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特許7132982電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20220831BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/1253 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20220831BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20220831BHJP
【FI】
H01M4/86 U
H01M8/1213
H01M8/02
H01M8/1253
H01M4/90 X
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020126955
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024399
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 達也
(72)【発明者】
【氏名】石田 暁
(72)【発明者】
【氏名】竹内 瑞絵
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-170792(JP,A)
【文献】特開2019-075197(JP,A)
【文献】特開2017-123240(JP,A)
【文献】特開2018-133165(JP,A)
【文献】特開2016-081719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、
前記電解質層に対して第1の方向の一方側に配置された空気極と、
前記電解質層に対して前記第1の方向の他方側に配置された燃料極と、
前記電解質層と前記空気極との間に配置され、前記電解質層に含まれる元素と前記空気極に含まれる元素との反応を抑制する特定材料を所定の占有率で含有する反応防止層と、
を備える電気化学反応単セルにおいて、
前記空気極は、
前記反応防止層に隣接し、前記特定材料からなる複数の粒子を前記所定の占有率より小さい占有率で含有する第1の層と、
前記第1の層に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された第2の層と、
を有し、
前記第1の方向に沿った前記第1の層の少なくとも1つの断面において、前記第1の層は、前記反応防止層を構成する前記特定材料から離間している前記粒子について、前記第1の方向の最大長さをD1とし、前記第1の方向に直交する第2の方向の最大長さをD2としたとき、前記第1の方向の長さが3μmであり前記第2の方向の長さが5μmである領域であって、前記領域に含まれる各前記粒子のD2が1.5μm以下であり、かつ、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対する2≦D2/D1≦3を満たす前記粒子の個数の割合が20%以上であるような領域を含む、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項2】
Zrと、Y、ScまたはCaの少なくとも1つと、を含む電解質層と、
前記電解質層に対して第1の方向の一方側に配置され、SrとCoとを含む空気極と、
前記電解質層に対して前記第1の方向の他方側に配置された燃料極と、
前記電解質層と前記空気極との間に配置され、GdとSmとの少なくとも一方と、Ceと、を含む特定材料を所定の占有率で含有する反応防止層と、
を備える電気化学反応単セルにおいて、
前記空気極は、
前記反応防止層に隣接し、前記特定材料からなる複数の粒子を前記所定の占有率より小さい占有率で含有する第1の層と、
前記第1の層に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された第2の層と、
を有し、
前記第1の方向に沿った前記第1の層の少なくとも1つの断面において、前記第1の層は、前記反応防止層を構成する前記特定材料から離間している前記粒子について、前記第1の方向の最大長さをD1とし、前記第1の方向に直交する第2の方向の最大長さをD2としたとき、前記第1の方向の長さが3μmであり前記第2の方向の長さが5μmである領域であって、前記領域に含まれる各前記粒子のD2が1.5μm以下であり、かつ、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対する2≦D2/D1≦3を満たす前記粒子の個数の割合が20%以上であるような領域を含む、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記領域は、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対する2≦D2/D1≦3を満たす前記粒子の個数の割合が30%以上であるような領域である、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記領域は、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対するD2/D1<1を満たす前記粒子の個数の割合が10%以下であるような領域である、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向に沿った前記第1の層の3つの断面であって、前記第1の方向視で前記空気極を前記第1の方向に垂直な方向に4等分する3つの断面において、前記第1の層は前記領域を含む、
ことを特徴とする、電気化学反応単セル。
【請求項6】
前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数の電気化学反応単セルの少なくとも1つは、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルである、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応単セルに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)は、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層に対して所定の方向(以下、「第1の方向」という。)の一方側に配置された空気極と、電解質層に対して上記第1の方向の他方側に配置された燃料極とを備える。電解質層は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)またはCSZ(カルシア安定化ジルコニア)を含むように構成されている。また、空気極は、例えば、ABOで表されるペロブスカイト型酸化物であるLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)を含むように構成されている。
【0003】
単セルにおいて、空気極に含まれる元素(例えば、Sr(ストロンチウム))が電解質層側に拡散し、この拡散した元素が電解質層に含まれる元素(例えば、Zr(ジルコニウム))と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されると、単セルの電気抵抗が増大して発電性能が低下するおそれがある。そのため、単セルにおける空気極と電解質層との間に、上記反応を抑制する材料(例えば、GDC(ガドリニウムドープセリア)、SDC(サマリウムドープセリア))を含有する反応防止層が設けられることがある。
【0004】
また、空気極が、反応防止層に隣接する第1の層(「活性層」とも呼ばれる。)と、第1の層に対して反応防止層とは反対側に配置された第2の層(「拡散層」とも呼ばれる。)と、を含むように構成される場合がある。この場合において、反応防止層と空気極の第1の層との間の熱膨張差を小さくするために、空気極の第1の層に反応防止層の構成材料を添加することがある。
【0005】
従来、このような構成の単セルにおいて、各部材間の熱膨張差に起因する応力や他の部材(例えば、インターコネクタ)からの押圧力による応力等を原因として単セルの表面に発生したクラックが、空気極の第2の層内を上記第1の方向に進展することを抑制するために、空気極の第2の層において、上記第1の方向に直交する第2の方向に長い扁平形状の粒子の割合を高くする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-123240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術では、空気極を構成する各層の内、反応防止層に隣接する第1の層(すなわち、主として空気極の反応場として機能する層)におけるクラックの進展を抑制することができず、該クラックの進展に起因して単セルの電気的性能が低下するおそれがある。
【0008】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応単セルにも共通の課題である。
【0009】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本明細書に開示される電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層に対して第1の方向の一方側に配置された空気極と、前記電解質層に対して前記第1の方向の他方側に配置された燃料極と、前記電解質層と前記空気極との間に配置され、前記電解質層に含まれる元素と前記空気極に含まれる元素との反応を抑制する特定材料を所定の占有率で含有する反応防止層と、を備える電気化学反応単セルにおいて、前記空気極は、前記反応防止層に隣接し、前記特定材料からなる複数の粒子を前記所定の占有率より小さい占有率で含有する第1の層と、前記第1の層に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された第2の層と、を有し、前記第1の方向に沿った前記第1の層の少なくとも1つの断面において、前記第1の層は、前記反応防止層を構成する前記特定材料から離間している前記粒子について、前記第1の方向の最大長さをD1とし、前記第1の方向に直交する第2の方向の最大長さをD2としたとき、前記第1の方向の長さが3μmであり前記第2の方向の長さが5μmである領域であって、前記領域に含まれる各前記粒子のD2が1.5μm以下であり、かつ、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対する2≦D2/D1≦3を満たす前記粒子の個数の割合が20%以上であるような領域を含む。
【0012】
このように、本電気化学反応単セルでは、空気極を構成する層の内、反応防止層に隣接する第1の層(すなわち、主として反応場として機能する層)が、反応防止層の構成材料である特定材料からなる複数の粒子を含有している。また、本電気化学反応単セルは、第1の方向に沿った空気極の第1の層の少なくとも1つの断面において、第1の層が特定の領域を含むように構成されている。この特定の領域は、該領域に含まれる上記特定材料の各粒子の第2の方向の最大長さD2が1.5μm以下であり、かつ、該領域に含まれる上記特定材料の粒子の個数に対する、2≦D2/D1≦3(D1は粒子の第1の方向の最大長さ)を満たす粒子の個数の割合が20%以上であるような領域である。すなわち、該領域は、第2の方向にある程度長い扁平形状の粒子がある程度多く(20%以上)存在する領域である。第2の方向にある程度長い扁平形状の粒子は、第1の方向へのクラックの進展を止めるストッパとして効果的に機能する。また、各粒子の第2の方向の最大長さD2が1.5μm以下であると、各粒子の存在によって空気極の第1の層における電子の移動経路が長くなることを抑制することができる。本電気化学反応単セルは、空気極の第1の層の少なくとも1つの断面において、第1の層が上記特定の領域を含むように構成されているため、第1の層における電子の流れの阻害を抑制しつつ、第1の層における第1の方向へのクラックの進展を効果的に抑制することができ、該クラックの進展に伴う電気化学反応単セルの電気的性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0013】
(2)本明細書に開示される電気化学反応単セルは、Zrと、Y、ScまたはCaの少なくとも1つと、を含む電解質層と、前記電解質層に対して第1の方向の一方側に配置され、SrとCoとを含む空気極と、前記電解質層に対して前記第1の方向の他方側に配置された燃料極と、前記電解質層と前記空気極との間に配置され、GdとSmとの少なくとも一方と、Ceと、を含む特定材料を所定の占有率で含有する反応防止層と、を備える電気化学反応単セルにおいて、前記空気極は、前記反応防止層に隣接し、前記特定材料からなる複数の粒子を前記所定の占有率より小さい占有率で含有する第1の層と、前記第1の層に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された第2の層と、を有し、前記第1の方向に沿った前記第1の層の少なくとも1つの断面において、前記第1の層は、前記反応防止層を構成する前記特定材料から離間している前記粒子について、前記第1の方向の最大長さをD1とし、前記第1の方向に直交する第2の方向の最大長さをD2としたとき、前記第1の方向の長さが3μmであり前記第2の方向の長さが5μmである領域であって、前記領域に含まれる各前記粒子のD2が1.5μm以下であり、かつ、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対する2≦D2/D1≦3を満たす前記粒子の個数の割合が20%以上であるような領域を含む。
【0014】
このように、本電気化学反応単セルでは、空気極を構成する層の内、反応防止層に隣接する第1の層(すなわち、主として反応場として機能する層)が、反応防止層の構成材料である特定材料からなる複数の粒子を含有している。また、本電気化学反応単セルは、第1の方向に沿った空気極の第1の層の少なくとも1つの断面において、第1の層が特定の領域を含むように構成されている。この特定の領域は、該領域に含まれる上記特定材料の各粒子の第2の方向の最大長さD2が1.5μm以下であり、かつ、該領域に含まれる上記特定材料の粒子の個数に対する、2≦D2/D1≦3(D1は粒子の第1の方向の最大長さ)を満たす粒子の個数の割合が20%以上であるような領域である。すなわち、該領域は、第2の方向にある程度長い扁平形状の粒子がある程度多く(20%以上)存在する領域である。第2の方向にある程度長い扁平形状の粒子は、第1の方向へのクラックの進展を止めるストッパとして効果的に機能する。また、各粒子の第2の方向の最大長さD2が1.5μm以下であると、各粒子の存在によって空気極の第1の層における電子の移動経路が長くなることを抑制することができる。本電気化学反応単セルは、空気極の第1の層の少なくとも1つの断面において、第1の層が上記特定の領域を含むように構成されているため、第1の層における電子の流れの阻害を抑制しつつ、第1の層における第1の方向へのクラックの進展を効果的に抑制することができ、該クラックの進展に伴う電気化学反応単セルの電気的性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0015】
(3)上記電気化学反応単セルにおいて、前記領域は、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対する2≦D2/D1≦3を満たす前記粒子の個数の割合が30%以上であるような領域である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、第1の方向へのクラックの進展を止めるストッパとして効果的に機能する粒子(第2の方向にある程度長い扁平形状の粒子)が、さらに多く(30%以上)存在するため、第1の層における第1の方向へのクラックの進展をさらに効果的に抑制することができ、該クラックの進展に伴う電気化学反応単セルの電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0016】
(4)上記電気化学反応単セルにおいて、前記領域は、前記領域に含まれる前記粒子の個数に対するD2/D1<1を満たす前記粒子の個数の割合が10%以下であるような領域である構成としてもよい。本電気化学反応単セルでは、空気極を構成する層の内、反応防止層に隣接する第1の層(すなわち、主として反応場として機能する層)に、反応防止層の構成材料である特定材料からなる粒子であって、第1の方向に長い扁平形状の粒子(D2/D1<1を満たす粒子)が、多く存在しない(10%以下である)。このような第1の方向に長い扁平形状の粒子は、第1の方向へのクラックの進展を止めるストッパとして効果的に機能しない。また、空気極の第1の層において、このような第1の方向に長い扁平形状の粒子が存在する箇所では、第1の方向における電気抵抗が大きくなる。本電気化学反応単セルでは、空気極の第1の層に、このような第1の方向に長い扁平形状の粒子が多く存在しないため、空気極の第1の層における電気抵抗の増大を効果的に抑制しつつ、第1の層における第1の方向へのクラックの進展をさらに効果的に抑制することができ、該クラックの進展に伴う電気化学反応単セルの電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0017】
(5)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向に沿った前記第1の層の3つの断面であって、前記第1の方向視で前記空気極を前記第1の方向に垂直な方向に4等分する3つの断面において、前記第1の層は前記領域を含む構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、空気極の第1の層の全体にわたって第1の方向へのクラックの進展を効果的に抑制することができる、該クラックの進展に伴う電気化学反応単セルの電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図6】単セル110における空気極114周辺の詳細構成を示す説明図
図7】空気極114の活性層210内に存在する特定材料粒子Pの構成を模式的に示す説明図
図8】空気極114の活性層210における特定材料粒子Pの形状とクラックCRの進展との関係を示す説明図
図9】性能評価結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0021】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0022】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0023】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0024】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0025】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0026】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0027】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0028】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0029】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0030】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0031】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112に対して上側に配置された空気極(カソード)114と、電解質層112に対して下側に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層180とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116によって単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層180)を支持する燃料極支持形の単セルである。上側は、特許請求の範囲における第1の方向の一方側に相当し、下側は、特許請求の範囲における第1の方向の他方側に相当する。
【0032】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材である。本実施形態では、電解質層112は、固体酸化物であるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)またはCSZ(カルシア安定化ジルコニア)を含むように構成されている。すなわち、電解質層112は、Zrと、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)またはCa(カルシウム)の少なくとも1つと、を含有している。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0033】
空気極114は、略矩形の平板形状部材である。本実施形態では、空気極114は、ABOで表されるペロブスカイト型酸化物であるLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)を含むように構成されている。すなわち、空気極114は、SrとCo(コバルト)とを含有している。空気極114の構成について、後に詳述する。
【0034】
燃料極116は、略矩形の平板形状部材である。燃料極116は、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。
【0035】
反応防止層180は、略矩形の平板形状部材である。反応防止層180は、電解質層に含まれる元素と空気極114に含まれる元素との反応を抑制する特定材料を含有する。本実施形態では、このような特定材料として、GDC(ガドリニウムドープセリア)またはSDC(サマリウムドープセリア)が用いられる。すなわち、反応防止層180は、Gd(ガドリニウム)とSm(サマリウム)との少なくとも一方と、Ce(セリウム)と、を含む特定材料を含有している。反応防止層180の存在により、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることが抑制される。なお、反応防止層180における電解質層112との境界付近に、反応防止層180と電解質層112との相互拡散によって生成される固溶体層が形成されていてもよい。
【0036】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0037】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0038】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0039】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0040】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されてもよい。また、空気極側集電体134やインターコネクタ150の少なくとも一部の表面が、導電性のコートによって覆われていてもよい。また、空気極114と空気極側集電体134との間に、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0041】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0042】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0043】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0044】
A-3.空気極114の詳細構成:
次に、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各単セル110における空気極114の詳細構成について説明する。図6は、単セル110における空気極114周辺の詳細構成を示す説明図である。図6には、反応防止層180を挟んで電解質層112の一部と空気極114の一部とが含まれる領域(図4の領域X1)における単セル110のXZ断面構成が模式的に示されている。
【0045】
図6に示すように、本実施形態では、空気極114は、反応防止層180に隣接する活性層210と、活性層210に対して上側に配置された拡散層220とから構成されている。空気極114の活性層210は、主として、酸化剤ガスOGに含まれる酸素のイオン化反応の場として機能する層である。活性層210は、電子伝導性及びイオン伝導性を有するABOで表されるペロブスカイト型酸化物(本実施形態では、LSCF)を含むと共に、反応防止層180との間の熱膨張差を小さくするために、反応防止層180に含まれる上記特定材料(本実施形態では、GDC)からなる複数の粒子を含んでいる。なお、活性層210における上記特定材料の占有率は、反応防止層180における上記特定材料の占有率より小さい。ここで、活性層210または反応防止層180における上記特定材料の占有率とは、Z軸方向に沿った活性層210または反応防止層180の断面における上記特定材料の面積占有率を意味する。活性層210の厚さは、例えば、5μm~20μm程度である。活性層210は、特許請求の範囲における第1の層に相当する。
【0046】
空気極114の拡散層220は、主として、空気室166から供給された酸化剤ガスOGを拡散させると共に、発電反応により得られた電気を集電する場として機能する層である。拡散層220は、ABOで表されるペロブスカイト型酸化物(本実施形態では、LSCF)を含んでいる。一方、拡散層220は、活性層210と異なり、上記特定材料を含んでいない。拡散層220の厚さは、例えば、50μm~100μm程度である。拡散層220は、特許請求の範囲における第2の層に相当する。
【0047】
本実施形態の単セル110は、空気極114の活性層210に含まれる上記特定材料(本実施形態では、GDC)からなる粒子(以下、「特定材料粒子P」という。)の形状に特徴がある。図7は、空気極114の活性層210内に存在する特定材料粒子Pの構成を模式的に示す説明図である。図7に示すように、空気極114の活性層210には、特定材料粒子Pと、ペロブスカイト型酸化物211(本実施形態では、LSCF)の粒子と、気孔213とが含まれている。なお、図7では、便宜上、ペロブスカイト型酸化物211の各粒子の図示を省略している。
【0048】
空気極114の活性層210に含まれる各特定材料粒子Pは、粒子のアスペクト比により、第1種粒子P1と、第2種粒子P2とに分けられる。ここで、粒子のアスペクト比は、上下方向の粒子の最大長さD1(以下、「上下方向最大長さD1」という。)に対する、上下方向に直交する方向(例えばX軸方向であり、以下、「面方向」という。)の粒子の最大長さD2(以下、「面方向最大長さD2」という。)の比率(=D2/D1)である。
【0049】
具体的には、第1種粒子P1は、特定材料粒子Pの内、アスペクト比が1以上である(数式:D2/D1≧1を満たす)粒子である。すなわち、第1種粒子P1は、面方向に長い扁平形状の(または、面方向の長さと上下方向の長さが同じである形状の)粒子である。なお、第1種粒子P1の内、アスペクト比が2以上、3以下である(数式:2≦D2/D1≦3を満たす)粒子を、特定第1種粒子P1Xという。すなわち、特定第1種粒子P1Xは、面方向にある程度長い扁平形状の粒子である。一方、第2種粒子P2は、特定材料粒子Pの内、アスペクト比が1未満である(数式:D2/D1<1を満たす)粒子である。すなわち、第2種粒子P2は、上下方向に長い扁平形状の粒子である。
【0050】
本実施形態の単セル110は、Z軸方向に沿った活性層210の少なくとも1つの断面(例えば、図7に示すXZ断面)において、活性層210が特定領域を含むように構成されている。ここで、特定領域とは、上下方向の長さが3μmであり、面方向の長さが5μmである領域(縦3μm×横5μmの領域)であって、特定材料粒子P(ただし、反応防止層180を構成する上記特定材料から離間しているもの)について、該領域に含まれる各特定材料粒子Pの面方向最大長さD2が1.5μm以下であり、かつ、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する特定第1種粒子P1Xの個数の割合が20%以上であるような領域である。すなわち、特定領域は、各特定材料粒子Pの面方向最大長さD2がある程度小さく、かつ、面方向にある程度長い扁平形状の粒子である特定第1種粒子P1Xがある程度以上多く存在する領域である。
【0051】
なお、Z軸方向に沿った空気極114の活性層210の断面における上記特定領域の有無は、以下のように特定することができる。
(1)FIB-SEMにより該断面の画像を取得する。
(2)該画像中の縦3μm×横5μmの領域を任意に設定する。ただし、該領域は反応防止層180から離間した領域とする。
(3)該領域において、画像の色により、特定材料粒子Pを識別する。
(4)該領域中のすべての特定材料粒子Pを対象として、特定材料粒子Pに外接する矩形(2辺が上下方向に平行であり、2辺が面方向に平行である矩形)を設定し、該矩形の上下方向に平行な辺の長さを上下方向最大長さD1とし、該矩形の面方向に平行な辺の長さを面方向最大長さD2とする。
(5)各特定材料粒子Pについてのアスペクト比:D2/D1を算出する。
(6)該領域に含まれるすべての特定材料粒子Pの個数と、特定第1種粒子P1X(数式:2≦D2/D1≦3を満たす粒子)の個数とをカウントする。
(7)該領域が、上記特定領域の要件(該領域に含まれる各特定材料粒子Pの面方向最大長さD2が1.5μm以下であり、かつ、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する特定第1種粒子P1Xの個数の割合が20%以上である)を満たすか否かを判定する。
【0052】
このように、本実施形態の単セル110の空気極114は、反応防止層180に隣接する活性層210と、活性層210に対して上側に配置された拡散層220とを有する。活性層210は、上記特定材料からなる複数の特定材料粒子Pを、反応防止層180における上記特定材料の占有率より小さい占有率で含有する。また、本実施形態の単セル110は、Z軸方向に沿った活性層210の少なくとも1つの断面において、活性層210が上記特定領域を含むように構成されている。そのため、本実施形態の単セル110によれば、以下に説明するように、活性層210におけるクラックの進展を効果的に抑制することができ、該クラックの進展に起因する単セル110の電気的性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0053】
図8は、空気極114の活性層210における特定材料粒子Pの形状とクラックCRの進展との関係を示す説明図である。図8のA欄には、比較例における空気極114の活性層210の断面構成が模式的に示されている。図8のA欄に示す断面では、活性層210に、特定材料粒子Pの内、アスペクト比D2/D1が1未満である第2種粒子P2(すなわち、上下方向に長い扁平形状の粒子)が多く存在している。上下方向に長い扁平形状の第2種粒子P2は、上下方向へのクラックCRの進展を止めるストッパとして効果的に機能しない。そのため、活性層210に第2種粒子P2が多く存在していると、活性層210における上下方向へのクラックCRの進展を効果的に抑制することができず、該クラックCRの進展に起因する単セル110の電気的性能の低下を効果的に抑制することができない。
【0054】
また、図8のB欄には、他の比較例における空気極114の活性層210の断面構成が模式的に示されている。図8のB欄に示す断面では、活性層210に、面方向最大長さD2が非常に長い(具体的には、1.5μmを超える)特定材料粒子Pが存在している。特定材料粒子Pは、反応防止層の形成材料である上記特定材料(本実施形態では、GDC)からなる粒子であることから、電子の移動経路EPを構成しない。そのため、活性層210に面方向最大長さD2が1.5μmを超える特定材料粒子Pが存在していると、該特定材料粒子Pを迂回するために、活性層210における電子の移動経路EPが長くなり、その結果、単セル110の電気的性能が低下する。
【0055】
一方、図8のC欄には、本実施形態における活性層210の断面に含まれる特定領域の一部が模式的に示されている。本実施形態の単セル110は、Z軸方向に沿った空気極114の活性層210の少なくとも1つの断面において、活性層210が上記特定領域を含むように構成されている。上記特定領域は、各特定材料粒子Pの面方向最大長さD2がある程度小さく(1.5μm以下であり)、かつ、面方向にある程度長い扁平形状の粒子である特定第1種粒子P1Xがある程度以上(20%以上)存在する領域である。面方向にある程度長い扁平形状の粒子である特定第1種粒子P1Xは、上下方向へのクラックCRの進展を止めるストッパとして効果的に機能する。また、各特定材料粒子Pの面方向最大長さD2が1.5μm以下であると、各特定材料粒子Pの存在によって活性層210における電子の移動経路EPが長くなることを抑制することができる。本実施形態の単セル110は、空気極114の活性層210の少なくとも1つの断面において、活性層210が上記特定領域を含むように構成されているため、活性層210における電子の流れの阻害を抑制しつつ、活性層210における上下方向へのクラックCRの進展を効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に伴う単セル110の電気的性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0056】
なお、一般に、空気極114の活性層210に含まれる特定材料粒子P(本実施形態では、GDC)とペロブスカイト型酸化物211の粒子(本実施形態では、LSCF)とでは、特定材料粒子Pの方が、粒径が大きい。そのため、活性層210に含まれる粒子の内、ペロブスカイト型酸化物211の粒子には、活性層210におけるクラックCRの進展を止めるストッパとしての機能は期待できない。本実施形態の単セル110では、活性層210に含まれる粒子の内、特定材料粒子PがクラックCRの進行を止めるストッパとして機能し得ることに着目し、上述したように特定材料粒子Pのアスペクト比等を調整することにより、活性層210におけるクラックCRの進展を効果的に抑制することを実現したものである。
【0057】
なお、本実施形態において、Z軸方向に沿った活性層210の少なくとも1つの断面に含まれる上記特定領域は、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する特定第1種粒子P1Xの個数の割合が30%以上であるような領域であることがより好ましい。すなわち、特定領域は、面方向にある程度長い扁平形状の粒子である特定第1種粒子P1Xが、さらに多く存在する領域であることがより好ましい。このような構成とすれば、活性層210において、上下方向へのクラックCRの進展を止めるストッパとして効果的に機能する特定第1種粒子P1Xがさらに多く(30%以上)存在するため、活性層210における上下方向へのクラックCRの進展をさらに効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に伴う単セル110の電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態において、Z軸方向に沿った活性層210の少なくとも1つの断面に含まれる上記特定領域は、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する第2種粒子P2の個数の割合が10%以下である領域であることがより好ましい。すなわち、特定領域は、上下方向に長い扁平形状の粒子である第2種粒子P2がある程度少ない領域であることがより好ましい。活性層210において、上下方向に長い扁平形状の粒子である第2種粒子P2は、上下方向へのクラックCRの進展を止めるストッパとして効果的に機能しない。また、活性層210における特定材料粒子P(第2種粒子P2を含む)は、反応防止層180との間の熱膨張差を小さくするために添加されるものであり、活性層210における電子の伝導を担うものではない。そのため、活性層210において、上下方向に長い扁平形状の粒子である第2種粒子P2が存在する箇所では、上下方向における電気抵抗が大きくなる。上記のように、上記特定領域は、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する第2種粒子P2の個数の割合が10%以下である領域であるとすれば、活性層210に第2種粒子P2が多く存在しないこととなるため、活性層210における電気抵抗の増大を効果的に抑制しつつ、活性層210における上下方向へのクラックCRの進展を効果的にさらに抑制することができ、該クラックCRの進展に伴う単セル110の電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0059】
なお、空気極114の活性層210が、面方向において満遍なく、上下方向へのクラックCRの進展を効果的に抑制することができる構成であると、活性層210の全体にわたって上下方向へのクラックCRの進展を効果的に抑制することができるため、さらに好ましいと言える。そのため、例えば、Z軸に沿った活性層210の3つの断面であって、Z方向視で空気極114を面方向に4等分する3つの断面において、活性層210が上記特定領域を含むように構成すれば、さらに好ましいと言える。
【0060】
A-4.単セル110の製造方法:
本実施形態の単セル110の製造方法は、例えば以下の通りである。
【0061】
(電解質層112と燃料極116との積層体の形成)
YSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるジオクチルフタレート(DOP)と、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、例えば厚さ約10μmの電解質層用グリーンシートを得る。また、NiOの粉末をNi重量に換算して55質量部となるように秤量し、YSZの粉末45質量部と混合して混合粉末を得る。この混合粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、例えば厚さ270μmの燃料極用グリーンシートを得る。電解質層用グリーンシートと燃料極用グリーンシートとを貼り付けて、乾燥させる。その後、例えば1400℃にて焼成を行うことによって、電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
【0062】
(反応防止層180の形成)
GDC粉末に、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを加えて混合し、粘度を調整して反応防止層用ペーストを調製する。得られた反応防止層用ペーストを、上述した電解質層112と燃料極116との積層体における電解質層112の表面にスクリーン印刷によって塗布し、例えば1200℃で焼成を行う。これにより、反応防止層180が形成され、反応防止層180と電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
【0063】
(空気極114の形成)
粉砕したLSCF粉末と、GDC粉末と、アルミナ粉末と、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを混合し、粘度を調整して、空気極活性層用ペーストを調製する。得られた空気極活性層用ペーストを、上述した反応防止層180と電解質層112と燃料極116との積層体における反応防止層180の表面にスクリーン印刷によって塗布し、乾燥させる。このとき、例えば、GDC粉末としてある程度扁平な粒子の粉末を用い、かつ、スクリーン印刷の際に圧力をかけて印刷を行うこと、および/または、スクリーン印刷後のレベリングの時間を増やすことにより、Z軸方向に沿った活性層210の少なくとも1つの断面において、活性層210が上記特定領域を含むような構成を実現することができる。また、LSCF粉末と、アルミナ粉末と、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを混合し、粘度を調整して、空気極拡散層用ペーストを調製する。得られた空気極拡散層用ペーストを、上述した空気極活性層ペーストの上にスクリーン印刷によって塗布し、乾燥させる。その後、所定の温度で焼成を行う。焼成により、空気極114の活性層210および拡散層220が形成される。以上の工程により、上述した構成の単セル110が製造される。
【0064】
A-5.性能評価:
複数の単セル110のサンプルを用いて性能評価を行った。図9は、性能評価結果を示す説明図である。
【0065】
図9に示すように、性能評価には4つの単セル110のサンプル(SA1~SA4)が用いられた。各サンプルは、空気極114の活性層210の特性、具体的には、活性層210の1つの断面内の1つの領域(縦3μm×横5μmの領域)における第1種粒子P1(特定第1種粒子P1Xを含む)および第2種粒子P2の個数の割合が互いに異なっている。なお、各サンプルでは、空気極114の活性層210の上記断面内の上記領域に含まれる各特定材料粒子Pの面方向最大長さD2は、すべて1.5μm以下であった。
【0066】
また、各サンプルを用いて、温度700℃、電流密度0.55A/cmで、4000時間の発電運転を行い、運転試験後における電圧を測定した。運転試験後の電圧が0.90未満である場合に不合格(×)と判定し、運転試験後の電圧が0.90以上、0.93未満である場合に良好(〇)と判定し、運転試験後の電圧が0.93以上である場合に優秀(◎)と判定した。
【0067】
サンプルSA4では、運転試験後の電圧が0.90未満であったため、不合格(×)と判定された。サンプルSA4では、空気極114の活性層210において、特定第1種粒子P1X(特定材料粒子Pの内、面方向にある程度長い扁平形状であるために上下方向へのクラックCRの進展を止めるストッパとして効果的に機能する粒子)の割合が、比較的低い(具体的には、20%未満である)。そのため、サンプルSA4では、運転試験中に活性層210におけるクラックCRの進展を効果的に抑制することができず、該クラックCRの進展に起因して単セル110の電気的性能が低下したものと考えられる。
【0068】
これに対し、サンプルSA1~SA3では、運転試験後の電圧が0.90以上であったため、良好(〇)または優秀(◎)と判定された。サンプルSA1~SA3では、空気極114の活性層210において、特定第1種粒子P1X(特定材料粒子Pの内、面方向にある程度長い扁平形状であるために上下方向へのクラックCRの進展を止めるストッパとして効果的に機能する粒子)の割合が、比較的高い(具体的には、20%以上である)。そのため、サンプルSA1~SA3では、運転試験中に活性層210におけるクラックCRの進展を効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に起因する単セル110の電気的性能の低下を効果的に抑制することができたものと考えられる。
【0069】
なお、良好(〇)または優秀(◎)と判定されたサンプルSA1~SA3の内、サンプルSA3では、運転試験後の電圧が0.93以上であったため、優秀(◎)と判定された。サンプルSA3では、空気極114の活性層210において、特定第1種粒子P1Xの割合が特に高い(具体的には、30%以上である)。そのため、サンプルSA3では、サンプルSA1,SA2と比較して、運転試験中に活性層210におけるクラックCRの進展をさらに効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に起因する単セル110の電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができたものと考えられる。
【0070】
また、良好(〇)と判定されたンプルSA1,SA2の内、サンプルSA2では、サンプルSA1と比較して運転試験後の電圧が高かった。サンプルSA2では、空気極114の活性層210において、第2種粒子P2(特定材料粒子Pの内、上下方向に長い扁平形状であるために上下方向へのクラックCRの進展を止めるストッパとして効果的に機能しない粒子)の割合が、比較的低い(具体的には、10%以下である)。そのため、サンプルSA2では、サンプルSA1と比較して、運転試験中に活性層210におけるクラックCRの進展をさらに効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に起因する単セル110の電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができたものと考えられる。
【0071】
以上の性能評価結果から、Z軸方向に沿った空気極114の活性層210の少なくとも1つの断面において、活性層210が上記特定領域(上下方向の長さが3μmであり、面方向の長さが5μmである領域であって、該領域に含まれる各特定材料粒子Pの面方向最大長さD2が1.5μm以下であり、かつ、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する特定第1種粒子P1X(数式:2≦D2/D1≦3を満たす粒子)の個数の割合が20%以上であるような領域)を含むように構成されていれば、活性層210における上下方向へのクラックCRの進展を効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に伴う単セル110の電気的性能の低下を効果的に抑制することができることが確認された。また、上記特定領域が、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する特定第1種粒子P1Xの個数の割合が30%以上であるような領域であれば、活性層210における上下方向へのクラックCRの進展をさらに効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に伴う単セル110の電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができることが確認された。また、上記特定領域が、該領域に含まれる特定材料粒子Pの個数に対する第2種粒子P2の個数の割合が10%以下であるような領域であれば、活性層210における上下方向へのクラックCRの進展をさらに効果的に抑制することができ、該クラックCRの進展に伴う単セル110の電気的性能の低下をさらに効果的に抑制することができることが確認された。
【0072】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0073】
上記実施形態における単セル110または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、空気極114は、活性層210と拡散層220との二層構成であるとしているが、空気極114が活性層210および拡散層220以外の他の層を含むとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0074】
また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110について、上述した空気極114の活性層210の特性が実現されている必要は無く、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの単セル110について、上述した空気極114の活性層210の特性が実現されていれば、該単セル110について電気的性能の低下を効果的に抑制することができるという効果を奏する。
【0076】
また、上記実施形態では、平板形の単セル110を対象としているが、本明細書に開示される技術は、平板形以外の他の単セルにも同様に適用可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルおよび電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の空気極114の活性層210の構成を採用すれば、単セル110の電気的性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:反応防止層 210:活性層 211:ペロブスカイト型酸化物 213:気孔 220:拡散層 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9