(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】高精度非接触式温度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01J 5/061 20220101AFI20220831BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20220831BHJP
【FI】
G01J5/061
G01J5/48 D
(21)【出願番号】P 2020209653
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514173696
【氏名又は名称】國家中山科學研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】湯相峰
(72)【発明者】
【氏名】顏順隆
(72)【発明者】
【氏名】羅▲クン▼▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】林文仁
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-281864(JP,A)
【文献】特開2018-132494(JP,A)
【文献】特開平04-008346(JP,A)
【文献】特開2002-350234(JP,A)
【文献】米国特許第08378290(US,B1)
【文献】特開平03-115817(JP,A)
【文献】特開平03-274429(JP,A)
【文献】特開平03-028728(JP,A)
【文献】本多浩大、舟木英之,画像解像度が向上した非冷却赤外線イメージセンサ,東芝レビュー,2010年,Vol. 65 No. 6 (2010),Pages 32-35,https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2010/06/65_06pdf/f01.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00-G01J 5/90
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精度非接触式温度測定装置であって、
断熱材料で製造され、内部に収容空間を備えた断熱ボックスと、
前記収容空間の温度を制御するために用いる動態恒温フィードバック制御モジュールと、
前記収容空間に設置された非温度測定型熱画像装置と、
を含み、
前記動態恒温フィードバック制御モジュールが、温度センサーと、温度制御モジュールと、温度フィードバック制御ユニットと、電源モジュールを含み、
前記温度センサーが前記収容空間に設置され、前記温度センサーが前記収容空間の温度を測定した後フィードバック信号を生成し、
前記温度フィードバック制御ユニットが前記フィードバック信号を受信した後、制御信号を生成し、
前記温度制御モジュールはTEC冷却チップ及びPID温度制御モジュールを含み、前記制御信号を受信した後前記収容空間の温度を制御し、
前記電源モジュールが前記温度センサー、前記温度制御モジュール、前記温度フィードバック制御ユニットを駆動するための電力を供給
し、
前記温度フィードバック制御ユニットがMCU、ASICまたはPCである、ことを特徴とする、高精度非接触式温度測定装置。
【請求項2】
前記断熱材料がPEである、ことを特徴とする、請求項1に記載の高精度非接触式温度測定装置。
【請求項3】
さらに放熱構造体を含み、前記放熱構造体が前記断熱ボックスの外層表面に設置される、ことを特徴とする、請求項1に記載の高精度非接触式温度測定装置。
【請求項4】
さらにフロントカバーを含み、前記フロントカバーが前記断熱ボックスの一側面に設置され、前記側面及び前記フロントカバーがそれぞれ孔を備え、前記非温度測定型熱画像装置が前記複数の孔を介して被測定物を観測する、ことを特徴とする、請求項1に記載の高精度非接触式温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度測定装置に関し、特に、非温度測定型熱画像装置の校正を利用して高精度の非接触式測定を達成する、高精度非接触式温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外線センサーの発展は徐々に国防武器システムから軍民両用システムでの応用に移行しており、さらに民生工業での応用にも発展している。例えば、赤外線センサーは温度測定に用いることができる。現在赤外線温度センサーはその構造上、金属サーモパイル(Thermopile)式センサー、焦電型赤外線センサー(Pyroelectric Infrared Sensor,PIS)、マイクロボロメータ(Microbolometer)式センサーに大きく分けることができ、そのうち、マイクロボロメータ(Microbolometer)センサーの材料は主に酸化バナジウム(VOx)、アモルファスシリコン(a-Si)、BSTである。
【0003】
現在の非接触式温度測定技術は構造上、上述の3つのセンサー構造を主としており、このような構造で開発された非接触式温度測定装置は現在最も常用される設備となっているが、高解像度の熱画像機能を備え、かつ軽く小型で、低騒音、低消費電力特性を有する非接触式温度測定装置は、いずれもマイクロボロメータ式センサー構造を採用している。このマイクロボロメータ式センサーの構造は上述の利点があるが、マイクロボロメータ式のセンサーは非接触での温度測定を行うとき、マイクロボロメータ式センサー自体の動作に一定の操作電圧または電流を提供する必要があり、またその構造の真下にある読み出しICを長時間動作させると、その熱画像温度センサーチップの自己加熱効果(Self-heating effect)が常に発生し、チップの直接出力電圧またはトランスインピーダンス電圧のレベル変動が引き起こされ、温度測定の精度が低下する。
【0004】
このため、一般的な非接触式温度測定装置では、チップ内に基板温度参照センサーユニット(Substrate temperature reference pixel)が設計されるほか、センサーチップに最も近い周辺に接触式のサーミスタ温度センサーユニットが貼付され、センサーチップ前方の校正シャッター(Shutter)横にもこのセンサーユニットが貼付され、隨時レベル変動用ソフトウェアが接触式サーミスタ温度センサーユニットの数値を組み合わせ、動作温度補償、環境温度補償等の数値の演算を行い、直接出力電圧またはトランスインピーダンス電圧のレベル変動回帰補償演算を構築し、非接触式の高精度な温度測定機能を長時間維持している。
【0005】
ほとんどの熱画像型非接触式温度測定装置内部のコア熱画像チップは、マイクロボロメータ(Microbolometer)式の焦点面アレイ(Focal Place Array)により放射熱を吸収した後、読み出しIC(ROIC)で電気信号を読み取る。このマイクロボロメータ(Microbolometer)上のVOx材料が結晶相の変化を発生して生じる電気抵抗の変化に基づき、ROICで電流(または電圧)値を取得する。続いて、測定された電流(または電圧)値を利用して、実際の測定温度を演算する。しかしながら、センサープロセスの変更及び焦点面アレイチップの動作温度の自己加熱効果と視野背景温度等の要因の影響を鑑みると、読み出し回路が取得する電流(または電圧)値に誤差がある状況では、温度測定が不正確になることがよくある。
【0006】
このため、現在多くのメーカーが適切な校正方法の研究開発に取り組み、測定精度を高めようとしている。市場におけるほぼすべての熱画像型非接触式温度測定装置は、一定の動作温度の維持及び視野背景シャッター参照温度の正確なフィードバックのために、往々にして測定装置内部に上述のサーミスタ温度センサーユニットを組み込み、かつ複雑な校正法則を組み合わせる必要があり、システム統合製造及び校正演算実行ハードウェアの複雑さを増している。
【0007】
一般の熱画像型非接触式温度測定装置の場合、実際に温度測定機能を使用するときは、電源投入後少なくとも30分間待つ必要があり、好ましくはシステムを動態的に安定した動作温度に到達させて(ハウジング温度と熱画像装置センサーコアFPAチップの温度差が相対的に一定になって)から、温度測定機能を実行することができ、かつ不均一度と一温度点の校正で一般的な測定精度±5℃または±5%を確保する。より正確(≦±1℃または±2%)にしたい場合、複雑な多項式回帰パラメーター演算法をMCUまたはPC上に導入して回帰演算を行う必要がある。その場所の環境温度が突然劇的に変化し(傍に高温または低温源がある)、システム全体の動態温度差が≧±3℃になると、温度測定装置の温度測定値の精度が低下し、より長い時間をかけてシステムと外部環境が温度熱平衡(温度動態が一定)を達成するのを待ってから、その時点の焦点面アレイチップの動作温度と視野背景温度を使用して、その後上述の温度測定校正手順を繰り返し、出力する強度信号値を正規化して、最後に全システムの自己適応的な選択的逆演算を行い、正確な標的測定温度値を得る必要がある。
【0008】
以上の説明から分かるように、一般的な熱画像型非接触式温度測定装置は、温度測定の正確性を向上し、長時間にわたり維持するために、システムのソフトウェアとハードウェア上で多くの複雑なハードウェア設計と煩雑な演算法の導入を追加する必要があり、その主な欠点は次の通りである。1.システム温度を効果的に一定にすることができず、システムの受動的動態熱平衡メカニズムのみに依存しており、効率的に全システムを動作温度が一定の状態にして、標的物の温度を正確に測定することができない。2.熱画像チップ温度を監視するセンサーと視野背景シャッター温度のセンサーを追加設置する必要があり、システム設計と製造が複雑化する。一般的な商用熱画像装置はシステム温度のセンサーハードウェアがなく、校正演算法(温度測定機構の恒温フィードバック)のサポートがないため、熱画像のモニタリングに用いることができるだけで、より広範な温度測定に用いることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来技術の欠点に鑑み、本発明の主な目的は、焦点面アレイチップの動作温度、視野背景シャッター参照温度を把握する必要なく、本発明の構造を使用するだけで、非接触式温度測定装置の内部全体にシステムの断熱保温を行い、かつシステム全体の温度が動態的に一定の条件下で、温度測定システム全体に上述の全体封鎖システムで動態温度を一定に調整させ、内部のチップの自己加熱効果と視野背景の温度変化による影響を補償し、最後に熱画像型非接触式温度測定でよく使用される温度校正の演算法を組み合わせることで、画像型非接触式温度測定装置を用いて被測定物表面の正確な平均温度値を得ることができる、高精度非接触式温度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達するため、本発明に基づく高精度非接触式温度測定装置は、断熱材料で製造され、内部に収容空間を備えた断熱ボックスと、該収容空間の温度を制御するために用いる動的恒温フィードバック制御モジュールと、該収容空間に設置された非温度測定型熱画像装置を含む。
【0011】
本発明の高精度非接触式温度測定装置において、該断熱材料はPEとすることができる。
本 発明の高精度非接触式温度測定装置において、該動態恒温フィードバック制御モジュールは、温度センサーと、温度制御モジュールと、温度フィードバック制御ユニットと、電源モジュールを含むことができ、該温度センサーが該収容空間に設置され、該温度センサーが該収容空間の温度を測定した後フィードバック信号を生成し、該温度フィードバック制御ユニットが該フィードバック信号を受信した後、制御信号を生成し、該温度制御モジュールが該制御信号を受信した後該収容空間の温度を制御し、該電源モジュールが該温度センサー、該温度制御モジュール、該温度フィードバック制御ユニットを駆動するための電力を供給する。
【0012】
本発明の高精度非接触式温度測定装置において、該温度制御モジュールはTEC冷却チップとすることができる。
【0013】
本発明の高精度非接触式温度測定装置において、該温度フィードバック制御ユニットはMCU、ASICまたはPCとすることができる。
【0014】
本発明の高精度非接触式温度測定装置において、該高精度非接触式温度測定装置はさらに、放熱構造体を含むことができ、該放熱構造体は該断熱ボックスの外層表面に設置することができる。
【0015】
本発明の高精度非接触式温度測定装置において、該高精度非接触式温度測定装置はさらに、フロントカバーを含み、該フロントカバーは該断熱ボックスの一側面に設置することができ、該側面及び該フロントカバーがそれぞれ孔を備え、該非温度測定型熱画像装置は該複数の孔を介して被測定物を観測することができる。
【0016】
以上の概述と以下の詳細な説明及び図面はいずれも本発明の予定する目的を達するために採る方法、手段、効果を説明するためのものである。本発明のその他目的及び利点については、後続の説明と図面で述べる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の高精度非接触式温度測定装置の構造を示す立体分解図である。
【
図2】動態恒温フィードバック制御モジュールのブロック図である。
【
図3】熱画像型非接触式温度測定装置の測定結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、特定の具体的な実施例を挙げて本発明の実施方法を説明する。この技術分野を熟知した者であれば本明細書に開示された内容から本発明の利点と効果を容易に理解できるであろう。
【0019】
本発明は主に、一般的な商用の非温度測定型熱画像モジュールで断熱保温の封鎖システムを形成し、モジュール機構全体を動態恒温状態にさせる。即ち、熱電冷却(Thermoelectric cooling、TEC)モジュールと温度センサーユニット(ブリッジ式増幅回路、PID温度制御ユニット:市販のMCUに温度制御ASICチップを組み合わせて代替できる)等を組み合わせて運用し、システムの動態恒温フィードバックを行い、機構の恒温状態を構築する。システムが断熱保温システムであるため、外部の環境温度が変化(≧±3℃)しても、システム温度の大幅な変化は生じない(システムは一般に≦±1℃を維持できる)。これにより非温度測定型熱画像システム内には、温度測定型熱画像システムのように熱画像アレイチップと視野背景シャッターディスクの横に温度センサーを配置して、リアルタイムの温度パラメーターを取得し、複雑な温度補償数値の演算を実行する必要がなく、熱画像温度測定装置の設計と製造の複雑さを簡素化でき、また長時間高精度で測定標的温度の値を得ることができる。
【0020】
図1の本発明の高精度非接触式温度測定装置の構造を示す立体図を参照する。本発明の一実施例の高精度非接触式温度測定装置100は、断熱ボックス120と、動態恒温フィードバック制御モジュール130と、非温度測定型熱画像装置140と、放熱構造体110と、フロントカバー150と、を含み、該断熱ボックス120が断熱材料で製造され、該断熱材料がPE保温材料とすることができ、該断熱ボックス120内部に収容空間が設けられ、該動態恒温フィードバック制御モジュール130が、温度センサーと、温度制御モジュールと、温度フィードバック制御ユニットと、電源モジュールを含むことができ、該温度センサーが該収容空間に設置され、該温度センサーが該収容空間の温度を測定した後フィードバック信号を生成し、該温度フィードバック制御ユニットが該フィードバック信号を受信した後、制御信号を生成し、該温度制御モジュールが該制御信号を受信した後該収容空間の温度を制御し、該電源モジュールが該温度センサー、該温度制御モジュール、該温度フィードバック制御ユニットを駆動するための電力を供給し、該収容空間の温度を制御するために用いられ、該温度制御モジュールがTEC冷却チップとすることができ、該温度フィードバック制御ユニットが、MCU、ASICまたはPCとすることができ、該非温度測定型熱画像装置140が該収容空間に設置され、該放熱構造体110が該断熱ボックス120の外層表面に設置され、該フロントカバー150が該断熱ボックス120の一側面に設置され、該側面及び該フロントカバー150がそれぞれ孔を有し、該非温度測定型熱画像装置140は該複数の孔を介して被測定物を観測することができる。
【0021】
本発明は準断熱保温(PE保温材料)の封鎖システムを構築し、さらにモジュール機構全体に動態恒温を実現させる鍵となる熱電冷却(Thermoelectric cooling、TEC)モジュールと、温度センサー、ブリッジ式増幅回路モジュールを組み合わせ、さらにPID温度制御モジュールでネガティブフィードバック動態恒温制御を行い、最後にPCまたは商用MCU或いは温度制御ASICチップ等で全システムの動態恒温フィードバック制御を行う。このため、システムは本発明の非温度測定型熱画像装置周辺に構築する断熱保温封鎖構造と動態恒温フィードバック制御機構の2つの部分で構成されるアクティブ型動態恒温制御の準断熱保温封鎖システムとなっている。
【0022】
図2の動態恒温フィードバック制御モジュールのブロック図を参照する。一般的に市販されている非温度測定型熱画像装置内の熱画像チップ及び視野背景シャッター温度をシステム設定温度に迅速に到達させることができ、かつ動態恒温状態を維持できるため、温度測定の精度と実用性が大幅に向上される。
【0023】
該動態恒温フィードバック制御モジュールは、温度センサーと、温度制御モジュールと、温度フィードバック制御ユニットと、電源モジュールを含むことができ、本実施例において、該動態恒温フィードバック制御モジュールは、交流電源モジュール210と、交流/直流電源モジュール220と、ブリッジ式増幅回路モジュール230と、冷却チップ與放熱構造体240と、温度センサー250と、温度制御モジュール260と、MCUまたはASIC制御ユニット270を含み、該交流電源モジュール210が該交流/直流電源モジュール220に電源を提供し、該交流/直流電源モジュール220が該ブリッジ式増幅回路モジュール230に電源を提供し、該ブリッジ式増幅回路モジュール230が冷却チップと放熱構造体240に電源を提供する。該温度センサー250が該温度制御モジュール260にフィードバック信号を送信し、該温度制御モジュール260が該MCUまたはASIC制御ユニット270にフィードバック信号を送信し、該MCUまたはASIC制御ユニット270が該温度制御モジュール260に制御信号を送信し、該温度制御モジュール260が該ブリッジ式増幅回路モジュール230に制御信号を送信する。該ブリッジ式増幅回路モジュール230が受信した制御信号により該冷却チップと放熱構造体240に供給する電力を調整し、温度制御の効果が達成される。このため、温度フィードバック制御ユニットは本実施例においてMCUまたはASIC制御ユニットであり、電源モジュールは交流電源モジュール、交流/直流電源モジュール及びブリッジ式増幅回路モジュールである。
【0024】
図3の熱画像型非接触式温度測定装置の測定結果のグラフを参照する。アクティブ型動態恒温制御断熱保温封鎖システムの使用は、PID温度制御モジュール(本発明を例とする:動態アクティブ恒温制御機構が構成する熱画像型非接触式温度測定装置)を運用しており、外部PIDを使用して焦点面アレイ(FPA)チップと視野背景シャッター温度を制御しておらず(一般的な商用温度測定熱画像装置の例)、一定出力制御を運用する商用温度測定熱画像装置内の焦点面アレイチップの動作時間及び温度と比較したグラフを
図3に示す。本発明の動態アクティブ恒温制御機構で構成した熱画像型非接触式温度測定装置内の焦点面アレイチップと視野背景シャッター温度は5分以内に動態温度の恒常値に迅速に到達しており、この例から、少なくとも温度を80分間以上一定にできることが分かり、長時間にわたり動態温度を一定に維持することができ、この温度のばらつきは≦±1℃であることが分かる。一般的な商用温度測定熱画像装置(外部PID制御モジュールを使用していない)は、少なくとも30分間以上を経て、やっと温度のばらつきを≦±3℃にすることができ、その後はFPAとシャッター温度の上昇幅が緩慢であるため、80分後になってやっと温度のばらつきを≦±1℃にすることができる。一定出力制御を運用する商用温度測定熱画像装置内の焦点面アレイチップの動作時間と温度のグラフは、一定出力での動作であるため、開始してからの5分間、出力が大きすぎてFPAとシャッター温度が急速に低下し、5分後やっと自己加熱効果で徐々にその温度が上昇し始め、40分後に温度のばらつきが≦±1℃になる。まとめると、PID温度制御の条件を備えた温度測定熱画像か否か(PID制御ありまたは一定出力条件)に関わらず、本発明の動態温度の恒常値到達は一般的な商用温度測定熱画像装置よりも優れている。15分後には安定した状態に到達でき、熱画像装置の温度測定での運用時にシステムの温度が一定になるまで待つ時間が大幅に短縮され、温度測定の精度も効果的に向上できる。
【0025】
商用型温度測定熱画像装置(一般型温度測定熱画像装置とも呼ばれる)で、起動してから約18分後に(FPAチップ及びシャッター温度が約33℃)、不均一度と一温度点の校正を1回実行し、同時に約2時間30℃及び80℃の距離1mにある平板式標準黒体放射源に対して連続温度測定(測定サイクル=1回/秒)を記録した。関連温度データ(平均温度、最高温度、最低温度の値)を下表に示す。
【0026】
【表1】
その温度測定精度は一般に製造業者が設定する温度測定精度規格±5℃または±5%の範囲内、温度のばらつき(標準差)がそれぞれ0.51と0.34℃で、いずれも≦0.6℃を満たしていた。
【0027】
動態アクティブ恒温制御構で構成した熱画像型非接触式温度測定装置(これは本発明の構造:略して恒温型温度測定熱画像装置)は、起動してから約18分後に(FPAチップ及びシャッター温度が約33℃)、不均一度と一温度点の校正を1回実行し、同時に約2時間30℃及び80℃の平板式標準黒体放射源に対する温度測定状況を記録した(測定条件は一般型温度測定熱画像装置で設定した標的温度と同じ)。その関連データを下表に示す。
【0028】
【表2】
標準低温及び高温の平板標的を測定し、その平均温度、最高温度、最低温度の値はそれぞれ30.57℃;29.71℃;31.54℃(標的物の温度30℃);80.50℃;79.77℃;81.15℃(標的物の温度80℃)であった。その温度測定精度は±0.5℃内、温度のばらつき(標準差)がそれぞれ0.28と0.21℃で、いずれも≦0.3℃を達成した。
【0029】
上述の比較結果で示されるように、温度測定精度と測定温度のばらつきはいずれも商用型温度測定熱画像装置の温度測定データより優れており、本発明の高精度非接触式温度測定機能を備えた機構は、主に焦点面アレイチップの動作温度、視野背景シャッター参照温度を把握する必要なく、本発明の構造を使用するだけで、非接触式温度測定装置の内部全体にシステムの断熱保温を行い、かつシステム全体の温度が動態的に一定の条件下で、温度測定システム全体に上述の全体封鎖システムで動態温度を一定に調整させ、内部のチップの自己加熱効果と視野背景の温度変化による影響を補償し、最後に熱画像型非接触式温度測定でよく使用される温度校正の演算法を組み合わせることで、画像型非接触式温度測定装置を用いて本発明の開示するシステムの動態恒温フィードバック方法でROIC集積回路チップにより強度信号(この数値はシステム出荷時の正規の恒常値に近い)を取得し、一温度点の値でレベルを補正した後、すぐに全システムの自己適応的な選択的逆演算を行い、温度の熱放射(R、B、F、O)校正回帰係数を求め、被測定物表面の正確な平均温度値を得ることができる。まとめると、本発明の高精度非接触式温度測定機構は、温度測定機能を備えていない一般の商用型熱画像装置を組み合わせ、市販の高精度非接触熱画像装置と同じ温度測定精度を達成でき、さらに短時間で温度が急激に変化する背景動作温度下で長時間正確な温度測定ができる。温度測定熱画像システムのハードウェア製造の複雑さとソフトウェア演算の負荷を大幅に軽減することができ、長時間標的物の温度を制御する能力を備え、業界の温度測定熱画像装置の調達コストを大幅に抑制できる。将来的には産業の異常温度モニタリングの大規模な自動化、患者の生理温度警告、公共場所の異常な高温の警告などのアプリケーションに用いることができ、温度測定熱画像装置システムコストを大幅に抑えられるため、工業民生における幅広いニーズに対して大きなプラスの影響をもたらすことができるであろう。
【0030】
上述の実施例は例示的に本発明の特徴と効果を説明したのみであり、本発明の実質的技術内容の範囲を限定するものではない。関連技術を熟知する者であれば本発明の要旨と範疇を逸脱せずに、上述の実施例に対して修飾と変更が可能であろう。したがって、本発明の権利保護範囲は、後述の特許請求の範囲に記載されたとおりである。
【符号の説明】
【0031】
100 高精度非接触式温度測定装置
110 放熱構造体
120 断熱ボックス
130 動態恒温フィードバック制御モジュール
140 非温度測定型熱画像装置
150 フロントカバー
210 交流電源モジュール
220 交流/直流電源モジュール
230 ブリッジ式増幅回路モジュール
240 冷却チップと放熱構造体
250 温度センサー
260 温度制御モジュール
270 MCUまたはASIC制御ユニット