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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】車両及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/14 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
F16H61/14 602H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020559883
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045228
(87)【国際公開番号】W WO2020121749
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2018234841
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 聡光
(72)【発明者】
【氏名】本間 知明
(72)【発明者】
【氏名】李 宗桓
(72)【発明者】
【氏名】田上 幸太郎
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-293684(JP,A)
【文献】特開平02-195027(JP,A)
【文献】特開平09-079370(JP,A)
【文献】特開2005-180348(JP,A)
【文献】特開2008-240951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを有し前記エンジンと接続される変速機と、を備えた車両であって、
前記ロックアップクラッチの締結速度は、前記変速機の油温が低いほど遅くなり、
前記ロックアップクラッチの締結速度は、前記エンジンの水温が低いほど遅くなり、
前記ロックアップクラッチの締結速度は、前記水温が高いほど速くなる、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記ロックアップクラッチの締結速度は、アクセル開度が大きいほど速くなる、
車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両であって、
前記ロックアップクラッチの締結速度は、前記ロックアップクラッチの締結時に前記ロックアップクラッチに供給される油圧の上昇の傾きにより制御される、
車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両であって、
前記油温が低いほど前記ロックアップクラッチの締結時に前記ロックアップクラッチに供給される前記油圧の初期圧を上昇させる、
車両。
【請求項5】
エンジンと、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを有し前記エンジンと接続される変速機と、を備えた車両の制御方法であって、
前記ロックアップクラッチの締結速度を、前記変速機の油温が低いほど遅くし、
前記ロックアップクラッチの締結速度を、前記エンジンの水温が低いほど遅くし、
前記ロックアップクラッチの締結速度を、前記水温が高いほど速くする、
車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JP6-34034Aには、油温が高いほどロックアップクラッチを急速に締結することが開示されている。
【0003】
これは、ロックアップクラッチの締結に時間がかかるとフェーシングの発熱量が増大して摩耗が大きくなることから、フェーシングが冷え難い高油温時において、フェーシングの保護を図る場合に行われる。すなわち、上記技術は、フェーシング保護の優先度を高めるものであり、高油温時の問題に着目している。
【発明の概要】
【0004】
一方、低油温時にはエンジンの水温も低くなっているので、ロックアップクラッチの締結時の特性だけでなく、エンジンの特性にも着目してロックアップクラッチの締結を行うことが望ましい。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、ロックアップクラッチの締結を車両全体として適切に行うことができるようにすることを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、エンジンと、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを有し前記エンジンと接続される変速機と、を備えた車両の制御装置であって、前記変速機の油温と前記エンジンの水温とに基づいて前記ロックアップクラッチの締結速度に影響するパラメータを決定する制御部を有し、前記制御部は、前記油温が低いほど前記締結速度が遅くなるように前記パラメータを補正するための第1補正値を決定し、前記水温が低いほど前記締結速度が遅くなるように前記パラメータを補正するための第2補正値を決定し、前記第1補正値及び前記第2補正値に基づいて前記パラメータを決定する、車両の制御装置が提供される。
【0007】
また、本発明の別の態様によれば、エンジンと、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを有し前記エンジンと接続される変速機と、を備えた車両の制御方法であって、前記変速機の油温が低いほど前記ロックアップクラッチの締結速度が遅くなるように前記締結速度に影響するパラメータを補正するための第1補正値を決定し、前記エンジンの水温が低いほど前記締結速度が遅くなるように前記パラメータを補正するための第2補正値を決定し、前記第1補正値及び前記第2補正値に基づいて前記パラメータを決定する、車両の制御方法が提供される。
【0008】
これらの態様によれば、ロックアップクラッチの締結速度に影響するパラメータが、変速機の油温及びエンジンの水温に基づいて決定される。すなわち、変速機の作動油の粘度に加えてエンジンのトルクも考慮してパラメータが決定されるので、ロックアップクラッチの締結を車両全体として適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両の概略構成図である。
図2図2は、コントローラが実行する補正処理の内容を示すフローチャートである。
図3図3は、LU指示圧について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、車両100の概略構成図である。車両100は、エンジン1と、エンジン1と接続される変速機としての自動変速機3と、オイルポンプ5と、駆動輪6と、制御装置としてのコントローラ10と、を備える。
【0012】
エンジン1は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、走行用駆動源として機能する。エンジン1は、コントローラ10からの指令に基づいて、回転速度、トルク等が制御される。
【0013】
自動変速機3は、トルクコンバータ2と、締結要素31と、バリエータ30と、油圧コントロールバルブユニット40(以下では、単に「バルブユニット40」ともいう。)と、作動油を貯留するオイルパン32と、を備える。
【0014】
トルクコンバータ2は、エンジン1と駆動輪6の間の動力伝達経路上に設けられる。トルクコンバータ2は、流体を介して動力を伝達する。また、トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ2aを締結することで、エンジン1からの駆動力の動力伝達効率を高めることができる。
【0015】
締結要素31は、トルクコンバータ2とバリエータ30の間の動力伝達経路上に配置される。締結要素31は、図示しない前進クラッチ及び後進ブレーキを備える。締結要素31は、コントローラ10からの指令に基づき、オイルポンプ5の吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧された作動油によって制御される。締結要素31としては、例えば、ノーマルオープンの湿式多板クラッチが用いられる。
【0016】
バリエータ30は、締結要素31と駆動輪6との間の動力伝達経路上に配置され、車速やアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更する。バリエータ30は、プライマリプーリ30aと、セカンダリプーリ30bと、両プーリ30a,30bに巻き掛けられたベルト30cと、を備える。プーリ圧によりプライマリプーリ30aの可動プーリとセカンダリプーリ30bの可動プーリとを軸方向に動かし、ベルト30cのプーリ接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更する。なお、プライマリプーリ30aに作用するプーリ圧及びセカンダリプーリ30bに作用するプーリ圧は、オイルポンプ5からの吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧される。なお、バリエータ30は、トロイダル式の無段変速機構であってもよく、有段の自動変速機構であってもよい。
【0017】
バリエータ30のセカンダリプーリ30bの出力軸には、図示しない終減速ギヤ機構を介してディファレンシャル12が接続される。ディファレンシャル12には、ドライブシャフト13を介して駆動輪6が接続される。
【0018】
オイルポンプ5は、エンジン1の回転がベルトを介して伝達されることによって駆動される。オイルポンプ5は、例えばベーンポンプによって構成される。オイルポンプ5は、オイルパン32に貯留される作動油を吸い上げ、バルブユニット40に作動油を供給する。バルブユニット40に供給された作動油は、各プーリ30a,30bの駆動や、締結要素31の駆動、自動変速機3の各要素の潤滑などに用いられる。
【0019】
コントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ10は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。具体的には、コントローラ10は、自動変速機3を制御するATCU、シフトレンジを制御するSCU、エンジン1の制御を行うECU等によって構成することもできる。
【0020】
コントローラ10には、エンジン1の回転速度(=トルクコンバータ2の入力側の回転速度(ポンプ回転速度Np))を検出する第1回転速度センサ51、トルクコンバータ2の出力側の回転速度(タービン回転速度Nt)を検出する第2回転速度センサ52、締結要素31の出力回転速度(=プライマリプーリ30aの回転速度)を検出する第3回転速度センサ53、セカンダリプーリ30bの回転速度を検出する第4回転速度センサ54、車速Vを検出する車速センサ55、バリエータ30のセレクトレンジ(前進、後進、ニュートラル及びパーキングを切り替えるセレクトレバー又はセレクトスイッチの状態)を検出するインヒビタスイッチ56、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ57、ブレーキの踏力を検出する踏力センサ58、エンジン1の水温を検出する水温センサ59、自動変速機3の油温を検出する油温センサ60、等からの信号が入力される。コントローラ10は、入力されるこれら信号に基づき、エンジン1及び自動変速機3の各種動作を制御する。
【0021】
ところで、自動変速機3の作動油は、温度低下に応じて粘度が増加する粘度特性を有する。よって、ロックアップクラッチ2aの締結時の特性は、冷間時に作動油の粘度に起因して変化し得る。また、低油温時にはエンジン1の水温も低くなっているので、エンジン1のトルクも低下する。
【0022】
よって、車両全体として考えると、ロックアップクラッチ2aの締結時の特性に着目するのは勿論のこと、エンジン1の特性にも着目してロックアップクラッチ2aの締結を行うことが望ましい。
【0023】
そこで、本実施形態では、コントローラ10の制御部は、ロックアップクラッチ2aの締結を車両全体として適切に行うことができるように、図2にフローチャートで示す補正処理を行って、ロックアップクラッチ2aに供給される油圧の指示圧(以下、LU指示圧という。)に関するパラメータを決定する。なお、本実施形態における制御部とは、コントローラ10の補正処理を実行する機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0024】
補正処理の説明に先立ってLU指示圧について説明すると、ロックアップクラッチ2aを締結する際は、コントローラ10は、図3に示すように、まずLU指示圧を初期圧まで上昇させる(時刻t1)。これにより、ロックアップクラッチ2aのピストンに油圧が充填される。
【0025】
次に、コントローラ10は、LU指示圧を徐々に上昇させる。これにより、ロックアップクラッチ2aの伝達容量が徐々に発生し、トルクコンバータ2の入力軸の回転と出力軸の回転とが同期する。上述したLU指示圧に関するパラメータは、このときのLU指示圧の上昇の傾き(ランプの傾き)であって、ロックアップクラッチ2aの締結速度に影響する。
【0026】
コントローラ10は、入力軸の回転と出力軸の回転とが同期したと判定すると(時刻t2)、LU指示圧を締結圧まで上昇させてロックアップクラッチ2aを締結する。
【0027】
続いて、図2に示すフローチャートを参照しながら、コントローラ10(制御部)が実行する補正処理について説明する。
【0028】
ステップS11では、コントローラ10は、油温センサ60から油温を取得する。
【0029】
ステップS12では、コントローラ10は、取得した油温に基づいて第1補正値を決定する。
【0030】
第1補正値は、ランプの傾きを補正するために用いられる補正値であり、油温が低いほどランプの傾きが小さくなるように設定される。第1補正値は、演算式を用いて演算により求めてもよいし、予め作成された油温と第1補正値とのマップデータに基づいて求めてもよい。
【0031】
図3に示すLU指示圧が、基準となる所定の油温(以下、基準油温という。)の場合のLU指示圧であるとして説明すると、油温センサ60で検出された油温が基準油温よりも低い場合は、第1補正値は、ランプの傾きが矢印Bの方向に変化するように、つまり小さくなるように設定される。反対に、油温センサ60で検出された油温が基準油温よりも高い場合は、第1補正値は、ランプの傾きが矢印Aの方向に変化するように、つまり大きくなるように設定される。
【0032】
本実施形態では、ランプの傾きを大きくするための第1補正値がプラスの値となり、ランプの傾きを小さくするための第1補正値がマイナスの値となる。なお、基準油温の設定によっては、第1補正値がプラスの値のみ、又はマイナスの値のみを取り得る。すなわち、第1補正値は、油温が低いほどランプの傾きを小さくするための補正値であると言える。
【0033】
ステップS13では、コントローラ10は、水温センサ59から水温を取得する。
【0034】
ステップS14では、コントローラ10は、取得した水温に基づいて第2補正値を決定する。
【0035】
第2補正値は、第1補正値と同様に、ランプの傾きを補正するために用いられる補正値であり、水温が低いほどランプの傾きが小さくなるように設定される。第2補正値は、演算式を用いて演算により求めてもよいし、予め作成された水温と第2補正値とのマップデータに基づいて求めてもよい。
【0036】
図3に示すLU指示圧が、基準となる所定の水温(以下、基準水温という。)の場合のLU指示圧であるとして説明すると、水温センサ59で検出された水温が基準水温よりも低い場合は、第2補正値は、ランプの傾きが矢印Bの方向に変化するように、つまり小さくなるように設定される。反対に、水温センサ59で検出された水温が基準水温よりも高い場合は、第2補正値は、ランプの傾きが矢印Aの方向に変化するように、つまり大きくなるように設定される。
【0037】
本実施形態では、ランプの傾きを大きくするための第2補正値がプラスの値となり、ランプの傾きを小さくするための第2補正値がマイナスの値となる。なお、基準水温の設定によっては、第2補正値がプラスの値のみ、又はマイナスの値のみを取り得る。すなわち、第2補正値は、水温が低いほどランプの傾きを小さくするための補正値であると言える。
【0038】
ステップS15では、コントローラ10は、アクセル開度センサ57からアクセル開度APOを取得する。
【0039】
ステップS16では、コントローラ10は、取得したアクセル開度APOに基づいて第3補正値を決定する。
【0040】
第3補正値は、第1補正値及び第2補正値と同様に、ランプの傾きを補正するために用いられる補正値であり、アクセル開度APOが大きいほどランプの傾きが大きくなるように設定される。第3補正値は、演算式を用いて演算により求めてもよいし、予め作成されたアクセル開度APOと第3補正値とのマップデータに基づいて求めてもよい。
【0041】
第3補正値は、アクセル開度APO=0を基準としてプラスの値で設定することができる。
【0042】
ステップS17では、コントローラ10は、第1~第3補正値に基づいて、ランプの傾きを補正するために用いる最終的な補正値としてLU補正値を決定する。具体的には、LU補正値は、第1~第3補正値の和である。なお、第1~第3補正値それぞれの重みは、適宜調整してもよい。
【0043】
ステップS18では、コントローラ10は、LU補正値を用いてランプの傾きを補正する。
【0044】
LU補正値がランプの傾きを大きくする補正値となった場合、すなわちプラスの値である場合は、図3に示す矢印Aの方向に変化するようにランプの傾きが補正される。反対に、LU補正値がランプの傾きを小さくする補正値となった場合、すなわちマイナスの値である場合は、図3に示す矢印Bの方向に変化するようにランプの傾きが補正される。なお、LU補正値の絶対値が大きいほどランプの傾きの変化量も大きくなる。
【0045】
ステップS19では、コントローラ10は、第1補正値を用いてLU指示圧の初期圧を補正する。
【0046】
初期圧の補正に用いられる演算式は、油温が低いほど初期圧が高くなるように構築されている。
【0047】
油温センサ60で検出された油温が基準油温よりも低い場合は、初期圧は、図3に示すように、矢印Cで示す方向に補正されて高くなる。反対に、油温センサ60で検出された油温が基準油温よりも高い場合は、初期圧は、矢印Dで示す方向に補正されて低くなる。言い換えると、LU指示圧の初期圧は、油温が低いほど高くなるように補正される。
【0048】
なお、初期圧の補正については、第1補正値を用いるのではなく、ステップS12で取得した油温に基づいて初期圧補正用の補正値を決定して用いてもよい。
【0049】
また、ステップS11からステップS16までの処理は、適宜順序を入れ替えてもよいし、いくつかのステップを並列処理してもよい。
【0050】
続いて、以上のようにLU指示圧を補正することの作用効果について説明する。
【0051】
上述したように、自動変速機3の作動油は、温度が低くなると粘度が高くなる。よって、油温が低いと、ロックアップクラッチ2aの締結時に伝達容量の立ち上がりが急になって締結ショックが生じやすくなる。
【0052】
これに対して、本実施形態では、油温が低くなるほどランプの傾きが小さくなるようにLU指示圧を補正するので、ロックアップクラッチ2aの締結速度が遅くなり、伝達容量の立ち上がりが緩やかになる。これにより、締結ショックの発生が抑制される。
【0053】
また、エンジン1のトルクに着目すると、締結ショック防止の観点からは、トルクが高くなるほどロックアップクラッチ2aの締結速度を速くし、トルクが低くなるほど締結速度を遅くすることが好ましい。
【0054】
エンジン1は、水温が低いほどトルクが下がるので、本実施形態では、水温が低くなるほどランプの傾きが小さくなるようにLU指示圧を補正して、ロックアップクラッチ2aの締結速度を遅くする。
【0055】
このように、自動変速機3の油温及びエンジン1の水温の双方を考慮してランプの傾きの補正係数であるLU補正値を決定することで、ロックアップクラッチ2aの締結を車両全体として適切に行うことができ、締結ショックを抑制することができる。
【0056】
なお、図2に示すフローチャートでは、第1~第3補正値に基づいて最終的にLU指示圧の補正に用いるLU補正値を決定しているが、上記効果は、第1補正値と第2補正値とに基づいてLU補正値を決定することで得ることができる。
【0057】
一方で、エンジン1のトルクが高い場合は、ロックアップクラッチ2aの締結速度を速くして締結ショックを低減することが好ましい。よって、第1補正値及び第2補正値に加えて、アクセル開度APOに基づく第3補正値を考慮してLU補正値を決定することで、ロックアップクラッチ2aのロックアップ開放からロックアップ締結までの時間(締結時間)の変動を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、自動変速機3の油温が低いほどLU指示圧の初期圧を上昇させる。これによれば、ロックアップクラッチ2aの伝達容量が発生する前の初期圧発生段階においてピストンに充填される油圧が高くなり、ピストンのストロークを早めることができる。
【0059】
すなわち、自動変速機3の油温が低いほどロックアップクラッチ2aの締結速度を遅くして伝達容量の上昇を緩やかにする一方、ピストンのストロークを早めることで、ロックアップクラッチ2aの締結までのラグを低減することができる。
【0060】
以上述べたように、本実施形態によれば、コントローラ10は、自動変速機3の油温とエンジン1の水温とに基づいてロックアップクラッチ2aの締結速度に影響するパラメータを決定する。パラメータは、ロックアップクラッチ2aの締結時にロックアップクラッチ2aに供給される油圧の上昇の傾き(ランプの傾き)である。
【0061】
より詳しくは、コントローラ10は、油温が低いほどロックアップクラッチ2aの締結速度が遅くなるようにパラメータを補正するための第1補正値を決定し、水温が低いほど締結速度が遅くなるようにパラメータを補正するための第2補正値を決定し、第1補正値及び前記第2補正値に基づいてパラメータを決定する。
【0062】
これによれば、ロックアップクラッチ2aの締結速度に影響するパラメータが、自動変速機3の油温及びエンジン1の水温に基づいて決定される。すなわち、自動変速機3の作動油の粘度に加えてエンジン1のトルクも考慮してパラメータが決定されるので、ロックアップクラッチ2aの締結を車両全体として適切に行うことができる。
【0063】
また、コントローラ10は、アクセル開度APOが大きいほど締結速度が速くなるようにパラメータを補正するための第3補正値を決定し、第1補正値、第2補正値、及び第3補正値に基づいてパラメータを決定する。
【0064】
これによれば、ロックアップクラッチ2aのロックアップ開放からロックアップ締結までの時間(締結時間)の変動を抑制することができる。
【0065】
また、コントローラ10は、油温が低いほどロックアップクラッチ2aの締結時にロックアップクラッチ2aに供給される油圧の初期圧を上昇させる。
【0066】
これによれば、自動変速機3の油温が低いほどロックアップクラッチ2aの締結速度を遅くして伝達容量の上昇を緩やかにする一方、ピストンのストロークを早めることで、ロックアップクラッチ2aの締結までのラグを低減することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0068】
本願は2018年12月14日に日本国特許庁に出願された特願2018-234841に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3