(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】使用済み紙おむつ処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20220831BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20220831BHJP
【FI】
B09B3/70
B09B101:67
(21)【出願番号】P 2020007638
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】片岡 秀直
(72)【発明者】
【氏名】日野 直文
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-104929(JP,A)
【文献】特開2003-019169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙おむつを処理する処理槽に薬剤と前記使用済み紙おむつを投入し、
前記処理槽の外槽内でかつ内槽より下方に配置された処理液生成領域に水を供給し、
前記処理液生成領域にて、前記薬剤と前記水を混合して処理液を生成し、
前記処理液生成領域に、さらに水を供給して前記処理液の水位を上げることで、前記内槽の下方から前記内槽内に前記処理液を供給し、
前記処理槽の前記内槽を回転させることにより撹拌処理を行い、
前記撹拌処理を行った後、前記処理槽から前記処理液を排出し、
前記処理液が排出された前記処理槽の前記内槽を回転させることにより前記処理槽で処理された使用済み紙おむつを脱水し、
前記処理槽で処理されて脱水した前記使用済み紙おむつを前記処理槽の下方から取り出す使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項2】
前記処理液生成領域に前記水を供給する前に、前記使用済み紙おむつを処理する前記処理槽に前記薬剤が投入されたことを検知する、請求項1に記載の使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項3】
使用済み紙おむつを処理する処理槽と、
前記処理槽は、前記使用済み紙おむつを収納可能でかつ側面および底面の両方に前記紙おむつより小さい複数の貫通穴を有する円筒形状の内槽と、前記内槽の側面と底面とを囲う外槽とを有し、
前記処理槽に前記内槽と前記外槽の間から水を供給する液供給部と、
前記処理槽か
ら処理液を排出する液排出部と、
前記処理槽で処理した紙おむつを前記処理槽の下方で取り出す取出部とを備える使用済み紙おむつ処理装置であって、
前記内槽を回転可能な回転駆動部を備え、
前記内槽の下端部の前記底面又は前記底面近傍の前記側面を液体導入部とし、
前記外槽内でかつ前記内槽の下方に、前記液供給部から供給された前記水と薬剤とを混合することで処理液を生成する処理液生成領域の空間を備えて、前記処理液生成領域に、水を供給して前記処理液の水位を上げることで、前記内槽の前記液体導入部から前記内槽内に前記処理液を供給可能とし、
前記処理槽で処理した前記紙おむつを前記処理槽の底部から前記取出部に排出する開閉部とを備える、使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項4】
前記処理槽に前記薬剤が投入されたことを検知する薬剤投入検知部をさらに備えて、
前記薬剤投入検知部で前記処理槽に前記薬剤が投入されたことを検知したのち、前記液供給部で、前記処理槽に前記内槽と前記外槽の間から前記水を供給する、請求項3に記載の使用済み紙おむつ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつに含まれる高吸水性ポリマーから水分を離水させることで、減量する使用済み紙おむつ処理方法および装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、排泄物に含まれる水分を吸収した高吸水性ポリマーと2価の金属イオンなどを含む薬品とを混合することで、高吸水性ポリマーが持つ吸水機能を低下させて水分を離水させ、使用済み紙おむつが含む水分量を低下させた後に、脱水することで重量を減量する使用済み紙おむつ処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
使用済み紙おむつは、大量の水分を含むために、介護施設など、多量の使用済み紙おむつを扱う場合に、その重量が課題になることがある。紙おむつには、高吸水性ポリマーが含まれており、大量の水分を保持することが可能になっている。また、一度、高吸水性ポリマーに吸水された水分は、そのままでは離水することが難しいものになっている。
【0004】
そこで、水に浸漬した使用済み紙おむつを、水溶物と不溶物とに分離解体し、分離解体された水溶物を汚水とともに下水処理施設側へ排出することで、紙おむつを減量化及び減容化する使用済み紙おむつ処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
図9に、特許文献1に記載されている従来の使用済み紙おむつ処理装置101の例を示している。
図9の(a)は、従来の使用済み紙おむつ処理装置101の正面図である。
図9の(b)は、処理装置101の側面図を示す。
図9において、102は開閉蓋、106は外胴、107は回転ドラム、111は貫通孔、112は攪拌突起、116はモータ、133は水供給管、135、137は排出管、136は開閉弁である。
【0006】
次に、従来の使用済み紙おむつ処理装置101の動作を説明する。
【0007】
使用済み紙おむつは、開閉蓋102から回転ドラム107に投入される。
【0008】
次に、水供給管133から外胴106内に所定量(すなわち回転ドラム107の下部が浸る量)の水が給水された後、モータ116を始動して回転ドラム107を回転させて、回転ドラム107内に水流を発生させる。これにより、回転ドラム107内の紙おむつを水に浸漬した状態で分離解体することが可能となる。このとき、攪拌突起112があることで、紙おむつの攪拌処理が促され、分離解体処理が促進されるようになっている。分離解体された紙おむつは、貫通孔111を介して排出管135、137を通り、下水処理施設に連通された下水管に排水される。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の使用済み紙おむつ処理装置101では、その処理工程において紙おむつを分離解体し、解体された紙おむつの繊維成分を下水処理施設に対して、直接、排出するため、下水処理施設での排水処理において解体された紙おむつの繊維成分を処理するための負荷が増大してしまう課題が発生する。そのため、下水管に排出する際には、解体された紙おむつの繊維成分をフィルタ除去するなどの装置を導入する必要がある。
【0010】
そこで、別の処理方式として、2価の金属イオンなどを含む薬品と反応させることで、高吸水性ポリマーから水分を離水させて、紙おむつを減量する使用済み紙おむつ処理方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
図10に特許文献2に記載されている従来の使用済み紙おむつ処理装置201の例を示す。
図10において、202は石灰、203は次亜塩素、204は処理槽、205は使用済み紙おむつ、206は水、207は液体、208は排水である。
【0012】
続いて、従来の使用済み紙おむつ処理装置201の動作を説明する。
【0013】
まず、
図10の(a)に示すように、処理槽204に、石灰202、次亜塩素203及び使用済み紙おむつ205を投入する。
【0014】
次に、
図10の(b)及び(c)に示すように、処理槽204内で攪拌可能になるように水206を投入した後、所定の時間攪拌する。この状態で攪拌を続けると、石灰の中に含まれるCaイオンが紙おむつの高吸水性ポリマーと反応し、高吸水性ポリマーが含有していた水分が離水される。
【0015】
最後に、
図10の(d)に示すように、処理槽204内の液体207を処理槽204の外に排出させるとともに脱水し、排水208を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2001-104929号公報
【文献】特開2010-84031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献2に記載の使用済み紙おむつ処理装置201では、処理槽204に、石灰202、次亜塩素203、使用済み紙おむつ205を投入した後、水206を処理槽204上部より投入するが、このとき、水206が石灰202と混合されずに、直接、使用済み紙おむつ205に接触してしまうことになり、使用済み紙おむつ205の内部の高吸水性ポリマーに多量の水分が吸収されて大きく膨張してしまう。その場合、攪拌処理を行っても、使用済み紙おむつ205が膨張しているために、攪拌動作がうまく行えなくなる。結果として、高吸水性ポリマーが含有していた水分を離水するための攪拌時間を十分に長く実施しなければならなくなり、処理時間が長くなってしまう課題が発生する。また、処理槽204内に一度に投入できる使用済み紙おむつ205の数が限定される課題も発生する。
【0018】
本発明は、このような点に鑑み、使用済み紙おむつを2価の金属イオンなどを含む薬品と一緒に攪拌して、高吸水性ポリマーが持つ吸水機能を低下させることで水分を離水させた後に、脱水処理を行うことで使用済み紙おむつが含む水分量を低下させて重量を減量する使用済み紙おむつ処理方法および装置において、紙おむつを分離解体することなく減量処理し、処理後の使用済み紙おむつの取り出し動作までの一連の動作を処理装置内で実現することで、下水処理場の排水処理の負担を増大させることなく、介護施設などでの作業者の作業負担及び衛生上の負担を軽減した使用済み紙おむつ処理方法および装置を提供することを目的とする。
【0019】
言い換えれば、本発明は、作業者の手を煩わせることなく、使用済み紙おむつの減量処理及び排出容器への格納という一連の動作が可能である使用済み紙おむつ処理方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様にかかる使用済み紙おむつ処理方法は、使用済み紙おむつを処理する処理槽に薬剤と前記使用済み紙おむつを投入し、
前記処理槽の外槽内でかつ内槽より下方に配置された処理液生成領域に水を供給し、
前記処理液生成領域にて、前記薬剤と前記水を混合して処理液を生成し、
前記処理液生成領域に、さらに水を供給して前記処理液の水位を上げることで、前記内槽の下方から前記内槽内に前記処理液を供給し、
前記処理槽の前記内槽を回転させることにより撹拌処理を行い、
前記撹拌処理を行った後、前記処理槽から前記処理液を排出し、
前記処理液が排出された前記処理槽の前記内槽を回転させることにより前記処理槽で処理された使用済み紙おむつを脱水し、
前記処理槽で処理されて脱水した前記使用済み紙おむつを前記処理槽の下方から取り出す。
【0021】
本発明の別の態様にかかる使用済み紙おむつ処理装置は、使用済み紙おむつを処理する処理槽と、
前記処理槽は、前記使用済み紙おむつを収納可能でかつ側面および底面の両方に前記紙おむつより小さい複数の貫通穴を有する円筒形状の内槽と、前記内槽の側面と底面とを囲う外槽とを有し、
前記処理槽に前記内槽と前記外槽の間から水を供給する液供給部と、
前記処理槽から前記処理液を排出する液排出部と、
前記処理槽で処理した紙おむつを前記処理槽の下方で取り出す取出部とを備える使用済み紙おむつ処理装置であって、
前記内槽を回転可能な回転駆動部を備え、
前記内槽の下端部の前記底面又は前記底面近傍の前記側面を液体導入部とし、
前記外槽内でかつ前記内槽の下方に、前記液供給部から供給された前記水と薬剤とを混合することで処理液を生成する処理液生成領域の空間を備えて、前記処理液生成領域に、水を供給して前記処理液の水位を上げることで、前記内槽の前記液体導入部から前記内槽内に前記処理液を供給可能とし、
前記処理槽で処理した前記紙おむつを前記処理槽の底部から前記取出部に排出する開閉部とを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明の前記態様にかかる使用済み紙おむつ処理方法および装置によれば、処理槽に使用済み紙おむつが投入された後に、水を処理槽に投入する場合でも、外槽内でかつ内槽の下方に配置された処理液生成領域で薬剤と水が混合されて処理液が生成された後に、処理液が内槽に下方から供給されるために、薬剤を含まない水が、直接、使用済み紙おむつに接触して膨張することなく、使用済み紙おむつ処理を実施することができる。この結果、高吸水性ポリマーが含有していた水分を、効率的に離水することが可能であり、作業者の作業負担及び衛生上の負担を軽減することが可能である。すなわち、作業者の手を煩わせることなく、使用済み紙おむつの減量処理及び排出容器への格納という一連の動作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理装置の構成を示す側面断面図
【
図1B】本発明の実施形態1の変形例にかかる使用済み紙おむつ処理装置の構成を示す側面断面図
【
図2】本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理方法を示すフローチャート
【
図3】本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理装置において、処理槽内に使用済み紙おむつが配置され、処理液生成領域で処理液を生成している状態を示す側面断面図
【
図4】本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理装置において、処理槽内に使用済み紙おむつが配置され、攪拌処理を行っている状態を示す側面断面図
【
図5】本発明の実施形態1において、内槽を高速回転させて、脱水動作を行っている状態を示す側面断面図
【
図6】本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理装置において、処理槽底部を開き、処理後の使用済み紙おむつの取り出し動作を行っている状態を示す側面断面図
【
図7】本発明の実施形態2にかかる使用済み紙おむつ処理方法を示すフローチャート
【
図8】本発明の実施形態2にかかる使用済み紙おむつ処理装置の構成を示す側面断面図
【
図9】従来の使用済み紙おむつ処理装置液体処理装置の断面図
【
図10】従来の使用済み紙おむつ処理装置液体処理装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る使用済み紙おむつ処理装置1を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0025】
[全体構成]
まず、使用済み紙おむつ処理装置1の全体構成について説明する。
図1Aは、本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理装置1の構成を示す側面断面図である。
【0026】
使用済み紙おむつ処理装置1は、少なくとも、処理槽20と、液供給部10と、液排出部9と、取出部6とを備えている。より詳しくは、使用済み紙おむつ処理装置1は、さらに、投入扉2と、装置本体3と、格納容器7と、廃棄用袋8と、制御装置11と、回転駆動部70とを備えている。
【0027】
使用済み紙おむつを処理する処理槽20は、装置本体3内の上部に配置され、例えば円形の筒状の外槽4、及び、使用済み紙おむつ18を収納可能でかつ例えば円形の筒状の内槽5で構成されている。内槽5は外槽4内に配置されている。
【0028】
内槽5の上部は、使用済み紙おむつ18を入れやすくするため広い口部として構成する上側の円錐部5bとし、中間部は、上側の円錐部5bに続く円筒部5cとし、下部は、円筒部5cより底面に向かうに従い先すぼまりの円錐状のテーパー部5dとするように構成されている。
【0029】
外槽4の上部から中間部は、円筒部4cとし、下部は、円錐状のテーパー部5dと同様に、円筒部4cより底面に向かうに従い先すぼまりの円錐状のテーパー部4dとして、外槽4で内槽5の側面と底面とを囲うように構成されている。
【0030】
内槽5の底面よりも下方の外槽4内には、高吸水性ポリマーに含有される水分を離水するための薬剤と、水とを混合し、処理液19を生成するための、処理液生成領域73のための下向き先すぼまりの円錐台形状の空間がある。
【0031】
投入扉2は、装置本体3の上部に開閉可能に取り付けられている。使用済み紙おむつ18は、投入扉2を開けて、内槽5内に投入される。
【0032】
外槽4は、水を溜めることができる容器になっている。液供給部10から水を処理槽20内に導入することで貯水することが可能である。
【0033】
外槽4の内部には、側面および底面の両方に複数の貫通穴5aをそれぞれ持つ円筒形状の内槽5が配置されている。内槽5の貫通穴付きの底面又は底面近傍の貫通穴付きの側面は、後述するように、内槽5への液体導入のための液体導入部5gとして機能する。
【0034】
液供給部10は、外槽4内でかつ外槽4と内槽5との間の隙間に向けられて取り付けられており、供給した水が内槽5を通過せずに、処理液生成領域73に、直接、貯水できるようになっている。薬剤は、液供給部10から処理槽20内に導入してもよいし、内槽5から導入してもよい。
【0035】
処理液生成領域73の最低限の大きさとしては、薬剤が十分に溶解するだけの液量を確保できる空間であれば十分である。薬剤が塩化カルシウムであれば、0℃でも、59.5 g/100 mL(0℃)の溶解率がある。一例として、50g~60gの塩化カルシウムを投入しているとき、余裕度3としても、処理液生成領域73の最低限の空間の大きさとしては、300ml程度あれば良いと思われる。
【0036】
このような構成を取ることで、薬剤を導入した後に、液供給部10から水を供給すると、処理液生成領域73で水と薬剤とが混合されて処理液19が生成される。さらに、液供給部10から水の供給を続けると、処理槽20内の処理液19の水位(すなわち、液位)が上がっていくために、処理液19を内槽5の下端部の液体導入部5gから内槽5内に供給することができる。言い換えれば、液体を内槽5内に供給するとき、内槽5の上端開口ではなく、内槽5の下端部、すなわち、内槽5の貫通穴付きの底面又は底面近傍の貫通穴付きの側面から、内槽5内に、水ではなく、処理液19を供給している。これにより、処理液19は薬剤を含んでいるために、使用済み紙おむつ18に含まれる高吸水性ポリマーが水で膨張することはない。すなわち、処理液19ではない水は、内槽5の上端開口から内槽5内の使用済み紙おむつ18に直接供給せず、使用済み紙おむつ18に含まれる高吸水性ポリマーが水で膨張しないようにしている。
【0037】
このように、使用済み紙おむつ18に含まれる高吸水性ポリマーが水で膨張しないようにするため、内槽5に液体を供給するときは、内槽5の下端部のみから液体を供給するようにしている。言わば、内槽5の下端部が液体導入部5gとして構成されており、内槽5には、この下端部以外からは液体が導入されないようにしている。
【0038】
また、液排出部9を用いて、外槽4内の液体を外部に排出する。
【0039】
また、内槽5は、回転駆動部70に回転可能に接続されている。回転駆動部70は、制御装置11の制御の下に攪拌処理用と脱水処理用とにそれぞれ回転可能に駆動される。回転駆動部70は、一例として、内槽5の回転軸沿いに内槽5に固定されたシャフト13と、シャフト13と係合してシャフト13を回転させるベルト14と、ベルト14が係合したギヤが固定された回転軸を有するモータ12とで構成されている。この結果、制御装置11の制御の下にモータ12の駆動で内槽5を外槽4に対して回転することが可能である。内槽5の回転軸は、一例として、鉛直方向沿いに配置することができる。
【0040】
外槽底部15と内槽底部17とは、外槽4と内槽5とに対して、それぞれ、開閉部の一例としてのヒンジ部71,72により、回動軸周りにそれぞれ開閉することが可能になっている。処理槽の下方、すなわち、外槽底部15と内槽底部17との下方の装置本体3内の下部には、取出部6が配置されている。内槽底部17は、内槽5の貫通穴付きの底面を構成している。
【0041】
処理後の紙おむつは、取出部6から取り出すことが可能になっている。取出部6の内部には、廃棄用袋8が取り付けられた格納容器7が配置されている。廃棄用袋8は内槽底部17の直下に配置されている。格納容器7の開口を内槽5の底部の開口よりも大きくすることにより、処理後の紙おむつが格納容器7の廃棄用袋8内に円滑に落下させることができる。
【0042】
外槽4及び内槽5の下部は、
図1Bに示すように、テーパー部4d,5dを付けなくても良い。この
図1Bの例では、内槽5の底面よりも下方の外槽4内の処理液生成領域73のための空間は、下向き先すぼまりの円錐台形状ではなく、円柱形状の空間となっている。これに対して、
図1Aのようにテーパー部4d,5dを付けることで、外槽底部15と内槽底部17との直径をそれぞれ小さくすることが可能であり、ヒンジ部71,72により、ヒンジ部71,72の回動軸周りに開閉する際に必要になる空間を小さくすることが出来る。結果として、格納容器7に蓄えられる処理後のおむつを多くすることが出来る。
【0043】
[動作]
次に、使用済み紙おむつ処理装置1の処理動作について説明する。
【0044】
【0045】
図2のステップS1において、使用済み紙おむつ18に含まれる高吸水性ポリマーの吸水機能を低下させる薬剤と、使用済み紙おむつ18とを処理槽20に投入する。
【0046】
次に、
図2のステップS2において、液供給部10からの水の処理液生成領域73への供給を開始し、外槽5内の薬剤と水とを処理液生成領域73で混合することで、処理液生成領域73で処理液19を生成する。
【0047】
次に、
図2のステップS3において、さらに水を外槽5内の処理液生成領域73に供給すると、外槽5内の処理液19の水位が上がり、外槽5内の処理液19が、内槽5の下方の液体導入部5gから貫通穴5aを介して、内槽5の内部に注入される。
【0048】
その後、
図2のステップS4において、処理槽20内に所定量の処理液19が貯水されるまで、内槽5の内部への注入を続ける。
【0049】
所定量に関して、おむつ18が浸かる量であることが重要である。所定量の一例として、少なくとも内槽5の半分程度、又は、内槽5内のおむつ18がほとんど浸かる程度などとすることができる。内槽5の半分以上入れないと、容積的にもったいない(装置が大きくなってしまう)ので、液量としても半分よりは多くすることが好ましい。
【0050】
所定量の処理液19か否かは、内槽5の内側に配置された、水位計73で検知される。検知情報は制御装置11に入力される。
【0051】
処理槽20内に所定量の処理液19が貯水された後、
図2のステップS5において、処理槽20の内槽5をモータ12で回転させることで、攪拌処理を行う。
【0052】
攪拌処理が完了すると、
図2のステップS6において、排水を行い、処理槽20の内槽5をモータ12で高速回転させることで脱水処理を行う。
【0053】
最後に、
図2のステップS7で処理槽20から処理済のおむつ18の取り出しを行う。
【0054】
次に、各処理動作の詳細について説明する。
【0055】
以下では、説明の便宜上、内槽5内に薬剤と使用済み紙おむつ18とを投入したのち、液供給部10から水74を処理槽20の外槽4内に供給し、薬剤と水とを処理液生成領域73で混合して処理液19を生成している状態(
図3)と、攪拌処理を行っている状態(
図4)と、内槽5を高速回転させて脱水処理を行っている状態(
図5)と、外槽底部15及び内槽底部17を開き、処理後の使用済み紙おむつ18の取出部6への取り出し動作を行っている状態(
図6)とを分けて説明する。
【0056】
まず、
図3において、使用済み紙おむつ18は、内槽5に投入されている。また、薬剤は、液供給部10、もしくは内槽5から処理槽20内に投入される(ステップS1参照)。液供給部10から薬剤が投入された場合は、液供給部10が内槽5と外槽4との間に配置されているため、薬剤が処理液生成領域73に直接供給される。内槽5から薬剤が投入された場合には、内槽5の底面にある貫通穴5aを介して処理液生成領域73に薬剤が供給される。
【0057】
この状態で、液供給部10から水74が供給されると、内槽5の下方に配置された処理液生成領域73で水と薬剤とが混合されて処理液19が生成される(ステップS2参照)。さらに、水の供給を続けると、処理槽20内の処理液19の水位が上がっていくために、処理液19が内槽5の内部に内槽5の液体導入部5gから供給される(ステップS3参照)。内槽5の内部に処理液19が供給されると、使用済み紙おむつ18と処理液19とが接触し、処理液19は薬剤を含んでいるために、使用済み紙おむつ18に含まれる高吸水性ポリマーが膨張することはない。
【0058】
このようにして、処理槽20内に所定量の処理液19を貯水する(ステップS4参照)。高吸水性ポリマーの吸水機能を低下させる薬剤としては、一例として、金属イオンを含むものが好ましく、特に2価の金属を含む、塩化カルシウム、又は、石灰などを用いることが可能である。
【0059】
次に、
図4において、制御装置11の制御の下にモータ12が回転制御されて、内槽5を回転させることで、攪拌処理を実行する(ステップS5参照)。具体的には、モータ12が回転することで、ベルト14を介してシャフト13が回転し、内槽5が外槽4に対して回転する。これにより、処理液19と使用済み紙おむつ18とが攪拌される。この攪拌処理において、内槽5は回転し続けるのではなく、一定時間の回転後、停止、一定時間の逆回転、停止を繰り返すか、又は、一定時間の回転後、停止、再度同一方向で一定時間の回転を繰り返すほうが、攪拌が進展しやすく好ましい。回転数としては、例えば40~160rpmが好ましく、処理時間としては、例えば3分~30分程度が好ましい。なお、最適な回転数は、円筒形状の内槽5の直径に依存しており、ここで述べる最適値は、例えば直径400mm程度の場合の値である。最適な処理時間は例えば15分である。
【0060】
攪拌処理を続けると、使用済み紙おむつ18の高吸水性ポリマーと薬剤中の例えば2価の金属イオンとが反応することで、高吸水性ポリマーに含有されていた水分が、使用済み紙おむつ18から離水し、離水した水が処理液19と混合される。ここでの攪拌処理は、処理液19と使用済み紙おむつ18の高吸水性ポリマーとが反応すればよく、攪拌処理によって、使用済み紙おむつ18が分離解体しない様に、制御装置11の制御の下に緩やかに攪拌することが重要である。
【0061】
薬剤が混合された処理液19が処理槽20に貯水した状態で、使用済み紙おむつ18を投入することでも、使用済み紙おむつ18が内槽5内で水を吸収することにより膨張することを防止することが可能である。しかし、処理液19が処理槽20に貯水されるのを待ってから、使用済み紙おむつ18投入しなければならないので、使い勝手が悪くなる課題が発生する。
【0062】
また、予め、水と薬剤とを混合した処理液19を別途作成しておき、作成した処理液19を、直接、処理槽20に貯留する構成にすることでも、使用済み紙おむつ18が内槽5内で水を吸収することにより膨張することを防止することが可能であるが、処理液19を作成するタンクなどを別途、用意する必要があり、装置が複雑化、大型化してしまう課題が発生する。
【0063】
次に、使用済み紙おむつ18の脱水処理について、
図5を用いて説明する(ステップS6参照)。液排出部9から、外槽4に溜まっている処理液等の液体を排出した後、内槽5を外槽4に対して高速に回転させることで、使用済み紙おむつ18を脱水することができ、使用済み紙おむつ18を減量することができる。具体的には、回転数の例としては、800~1300rpm程度の回転数で脱水することが好ましい。
【0064】
次に、使用済み紙おむつ18の取り出しを、
図6を用いて説明する(ステップS7参照)。脱水が終わった状態で、ヒンジ部71,72を介して外槽底部15及び内槽底部17を開口すると、使用済み紙おむつ18は、格納容器7に設置された廃棄用袋8内に落下する。使用済み紙おむつ18を排出する場合には、装置本体3に対して取出部6を横方向にスライドさせるなどして装置本体3から取り出し、格納容器7から廃棄用袋8を取り出すだけで排出が可能となる。
【0065】
以上、説明した本実施形態1によれば、処理槽20に使用済み紙おむつ18が投入された後に、水を処理槽20に投入する場合でも、外槽4内でかつ内槽5の下方に配置された処理液生成領域73で薬剤と水とが混合されて処理液19が生成された後に、処理液19が内槽5に下方から供給されるために、薬剤を含まない水が、直接、使用済み紙おむつ18に接触して膨張することがなく、使用済み紙おむつ処理を実施することができる。この結果、高吸水性ポリマーが含有していた水分を、効率的に離水することが可能である。
【0066】
また、金属イオンなどを含む薬剤で減量処理した使用済み紙おむつ18は、処理槽20内で分離解体されることなく繊維部分が残っているため、下水管などに液体を排出する際に、使用済み紙おむつ18の繊維成分をフィルタ除去するなどの装置を導入する必要はない。
【0067】
また、処理後の使用済み紙おむつ18を内槽上方から作業者が直接取り出す必要がなく、作業者の手を煩わせることなく廃棄用袋8に格納することが可能であり、作業者の作業負担及び衛生上の負担を軽減することが出来る。
【0068】
よって、作業者の手を煩わせることなく、使用済み紙おむつ18の減量処理及び排出容器への格納という一連の動作が可能である。
【0069】
なお、本実施形態1では、格納容器7に廃棄用の廃棄用袋8を設置しているが、廃棄用袋8を設置せず、直接、格納容器7に格納するようにしても良い。
【0070】
また、内槽5を回転させるのに、ベルト14を用いることなく、モータ12の回転軸と内槽5とを直結して、直接、モータ12で内槽5を回転駆動することも可能である。
【0071】
[実施形態2]
本発明の実施形態2の全体の処理フローを
図7に示す。また、
図8にその装置構成を示す。
【0072】
図7のステップD1の薬剤の投入を検知したかを確認する判断がステップS1とステップS2との間に追加されている点が、実施形態1との違いである。
【0073】
図8において、通過センサー付き薬剤投入口75が、内槽5の上端開口と外槽4の上端開口との間に取り付けられている点が、実施形態1との装置構成上の違いである。通過センサー付き薬剤投入口75は、薬剤投入検知部の一例としての通過センサー75aにより、薬剤投入口75から薬剤が内槽5と外槽4との隙間に投入されて通過したことを検知できる構成になっている。通過センサー75aは、一例として、赤外線などで薬剤投入口75を物体が通過したことを検出する。
【0074】
通過センサー75aでの通過検知信号は制御装置11に入力される。
【0075】
液供給部10は、例えば水道管の開閉弁10a、又は水タンクに接続されたポンプなどで構成されている。これらの開閉弁10a又はポンプは、制御装置11により、通過センサー75aからの通過検知信号が制御装置11に入力されない限り、開閉又は駆動されないように構成している。
【0076】
従って、通過検知信号が制御装置11に入力されるまで液供給部10から水供給は開始されない。通過検知信号が制御装置11に入力されたのち、制御装置11の制御の下に、液供給部10が開閉又は駆動されて、液供給部10から水が処理槽20内に供給される。
【0077】
実施形態2の構成によれば、薬剤が投入されない限り、液供給部10からの水の供給が開始されないため、薬剤の投入忘れを防ぐことが可能となる。もし薬剤を入れ忘れてしまって水を供給してしまうと、使用済み紙おむつ18が大量の水を吸水して膨張し、そのまま攪拌処理を続けると、使用済み紙おむつ18が破れて粉砕され、粉砕物が排出されてしまう。
【0078】
以上、説明した本実施形態2によれば、薬剤の投入を忘れてしまった場合でも、液供給部10からの水の供給開始ができないため、紙おむつが分離解体されて排出されてしまうことを予防することが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0080】
例えば、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の前記態様にかかる使用済み紙おむつ処理方法および装置は、排泄物に含まれる水分を吸収した高吸水性ポリマーと2価の金属イオンなどを含む薬品を混合することで、高吸水性ポリマーが持つ吸水機能を低下させることで水分を離水させ、使用済み紙おむつが含む水分量を低下させることで重量を減量することが可能である。また、本発明の前記態様にかかる使用済み紙おむつ処理方法および装置は、処理後の使用済み紙おむつを作業者が直接、内槽から取り出す必要がないため、作業者の作業負担及び衛生面での負担を低減することが可能であり、紙おむつを多量に使う高齢者施設、又は、保育施設での作業改善等に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 使用済み紙おむつ処理装置
2 投入扉
3 装置本体
4 外槽
4c 円筒部
4d テーパー部
5 内槽
5a 貫通穴
5b 円錐部
5c 円筒部
5d テーパー部
5g 液体導入部
6 取出部
7 格納容器
8 廃棄用袋
9 液排出部
10 液供給部
10a 開閉弁
11 制御装置
12 モータ
13 シャフト
14 ベルト
15 外槽底部
17 内槽底部
18 使用済み紙おむつ
19 処理液
20 処理槽
70 回転駆動部
71,72 ヒンジ部
73 処理液生成領域
74 水
75 通過センサー付き薬剤投入口
75a 通過センサー
101 使用済み紙おむつ処理装置
102 開閉蓋
107 回転ドラム
111 貫通孔
112 攪拌突起
116 モータ
133 水供給管
135 排出管
136 開閉弁
137 排出管
201 使用済み紙おむつ処理装置
202 石灰
203 次亜塩素
204 処理槽
205 使用済み紙おむつ
206 水
207 液体
208 排水