IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東邦チタニウム株式会社の特許一覧

特許7132952オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒、およびプロピレン重合プロセス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒、およびプロピレン重合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20220831BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019566970
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2018021905
(87)【国際公開番号】W WO2019003853
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】15/634,410
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 元基
(72)【発明者】
【氏名】菅野 利彦
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 努
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0166693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0240002(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0240011(US,A1)
【文献】特開2014-162906(JP,A)
【文献】特開2014-162905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/654
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法であって:
マグネシウム化合物および4価のハロゲン化チタン化合物を互いに接触させて反応させ、続いて反応媒体を除去し、必要に応じて洗浄する第1の工程;
4価のハロゲン化チタン化合物を、第1の工程により得られる生成物と接触させて反応させ、続いて反応媒体を除去し、必要に応じて洗浄する第2の工程;
を含み、
以下の一般式(1)
(C4-k)(COOR)(COOR) (1)
で表される有機化合物
[式中、Rはハロゲン原子または1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、RおよびRは1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、ただしRおよびRは同一であるかまたは異なり、kは0~4の整数であり、ただしkが2~4の整数である場合に複数のRは同一であるかまたは異なる]
およびジアルキルベンジリデンマロネートからそれぞれ選択される化合物を、第1の工程および第2の工程のうち少なくとも第1の工程において互いに接触させることを含む、製造方法。
【請求項2】
一般式(1)で表される有機化合物およびジアルキルベンジリデンマロネートを、前記第2の工程により得られる生成物と接触させて反応させ、続いて反応媒体を除去し、必要に応じて洗浄する第3の工程をさらに含む、請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項3】
(I)請求項1に記載の方法により得られるオレフィン重合用固体触媒成分、
(II)以下の一般式(3)
AlQ3-p (3)
により表される有機アルミニウム化合物、および
(III)以下の一般式(4)により表される外部供与化合物または以下の一般式(5)により表される外部電子供与化合物
Si(OR104-q (4)
(R1112N)SiR13 4-s (5)
[式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;Qは水素原子またはハロゲン原子であり;pは0~3の整数であり;
は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、3~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基であり、ただし複数のRが存在する場合に複数のRは同一であるかまたは異なり;
10は、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、3~6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基であり、ただし複数のR10が存在する場合に複数のR10は同一であるかまたは異なり;qは0~3の整数であり;
11およびR12は、水素原子、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、またはアリール基であり、ただしR11およびR12は同一であるかまたは異なり、任意選択で互いに結合して環を形成し;
13は、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基、1~20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、アリール基、またはアリールオキシ基であり、ただし複数のR13が存在する場合に複数のR13は同一であるかまたは異なり;sは0~3の整数である]
を含むオレフィン重合触媒。
【請求項4】
請求項1に記載の方法により得られるオレフィン重合用固体触媒成分を、有機アルミニウム化合物および外部電子供与化合物と組み合わせて使用する、プロピレン重合プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高剛性を示す幅広い分子量分布を伴う高度にアイソタクチックなオレフィンポリマーを製造するための、オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン重合触媒およびプロピレン重合プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム、チタン、内部電子供与体、ハロゲンを必須成分として含む固体触媒成分が、オレフィン(例えばプロピレン)を重合する場合に使用されてきた。固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下で、オレフィンを重合するかまたはオレフィン類を共重合する多くの方法が提案されてきた。
【0003】
ポリプロピレン組成物は、固体触媒の種類および重合条件により主に制御される。ポリプロピレン剛性(すなわち、例えば曲げ弾性率)の観点から、ポリプロピレン強剛性はポリプロピレンのアイソタクチック性と強く相関し;一般に、高度にアイソタクチックなポリプロピレンは高い曲げ弾性率を示す。この種類のポリプロピレンは、例えば自動車に利用される。
【0004】
例えば、特許文献1および特許文献2は、高いアイソタクチック特異性を有する重合体を製造可能なオレフィン重合触媒を開示している。上記のこれらの触媒を用いて製造されるポリプロピレンは、高い曲げ弾性率を示すものの、ポリプロピレンの曲げ弾性率にはさらなる改善の余地がある。
【0005】
一方、一部の置換マロネート化合物は、高いアイソタクチック性を伴うポリプロピレンをもたらす優れた内部電子供与体であることが見出されている。例えば、特許文献3は、内部電子供与体としてアルキリデンマロネート化合物を含むオレフィン重合触媒を開示している。また、特許4は、内部電子供与体としてジアルキル置換マロネート化合物を含むオレフィン重合触媒を開示している。これらの触媒を用いて、低キシレン可溶性画分を含有するポリプロピレン(アタクチックなポリプロピレン)を得ることができる。しかしながら、これらの種類のポリプロピレンは、不十分なアイソタクチック性に起因して、自動車使用に適用することができない。
【0006】
さらに、特許文献5は、内部電子供与体としてスクシネート化合物を含有するオレフィン重合触媒を開示している。上記の触媒系を使用する場合、得られたポリプロピレンは、内部電子供与体としてフタレート化合物を利用する固体触媒を使用して製造されるポリプロピレンと比較して、幅広い分子量分布を有し、アイソタクチック性に劣る。したがって、高曲げ弾性率を示すポリプロピレンを得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US2015166693A1
【文献】US2015240011A1
【文献】US9206265B2
【文献】US7208435B2
【文献】US6818583B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高アイソタクチック性および幅広い分子量分布を伴うオレフィンポリマーを製造するのに好適な、オレフィン重合用固体触媒成分を調製する方法を提供することである。この種のポリオレフィンは、高アイソタクチック性および射出成形プロセスにおける高分子量画分の配向に起因して、高曲げ弾性率を示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記状況を考慮して広範な研究を行った。その結果、本発明者らは、マグネシウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、フタレートおよびアルキリデンマロネート化合物を互いに接触させることにより得られる触媒を使用してオレフィン(共)重合を実行することにより、上記目的を達成することができることを見出した。この発見により、本発明は完成に至った。
【0010】
詳細には、本発明の一態様は、マグネシウム化合物、4価のハロゲン化チタン化合物、以下の一般式(1)で表される有機化合物、
(C4-k)(COOR)(COOR) (1)
および以下の一般式(2)で表される有機化合物
C=C(COOR)(COOR) (2)
[式中、Rはハロゲン原子または1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、RおよびRは1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、ただしRおよびRは同一であるかまたは異なり、kは0~4の整数であり、ただしkが2~4の整数である場合に複数のRは同一であるかまたは異なり、
およびRは、独立して、水素原子、ハロゲン、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、3~20個の原子を有する直鎖または分岐のアルケニル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基から選択される原子または基であり、ただしRおよびRは任意選択で互いに結合して環を形成し、Rが水素原子またはメチル基である場合にRの炭素原子数は2以上であり;
およびRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、3~20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルケニル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、または6~20個の原子を有する芳香族炭化水素基である]
を接触させることを含む、オレフィン(共)重合用固体触媒の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、オレフィン重合触媒は、(I)本発明の一態様に基づく方法により得られるオレフィン重合用固体触媒成分、(II)以下の一般式(3)
AlQ3-p (3)
により表される有機アルミニウム化合物、ならびに
(III)以下の一般式(4)により表される外部供与化合物および以下の一般式(5)により表される外部供与化合物
Si(OR104-q (4)
(R1112N)SiR13 4-s (5)
[式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;Qは水素原子またはハロゲン原子であり;pは0~3の整数であり;
は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、3~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基であり、ただし複数のRが存在する場合に複数のRは同一であるかまたは異なり;
10は、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、3~6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基であり、ただし複数のR10が存在する場合に複数のR10は同一であるかまたは異なり;qは0~3の整数であり;
11およびR12は、水素原子、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、またはアリール基であり、ただしR11およびR12は同一であるかまたは異なり、任意選択で互いに結合して環を形成し;
13は、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、アリル基、またはアラルキル基、1~20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、アリール基、またはアリールオキシ基であり、ただし複数のR13が存在する場合に複数のR13は同一であるかまたは異なり;sは0~3の整数である]
を含む。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、オレフィンポリマーの製造方法は、該オレフィン重合触媒の存在下でオレフィンを重合することを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に基づくオレフィン重合用固体触媒成分を使用してプロピレンポリマーまたはプロピレン系ブロックコポリマーを製造する場合、これらのポリマーは高アイソタクチック性および幅広い分子量分布を有する。したがって、得られた(コ)ポリマーの曲げ弾性率は、公知の固体触媒成分を使用した場合と比較して改善されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に基づく、オレフィン(共)重合用固体触媒(以後、「固体触媒成分(I)」と表すこともある)の製造方法は、マグネシウム化合物、4価のハロゲン化チタン化合物、一般式(1)により表される電子供与化合物および一般式(2)により表される電子供与化合物を互いに接触させ、マグネシウム化合物、4価のハロゲン化チタン化合物、一般式(1)により表される電子供与化合物および一般式(2)により表される電子供与化合物を反応させて、固体成分を得ることを含む。
【0015】
マグネシウム化合物(a)(以後、「成分(a)」または「マグネシウム化合物(a)」と表すこともある)は、二ハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウム、脂肪酸マグネシウム塩などから選択される1つまたは複数の化合物であってもよい。これらの中で、二ハロゲン化マグネシウム、二ハロゲン化マグネシウムおよびジアルコキシマグネシウムの混合物、ならびにジアルコキシマグネシウムが好ましく、ジアルコキシマグネシウムが特に好ましい。
【0016】
ジアルコキシマグネシウムの例には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウムなどが含まれる。これらのジアルコキシマグネシウムは、マグネシウム金属とアルコールを、ハロゲン、ハロゲン含有金属化合物などの存在下で反応させることにより製造され得る。これらのジアルコキシマグネシウムは、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0017】
本発明の一実施形態と関連して使用される固体触媒成分を製造する場合、細粒または粉末状のジアルコキシマグネシウムを使用することが好ましい。ジアルコキシマグネシウムは、不定形または球形状を有してもよい。例えば、球形のジアルコキシマグネシウムを使用する場合、重合により得られるポリマー粉末は、より良好な粒子形状および狭い粒度分布を有する。これにより、重合中のポリマー粉末の処理能力が改善され、ポリマー粉末中に含まれる微粉末により引き起こされる詰まり等の問題が解消される。
【0018】
球形ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも完全な球形状を有する必要はなく、楕円形状またはジャガイモ様の形状を有してもよい。球形ジアルコキシマグネシウムの長軸径1の短軸径wに対する比(l/w)は、3以下であり、好ましくは1~2、より好ましくは1~1.5である。
【0019】
レーザー回折/散乱法粒度分布分析器を使用して測定したジアルコキシマグネシウムの平均粒度D50(すなわち、累積体積粒度分布中の50%における粒度)は、好ましくは1~200μm、より好ましくは5~150μmである。球形ジアルコキシマグネシウムの平均粒度は、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~50μm、さらにより好ましくは10~40μmである。球形ジアルコキシマグネシウムが狭い粒度分布を有し、かつ低微粉末含有量および低粗粉末含有量を有することが好ましい。より詳細には、球形ジアルコキシマグネシウムは、5μm以下の粒度(レーザー回折/散乱法粒度分布分析器を使用して測定)を有する粒子の含有量が、20%以下、より好ましくは10%以下であることが好ましい。球形ジアルコキシマグネシウムは、100μm以上の粒度を有する粒子の含有量が、10%以下、より好ましくは5%以下であることが好ましい。
【0020】
球形ジアルコキシマグネシウムの粒度分布であるln(D90/D10)(D90は累積体積粒度分布中の90%における粒度であり、D10は累積体積粒度分布中の10%における粒度である)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。球形ジアルコキシマグネシウムは、JP-A-58-41832、JP-A-62-51633、JP-A-3-74341、JP-A-4-368391、JP-A-8-73388などに開示されている方法を使用して製造され得る。
【0021】
チタン化合物(b)(以後、「成分(b)」または「ハロゲン化チタン化合物(b)」と表すこともある)の例には、以下の一般式(6)
Ti(OR144-t (6)
[式中、R14は、1~10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、ただし複数のOR14が存在する場合に複数のR14は同一であるかまたは異なり、Xはハロゲン基であり、ただし複数のXが存在する場合に複数のXは同一であるかまたは異なり、tは0~4の整数である]
により表される4価のチタン化合物が含まれる。
【0022】
一般式(6)により表される4価のチタン化合物は、アルコキシチタン、ハロゲン化チタンおよびハロゲン化アルコキシチタンから選択される1つの化合物、または2つ以上の化合物である。4価のチタン化合物の具体例には、四フッ化チタン、四塩化チタン、四臭化チタンおよび四ヨウ化チタンなどの四ハロゲン化チタン、三塩化メトキシチタン、三塩化エトキシチタン、三塩化プロポキシチタンおよび三塩化n-ブトキシチタンなどの三ハロゲン化アルコキシチタン、二塩化ジメトキシチタン、二塩化ジエトキシチタン、二塩化ジプロポキシチタンおよび二塩化ジ-n-ブトキシチタンなどの二ハロゲン化ジアルコキシチタン、塩化トリメトキシチタン、塩化トリエトキシチタン、塩化トリプロポキシチタンおよび塩化トリ-n-ブトキシチタンなどのハロゲン化トリアルコキシチタンが含まれる。これらの中では、ハロゲン含有チタン化合物が好ましく、四塩化チタン、四臭化チタンおよび四ヨウ化チタンなどの四ハロゲン化チタンがより好ましく、四塩化チタンが特に好ましい。これらのチタン化合物は、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。一般式(6)により表される4価のチタン化合物は、4価のチタン化合物が炭化水素化合物、ハロゲン化炭化水素化合物などで希釈された状態で使用されてもよい。
【0023】
一般式(1)により表される電子供与化合物(以後、「化合物(c)」または「電子供与化合物(c)」と表すこともある)には、フタル酸ジエステル、置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、およびハロアルコキシル置換フタル酸ジエステルが含まれる。
【0024】
一般式(1)においてRで表される1~8個の炭素原子を有するアルキル基の例には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルペンチル基、イソオクチル基、および2,2-ジメチルヘキシル基が含まれる。Rにより表されるハロゲン原子の例には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が含まれる。
は、好ましくはメチル基、臭素原子またはフッ素原子、より好ましくはメチル基または臭素原子である。
【0025】
およびRにより表される1~6個の炭素原子を有するアルキル基の例には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、およびイソヘキシル基が含まれる。これらの中では、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、およびイソブチル基が好ましい。
【0026】
置換基Rの数であるkは、0、1、または2であり、kが2である場合、Rは、同一であるかまたは異なる。この場合、Rは、式(1)中のベンゼン環の4および5位において水素原子を置換するのが好ましい。kが1である場合、Rは、一般式(1)中のベンゼン環の3、4、または5位において水素原子を置換するのが好ましい。
【0027】
フタル酸ジエステルの具体例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ-n-プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジ-n-ブチルフタレート、エチルメチルフタレート、メチル(イソプロピル)フタレート、エチル(n-プロピル)フタレート、エチル(n-ブチル)フタレート、エチル(イソブチル)フタレート、ジ-n-ペンチルフタレート、ジイソペンチルフタレート、ジネオペンチルフタレート、およびジ-n-ヘキシルフタレートが含まれる。これらの化合物は、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0028】
置換フタル酸ジエステルの具体例には、ジエチル4-メチルフタレート、ジ-n-ブチル4-メチルフタレート、ジイソブチル4-メチルフタレート、ジネオペンチル4-ブロモフタレート、ジエチル4-ブロモフタレート、ジ-n-ブチル4-ブロモフタレート、ジイソブチル4-ブロモフタレート、ジネオペンチル4-メチルフタレート、ジネオペンチル4、5-ジメチルフタレート、ジネオペンチル4-メチルフタレート、ジネオペンチル4-エチルフタレート、t-ブチルネオペンチル4-メチルフタレート、t-ブチルネオペンチル4-エチルフタレート、ジネオペンチル4、5-ジエチルフタレート、t-ブチルネオペンチル4、5-ジメチルフタレート、t-ブチルネオペンチル4、5-ジエチルフタレート、ジネオペンチル3-フルオロフタレート、ジネオペンチル3-クロロフタレート、およびジネオペンチル3-フルオロフタレート、ジネオペンチル4-ブロモフタレートが含まれる。
【0029】
上記エステルは、好ましくは組み合わせで使用され得る。この場合、エステルは、1つのエステルのアルキル基(複数可)の炭素原子の総数が、別のエステルのアルキル基の炭素原子の総数と4以上異なるように、好ましくは組み合わせられる。
【0030】
一般式(2)
C=C(COOR)(COOR) (2)
[式中、RおよびRは、独立して、水素原子、ハロゲン、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、3~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルケニル基、2~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐のハロゲン置換アルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、およびケイ素含有基から選択される原子または基であり、ただしRおよびRは同一であるかまたは異なり、任意選択で互いに結合して環を形成し、Rが水素原子またはメチル基である場合にRは2個以上の炭素原子を有し、RおよびRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、3~20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルケニル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、または6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、ただしRおよびRは同一であるかまたは異なる]
により表される電子供与化合物(以後、「化合物(d)」または「電子供与化合物(d)」と表すこともある)は、必須成分としてのアルキリデンマロネート化合物である。
【0031】
一般式(2)中のハロゲンの例には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。これらの中では、塩素、臭素およびヨウ素が好ましく、塩素および臭素が特に好ましい。1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基の例には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが含まれる。
【0032】
一般式(2)中の3~20個の炭素原子を有する分岐アルキル基の例には、二級炭素原子または三級炭素原子を含むアルキル基(例えば、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、およびネオペンチル基)が含まれる。一般式(2)中の3~20個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基の例には、n-プロペニル基、n-ブテニル基、n-ペンテニル基、n-ヘキセニル基、n-ヘプテニル基、n-オクテニル基、n-ノネニル基、n-デセニル基などが含まれる。3~20個の炭素原子を有する分岐アルケニル基の例には、二級炭素原子または三級炭素原子を含むアルケニル基(例えば、イソプロペニル基、イソブテニル基、t-ブテニル基、イソペンテニル基、およびネオペンテニル基、)が含まれる。
【0033】
2~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐のハロゲン置換アルキル基の例には、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化n-プロピル基、ハロゲン化イソプロピル基、ハロゲン化n-ブチル基、ハロゲン化イソブチル基、ハロゲン化n-ペンチル基、ハロゲン化n-ヘキシル基、ハロゲン化n-ヘプチル基、ハロゲン化n-オクチル基、ハロゲン化ノニル基、およびハロゲン化デシル基が含まれる。ハロゲンの例には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。
【0034】
一般式(2)中の3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが含まれる。3~20個の炭素原子を有するシクロアルケニル基の例には、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基などが含まれる。
【0035】
一般式(2)中の6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基の例には、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基、1-フェニルブチル基、4-フェニルブチル基、2-フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが含まれる。
【0036】
が水素原子またはメチル基である場合、Rの炭素原子数は2以上である。一般式(2)中のRおよびRは、任意選択で互いに結合して環を形成する。R、RならびにRおよびRに結合している炭素原子により形成される環の例には、シクロアルキル環、フルオレニル環、インデニル環、イミダゾール環、ピペリジニル環などが含まれる。
【0037】
一般式(2)中のRおよびRは、水素原子、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~6個の炭素原子を有する分岐アルキル基、ビニル基、3~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルケニル基、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、または6~10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であることが好ましい。Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、かつRは、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~6個の炭素原子を有する分岐アルキル基、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または6~10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であることが特に好ましい。RおよびRは、1~10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3~8個の炭素原子を有する分岐アルキル基であることが好ましい。RおよびRは、1~4個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3もしくは4個の炭素原子を有する分岐アルキル基であることが特に好ましい。
【0038】
一般式(1)により表される好ましいエステル化合物(d)の例には、ジメチルプロピリデンマロネート、ジエチルプロピリデンマロネート、ジ-n-プロピルプロピリデンマロネート、ジイソブチルプロピリデンマロネート、およびジ-n-ブチルプロピリデンマロネート;ジメチルブチリデンマロネート、ジエチルブチリデンマロネート、ジ-n-プロピルブチリデンマロネート、ジイソブチルブチリデンマロネート、およびジ-n-ブチルブチリデンマロネート;ジメチルペンチリデンマロネート、ジエチルペンチリデンマロネート、ジ-n-プロピルペンチリデンマロネート、ジイソブチルペンチリデンマロネート、およびジ-n-ブチルペンチリデンマロネート;ジメチルヘキシリデンマロネート、ジエチルヘキシリデンマロネート、ジ-n-プロピルヘキシリデンマロネート、ジイソブチルヘキシリデンマロネート、およびジ-n-ブチルヘキシリデンマロネート;ジメチル(2-メチルプロピリデン)マロネート、ジエチル(2-メチルプロピリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-メチルプロピリデン)マロネート、ジイソブチル(2-メチルプロピリデン)マロネート、ジ-n-ブチル(2-メチルプロピリデン)マロネート、およびジエチル(2,2-ジメチルプロピリデン)マロネート;
ジメチル(2-メチルブチリデン)マロネート、ジエチル(2-メチルブチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-メチルブチリデン)マロネート、ジイソブチル(2-メチルブチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-メチルブチリデン)マロネート;ジメチル(2-エチルブチリデン)マロネート、ジエチル(2-エチルブチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-エチルブチリデン)マロネート、ジイソブチル(2-エチルブチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-エチルブチリデン)マロネート;ジメチル(2-エチルペンチリデン)マロネート、ジエチル(2-エチルペンチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-エチルペンチリデン)マロネート、ジイソブチル(2-エチルペンチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-エチルペンチリデン)マロネート;ジメチル(2-イソプロピルブチリデン)マロネート、ジエチル(2-イソプロピルブチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-イソプロピルブチリデン)マロネート、ジイソブチル(2-イソプロピルブチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-イソプロピルブチリデン)マロネート;ジメチル(3-メチルブチリデン)マロネート、ジエチル(3-メチルブチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(3-メチルブチリデン)マロネート、ジイソブチル(3-メチルブチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(3-メチルブチリデン)マロネート;
ジメチル(2,3-ジメチルブチリデン)マロネート、ジエチル(2,3-ジメチルブチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2,3-ジメチルブチリデン)マロネート、ジイソブチル(2,3-ジメチルブチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2,3-ジメチルブチリデン)マロネート;ジメチル(2-n-プロピルブチリデン)マロネート、ジエチル(2-n-プロピルブチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-n-プロピルブチリデン)マロネート、ジイソブチル(2-n-プロピルブチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-n-プロピルブチリデン)マロネート;ジメチル(2-イソブチル-3-メチルブチリデン)マロネート、ジエチル(2-イソブチル-3-メチルブチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-イソブチル-3-メチルブチリデン)マロネート、ジイソブチル(2-イソブチル-3-メチルブチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-イソブチル-3-メチルブチリデン)マロネート;ジメチル(2-n-ブチルペンチリデン)マロネート、ジエチル(2-n-ブチルペンチリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-n-ブチルペンチリデン)マロネート、ジイソブチル(2-n-ブチルペンチリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-n-ブチルペンチリデン)マロネート;ジメチル(2-n-ペンチルヘキシリデン)マロネート、ジエチル(2-n-ペンチルヘキシリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-n-ペンチルヘキシリデン)マロネート、ジイソブチル(2-n-ペンチルヘキシリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-n-ペンチルヘキシリデン)マロネート;
ジメチル(シクロヘキシルメチレン)マロネート、ジエチル(シクロヘキシルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(シクロヘキシルメチレン)マロネート、ジイソブチル(シクロヘキシルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(シクロヘキシルメチレン)マロネート;ジメチル(シクロペンチルメチレン)マロネート、ジエチル(シクロペンチルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(シクロペンチルメチレン)マロネート、ジイソブチル(シクロペンチルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(シクロペンチルメチレン)マロネート;ジメチル(1-メチルプロピリデン)マロネート、ジエチル(1-メチルプロピリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-メチルプロピリデン)マロネート、ジイソブチル(1-メチルプロピリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-メチルプロピリデン)マロネート;ジメチル(ジ-t-ブチルメチレン)マロネート、ジエチル(ジ-t-ブチルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(ジ-t-ブチルメチレン)マロネート、ジイソブチル(ジ-t-ブチルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(ジ-t-ブチルメチレン)マロネート;
ジメチル(ジイソブチルメチレン)マロネート、ジエチル(ジイソブチルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(ジイソブチルメチレン)マロネート、ジイソブチル(ジイソブチルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(ジイソブチルメチレン)マロネート;ジメチル(ジイソプロピルメチレン)マロネート、ジエチル(ジイソプロピルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(ジイソプロピルメチレン)マロネート、ジイソブチル(ジイソプロピルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(ジイソプロピルメチレン)マロネート;ジメチル(ジシクロペンチルメチレン)マロネート、ジエチル(ジシクロペンチルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(ジシクロペンチルメチレン)マロネート、ジイソブチル(ジシクロペンチルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(ジシクロペンチルメチレン)マロネート;ジメチル(ジシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジエチル(ジシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(ジシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジイソブチル(ジシクロヘキシルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(ジシクロヘキシルメチレン)マロネート;
ジメチルベンジリデンマロネート、ジエチルベンジリデンマロネート、ジ-n-プロピルベンジリデンマロネート、ジイソブチルベンジリデンマロネート、およびジ-n-ブチルベンジリデンマロネート;ジメチル(1-メチルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-メチルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-メチルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-メチルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-メチルベンジリデン)マロネート;ジメチル(1-エチルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-エチルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-エチルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-エチルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-エチルベンジリデン)マロネート;ジメチル(1-n-プロピルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-n-プロピルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-n-プロピルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-n-プロピルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-n-プロピルベンジリデン)マロネート;ジメチル(1-イソプロピルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-イソプロピルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-イソプロピルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-イソプロピルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-イソプロピルベンジリデン)マロネート;
ジメチル(1-n-ブチルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-n-ブチルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-n-ブチルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-n-ブチルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-n-ブチルベンジリデン)マロネート;ジメチル(1-イソブチルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-イソブチルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-イソブチルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-イソブチルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-イソブチルベンジリデン)マロネート;ジメチル(1-t-ブチルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-t-ブチルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-t-ブチルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-t-ブチルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-t-ブチルベンジリデン)マロネート;ジメチル(1-n-ペンチルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-n-ペンチルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-n-ペンチルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-n-ペンチルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-n-ペンチルベンジリデン)マロネート;ジメチル(2-メチルフェニルメチレン)マロネート、ジエチル(2-メチルフェニルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-メチルフェニルメチレン)マロネート、ジイソブチル(2-メチルフェニルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-メチルフェニルメチレン)マロネート;
ジメチル(2,6-ジメチルフェニルメチレン)マロネート、ジエチル(2,6-ジメチルフェニルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(2,6-ジメチルフェニルメチレン)マロネート、ジイソブチル(2,6-ジメチルフェニルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2,6-ジメチルフェニルメチレン)マロネート;ジメチル(1-メチル-1-(2-メチルフェニル)メチレン)マロネート、ジエチル(1-メチル-1-(2-メチルフェニル)メチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-メチル-1-(2-メチルフェニル)メチレン)マロネート、ジイソブチル(1-メチル-1-(2-メチルフェニル)メチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-メチル-1-(2-メチルフェニル)メチレン)マロネート;ジメチル(2-メチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジエチル(2-メチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(2-メチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジイソブチル(2-メチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2-メチルシクロヘキシルメチレン)マロネート;ジメチル(2,6-ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジエチル(2,6-ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(2,6-ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、ジイソブチル(2,6-ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(2,6-ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロネート;ジメチル(1-メチル-1-(2-メチルシクロヘキシル)メチレン)マロネート、ジエチル(1-メチル-1-(2-メチルシクロヘキシル)メチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-メチル-1-(2-メチルシクロヘキシル)メチレン)マロネート、ジイソブチル(1-メチル-1-(2-メチルシクロヘキシル)メチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-メチル-1-(2-メチルシクロヘキシル)メチレン)マロネート;
ジメチル(ナフチルメチレン)マロネート、ジエチル(ナフチルメチレン)マロネート、ジ-n-プロピル(ナフチルメチレン)マロネート、ジイソブチル(ナフチルメチレン)マロネート、およびジ-n-ブチル(ナフチルメチレン)マロネート;ジメチル(1-n-ヘキシルベンジリデン)マロネート、ジエチル(1-n-ヘキシルベンジリデン)マロネート、ジ-n-プロピル(1-n-ヘキシルベンジリデン)マロネート、ジイソブチル(1-n-ヘキシルベンジリデン)マロネート、およびジ-n-ブチル(1-n-ヘキシルベンジリデン)マロネートが含まれる。これらの化合物は、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0039】
2種類の電子供与化合物(電子供与化合物(c)および電子供与化合物(d))が、マグネシウム化合物(a)およびハロゲン化チタン化合物(b)の反応中に、同時に、または段階的に供給される。マグネシウム化合物(a)およびハロゲン化チタン化合物(b)の間の反応工程が複数である場合、電子供与化合物(c)および電子供与化合物(d)は、同じ反応工程またはそれぞれ異なる工程において供給される。それらが異なる工程において供給される場合、電子供与化合物(c)および電子供与化合物(d)の順序は限定されない。電子供与化合物(c)が第1の工程において供給され、かつ化合物(d)が第1の工程において同時に、または後の工程において供給されることが好ましい。電子供与化合物(c)および電子供与化合物(d)の両方が、少なくとも第1の工程において同時にまたは段階的に供給されることがより好ましい。
電子供与化合物(c)および電子供与化合物(d)は、1回だけでなく、数回使用することもでき、数工程において使用することもできる。
【0040】
固体触媒成分(I)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン(ハロゲン原子)、成分(c)、および成分(d)の含有量は、特に制限されない。固体触媒成分(I)中のチタンの含有量は、0.1~10重量%、好ましくは0.5~8.0重量%、より好ましくは1.0~5.0重量%である。固体触媒成分(I)中のマグネシウムの含有量は、10~40重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは13~25重量%である。固体触媒成分(I)中のハロゲン(ハロゲン原子)の含有量は、20~89重量%、好ましくは30~85重量%、より好ましくは40~75重量%である。固体触媒成分(I)中の電子供与成分(c)の含有量は、0.5~40重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~25重量%である。固体触媒成分(I)中の電子供与成分(d)の含有量は、0.5~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは2~10重量%である。
【0041】
Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物およびSi-N-C連結を含む有機ケイ素化合物の例および具体例には、一般式(4)により表される有機ケイ素化合物および一般式(5)により表される有機ケイ素化合物と関連して後述する化合物が含まれる。有機アルミニウム化合物の例には、一般式(3)により表される有機アルミニウム化合物と関連して後述する化合物が含まれる。これらの試薬は、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0042】
用語「不飽和アルキル基」は、ビニル基またはアルケニル基を指す。有機ケイ素化合物の例には、ビニル基含有アルキルシラン、ビニル基含有アルコキシシラン、ビニル基含有シクロアルキルシラン、ビニル基含有フェニルシラン、ビニル基含有ハロゲン化シラン、ビニル基含有ハロゲン化アルキルシラン、アルケニル基含有ビニルシラン、アルケニル基含有アルキルシラン、アルケニル基含有アルコキシシラン、アルケニル基含有シクロアルキルシラン、アルケニル基含有フェニルシラン、アルケニル基含有ハロゲン化シラン、およびアルケニル基含有ハロゲン化アルキルシランが含まれる。ビニル基はCH=CH-により表され、アルケニル基はCH=CH-(CH-により表される。これらの中では、ビニルトリアルキルシラン、アリルトリアルキルシラン、ジビニルジアルキルシラン、ジアリルジアルキルシラン、トリビニルアルキルシラン、およびトリアリルアルキルシランが好ましく、アリルジメチルビニルシラン、ジアリルジメチルシラン、トリアリルメチルシラン、ジ-3-ブテニルジメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、およびアリルトリエチルシランが特に好ましい。不飽和アルキル基を含むこれらの有機ケイ素化合物は、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0043】
共重合用の固体触媒成分(I)の製造方法
固体触媒成分(I)は、マグネシウム化合物(a)、4価のハロゲン化チタン化合物(b)、チタン化合物以外の任意選択のハロゲン化合物、一般式(1)により表される化合物(c)、および一般式(2)により表される化合物(d)を互いに接触させることにより製造される。
本発明の一実施形態は:
マグネシウム化合物および4価のハロゲン化チタン化合物を互いに接触させて反応させ、続いて反応媒体を除去し、任意選択で洗浄する第1の工程;
4価のハロゲン化チタン化合物を、第1の工程により得られる生成物と接触させて反応させ、続いて反応媒体を除去し、任意選択で洗浄する第2の工程;
を含み、
一般式(1)により表される有機化合物および一般式(2)により表される有機化合物からそれぞれ選択される化合物を、第1の工程および第2の工程の少なくともいずれかにおいてさらに添加する方法であり得る。
本発明の別の実施形態は:
一般式(1)により表される有機化合物および一般式(2)により表される有機化合物を、上述の第2の工程により得られる生成物と接触させて反応させ、続いて反応媒体を除去し、任意選択で洗浄する第3の工程をさらに含む方法であり得る。
【0044】
マグネシウム化合物を溶解しない飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒を、成分(a)を溶解することができない媒体として使用する。
飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒は、安全でありかつ産業上の汎用性が高い。飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒の例には、ヘキサン、ヘプタン、デカンおよびメチルヘプタンなどの50~200℃の沸点を有する直鎖または分岐の脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンなどの50~200℃の沸点を有する脂環式炭化水素化合物、ならびにトルエン、キシレンおよびエチルベンゼンなどの50~200℃の沸点を有する芳香族炭化水素化合物が含まれる。これらの中では、50~200℃の沸点を有する直鎖脂肪族炭化水素化合物(例えば、ヘキサン、ヘプタンおよびデカン)、ならびに50~200℃の沸点を有する芳香族炭化水素化合物(例えば、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼン)が好ましい。これらの溶媒は、個々にまたは組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0045】
固体触媒成分(I)を製造するのに使用される成分(a)は、固体触媒成分(I)に含まれる成分(a)と同じであり、その説明は省略する。
固体触媒成分(I)を製造するのに使用されるチタン成分(b)は、固体触媒成分(I)に含まれるチタン成分(b)と同じであり、その説明は省略する。
固体触媒成分(I)を製造するのに任意選択で使用される、チタン成分(b)以外のハロゲン化化合物は、固体触媒成分(I)に任意選択で含まれるハロゲン化化合物と同じであり、その説明は省略する。
固体触媒成分(I)を製造するのに使用される電子供与成分(c)および電子供与成分(d)は、固体触媒成分(I)に含まれる電子供与成分(c)および電子供与成分(d)と同じであり、その説明は省略する。
固体触媒成分(I)を製造するのに任意選択で使用される電子供与成分は、後で論じる外部電子供与化合物(f)と同じであり、その説明は省略する。
【0046】
(1)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒中で懸濁させ、四塩化チタンと接触させる。この混合物を加熱し、成分(a)および成分(b)(任意選択)と接触させ(同時または逐次的のいずれかで)、固体生成物を得る。該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄し、炭化水素溶媒の存在下で四塩化チタンと接触させて、固体触媒成分(I)を製造する。この場合、固体成分を、炭化水素溶媒の存在下または非存在下で加熱してもよい。成分(b)を用いた処理を任意選択で加えてもよい。
【0047】
(2)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒中で懸濁させ、ハロゲン化チタン、成分(a)、および成分(b)(任意選択)と接触(反応)させて、固体生成物を得る。該固体生成物を不活性有機溶媒で洗浄し、炭化水素溶媒の存在下でハロゲン化チタンと接触(反応)させて、固体触媒成分(I)を製造する。この場合、固体成分およびハロゲン化チタンを2回以上互いに接触させてもよい。
【0048】
(3)ジアルコキシマグネシウム、および成分(a)を炭化水素溶媒中で懸濁させ、ハロゲン化チタンと接触(反応)させて、固体生成物を得る。該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄し、炭化水素溶媒の存在下でハロゲン化チタンと接触させて、固体触媒成分(I)を製造する。
【0049】
オレフィン重合活性および得られたポリマーの立体規則性をさらに改善するために、方法(1)~(3)を実行する場合、ハロゲン化チタンおよび炭化水素溶媒を固体触媒成分(I)(洗浄済み)と20~100℃で接触させてもよく、この混合物を加熱して反応を引き起こし(二次反応)、室温で液体である不活性有機溶媒で洗浄してもよい。上記操作を1~10回繰り返してもよい。
【0050】
成分(I)は、方法(1)~(3)のいずれかを使用して好適に製造し得る。ジアルコキシマグネシウムおよび成分(a)(または成分(b))を、直鎖炭化水素、分岐脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素および芳香族炭化水素から選択される炭化水素溶媒中で懸濁させ、この懸濁液をハロゲン化チタンに添加し、反応を引き起こして固体生成物を得て、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄し、成分(b)(または成分(a))を炭化水素溶媒の存在下で該固体生成物と接触させることにより、固体触媒成分(I)を製造することが好ましい。
【0051】
固体触媒成分の重合活性を改善し、かつ水素応答を改善する観点から、上記方法により得られる固体触媒成分(I)を、Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物、Si-N-C連結を含む有機ケイ素化合物、有機アルミニウム化合物(任意選択)と接触させることもまた好ましい。固体触媒成分(I)を、炭化水素溶媒の存在下でこれらの化合物と接触させる。固体触媒成分(I)を各成分と接触させた後、この混合物を炭化水素溶媒で十分に洗浄して、不必要な成分を除去する。固体触媒成分(I)を各化合物と繰り返し接触させてもよい。
【0052】
成分を、-10~100℃、好ましくは0~90℃、特に好ましくは20~80℃において互いに接触させる。接触時間は、1分~10時間、好ましくは10分~5時間、特に好ましくは30分~2時間である。成分は、本発明の有利な効果が悪影響を受けない限り、任意の比率で使用されてもよい。Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物、またはSi-N-C連結を含む有機ケイ素化合物は、通常は、固体触媒成分(I)に含まれるチタン原子の1mol当たり、0.2~20mol、好ましくは0.5~10mol、特に好ましくは1~5molの量で使用される。有機アルミニウム化合物は、通常は、固体触媒成分(I)に含まれるチタン原子の1mol当たり、0.5~50mol、好ましくは1~20mol、特に好ましくは1.5~10molの量で使用される。
【0053】
溶媒の固体成分に対する重量比が1/3以下、好ましくは1/6~1/20となるように、得られた固体触媒成分(I)から溶媒を除去して、粉末状固体成分を得ることが好ましい。
【0054】
固体触媒成分(I)を製造する場合に使用される成分の比は、製造方法を考慮して決定される。例えば、4価のハロゲン化チタン化合物(b)は、マグネシウム化合物(a)の1molに基づいて、0.5~100mol、好ましくは0.5~50mol、より好ましくは1~10molの量で使用される。溶媒は、マグネシウム化合物(a)の1molに基づいて、0.001~500mol、好ましくは0.001~100mol、より好ましくは0.005~10molの量で使用される。
【0055】
プロピレン系共重合触媒
本発明の一実施形態と関連して使用されるプロピレン系ブロックコポリマー共重合触媒(以後、「共重合触媒」と表すこともある)は、(I)固体触媒成分(上記を参照されたい)、(II)有機アルミニウム化合物(以後、「成分(e)」または「有機アルミニウム化合物(e)」と表すこともある)、および(III)外部電子供与化合物(以後、「成分(f)」または「外部電子供与化合物(f)」と表すこともある)を含む。固体触媒成分(I)が、Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物、Si-N-C連結を含む有機ケイ素化合物、または有機アルミニウム化合物(試薬)を含む場合、成分(f)は使用され得ないことに留意されたい。詳細には、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物を含む触媒は、成分(f)を使用しない場合でさえも、優れた重合活性を示し、優れた水素応答を確実にする。
【0056】
有機アルミニウム化合物(II)としては、一般式(3)
AlQ3-p (3)
[式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;Qは水素原子またはハロゲン原子であり;pは0~3の整数である]
により表される化合物である限り、有機アルミニウム化合物(II)は特に制限されることはない。
は好ましくはエチル基またはイソブチル基であり、Qは好ましくは水素原子、塩素原子または臭素原子であり、pは好ましくは2、2.5、または3、特に好ましくは3であることに留意されたい。
【0057】
有機アルミニウム化合物の具体例には、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウムおよび臭化ジエチルアルミニウムなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウムなどが含まれる。これらの中では、塩化ジエチルアルミニウムなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、ならびにトリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。これらの有機アルミニウム化合物は、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0058】
本発明の一実施形態と関連して使用される、共重合触媒を製造するのに使用される外部電子供与化合物(III)の例には、酸素原子または窒素原子を含む有機化合物が含まれる。酸素原子または窒素原子を含む有機化合物の例には、アルコール、フェノール、エーテル、エステル、ケトン、酸ハロゲン化物、アルデヒド、アミン、アミド、ニトリル、イソシアネート、および有機ケイ素化合物が含まれる。外部電子供与化合物(III)は、Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物、Si-N-C連結を含むアミノシラン化合物などであってもよい。
【0059】
これらの中では、エチルベンゾエート、エチルp-メトキシベンゾエート、エチルp-エトキシベンゾエート、メチルp-トルエート、エチルp-トルエート、メチルアニセート、およびエチルアニセートなどのエステル、1,3-ジエーテル、Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物、およびSi-N-C連結を含むアミノシラン化合物が好ましく、Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物、Si-N-C連結を含むアミノシラン化合物、および2-置換1,3-ジエーテルが特に好ましい。
【0060】
外部電子供与化合物(III)として使用され得る、Si-O-C連結を含む有機ケイ素化合物の例としては、以下の一般式(4)
Si(OR104-q (4)
[式中、Rは、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、ビニル基、3~12個の炭素原子を有するアルケニル基、3~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、3~12個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、6~15個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または置換芳香族炭化水素基であり、ただし複数のRが存在する場合に複数のRは同一であるかまたは異なり、R10は、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、ビニル基、3~12個の炭素原子を有するアルケニル基、3~6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または7~12個の炭素原子を有する置換芳香族炭化水素基であり、ただし複数のR10が存在する場合に複数のR10は同一であるかまたは異なり、qは、0~3の整数である]
により表される有機ケイ素化合物が含まれる。
【0061】
外部電子供与化合物(III)として使用され得る、Si-N-C連結を含むアミノシラン化合物の例としては、以下の一般式(5)
(R1112N)SiR13 4-s (5)
[式中、R11およびR12は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、ビニル基、3~20個の炭素原子を有するアルケニル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、または6~20個の炭素原子を有するアリール基であり、ただしR11およびR12は同一であるかまたは異なり、任意選択で互いに結合して環を形成し、R13は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、ビニル基、3~12個の炭素原子を有するアルケニル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ビニルオキシ基、3~20個の炭素原子を有するアルケニルオキシ基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキルオキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または6~20個の炭素原子を有するアリールオキシ基であり、ただし複数のR13が存在する場合に複数のR13は同一であるかまたは異なり、sは、1~3の整数である]
により表されるアミノシラン化合物が含まれる。
【0062】
一般式(4)または(5)により表される有機ケイ素化合物の例としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シランなどが含まれる。一般式(4)または(5)により表される有機ケイ素化合物の具体例には、n-プロピルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2-エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、ビス(エチルアミノ)-t-ブチルメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシランなどが含まれる。外部電子供与化合物(III)は、n-プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリルネトキシシラン、t-ブチルメチルジメトボキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジルネトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t-ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシランなどから選択される1つまたは複数の化合物であってもよい。
【0063】
プロピレンおよびα-オレフィンの共重合方法
本発明の一実施形態では、プロピレンおよびアルファ-オレフィンを共重合触媒の存在下で共重合して、プロピレン系ブロックコポリマーを製造する。アルファ-オレフィンは、2~20個の炭素原子を有するα-オレフィン(3個の炭素原子を有するプロピレンを除外)から選択される少なくとも1つのオレフィンであってもよい。アルファ-オレフィンの例には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサンなどが含まれる。これらのα-オレフィンは、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。これらの中では、エチレンおよび1-ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0064】
本発明の一実施形態と関連して使用される共重合方法の例には、シクロヘキサンまたはヘプタンなどの不活性炭化水素溶媒を利用するスラリー重合法、液化プロピレンなどの溶媒を利用する塊状重合法、および実質的に溶媒を利用しない気相重合法が含まれる。複数の工程においてこのような重合方法を繰り返し実行することにより、ブロックコポリマーを得ることができる。塊状重合法および気相重合法の組み合わせ、または多段階の気相重合法が、共重合方法として好ましい。
【0065】
第1の工程において、プロピレンを単独重合するか、またはプロピレンおよび少量のα-オレフィン(特にエチレン)を共重合し、第2の工程において、プロピレンおよびアルファ-オレフィン(特にエチレン)を共重合するか、またはプロピレン、エチレンおよび1-ブテンを共重合することが好ましい。第1の工程および第2の工程を、それぞれ複数回実施してもよいことに留意されたい。
【0066】
20~90重量%のプロピレン系ブロックコポリマーが得られるように、重合温度および重合時間を調節しながら、第1の工程において重合を起こすことが好ましい。プロピレンおよびエチレンまたは別のα-オレフィンを第2の工程において導入し、エチレン-プロピレンゴム(EPR)またはエチレン-プロピレン-1-ブテンの三元コポリマーなどのゴム部分の比が10~80重量%となるように、成分を重合することが好ましい。
【0067】
第1の工程および第2の工程における重合温度は、200℃以下、好ましくは100℃以下である。第1の工程および第2の工程における重合圧力は、10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。各工程における重合時間(連続重合を実行する場合は滞留時間)は、通常、1分~5時間である。本発明の一実施形態と関連して使用される共重合方法は、連続重合法またはバッチ重合法を使用して実行されてもよい。第1の工程の重合反応および第2の工程の重合反応のそれぞれは、単一工程または複数工程で実行されてもよい。第1の工程の重合反応または第2の工程の重合反応が複数工程で実行される場合、各工程は、同一の条件下または異なる条件下で実行されてもよい。第2の工程の重合反応は、ポリプロピレン(PP)粒子からEPRの溶出を抑制することができるため、気相重合反応であることが好ましい。
【0068】
触媒成分は、本発明の有利な効果が損なわれない限り、任意の比率で共重合に使用されてもよい。有機アルミニウム化合物(e)は、通常、固体触媒成分(I)に含まれるチタン原子の1mol当たり、1~2000mol、好ましくは50~1000molの量で使用される。外部電子供与化合物(f)は、通常、成分(e)の1mol当たり、0.002~10mol、好ましくは0.01~2mol、特に好ましくは0.01~0.5molの量で使用される。上記成分を、任意の順序で互いに接触させてもよい。有機アルミニウム化合物(e)を重合系に添加し、成分(I)を有機アルミニウム化合物(e)と接触させることが望ましい。
【0069】
固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与化合物を含む触媒を使用してオレフィンを共重合する(以後、「主重合」と表すこともある)場合、得られたポリマーの触媒活性、立体規則性、粒子特性などをさらに改善するために、主重合の前に予備重合を起こすことが望ましい。主重合に付されるオレフィン、またはスチレンなどのモノマーを、予備重合に使用してもよい。
【0070】
予備重合を起こす場合、成分およびモノマーを任意の順序で互いに接触させてもよい。成分(e)を不活性気体雰囲気またはオレフィン気体雰囲気を含有する予備重合系に添加し、固体触媒成分(I)を成分(e)と接触させ、次にオレフィン(例えばプロピレン)、またはプロピレンおよび1つもしくは複数の付加的オレフィン類の混合物を、上記混合物と接触させることが好ましいことに留意されたい。
【0071】
成分(f)を使用して予備重合を起こす場合、成分(e)を不活性気体雰囲気またはオレフィン気体雰囲気を含有する予備重合系に添加し、成分(f)を成分(e)と接触させ、固体触媒成分(I)をこの混合物と接触させ、次にオレフィン(例えばプロピレン)、またはプロピレンおよび1つもしくは複数の付加的オレフィン類の混合物を、上記混合物と接触させることが望ましい。
【0072】
上記触媒を利用する本発明の一実施形態に基づく製造方法を利用することにより、同一の条件下で得られたブロックコポリマーに大量のゴムを組込むことができ、得られたブロックコポリマーを広範囲の製品に適用することができる。ゴム部分の重合の高持続可能性を達成し、多段階重合を通してゴム部分の特性を制御することもまた可能である。
【0073】
プロピレンおよびα-オレフィンのコポリマー
ブロックコポリマーは、通常、2つ以上のモノマーの組成が継続的に変化するセグメントを含むポリマーである。詳細には、ブロックコポリマーは、通常、ポリマーの一次構造(例えば、モノマーの種類、コモノマーの種類、コモノマー組成、コモノマー含有量、コモノマー配列、および立体規則性)が異なる2つ以上のポリマー鎖(セグメント)が、1つの分子鎖内で連結しているポリマーである。本発明の一実施形態に基づく方法を使用して得られるプロピレン系ブロックコポリマーは、モノマー組成が異なるポリマーが多段階重合により製造されたことを特徴とする。詳細には、プロピレン系ブロックコポリマーの主要部分は、モノマー組成が異なる2つ以上のポリマーが、混合状態で各ポリマー粒子中に存在する構造を有する(一部のポリマーはポリマー鎖を通して連結している)。
【0074】
本発明の一実施形態に基づく方法を使用して得られるプロピレン系ブロックコポリマーは、結晶性ポリプロピレン、または結晶性ポリプロピレンおよび少量のα-オレフィン(例えばエチレン)を含む結晶性ポリプロピレン系ランダムコポリマー(結晶性PPまたは単独重合部分)の存在に起因して、中程度の強剛性を示し、かつ第2の工程の重合により得られるランダムコポリマー(例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPRまたはゴム部分))の存在に起因して、優れた耐衝撃性を示す。強剛性と耐衝撃性の間の平衡は、結晶性PPおよびゴム部分の比に応じて変化する。第2の工程の重合により得られるゴム部分の重合活性(ブロック比)が高いため、本発明の一実施形態に基づく方法により得られるプロピレン系ブロックコポリマーには、ゴム部分が高比率で含まれる。大量のα-オレフィン(例えばエチレン)がランダムコポリマーに導入されるため、該コポリマーは、ゴム部分の量および結晶性部分のエチレン含有量に対して、相対的に高い強剛性を示す。該コポリマーは、同一のゴム部分を含むポリマーに対して、高い衝撃強度を示す。
【実施例
【0075】
本発明を、実施例を挙げて以下でさらに説明する。以下の実施例は、単に例示目的のものであって、本発明は以下の実施例に限定されないことに留意されたい。実施例および比較例では、ジアルコキシマグネシウム粒子の真球度、ならびに固体触媒成分中のマグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子および内部電子供与化合物の含有量を、以下に記載のように測定した。
【0076】
固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量
減圧下における加熱(乾燥)により溶媒成分を完全に除去した固体触媒成分を秤量し、塩酸溶液に溶解した。メチルオレンジ(指示薬)および飽和塩化アンモニウム溶液の添加後、この混合物をアンモニア水で中和し、加熱し、冷却し、濾過して沈殿物(水酸化チタン)を除去した。所定量の濾液を分取し、加熱した。緩衝剤およびEBT混合指示薬の添加後、マグネシウム原子を、EDTA溶液を使用して滴定して、固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量を決定した(EDTA滴定法)。
【0077】
固体触媒成分中のチタン原子の含有量
固体触媒成分中のチタン原子の含有量を、JIS M 8311-1997(「Method for determination of titanium in titanium ores」)に規定された方法(酸化還元滴定)に準拠して決定した。
【0078】
固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量
減圧下における加熱(乾燥)により溶媒成分を完全に除去した固体触媒成分を秤量し、硫酸および精製水の混合物で処理して水溶液を得た。上記水溶液の所定量を分取し、ハロゲン原子を、自動滴定装置(「COM-1500」、Hiranuma Sangyo Co.,Ltd.社製)を使用して、硝酸銀標準溶液を用いて滴定して、固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量を決定した(硝酸銀滴定法)。
【0079】
固体触媒成分中の内部電子供与化合物の含有量
固体触媒成分中の内部電子供与化合物(第1の内部電子供与化合物、第2の内部電子供与化合物、および第3の内部電子供与化合物)の含有量を、ガスクロマトグラフ(「GC-14B」、Shimadzu Corporation社製)を使用して、以下の条件下で決定した。各成分(それぞれの内部電子供与化合物)のモル数を、ガスクロマトグラフィー測定結果から、既知濃度における測定結果を使用してあらかじめ作成した検量線を使用して算出した。
測定条件
カラム:充填カラム(2.6(直径)×2.1m、Silicone SE-30 10%、Chromosorb WAW DMCS 80/100、GL Sciences Ltd.社製)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
キャリヤーガス:ヘリウム、流量:40mL/分
測定温度:気化室:280℃、カラム:225℃、検出器:280℃、または気化室:265℃、カラム:180℃、検出器:265℃
【0080】
実施例1
固体触媒成分(A1)の合成
(1)第1の工程
内部雰囲気を窒素ガスにより十分に置き換えた、撹拌機を装備した500mL丸底フラスコに、40mL(364mmol)の四塩化チタンおよび60mL(565mmol)のトルエンを投入して、溶液を調製した。
20g(175mmol)の球形ジエトキシマグネシウム(直径=43μm)、80mL(753mmol)のトルエン、および4.0mL(17.3mmol)のジ-n-プロピルフタレートを使用して調製した懸濁液を、上記溶液に添加した。この混合物を-5℃で1時間撹拌し、110℃まで加熱した。該混合物を加熱しながら、4.0mL(17.2mmol)のジエチルベンジリデンマロネートを該混合物に段階的に添加した。この混合物を90℃で3時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
187mLのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を4回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0081】
(2)第2の工程
170mLのトルエンおよび30mL(273mmol)の四塩化チタンを、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーに添加した。この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。反応完了後、上澄み液を除去した。180mLのトルエンおよび20mL(182mmol)の四塩化チタンを添加した後、この混合物を80℃まで加熱した。0.5mL(2.2mmol)のジ-n-プロピルフタレートを添加した後、この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
反応完了後、187mLのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加し、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を2回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0082】
(3)第3の工程
170mL(1600mmol)のトルエンを、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーに添加し、反応混合物中の四塩化チタンの濃度を0.2質量%に調節して、この混合物を80℃まで加熱した。0.5mL(2.2mmol)のジ-n-プロピルフタレートを添加した後、この混合物を撹拌しながら100℃で1時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
150mLのn-ヘプタン(60℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を7回繰り返して反応生成物を洗浄し、オレフィン重合用固体触媒成分(A1)を得た。
固体触媒成分(A1)は、1.7質量%のチタン原子含有量、14.6質量%の総フタル酸ジエステル含有量、および2.9質量%のジエチルベンジリデンマロネート含有量を有した。
【0083】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
内部雰囲気を窒素ガスにより完全に置き換えた、撹拌機を装備したオートクレーブ(内部容積:2.0L)に、1.3mmolのトリエチルアルミニウム、0.22mmolのジエチルアミノトリエトキシシラン、および固体触媒成分(A1)(チタン原子に基づいて2.6μmol)を投入して、プロピレン重合触媒(B1)を調製した。
該オートクレーブにプロピレン重合触媒を投入し、液化プロピレン(17mol)をさらに投入した。液化プロピレンを、20℃で5分間、1.1MPaの加圧下で予備重合に付し、加熱し、70℃で15分間、3.2MPa下で重合した。5.5Lの水素ガスの添加に続いて、液化プロピレンを、70℃で45分間、3.2MPa下で重合し、ポリプロピレンを得た。
固体触媒成分の1グラム当たりのプロピレン重合活性、ポリマーのメルトフローレイト(MFR)、およびポリマー中のp-キシレン可溶分(XS)を、以下に記載のように測定した。結果を表1に示す。
【0084】
プロピレン重合活性
固体触媒成分の1グラム当たりのプロピレン重合活性を、以下の式を使用して算出した。
プロピレン重合活性(g-PP/g-触媒)
=ポリプロピレンの質量(g)/オレフィン重合触媒に含まれる固体触媒成分の質量(g)
【0085】
ポリマーのメルトフローレイト(MFR)
ポリマーのメルトフローレイト(MFR)(メルトフローインデックス)(g/10分)を、ASTM D1238(JIS K 7210)に準拠して測定した。
【0086】
ポリマー中のキシレン可溶分(XS)
撹拌機を装備したフラスコに、4.0gのポリマー(ポリプロピレン)および200mLのp-キシレンを投入した。外部温度を、キシレンの沸点(約150℃)と等しくなるまで上昇させ、フラスコに入っているp-キシレンを、沸点条件下の温度に維持しながら(137~138℃)、上記ポリマーを2時間にわたり溶解した。この溶液を23℃まで1時間にわたり冷却し、不溶成分と可溶成分とを濾過により分離した。可溶成分の溶液を収集し、減圧下で加熱(乾燥)することによりp-キシレンを蒸発させた。残留物の重量を算出し、ポリマー(ポリプロピレン)に対する相対比(質量%)を算出して、キシレン可溶分(XS)を決定した。
【0087】
曲げ弾性率(FM)の評価
ポリマー(ポリプロピレン)を射出成形して、特性測定試片を調製した。該試片を、JIS K 7171に準拠して、23℃に維持された温度制御室で144時間以上コンディショニングし、該試片を使用して曲げ弾性率(FM)(MPa)を測定し、ただし液体/粉末滲出液はその表面に観察されなかった。
【0088】
特性測定試片を以下に記載のように調製したことに留意されたい。0.10重量%のIRGANOX 1010(BASF社製)、および0.10重量%のIRGAFOS 168(BASF社製)、および0.08重量%のステアリン酸カルシウムを、ポリマー(ポリプロピレン)に添加し、この混合物を混練し、単軸押出機を使用して粒状化して、ポリマー(ポリプロピレン)のペレットを得た。ポリマー(ポリプロピレン)のペレットを、射出成形機(金型温度:60℃、シリンダー温度:230℃)内に導入し、射出成形して、特性測定試片を調製した。
【0089】
ポリマーの分子量および分子量分布
ポリマーの分子量および分子量分布を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(「GPCHLC-8321 GPC/HT」、Toso社製)により、以下の条件下で測定した。ポリマーの分子量分布を、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比「Mw/Mn」により評価した。
[検出条件]
溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)+BHT0.1%
温度:140℃(SEC)
カラム:GMHHR-H(20)x1およびGMHHR-H(S)HT2x1
試料濃度:0.5mg/mL(ODCB)
試料量:0.5mL
キャリヤー溶媒流量:1.0mL/分
【0090】
実施例2
固体触媒成分(A2)の合成
固体触媒成分(A2)を、第2の工程および第3の工程において、ジ-n-プロピルフタレートの代わりに0.6mL(2.2mmol)のジ-n-ブチルベンジリデンマロネートをフラスコに添加したことを除いて、実施例1と同じ手法で調製した。
固体触媒成分(A2)は、1.8質量%のチタン原子含有量、14.0質量%の総フタル酸ジエステル含有量、および2.8質量%のジ-n-ブチルベンジリデンマロネート含有量を有した。
【0091】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(A2)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(B2)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0092】
実施例3
固体触媒成分(A3)の合成
固体触媒成分(A3)を、第2の工程および第3の工程において、ジ-n-プロピルフタレートの代わりに0.5mL(2.2mmol)のジエチルベンジリデンマロネートをフラスコに添加したことを除いて、実施例1と同じ手法で調製した。
固体触媒成分(A3)は、1.7質量%のチタン原子含有量、18.5質量%の総フタル酸ジエステル含有量、および8.0質量%のジエチルベンジリデンマロネート含有量を有した。
【0093】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(A3)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(B3)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0094】
実施例4
固体触媒成分(A4)の合成
固体触媒成分(A4)を、第1の工程の加熱手順において、ジ-n-エチルベンジリデンマロネートの代わりに、混合物を加熱しながら、4.4mL(17.2mmol)のジ-n-プロピルベンジリデンマロネートを段階的に混合物に添加したことを除いて、実施例1と同じ手法で調製した。
固体触媒成分(A4)は、1.7質量%のチタン原子含有量、15.3質量%の総フタル酸ジエステル含有量、および2.2質量%のジ-n-プロピルベンジリデンマロネート含有量を有した。
【0095】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(A4)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(B4)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0096】
実施例5
固体触媒成分(A5)の合成
(1)第1の工程
内部雰囲気を窒素ガスにより十分に置き換えた、撹拌機を装備した75リットルの丸底反応器に、6.6L(60mol)の四塩化チタンおよび13.2L(12.4mol)のトルエンを投入して、溶液を調製した。
3.3kg(28.9mol)の球形ジエトキシマグネシウム(直径=43μm)、13.2L(12.4mol)のトルエン、および660mL(2.9mol)のジ-n-プロピルフタレートを使用して調製した懸濁液を、上記溶液に添加した。この混合物を-5℃で1時間撹拌し、110℃まで加熱した。該混合物を加熱しながら、660mL(2.9mol)のジエチルベンジリデンマロネートを該混合物に段階的に添加した。この混合物を90℃で3時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
30.9Lのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を4回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0097】
(2)第2の工程
28.1Lのトルエンおよび5.0L(46mol)の四塩化チタンを、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーに添加した。この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。反応完了後、上澄み液を除去した。29.7Lのトルエンおよび3.3L(30mol)の四塩化チタンを添加した後、この混合物を80℃まで加熱した。83mL(365mmol)のジ-n-プロピルフタレートを添加した後、この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら1時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
反応完了後、30.9Lのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加し、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を2回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0098】
(3)第3の工程
30.9L(290mol)のトルエンを、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーに添加し、反応混合物中の四塩化チタンの濃度を0.2質量%に調節して、この混合物を80℃まで加熱した。83mL(365mmol)のジ-n-プロピルフタレートを添加した後、この混合物を撹拌しながら100℃で1時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
24.9Lのn-ヘプタン(60℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を7回繰り返して反応生成物を洗浄し、オレフィン重合用固体触媒成分(A5)を得た。
固体触媒成分(A5)は、1.5質量%のチタン原子含有量、14.5質量%の総フタル酸ジエステル含有量、および2.2質量%のジエチルベンジリデンマロネート含有量を有した。
【0099】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(A5)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(B5)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0100】
エチレン-プロピレン共重合触媒の調製およびインパクトコポリマーの製造
内部雰囲気を窒素ガスにより完全に置き換えた、撹拌機を装備したオートクレーブ(内部容積:2.0L)に、2.2mmolのトリエチルアルミニウム、0.22mmolのジエチルアミノトリエトキシシラン、および固体触媒成分(A1)(チタン原子に基づいて0.37μmol)を投入して、エチレン-プロピレン共重合触媒を調製した。
撹拌機を装備したオートクレーブに、エチレン-プロピレン共重合触媒を投入し、液化プロピレン(15mol)および水素ガス(分圧:0.20MPa)をさらに投入した。液化プロピレンを、20℃で5分間、予備重合に付し、70℃で60分間、第1の工程ホモプロピレン重合(単独重合)に付した。次にオートクレーブ内部の圧力を正常圧に戻した。
共重合工程を開始する前に、0.70MPaのプロピレン、0.49MPaのエチレン、および0.010MPの水素を、オートクレーブに添加した。この混合物を70℃まで加熱し、エチレン、プロピレン、および水素を1.6/2.4/0.015(L/分)の比で供給しながら、70℃で15分間1.2MPaの加圧下で反応させ、エチレン-プロピレンコポリマーを得た。重合結果を表2に示す。
【0101】
プロピレン系ブロック共重合活性(ICP(インパクトコポリマー)活性)(g-ICP/(g-触媒))を以下に記載のように測定し、重合活性の持続可能性を評価した。ホモポリマーのMFR、ICPのMFR、プロピレン系ブロックコポリマー中のEPR含有量(ゴム含有量)(重量%)、EPR中のエチレン含有量(重量%)、キシレン不溶成分中のエチレン含有量(重量%)、曲げ弾性率(FM)(MPa)、およびアイゾッド衝撃強度(KJ/m)もまた測定した。結果を表2に示す。
【0102】
ICP重合活性
固体触媒成分の1グラム当たりのプロピレン系ブロック共重合活性を、以下の式により算出した。
プロピレン系ブロック共重合活性(g-lCP/g-触媒)=(I(g)-F(g)+J(g))I[{オレフィン重合触媒中の固体触媒成分の質量(g)×((G(g)-F(g)-J(g))}I(G(g)-F(g)))]
Iは共重合完了後のオートクレーブの質量(g)であり、Fはオートクレーブの質量(g)であり、GはPP単独重合完了後に未反応モノマーを除去した後のオートクレーブの質量(g)であり、Jは単独重合後に除去されたポリマーの量(g)であることに留意されたい。
単独重合活性
固体触媒成分の1g当たりの単独重合活性を、以下の式により算出した。
単独重合活性(g-PP/g-触媒)=(G(g)-F(g)/(オレフィン重合触媒中の固体触媒成分の質量(g))
【0103】
EPR含有量(ICPポリマー中のキシレン可溶分)
撹拌機を装備したフラスコに、5.0gのコポリマー(ICPプロピレンポリマー)および250mLのp-キシレンを投入した。外部温度を、キシレンの沸点(約150℃)以上になるまで上昇させ、フラスコに入っているp-キシレンを、沸点に維持しながら(137~138℃)、上記ポリマーを2時間にわたり溶解した。この溶液を23℃まで1時間にわたり冷却し、不溶成分と可溶成分とを濾過により分離した。可溶成分の溶液を収集し、減圧下で加熱(乾燥)することによりp-キシレンを蒸発させた。残留物の重量を算出し、ポリマー(プロピレン系ブロックコポリマー)に対する相対比(質量%)を算出して、EPR含有量を決定した。
【0104】
EPR中のエチレン含有量の決定
EPR含有量(ICPポリマー中のキシレン可溶分)を決定するときに、キシレンで抽出した少量のEPR(キシレン可溶成分)をサンプリングして、薄膜形状に熱間プレスした。EPR中のエチレン含有量を、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)(「Avatar」、Thermo Nicolet社製)を使用して測定した吸光度から、既知のエチレン含有量を有する複数の試料を使用して作成した検量線に基づいて算出した。
測定波長:720cm-1および1150cm-1
薄膜厚:0.1~0.2mm
【0105】
キシレン不溶成分(XI)中のエチレン含有量
キシレンを用いた抽出により得られる少量のキシレン不溶成分をサンプリングして、薄膜形状に熱間プレスして、キシレン不溶成分中のエチレン含有量を、EPR中のエチレン含有量と同じ手法で算出した。
【0106】
ポリマーのメルトフローレイト(MFR)
ホモポリプロピレンおよびICPポリマーのメルトフローレイト(MFR)(メルトフローインデックス)(g/10分)を、ASTM 01238(JIS K 7210)に準拠して測定した。
【0107】
EPRの固有粘度(I.V.-EPR)
EPRの固有粘度(I.V.-EPR)を、ウベローデ形粘度計を用いて、135℃においてデカリン中で測定した還元粘度(ηSP/c)から、以下の式(ハギンス(Huggins)式)を使用することにより算出した;
ηSP/c=[η]+K[η]
式中、ηSP/c(dl/g)は還元粘度であり、[η](dl/g)は固有粘度であり、c(g/dl)はポリマー濃度であり、Kは0.35(ハギンス定数)である。
【0108】
ポリマーの曲げ弾性率(FM)
JIS K 7171に準拠してポリマーを成形して特性測定試片を調製した。該試片を、23℃に維持された温度制御室で144時間以上コンディショニングし、該試片を使用して曲げ弾性率(FM)(MPa)を測定し、ただし液体/粉末滲出液はその表面に観察されなかった。特性測定試片を以下に記載のように調製したことに留意されたい。0.10重量%のIRGANOX 1010(BASF社製)、および0.10重量%のIRGAFOS 168(BASF社製)を、エチレン-プロピレンコポリマーに添加し、この混合物を混練し、単軸押出機を使用して粒状化して、エチレン-プロピレンコポリマーのペレットを得た。エチレン-プロピレンコポリマーのペレットを、射出成形機(金型温度:60℃、シリンダー温度:230℃)内に導入し、射出成形して、特性測定試片を調製した。
【0109】
アイゾッド衝撃強度
0.10重量%のIRGANOX 1010(BASF社製)、および0.10重量%のIRGAFOS 168(BASF社製)を、エチレン-プロピレンコポリマーに添加し、この混合物を混練し、単軸押出機を使用して粒状化して、エチレン-プロピレンコポリマーのペレットを得た。エチレン-プロピレンコポリマーのペレットを、射出成形機(金型温度:60℃、シリンダー温度:230℃)内に導入し、射出成形して、特性測定試片を調製した。該試片を、23℃に維持された温度制御室で144時間以上コンディショニングし、該試片のアイゾッド衝撃強度を、JIS K 7110(「Method of Izod Impact Test For Rigid Plastics」)に準拠して、アイゾッドテスター(「Model A-121804405」、Toyo Seiki Seisaku-Sho、Ltd.社製)を使用して測定した。
試片の形状:ISO 180/4A、厚さ:3.2mm、幅:12.7mm、長さ:63.5mm
ノッチの形状:ノッチを備えたダイス型を使用して形成されたA型ノッチ(半径:0.25mm)
温度:23℃および-30℃
衝撃速度:3.5m/秒
公称上の振り子エネルギー:0.5J(23℃)および0.5J(-30℃)
【0110】
実施例6
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
0.22mmolのジエチルアミノトリエトキシシランの代わりに0.22mmolのジイソプロピルジメトキシシランを使用し、かつ5.5Lの水素の代わりに7.0Lの水素を添加したことを除いて、実施例5と同じ手法で重合触媒(B6)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0111】
実施例7
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
70℃の代わりに65℃下で重合を実施し、かつ5.5Lの水素の代わりに9.0Lの水素を添加したことを除いて、実施例5と同じ手法で重合触媒(B5)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0112】
実施例8
曲げ弾性率(FM)の評価
実施例7において得られるものと同じポリマーを用いて、ポリマーの押出プロセス前に、造核剤として800ppmのステアリン酸カルシウムの代わりに1,000ppmの安息香酸ナトリウムを添加したことを除いて、実施例1と同じ手法で、曲げ弾性率評価を実施した。結果を表1に示す。
【0113】
比較例1
固体触媒成分(a1)の合成
(1)第1の工程
内部雰囲気を窒素ガスにより十分に置き換えた、撹拌機を装備した500mL丸底フラスコに、40mL(364mmol)の四塩化チタンおよび60mL(565mmol)のトルエンを投入して、溶液を調製した。
20g(175mmol)の球形ジエトキシマグネシウム(直径=43μm)、80mL(753mmol)のトルエン、および4.0mL(17.3mmol)のジ-n-プロピルフタレートを使用して調製した懸濁液を、上記溶液に添加した。この混合物を-5℃で1時間撹拌し、110℃まで加熱した。該混合物を加熱しながら、4.0mL(17.2mmol)のジ-n-プロピルフタレートを該混合物に段階的に添加した。この混合物を90℃で3時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
187mLのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を4回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0114】
(2)第2の工程
170mLのトルエンおよび30mL(273mmol)の四塩化チタンを、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーに添加した。この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。反応完了後、上澄み液を除去した。180mLのトルエンおよび20mL(182mmol)の四塩化チタンを添加した後、この混合物を80℃まで加熱した。0.5mL(2.2mmol)のジエチルベンジリデンマロネートを添加した後、この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
反応完了後、187mLのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加し、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を2回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0115】
(3)第3の工程
170mL(1600mmol)のトルエンを、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーに添加し、反応混合物中の四塩化チタンの濃度を0.2質量%に調節して、この混合物を80℃まで加熱した。0.5mL(2.2mmol)のジエチルベンジリデンマロネートを添加した後、この混合物を撹拌しながら100℃で1時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
150mLのn-ヘプタン(60℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を7回繰り返して反応生成物を洗浄し、オレフィン重合用固体触媒成分(a1)を得た。
固体触媒成分(a1)は、1.7質量%のチタン原子含有量、15.4質量%の総フタル酸ジエステル含有量、および4.0質量%のジエチルベンジリデンマロネート含有量を有した。
【0116】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(a1)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(b1)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0117】
比較例2
固体触媒成分(a2)の合成
内部雰囲気を窒素ガスにより十分に置き換えた、撹拌機を装備した500mL丸底フラスコに、20gのジエトキシマグネシウム(直径=43μm)、110mLのトルエン、40mLの四塩化チタンを投入した。この混合物を60℃まで加熱した。8.2mL(30.6mmol)のジエチルジイソプロピルスクシネートを添加した後、この混合物を100℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
反応完了後、90mLのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加し、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を6回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分を含む反応生成物スラリーを得た。
100mLのトルエンおよび20mLの四塩化チタンを、固体成分を含む反応生成物スラリーに添加した。この混合物を100℃まで加熱し、撹拌しながら15分反応させた。反応完了後、上澄み液を除去した。この操作を3回繰り返し、続いて150mLのn-ヘプタン(40℃)を反応生成物スラリーに添加し、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を6回繰り返して反応生成物を洗浄し、オレフィン重合用固体触媒成分(a2)を得た。
固体触媒成分(a2)は、2.2質量%のチタン原子含有量、および21.3質量%のジエチルジイソプロピルスクシネート含有量を有した。
【0118】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(a2)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(b2)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0119】
比較例3
固体触媒成分(a3)の合成
(1)第1の工程
内部雰囲気を窒素ガスにより十分に置き換えた、撹拌機を装備した75リットルの丸底反応器に、6.6L(60mol)の四塩化チタンおよび13.2L(12.4mol)のトルエンを投入して、溶液を調製した。
3.3kg(28.9mol)の球形ジエトキシマグネシウム(直径=61μm)、13.2L(12.4mol)のトルエン、および930mL(4mol)のジ-n-プロピルフタレートを使用して調製した懸濁液を、上記溶液に添加した。この混合物を-5℃で1時間撹拌し、110℃まで加熱した。該混合物を加熱しながら、138mL(480mmol)のジメチルジ-イソブチルマロネートを該混合物に段階的に添加した。この混合物を110℃で3時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
30.9Lのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を4回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0120】
(2)第2の工程
28.1Lのトルエンおよび5.0L(46mol)の四塩化チタンを、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーに添加した。この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。反応完了後、上澄み液を除去した。29.7Lのトルエンおよび3.3L(30mol)の四塩化チタンを添加した後、この混合物を80℃まで加熱した。83mL(365mmol)のジ-n-プロピルフタレートを添加した後、この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら1時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
反応完了後、30.9Lのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加し、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を2回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0121】
(3)第3の工程
30.9L(290mol)のトルエンを、固体成分(II)を含む反応生成物スラリーに添加し、反応混合物中の四塩化チタンの濃度を0.2質量%に調節して、この混合物を80℃まで加熱した。83mL(365mmol)のジ-n-プロピルフタレートを添加した後、この混合物を撹拌しながら100℃で1時間反応させた。得られた反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
24.9Lのn-ヘプタン(60℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を7回繰り返して反応生成物を洗浄し、オレフィン重合用固体触媒成分(a3)を得た。
固体触媒成分(a3)は、1.9質量%のチタン原子含有量、18.7質量%の総フタル酸ジエステル含有量、および1.2質量%のジメチルジ-イソブチルマロネート含有量を有した。
【0122】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(a3)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(b3)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0123】
比較例4
固体触媒成分(a4)の合成
(1)第1の工程
内部雰囲気を窒素ガスにより十分に置き換えた、撹拌機を装備した75リットルの丸底反応器に、6.6L(60mol)の四塩化チタンおよび13.2L(12.4mol)のトルエンを投入して、溶液を調製した。
3.3kg(28.9mol)の球形ジエトキシマグネシウム(直径=43μm)、13.2L(12.4mol)のトルエン、および660mL(2.9mol)のジ-n-ブチルフタレートを使用して調製した懸濁液を、上記溶液に添加した。この混合物を-5℃で1時間撹拌し、110℃まで加熱した。該混合物を加熱しながら、660mL(2.9mol)のジ-n-ブチルフタレートを該混合物に段階的に添加した。この混合物を90℃で3時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を静置し、上澄み液を除去して、反応生成物スラリーを得た。
30.9Lのトルエン(100℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を4回繰り返して反応生成物を洗浄し、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーを得た。
【0124】
(2)第2の工程
28.1Lのトルエンおよび5.0L(46mol)の四塩化チタンを、固体成分(I)を含む反応生成物スラリーに添加した。この混合物を110℃まで加熱し、撹拌しながら2時間反応させた。反応完了後、上澄み液を除去した。
24.9Lのn-ヘプタン(60℃)を反応生成物スラリーに添加した後、この混合物を撹拌し、静置して、上澄み液を除去した。この操作を7回繰り返して反応生成物を洗浄し、オレフィン重合用固体触媒成分(a4)を得た。
固体触媒成分(a4)は、2.8質量%のチタン原子含有量、および17.3質量%の総フタル酸ジエステル含有量を有した。
【0125】
プロピレン重合触媒の調製およびプロピレンの重合
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(a4)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(b4)を調製し評価した。重合結果を表1に示す。
【0126】
エチレン-プロピレン共重合触媒の調製およびインパクトコポリマーの製造
固体触媒(A1)の代わりに固体触媒成分(a4)を使用したことを除いて、実施例1と同じ手法で重合触媒(b4)を調製し評価した。重合結果を表2に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
表1および表3に示される結果から明らかなように、実施例1~9において得られた固体触媒成分を使用してそれぞれ調製されたオレフィン重合触媒は、高アイソタクチック性および幅広い分子量分布を伴うホモポリプロピレンまたはプロピレン系ブロックコポリマーの製造を達成した。したがって、得られた(コ)ポリマーの曲げ弾性率は改善されている。
一方、表2および表3に示される結果から明らかなように、比較例1~5において得られた固体触媒成分を用いて製造されたポリプロピレンまたはプロピレン系ブロックコポリマーは、実施例1~9の結果と比較して、不十分な曲げ弾性率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0131】
したがって、本発明の実施形態は、高剛性を示すホモプロピレンならびにバランスの取れた強剛性および衝撃強度を示すプロピレン系ブロックコポリマーの製造方法を提供する。