(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】二成分スパンボンド不織布およびそれから製造された不織複合材料
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20220831BHJP
D04H 3/147 20120101ALI20220831BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20220831BHJP
D01F 8/12 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/147
D01F8/06
D01F8/12 Z
(21)【出願番号】P 2020524041
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2017108586
(87)【国際公開番号】W WO2019084774
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ユーシャン
(72)【発明者】
【氏名】トアン、ウェイ
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-528735(JP,A)
【文献】特表2011-506791(JP,A)
【文献】特開2000-054249(JP,A)
【文献】特表2006-506544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
D01F 8/00-8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シース/コア構造の
、連続二成分繊維を含むスパンボンド不織布であって、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーが、前記シースを形成し、ポリアミドが、前記コアを形成している、スパンボンド不織布。
【請求項2】
前記エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーが、ASTM D1238に準拠して、190℃において、2160gの負荷で
、12~60g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーが
、0.1%
~60%の範囲の中和レベルのナトリウムカチオンまたは亜鉛カチオンで中和される、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーの前記アイオノマーのモノマー中の酸含有量が
、1重量%
~20重量%の範囲である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
前記シースと前記コアとの間の重量比が
、20:80
~50:50の範囲である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
前記二成分連続繊維が
、1~100μmの直径を有する、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項7】
前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、およびそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項8】
10~1000g/m
2の坪量を有する、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項9】
第1の面および第2の面を有する、請求項1に記載のスパンボンド不織布の1つの層と、前記二成分スパンボンド不織布の前記第1の面に結合された基材層と、を含む、不織複合材料。
【請求項10】
2~100層の請求項1に記載のスパンボンド不織布を含む、不織複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、スパンボンド不織布およびそれから製造された不織複合材料に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
シース/コア構造を有する繊維からなる二成分スパンボンド不織布は当該技術分野で周知であり、例えば、シース/コア構造は、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート(PE/PET)、ポリエチレン/ポリアミド(PE/PA)、ポリエチレン/ポリプロピレン(PE/PP)、またはポリプロピレン/ポリアミド(PP/PA)である。しかしながら、シースおよびコアに使用されるポリマーは、互いに親和性/適合性がないため、スパンボンド不織布の耐穿刺性は、特に、低温環境において制限される。改善された耐穿刺性、特に、約-40~0℃の温度で改善された耐穿刺性を有する不織布に対する必要性が依然として存在する。
【0003】
二成分スパンボンド不織布を含む複合材料は、自動車のバンパもしくは車体下部シールド、または肘ガード、すねガード、サーフボードなどのスポーツ用品の部品、または寒冷天候で使用されることを必要とする用具、例えば、スキーボード、雪そり、スキーヘルメットなどのスキー用具として使用することができる。これらの用途には、優れた耐衝撃性、特に約-40~0℃のような寒冷気候での優れた耐衝撃性を有する不織複合材料も必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーがシースを形成し、ポリアミドがコアを形成する、シース/コア構造を有する、ある純度の連続二成分繊維を含むスパンボンド不織布が提供される。
【0005】
本明細書では、それから製造された不織複合材料がさらに提供される。
【0006】
本開示によって、ある範囲が2つの端点で与えられる場合、範囲は、2つの端点内にある任意の値および2つの端点のいずれかに等しいか、またはほぼ等しい任意の値を含むことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0008】
本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料が本明細書に記載されている。
【0009】
特に明記しない限り、すべての割合、部分、比率などは、重量による。
【0010】
量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、またはより低い好ましい値およびより高い好ましい値のリストのいずれかとして与えられる場合、範囲が別個に開示されているかどうかに関係なく、これは、任意のより低い範囲の制限または好ましい値と、任意のより高い範囲の制限または好ましい値との任意の対から形成されるすべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。本明細書で数値の範囲が列挙されている場合、特に指示しない限り、範囲は、その端点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図している。本発明の範囲は、範囲を定義するときに列挙された特定の値に限定されることを意図するものではない。
【0011】
「約」という用語が、範囲の値または端点を記述する際に使用される場合、本開示は、言及される特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0012】
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「を特徴とする」、「有する(has)」、「有する(having)」、または他の任意の変形は、非排他的包含を網羅することを目的としている。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されず、明示的にリストされていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、明示的に別途記載がない限り、「または」は、包括的なまたはを指し、排他的なまたはではない。
【0013】
移行句「から本質的になる」は、特許請求の範囲を特定の材料またはステップ、および特許請求された発明の基本的で新規の特性(複数可)に実質的に影響しないものに限定する。出願人が、「含む」などの開放型用語で発明またはその一部を定義した場合、特に指示しない限り、説明は、用語「から本質的になる」を使用して、そのような発明も説明すると解釈されるべきである。
【0014】
「a」または「an」の使用は、本発明の要素および構成要素を説明するために用いられる。これは、単に便宜上のものであり、本発明の一般的な意味を与えるものである。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形が他を意味することが明らかでない限り、それには複数形も含まれる。
【0015】
本明細書の材料、方法、および例は、例示的であるにすぎず、具体的に述べられている場合を除き、限定することを意図しない。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料は、本明細書に記載されている。
【0016】
本開示について、以下で詳細に説明する。
【0017】
スパンボンド不織布
本発明のスパンボンド不織布は、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーがシースを形成し、ポリアミドがコアを形成する、シース/コア構造を有する、ある純度の二成分連続繊維を含む。
【0018】
本発明において、「二成分連続繊維」という用語は、繊維の長さに沿って互いに密接に接着され、断面でシース-コア構造を形成する一対のポリマー組成物を含む繊維を指す。二成分のシース-コア構造は、コアが内部に配置され、シースに囲まれて、両方が実質的に繊維の全長に伸びている限り、円形、三葉、五葉、八葉、ダンベル型、海島、または星型の断面にすることができる。通常、シースはコアよりも低い融点を有する。「連続繊維」という用語は、不定または極端な長さの繊維を指す。実際上、製造プロセスにより「連続繊維」には1つ以上の断線が存在する可能性があるが、「連続繊維」は、所定の長さにカットされたステープルファイバーとは区別される。一実施形態では、二成分連続繊維は、約1~100μm、または約2~50μmの平均繊維直径を有する。
【0019】
本発明の二成分連続繊維では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーがシースを形成し、ポリアミドがコアを形成する。開示された二成分連続繊維のシースとコアとの間の重量比は、約20:80~約50:50、好ましくは約30:70~約45:55の範囲である。
【0020】
本明細書で使用されるエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーであって、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーのモノマー中の酸含有量は、約1重量%~約20重量%の範囲であり、その酸基は、約0.1%~約60%の範囲の中和レベルのナトリウムカチオンまたは亜鉛カチオンによって中和される。さらに、本明細書で使用されるエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーは、ASTM D1238に準拠して190℃で2160gの負荷で測定して、約12~60g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。本発明での使用に好適なエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーは、多くの供給元から市販されており、E.I.du Pont de Nemours and Company(以下、「DuPont」)から入手可能なSurlyn(登録商標)アイオノマー樹脂を含む。
【0021】
本明細書で使用されるポリアミドは、反復アミド基(-CONH-)を含有するポリマーであり、1つ以上のジカルボン酸が1つ以上のジアミンと共重合することによって調製されるか、またはカプロラクタムなどのラクタムモノマーの開環重合によって調製される。本明細書で使用されるポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、および繊維紡糸に好適な他のポリアミド、ならびにそれらのブレンドからなる群から選択される。一実施形態では、本明細書で使用されるポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、およびそれらのブレンドからなる群から選択される。本発明での使用に好適なポリアミドは、多くの供給元から市販されており、DuPontから入手可能なZytel(登録商標)樹脂が含まれる。
【0022】
二成分連続繊維のシースおよび/またはコアは、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、紡糸仕上げ剤などの他の従来の添加剤を含み得る。
【0023】
本明細書に開示されるスパンボンド不織布は、当技術分野で知られているスパンボンド法を使用して調製することができる。スパンボンド不織布は、有孔スクリーンまたはベルトなどの収集表面上に上記の二成分連続繊維をランダムに置くことによって形成される。スパンボンド不織布は、一般に、当技術分野で知られている方法によって、例えば、熱ロールカレンダー加工によって、または高圧で飽和蒸気チャンバーに布を通すことによって結合される。
【0024】
二成分連続繊維は、別個のポリマー成分が押し出しオリフィスからの押し出し前に接触される前融合ダイ、または別個のポリマー成分が、別個の押し出しオリフィスから押し出され、そしてキャピラリーを出た後に接触させることで、二成分繊維を形成される後融合ダイのいずれかを使用して調製することができる。例えば、最初に2つのポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーおよびポリアミドを、65℃と80℃のそれぞれの温度で、200ppm未満の含水率に乾燥させる。乾燥後、2つのポリマーは、それらの融点よりも高く、かつ、最低分解温度よりも低い温度で別個に押し出される。エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーは180~250℃、ポリアミドは250~280℃で押し出すことができる。押し出し後、2つのポリマーが計量されてスピンパックアセンブリに供給され、2つの溶融物の流れは別個に濾過され、その後、分配プレートのスタックを通して組み合わされて、複数列のシース-コア繊維の断面が提供される。
【0025】
スピンパックアセンブリは、250~280℃に保持される。エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーおよびポリアミドのアイオノマーを各キャピラリーを通して紡糸し、同心円設計の紡糸口金で組み合わせて排出し、シース/コア構造を有する二成分連続繊維を得ることができる。
【0026】
紡糸口金を出る二成分連続繊維は、形成ベルト上に集められて、スパンボンド不織布を形成する。ベルトの下に真空を適用して、不織布をベルトに対して固定するのに役立てることができる。ベルトの速度は、様々な坪量の不織布を得るために変えることができる。一実施形態では、スパンボンド不織布は、約10~1000g/m2の坪量を有する。
【0027】
スパンボンド不織布は、当技術分野で既知の方法を使用して熱結合することができる。一実施形態では、スパンボンド不織布は、当技術分野で既知の方法を使用して、点、線、または他の断続的結合パターンの不連続パターンで熱結合される。断続的な熱結合は、布の表面の個別のスポットに熱および圧力を適用することによって、例えば、パターン化されたカレンダーロールおよび滑らかなロールによって形成されたニップ、または2つのパターン化されたロールの間に層状構造体を通過させることによって、形成することができる。ロールを加熱して、布を熱結合する。結合ロールパターンは、当技術分野で知られているもののいずれであってもよく、好ましくは、別個の点または線結合のパターンである。スパンボンド不織布はまた、例えば、ホーンと、回転アンビルロール、例えば、その表面に突起のパターンを有するアンビルロールとの間にウェブを通すことにより、超音波エネルギーを使用して熱的に結合することができる。代替的に、スパンボンド不織布は、当技術分野で知られている通気結合方法を使用して結合することができ、その際、空気などの加熱されたガスを、繊維を結合するのに十分な温度で布を通過させ、繊維がそれらの交差点で互いに接触する一方で、布は多孔質の表面上で支えられる。
【0028】
不織複合材料
本明細書では、上記のスパンボンド不織布を含むか、またはそれから製造された不織複合材料がさらに開示される。
【0029】
一実施形態では、不織複合材料は、少なくとも2層のスパンボンド不織布、または2~100層のスパンボンド不織布を含む。単層のスパンボンド不織布を互いに積み重ね上げた。これらの不織布の各層は、縦方向において優勢な配向を有していた。バランスの取れた構造を得るために、これらの積層体の繊維配向は、各層をその主要な配向に対して単に回転させ、それを前の層の上に配置することによって構成した。プラテンプレス機を使用して、不織複合材料を製造することができる。クロスレイヤの布は、剥離紙の間に挟まれ、上部プレートと下部プレートとの間に配置される。剥離紙は、試料がホットプレートに付着するのを防ぐために使用される。上部プレートまたは下部プレートまたはその両方は、アイオノマーの溶融温度とポリアミドの溶融温度との間の温度、例えば、140℃などの100~200℃に設定される。圧力は、40バールなど、5~100バールに設定するべきである。プレス時間の長さは、アイオノマーのシースが完全に溶融して不織布間のすべての細孔を満たし、連続したマトリックスを形成するのに十分な長さであるべきであるが、アイオノマーまたはポリアミドの酸化または分解を引き起こすには長過ぎるべきではない(10分など)。加熱後、高温の試料を2つのコールドプレート間で移動し、冷却して固化させることができる。熱間圧延ラインを使用して不織複合材料を製造することもでき、この場合、140℃などの100~200℃のように、アイオノマーの溶融温度とポリアミドの溶融温度との間の温度で加熱された一対のニップロールを介して、クロスレイヤの布をコンベヤベルト上で搬送できる。任意選択的に、ニップロールの前に加熱トンネルを装備し、ニップロールの温度に近いかそれと同じ温度、例えば140℃などに設定でき、ニップロールでホットプレスする前に不織布を予熱することができる。ニップロールの圧力は、すべての不織布層を一緒にプレスするのに十分な値に設定するべきであり、製造された複合シートの内部に空隙を残さない。
【0030】
不織複合材料シートの好ましい厚さは、約1mm~10mmであり、これは、約50g/m2の坪量を有する約20~200層の不織布、または約100g/m2の坪量を有する約10~100層の不織布、または約200g/m2の坪量を有する約5~50層の不織布を意味する。
【0031】
別の実施形態では、不織複合材料は、基材と、第1の面および第2面を有する二成分スパンボンド不織布の少なくとも1つの層とを含み、基材層は、二成分スパンボンド不織布の第1の面に結合される。任意選択的に、不織複合材料は、基材の片面または両面に二成分スパンボンド不織布の複数の層を含む。スパンボンド不織布層は、基材の表面耐衝撃性を改善するに役立ち得る。基材は、ガラス繊維強化熱可塑性シートであり得、これは、混ざり合ったガラス繊維およびポリマー繊維をホットプレスして、ポリマー繊維を溶融させ、ガラス繊維を融合させることによって製造される。例えば、基材は、ガラス繊維強化ポリプロピレンシートであり得る。基材はまた、ガラス繊維にエポキシ、フェノールホルムアルデヒド樹脂、または他の硬化性樹脂を含浸させた後、硬化プロセスを行うことによって製造される、ガラス繊維強化熱硬化性複合シートであり得る。基材はまた、押し出し成形または射出成形により製造されたプラスチックシートであり得る。不織布のアイオノマーと基材との親和性が良好であれば、プラテンプレス機を用いたホットプレス、または熱間圧延ラインを用いた熱ラミネートにより、不織布を基材に直接結合することができる。そうでなければ、不織布は、接着フィルム、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤または水系接着剤を使用して基材に結合することができる。
【0032】
本明細書におけるスパンボンド不織布は、良好な耐穿刺性、特に、約-40~0℃の温度で良好な耐穿刺性を有する。耐穿刺性は、不織布を貫通するために必要な最大穿刺力の尺度である。耐穿刺性は、6400gの負荷で鋭い形状の穿刺振り子を使用して測定され、「gf」の単位で記録される。不織布を破壊するのに必要な力が大きいほど、耐穿刺性が優れている。
【0033】
本発明のスパンボンド不織布を含む、それから本質的になる、それからなる、またはそれから製造される不織複合材料は、良好な耐衝撃性、特に約-40~0℃の温度での耐衝撃性を有する。耐衝撃性は、不織複合材料が「破損」することなく、突然の負荷の適用に耐える能力の尺度である。不織布の複数の層からなる不織複合材料の場合、耐衝撃性は、所定の温度でIOS 179に準拠して、ノッチなしのシャルピー試験で測定された際の衝撃エネルギー(「kJ/m2」の単位で記録)で評価される。衝撃で破壊しない試料は、破壊する試料よりも高い耐衝撃性を示す。すべての試料が衝撃で破壊されない場合、より高い衝撃エネルギーを示す試料は、より高い耐衝撃性があることを意味する。不織布層と基材層からなる不織複合材料の場合、砂利衝撃後の複合材料の外観によって耐衝撃性が評価される。不織布の面の外観にわずかな圧痕があり、亀裂、欠け、ひび割れ、または他の機能低下がない場合、耐衝撃性は「良好」と記録される。対照的に、不織布の面に大きな圧痕、亀裂、欠け、ひび割れ、または他の機能低下がある場合、耐衝撃性は「不良」と記録される。
【0034】
本発明の不織複合材料は、バンパまたは車体下部シールドなどの自動車外装部品の耐衝撃性部品として有用である。
【0035】
本発明の不織複合材料は、肘ガード、すねガード、サーフボードなどのスポーツギアの耐衝撃性部品、つま先パフもしくはヒールカウンターなどの履物の耐衝撃性部品、またはスーツケースの本体としても有用である。
【0036】
本発明の不織複合材料は、寒冷気候、または約-40~0℃の温度で使用されることを必要とする用具の耐衝撃性部品、例えば、スキーボード、雪そり、スキーヘルメットなどのスキー用具として特に有用である。
【0037】
さらに詳述することなく、前述の説明を用いる当業者は、本発明を最大限に利用できると考えられている。したがって、以下の実施例は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかようにも本開示を限定するものではない。
【実施例】
【0038】
略語「E」は、「実施例」を表し、「CE」は、「比較例」を表し、その後にどの実施例で複合材料が調製されたかを示す番号が続く。実施例および比較例は、すべて同様の方法で調製および試験された。
【0039】
材料
I-1:エチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマー;MFR:23g/10分;モノマー中の酸含有量:15重量%;中和レベル:14.8%;Surlyn(登録商標)AD8545の商品名でDuPontから入手した。
I-2:エチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマー;MFR:14g/10分;モノマー中の酸含有量:15重量%;中和レベル:22%;Surlyn(登録商標)1702の商品名でDuPontから入手した。
PA:ポリアミド6、Wuxi Chang’an Polymer Companyから入手した、セミダル繊維1800-1のグレードを有する。
PE:高密度ポリエチレン、Petro China Fushun Companyから入手した、グレード2911FSを。
基材:約40重量%のガラス繊維および60重量%のポリプロピレンを含む自己拡張ガラス繊維強化熱可塑性シートであって、自己拡張ガラス繊維強化熱可塑性シートの全重量に基づいて、約1000g/m2の坪量を有する。
【0040】
比較例CE1~CE4および実施例E1~E6:
CE1~CE4およびE1~E6のそれぞれで、2つの押し出し機(1つはシース用、1つはコア用)および同心円設計の紡糸口金を備えたスパンボンドラインでスパンボンド不織布を調製した。E1~E6の不織布は、220℃に設定したシース押し出し機にアイオノマーを充填し、265℃に設定したコア押し出し機にPAを充填した。アイオノマーおよびPAは、各押し出し機で溶融され、次に275℃に設定されたスピンパックに押し出され、最後に同心円設計の紡糸口金から排出された。得られた二成分繊維は、続いてスロットジェットを通過し、そこで強い空気流によってさらに減衰され、約30μmの直径のシース-コア構造の繊維がもたらされた。これらの二成分繊維は、その後、コンベヤベルト上に置かれ、ドットパターンを備えた一対のニップロール(70℃に設定)で熱間圧延され、最終的なスパンボンド不織布を得た。CE1~CE4の不織布の場合、ポリエチレンの軟化点(120℃)はアイオノマーの軟化点(60~70℃)より高いため、ニップロール温度を120℃に設定した以外は、プロセスは基本的に上記と同じであった。
【0041】
各スパンボンド不織布の二成分連続繊維のシースおよびコアの組成を表1に示す。表1には、各スパンボンド不織布の坪量、穿刺力、正規化された穿刺力も記載されている。
【0042】
比較例CE5~CE6および実施例E7~E12:
CE5~CE6およびE7~E12のそれぞれにおいて、不織複合材料は、比較例CE2~CE3および実施例E1~E6のスパンボンド不織布をそれぞれ前駆体として、ホットプレスプロセスを使用して調製した。ホットプレスにはプラテンプレス機を使用した。これらの不織布の各層は縦方向に優勢な配向を有していたため、バランスの取れた構造を得るために、これらの積層体の繊維配向は、優勢な配向に対して各層を単に回転させ、前の層の上に配置することによって構成した。方法は3つの工程で行った:1)2つの剥離紙に挟まれたクロスレイヤ不織布を、上部プレートと下部プレート(どちらも140℃に設定)との間に配置し、形状を保持するために非常に低い圧力を適用して5分間予熱し、その後、試料を脱気できるように上部プレートおよび下部プレートを開いた、2)続いて、40バールの圧力を加えて、積み重ねた不織布を約10分間プレスし、その間、シース層は、溶融して、マトリックスを形成するはずであり、一方で、PAコア繊維は、補強を提供するように、そのままであり、3)最後に、ホットシート試料を、約2分間冷却するために、2つのコールドプレート間で移動させ、不織複合シートが得られ得る。
【0043】
一緒に積み重ねる必要がある不織布層の数は、不織複合材料の目標厚さと不織布の前駆体の坪量によって決定される。約4mmの厚さを有する不織複合材料を製造するには、約150g/m2の坪量を有する27層の不織布、約180g/m2の坪量を有する22層の不織布、または約100g/m2の坪量を有する40層の不織布を前駆体として使用した。
【0044】
各不織複合材料の組成を表2に示す。表2には、各不織複合材料の坪量、23℃および-40℃での衝撃エネルギーも示す。
【0045】
実施例E13:
E13では、E6の不織布の1つの層を、基材である自己拡張ガラス繊維強化熱可塑性シート上に熱ラミネートすることにより、不織複合材料を調製した。不織布を基材の最上部上に配置して、アセンブリを形成した。そして、このアセンブリを約140℃で一対のニップロールに通して、シース内のアイオノマーを溶融させ、基材の表面に結合させて、不織複合材料を得た。
【0046】
23℃および-29℃での耐衝撃性を表3に示す。
【0047】
試験方法
穿刺試験:穿刺力は、修正されたASTM 3480に準拠して、Spencer振り子穿刺試験機を使用して測定した。鋭い先端の穿刺振り子を6400gの負荷で使用した。振り子を解放して、空圧式Oリング式クランプで固定された不織布を叩いて振る。不織布が破裂し、穿刺力が記録された。様々な坪量の不織布の穿刺力を比較するために、次式を使用して穿刺力を正規化した。
【0048】
正規化された穿刺力=穿刺力/坪量
そして、正規化された穿刺力は「gf/(g/m2)」の単位で報告される。
【0049】
シャルピー衝撃試験:CE5~CE6およびE7~E12の不織複合材料の衝撃エネルギーは、23℃および-40℃のそれぞれで、ノッチなしのシャルピー試験方法(ISO 179)で測定した。各試料は、寸法が約80mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)の10個の試験片に切断され、衝撃方向は長さと幅で定義される平面に垂直であった。ここでは、CE5~CE6およびE7~E12のすべての試料が衝撃で破損しなかったため、耐衝撃性は衝撃エネルギー(「kJ/m2」の単位で記録)を使用して比較され、衝撃エネルギーが高いほど、耐衝撃性が高くなる。
【0050】
砂利衝撃試験:E13の不織複合材料の不織布面を、23℃および-29℃のそれぞれにおいて90°の衝撃角で100kgの砂利衝突に供した。砂利衝撃後、不織複合材料の外観を視覚的に検査し、記録した。不織布の面にわずかな圧痕があって、亀裂、欠け、ひび割れ、他の機能低下がない場合、耐衝撃性は「良好」とされる。対照的に、不織布の面に大きな圧痕、亀裂、欠け、ひび割れ、他の機能低下がある場合、耐衝撃性は「不良」とされる。
【表1】
【0051】
表1の結果から、以下の説明が明らかである。
【0052】
E1およびCE1~CE2の穿刺力データを比較すると、E1およびCE1またはCE2の不織布は、シースとコアとの間の重量比は同じであるが、シース/コアとしてアイオノマー/PAを使用した異なるシース成分の不織布(E1)は、PE/PAをシース/コアとして使用した不織布(CE1)よりも高い穿刺力を提供し、E1の不織布は、CE2の不織布よりも高い正規化された穿刺力を提供する。同様に、E4およびCE3~CE4の穿刺力データを比較すると、E4とCE3またはCE4の不織布は、シースとコアとの間の重量比が同じである
が、シース成分が異なる場合、シース/コアとしてアイオノマー/PAを使用した不織布(E4)は、シース/コアとしてPE/PAを使用した不織布(CE4)よりも高い穿刺力を提供し、E4の不織布は、CE3の不織布よりも高い正規化された穿刺力を提供する。アイオノマー/PA不織布は、PE/PA不織布よりも改善された耐穿刺性を提供する。
【0053】
一実施形態では、本発明のスパンボンド不織布は、シース/コア構造を有するある純度の連続二成分繊維を含み、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーが、シースを形成し、ポリアミド6が、コアを形成し、シースとコアとの間の重量比は、約30:70または約40:60である。
【表2】
【0054】
表2の結果から、以下の説明が明らかである。
【0055】
E7およびCE5の衝撃エネルギーデータを比較すると、E7およびCE5の不織複合材料は同じ坪量を有し、シースとコアとの間の重量比は同じであるが、シース/コアとしてアイオノマー/PAを含む、シースの成分が異なる不織複合材料(E7)は、23℃で、シース/コアとしてPE/PAを使用した不織複合材料(CE5)よりも高い衝撃エネルギーを提供し、E7の不織複合材料は、-40℃でもCE5よりも高い衝撃エネルギーを提供する。同様に、E10およびCE6の穿刺力データを比較すると、E10およびCE6の不織複合材料は同じ坪量を有し、
シースとコアとの間の重量比は同じであるが、シース/コアとしてアイオノマー/PAを使用した、異なるシース成分の不織複合材料(E10)は、23℃でシース/コアとしてPE/PAを使用した不織複合材料(CE6)よりも高い衝撃エネルギーを提供し、E10の不織複合材料もまた、-40℃でCE6よりも高い衝撃エネルギーを提供する。アイオノマー/PA不織布は、PE/PA不織布よりも改善された耐衝撃性を提供する。
【0056】
一実施形態では、シース/コア構造を有するある純度の連続二成分繊維を含むスパンボンド不織布を10~50層含む本発明の不織複合材料は、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーが、シースを形成し、ポリアミド6が、コアを形成し、シースとコアとの間の重量比は、約30:70または約40:60である。
【表3】
【0057】
表3の結果から、以下の説明が明らかである。
【0058】
23℃または-29℃での砂利衝撃後、不織複合材料の外観は良好であり、スパンボンド不織布の層と基材層とを含む不織複合材料の耐衝撃性が良好であることを示している。
【0059】
一実施形態では、本発明の不織複合材料は、第1の面と第2の面とを有するスパンボンド不織布の1つの層と、二成分スパンボンド不織布の第1の面に熱結合された基材層としての自己拡張ガラス繊維強化熱可塑性シートとを含み、スパンボンド不織布は、シース/コア構造を有する、ある純度の連続二成分繊維を含み、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーが、シースを形成し、ポリアミド6が、コアを形成し、シースとコアとの間の重量比が約30:70または約40:60である。
【0060】
典型的な実施形態で本発明を図示および説明したが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正および代用が可能であるため、示された詳細に限定されることを意図しない。したがって、本明細書に開示された本発明の修正および同等物が、当業者に着想され得る。