)研削材、(b)式Q-Bの自己停止剤であって、式中、Qは置換または非置換の疎水性基、または立体障害を与える基であり、Bは結合基であり、結合基は、
C(O)-X-OHまたは-C(O)-OHの構造を有し、XはC1~C2アルキル基である自己停止剤、(c)水性キャリア、(d)所望により、カチオン性ポリマーを含み、研磨組成物が約3~約9のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨すること、を含む、方法を提供する。
【0099】
本発明はまた、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域、および誘電体材料のトレンチ領域を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは、誘電体材料の隆起領域の高さと、誘電体材料のトレンチ領域の高さとの差である、提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)セリアを含む研削材、(b)コウジ酸、マルトール、カフェー酸、クロトン酸、チグリン酸、2-ペンテン酸、2-ヒドロキシニコチン酸、エチルマルトール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、デフェリプロン、吉草酸およびそれらの組み合わせから選択される自己停止剤、ならびに(c)水性キャリアを含み、研磨組成物は約3~約9のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨することと、を含む、方法を提供する。
【0100】
本発明はまた、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域、および誘電体材料のトレンチ領域を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは、誘電体材料の隆起領域の高さと、誘電体材料のトレンチ領域の高さとの差である、提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)研削材、(b)式(I)の化合物であって、
【化7】
式中、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環式アルキル、および複素環式アリールからなる群から選択され、これらは各々が置換または非置換であってよい、自己停止剤、
(c)水性キャリア、(d)カチオン性ポリマーを含み、研磨組成物は約7~約9のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨することと、を含む、方法を提供する。
【0101】
本発明はまた、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域、および誘電体材料のトレンチ領域を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは、誘電体材料の隆起領域の高さと、誘電体材料のトレンチ領域の高さとの差である、提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)化学機械研磨組成物であって、(a)研削材、(b)式(II)、(III)または(IV)の化合物であって、
【化8】
式中、X~Xの各々が独立して、N、O、S、sp混成炭素、およびCYから選択され、YおよびYの各々が独立して、水素、ヒドロキシル、C~Cアルキル、ハロゲン、およびそれらの組合せから選択され、Z~Zの各々が独立して、水素、ヒドロキシル、C~Cアルキル、およびそれらの組み合わせから選択され、これらは各々が置換または非置換であってもよい。
Z-(C(X-COM (III)
式中、ZはN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、およびアリール(例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、アズレン、アントラセン、ピレンなど)から選択され、XおよびXは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、およびC~Cアルキル、C~Cアルケニルから選択され、XおよびXは、結合している炭素とともにsp混成炭素を形成することができ、nは1または2であり、pは0~4であり、Mは水素および好適な対イオン(例えば、第I族金属)から選択され、これらは各々が置換または非置換であってもよい。
【化9】
式中、X、YおよびZはH、O、S、NH、およびCHから独立して選択され、R、RおよびRはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、およびハロアルキルから独立して選択され、Mは水素および好適な対イオンから選択される、化合物から選択される、自己停止剤、(c)約3~約9のpHを有する水性キャリア、を含む、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨することと、を含む、方法を提供する。
【0102】
本発明はまた、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域、および誘電体材料のトレンチ領域を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは、誘電体材料の隆起領域の高さと、誘電体材料のトレンチ領域の高さとの差である、提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)化学機械研磨組成物であって、(a)セリアを含む研削材、(b)アセトヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸およびそれらの組み合わせ、などのヒドロキサム酸から選択される自己停止剤、(c)カチオン性ポリマー、および(d)水性キャリアを含み、約7~約9のpHを有する化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨することと、を含む、方法を提供する。
【0103】
本発明の研磨組成物は、任意の好適な基板を研磨するのに有用である。研磨組成物は、酸化ケイ素層を含む基板の研磨に特に有用である。好適な基板としては、フラットパネルディスプレイ、集積回路、メモリまたは剛性円板、金属、半導体、層間誘電体(ILD)デバイス、微小電子機械システム(MEMS)、3D NANDデバイス、強誘電体、および磁気ヘッドが挙げられるが、これらに限定されない。研磨組成物は、シャロートレンチアイソレーション(STI)加工を受けた基板を平坦化または研磨するのに特に適している。望ましくは、基板は、誘電体含有(例えば、酸化ケイ素含有)表面、特に、誘電体材料のトレンチ領域によって分離された隆起誘電体領域を含むパターン誘電体材料の領域を有する表面を含む。基板は、少なくとも1つの他の層、例えば絶縁層をさらに含むことができる。絶縁層は、金属酸化物、多孔質金属酸化物、ガラス、有機ポリマー、フッ素化有機ポリマー、または任意の他の好適な高または低κ絶縁層であり得る。絶縁層は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、またはこれらの組み合わせ、を含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。酸化ケイ素層は、その多くが当該技術分野で既知である任意の好適な酸化ケイ素、を含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。例えば、酸化ケイ素層は、テトラエトキシシラン(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、ポロフォスフォシリケートガラス(BPSG)、高アスペクト比プロセス(HARP)酸化物、スピンオン誘電体(SOD)酸化物、化学蒸着(CVD)酸化物、プラズマ増強テトラエチルオルトシリケート(PETEOS)、熱酸化物、またはドープされていないシリケートガラスを含むことができる。基板は、金属層をさらに含むことができる。金属は、例えば、銅、タンタル、タングステン、チタン、白金、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの組み合わせなどのその多くが当該技術分野で既知である任意の好適な金属、を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなることができる。
【0104】
本発明によれば、任意の好適な技術により、本明細書に記載の研磨組成物で基板を平坦化または研磨することができる。本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置とともに使用するのに特に好適である。通常、CMP装置は、使用時に運動し、軌道運動、直線運動、または円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンと接触し、運転時にプラテンとともに運動する研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して接触し、動かすことにより、基板が研磨されるように保持するキャリアとを含む。基板の研磨は、基板を本発明の研磨組成物、および通常は研磨パッドと接触させて配置し、次いで基板の表面の少なくとも一部、例えば酸化ケイ素、または本明細書に記載の1種以上の基板材料を、この研磨組成物、および通常は研磨パッドで研削し、基板を研磨することにより行われる。任意の好適な研磨条件を使用して、本発明による基板を研磨することができる。
【0105】
基板は、任意の好適な研磨パッド(例えば、研磨表面)とともに化学機械研磨組成物で平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドには、例えば、織布および不織布の研磨パッドが含まれる。さらに、好適な研磨パッドは、さまざまな密度、硬度、厚さ、圧縮率、圧縮時に反発する能力、および圧縮弾性率の任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの成形製品、およびそれらの混合物が含まれる。
【0106】
本発明の組成物および方法は、自己停止挙動を示すが、CMP装置は、in situ研磨終点検出システムをさらに含むことができ、その多くは当該技術分野で既知である。加工物の表面から反射された光または他の放射を分析することにより研磨プロセスを検査および監視する技術は、当該技術分野で既知である。そのような方法は、例えば、米国特許第5,196,353号、米国特許第5,433,651号、米国特許第5,609,511号、米国特許第5,643,046号、米国特許第5,658,183号、米国特許第5,730,642号、米国特許第5,838,447号、米国特許第5,872,633号、米国特許第5,893,796号、米国特許第5,949,927号、および米国特許第5,964,643号明細書に記載されている。研磨される加工物に関する研磨プロセスの進行の検査または監視により、研磨終点の決定、すなわち特定の加工物に関する研磨プロセスをいつ終了するかの決定が可能になることが望ましい。
【0107】
任意の種類のデバイスの基板の場合、基板表面は、表面構造またはトポグラフィーも含む下層の上に配置された、連続的で構造化された誘電体材料の(非平面、非平滑)層を含むことができる。この構造化された誘電体表面の非平面領域は、「パターン誘電体」と呼ばれる。このパターン誘電体は、平らでない下層上に誘電体材料が配置され、下層に存在するトレンチまたは穴を埋めることに起因する。確実にすべてのトレンチまたは穴などを完全に埋め、トレンチまたは穴などを含有する下層の表面を完全に覆うために、誘電体材料が過剰量で堆積される。誘電体材料は、下層の平らでないトポグラフィーに適合し、トレンチによって分離された隆起領域を特徴とする、堆積された連続誘電体表面を作り出す。隆起した領域は、アクティブ研磨および材料除去の場所であり、誘電体材料のほとんどが除去される場所を意味する。パターン誘電体材料はまた、「ステップ高さ」と呼ばれるものによって特徴付けられるが、これは隣接するトレンチの誘電体材料の高さに対する隆起領域の誘電体材料の高さである。
【0108】
本発明の研磨組成物は、誘電体が構造化された下層上にコーティングされ、パターン誘電体材料の領域を生成するシャロートレンチアイソレーション(STI)、または同様のプロセスを経た基板を平坦化または研磨するのに特に好適である。シャロートレンチアイソレーションを受けた基板の場合、典型的なステップ高さは、約1,000オングストローム~約7,000オングストロームの範囲であり得る。
【0109】
記載された研磨組成物の特定の実施形態は、加工中の3D NANDフラッシュメモリデバイスである基板を平坦化または研磨するのにもまた有用である。このような基板では、下層は、アスペクト比が少なくとも10:1、30:1、60:1、または80:1など、高いアスペクト比を有するトレンチ、穴、またはその他の構造を含む、半導体層で作られる。そのような高アスペクト比の構造を有する表面が誘電体材料でコーティングされると、得られるパターン誘電体は、約7,000オングストロームよりも実質的に大きいステップ高さのような、例えば、約10,000オングストロームより大きい、約20,000オングストロームより大きい、約30,000オングストロームより大きい、または約40,000オングストロームより大きい、またはそれ以上の高いステップ高さを示すだろう。
【0110】
本明細書に記載されるいずれかのデバイスの誘電体材料は、さまざまな形態の酸化ケイ素および酸化ケイ素ベースの誘電体材料を含む、その多くが周知である、任意の好適な誘電体材料を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり得る。例えば、酸化ケイ素または酸化ケイ素ベースの誘電体層を含む誘電体材料は、テトラエトキシシラン(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、リンケイ酸ガラス(PSG)、ポロフォスフォシリケートガラス(BPSG)、高アスペクト比プロセス(HARP)酸化物、スピンオン誘電体(SOD)酸化物、化学蒸着(CVD)酸化物、プラズマ増強テトラエチルオルトシリケート(PETEOS)、熱酸化物、またはドープされていないシリケートガラスの任意の1つ以上を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなり得る。過去には、パターン誘電体の平坦化を必要とする基板のいくつかの例は、窒化ケイ素層(例えば、「窒化ケイ素キャップ」または「ライナー」)を、例えば、構造化された半導体層のランド面上の「キャップ」など、パターン誘電体材料のアクティブ研磨領域の下の位置に含むように調製されていた。窒化ケイ素層は、アクティブ領域で窒化ケイ素層に到達すると、誘電体材料の研磨および除去を停止させるように設計される。窒化ケイ素層は、最終的なトポグラフィーのトレンチ損失とディッシングを減らすことを目的とした方法で、研磨ステップにおける材料の除去を中断するように機能する。しかし、このステップは製造プロセスに多大な費用がかかり、それでもディッシングを完全に防ぐことはできない。
【0111】
本発明の方法によれば、基板は、誘電体研磨および除去ステップの目的の終点位置に配置された窒化ケイ素ライナーを含むことができる。他の実施形態においては、基板は、アクティブ領域から誘電体を除去するステップの終点位置に配置された窒化ケイ素「ライナー」または「キャップ」を必要とせず、所望によりかつ好ましくは除外することができる。
【0112】
望ましくは、パターン誘電体材料を平坦化および研磨して、隆起領域(初期高さを有する)とトレンチ(初期トレンチ厚さを有する)との間の初期ステップ高さを低減する。この平坦化を効果的かつ効率的に達成するために、本発明の方法は、トレンチの誘電体材料のかなり低い除去速度とともに、(アクティブ)パターン誘電体材料の隆起領域における高い除去速度を有する。最も好ましくは、本発明の方法はまた自己停止挙動を示す。
【0113】
CMP研磨中または平坦化中に、誘電体材料は隆起領域から除去され、トレンチからも少量で除去される。研磨中、隆起領域の高さは低減し、最終的にはトレンチの高さと本質的に同じ高さになる。これは、例えば、ステップ高さが1,000オングストローム未満、例えば、900オングストローム未満、500オングストローム未満、300オングストローム未満、または250オングストローム未満に低減されることを意味し得る。隆起領域の高さを低減させると、トレンチ間の隆起領域のパターンが除去され、パターンが効果的に除去され、パターンが平坦化された誘電体のフィールド、すなわち、誘電体材料の実質的に平坦化された領域を意味する「ブランケット誘電体」または「ブランケット酸化物」に加工される。
【0114】
研磨される基板に応じて、初期ステップ高さは、CMPプロセスのステップを開始する前に測定して、少なくとも1,000オングストローム、例えば、少なくとも2,000オングストローム、または少なくとも5,000オングストロームであってよく、また7,000オングストロームより大きいなど、例えば、少なくとも10,000オングストローム、少なくとも20,000オングストローム、少なくとも30,000オングストローム、または少なくとも40,000オングストロームなど、かなり大きくてもよい。研磨後、ステップの高さが低減し、トレンチの厚さが低減する。
【0115】
図1は、初期ステップ高さ(h)および初期トレンチ厚さ(t)を有する例示的な基板を示す。ステップ高さの材料は、ほとんどがTEOS、BPSG、またはその他のアモルファスシリカ含有材料などの誘電体であり得る。3D NAND誘電体(およびその他のバルク酸化物除去)プロセスの重要なステップは、最小限のトレンチ損失(t-t)で、ステップ高さ(h)を減らすことである(例えば、約1,000Å未満に、または約900Å未満に)。良好な平坦化効率のためには、最終的なステップ高さを大幅なトレンチ損失なしで達成しなければならない。これには、トレンチ領域よりもアクティブ(すなわち、隆起)領域での除去速度が高い研磨組成物が必要である。加えて、好ましい研磨組成物は、「自己停止」挙動または「平面で停止」挙動をもたらし、過剰研磨を引き起こさない、より効果的な最終研磨を可能にする。望ましくは、本発明の研磨組成物は、ブランケット(実質的に平滑な)誘電体材料の除去速度と比較して、はるかに高いパターン除去速度(アクティブ領域での除去速度)を有する。
【0116】
アクティブ領域での誘電体材料の除去速度は、パターン材料(例えば、パターン酸化物)の除去速度、または「パターン除去速度」または「アクティブ除去速度」と呼ばれる。本明細書に記載の方法および研磨組成物を使用して得られたパターン除去速度は任意の好適な速度であることができ、任意の所与のプロセスと基板の場合、速度は隆起領域の寸法(例えば、ピッチおよび幅)に大きく依存するだろう。好ましい方法によれば、パターン誘電体材料の除去速度は、少なくとも約2,000オングストローム/分、好ましくは少なくとも約4,000オングストローム/分、例えば、少なくとも約5,000オングストローム/分、少なくとも約6,000オングストローム/分、少なくとも約10,000オングストローム/分、約14,000オングストローム/分、または少なくとも約15,000オングストローム/分であり得る。
【0117】
好ましい方法によれば、パターン誘電体は5分未満、例えば3分未満、2分未満、または1分未満の時間のパターン誘電体のCMPプロセスによって、平坦化された表面に加工することができる。これは、少なくとも7,000オングストローム、例えば、少なくとも10,000オングストローム、少なくとも20,000オングストローム、少なくとも30,000オングストローム、または少なくとも40,000オングストロームのステップ高さを含むパターン誘電体材料を伴う基板に対して達成することができる。表面は、1,000オングストローム未満の(研磨により)低減したステップ高さ(すなわち、「残存」ステップ高さ)を達成すると、効果的に平坦化されるとみなされる。したがって、本発明の研磨組成物および方法は、1,000オングストローム未満、例えば、900オングストローム未満、500オングストローム未満、300オングストローム未満、または250オングストローム未満の残存ステップ高さを提供することができる。
【0118】
また、本明細書に記載の研磨組成物を使用する好ましい研磨方法によれば、本明細書に記載の自己停止剤(例えば、式Q-Bの化合物)を含有しない研磨組成物と比較して、トレンチ損失は低減させることができ、かつ平坦化効率を改善することができる。トレンチ損失とは、CMPプロセス前のトレンチの厚さ(t)からCMPプロセス後のトレンチの厚さ(t)を引いた差を指し、すなわち、トレンチ損失はt-tに等しい(所与のプロセス時間または結果の場合)(図1)。好ましくは、平坦化のための研磨中、または所与のプロセス時間中に生じるトレンチ損失の量(例えば、1,000オングストローム未満、例えば、900オングストローム未満、500オングストローム未満、300オングストローム未満、または250オングストローム未満の「残存」ステップ高さによって定義される)は、本明細書に記載の研磨組成物中の、本明細書に記載の自己停止剤の存在により、低減させることができる。したがって、本明細書に記載の研磨方法は、同様であるが、本明細書に記載の自己停止剤を含有しない研磨組成物(例えば、式Q-Bの化合物を含まない研磨組成物)を用いて、同じプロセス条件および装置を使用して、同じ種類の基板を研磨する場合に発生するトレンチ損失よりも、大幅に小さいトレンチ損失(例えば、少なくとも10パーセント小さい)をもたらす。望ましくは、本発明の基板を研磨する方法は、約2,000オングストローム未満、(例えば、約1,500オングストローム未満、約1,000オングストローム未満、約500オングストローム未満、または約250オングストローム未満)のトレンチ損失を提供する。
【0119】
より低いトレンチ損失は、平坦化効率に反映されるが、これは、ステップ高さの低減(Å)をトレンチ損失(Å)で割ったものを意味する。本発明の好ましい方法によれば、本明細書に記載の研磨組成物中に、本明細書に記載の自己停止剤を存在させることにより、平坦化効率を改善することができる。したがって、本明細書に記載の研磨方法は、同様であるが、本明細書に記載の自己停止剤を含有しない研磨組成物(例えば、式Q-Bの化合物を含まない研磨組成物)を用いて、同じプロセス条件および装置を使用して、同じ種類の基板を研磨する場合に発生する平坦化効率よりも、大幅に高い平坦化効率(例えば、少なくとも10パーセントを超える)をもたらす。望ましくは、本発明の基板を研磨する方法は、少なくとも約2.0、好ましくは少なくとも約3.0、例えば、少なくとも約3.5の平坦化効率を提供する。
【0120】
好ましい方法はまた、ブランケット誘電体材料からの誘電体材料の除去速度(ステップ高さが1,000オングストローム未満、900オングストローム未満、500オングストローム未満、300オングストローム未満、または200オングストローム未満に達するとき)(すなわち、「ブランケット除去速度」)がパターン誘電体材料の除去速度よりも著しく低いことを意味する、自己停止挙動を示すことができる。ブランケット誘電体材料の除去速度が約1,000オングストローム/分未満の場合、自己停止挙動が発現したとみなされる。したがって、好ましい実施形態において、本発明の方法は、約1,000オングストローム/分未満、例えば、約800オングストローム/分未満、約500オングストローム/分未満、約300オングストローム/分未満、または約200オングストローム/分未満のブランケット誘電体材料除去速度を提供する。
【0121】
別の手段として、ブランケット誘電体材料の除去速度をパターン誘電体材料の除去速度と比較することにより自己停止挙動を測定することができる。パターン除去速度に対するブランケット除去速度の比率が低いと良好な自己停止挙動を示す。したがって、好ましい実施形態においては、ブランケット誘電体材料の除去速度とパターン誘電体材料の除去速度の比率は約1未満、例えば、約0.5未満、約0.3未満、または約0.1未満である。したがって、本明細書に記載の研磨方法は、同様であるが、本明細書に記載の自己停止剤を含有しない研磨組成物(例えば、式Q-Bの化合物を含まない研磨組成物)を用いて、同じプロセス条件および装置を使用して、同じ種類の基板を研磨する場合に発生するブランケット誘電体材料の除去速度とパターン誘電体材料の除去速度の比率よりも、大幅に小さいブランケット誘電体材料の除去速度とパターン誘電体材料の除去速度の比率(例えば、少なくとも約10パーセント小さい)をもたらすだろう。
【0122】
一実施形態において、本発明は、方法であって、パターン誘電体層が少なくとも約1,000オングストロームの初期ステップ高さを含み、上記方法が研磨中に初期ステップ高さを約900オングストローム未満に低減して平坦化された誘電体を生成することを含み、平坦化された誘電体の除去速度は、約1,000オングストローム/分未満である、方法を提供する。
【0123】
一実施形態において、本発明は、少なくとも約10,000オングストロームの誘電体材料の隆起領域を、パターン誘電体層の表面から除去することを含む方法を提供する。
【0124】
一実施形態において、本発明は、誘電体材料の隆起領域の除去速度と誘電体材料のトレンチ領域の除去速度との比率が、約5より大きい、好ましくは約10より大きい、約15より大きい、または約20より大きい方法を提供する。
【0125】
一実施形態において、本発明は、誘電体材料の隆起領域の除去速度が約1000オングストローム/分より大きい方法を提供する。したがって、好ましい実施形態においては、誘電体材料の隆起領域の除去速度は、約2,000オングストローム/分よりも大きく、例えば、約4,000オングストローム/分より大きく、約5,000オングストローム/分より大きく、約6,000オングストローム/分より大きく、約10,000オングストローム/分より大きく、または約15,000オングストローム/分より大きい。
【0126】
一実施形態において、本発明は、パターン誘電体層が、酸化ケイ素、テトラエトキシシラン、リンケイ酸塩ガラス、ボロシリケートガラス、およびそれらの組み合わせから選択される誘電体材料を含む方法を提供する。
【0127】
実施形態
(1)実施形態(1)において、化学機械研磨組成物であって、(a)研削材、(b)式Q-Bの自己停止剤であって、式中、Qは置換または非置換の疎水性基、または立体障害を与える基であり、Bは結合基であり、結合基は-C(O)-X-OHまたは-C(O)-OHで、XはC1~C2アルキル基である構造を有する、自己停止剤(例えば、式(II)、(III)および(IV)のいずれかの化合物)、および(c)水性キャリア、を含み、約3~約9のpHを有する研磨組成物が提示される。
【0128】
(2)実施形態(2)では、研削材がセリア、ジルコニア、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態(1)の研磨組成物が提示される。
【0129】
(3)実施形態(3)では、研削材がセリアである、実施形態(2)の研磨組成物が提示される。
【0130】
(4)実施形態(4)では、研削材が約0.001質量%~約5質量%の濃度で研磨組成物中に存在する、実施形態(1)~(3)のいずれか1つの研磨組成物が提示される。
【0131】
(5)実施形態(5)では、Qがアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、複素環式芳香族基、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態(1)~(4)のいずれか1つの研磨組成物が提示される。
【0132】
(6)実施形態(6)では、Qがヒドロキシル基、アルキル基、ハロゲン、アミン基、またはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の基で置換されている、実施形態(5)の研磨組成物が提示される。
【0133】
(7)実施形態(7)では、Q-Bがマルトール、コウジ酸、クロトン酸、チグリン酸、2-ペンテン酸、吉草酸、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、カフェー酸、エチルマルトール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態(1)の研磨組成物が提示される。
【0134】
(8)実施形態(8)では、自己停止剤が約0.5質量%以下の濃度で研磨組成物中に存在する、実施形態(1)~(7)のいずれか1つの研磨組成物が提示される。
【0135】
(9)実施形態(9)では、カチオン性ポリマーをさらに含む、実施形態(1)~(8)のいずれか1つの研磨組成物が提示される。
【0136】
(10)実施形態(10)では、カチオン性ポリマーが4級アミン、カチオン性ポリビニルアルコール、カチオン性セルロース、およびそれらの組み合わせから選択されるモノマーを含む、実施形態(9)の研磨組成物が提示される。
【0137】
(11)実施形態(11)では、カチオン性ポリマーは4級アミンモノマーを含み、4級アミンモノマーは、ビニルイミダゾリウム、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド、ジアリルジメチルアンモニウムハライド、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態(10)の研磨組成物が提示される。
【0138】
(12)実施形態(12)では、カチオン性ポリマーがポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)クロリド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド、ポリクオタニウム-2、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態(9)の研磨組成物が提示される。
【0139】
(13)実施形態(13)では、研磨組成物が約6.5~約8.5のpHを有する、実施形態(1)~(12)のいずれか1つの研磨組成物が提示される。
【0140】
(14)実施形態(14)では、研磨組成物が約3~約5のpHを有する、実施形態(1)~(12)のいずれか1つの研磨組成物が提示される。
【0141】
(15)実施形態(15)では、速度向上剤および/またはpH緩衝剤をさらに含む、実施形態(1)~(14)のいずれか1つの研磨組成物が提示される。
【0142】
(16)実施形態(16)において、化学機械研磨組成物であって、(a)セリアを含む研削材、(b)コウジ酸、クロトン酸、チグリン酸、吉草酸、2-ペンテン酸、マルトール、安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、カフェー酸、エチルマルトール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、およびそれらの組み合わせから選択される自己停止剤、および(c)水性キャリア、を含み、約3~約9のpHを有する研磨組成物が提示される。
【0143】
(7)実施形態(17)では、研磨組成物が約3~約5のpHを有する、実施形態(16)の研磨組成物が提示される。
【0144】
(18)実施形態(18)では、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)クロリド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド、ポリクオタニウム-2、およびそれらの組み合わせから選択されるカチオン性ポリマーを含む、平坦化剤をさらに含む、実施形態(16)の研磨組成物が提示される。
【0145】
(19)実施形態(19)では、研磨組成物が約6.5~約8.5のpHを有する、実施形態(18)の研磨組成物が提示される。
【0146】
(20)実施形態(20)では、化学機械研磨組成物であって、(a)セリアを含む研削材と、(b)式(I)の化合物であって、
【化10】
式中、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環式アルキル、および複素環式アリールからなる群から選択され、これらは各々が置換または非置換であってよい、式(I)化合物から選択される自己停止剤と、(c)アルミニウム塩、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウム、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)ハライド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ハライド、ポリクオタニウム-2、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-46、ポリクオタニウム-44、Luviquat Supreme、Luviquat Hold、Luviquat UltraCare、Luviquat FC 370、Luviquat FC 550、Luviquat FC 552、Luviquat Excellence、およびそれらの組み合わせから選択されるカチオン性化合物と、(d)水性キャリアと、を含み、約7~約9のpHを有する、化学機械研磨組成物が提示される。
【0147】
(21)実施形態(21)では、研磨組成物が約7~約9のpHを有する、実施形態(20)の研磨組成物が提示される。
【0148】
(22)実施形態(22)において、基板を化学機械研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板は基板の表面にパターン誘電体層を含み、パターン誘電体層は誘電体材料の隆起領域、および誘電体材料のトレンチ領域を含み、パターン誘電体層の初期ステップ高さは、誘電体材料の隆起領域の高さと、誘電体材料のトレンチ領域の高さとの差である、提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)実施形態(1)~(21)のいずれか1つの化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かし、基板の表面上におけるパターン誘電体層の少なくとも一部を研削し、基板を研磨すること、を含む、方法が提示される。
【0149】
(23)実施形態(23)において、研磨方法であって、パターン誘電体層が少なくとも約1,000オングストロームの初期ステップ高さを含み、上記方法が研磨中に初期ステップ高さを約900オングストローム未満に低減して平坦化された誘電体を生成することを含み、平坦化された誘電体の除去速度は、約1,000オングストローム/分未満である、実施形態(22)の研磨方法が提示される。
【0150】
(24)実施形態(24)では、パターン誘電体層の表面から少なくとも約10,000オングストロームの誘電体材料の隆起領域を除去することを含む、実施形態(22)または実施形態(23)の研磨方法が提示される。
【0151】
(25)実施形態(25)では、誘電体材料の隆起領域の除去速度と誘電体材料のトレンチ領域の除去速度との比率が、約5より大きい、実施形態(22)~(24)のいずれか1つの研磨方法が提示される。
【0152】
(26)実施形態(26)では、誘電体材料の隆起領域の除去速度が約1,000オングストローム/分より大きい、実施形態(22)~(25)のいずれか1つの研磨方法が提示される。
【0153】
(27)実施形態(27)では、パターン誘電体層が、酸化ケイ素、テトラエトキシシラン、リンケイ酸塩ガラス、ボロシリケートガラス、およびそれらの組み合わせから選択される誘電体材料を含む、実施形態(22)~(26)のいずれか1つの研磨方法が提示される。
【実施例
【0154】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0155】
以下の略語が実施例で使用される。PEG8000は、8,000g/molの分子量を有するポリエチレングリコールを指す。pMADQUATはpolyMADQUATを指す。SHAはサリチルヒドロキサム酸を指す。BHAはベンズヒドロキサム酸を指す。BTAは1H-ベンゾトリアゾールを指す。TEAはトリエタノールアミンを指す。POUは使用地点を指す。RRは除去速度を指す。AAはアクティブ領域を指す。TAはトレンチ領域を指す。BWはTEOSブランケットウェハを指す。SHはステップ高さを指す。
【0156】
実施例1
本実施例は、所望によりカチオン性化合物と組み合わせた自己停止剤が、それを含む研磨組成物の研磨性能に及ぼす効果を示す。
【0157】
パターン基板を、14種の研磨組成物(すなわち、研磨組成物1A~1N)で研磨した。研磨組成物1A~1Nを、研削材組成物C1およびC2(以下の表1に記載)を添加剤配合物F1~F15(以下の表2に記載)と、7:3の体積比で混合することにより調製した。
【0158】
研削材組成物C1およびC2は、表1に記載されるように、セリア研削材、ピコリン酸、および水を含有した。HC60およびHC30セリア研削材は、Rhodiaから市販されている。H-30セリア研削材は、以前の出願(米国公開特許出願第2016/0257855号)に記載されている、湿式プロセスセリアである。研削材組成物C1およびC2はそれぞれ4.2のpHを有した。
【表1】
【0159】
添加剤配合物F4~F15は、表2に記載されるように、カチオン性化合物(pMADQUAT)、自己停止剤(SHAまたはBHA)、および添加剤(BTA)を含有した。トリエタノールアミン(TEA)を使用して、添加剤配合物F3~F15の各々のpHを調整した。添加剤配合物F1およびF2は塩基を含まず、4.2のpHを有した。
【表2】
【0160】
約8,000Åの初期ステップ高さを有する、パターン形成したシリコン基板に最初にコーティングされた、50%のパターン密度を伴う250μmのTEOSフィーチャ(約20,000Åの厚さのフィーチャ)を含む、個別のパターン形成した試料片基板(SKW Associates,Inc.からのSKW 7-2ウェハの各辺が40mm有するように正方形に切断したもの)を、200mmのCMPプラテンを有するPOLI-300(G&P Tech.Inc.)上で、IC1010(商標)パッド(Rohm and Haas Electronic Materials)を使用して、20.68kPa(3psi)のダウンフォースで、それぞれ120rpmおよび110rpmのプラテン速度とヘッド速度で、60秒間研磨した。研磨組成物の総流量は200mL/分であった。結果を表3に記載する。
【表3】
【0161】
表3に記載された結果から明らかなように、酸性のpH(pH4.2)で自己停止剤(ヒドロキサム酸)を伴う研削材配合物を含む研磨組成物1Aおよび1Bは、望ましくは、約3~6の範囲のアクティブ領域の除去とトレンチ領域の除去との比率を示した。したがって、研磨組成物1Aおよび1Bは、望ましくは、トレンチ材料を保持しながらパターン材料を平坦化する「自己停止」組成物である。
【0162】
自己停止剤とカチオン性化合物の両方を含む研磨組成物1Iは、約8.6のアクティブ領域の除去とトレンチ領域の除去との比率と、pH6.1での777Åのアクティブ領域での除去を示した。したがって、研磨組成物1Iもまた、トレンチ材料を保持しながらパターン材料を平坦化する「自己停止」組成物である。
【0163】
自己停止剤とカチオン性化合物の両方を含む研磨組成物1C~1Hおよび1J~1Nは、約5.76:1~約50:1の範囲内のアクティブ領域の除去とトレンチ領域の除去との比率と、pH7.6~8.8での約4,700Å~約9,000Åのアクティブ領域での除去を示した。したがって、研磨組成物1C~1Hおよび1J~1Nは、トレンチ材料を保持しながらパターン材料を平坦化する「自己停止」組成物である。
【0164】
実施例2
本実施例は、所望によりカチオン性化合物と組み合わせた自己停止剤が、それを含む研磨組成物の研磨性能に及ぼす効果を示す。
【0165】
パターン基板を、3種の研磨組成物(すなわち、研磨組成物2A~2C)で研磨した。研磨組成物2Bおよび2Cを、実施例1に記載の研削材組成物および添加剤配合物(7:3体積比)を使用して調製した。組成物2A(比較例)は研削材配合物C2のみを含有した。
【0166】
さまざまな幅と密度を伴い、約5,000Åのステップ高さを有する、パターン形成されたシリコン基板に最初はコーティングされた、TEOS(約10,000Åの厚さのフィーチャ)を含む、Silyb Inc.から入手した個別のパターン形成された基板を、300mmのCMPプラテンを有するAP-300(商標)(CTS Co.,Ltd.)上で、IC1010(商標)パッドを使用して、3psiのダウンフォースで、それぞれ93rpmおよび87rpmのプラテン速度とヘッド速度で、さまざまな時間の間、研磨した。研磨組成物の総流量は250mL/分であった。
【表4】
【0167】
実施例2の結果としての、研磨の前後での、ピッチとパターン密度に応じた残存アクティブ厚さを図2にグラフで示す。
【0168】
図2の結果から明らかなように、pH7.7(POU)で研削材、ベンズヒドロキサム酸、およびpolyMADQUATを含有する本発明の研磨組成物2Cは、研磨組成物2Aおよび2Bと比較して、研磨時間が長くなるにつれてパターン密度依存性が低くなり、基板上にわたって均一なトポグラフィーを伴う停止を示した(90秒間の研磨組成物2C研磨)。
【0169】
追加の研磨性能データを表5および図2に記載する。表5のデータは、研磨時間に応じた、900μmのTEOSフィーチャ(パターン密度50%)を含む、ウェハ上の残存アクティブ厚さを示す。
【表5】
【0170】
表5と図2に記載の結果から明らかなように、比較例(研磨組成物2Aおよび2B)と比較して、研磨組成物2Cは最初はパターン材料上での研磨速度が低かったが、ステップ高さが減少すると、研磨速度はウェハ上で均一に下降した。本実施例はさらに、使用地点で約7.0~約8.5のpH範囲で、自己停止剤(例えば、ヒドロキサム酸)およびカチオン性化合物(例えば、pMADQUAT)を使用して配合された自己停止する研磨組成物の、対照研磨組成物と比較した、基板上のトポグラフィーの変動(パターン密度依存性)およびウェハ内の研磨速度の変動(WIWNU)に関する、自己停止する研磨組成物の利点を示す。
【0171】
実施例3
本実施例は、所望によりカチオン性化合物と組み合わせた本発明の自己停止剤およびpH範囲の、研磨性能に対する効果を示す。
【0172】
パターン基板およびTEOS被覆シリコン基板を、以下の表7に記載の14種の研磨組成物(すなわち、研磨組成物3A~3N)で研磨した。研磨組成物を、研削材組成物(表1に記載)および表6に記載の添加剤配合物を7:3の体積比で混合して調製した。
【0173】
添加剤配合物G1~G5はカチオン性化合物を含有せず、一方、添加剤配合物G6~G14はカチオン性化合物(すなわちpMADQUATまたはLuviquat Supreme)を含有した。すべての配合物は、自己停止剤、および表6に記載される追加の成分を含有した。
【表6】
【0174】
パターン形成したウェハは、Silyb Inc.から入手し、ウェハは、パターン密度50%(約10,000Åの厚さのフィーチャ)を伴い、約5,000Åのステップ高さを有する、パターン形成されたシリコン基板に最初はコーティングされた900μmのTEOSフィーチャを含んだ。TEOSブランケットウェハはWRS materialsから入手した。試験用ウェハを、MIRRA(商標)研磨ツール(Applied Materials, Inc.)を使用して、60秒間および90秒間、パターン形成したウェハとブランケットウェハをそれぞれ研磨した。NexPlanar(登録商標)E6088(Cabot Microelectronics Corporation)研磨パッドを、200mmのプラテン上で、3psiのダウンフォースと、それぞれ93rpmと87rpmのプラテン速度とヘッド速度で使用した。合計のスラリー流量は150mL/分であった。結果を表7に記載する。
【表7】
【0175】
表7に記載される結果から明らかなように、自己停止剤とともに研削材配合物を含むすべての研磨組成物は、パターン上で高いステップ高さ除去速度、およびブランケットウェハ上で低い酸化物除去速度を示した。これは、パターンウェハ上で、ウェハが平坦化されるにつれて、除去速度が著しく低下することを示す。ステップ高さ除去速度と酸化物ブランケット除去速度の比率は、POU pHおよびカチオン性化合物と組み合わせた自己停止剤の種類に応じて、約4~24の範囲であった。
【0176】
本明細書に引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み入れられることが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」および「少なくとも1つの(at least one)」という用語および同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「少なくとも1つの」という用語に続く1つ以上の項目の列挙(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(AまたはB)から選択される1つの項目、または列挙された項目(AおよびB)の2つ以上の任意の組み合わせを意味すると解釈されるべきである。「備える」、「有する」、「含む」および「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内にある各別個の値を個々に参照する簡略方法として有用であることを単に意図しており、それぞれの別個の値は本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載されるすべての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書において提供される任意のおよびすべての例、または例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須であると主張されていない任意の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0178】
本発明を行うために本発明者らに既知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実行されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に列挙された主題のすべての変形および同等物を含む。その上、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
図1
図2