(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】遊離二価カチオン乳タンパク質及び植物タンパク質凝集体を有する食品又は飲料製品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A23C 11/06 20060101AFI20220831BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220831BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220831BHJP
【FI】
A23C11/06
A23L2/38 P
A23L5/00 M
(21)【出願番号】P 2019566161
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2018064495
(87)【国際公開番号】W WO2018220188
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-19
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, クリストフ, ジョセフ, エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】マルケジーニ, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルデ, サンドラ, カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】コウオジエイチック, エリック, スタニスラス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ, コリン
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/021428(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0117231(US,A1)
【文献】国際公開第2016/102500(WO,A1)
【文献】特表2020-513736(JP,A)
【文献】特表2020-501528(JP,A)
【文献】特表2009-531038(JP,A)
【文献】特表2020-503849(JP,A)
【文献】Jean-Luc Mession et al.,Interactions in casein micelle - Pea protein system (part I): Heat-induced denaturation and aggregation,Food Hydrocolloids,2015年12月22日,Volume 67, June 2017,Pages 229-242,available online 22 Dec. 2015
【文献】Cosmin M.Beliciu et al.,The effect of protein concentration and heat treatment temperature on micellar casein-soy protein mixtures,Food Hydrocolloids,2011年,Volume 25, Issue 6, August 2011,Pages 1448-1460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C,A23L,A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品又は飲料製品を製造する方法であって、
カゼインミセルと、ホエイタンパク質と、植物タンパク質とを含み、5.9~
6.66のpHを有し、1~15重量%の総タンパク質濃度を有する、成分組成物を用意する工程であって、
前記組成物は、カゼインミセルのホエイタンパク質に対する比が90/10~60/40であり、カゼインミセルとホエイタンパク質の、植物タンパク質に対する比が80/20~20/80である、工程と、
二価カチオンを添加して、前記成分組成物に2.0~10mMの濃度の遊離二価カチオンをもたらす工程と、
続いて
前記成分組成物を熱処理して、カゼインミセルと、ホエイタンパク質と、植物タンパク質とを含む凝集タンパク質を形成する工程であって、前記凝集体は、レーザー回折により測定したD(4,3)平均直径によって測定したときに5~50μmのサイズを有する、工程と、
を含
み、
前記二価カチオンがカルシウム塩の形態で添加され、前記カルシウム塩が、塩化カルシウム、乳酸カルシウム又はこれらの混合物を含む、方法。
【請求項2】
前記成分組成物は、80~125℃の温度で30~900秒間、又は126℃以上の温度で3~45秒間熱処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物タンパク質が、エンドウ豆タンパク質、大豆タンパク質、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記成分組成物が均質化に供さ
れる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記植物タンパク質の溶解度が、物理的処理により改善されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記凝集体が、D(4,3)平均直径によって測定したときに10~40μ
mである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記凝集体が、D(4,3)平均直径によって測定したときに10~30μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カルシウム塩が
、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~6.0m
Mになるまで添加される、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記カルシウム塩が、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~4.0mMになるまで添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カルシウム塩が、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~3.0mMになるまで添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記植物タンパク質がエンドウ豆タンパク質であり、
前記カルシウム塩が
、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~3.0m
Mになるまで添加される、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記植物タンパク質がエンドウ豆タンパク質であり、前記カルシウム塩が、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~2.5mMになるまで添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記植物タンパク質が大豆タンパク質であり、
前記カルシウム塩が
、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~3.0m
Mになるまで添加される、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記最終製品中の可溶性タンパク質の含有量が、前記総タンパク質含有量に対して30%以下である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記成分組成物が、0~36重量%の脂
肪を含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記成分組成物中の前記カゼイン及びホエイタンパク質が、生乳、低温殺菌乳、低温濃縮乳、低温粉乳、乳タンパク質濃縮物、液体若しくは粉末フォーマットの乳タンパク質単離物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される形態で提供され、
追加のホエイタンパク質が、スイートデイリーホエイ、ホエイタンパク質濃縮物、液体、濃縮物若しくは粉末フォーマットのホエイタンパク質単離物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される形態で提供される、請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
カゼインミセル、ホエイタンパク質及び植物タンパク質の凝集体を含む凝集タンパク質を含有する、食品又は飲料製品であって、
前記製品は、5.9~
6.66のpHを有し、かつ1~15重量%の総タンパク質濃度を有し、
前記組成物は、カゼインミセルのホエイタンパク質に対する比が90/10~60/40であり、カゼインミセルとホエイタンパク質の、植物タンパク質に対する比が80/20~20/80であり、前記成分組成物中の遊離二価カチオンの濃度が2.0~10mMであり、
凝集タンパク質が、カゼインと、ホエイタンパク質と、植物タンパク質とを含み、前記凝集体が、レーザー回折により測定したD
(4,3)平均直径によって測定したときに5~50μmのサイズを有
し、
前記遊離二価カチオンがカルシウムカチオンである、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は飲料製品の製造方法に関し、特に、成分組成物中に凝集タンパク質を形成するための方法に関する。本発明はまた、カゼインミセル、ホエイタンパク質及び植物タンパク質凝集体を含む、凝集タンパク質を含有する食品又は飲料製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の凝集によって食品及び飲料製品に食感及び口当たりが提供されることが知られており、優れた味及び食感をもたらしながら主要栄養素の栄養バランスを示す食品及び飲料製品が引き続き必要とされている。
【0003】
中国特許第104489097(A)号は、乳酸菌又はプロバイオティクス用の熱対流乾燥保護剤を得る方法を記載している。該方法は、タンパク質凝集を誘導するため、カルシウムを富化した乳調製物を60℃で熱処理する工程と、続いて該調製物を機械的均質化処理に供する工程と、を含む。
【0004】
国際公開第07040113(A)号では、乳由来の複合脂質中に高含有量を示す成分の製造について記載されている。上記成分は、バター上清(butter serum)のタンパク質画分を、pH4.0~5.0において、カルシウムの存在下で沈殿させ、上清を濾過して複合脂質を濃縮することによって得られる。
【0005】
国際公開第06065135(A2)号では、遊離二価カチオンの豊富な液体食品製品の製造が開示されており、この製造では、カルシウムの存在下での凝集に対する耐性を高めるために、タンパク質によって保持されるリジン残基の20%がグリコシル化されている。したがって、国際公開第06065135(A2)号は、二価カチオン、とりわけカルシウムの存在下でのタンパク質凝集の防止に関する。
【0006】
米国特許出願公開第20130011515(A1)号では、ホエイタンパク質を富化した乳タンパク質濃縮物の製造方法が記載されている。脱脂乳は、ホエイタンパク質とカゼインとの凝集を促進するために、pH範囲6.5~7.0で加熱される。続いて、加熱された製品を濾過して、タンパク質凝集体を濃縮し、ラクトースを除去する。
【0007】
D.L.Van Hekken et al.[Rheology and Microstructure of Chemically Superphosphorylated Whole Casein,1997,J.Dairy Sci.80 2740-2750.]は、過リン酸化カゼインの粘度における遊離カルシウムの添加の影響を記載している。pH8.4で30mMのカルシウムを添加することにより、4重量%の過リン酸化カゼイン(190%リン酸化)の粘度が増加することが示された。この研究は、植物タンパク質と乳タンパク質との混合物に関するものではない。更に、植物タンパク質と乳タンパク質との混合物に関して、超リン酸化カゼインは、化学修飾された高価な原材料であることから望ましくない。
【0008】
C.Holtは、自身の論文[An equilibrium thermodynamic model of the sequestration of calcium phosphate by casein micelles and its application to the calculation of the partition of salts in milk,2004,Eur.J.Phys.,33,421-434]において、ウシ乳の遊離カルシウムイオンの量は、pH6.70で10.2mMであり、この値は乳のpHが6.0に低下すると8mMに低下することを報告した。上記論文は植物タンパク質に関するものではない。
【0009】
I.R.McKinnon et al.[Diffusing-wave spectroscopy investigation of heated reconstituted skim milks containing calcium chloride,2009,Food Hydrocolloids,1127-1133]は、pH範囲6.0~7.2において10重量%で再構成された脱脂乳への塩化カルシウム添加の影響、並びにその後、乳を60、75及び90℃で10分間加熱したときの粘度に対する影響を調査した。彼らは、最大10mMの塩化カルシウム含有量で、90℃で加熱したときの乳について、臨界不安定性pHが5.9であることを報告した。上記論文は植物タンパク質に関するものではない。
【0010】
L.Ramasubramanian et al.[The rheological properties of calcium-induced milk gels,2014,J.Food Engineering,45-51]は、70℃で加熱したときの全脂肪乳(3.5%脂肪)への塩化カルシウムの添加の影響を明らかにした。12.5mM未満の塩化カルシウムを添加すると、より粘稠な分散液がもたらされ、塩化カルシウム濃度を増加させると、より強度の高いゲルが形成されることが報告された。興味深いことに、塩化カルシウムを添加し、乳を90℃で10分間前処理してから70℃で加熱すると、最も強度の高いゲルが生じた。ゲル形成は、多くの半固体の食品及び飲料製品において望ましくない。上記論文は植物タンパク質に関するものではない。
【0011】
T.Phan-Xuan et al.[Tuning the structure of protein particles and gels with calcium or sodium ions.2013,Biomacromolecules,14,6,1980-1989]は、pH7.0で塩化カルシウムを□-ラクトグロブリンに添加して100%ホエイタンパク質(□-ラクトグロブリン)を処理した場合、4重量%のタンパク質濃度に対してカルシウム含有量が5~6mMのときに、68℃又は85℃で加熱すると、マイクロゲル又はゲル形成をもたらしたことを報告している。この場合もゲル形成は、多くの半固体の食品及び飲料製品において望ましくない。
【0012】
N.Chen et al.[Thermal aggregation and gelation of soy globulin at neutral pH.2016,Food Hydrocolloids,61,740-746]は、大豆タンパク質単離物を、中性pHで50~90℃の範囲の温度に加熱すると、5~9重量%の範囲のタンパク質濃度で、フラクタル凝集体を形成したことを報告している。カルシウムがタンパク質凝集に与える影響は記載されていない。
【0013】
J.M.Franco et al.[Influence of pH and protein thermal treatment on the rheology of pea protein-stabilized oil-in-water emulsions.2000,JAOCS,77,9,975-984]は、6重量%のエンドウ豆タンパク質で安定化された濃縮65重量%ヒマワリ油エマルションが、70℃を超える温度で最大60分間加熱すると粘度増加を示し、エンドウ豆タンパク質の等電点付近のpH、すなわちpH5.3で最も高い粘度増加が得られたことを報告している。
【0014】
カゼインミセルとエンドウ豆タンパク質との間の相互作用は、J.-L.Mession et al.[Interactions on casein micelle-pea system(part 1):heat-induced denaturation and aggregation.2017,Food Hydrocolloids,67,229-242]に記載されている。加熱すると、ミセルカゼイン及びエンドウ豆タンパク質の分散体は、40~85℃、pH 7.1で、1:1の重量混合比及び1.8重量%のタンパク質含量で分離する。カゼインはエンドウ豆タンパク質の凝集に関与しなかったが、エンドウ豆タンパク質サブユニットの解離に関係していたと結論付けられた。この文書は、遊離カルシウムの効果を開示していない。
【0015】
C.M.Beliciu and C.I.Moraru[The effect of protein concentration and heat treatment temperature on micellar casein-soy protein mixtures.2011,Food Hydrocolloids,25,1448-1460]は、1:1のカゼインミセル及び大豆タンパク質単離物を、2~15重量%の範囲のタンパク質含有量で、40~90℃の範囲、pH 7.0で、15分間加熱することの効果を研究した。彼らは、混合物の流動特性が、同じタンパク質濃度の大豆タンパク質単離物よりも低いことを見出した。加えて、著者は、カルシウムが溶液から沈殿し、凝集体の全体的な電荷に関係せず、食感/粘度に関係しなかったと主張した。
【0016】
従来技術の教示は、乳製品へのカルシウム添加で粘度増加が得られる場合があることを示すが、乳/植物タンパク質の混合物の粘度増加が得られる場合があることは開示されていない。また、ゲル化効果が食品製造において望ましくない場合があることも、従来技術から周知である。更に、製品のpHは変動し、プロセスに影響を与える場合があるが、製品の不安定性につながる場合がある。従来技術では、望ましい味及び食感をもたらす食品及び飲料製品を提供する方法が示されていない。
【0017】
したがって、優れた味及び食感をもたらしながら、主要栄養素の栄養バランスを示す食品及び飲料製品が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、改善された食感及び口当たりを有する食品又は乳/植物タンパク質製品を提供することである。
(発明の概要)
【0019】
本発明は、特定濃度の添加二価カチオンの存在下での特定の熱処理による、乳/植物タンパク質ベースの凝集体の使用による改善を提供する。
【0020】
第1の態様では、本発明は、食品又は飲料製品の製造方法であって、
カゼインミセルと、ホエイタンパク質と、植物タンパク質とを含み、5.9~7.1、好ましくは6.2~6.8のpHを有し、1~15重量%の総タンパク質濃度を有する、成分組成物を用意する工程であって、
組成物は、カゼインミセルのホエイタンパク質に対する比が90/10~60/40であり、
カゼインミセルとホエイタンパク質の、植物タンパク質に対する比が80/20~20/80である、工程と、
二価カチオンを添加して、成分組成物に2.0~10mMの濃度の遊離二価カチオンをもたらす工程と、
続いて
上記成分組成物を熱処理して、カゼインミセル、ホエイタンパク質及び植物タンパク質を含む凝集タンパク質を形成する工程であって、凝集体は、レーザー回折により測定したD(4,3)平均直径によって測定したときに5~50μmのサイズを有する、工程と、
を含む、方法に関する。
【0021】
本発明は、製品中の総脂肪含有量の低減を可能にしながら最適な感覚特性をもたらすことを目的として、添加遊離二価カチオンの存在下で熱処理すると生成する乳/植物タンパク質ベースの凝集体を使用する。更に、本発明により、追加の安定剤又はヒドロコロイドを使用せずとも、乳製品ベースの食感付与製品の配合が可能になる。
【0022】
本発明の好ましい方法において熱処理では、成分組成物は、80~125℃の温度に30~900秒間、又は126℃以上の温度に3~45秒間供される。本発明のより好ましい実施形態では、熱処理により、成分組成物は、80~100℃の温度に0.5~4分間、又は135℃を超えるUHT(超高温)熱処理に3~45秒間供される。
【0023】
請求項1に記載の方法によると、成分組成物は、80~125℃の温度で、30~900秒間、又は126℃以上の温度で3~45秒間熱処理される。
【0024】
第2の態様では、本発明は、上記の方法によって得られる食品又は飲料製品に関する。
【0025】
更なる態様では、本発明は、カゼインミセル、ホエイタンパク質及び植物タンパク質の凝集体を含む凝集タンパク質を含有する食品又は飲料製品に関し、該製品は、5.9~7.1、好ましくは6.2~6.8のpHを有し、かつ1~15重量%の総タンパク質濃度を有し、組成物は、カゼインミセルのホエイタンパク質に対する比が90/10~60/40であり、カゼインミセルとホエイタンパク質の植物タンパク質に対する比が80/20~20/80であり、成分組成物中の遊離二価カチオンの濃度は2.0~10mMであり、凝集タンパク質は、カゼインと、ホエイタンパク質と、植物タンパク質とを含み、凝集体は、レーザー回折により測定したD(4,3)平均直径によって測定したときに5~50μmのサイズを有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】総タンパク質含有量3重量%及び混合比75/25の乳タンパク質濃縮物(MPC)/大豆タンパク質単離物(SPI)により安定化された高オレイン酸ヒマワリ油ベースのエマルションについて、pH7.0で5mM CaCl
2の存在下又は不在下で加熱(95℃、15分)及び剪断後の粒度分布を示す。(A)2.5重量%ヒマワリ油、(B)5重量%ヒマワリ油、(C)10重量%ヒマワリ油。実線:pH7.0、CaCl
2添加なし;破線:pH7.0、5mM CaCl
2添加。
【
図2】総タンパク質含有量3重量%及び混合比50/50の乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物により安定化された高オレイン酸ヒマワリ油ベースのエマルションの、pH7.0で10mM CaCl
2の存在下又は不在下で加熱(95℃、15分)及び剪断後の粒度分布を示す。(A)2.5重量%ヒマワリ油、(B)5重量%ヒマワリ油、(C)10重量%ヒマワリ油。実線:pH7.0、CaCl
2添加なし;破線:pH7.0、10mM CaCl
2添加。
【
図3】3重量%乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物(混合比75/25)で安定化された5重量%の高オレイン酸ヒマワリ油エマルションの、95℃で15分間の熱処理及び剪断後の、共焦点走査レーザー顕微鏡写真を示す。(A)pH7.0、CaCl
2添加なし;(B)pH7.0、5mM CaCl
2添加。スケールバーは、10μmである。矢印の隣のmcはカゼインミセル、spは大豆タンパク質、oは油滴を表す。
【
図4】3重量%の乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物(混合比50/50)で安定化された5重量%の高オレイン酸ヒマワリ油エマルションの、95℃で15分間の熱処理及び剪断後の、共焦点走査レーザー顕微鏡写真を示す。(A)pH7.0、CaCl
2添加なし;(B)pH7.0、10mM CaCl
2添加。スケールバーは、10μmである。矢印の隣のmcはカゼインミセル、spは大豆タンパク質、oは油滴を表す。
【
図5】3重量%の乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物(混合比75/25)で安定化された高オレイン酸ヒマワリ油エマルションの、pH7.0で5mM CaCl
2の存在下又は不在下、95℃で15分間の熱処理及び剪断後の、20℃における流動曲線を示す。(A)2.5重量%ヒマワリ油、(B)5重量%ヒマワリ油、(C)10重量%ヒマワリ油。〇:pH7.0、CaCl
2添加なし;×:pH7.0、5mM CaCl
2添加。
【
図6】3重量%の乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物(混合比75/25)で安定化された高オレイン酸ヒマワリ油エマルションの、pH7.0で5mM CaCl
2の存在下又は不在下、95℃で15分間の熱処理及び剪断後の、20℃における流動曲線を示す。(A)2.5重量%ヒマワリ油、(B)5重量%ヒマワリ油、(C)10重量%ヒマワリ油。〇:pH7.0、CaCl
2添加なし;×:pH7.0、10mM CaCl
2添加。
【
図7】3重量%の乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物混合物で安定化された高オレイン酸ヒマワリ油エマルションについて、pH7.0でCaCl
2の存在下又は不在下、95℃で15分間の熱処理及び剪断後の、剪断速度10 1/sにおける粘度を示す。(A)MPC/SPI混合比75/25、5mM CaCl
2添加、(B)MPC/SPI混合比50/50、10mM CaCl
2添加。
【
図8】3重量%の乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物(混合比75/25)で安定化された5重量%の高オレイン酸ヒマワリ油エマルションの、パイロットプラントにおいて95℃で3分間の熱処理及び剪断後の、共焦点走査レーザー顕微鏡写真を示す。(A)pH7.0、CaCl
2添加なし;(B)pH7.0、10mM CaCl
2添加。スケールバーは、10μmである。矢印の隣のpはタンパク質、oは油滴を表す。
【
図9】3重量%の乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物(混合比50/50)で安定化された5重量%の高オレイン酸ヒマワリ油エマルションの、パイロットプラントにおいて95℃で3分間の熱処理及び剪断後の、共焦点走査レーザー顕微鏡写真を示す。(A)pH7.0、CaCl
2添加なし;(B)pH7.0、20mM CaCl
2添加。スケールバーは、10μmである。矢印の隣のpはタンパク質、oは油滴を表す。
【
図10】乳-エンドウ豆系又は乳-大豆系を配合するために使用された方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
乳/植物タンパク質の混合物への二価カチオン添加、特にカルシウム添加が、タンパク質凝集及び粘度増加に及ぼす効果に関する実験を実施したとき、驚くべきことに、加熱時に形成された凝集体の沈殿又はゲル化を伴わずに、最適なタンパク質凝集をもたらす二価カチオン添加には臨界範囲が存在することが見出された。この最適なカルシウム濃度を上回ると、系は沈降を伴う過剰凝集又は凝集体サイズの低下を示した。
【0028】
理論に束縛されるものではないが、タンパク質へ塩化カルシウムを添加することで、タンパク質の表面に吸着されたプロトンと、より高い親和性を有するカルシウムイオンとの交換がもたらされると考えられる。この現象により、分散体のpHが低下し、それによってタンパク質間の静電反発力が減少した。これらの条件では、乳/植物タンパク質ベースの分散体及びエマルションを後で熱処理することで、タンパク質の制御された凝集がもたらされ、これは最終製品の食感特性及び感覚特性にプラスの影響を与えることが示された。
【0029】
本発明の主な利点は、低脂肪乳/植物タンパク質ベースの系に食感を付与することができ、追加のヒドロコロイドの使用削減を可能にすることである。
【0030】
本文脈において、本発明による方法で形成され、本発明の製品中に存在する凝集体は、D(4,3)平均径によって測定したときに5~50μmのサイズを有する。凝集体の粒度分布は、Mastersizer 2000(Malvern Intruments,UK)又は同等の測定システムを使用して測定する(PSD)。測定のために、試料は、例えば、9~10%の遮蔽率(obscuration rate)が得られ、次いでMastersizerで分析するまで、Hydro SM測定セルに分散させる場合がある。
【0031】
更に、本文書では、遊離二価カチオンは、選択電極によって測定され得る。例えば、遊離カルシウム(イオン)濃度は、692pH/イオンメーター(Metrohm Switzerland)に接続されたBNCコネクターP/N51344703を備えたメトラー・トレドカルシウム選択電極perfection(商標)DXシリーズ半電池で測定される。
【0032】
更に、本文書では、特に指示がない限り、成分の%は、組成物の重量に基づく重量%、すなわち重量/重量%を意味する。
【0033】
好ましくは、成分組成物中のタンパク質濃度は、1~10重量%、より好ましくは2~9重量%である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、凝集体は、D(4,3)平均直径によって測定したときに10~40μm、好ましくは10~30μmである。これにより、凝集体がざらつきを与えることなく、製品に望ましい口当たりを与える。
【0035】
本文脈において、植物タンパク質は、大豆、エンドウ豆、オート麦、ジャガイモ、キャノーラ、ピーナッツ、又は米からなる群から選択され得る。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、植物タンパク質は、エンドウ豆タンパク質、大豆タンパク質、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。これらの植物タンパク質は、本発明の製品に良好な食感を提供することが見出されている。
【0037】
有利には、本発明による方法では、植物タンパク質の溶解度は、物理的処理(例えば、加熱、均質化)により改善されている。
【0038】
本発明による方法では、成分組成物が均質化されることが好ましい。しかしながら、本発明による方法で形成された凝集体は、凝集体が高すぎる剪断を受けた場合に破壊され得ることが見出されている。有利には、均質化は、成分組成物の熱処理の前である。
【0039】
本発明によれば、二価カチオンは、Caカチオン若しくはMgカチオン又はこれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。これらの二価カチオンは食品グレードであり、油又は脂肪の酸化し易さに関係しない。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、二価カチオンはカルシウムカチオンである。
【0041】
有利には、二価カチオン、好ましくはカルシウム塩は、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~6.0mM、好ましくは2.0~4.0mM、より好ましくは2.0~3.0mMになるまで添加される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、植物タンパク質はエンドウ豆タンパク質であり、カルシウム塩は、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~3.0mM、好ましくは2.0~2.5mMになるまで添加される。本発明のこの実施形態は、添加された塩起因するいくつかの感覚的欠陥(金属味、石鹸っぽさ)がもたらされないという利点を有する。
【0043】
植物タンパク質はエンドウ豆タンパク質であり、カルシウム塩は、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~3.0mM、好ましくは2.0~2.5mMになるまで添加される。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態では、植物タンパク質は大豆タンパク質であり、カルシウム塩は、遊離二価カルシウムカチオン濃度が2.0~3.0mM、好ましくは2.0~3.0mMになるまで添加される。本発明のこの実施形態は、添加された塩に起因するいくつかの感覚的欠陥(金属味、石鹸っぽさ)がもたらされないという利点を有する。
【0045】
成分組成物のpHは、カチオンを添加した後に5.9~6.8に調整され得る。
【0046】
更に、二価カチオンは、ミネラル塩の形態で添加されることが好ましい。好ましくは、ミネラル塩は、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ステアレートマレエート、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、及びグルコン酸カルシウムからなる群から選択される。本発明の特に好ましい実施形態では、カルシウム塩は、塩化カルシウム又は乳酸カルシウムである。本発明の全ての自然な実施形態では、カルシウムは、例えば膜分画によってタンパク質、脂肪、及びラクトースを分離した後の乳由来の濃縮ミネラルから得られる。
【0047】
成分組成物のpHは、カルシウムカチオンを添加する前に好ましくは6.2~7.1である。
【0048】
凝集反応後の成分組成物中の可溶性タンパク質の含有量は、総タンパク質含有量に対して好ましくは30%以下、好ましくは20%以下であり、タンパク質のほとんどが凝集構造に埋め込まれていることを示す。
【0049】
本発明の一実施形態では、成分組成物は、0~36重量%の脂肪、好ましくは1.0~20重量%、より好ましくは3.0~15重量%、最も好ましくは5~10重量%の脂肪を含む。少量の脂肪であっても、製品内に形成された凝集により、製品の食感がクリーミーであることが判明している。
【0050】
成分組成物中のカゼイン及びホエイタンパク質は、好ましくは、生乳、低温殺菌乳、低温濃縮乳、低温粉乳、乳タンパク質濃縮物、液体若しくは粉末フォーマットの乳タンパク質単離物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される形態で提供され、追加のホエイタンパク質は、スイートデイリーホエイ、ホエイタンパク質濃縮物、液体、濃縮物若しくは粉末フォーマットのホエイタンパク質単離物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される形態で提供される。
【0051】
好ましくは、ホエイタンパク質源は非変性である。
【0052】
植物タンパク質は、好ましくは粉末植物タンパク質濃縮物又は単離物から選択される。
【0053】
カゼインミセルは、液体若しくは粉末形態又はこれらの組み合わせで、乳、乳タンパク質濃縮物、及び乳タンパク質単離物からなる群から得ることができる。
【0054】
本発明はまた、上記の方法によって得られる乳製品濃縮物に関する。
【0055】
本発明の特に好ましい実施形態では、濃縮物は、凍結乾燥、噴霧乾燥、又はロール乾燥の手段によって粉末に乾燥される。
【0056】
本発明による製品は、アイスクリーム又は冷凍菓子、乳製品濃縮物又はデザート、ソースなどの乳製品であってもよい。製品フォーマットとしては、凍結、常温、チルド、液体及び粉末が挙げられる。
【実施例1】
【0057】
以下の実施例は、限定するものではなく例として、本発明の様々な実施形態を例示する。
【0058】
実施例1:
還元全脂肪乳及びエンドウ豆タンパク質単離物に乳酸カルシウムを添加することよって得られる、乳タンパク質とエンドウ豆タンパク質との凝集体(全タンパク質含有量の75%が乳タンパク質であり、25%がエンドウ豆タンパク質である)。
【0059】
材料及び方法
脱脂粉乳(MSK)(低熱)は、Hochdorf(Switzerland)によって提供され、エンドウ豆タンパク質単離物Nutralys XFはRoquette(France)によって提供された。
【0060】
エンドウ豆タンパク質単離物のタンパク質濃度は脱脂粉乳よりも高いことから、マルトデキストリンDE 38-41(Roquette,France)を添加することによって総固形分(TS)を調整し、平均全脂肪乳として13%TSを達成するようにした。高オレイン酸ヒマワリ油(Oleificio Sabo,Switzerland)は、乳脂肪の代わりに使用されている。
【0061】
13%TSでは、系は、3.3%の総タンパク質(2.5%乳タンパク質、0.8%エンドウ豆タンパク質)と、3.5%の油で配合されている。
【0062】
表1は、乳-エンドウ豆系の組成を示す。
【0063】
【0064】
カルシウム添加のために、乳酸カルシウム(Purac Biochem,the Netherlands)を乾燥混合し、本方法の間にマルトデキストリンと共に添加した。
【0065】
図10は、乳-豆系を配合するために使用された方法を示す。
【0066】
エンドウ豆タンパク質の溶解度を高めるために、エンドウ豆タンパク質を55℃の逆浸透水に添加し、30分間撹拌した。このタンパク質分散体を、110℃の油浴(HBR4 IKA,Germany)に浸漬されたコイル管(内半径4mm、7回巻、直径94mm、長さ2100cm)を用いて95℃で加熱した。コイル出口で確実に標的温度に到達させるため、流速は425mL/分とした。加熱した分散体を、95℃の水浴(HBR4 IKA,Germany)中に置いた、電磁攪拌器を備えたSchottボトルに回収した。エンドウ豆タンパク質分散体を95℃で10分間撹拌した後、冷水浴中で50℃まで冷却し、続いて卓上ホモジナイザーPanda PLUS(GEA Niro Soavi,Italy)で、200+50バールで均質化した。
【0067】
他の成分(MSK、油(存在する場合)、マルトデキストリン及びカルシウム塩)を50℃で均質化したエンドウ豆タンパク質分散体に添加し、混合物を50℃で40分間撹拌した。プレエマルションは、14000rpmで1分間のUltra Turrax(T25 IKA,Germany)処理によって得られる。
【0068】
続いて、事前に均質化した混合物を、50℃、200+50バールで均質化し、次いで氷浴中で4℃まで冷却した。混合物を異なるアリコートに分割し、10℃未満に維持しながら、アリコートの各々のpHを、5%w/w水酸化カリウム溶液(Merck,Germany)又は10%w/wクエン酸溶液(Jungbunzlauer,Austria)を用いて目標値に調整した。
【0069】
pH平衡化後、各エマルションを、プレートヒーター(rtc basic IKA,Germany)上のSchottボトル内で、連続撹拌下で予熱した。コイル出口で確実に標的温度に到達させるため、予熱したエマルションを、110℃の油浴(HBR4 IKA,Germany)中に浸漬した加熱コイル(内半径4mm、7回巻、直径94mm、長さ210cm)を通して115mL/分でポンプ圧送した。コイルを保持管(内半径7mm、長さ3400mm)に接続し、これを96℃の水浴(HBR4 IKA,Germany)に浸漬した。コイルと水浴との間の接続は、保持管と合わせて、96℃で60秒の合計加熱時間を提供した。
【0070】
加熱後、追加のコイル管(内半径4mm、4回巻、直径94mm、長さ120cm)を通して試料をポンプ圧送し、氷水に浸漬して、30秒未満で<50℃に冷却した。
【0071】
流動特性
非加熱のエマルションと加熱したエマルションとを用いて、プレート/プレート形状(直径60mm)及び間隙1mmを備えたUMTC(Thermo Scientific,Germany)と結合された制御応力レオメーターHaake Rheostress 6000を使用して流動実験を実施した。
【0072】
定常剪断流曲線を、25℃+/-0.1の一定温度において、0~300 1/s(線形増加)の範囲の剪断速度で求めた。見かけ粘度を剪断速度に応じて記録した。
【0073】
粒度分布
粒度分布を評価するために、Malvern Mastersizer 2000粒度計(Malvern Instruments,Ltd.,UK)を使用した動的光散乱によって、非加熱のエマルションと加熱したエマルションとを分析した。液体試料を分散させるために使用した、ガスを含まない超純水は、Honywell水圧減圧器(最大脱イオン水圧力:1バール)及びERMA水脱気器(脱イオン水中の溶存空気を低減するため)を使用して用意した。
【0074】
使用された測定設定として、0.01の吸収における屈折率は、脂肪液滴については1.46、水については1.33である。全ての試料は、2.0~2.5%の遮蔽率で測定された。測定結果は、Mie理論に基づいてMalvernソフトウェアで計算される。体積ベースの平均直径値D(4,3)が報告される。
【0075】
イオン(遊離カルシウム)定量
カルシウムイオン濃度は、Orion Ion Analyser EA940カルシウムイオン選択電極と、pH/mVメータ(Thermo Orion,USA)をmVモードで使用して測定した。イオン強度を標準化するために、80mM KClを含有する1、5、及び10mMのカルシウム標準溶液のmV読み取り値の標準曲線からの回帰方程式に基づいて、ミリボルト読み取り値からカルシウムイオン濃度を計算した。これらの標準物質は、Thermo Fisher Scientific(USA)から供給された0.1M塩化カルシウム標準溶液、及び4M塩化カリウム溶液(Ionic strength Adjustor Calcium,Thermo Orion,USA)から調製した。
【0076】
結果
表2は、乳-エンドウ豆タンパク質(75:25-表1のレシピ)に2.5mM乳酸カルシウムを添加して調製され、異なるpHに調整された試料の分析から得られた結果を示す。
【0077】
【0078】
表2は、pHを低下させることによって、系中のカルシウムは、pH6.06において2.8mMまで徐々に放出されていることを示す。乳酸カルシウムの存在下でエマルションを加熱した後に、粒径と粘度の両方が増加したことを観察することができる。粘度増加に対する効果は、pHが低い方が大きい。
【0079】
pHが5.84まで更に低下したとき、遊離カルシウムは3.6まで増加し、非常に大きな凝集体(239.541μm)の形成をもたらし、粘度効果(100 1/sで3mPa・s)を失う。しかしながら、系はゲル化しなかった。
【0080】
実施例2:
二倍濃縮された還元全脂肪乳に乳酸カルシウムを添加することによって得られた乳タンパク質とエンドウ豆タンパク質との凝集体(乳タンパク質の25%がエンドウ豆タンパク質によって置換されている)。
【0081】
脱脂粉乳(MSK)(低熱)は、Hochdorf(Switzerland)によって提供され、エンドウ豆タンパク質単離物Nutralys XFはRoquette(France)によって提供された。
【0082】
エンドウ豆タンパク質単離物のタンパク質濃度は脱脂粉乳よりも高いことから、マルトデキストリンDE 38-41(Roquette,France)を添加することによって総固形分(TS)を調整し、平均全脂肪乳として13%TSを達成するようにした。高オレイン酸ヒマワリ油(Oleificio Sabo,Switzerland)は、乳脂肪の代わりに使用されている。
【0083】
26%TSでは、系は、6.6%の総タンパク質(4.95%乳タンパク質、1.65%エンドウ豆タンパク質)と、7%油で配合されている。
【0084】
表1は、乳-エンドウ豆系の組成を示す。
【0085】
【0086】
カルシウム添加のために、乳酸カルシウム(Purac Biochem,the Netherlands)を乾燥混合し、本方法の間にマルトデキストリンと共に添加した。
【0087】
図10は、乳-エンドウ豆系を配合するために使用された方法を示す。
【0088】
エンドウ豆タンパク質を前処理し、実施例1に示すように、乳-エンドウ豆系を配合及び加工した。
【0089】
流動特性
非加熱のエマルションと加熱したエマルションとを用いて、実施例1と同様に流動実験を行った。
【0090】
粒度分布
粒度分布を、実施例1と同様に分析した。
【0091】
イオン(遊離カルシウム)判定
カルシウムイオン濃度を、実施例1に示すように測定した。
結果
【0092】
【0093】
表4は、2.5mMの乳酸カルシウム(calcium lactated)を添加したエマルションは、pH6.7で1.4mMの遊離カルシウム値を特徴とすることを示し、これは熱処理中に有意なタンパク質凝集を誘導しない。pHが低下すると、系内のカルシウムは、pH6.11で3.0mMまで徐々に放出されている。乳酸カルシウムの存在下、及び2.0mM以上の遊離カルシウム濃度でエマルションを加熱した後に、粒径及び粘度の両方が増加することを観察することができる。粘度増加に対する効果は、pHが低い方が大きく、したがって遊離カルシウム濃度が高い方が大きい。
【0094】
実施例3:
二倍濃縮された還元低脂肪乳に乳酸カルシウムを添加することによって得られた乳タンパク質とエンドウ豆タンパク質との凝集体(乳タンパク質の25%がエンドウ豆タンパク質によって置換されている)。
【0095】
脱脂粉乳(MSK)(低熱)は、Hochdorf(Switzerland)によって提供され、エンドウ豆タンパク質単離物Nutralys XFはRoquette(France)によって提供された。
【0096】
エンドウ豆タンパク質単離物のタンパク質濃度は脱脂粉乳よりも高いことから、マルトデキストリンDE 38-41(Roquette,France)を添加することによって総固形分(TS)を調整し、平均全脂肪乳として13%TSを達成するようにした。高オレイン酸ヒマワリ油(Oleificio Sabo,Switzerland)は、乳脂肪の代わりに使用されている。26%TSでは、系は、6.6%の総タンパク質(4.95%乳タンパク質、1.65%エンドウ豆タンパク質)と、1%の油で配合されている。
【0097】
表5は、乳-エンドウ豆系の組成を示す。
【0098】
【0099】
カルシウム添加のために、乳酸カルシウム(Purac Biochem,the Netherlands)を乾燥混合し、本方法の間にマルトデキストリンと共に添加した。
【0100】
図10は、乳-エンドウ豆系を配合するために使用された方法を示す。
【0101】
エンドウ豆タンパク質を前処理し、実施例1に示すように、乳-エンドウ豆系を配合及び加工した。
【0102】
流動特性
非加熱のエマルションと加熱したエマルションとを用いて、実施例1と同様に流動実験を行った。
【0103】
粒度分布
粒度分布を、実施例1と同様に分析した。
【0104】
イオン(遊離カルシウム)判定
カルシウムイオン濃度を、実施例1に示すように測定した。
結果
【0105】
【0106】
表6は、乳酸カルシウムを含むエマルションが、pH6.59で1.5mMの遊離カルシウムイオン値を有したことを示し、この値は全脂肪系で観察された値と同程度である。これらの条件下(pH6.59、遊離カルシウム濃度1.5mM)では、熱処理中に有意なタンパク質凝集は誘導されなかった。pHが低下すると、遊離カルシウムはpH6.20で最大2.4mMまで増加し、エマルションを加熱した後に粒径及び粘度の両方が増加した。粘度増加に対する効果は、pHが低い方が大きい。乳酸カルシウムを添加し、pHを低下させることにより、低脂肪系では、カルシウム非添加の全脂肪系の粘度(100 1/sで16mPa・s)と同様の粘度又はより高い粘度さえも達成することが可能であった。
【0107】
実施例4:
二倍濃縮された還元スキムミルクに乳酸カルシウムを添加することによって得られた乳タンパク質とエンドウ豆タンパク質との凝集体(乳タンパク質の25%がエンドウ豆タンパク質によって置換されている)。
【0108】
脱脂粉乳(MSK)(低熱)は、Hochdorf(Switzerland)によって提供され、エンドウ豆タンパク質単離物Nutralys XFはRoquette(France)によって提供された。エンドウ豆タンパク質単離物のタンパク質濃度は脱脂粉乳よりも高いことから、マルトデキストリンDE 38-41(Roquette,France)を添加することによって総固形分(TS)を調整し、平均全脂肪乳として13%TSを達成するようにした。高オレイン酸ヒマワリ油(Oleificio Sabo,Switzerland)は、乳脂肪の代わりに使用されている。26% TSでは、系は、6.6%の総タンパク質(4.95%の乳タンパク質、1.65%エンドウ豆タンパク質)で配合され、脂肪添加を全く行わない。
【0109】
表5は、乳-エンドウ豆系の組成を示す。
【0110】
【0111】
カルシウム添加のために、乳酸カルシウム(Purac Biochem,the Netherlands)を乾燥混合し、本方法の間にマルトデキストリンと共に添加した。
【0112】
図10は、乳-エンドウ豆系を配合するために使用された方法を示す。
【0113】
エンドウ豆タンパク質を前処理し、実施例1に示すように、乳-エンドウ豆系を配合及び加工した。
【0114】
流動特性
非加熱のエマルションと加熱したエマルションとを用いて、実施例1と同様に流動実験を行った。
【0115】
粒度分布
粒度分布を実施例1と同様に分析したが、使用した測定設定では、タンパク質の屈折率は1.52であった。
【0116】
イオン(遊離カルシウム)判定
カルシウムイオン濃度を、実施例1に示すように測定した。
結果
【0117】
【0118】
表8は、乳酸カルシウムを含むタンパク質分散体が、pH6.69で1.5の遊離カルシウムイオン値を有したことを示し、この値は全脂肪及び低脂肪系で観察された値と同程度である。これらの条件下(pH6.69、遊離カルシウム濃度1.5mM)では、熱処理中に有意なタンパク質凝集は誘導されなかった。pHが低下すると、タンパク質分散体では、遊離カルシウムがpH6.03で2.8mMまで増加し、タンパク質分散体を加熱した後には粒径及び粘度の両方が増加した。粘度増加に対する効果は、pHが低い方が大きい。乳酸カルシウムを添加し、pHを低下させることにより、脂肪を含まない系では、カルシウム非添加の全脂肪系の粘度(100 1/sで16mPa・s)と同様の粘度又はより高い粘度さえも達成することが可能であった。
【0119】
実施例5:
試験室規模での、乳タンパク質濃縮物(MPC)/大豆タンパク質単離物(SPI)への塩化カルシウム添加によるエマルション安定化
材料及び方法
MPC分散体の調製
カゼインミセル分散体の原液を、10重量%のタンパク質濃度で調製した。カゼインミセル富化乳タンパク質濃縮物Promilk852Bを、Ingredia(Arras,France)から購入した。粉末の組成は(g/100g湿潤粉末):タンパク質(N×6.38)82.3、Ca2.6、Mg0.1、Na0.07、K0.29、Cl0.05、P1.56であった。分散体を調製するのに必要な粉末の質量を、粉末中のタンパク質含有量に応じて計算した。
【0120】
MPC粉末を、室温で撹拌しながら、MilliQ水で3時間水和した。3時間後、タンパク質分散体を、EmulsiFlex C-5高圧一段式ホモジナイザー(Avestin(登録商標),Canada)で均質化した。この処理は、カゼインミセルの平均粒径を低下させた。これは分散体を安定化させ、MPCの沈殿を回避することができる。
【0121】
Nanosizer ZS装置(Malvern Instruments(登録商標),UK)を使用して均質化した後、カゼインミセルのz平均流体力学半径を求めた。半径は約200~250nmであった。対応する多分散指数は、0.2未満であり、試料が単分散の粒度分布を呈することを示した。
【0122】
SPI分散体の調製
大豆タンパク質の溶解度を改善するべく、大豆タンパク質を、タンパク質変性を最小限に抑えるために軽度の等電点沈殿処理を使用して、非GMO大豆粉(Soy Flour 7B IP(ADM,Decatur,Il,USA;バッチ413936))から抽出した。この目的のために、大豆粉を、室温で撹拌しながらMilliQ水に90分間分散させた。粉対水の比は、1:8(pH:6.7で800gの水に対して100gの粉)とした。分散後、1M NaOHを使用してpHを7.5に調整し、分散体を1リットルのボトルに入れ、室温において、9,000gで30分間遠心分離した。その後、上清を回収し、タンパク質を沈殿させるために、1M HClを用いてpHを4.8に調整した。次いで、分散体を、前と同じ条件で再度遠心分離した。遠心分離後、沈殿物を抽出し、粒径を小さくして水和容量を向上させるために、乳鉢で粉砕した。その後、沈殿物を、できるだけ少量の水(質量比1:4、沈殿/水)に少なくとも10分間撹拌して可溶化し、1M NaOHの添加によってpHを7.0に調整した。完全可溶化後、大豆タンパク質単離物分散体を凍結し、凍結乾燥して粉末を得た。粉末の組成は(g/100g湿潤粉末):タンパク質(Nx6.25)91.3、Ca0.057、Mg0.073、Na1.59、K0.37、Cl0.62、P0.63であった。タンパク質抽出に必要とされるpH調整工程により、ミネラルNa及びClの量がかなり高くなったことに気付くことができる。大豆タンパク質の異なる画分をSDS-PAGE電気泳動により同定したところ、大豆タンパク質の主要分画7S及び11Sの両方の存在が明らかとなった。
【0123】
SPIの原液分散体を、10重量%のタンパク質濃度で調製した。SPIを、撹拌しながら室温で4時間、MilliQ水に分散させた。次いで、分散体を4℃で一晩保存して完全に水和させ、撹拌中に形成される発泡体層を減少させた。
【0124】
MCI/SPI混合物の調製
以下に記載のように調製したMCIとSPIの分散体を、MPC:SPIの重量比75:25及び50:50で混合し、磁気攪拌器を用いて室温で少なくとも10分間撹拌した。
【0125】
エマルションの調製
高オレイン酸ヒマワリ油(Oleificio Sabo,Manno,Switzerland)をタンパク質分散体に添加することによってO/Wエマルションを調製し、全試料について、10重量%で調製された原液分散体を希釈することによって、2.5、5及び10重量%の油含有量及び3重量%の一定のタンパク質含有量を得た。続いて、油/水系を、Ultra-Turrax T25 basic(IKA(登録商標),Switzerland)を使用して、500mLの体積に対して11,000rpm/分で1分間、事前に均質化した。事前に均質化したエマルションを、第1のバルブについては50バール、第2のバルブについては250バールに調整したPandaPLUS HomoGenius 2000(GEA(登録商標),Germany)を用いて高圧で均質化し、合計300バールの圧力を得た。
【0126】
エマルションをこの方法によって2回均質化した。均質化後、1M NaOHを添加することによってpHを7.0に調整した。カルシウム含有試料について、必要量のCaCl22(H2O)をpH7.0の試料に添加し、エマルションを室温で1時間撹拌した。次いで、試料を、97℃に調整した温水浴中で、95℃で15分間加熱した。エマルションを氷水で20分間冷却した後、4℃で1時間保管した。
【0127】
冷却後、体積60mLのビーカー内で、Ultra-Turrax T25 basic(IKA(登録商標),Switzerland)を使用して、16,000rpmで2分間加熱処理した。その後分析が完了するまで、エマルションを4℃で保存した。
【0128】
粒度分布
粒度分布を評価するために、MasterSizer 3000(Malvern Instruments Ltd(登録商標),UK)を使用した動的光散乱によって、剪断後のエマルションを分析した。エマルションの試料を、9~10%の遮蔽率が得られるまでHydro SM測定セルに分散させた。非加熱の試料及び加熱した試料を分析した。測定を3回行い、3回の反復の平均を報告した。
【0129】
タンパク質凝集体の微細構造
試料の凍結切片法
CLSMにより試料を分析するために、凍結切削を行った。凍結切削のため、スクロース及びホルムアルデヒドを試料に添加して、試料を保存した。割合は、スクロースは総体積の30重量%、ホルムアルデヒドは3.7重量%である。ボルテックスを用いて試料を均質化し、分析を開始する前に4℃で一晩保管した。その後、試料を固定した。このステップは、凍結切片法用の最適切削温度(OCT)化合物、Tissue-Tek(登録商標)1g中に0.5gの試料を添加することで構成された。組成物を均質化し、凍結切片法用のOCT化合物、Tissue-Tek(登録商標)が予め入っている凍結試料ホルダに0.1gを添加した。
【0130】
凍結試料ホルダを、80mLの2-メチルブタン(99%、Sigma Aldrich(登録商標),USより)が入ったプラスチックバイアルに浸漬し、それ自体を液体窒素が入った絶縁ボックスに浸漬した。2-メチルブタンの溶液は、試料の良好な凍結を確実にし、乾燥から保護する。
【0131】
次いで、試料をCryostat CM 3050(Leica(登録商標),Switzerland)に入れた。その後-21℃で、ミクロトームでのカットを、7μmの厚さで行った。分析が実施されるまで、顕微鏡スライドを-20℃の冷凍庫で保存した。
【0132】
顕微鏡スライドガラスは、組織をガラススライドに接着させ、過酷な工程の間に組織が除去されることを避けるために、HistoGrip(50倍濃縮物、ThermoFisher Scientific(登録商標),US製)で前処理した。
【0133】
共焦点走査レーザー顕微鏡
乳タンパク質と大豆タンパク質とを区別するための特定のタンパク質免疫標識を用い、混合タンパク質エマルションを分析した。Auty(2013)によれば、免疫標識は、タンパク質に対してより一般的に使用され、対象とするタンパク質、すなわちMPC及びSPIを標的とする特異的な抗体を必要とする。免疫標識の結果は、一次抗体の標的エピトープに対する特異性に大きく依存する。特にタンパク質は我々の実験において過酷な熱処理を受けることから、熱変性は、標的タンパク質の免疫反応性に影響を与え得る。この処理は、抗体特異性に影響を及ぼし、標識の有効性を低下させ得る。
【0134】
シグナル対ノイズ比が増加することから、一次抗体に結合する蛍光標識された二次抗体を使用して、2ステップ免疫標識を行った。
【0135】
抗体を使用してタンパク質を検出する前に、抗体の非特異的結合を防ぐために残りの結合表面を遮断しなければならない。正常ヤギ血清、Invitrogen PCN 5000(ThermoFisher Scientific(登録商標),US)を遮断剤として使用した。25μLの正常ヤギ血清を、1mLの抗体希釈緩衝液{トリス50mM-NaCl 150mM-PEG0.1%-BSA2.5% pH8.6}に添加した。調製物を、Eppendorf(登録商標)遠心分離器5702(Vaudaux-Eppendorf AG(登録商標),Switzerland)を使用して、4,000gで10分間遠心分離した。遠心分離の間に、milliQ水を用いて顕微鏡スライドをすすぎ、Tissus Tek(登録商標)を除去した。正常ヤギ血清を顕微鏡スライドに20分間塗布し、3つの染色皿(そのうちの2つにはmilliQを満たし、最後の1つにはすすぎ緩衝液{トリス50mM-NaCl 1.50M-PEG1% pH8.6}を満たした)の中ですすいだ。大豆抗体は1:200希釈、カゼインκ抗体は1:50希釈とし一次抗体を調製した。より効率的な希釈率を選択するために、異なる希釈率を事前に実施していた。20μLのウサギ抗カゼインκ(Antibodyes.Online,US)を、抗体希釈液用溶液1mLに添加し、ボルテックスを用いて均質化した。同様の作業により、ニワトリ抗大豆タンパク質(Antibodyes.Online,US)を使用して、選択された希釈率に調整して、大豆タンパク質抗体を調製した。上記2種類の抗体を合わせて混合し、各1mLをEppendorf(登録商標)チューブに入れた。その後、Eppendorf(登録商標)チューブを、Eppendorf(登録商標)遠心分離器5702(Vaudaux-Eppendorf AG(登録商標),Switzerland)を使用して4,000gで10分間遠心分離した。次いで、一次抗体を、顕微鏡スライド上に乗せ、湿潤条件下で4℃で一晩置いた。インキュベーション後、顕微鏡スライドを、すすぎ緩衝液を満たした3つの染色皿の中ですすぎ、最後の1皿の中に試料を10分間放置した。この間に、二次抗体を、一次抗体と同じ操作に従って調製した。ヤギ抗ニワトリIgy(H&L)、Dylight 488(Agrisera(登録商標),Sweden)、及びヤギ抗ウサギIgY(H&L)、Dylight 405(Agrisers(登録商標),Sweden)を二次抗体として使用した。二次抗体を顕微鏡スライド上に1時間置き、MilliQ水を満たした3つの染色皿の中ですすいだ。
【0136】
油滴を可視化するために、顕微鏡スライドを、エタノールに溶解したナイルレッドで10分間染色し、MilliQ水中ですすいだ。次いで、スライドを、Vectashield Hard Set Mounting Medium(Vector Laboratories(登録商標),US)装着セットを用いて装着した。
【0137】
その後、顕微鏡スライドを、Zeiss(登録商標)LSM710共焦点走査顕微鏡(Zeiss(登録商標),Germany)を使用して分析した。10×/0.45 ∞/0.17/PL APO及び63×/1.4油/DIC 420782-9900/PL APOを全ての画像に使用した。
【0138】
飽和コントロールにより、タンパク質に対する一次抗体の特異性を確認することができ、二次抗体が第1の抗体に特異的であることを確実にする。そのために、タンパク質を2.5μL/mLの量で一次抗体の調製に添加した。一次抗体及び二次抗体が特異的である場合、CLSMにおいてシグナル及びバックグラウンドがないはずである。また、重ね合わせを避けるため、各スペクトル発光を確実に十分に離れさせるために、ナイルレッドスペクトル発光の制御も行った。
【0139】
流動特性
剪断の1日後、同心円筒形状CC27-SS/S(直径=27mm、ギャップ=1.14mm、Anton Paar(登録商標),Austriaによる)を有する応力制御されたレオメーターPhysica MCR501(Anton Paar(登録商標),Austria)を用いて流動実験を行った。
【0140】
25℃の一定温度で、定常状態の流量測定を行い、100 1/sの剪断応力を試料に5分間適用し、続いて4つの剪断速度(1つは0.1~500 1/s、もう一方は500~0.1 1/sで、これらを2回実施した)を適用し、各30秒で15回の測定を行った。見かけ粘度を剪断速度に応じて記録した。
【0141】
各測定について、エマルション試料のアリコート(19mL)をカップに注いだ。測定を3回行い、3回の反復の平均を報告した。
【0142】
可溶性タンパク質含有量
本発明からの製品中の可溶性タンパク質の含有量を評価するために、製造の1日後に、Eppendorf(登録商標)遠心分離機5418(Vaudaux-Eppendorf AG(登録商標),Switzerland)を用いてエマルションを、室温で20分間16,000gで遠心分離した。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-UPLC)により分析するために、上清を慎重に回収し、4℃で保存した。
【0143】
UPLCシステム(Waters Corp Milford Ma,USA)は、バイナリポンプ、温度制御オートサンプラー(サンプルマネージャ-UPSMPM6R)及びフォトダイオードアレイ検出器(UPPDA-E)で構成された。装置は、Empower(登録商標)3ソフトウェア、Proバージョンによって制御された。
【0144】
逆相分析カラムAcquity UPLC(登録商標)BEH300 C4 1.7μm 2.1×150mm(Waters Corp Milford Ma,USA)及びVANGUARDTM Pre-column BEH300 C4 1.7μm 2.1×5mm(Waters Corp Milford Ma,USA)で分離を行った。UPLCバイアルを8℃±2℃の一定温度に保ち、サンプルマネージャシステムによって注入した。500μLの注入器及び250μLのインジェクションループを使用した。
【0145】
カゼイン及び大豆タンパク質の標準を、10重量%の参照溶液から、milliQ水で希釈することによって、0.1、0.3、1、3、及び5重量%の濃度で調製した。1.5mLのEppendorf(登録商標)マイクロチューブに、200μLの試料及び800μLの緩衝液{グアニジン-HCl7.5M;クエン酸三ナトリウム6.25mM;DTT23mM}を添加した。試料の質量及び緩衝液の質量を正確に秤量した。次いで、ボルテックスを用いて組成物を均質化し、Eppendorf(登録商標)Thermomixer Compact(Vaudaux-Eppendorf AG(登録商標),Switzerland)中で、60℃で10分間、650rpmでインキュベートした。
【0146】
インキュベーション後、試料を均質化し、Eppendorf(登録商標)遠心分離機5418(Vaudaux-Eppendorf AG(登録商標),Switzerland)で、16,000gで10分間、室温で遠心分離した。次いで、上清を慎重に回収し、脂肪層に注意しながら、また、存在する場合はペレットを懸濁させないようにして、UPLCバイアルに入れた。注入量は30μL~150μLで可変であり、試料のタンパク質含有量(ケルダール法、Nx6.38により決定)に合わせて、十分なシグナルを有するようにした。変動性を考慮するために、標準物質にも調整された量を注入した。
【0147】
溶出中に2つの溶媒を混合して用い勾配溶出を行った。溶媒Aは水中0.1%TFAからなり、溶媒Bはアセトニトリル/水(90/10)(v:v)中0.1%TFAであった。分離は、15~35%Bで4分間(5%B.分-1)、35~47%Bで24分(0.5%B.分-1)及び47%B~80%Bで4分間(8.25%B.分-1)の直線勾配で実施した。これに続いて、80%Bでの定組成溶離を1分間行った。次いで、2分で直線的に開始条件に戻し、続いて5分間カラムを再平衡化した。
【0148】
流速は0.6mL/分-1とし、カラム温度は40±1℃で一定に保った。取得はλ=214nm(解像度2.4nm-20ポイント/秒-露光時間自動)で達成された。
【0149】
各クロマトグラムを手動で積分した。検量線については、注入されたタンパク質量に応じて総面積をプロットした。可溶性タンパク質含有量は、遠心分離後の上清中に存在するタンパク質量と、遠心分離せずにエマルション中に存在するタンパク質の総量との比から計算し、百分率で表した。
結果
粒度分布
【0150】
図1A、1B及び1Cは、75:25のMPC:SPI比で熱処理及び剪断を実施すると、pH7.0におけるエマルションの粒度分布は、試験した3種類のヒマワリ油含有量(2.5、5及び10重量%)について約400~600nmのピークを示すことを示す。対照的に、5mMの添加遊離カルシウムの存在下で熱処理が実施されたとき、より大きな粒子が形成される。したがって、粒度分布のピークの約10~25μmへの明確なシフトの存在により、初期油滴が凝集して、より大きいタンパク質ベースの粒子になったことを示す。
【0151】
図2A、2B及び2Cは、50:50のMPC:SPI比で熱処理及び剪断を実施すると、pH7.0におけるエマルションの粒度分布は、試験した3種類のヒマワリ油含有量(2.5、5及び10重量%)について約400~600nmのピークを示すことを示す。対照的に、10mMの添加遊離カルシウムの存在下で達成される熱処理の際に、より大きな粒子が形成される。したがって、粒度分布のピークの約10~25μmへの明確なシフトの存在により、初期油滴が凝集して、より大きいタンパク質ベースの粒子になったことを示す。
【0152】
微細構造及び可溶性タンパク質含有量
本発明のタンパク質ベースの凝集体の微細構造は、5重量%の高オレイン酸ヒマワリ油を含有するエマルションについて、
図3(75:25比)及び
図4(50:50)に明確に示されている。
図3Aは、75/25のMPC/SPI比で、十分に画定された油滴の周囲に小さい接続した凝集体が得られたことを示す。MPC及びSPIの両方の標識は、両方の特異的な標識が容易に区別できることから、タンパク質が凝集体の近くに位置していないことを示す。可溶性タンパク質の量は約97%であり、両方のタンパク質源のごくわずかな画分のみが凝集体形成に関与していたことを示した。対照的に、5mMカルシウムの存在下では、より大きい粒子と、より小さい粒子が得られた(
図3B)。油滴は、目に見えにくく、凝集構造に強く埋め込まれていた。MPC及びSPI標識は、粒子内部に位置し、それらが空間的に非常に近いことを示した。この試料中の可溶性タンパク質の量は4%未満であり、MPC及びSPIのほとんどが凝集構造に関与したことを示した。
図4は、10mM CaCl
2の存在下での重量比50/50のMPC/SPI混合物の顕微鏡写真を示す。添加遊離カルシウムがない場合(
図4A)、多数の分離した油滴が埋め込まれた小さな凝集体が見られた。CaCl2を添加した場合、2つのタンパク質源の同時標識で見ることができるように、油滴は、MPC及びSPIの両方が関与した、より大きなタンパク質凝集体に、はるかに多く埋め込まれた(
図4B)。pH7.0における可溶性タンパク質の量は、UPLCにより測定したときに約85.9%であった。これは、タンパク質のほとんどが凝集構造に関与しなかったことを示す。塩化カルシウムの存在下で、可溶性タンパク質の量は13.4%に達するまで劇的に低下したことから、タンパク質のほとんどが凝集体の一部となっており、したがってより大きな粒子の形成に関係することを示す。
【0153】
流動特性及び剪断粘度
異なる高オレイン酸ヒマワリ油含有量を有するMPC/SPI混合物の流動曲線を
図5及び
図6に示す。
図5は、75/25の混合比の場合、塩化カルシウムの添加が擬塑性流動挙動(shear thinning behaviour)を促進し、この効果が初期混合物中の油の含有量と共に増加したことを示す(
図5A、5B及び5C)。興味深いことに、系は、塩化カルシウム不在下、pH7.0において、常により低い擬塑性流動挙動を示し、脂肪含有量(fact content)の影響がはるかに少なく、形成されたタンパク質構造が系のバルク粘度に強く影響することはできないことを示した。これは、明らかに塩化カルシウム添加がタンパク質凝集を促進し、粒子が粘度に大きく影響を及ぼし、したがって脂肪の減少を可能にする、本発明の試料の場合とは大きく異なる。
【0154】
重量混合比50/50のMPC/SPI混合物に関連する流量データを
図6に示す。75/25の比では、10mM CaCl
2の存在下で、曲線は、高オレイン酸ヒマワリ油中の含有量が増加することによって増強された強力な擬塑性流動挙動を示したことがわかる(
図6A、6B及び6C)。これにより、本発明のタンパク質凝集体は、より多くの空間を占有することができ、バルク粘度に影響した。これは、カルシウム不在下でpH7.0における対照系では該当しない。pH7.0で生成されたエマルションは、剪断速度に応じて、粘度とは独立してニュートン流動挙動を示した。これは、粘度が主に油の体積分率によって決まること、及び油滴が相互作用しないことによって説明される。
【0155】
図7は、生理学的口内条件に関連する10 1/sの剪断速度で流動曲線から抽出された剪断粘度をまとめている。両方のMPC/SPI系について、油の添加は剪断粘度を増加させるが、興味深いことに、本発明の試料で得られた値は、両方のMPC/SPI比について、CaCl
2が添加されていないpH7.0におけるそれぞれの対照よりも高いことが明らかである。これは、本発明が、粘度及び口当たりを維持しながら、脂肪含有量を減少させる可能性があることを再び示す。
【0156】
実施例6:
パイロットスケールでの、乳タンパク質濃縮物/大豆タンパク質単離物への塩化カルシウム添加によるエマルション安定化
実施例6で試験した系をパイロットスケールで再現し、本発明の感度が工業条件に及ぼす影響を試験した。使用したMPCは、実施例5と同様であり、すなわち、Promilk852Bは、Ingredia(Arras,France)から購入した。大豆タンパク質単離物は、ADM(Decatur,IL,USA)から市販のProfam 974-IPであった。これは、脱脂大豆粉からタンパク質を等電点沈殿することによって得られる。乾燥粉末中のタンパク質含有量は95.4重量%であり、脂肪含有量は0.6重量%であった。
【0157】
試料の調製
MCP分散体及びSPI分散体を、タンパク質含有量3重量%で、逆浸透(RO)水で調製した。ステンレス鋼タンク内で、50℃のRO水173.4kgに6.6kgのMPC粉末を機械的撹拌下で30分間分散させることによって、180kgのMPCのバッチを調製した。SPIについては、2.1kgのSPI粉末を、20℃のRO水57.9kgに分散させた。30分後、高圧ホモジナイザーを使用して、MPC分散体を250/50バールで均質化した。MPC及びSPIのpHを、10%塩酸を使用して、20℃でpH7.0に調整した。pH7.0に調整したMPC分散体とSPI分散体とを、40kgバッチ中で混合して、75/25及び50/50のMPC/SPI混合比(重量)を達成し、20℃で30分間撹拌した。次に、高オレイン酸ヒマワリ油(Oleificio Sabo,Switzerland)をタンパク質分散体に添加し、高剪断下で5重量%のエマルションを生成した。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、プレエマルションを250/50バールで均質化し、試料を10℃まで冷却した。pHを再度確認した。本発明の試料では、必要量のCaCl2,2(H2O)を添加して、75MPC/25SPIの比については10mM、50MPC/50SPIの比については20mMに遊離カルシウム含有量を増加させた。次いで、180L/hで動作する直接蒸気注入ラインを用いて、95℃で3分間加熱処理した。試料をDSI処理のために60℃で予熱し、次いで、多管式熱交換器を使用して10℃まで冷却した。次いで、試料を500mLポリプロピレンボトルに充填し、分析のために4℃で保管した。
【0158】
粒度分布
試料の粒度分布を、実施例1に記載のように求めた。D(4,3)平均直径は、異なる試料について報告されている。
【0159】
流動特性
試料の流動曲線は、実施例1に記載のように求めた。10s-1における剪断粘度が、試料について報告されている。
【0160】
共焦点レーザー走査型顕微鏡
試料を、凍結切片ではなく、液体フォーマットで撮像したこと、及びMPCとSPIとを区別するために特異的な免疫標識を使用しなかったことを除いて、実施例5に記載のように試料を調製し、特性評価した。そのため、試料を、アーチファクトの圧縮及び乾燥を防止するためにガラススライドカバースリップで閉鎖した、深さ1mmのプラスチックチャンバ内に置いた。標識するために、ファストグリーン染料(1重量%水溶液、使用時に100倍希釈)をタンパク質に使用したが、油滴には、ナイルレッド(0.25重量%エタノール溶液、使用時に100倍希釈)を使用した。
【0161】
可溶性タンパク質
試料中に存在する可溶性タンパク質を、実施例5に記載のように、UPLCによって求めた。
結果
粒径、粘度、及び可溶性タンパク質
【0162】
本発明の試料の粒径は、両方のMPC/SPI混合比について、添加CaCl2を含有しない試料と比較して増加した(表9)。これは、初期油滴がタンパク質と一緒に凝集して、より大きい凝集体を形成することを示す。10 1/sにおける粘度は、対応する対照試料と同様又はそれよりも大きく、タンパク質凝集体が、試料中の油含有量が同程度の試料のバルク粘度に影響を与えていたことを示した。本発明の試料の流動曲線は擬塑性流動挙動を示したが、対照は、実施例5に記載のようにニュートン流体であったことに留意されたい。可溶性タンパク質含有量は、本発明の試料では非常に低く(3%未満)、対照の方が大きかった(50/50比については最大62.2%)。これは、先の実施例に記載されているように、本発明は、ほとんどのタンパク質と油滴との凝集を促進し、バルク粘度に影響を及ぼす、より大きな凝集体を形成することを示す。
【0163】
【0164】
凝集体の微細構造
試料の構造をCSLMによって調べた(
図8及び
図9)。対照試料は、両方のMPC/SPI混合比について、凝集の顕著な兆候なく、油滴の均質な分布を示した(
図8A及び
図9A)。これは、タンパク質のほとんどが可溶性のままである理由を、油滴の界面の安定化に限られた画分しか関与しなかったためとして説明する。本発明の試料は、いずれの比率でも、添加CaCl
2の存在下で、油滴が凝集して、油滴を埋め込んだ、より大きい凝集体を形成した(
図8B及び
図9B)。
【0165】
実施例7:
二倍濃縮された還元全脂肪乳に乳酸カルシウムを添加することによって得られた乳タンパク質と大豆ンパク質との凝集体(乳タンパク質の50%が大豆タンパク質によって置換されている)。
【0166】
脱脂粉乳(MSK)(低熱)は、Hochdorf(Switzerland)によって提供され、大豆タンパク質単離物Clarisoy 170はADM(Illinois)によって提供された。
【0167】
大豆タンパク質単離物のタンパク質濃度は脱脂粉乳よりも高いことから、マルトデキストリンDE 38-41(Roquette,France)を添加することによって総固形分(TS)を調整し、26%TSを達成するようにした。高オレイン酸ヒマワリ油(Oleificio Sabo,Switzerland)は、乳脂肪の代わりに使用されている。
【0168】
26%TSでは、系は、6.6%の総タンパク質(3%乳タンパク質、3%大豆タンパク質)と、7%の油で配合されている。
【0169】
表10は、乳-大豆系の組成を示す。
【0170】
【0171】
カルシウム添加のために、乳酸カルシウム(Merck,Germany)を乾燥混合し、本方法の間にマルトデキストリンと共に添加した。
【0172】
図10は、乳-エンドウ豆系を配合するために使用された方法を示す。
【0173】
大豆タンパク質は、可溶性を改善するために処理し、実施例1に示すように、乳-大豆系を配合及び加工した。
結果
【0174】
【0175】
表11は、乳酸カルシウムの添加なしのエマルションは、可溶性カルシウムの形態の遊離イオンカルシウムを1.8mM含有していたことを示し、これは、熱処理中に有意なタンパク質凝集を誘導するのに十分ではない。乳酸カルシウムを系に添加することにより、遊離イオン性カルシウムの増加がもたらされた。pHが低下すると、系内のカルシウムはpH6.39で最大2.9mMまで徐々に増加し、エマルションを加熱した後に粒径及び粘度の両方が増加した。粘度増加に対する効果は、pHが低い方が大きい。
【0176】
pHが6.25まで更に低下したとき、遊離カルシウムは3.1まで増加し、中程度のサイズの凝集体(49.733μm)の形成をもたらしたが、pH6.39と比較して粘度効果をいくらか失った。これは、この特定の系では、pH6.25で3.1の遊離カルシウムが既に高すぎることを示す。粘度増加を最大化するために、より少ない遊離カルシウム及び/又はより高いpHを使用する必要がある(例えば、pH6.39及び3.1mMの遊離カルシウム)。