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  • 特許-回転電機および回転電機の端子箱 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】回転電機および回転電機の端子箱
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019571835
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2018004844
(87)【国際公開番号】W WO2019159224
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武良 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】小澤 明
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-038518(JP,U)
【文献】特開2003-244889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心および前記固定子鉄心の径方向内周面近傍を軸方向に貫通する複数の固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子鉄心と前記固定子を収納するフレームとを有する回転電機本体と、
前記回転電機本体に隣接して設けられ、前記固定子巻線に接続する本体側電線と外部からの外部側電線とを電気的に接続する端子箱と、
を備える回転電機であって、
前記端子箱は、
前記本体側電線を接続する本体側接続部と前記外部側電線を接続する外部側接続部、および前記本体側接続部と前記外部側接続部とを接続する接続導体部とを有する収納導体と、
前記収納導体を収納し、取り扱い側開口、および前記フレームと連通して前記本体側電線が貫通する連通開口を有する箱本体部と、
前記取り扱い側開口を塞ぐように前記箱本体部に複数のボルトにより着脱可能に形成された開口閉止部を有する蓋と、
を具備し、
前記箱本体部に前記蓋が取り付けられた状態においては、前記ボルトは前記蓋から見て前記フレーム側に当該ボルトの頭部がある方向に配されており、
前記開口閉止部において、前記箱本体部の取り扱い側開口に対向する範囲より外側の部分には、周方向に互いに間隔をおいて前記ボルトが螺合するナットが取り付けられており、
前記箱本体部は、前記取り扱い側開口の平面に沿って縁部から外側に広がるように形成され、前記ナットのそれぞれに対向する位置に前記ボルトが貫通するための貫通孔が形成され、前記ボルトと前記ナットにより挟み込まれる対向部を有する、ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記蓋は、少なくとも一つの端部において、前記対向部が延びる方向の外側を遮るように前記開口閉止部から前記箱本体部側に曲げられた折れ曲がり部を有することを特徴とする請求項に記載の回転電機。
【請求項3】
前記蓋は、少なくとも1つの端部を除く端部において前記開口閉止部と共に前記対向部を挟むように前記開口閉止部に平行に形成された折り返し部を有し、前記蓋は、前記取り扱い側開口の形成する平面に沿って移動可能に形成されていることを特徴とする請求項または請求項に記載の回転電機。
【請求項4】
前記折り返し部には、前記ナットのそれぞれに対向する位置に前記ボルト全体を挿通するための開口が形成され、
前記ボルトの頭は、前記蓋と前記折り返し部とに挟まれた位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ボルトの頭部と前記折り返し部との間に配された遮へい板をさらに有することを特徴とする請求項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記折り返し部には、前記ナットのそれぞれに対向する位置に前記ボルトが貫通可能な貫通孔が形成され前記ボルトと前記ナットが前記折り返し部を挟み込むことを特徴とする請求項に記載の回転電機。
【請求項7】
ロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、固定子と、前記回転子鉄心と前記固定子を収納するフレームとを有する回転電機本体に隣接して設けられ、前記回転電機本体からの本体側電線と外部からの外部側電線とを接続する端子箱であって、
前記本体側電線を接続する本体側接続部と前記外部側電線を接続する外部側接続部、および前記本体側接続部と前記外部側接続部とを接続する接続導体部とを有する収納導体と、
前記収納導体を収納し、取り扱い側開口、および前記フレームと連通して前記本体側電線が貫通する連通開口を有する箱本体部と、
前記取り扱い側開口を塞ぐように前記箱本体部に複数のボルトにより着脱可能に形成された開口閉止部を有する蓋と、
を具備し、
前記箱本体部に前記蓋が取り付けられた状態においては、前記ボルトは前記蓋から見て前記フレーム側に当該ボルトの頭部がある方向に配されており、
前記開口閉止部において、前記箱本体部の取り扱い側開口に対向する範囲より外側の部分には、周方向に互いに間隔をおいて前記ボルトが螺合するナットが取り付けられており、
前記箱本体部は、前記取り扱い側開口の平面に沿って縁部から外側に広がるように形成され、前記ナットのそれぞれに対向する位置に前記ボルトが貫通するための貫通孔が形成され、前記ボルトと前記ナットにより挟み込まれる対向部を有する、ことを特徴とする回転電機の端子箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機および回転電機の端子箱に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機には、固定子巻線の導体と外部のケーブルとの接続部である端子台を収納する端子箱が設けられている。端子箱は通常、回転電機のフレームに取り付けられている。
【0003】
端子台においては、ケーブルは被覆が無い状態で接続される。また、各相のケーブルの端子台が、共通の筐体の中で、互いに物理的な距離を取りながらも、同一空間内で、互いに並んで配置されている。
【0004】
万が一、端子箱の内部において、相間の短絡が発生した場合、短絡アークにより端子箱内の温度が急上昇し、端子箱を構成する部材の破損、さらにはこれらの部材の飛散による災害が発生する恐れがある。
【0005】
このため、端子箱に、端子箱の内圧の上昇とともに容易に破損する放圧部を設けて、端子箱内の圧力の更なる上昇を抑制することにより、それ以外の部材の破損を防止する方法が一般的に採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-244889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
相間短絡の発生する箇所、相間短絡の発生状況は、必ずしも一定しないため、相間短絡の状況により、放圧部による放圧の効果が異なってくると考えられる。
【0008】
相間短絡と言う事象は、その結果によっては、人身事故を伴う可能性もあるため、相間短絡の発生に起因する危険な影響を確実に低減する必要がある。このため、放圧部による圧力上昇の緩和のみに依存するのではなく、更なる対策が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、端子箱内の相間短絡発生時にも、その危険な影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明は、ロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心および前記固定子鉄心の径方向内周面近傍を軸方向に貫通する複数の固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子鉄心と前記固定子を収納するフレームとを有する回転電機本体と、前記回転電機本体に隣接して設けられ、前記固定子巻線に接続する本体側電線と外部からの外部側電線とを電気的に接続する端子箱と、を備える回転電機であって、前記端子箱は、前記本体側電線を接続する本体側接続部と前記外部側電線を接続する外部側接続部、および前記本体側接続部と前記外部側接続部とを接続する接続導体部とを有する収納導体と、前記収納導体を収納し、取り扱い側開口、および前記フレームと連通して前記本体側電線が貫通する連通開口を有する箱本体部と、前記取り扱い側開口を塞ぐように前記箱本体部に複数のボルトにより着脱可能に形成された開口閉止部を有する蓋と、を具備し、前記箱本体部に前記蓋が取り付けられた状態においては、前記ボルトは前記蓋から見て前記フレーム側に当該ボルトの頭部がある方向に配されており、前記開口閉止部において、前記箱本体部の取り扱い側開口に対向する範囲より外側の部分には、周方向に互いに間隔をおいて前記ボルトが螺合するナットが取り付けられており、前記箱本体部は、前記取り扱い側開口の平面に沿って縁部から外側に広がるように形成され、前記ナットのそれぞれに対向する位置に前記ボルトが貫通するための貫通孔が形成され、前記ボルトと前記ナットにより挟み込まれる対向部を有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、ロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、固定子と、前記回転子鉄心と前記固定子を収納するフレームとを有する回転電機本体に隣接して設けられ、前記回転電機本体からの本体側電線と外部からの外部側電線とを接続する回転電機の端子箱であって、前記本体側電線を接続する本体側接続部と前記外部側電線を接続する外部側接続部、および前記本体側接続部と前記外部側接続部とを接続する接続導体部とを有する収納導体と、前記収納導体を収納し、取り扱い側開口、および前記フレームと連通して前記本体側電線が貫通する連通開口を有する箱本体部と、前記取り扱い側開口を塞ぐように前記箱本体部に複数のボルトにより着脱可能に形成された開口閉止部を有する蓋と、を具備し、前記箱本体部に前記蓋が取り付けられた状態においては、前記ボルトは前記蓋から見て前記フレーム側に当該ボルトの頭部がある方向に配されており、前記開口閉止部において、前記箱本体部の取り扱い側開口に対向する範囲より外側の部分には、周方向に互いに間隔をおいて前記ボルトが螺合するナットが取り付けられており、前記箱本体部は、前記取り扱い側開口の平面に沿って縁部から外側に広がるように形成され、前記ナットのそれぞれに対向する位置に前記ボルトが貫通するための貫通孔が形成され、前記ボルトと前記ナットにより挟み込まれる対向部を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、端子箱内の相間短絡発生時にも、その危険な影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る回転電機の端子箱の構成を示す縦断面図である。
図3】第1の実施形態に係る回転電機の端子箱の構成を示す図2のIII-III線矢視縦断面図である。
図4】第1の実施形態に係る回転電機の端子箱における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。
図5】回転電機の端子箱の従来例における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。
図6】第2の実施形態に係る回転電機の端子箱における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。
図7】第3の実施形態に係る回転電機の端子箱における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る回転電機および回転電機の端子箱について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す斜視図である。回転電機200は、回転電機本体80および端子箱100を有する。回転電機本体80は、回転子10、固定子20、軸受30、およびフレーム40を有する。
【0016】
回転子10は、水平方向に延びるロータシャフト11と、ロータシャフト11の径方向外側に取り付けられた回転子鉄心12を有する。固定子20は、回転子鉄心12の径方向外側に配された固定子鉄心21と、図示を省略するが、固定子鉄心21の径方向内側表面近傍を貫通する複数の固定子巻線を有する。固定子巻線は、固定子鉄心21の軸方向外側で、互いに接続され、あるいは、フレーム側から見ると本体側電線22(図2)に相当する固定子巻線の外部電線に接続されている。
【0017】
フレーム40は、固定子20および回転子鉄心12を収納する。フレーム40は、たとえば、6面を板に囲まれた直方体状の箱状である。フレーム40の軸方向の両端の面には、そのほぼ中央に、回転子10をフレーム40内に挿入する、あるいはフレーム40から引き出すための開口41が形成されている。
【0018】
ロータシャフト11は、フレーム40の両端面の軸方向位置において、それぞれ軸受30により、回転可能に支持されている。軸受30は、開口41を塞ぐように取り付けられた軸受ブラケット45により静止支持されている。
【0019】
端子箱100は、フレーム40の側部に取り付けられている。なお、特に冷却器(図示せず)を備える回転電機の場合には、冷却器をフレームの上方に搭載する場合が多いため、端子箱100は、フレーム40の側部外側に設けられる場合が多い。ただし、端子箱100の取り付け位置は、これには限定されない。取り付けスペースがあれば、たとえば、フレーム40の上部外側に設けられていてもよい。あるいは、フレーム40に隣接していれば、フレーム40とは独立して設置されていてもよい。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る回転電機の端子箱の構成を示す縦断面図である。また、図3は、図2のIII-III線矢視縦断面図である。端子箱100は、箱本体部110、蓋120、および収納導体130を有する。収納導体130は、箱本体部110および蓋120とで形成される空間内に収納された本体側接続部131および外部側接続部132を有している。すなわち、端子箱100は、本体側接続部131および外部側接続部132などの接続端子部分を内蔵している。
【0021】
箱本体部110は、一方の面が開放され、5つの面を囲まれた箱形の収納部111と、開放された取り扱い側開口114が形成する面に沿って、取り扱い側開口114から拡がる部分である対向部112を有する。取り扱い側開口114に対向する面には、連通開口113が形成されている。連通開口113は、フレーム40に設けられた連絡通路42に接続している。
【0022】
蓋120は、取り扱い側開口114を塞ぐように取り付けられている。なお、図2で、A部として示している部分、すなわち箱本体部110と蓋120とが接続する部分の具体的な構成については、後に図4を引用しながら説明する。
【0023】
フレーム40、軸受ブラケット45、および端子箱100は、互いに相まって閉空間40aを形成する。閉空間40aを構成するフレーム40内の空間と、端子箱100の内部空間100aとは、連絡通路42および連通開口113を介して、互いに連通している。
【0024】
収納導体130は、収納部111内に収納された本体側接続部131、外部側接続部132、および本体側接続部131と外部側接続部132とを電気的に接続する接続導体部133を有する。本体側接続部131には、回転電機本体80側の電線であり、固定子巻線に接続する本体側電線22が接続される。外部側接続部132には、外部側電線140が接続される。外部側電線140は、端子箱100の内部空間100a内まで引き込まれて接続される。この結果、回転電機本体80側の電線である本体側電線22と、外部側電線133とが、電気的に接続される。
【0025】
図4は、第1の実施形態に係る回転電機の端子箱における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。図4は、図2のA部の詳細を示している。なお、以下、蓋120については、箱本体部110に面する側を内側と呼び、その反対側を外側と呼ぶこととする。
【0026】
蓋120は、開口閉止部121および折れ曲がり部122を有する。取り扱い側開口114を閉止する開口閉止部121は、取り扱い側開口114に対向する範囲より、所定の範囲だけ外側に拡がっている。ここで、所定の範囲は、箱本体部110との接続のためのナット126およびシールのためのシール部材127が取り付けられるのに必要な範囲である。
【0027】
開口閉止部121は、矩形の板状の部分であり、箱本体部110の取り扱い側開口114により形成される面に平行に、箱本体部110の対向部112の外側まで広がっている。折れ曲がり部122は、開口閉止部121の端部から、箱本体部110の取り扱い側開口114の周辺部分を包むように、蓋120の内側方向に折れ曲がり、開口閉止部121に垂直に延びている。
【0028】
なお、折れ曲がり部122は、対向部112が延びる方向の外側を遮るように形成されていれば、開口閉止部121に垂直でなくても、例えば、より小さい曲げ角度でもよい。また、箱本体部110の取り扱い側開口114により形成される面が平面状ではなく、曲面を形成している場合には、開口閉止部121は、平板状ではなく、この曲面に対応した形状を有するものとする。
【0029】
箱本体部110と蓋120とは、取り扱い側開口114の外側において、互いに間隔をおいて配された複数のボルト116とナット126によって接続されている。ナット126は、箱本体部110の取り扱い側開口114に対向する範囲より外側の部分に、周方向に互いに間隔をおいてたとえば、溶接あるいはろう付けにより、それぞれ、蓋120の開口閉止部121の内側に取り付けられ、固定されている。
【0030】
対向部112の、ナット126が取り付けられている位置に対応する部分には、ボルト116が貫通するボルト貫通孔112aが形成されている。ボルト116は、ワッシャ117を介して、蓋120の内側方向から箱本体部110の対向部112に形成されたボルト貫通孔112aを貫通し、蓋120に取り付けられたナット126と螺合している。
【0031】
なお、図4では、開口閉止部121の、ナット126が取り付けられている部分には貫通孔が無い場合を示しているが、貫通孔を設けて、ボルト116が貫通することでもよい。また、この場合、開口閉止部121の貫通部にめネジを形成してもよい。あるいは、開口閉止部121の貫通部にめネジを形成し、このめネジとボルト116とのの螺合で、箱本体部110と蓋120との結合強度が十分に確保できるのであれば、ナット126を設けない場合でもよい。
【0032】
蓋120の折れ曲がり部122は、その端部、すなわち、回転電機本体80に最も近い部分が、ボルト116の頭部116aよりも内側、すなわち、回転電機本体80に近い位置まで延びている。
【0033】
蓋120の開口閉止部121の、取り扱い側開口114に対向する部分とナット126が取り付けられている部分との間には、周方向に連続してシール部材127が取り付けられている。シール部材127は、たとえば、シリコンゴムなどの弾性体を用いることができる。ボルト116を締め付けることにより、シール部材127が対向部112と開口閉止部121とに挟まれて、蓋120が取り扱い側開口114をリークタイトに閉止するようにシール部を形成する。
【0034】
図5は、回転電機の端子箱の従来例における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。従来例においては、箱本体部110aの対向部112にナット52が取り付けられ、また、対向部112にはボルト貫通孔112aが形成されている。蓋120aの開口閉止部121にもボルト孔が形成されている。ボルト51は、蓋120aの外側からワッシャ53を介して開口閉止部121のボルト孔を貫通し、ナット52と螺合し、さらに、対向部112のボルト貫通孔を貫通する。
【0035】
このように、従来例においては、ボルト51の頭が、蓋120aの外側に配されている。箱本体部110aの内部で相間短絡が発生した場合は、内部空間100a内の温度上昇により内部空間100a内の圧力が上昇する。この圧力上昇により、蓋120aを箱本体部110aから引き離そうとする荷重が、蓋120aに負荷され、この結果、ボルト51に軸方向の引張荷重が負荷される。ナット52と螺合する部分では、荷重が分散されるため、蓋120aに掛かる荷重による応力は、特にボルト51の頭部51aの付け根部が大きいと考えられる。
【0036】
ボルト51の頭部51aの付け根部の応力が許容値を超えれば、この部分で破断が生じる。その結果、蓋120aが飛散するとともに、ボルト51の頭部51aも外側に飛散することになる。この場合、特にボルト51の頭部51aについては、飛散速度が大きく、極めて危険である。
【0037】
一方、本実施形態における端子箱100においては、ボルト116の頭部116aが蓋120の内側に配されている。このため、万が一、頭部116aが飛散しても、外側ではなく、回転電機本体80の方向に飛散する。
【0038】
また、折れ曲がり部122は、単に蓋120を取り付ける際のガイド、および作業中の蓋120の落下防止の機能のみではなく、ボルト116の頭部116aの、ボルト軸に垂直な方向への飛散に対する障壁としての機能も有しており、さらに、ボルト116の飛散による危険な影響を低減している。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る回転電機200の端子箱100によれば、端子箱100内の相間短絡発生時にも、その危険な影響を低減することができる。
【0040】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る回転電機の端子箱における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。
【0041】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態においては、蓋120が折り返し部123を有しており、また、箱本体部110と蓋120との間に遮へい板124が設けられている。その他の点については、第1の実施形態と同様である。
【0042】
折り返し部123は、蓋120の4つの縁のうち1つないし3つに設けられている。なお、全ての縁に折り返し部123が形成されていると、蓋120を装着できないので、少なくとも1つの縁は、折り返し部123および折り曲げ部122が形成されていないことが必要である。
【0043】
折り返し部123は、折れ曲がり部122に接続し、折れ曲がり部122に直角に、箱本体部110の対向部112を包むように、かつ対向部112に平行に形成されている。なお、図6では、折り返し部123と開口閉止部121との間に折れ曲がり部122が存在する場合を示しているが、これに限らない。たとえば、開口閉止部121からU字形に曲げられて、U字部分を介して折り返し部123が形成されていてもよい。
【0044】
折り返し部123には、ボルト116を取り付ける位置にボルト116の挿入および締付作業のために、開口123aが形成されている。それぞれのボルト116を締め付けた後に、遮へい板124が、挿入される。遮へい板124は、図示しないが、挿入された後に、蓋120あるいは箱本体部110に取り付けられる。
【0045】
なお、遮へい板124は、ボルト116の頭部116aが開口123aを経由して飛散することを防止するためのものである。開口123aは、ボルト116からみて回転電機本体80の方向にあるので、この飛散方向に飛散しても問題ない場合には、遮へい板124は必ずしも設けなくともよい。
【0046】
本実施形態による端子箱100においては、取り扱い側開口114の形成する平面に沿って、蓋120が移動可能に形成されている。すなわち、蓋120を箱本体部110に取付ける際には、折り返し部123が形成されていない縁部側を先頭にして、蓋120の開口閉止部121と折り返し部123との間に、箱本体部110の対向部112を挟むようにして、蓋120が移動可能に形成されている。このため、蓋120をスライドさせることにより取り付け位置まで移動する。その後、ボルト116で蓋120を箱本体部110に締め付けた後に、遮へい板124を、折り返し部123が形成されていない縁部側からスライドさせて挿入する。
【0047】
なお、遮へい板124を設ける代わりに、開口123aに着脱可能な閉止部、たとえばゴムキャップ(図示しない)を装着することでもよい。
【0048】
以上のように構成された本実施形態に係る端子箱100においては、万が一、相間短絡が発生した場合でも、ボルト116は、回転電機本体80側にも飛散せず、対向部112と遮へい板124あるいは閉止部との間に残存する。また、折り返し部123が蓋120の飛散を抑制する機能を有する。このように、端子箱100内の相間短絡発生時にも、その危険な影響をさらに低減することができる。
【0049】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に係る回転電機の端子箱における筐体と蓋との接続部分の構造を示す部分縦断面図である。本第3の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態においては、蓋120が折り返し部123を有している。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0050】
折り返し部123は、蓋120の4つの縁部のうち少なくとも一つを除く範囲に設けられている。折り返し部123は、開口閉止部121からU字形に曲げられて、U字部125を介して、開口閉止部121に平行になるように形成されている。折り返し部123は、ナット126との間に、箱本体部110の対向部112が挿入可能な間隙を有するように形成されている。折り返し部123には、ナット126に対向する部分に、ボルト116が貫通するためのボルト貫通孔123bが形成されている。
【0051】
本実施形態による端子箱100においては、蓋120を箱本体部110に取付ける際には、折り返し部123が形成されていない縁部側を先頭にして、蓋120の開口閉止部121と折り返し部123との間に、箱本体部110の対向部112を挟むようにして、蓋120をスライドさせることにより取り付け位置まで移動する。その後、ボルト116で蓋120を箱本体部110に締め付ける。
【0052】
以上のように構成された本実施形態に係る端子箱100においては、万が一、相間短絡が発生した場合に蓋120を箱本体部110から引き離そうとする荷重は、複数のボルト116とともに、折り返し部123にも伝達される。このように荷重が分散することによって、ボルト116に負荷される荷重が低減され、蓋120およびボルト116の飛散の可能性が低減する。
【0053】
このように、端子箱100内の相間短絡発生時にも、その危険な影響をさらに低減することができる。
【0054】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0055】
たとえば、実施形態では、ロータシャフト11が水平方向に延びる水平型の回転電機を例にとって示しているが、これに限定されない。たとえば、ロータシャフトが鉛直方向に延びている立型の回転電機についても適用可能である。
【0056】
また、実施形態では、端子箱が直方体形状である場合を例にとって示したが、これに限定されず、直方体以外の形状、たとえば、三角柱や五角柱のような形状であってもよい。
【0057】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
10…回転子、11…ロータシャフト、12…回転子鉄心、20…固定子、21…固定子鉄心、22…本体側電線、30…軸受、40…フレーム、40a…閉空間、41…開口、42…連絡通路、45…軸受ブラケット、51…ボルト、51a…頭部、52…ナット、53…ワッシャ、80…回転電機本体、100…端子箱、100a…内部空間、110、110a…箱本体部、111…収納部、112…対向部、112a…ボルト貫通孔、113…連通開口、114…取り扱い側開口、116…ボルト、116a…頭部、117…ワッシャ、120、120a…蓋、121…開口閉止部、122…折れ曲がり部、123…折り返し部、123a…開口、123b…ボルト貫通孔、124…遮へい板、125…U字部、126…ナット、127…シール部材、130…収納導体、131…本体側接続部、132…外部側接続部、133…接続導体部、140…外部側電線、200…回転電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7