(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】建築構造物の積層造形ロボット用のセメント質材料ビーズを押し出すシステム
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20220831BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20220831BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220831BHJP
【FI】
B28B1/30
B25J11/00 Z
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2019568662
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 FR2018051370
(87)【国際公開番号】W WO2018229418
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-04-15
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519439106
【氏名又は名称】エックストゥリーイー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マレット,アルバン
(72)【発明者】
【氏名】ブーイッソウ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】アクハヴァン ザケリ,マーリズ
(72)【発明者】
【氏名】ブランチェット,ローレント
(72)【発明者】
【氏名】モレル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ゴセリン,クレメント
(72)【発明者】
【氏名】ゴーディリエル,ナドゥジャ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥバレット,ロメイン
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105216333(CN,A)
【文献】中国実用新案第204354263(CN,U)
【文献】特開平11-147214(JP,A)
【文献】特開2012-188282(JP,A)
【文献】特開2007-145021(JP,A)
【文献】特開2017-052289(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3260258(EP,A1)
【文献】特開2012-255307(JP,A)
【文献】特開2011-173360(JP,A)
【文献】特開2004-122564(JP,A)
【文献】特開平04-269299(JP,A)
【文献】実開昭58-171251(JP,U)
【文献】特開2003-200414(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166116(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2267110(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B25J 11/00
B28C 1/00-9/04
B33Y 10/00,70/00
B29C 64/00,67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の積層造形に使用されるロボット用のセメント質材料のストランド
を押
し出
すためのシステム
であって、
-セメント質材料の入口(31)と、セメント質材料のストランドを形成するように設計された出口ノズル(34)とを備える、印刷ヘッド(30)と呼ばれる、セメント質材料のストランドを分配するためのヘッドと、
-セメント質材料貯蔵タンク(10)、前記貯蔵タンク(10)と前記印刷ヘッド(30)を接続するセメント質材料供給パイプ(21)、および前記貯蔵タンク(10)からのセメント質材料によって前記供給パイプ(21)を充填するための
充填ポンプ(22)を備える、セメント質材料を前記印刷ヘッド(30)に供給するための
供給回路(20)と、
-前記印刷ヘッド(30)を流れる前記セメント質材料の圧力/流量を検出するためのセンサ(33)であって、前記センサ(33)によって送信された測定値に基づいて前記供給パイプ(21)の充填を制御するように設計された前記充填ポンプ(22)に前記圧力/流量測定値を送信するのに適しているセンサと
、
を備え、
前記分配ヘッドが、さらに、
-前記出口ノズル(34)の上流に配置され、前記出口ノズル(34)を介
する前記セメント質材料のストランド
の放出
の前に前記セメント質材料の特性を変更する混合物を注入するのに適した混合装置(40)がつながる混合チャンバ(35)と、
-前記セメント質材料と、前記混合チャンバ(35)内の前記混合装置(40)によって提供される混合物とを混合することができるように設計されたダイナミックミキサ(36)と、
-前記セメント質材料を前記印刷ヘッドの前記入口(31)から前記混合チャンバ(35)に搬送することができるように設計された偏心スクリュー計量ポンプ(51)と
、
を備えることを特徴とする
、システム。
【請求項2】
前記ダイナミックミキサ(36)が、長手方向と呼ばれる方向において前記混合チャンバ(35)内に延び、シャフト(37)に沿って分布した放射状フィンガ(38)を担持する少なくとも1つのシャフト(37)と、前記セメント質材料と前記混合物の均質混合物を提供することができるように前記シャフト(37)を回転させることができるように設計されたモータ(39)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載
のシステム。
【請求項3】
前記混合装置(40)が、前記長手方向と0°から90°の間の角度を形成する混合方向において前記混合チャンバ(35)に通じ且つ前記混合方向において混合物バレルから前記混合チャンバ(35)に前記混合物を注入することができるように前記混合物バレル(41)に接続された少なくとも1本の混合ニードル(42)を備えることを特徴とする、請求項2に記載
のシステム。
【請求項4】
前記混合装置(40)が、前記混合方向において前記混合チャンバ(35)に通じる複数のニードル(42)を備え、各ニードル(42)が、容積フィーダ(43)によって前記混合物バレル(41)に接続されることを特徴とする、請求項3に記載
のシステム。
【請求項5】
前記混合装置(40)が、前記混合物バレル(41)と前記容積フィーダ(43)との間に配置された蠕動ポンプ(44)を備えることを特徴とする、請求項4に記載
のシステム。
【請求項6】
前記混合チャンバ(35)または前記出口ノズル(34)の目詰まりのリスクを防止す
ることができるように、前記混合チャンバ(35)の上流の圧力を測定するように設計された安全センサ(52)と呼ばれる、前記混合チャンバの上流の前記セメント質材料の圧力を検出するためのセンサを備えることを特徴とする、請求項
1に記載
のシステム。
【請求項7】
前記充填ポンプ(22)が、前記供給パイプ(21)内の脈動を制限するための偏心スクリューポンプであることを特徴とする、請求項
1に記載
のシステム。
【請求項8】
前記供給回路
(20)の前記貯蔵タンク(10)が、セメント質材料のバッチを受け入れるための上部開口(11)と、前記供給パイプ(21)に接続された下部出口(12)とを備えるホッパーであることを特徴とする、請求項
1に記載
のシステム。
【請求項9】
前記ホッパーが、前記ホッパーの前記セメント質材料を撹拌することができるように、複数の横方向ブレード(15)を担持するシャフト(14)と、前記シャフト(14)を回転させるモータ(16)とを備える撹拌機(13)を備えることを特徴とする、請求項8に記載
のシステム。
【請求項10】
外乱ゾーンを生成することなく前記セメント質材料を搬送することができるように前記充填ポンプ(22)から前記出口ノズル(34)まで一定の断面を有することを特徴とする、請求項1
乃至8のいずれか一項に記載
のシステム。
【請求項11】
制御ユニットによって制御される関節アームなどの位置決めシステムを備える
、建築構造物の積層製造
のために使用されるロボット
であって、請求項1
乃至10
のいずれか一項に記載
のシステムを備えることを特徴とする、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント質材料の積層造形に関する。本発明は、特に、建築構造物の積層造形に使用されるロボット用のセメント質材料のストランドを押し出すシステムに関する。本発明はまた、建築構造物の積層造形のためのそのようなシステムを備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
セメント質材料の3D印刷は、その用途が建築および建設の分野で数多くあって有望と思われるセメント質材料の積層造形の業界のセクターである。
【0003】
確かに、セメント質材料の3D印刷は、特にセメント質材料の連続層を追加することによって複雑な形状を生み出すことができる可能性、建設作業の速度、コストおよび人員の削減、建設現場の安全性の向上などを含む、従来の技術に比べて多くの利点を提供することができると思われる。
【0004】
セメント質材料の3D印刷の習熟は、流体力学、力学、電子工学および土木工学の分野のスキルを必要とする。
【0005】
本文全体で、「建築構造物」という用語は、個々の構造要素(橋、柱、壁、ストリートファニチャーなど)、完全な構造物(建物、家、アパートなど)および様々な建築部品(芸術作品、彫刻など)を指す。
【0006】
建築構造物の製造を目的としたセメント質材料の押し出しは、セメント質材料の入口およびセメント質材料の出口のノズルを備えるセメント質印刷ヘッドと、セメント質材料貯蔵タンク、貯蔵タンクと印刷ヘッドの入口を接続するパイプ、および貯蔵タンクからのセメント質材料によってパイプを充填するためのポンプを備えるセメント質材料を印刷ヘッドに供給する回路を含む。
【0007】
セメント質材料の3D印刷の難しさの1つは、セメント質材料がこの材料のポンプ輸送に適合するレオロジー状態で提供されなければならないという事実、すなわち、材料が貯蔵タンクからポンプ輸送されて出口ノズルに搬送されることができるように十分に流体でなければならないが、その状態が次の層を支持することができる自己支持層を形成することができるように出口ノズルの下流で非常に粘性(すなわち、流体が少ない)でなければならないという事実にある。
【0008】
セメント印刷システムは、既に存在する。そのため、提案されたシステムは、印刷動作が大幅に遅くなり、不連続性を生じたり、または一時的な補強が追加され、印刷が遅くなって複雑になったりしない限り、特に印刷物(生成される構造物)に過度のオーバーハングの存在を可能にしないことを見出した。これまでの解決策の難しさの理由の1つは、セメント質材料がポンプ輸送限界に近い状態に置かれているが、たるまないために十分なせん断閾値を有するという事実にある。材料に関するこの制約は、ロボットの出力および速度を制限することにより、製造部品の印刷速度に大きな制約を伴い、したがって、押し出された材料の強度に製造部品の複雑さを制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明者らは、印刷性能に影響を与えることなく複雑な部品を提供することができることを目的として、従来の解決策の欠点の少なくともいくつかを解決することを可能にするセメント質材料を押し出すシステムを提供しようとした。
【0010】
特に、本発明者らは、金型または型枠の存在を必要としないにもかかわらず、従来技術の文脈で(特に強度の点で)鋳造されるものと同様のセメント質材料の使用を可能にする解決策を提供しようとした。
【0011】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、複雑な建築部品または構造部品の製造を可能にするセメント質材料を押し出すシステムを提供することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、材料の連続的且つ均一な分配を可能にする押出システムを提供することを目的とする。
【0013】
しかしながら、本発明はまた、本発明の少なくとも1つの実施形態において、これにより印刷速度が遅くなることなく、オーバーハングを有する部品の印刷を可能にする押出システムを提供することを目的とする。
【0014】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの実施形態において、正確、安定且つ再現可能な方法でおよび低コストで建築部品または構造部品の製造を可能にする押出システムを提供することを目的とする。
【0015】
本発明はまた、本発明にかかるセメント質押出システムを備えたロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、建築構造物の積層造形に使用されるロボット用のセメント質材料のストランドの押出システムにおいて、
-セメント質材料の入口と、セメント質材料のストランドを形成するように設計された出口ノズルとを備える、印刷ヘッドと呼ばれる、セメント質材料のストランドを分配するためのヘッドと、
-セメント質材料貯蔵タンク、前記貯蔵タンクと前記印刷ヘッドを接続するパイプ、および前記貯蔵タンクからのセメント質材料によって前記供給パイプを充填するためのポンプを備える、セメント質材料を前記印刷ヘッドに供給するための回路と、
-前記印刷ヘッドを流れる前記セメント質材料の圧力/流量を検出するためのセンサであって、前記センサによって送信された測定値に基づいて供給パイプの充填を制御するように設計された前記充填ポンプに圧力/流量測定値を送信するのに適しているセンサとを備える、システムに関する。
本発明にかかるシステムは、前記分配ヘッドが、さらに、
-前記出口ノズルの上流に配置され、前記出口ノズルを介して前記セメント質材料のストランドを放出する前にセメント質材料の特性を変更する混合物を注入するのに適した混合装置がつながる混合チャンバと、
-前記セメント質材料と、前記混合チャンバ内の前記混合装置によって提供される前記混合物とを混合することができるように設計されたダイナミックミキサと、
-セメント質材料を印刷ヘッドの入口から前記混合チャンバに搬送することができるように設計された偏心スクリュー計量ポンプとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明にかかるシステムは、セメント質材料の流量および圧力を監視および制御しながら、貯蔵タンクから印刷ヘッドにセメント質材料を搬送することを可能にする。したがって、本発明は、セメント質材料の圧力を、印刷ヘッドへの入口における所定範囲の値、例えば2から6バールに維持することを可能にする。印刷ヘッド内のセメント質材料の圧力および流量のこの制御は、出口ノズルを介してセメント質材料のストランドを連続的且つ均一に分配することを可能にする。したがって、本発明にかかるシステムでは、印刷ヘッドのノズルに供給するセメント質材料の圧力および流量以外の特定の制約を材料に課すことなく、複雑な部品を迅速に得ることが可能である。充填ポンプの制御はまた、ストランドの押し出しにおけるいかなる幾何学的な欠陥も修正することを可能にする。
【0018】
さらに、本発明にかかる押出システムは、前記出口ノズルを介した前記セメント質材料のストランドの放出前にセメント質材料の特性を変更する混合物を注入することができるように、前記出口ノズルの上流において前記印刷ヘッドに接続された混合装置を備える。
【0019】
したがって、そのようなシステムは、製造される建築構造物のニーズに出口ノズルから放出されるセメント質材料を適合させるように、出口ノズルの上流に混合物を添加することによりセメント質材料の特性を変更することを可能にする。したがって、本発明にかかるシステムでは、最適化されたポンプ輸送に適合する状態でセメント質材料を印刷ヘッドに搬送し、層がノズル出口において分配される前にのみ、その物理的特性(例えば、そのレオロジー、界面活性剤強度、可塑性、安定性、チキソトロピーなど)を変更することが可能である。
【0020】
したがって、本発明にかかるシステムでは、従来の建設技術の文脈で使用されるセメント質材料に近い特性を有するセメント質材料の層をノズル出口において分配することが可能である。
【0021】
換言すれば、本発明にかかるシステムは、システムの入口(貯蔵タンク)において第1のレオロジー状態のセメント質材料を使用し、この材料を制御された方法で印刷ヘッドに搬送することを可能にし、これは、それ自体が関節アームなどの3D印刷位置決めシステムに取り付けられ、混合物の添加によってこの搬送中に材料のレオロジー状態を変更することを目的とする。したがって、本発明にかかるシステムは、印刷ヘッドの出口における材料の状態(レオロジー、流量、圧力)を監視および制御することを可能にする。
【0022】
さらに、印刷ヘッドは、セメント質材料と混合物を出口ノズルの上流において均一に混合するためのダイナミックミキサに関連付けられた混合チャンバを備える。セメント質材料は、偏心スクリュー計量ポンプによって混合チャンバに導かれ、これにより、脈動を発生させることなく、材料が一定の流量でチャンバに搬送されることを可能にする。さらに、前記ポンプは、充填ポンプによって生じるいかなる脈動も低減することを可能にする。
【0023】
有利には、本発明によれば、充填ポンプは、供給パイプ内の脈動を制限するための偏心スクリューポンプである。
【0024】
それにもかかわらず、他の実施形態では、充填ポンプは、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、および一般にセメント質材料を搬送して圧力/流量に関して制御されるのに適した任意のポンプとすることができる。
【0025】
有利には、本発明によれば、前記ダイナミックミキサは、混合チャンバ内に長手方向に延び、シャフトに沿って分布する放射状フィンガを担持する少なくとも1つのシャフトと、セメント質材料および混合物の均質混合物を提供することができるように前記シャフトを回転させることができるように設計されたモータとを備える。
【0026】
この有利な変形形態にかかるシステムは、セメント質材料および混合物の均質混合物を得ることを可能にする。ミキサのシャフトに沿って分布する放射状フィンガの存在は、材料の粒子が混合チャンバ内で均一に分布することを可能にする。一変形形態によれば、ミキサは、2つの平行アームを備え、各アームは、「卵泡立て器」タイプの要素を形成するように放射状フィンガを備える。ミキサモータは、印刷中に1つの軸または複数の軸の回転方向を反転するように制御されることができる。
【0027】
有利には、本発明によれば、前記混合装置は、前記長手方向に対して0°から90°の間、好ましくは45°の角度を形成する混合方向において前記混合チャンバに通じ、且つ前記混合方向において前記混合物を混合物バレルから前記混合チャンバに注入することができるように前記混合物バレルに接続された少なくとも1つの混合ニードルを備える。
【0028】
この変形形態によれば、混合物は、長手方向と所定の角度を形成する混合方向において混合チャンバ内のセメント質材料に添加される。前記長手方向は、ミキサのシャフトの方向およびセメント質材料の混合チャンバへの流れ方向である。前記混合方向における混合物のこの注入は、セメント質材料および混合物の均質混合物を迅速に得ることを可能にする。90°における混合は、混合チャンバの中心軸付近を流れるセメント質材料との混合物の混合を促進する放射状混合である。0°に近い混合は、混合チャンバの壁の近くを流れる材料との混合物の混合を促進する。45°における混合は、上述した2つの角度の間の適切な妥協点である。
【0029】
有利には、この変形形態によれば、前記混合装置は、混合方向において前記混合チャンバに通じる複数のニードルを備え、各ニードルは、容積フィーダによって前記混合物バレルに接続される。
【0030】
この変形形態によれば、複数のニードルは、混合物を前記混合方向において混合チャンバに注入し、これにより、セメント質材料への混合物の均一な分布を可能にする。好ましくは、ニードルは、混合チャンバの上流部分の近く、すなわち、出口ノズルの反対側に配置される。各ニードルは、容積フィーダによって混合物バレルに接続されており、これにより、混合チャンバに注入される混合物の流量を制御することを可能にする。したがって、セメント質材料は、圧力/流量の点で制御される充填ポンプによって制御される一定の流量で混合チャンバに導かれ、混合物は、容積フィーダによって制御される一定の流量で混合チャンバに導かれる。好ましくは、各容積フィーダは、ルアーロックとしてよりよく知られているルアーロックフィッティングによってニードルに接続される。
【0031】
有利には、本発明によれば、前記混合装置は、混合物バレルと前記容積フィーダとの間に配置された蠕動ポンプを備える。
【0032】
蠕動ポンプの存在は、特に、例えば5メートル以上など、混合物バレルと混合装置のニードルとの間の距離が大きい場合、混合物のポンプ輸送を改善することを可能にする。もちろん、容積フィーダが好ましいこの距離は、容積フィーダの種類、混合回路、および混合物バレルとニードルとの間の高さの差異に依存する。
【0033】
有利には、本発明にかかる押出システムは、混合チャンバまたは出口ノズルの目詰まりのリスクを防止することができるように、混合チャンバの上流の圧力を測定するように設計された安全センサと呼ばれる、混合チャンバの上流の前記セメント質材料の圧力を検出するセンサを備える。
【0034】
有利には、本発明によれば、前記供給回路の貯蔵タンクは、セメント質材料のバッチを受け入れるための上部開口と、前記供給パイプに接続された下部出口とを備えるホッパーである。
【0035】
ホッパーは、オペレータによって提供されるセメント質材料のバッチを受け入れることを容易にする。ホッパーはまた、ホッパーの上方に配置されたセメント質材料を製造するための装置によって容易に供給されることもできる。
【0036】
有利には、この変形形態によれば、前記ホッパーには、複数の側方ブレードを担持するシャフトと、前記ホッパーのセメント質材料を撹拌することができるようにシャフトを回転させるモータとを備える撹拌機が設けられる。
【0037】
撹拌機は、充填ポンプによるポンプ輸送前に、セメント質材料をほぼ一定のレオロジー状態に維持することを可能にする。換言すれば、この撹拌ホッパーは、セメント質材料の異なるバッチを受け入れることができるバッファタンクを形成する。ホッパーは、バッチを追跡し続けることができる円錐形を有する。
【0038】
有利には、本発明にかかる押出システムは、外乱ゾーンを生成することなくセメント質材料を搬送することができるように、充填ポンプから出口ノズルまで一定の断面を有する。
【0039】
本発明はまた、制御ユニットによって制御される関節アームなどの位置決めシステムを備える、建築構造物の積層造形に使用されるロボットにおいて、本発明にかかるセメント質材料を押し出すためのシステムを備えることを特徴とする、ロボットに関する。
【0040】
そのようなロボットは、本発明にかかる押出システムを備え、その印刷ヘッドは、それ自体がコンピュータによって制御される関節アームなどの位置決めシステムによって担持される。
【0041】
本発明はまた、上記または下記の特徴の全てまたはいくつかによって組み合わされることを特徴とする、押出システムおよび積層印刷用ロボットに関する。
【0042】
本発明のさらなる目的、特徴および効果は、非限定的な例としてのみ提供され、添付の図面を参照する以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる押出システムの機能概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる押出システムの混合装置の機能概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態にかかる押出システムの印刷ヘッドの機能概略図である。
【
図4a】
図4aは、本発明の一実施形態にかかる押出システムの混合チャンバに通じる混合装置のニードルの部分概略図である。
【
図4b】
図4bは、本発明の一実施形態にかかる押出システムの混合チャンバに通じる混合装置のニードルの部分概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態にかかる押出システムの混合チャンバの一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
例示と明確化のために、図では縮尺と比率は厳密に守られていない。図面を参照する以下の詳細な説明全体を通して、特に明記しない限り、押出システムの各要素は、押出システムが
図1の構成にあるときに配置されるものとして説明される。
【0045】
さらに、同一、同様または類似の要素は、図全体を通して同じ参照符号を使用して示される。
【0046】
図1に示す本発明の好ましい実施形態にかかる押出システムは、セメント質材料貯蔵タンク10と、印刷ヘッド30と、貯蔵タンク10と印刷ヘッド30との間に配置された印刷ヘッドにセメント質材料を供給する回路20と、印刷ヘッド30に接続された混合装置40とを備える。
【0047】
ここで、システムの様々な要素のそれぞれについて詳細に説明する。
【0048】
貯蔵タンク
貯蔵タンク10は、好ましくは、セメント質材料のバッチを受け入れるのに適した上部開口11と、供給回路20に接続された下部出口12とを備えるホッパーである。ホッパーは、さらに、シャフト14に対して垂直な軸によって複数の横方向ブレード15を担持するシャフト14と、シャフト14を回転させるためのモータ16とを備える撹拌機13を備える。モータ14は、例えば、撹拌機13のシャフト14を低速で、例えば6回転/分の速度で駆動することができるように設計された電気モータである。もちろん、熱機関の使用は、本発明にかかる押出システムの性能を変更することなく可能である。撹拌機の役割は、供給回路20によって印刷ヘッドに導かれる前に、ホッパー内のセメント質材料をほぼ一定のレオロジー状態に維持することができるようにすることである。
【0049】
使用されるセメント質材料は、例えば、水和および流動化された微粒子を含むセメントから構成されたプレミックスである。
【0050】
供給回路
供給回路20は、貯蔵タンク10を印刷ヘッド30に接続する。前記回路は、貯蔵タンク10の出口12を印刷ヘッド30の入口31に接続するパイプ21を備える。供給回路20は、さらに、充填ポンプ22を備える。前記充填ポンプ22は、印刷ヘッド30の入口31の近傍に配置された圧力センサ33により圧力/流量に関して制御される。前記充填ポンプ22は、例えば、脈動を最小限に抑えながらセメント質材料を印刷ヘッド30に搬送することができるように、偏心スクリューポンプである。前記充填ポンプ22は、例えば、Putzmeister(登録商標)FP-V Monoとして販売されているポンプである。もちろん、本発明の性能を変更することなく、他のポンプを使用することができる。圧力/流量センサ23は、任意の既知のタイプのものとすることができる。例えば、それは、ifm(登録商標)PF2953として販売されているセンサである。もちろん、本発明の性能を変更することなく、他のセンサを使用することができる。充填ポンプ22は、所定の制御法則にしたがうように設計されており、必要に応じてオペレータによって設定されることができる。例えば、制御法則は、セメント質材料の圧力を2から6barの間に維持するように設定される。
【0051】
印刷ヘッド
印刷ヘッド30は、
図3に示すように、供給回路20に接続された入口31と、セメント質材料のストランドを形成するように設計された出口ノズル34とを備える。
【0052】
印刷ヘッドは、さらに、出口ノズル34の上流に配置され且つ後述する混合装置40がつながる混合チャンバ35を備える。混合チャンバ35には、セメント質材料と混合装置40によって提供される混合物とを混合することができるのに適したダイナミックミキサ36が設けられる。
【0053】
ダイナミックミキサ36は、
図4aおよび
図5に部分的に示されるように、混合チャンバ35内に長手方向に延び且つシャフト37に沿って分布する放射状フィンガ38が取り付けられるシャフト37を備える。ダイナミックミキサ36はまた、セメント質材料と混合物の均質混合物を提供することができるようにシャフト37を回転させることができるように設計されたモータ39も備える。このモータ39は、電気モータ、熱機関、および一般にあらゆるタイプのモータとすることができる。図面の実施形態によれば、モータ39は、混合チャンバ35内の混合物の外乱を最小限にするために、シャフト37に対してオフセットされている。
【0054】
印刷ヘッド30はまた、セメント質材料を入口31から混合チャンバ35に搬送することができるように設計された偏心スクリュー計量ポンプ51を備える。そのような計量ポンプは、例えばViscotec(登録商標)3VMP36として販売されているポンプである。もちろん、本発明の性能を変更することなく、他のポンプを使用することができる。
【0055】
図に示されていない他の実施形態によれば、計量ポンプ51は、所定の動作範囲にわたって一定の流量を確保することができるように設計された容積フィーダに置き換えられる。
【0056】
印刷ヘッド30はまた、混合チャンバ35の上流に配置された安全圧力センサ52も備える。このセンサは、例えばifm(登録商標)PF2953として販売されているセンサである。もちろん、本発明の性能を変更することなく、他のセンサを使用することができる。前記安全センサ52は、混合チャンバ35または出口ノズル34の目詰まりのリスクを防止することができるように、混合チャンバ35の上流の圧力を測定することを可能にする。前記センサは、例えば、圧力閾値に到達するとすぐに、押出システムの自動停止システムに接続されることができる。
【0057】
印刷ヘッドの出口ノズル34は、製造される部品に出口ノズル34の形状を適合させることができるように取り外し可能であることが好ましい。特に、出口ノズル34の断面は、製造部品の各タイプに適合させることができ、さらに印刷中に変更されて、製造部品の特定のゾーンのストランドの断面を修正することもできる。この目的のために、出口ノズルは、例えば、混合チャンバ35の範囲を定める印刷ヘッドの壁のねじ付き内側部分と係合するねじ付き外壁を備える。他の変形形態によれば、出口ノズルは、印刷ヘッドの壁のねじ付き外側部分と係合するねじ付き内壁を備える。
【0058】
混合装置
混合装置40は、
図2に示すように、複数の混合物を含むバレル41、パイプ48によってバレル41に接続されたニードル42、容積フィーダ43および蠕動ポンプ44を備える。容積フィーダは、例えば、Viscotec(登録商標)eco-PEN600として販売されているディスペンサである。もちろん、本発明の性能を変更することなく、他のフィーダを使用することができる。混合物バレル41の混合物は、任意の種類のものとすることができる。これらは、セメント質材料の任意の物理的特性(主にそのレオロジーだけでなく、その界面活性剤強度、可塑性、安定性、チキソトロピーなど)を変更するように設計された混合物である。
【0059】
ニードル42は、混合チャンバの主方向と例えば45°の角度を形成する混合方向において、出口ノズル34の反対側の混合チャンバ35に通じている。
【0060】
したがって、混合は、混合物を液体形態でバレル41にポンプ輸送し、一定の圧力で混合チャンバ35に導くことを可能にする容積フィーダによって実行される。各容積フィーダ43は、ルアーロック装置49によって精密ニードル42に接続される。セメント質材料の流れ方向である混合チャンバの主方向と好ましくは45°の角度を形成する混合方向におけるニードル42の配置は、セメント質材料および混合物の均質混合物を得ることを可能にする。したがって、圧力に関して制御される充填ポンプによって得られる一定流量のセメント質材料は、容積フィーダによって得られる一定流量の混合物と接触する。印刷ヘッドのダイナミックミキサは、接触している2つの流体を均質化することを可能にする。
【0061】
本発明はまた、印刷ヘッドを位置決めするためのシステムを備える建築構造物の積層造形に使用されるロボットにも関し、このシステムは、例えば制御ユニットにより制御される関節アームである。したがって、ロボットは、本発明にかかるセメント質材料を押し出すためのシステムを備え、押し出しシステムの印刷ヘッドを動かすように設計されている。ロボットは図には示されていないが、当業者にとって周知である。本発明にかかるロボットの特徴は、本発明にかかる押出システムを実装することである。これを行うために、ロボットの関節アームなどの位置決めシステムは、
図3に示す本発明にかかる押出システムの印刷ヘッドを担持する。前記印刷ヘッドは、本発明にかかる押出システムの混合装置および供給回路および貯蔵タンクに接続されている。
【0062】
ロボットは、例えば、必要に応じてレールに、必要に応じてガントリに取り付けられた6軸ロボットである。ロボットはまた、ケーブルロボット、または関節アームなどの位置決めシステムがコンピュータによって制御されることができる任意のタイプのロボットであってもよい。
【0063】
本発明にかかるロボットを使用して、あらゆるタイプの建築部品を製造することができる。そのような建築部品は、補強部品、建物、および一般にセメント質材料から構成された任意の部品とすることができる。本発明にかかる押出システムを使用して製造される建築部品は、様々な規模のものとすることができる。これは、柱の一部、柱全体、壁、スラブ要素、建物、ストリートファニチャーの部品、彫刻などを含むことができる。