(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】レーザにより離型可能な組成物、その積層体及びレーザによる離型方法
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20220831BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220831BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20220831BHJP
H01L 25/04 20140101ALI20220831BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20220831BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20220831BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220831BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20220831BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220831BHJP
C08F 20/34 20060101ALI20220831BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20220831BHJP
【FI】
C09J133/00
H01L23/12 501P
H01L25/04 Z
B23K26/57
C09J5/02
C09J11/06
C09J7/30
C09J11/04
C08F20/34
B32B7/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021005034
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2021-03-23
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508054404
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 士芸
(72)【発明者】
【氏名】李 政緯
(72)【発明者】
【氏名】林 季延
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/016063(WO,A1)
【文献】特開2014-189563(JP,A)
【文献】特開2015-021065(JP,A)
【文献】特開2012-062369(JP,A)
【文献】特開2018-093021(JP,A)
【文献】特開2018-064092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 ー 201/10
H01L 23/12
H01L 25/18
B23K 26/57
C08F 20/34
B32B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂、遮光材、添加剤及び溶剤を含
む組成物であって、当該組成物から形成された硬化膜がレーザにより剥離可能な組成物であり、
前記アクリル樹脂は、第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基、環状エーテル基含有有機基、並びにヒドロキシル基含有有機基を含み、
前記添加剤は、少なくとも1種の密着促進剤を含む、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の
組成物であって、
前記アクリル樹脂において、前記環状エーテル基含有有機基と前記窒素含有有機基との重量比は、1:0.015~1:10であり、
前記環状エーテル基含有有機基と前記ヒドロキシル基含有有機基との重量比は、1:0.015~1:25であり、
前記窒素含有有機基と前記ヒドロキシル基含有有機基との重量比は、1:0.02~1:60である、
組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の
組成物であって、
前記アクリル樹脂の酸価は4mg/g未満である、
組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物であって、
前記密着促進剤は、エチレン性基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1種のシロキサン化合物を含む、
組成物。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物であって、
前記第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基は、2-(ハイドロカルビル)アミノハイドロカルビルエステル基、ジハイドロカルビルアミノハイドロカルビルエステル基、ウレタン基、ピリジン基、ピペラジニル基及びモルホリニル基のうちの少なくとも1種であり、
前記ハイドロカルビルにおけるいずれかの-CH
2-は、それぞれ独立して-NH-、-O-又は-S-で置換されていてもよく、各置換基は互いに結合しない、
組成物。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物であって、
前記アクリル樹脂は、炭素数が異なる環を有する環状エーテル基を少なくとも2種含む、
組成物。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物であって、
前記環状エーテル基は、オキセタニル基、グリシジル基又はそれらの組み合わせである、
組成物。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物であって、
前記遮光材は、前記組成物に、可視光線、赤外線若しくは紫外線のうちの少なくとも1つの波長域の光を吸収させ、又は可視光線、赤外線若しくは紫外線のうちの少なくとも1つの波長域の光の透過を遮断させる材料である、
組成物。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物であって、
前記添加剤は、架橋剤をさらに含む、
組成物。
【請求項10】
支持材と、
前記支持材上に請求項1又は2に記載の
組成物で形成される膜と、
を含む、積層体。
【請求項11】
離型可能な支持膜と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物で形成される一時接着膜と、
を含み、
前記一時接着膜は、前記離型可能な支持膜の一面に設けられる、複合膜。
【請求項12】
支持材を提供するステップと、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物で形成される一時接着膜を前記支持材の一面に転写するステップと、
レーザにより前記支持材を除去するステップと、
を含むレーザによる離型方法。
【請求項13】
支持材を提供するステップと、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
組成物を前記支持材上に塗布し、硬化させて膜を形成するステップと、
レーザにより前記支持材を除去するステップと、
を含む、レーザによる離型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関し、特にレーザにより離型可能な組成物、それを用いて形成された積層体、及びこのレーザにより離型可能な組成物又はこの積層体を用いたレーザによる離型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より高効率、より安価、より小型の電子製品に対する市場の要求を満たすために、ファンアウトウェーハレベルパッケージ(Fan Out Wafer Level Package、FOWLP)、2.5次元集積回路(2.5D IC)、および3次元集積回路(3D IC)などの技術は半導体パッケージの主流となっている。薄型化シリコンウェーハの反りや脆性などの特性が後続のプロセスに影響を与えることを防ぐために、キャリア(Carrier)の使用は不可欠になっている。しかしながら、製品をより小型化する必要に対しては、キャリアは最終的に除去される。したがって、パッケージング技術には離型層の使用が伴うことが多く、離型層の市場が生まれている。レーザによる離型は、高価な機器が要求されるが、低温でデバイスからキャリアをすばやく除去できるという利点があるので、現在の主流の離型技術となっている。
【0003】
離型層の上方で再配線(Redistribution Layer)、ダイボンディング(Die bonding)、モールディング(Molding)、ウェーハ研磨、チップ反転などの工程を行うために、これらの工程の要求に応じて、離型層を形成する材料は優れた基材密着性及び耐溶剤性を有する必要がある。しかしながら、従来技術では、遮光材を含む材料は、材料の不連続面の増加により耐溶剤特性が低下することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、上記問題を解決するために、本発明は、優れた基材密着性、貼付性及び耐溶剤性を有するレーザにより離型可能な組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、レーザにより離型可能な組成物を提供することである。前記レーザにより離型可能な組成物は、アクリル樹脂、遮光材、添加剤及び溶剤を含み、前記アクリル樹脂は、第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基、環状エーテル基含有有機基並びにヒドロキシル基含有有機基を含み、前記添加剤は、少なくとも1種の密着促進剤を含む。
【0006】
本発明の一実施形態において、前記アクリル樹脂の酸価は4mg/g未満である。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記密着促進剤は、エチレン性基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1種を含むシロキサン化合物である。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基は、2-(ハイドロカルビル)アミノハイドロカルビルエステル基、ジハイドロカルビルアミノハイドロカルビルエステル基、ウレタン基、ピリジン基、ピペラジニル基及びモルホリニル基のうちの少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記アクリル樹脂は、炭素数が異なる環を有する環状エーテル基を少なくとも2種含む。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記環状エーテル基は、オキセタニル基、グリシジル基又はそれらの組み合わせである。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記遮光材は、レーザにより離型可能な組成物に、可視光線、赤外線若しくは紫外線のうちの少なくとも1つの波長域の光を吸収させ、又は可視光線、赤外線若しくは紫外線のうちの少なくとも1つの波長域の光の透過を遮断させる材料である。
【0012】
本発明の別の目的は、積層体を提供することである。前記積層体は、支持材と、前記支持材上に前記レーザにより離型可能な組成物で形成される膜とを含む。
【0013】
本発明の別の目的は、レーザによる離型方法を提供することである。当該方法は、支持材を提供するS1と、前記レーザにより離型可能な組成物を前記支持材に塗布し、硬化させて膜を形成するS2と、前記膜上に加工素子を形成するS3と、レーザにより前記支持材を除去するS4と、を含む。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記加工素子は、ベアチップ又は再配線層である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例に係るレーザによる離型方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の少なくとも1つの実施例を詳しく説明する前に、本発明は、以下に説明される複数の例で挙げられる詳細、例えば、実施例に示される数量又は特定の混合比などに限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施例又は様々な方式により実施又は実現され得る。
【0017】
[レーザにより離型可能な組成物]
本発明によれば、基材密着性、貼付性、転写性及び耐溶剤性に優れたレーザにより離型可能な組成物が提供される。当該レーザにより離型可能な組成物は、アクリル樹脂、遮光材、添加剤及び溶剤を含む。以下、各成分について詳しく説明する。
【0018】
[アクリル樹脂]
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態において、アクリル樹脂は、第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基、環状エーテル基含有有機基、並びにヒドロキシル基含有有機基を含む。
【0019】
前記第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基は、ピリジン基、ピペラジニル基、モルホリニル基、2-(ハイドロカルビル)アミノハイドロカルビルエステル基、ジハイドロカルビルアミノハイドロカルビルエステル基、ウレタン基などであってもよいが、これらに限定されない。前記ハイドロカルビルにおけるいずれかの-CH2-は、それぞれ独立して-NH-、-O-又は-S-で置換されていてもよく、各置換基は互いに結合しない。具体的には、第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含むモノマー(例えば、アクリロイルモルフォリン、メタクリロイルモルフォリン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン、N-アクリロイルピペラジン、2-(tert-ブチルアミノ)メタクリル酸エチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノプロピル、アクリルウレタン、メタアクリルウレタンなど)を用いて樹脂を合成することができる。
【0020】
前記環状エーテル基含有有機基は、オキセタニル基、グリシジル基などであってもよいが、これらに限定されない。具体的には、例えば、環状エーテル基含有モノマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α-エチルグリシジルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、オキセタンメタクリレート、オキセタンアクリレートなど)を用いて樹脂を合成することができる。
【0021】
前記ヒドロキシル基含有有機基としては、ヒドロキシル基含有モノマーを用いて樹脂を合成することができる。ヒドロキシル基含有モノマーには、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが含まれるが、これに限定されない。具体的には、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、アクリル酸ヒドロキシヘキシなどが挙げられる。前記ヒドロキシル基含有有機基は、グラフト重合により形成されてもよい。例えば、まず、樹脂の主鎖にカルボキシル基を導入し、カルボキシル基を有する樹脂を形成し、さらに、エポキシ化合物を用いてグラフト重合を行い、カルボキシル基とエポキシ基とを反応させ、ヒドロキシル基を生成する。具体的には、前記カルボキシル基を有する樹脂は、特に制限されないが、一般的にカルボキシル基を有する重合性モノマーを重合して製造されてもよく、ポリカルボン酸とポリオールとを重合して得られたカルボキシル基含有ポリエステルを前記カルボキシル基含有樹脂としてもよい。前記カルボキシル基を有する重合性モノマーには、(メタ)アクリル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸、クロトン酸、メチレンコハク酸、フマル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルアジピン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2-アクリロイルオキシプロピルアジピン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシブチルコハク酸、2-アクリロイルオキシブチルアジピン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシブチルヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシブチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシブチルマレイン酸などが含まれるが、これらに限定されない。前記グラフト重合に用いるエポキシ化合物は、エポキシ基を含めばよく、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α-エチルグリシジルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ヒドロキシル基は、アルデヒド、ケトン又はカルボン酸の還元により得ることもできる。
【0022】
好ましくは、本発明のアクリル樹脂は、炭素数が異なる環を有する環状エーテル基を少なくとも2種含む。より好ましくは、前記少なくとも2種の炭素数が異なる環を有する環状エーテル基は、オキセタニル基とグリシジル基との組み合わせである。
【0023】
本発明の実施形態に含まれる第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を有する窒素含有有機基、環状エーテル基含有有機基、ヒドロキシル基含有有機基の比率は、本発明の密着性及び耐溶剤性に影響を与えない限り、特に限定されない。具体的には、アクリル樹脂全体の固形分含有量を100重量%とする場合、第三級アミノ基又は第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基を含むモノマーは、1~50重量%、好ましくは3~35重量%、より好ましくは5~20重量%であり、環状エーテル基を含むモノマーは、5~65重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~35重量%であり、ヒドロキシル基を含むモノマーは、1~75重量%、好ましくは3~60重量%、より好ましくは5~45重量%である。
【0024】
さらに、アクリル樹脂において、前記環状エーテル基含有有機基と、前記窒素含有有機基との重量比は1:0.015~1:10であり、好ましくは1:0.05~1:3.5であり、より好ましくは1:0.17~1:0.67である。前記環状エーテル基含有有機基と、前記ヒドロキシル基含有有機基との重量比は1:0.015~1:25、好ましくは1:0.05~1:6、より好ましくは1:0.17~1:2.3であり、前記窒素含有有機基と、前記ヒドロキシル基含有有機基との重量比は1:0.02~1:60、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:1~1:6である。
【0025】
本発明の特性に影響を与えない限り、本発明のアクリル樹脂は、他の官能基をさらに含んでもよい。前記他の官能基には、芳香環基、脂環基、シロキサン基、カルボン酸基などが含まれるが、これらに限定されない。具体的には、芳香環基を有するモノマーは、例えば、スチレン、o-フェニルフェノキシエチルアクリレートなどである。脂環基を有するモノマーは、例えば、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルなどである。シロキサン基を有するモノマーは、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどである。カルボン酸基を有するモノマーは、例えば、メタクリル酸、アクリル酸などである。他の官能基の比率は、本発明の密着性及び耐溶剤性に影響を与えない限り、特に限定されない。具体的には、アクリル樹脂全体の固形分含有量を100重量%とする場合、他の官能基を有するモノマーは0~80重量%、好ましくは0~60重量%、より好ましくは20~50重量%である。
【0026】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、60000以上、好ましくは70000~140000、より好ましくは80000~100000である。これによって、優れた密着性及び耐溶剤性が達成される。本発明のレーザにより離型可能な組成物全体に対するアクリル樹脂の固形分含有量の比率は、本発明の密着性及び耐溶剤性に影響を与えない限り、特に限定されない。具体的には、レーザにより離型可能な組成物全体に対するアクリル樹脂の固形分含有量は、5~70重量%、好ましくは7~55重量%、より好ましくは10~40重量%である。
【0027】
好ましくは、前記アクリル樹脂の酸価は4mg/g未満である。これによって、本発明の優れた密着性及び耐溶剤性が達成される。
【0028】
[遮光材]
本発明の遮光材は、前記レーザにより離型可能な組成物に、可視光線、赤外線若しくは紫外線のうちの少なくとも1つの波長域の光を吸収させ、又は可視光線、赤外線若しくは紫外線のうちの少なくとも1つの波長域の光の透過を遮断させる材料であればよい。遮光材の添加により、その特定の波長域に対応するレーザを使用してレーザにより離型可能な組成物で形成される膜と支持材とを分離することができる。遮光材の材料には、カーボンブラック、チタンブラック、酸化チタン、酸化鉄、窒化チタン、シリカフューム、有機顔料、無機顔料、染料又はそれらの組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
好ましくは、前記遮光材は金属イオンを含まない。
【0030】
遮光材の比率は本発明の密着性及び耐溶剤性に影響を与えない限り、特に限定されない。具体的には、レーザにより離型可能な組成物全体に対する遮光材の固形分含有量は、は20~90重量%、好ましくは35~85重量%、より好ましくは50~70重量%である。また、本発明の樹脂は、遮光材の添加比率を50重量%よりも高くすることができ、レーザによる離型に必要なエネルギーを減少させることができる。
【0031】
[添加剤]
添加剤は、例えば密着促進剤、架橋剤などである。密着促進剤は、シラン類、シロキサン類の化合物又は界面活性剤であってもよい。好ましくは、密着促進剤は、エチレン性基、エポキシ基、アミノ基、酸無水物、チオール基又はイソシアネート基などを含むシロキサン化合物である。より好ましくは、密着促進剤は、エチレン性基を含むシロキサン化合物である。架橋剤は、好ましくは熱架橋剤である。熱架橋剤は、末端封止型又は非末端封止型イソシアネート基を有する化合物、例えば、ジビニルエーテルのようなアルケニルエーテル基を含む化合物、ハイドロカルビルオキシハイドロカルビルを含む化合物、ジ酸無水物基を含む化合物、ジチオール基を含む化合物、エポキシ樹脂、メラミン化合物、フェノール化合物などであってもよい。添加剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
好ましくは、添加剤は、少なくとも1種の密着促進剤を含む。より好ましくは、添加剤は、少なくとも1種の密着促進剤及び1種の架橋剤を含む。
【0033】
具体的には、密着促進剤の例としては、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピル]トリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-(メチルアクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。熱架橋剤の例としては、ヘキサヒドロキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、トリメチロールフェノール、3,3’,5,5’-テトラメトキシメチルビフェノール、フェノールエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0034】
添加剤の比率は、本発明の密着性及び耐溶剤性に影響を与えない限り、特に制限されない。具体的には、レーザにより離型可能な組成物全体に対する添加剤の固形分含有量は5~35重量%、好ましくは7~25重量%、より好ましくは10~15重量%である。
【0035】
[溶剤]
溶剤は、アミド類、シクロアミド類、エステル類、エーテル類、アルコール類又はこれらの溶剤の任意比率での混合溶剤であってもよい。N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスファミド、γ-ブチロラクトン、ピリジン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。溶剤の比率は、本発明の密着性及び耐溶剤性に影響を与えず、塗布により成膜可能であれば、特に制限されない。
【0036】
[複合膜]
本発明のレーザにより離型可能な組成物は、転写機能を有する複合膜の形成にも適用できる。前記複合膜は、離型可能な支持膜と、本発明のレーザにより離型可能な組成物で形成される一時接着膜とを含む。一時接着膜は、離型可能な支持膜の一面に設けられる。具体的には、レーザにより離型可能な組成物を支持材の表面に塗布し、加熱により一部又は全部の溶剤を除去することで得られる。また、複合膜中の一時接着膜は、剥離可能である。
【0037】
離型可能な支持膜の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの膜厚15~200μmの合成樹脂膜を含むが、これらに限定されない。一時接着膜における離型可能な支持膜から離間する面は、保護膜で被覆されてもよい。
【0038】
また、前記塗布方法には、スピンコーティング、スリットコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷などが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
[積層体]
本発明によれば、積層体がさらに提供される。本発明の積層体は、支持材と、支持材上に前記レーザにより離型可能な組成物で形成される一時接着膜とを含む。具体的には、レーザにより離型可能な組成物を支持材の表面に塗布し、加熱により一部又は全部の溶剤を除去して得られる。前記複合膜を転写により支持材の表面に形成させることもできる。
【0040】
本発明の支持材は、特に制限されず、レーザが透過可能な材料であればよく、例えば、ガラス、シリコンウェーハなどが挙げられる。
【0041】
本発明のレーザにより離型可能な組成物を用いて支持材上に膜を形成する塗布方法は、特に制限されず、支持材上に塗布して成膜可能であればよく、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティングなどが挙げられる。
【0042】
塗布終了後、40℃~100℃のプリベーク温度でホットプレート上において5~20分間加熱して溶剤を除去し、さらに、200℃~300℃で30~60分間加熱することで硬化して成膜する。
【0043】
[レーザによる離型方法]
本発明によれば、レーザによる離型方法がさらに提供される。この方法は、支持材1を提供するS1と、前記レーザにより離型可能な組成物を前記支持材上に塗布し、硬化して膜2を形成するステップS2と、膜2に加工素子3を形成するステップS3と、レーザにより支持材1を除去するステップS4と、を含む。
【0044】
具体的には、ステップS1及びS2は、積層体を提供するステップである。さらに、ステップS2は、転写により行うこともできる。つまり、前記レーザにより離型可能な組成物で形成された一時接着膜を前記支持材の一面に転写する。
【0045】
具体的には、ステップS3の加工素子はベアチップ(KGD)又は再配線層(RDL)であってもよい。さらに、前記加工素子がベアチップ(KGD)である場合、ステップS3は、モールディング(molding)をさらに含む。前記加工素子が再配線層(RDL)である場合、ステップS3は、ダイボンディング(die bonding)、モールディング(molding)などのステップをさらに含む。
【0046】
具体的には、ステップS4に使用されるレーザの種類は特に制限されず、YAGレーザ、ルビーレーザ、YVO4レーザ、ファイバーレーザなどの固体レーザ、色素レーザなどの液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザなどのガスレーザ、半導体レーザ、半導体励起固体レーザ(Diode Pump Solid State Laser,DPSSL)、自由電子レーザなどを含んでもよい。
【0047】
さらに、ステップS4は、レーザにより支持材1を除去した後に、本発明のレーザにより離型可能な組成物で形成された残留膜を除去する清掃ステップ、及び半田印刷(solder printing)などのステップをさらに含んでもよい。前記清掃ステップは、具体的には、例えば、プラズマを用いるドライエッチング、化学薬品を用いるウェットエッチングなどである。
【0048】
応用分野に応じて、半導体分野での応用以外、いずれかの基板、材料又は加工素子は本発明の積層体を用い、さらに1つ又は複数の工程を行い、最後にレーザにより本発明の積層体を基板、材料又は加工素子から分離すれば、本発明のレーザによる離型方法の範囲に含まれる。
【0049】
[実施例]
アクリル樹脂の合成
1L反応釜において、温度計、ビュレット、窒素ガス入口及び撹拌棒装置を組み込む。まず、150gプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を釜底に入れ、回転速度200rpmで撹拌しながら85℃に昇温し、次いで、重量比が異なるモノマー及び0.005molのアゾビスイソブチロニトリルを150gのPGMEAに混合し、滴定により反応釜に滴下し、さらに温度を保持しながら4時間撹拌した後、室温に降温して反応を終了させることで固形分含有量が40%の樹脂が得られる。
【0050】
レーザにより離型可能な組成物の調製
まず、密着促進剤及び架橋剤を20%のN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)及び80%プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を含む混合溶剤に入れ、均一に混合し、樹脂を加えて均一に混合した後、遮光材(達興材料から購入、PK260)を加えて1時間撹拌することで固形分含有量が20%の組成物が得られる。
【0051】
積層体の形成
表1~表3に示される比率の組成物を、厚さが1.3μmの膜が形成可能な回転速度で、ガラス支持体にスピンコートし、50℃及び90℃でそれぞれ5分間プリベークして溶剤を除去し、膜表面が乾いた後、230℃で30分間加熱し、硬化して成膜することで、積層体が形成される。
【0052】
耐溶剤性試験
80℃でフォトレジスト除去剤(AT7880P、品化から購入)を浸漬し、異なる時点で碁盤目試験を行う。試験方法は、ASTM D3359に従って剥離状況を判断する。AT7880P組成は、ジメチルスルホキシド、エタノールアミン及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。表において、◎は浸漬時間が10分間を超え、碁盤目試験の結果が5Bである場合を示す。Oは浸漬時間が10分間であり、碁盤目試験の結果が5Bである場合を示す。△は浸漬時間が5分間であり、碁盤目試験の結果が5Bである場合を示す。Xは浸泡時間にかかわらず、5Bに達さない場合を示す。
【0053】
密着性測試
引張試験機を用いて引張試験(Pull off test)を行う。まず、フレーム接着剤(723K1、AUOから購入)を用いて試験片に定量的にスポットし、上層にガラスを接着し、355nmのUVランプで169秒照射することで光硬化ステップを行い、120℃で1時間熱硬化し、最後に引張試験を行い、塗層からの剥離に必要な力を確認し、フレーム接着剤の面積で割り、引張応力(tensile stress)を得る。ここで、接着シートに対するガラスの引張応力の数値を標準として2N/mm2と定義し、全ての試験片の引張応力を正規化することで数値が得られる。
【0054】
レーザによる離型試験
1ワット又はそれ以上の355nmレーザにより連続走査した後、粘着紙(protect film)で剥離可能な材料を、レーザによる離型可能な材料と称する。
【0055】
以下の実施例はいずれもレーザによる離型可能な材料に該当する。
【0056】
樹脂成分の説明
OXMA:オキセタンメタクリレート、GMA:グリシジルメタクリレート、ACMO:アクリロイルモルフォリン、HEMA:メタクリル酸ヒドロキシエチル、FA513M: メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、EM2105:o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、EM50:スチレン、A174:メタクリルアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、DMAEMA:アクリルジメチルアミノエチル。
【0057】
添加剤成分の説明
X-12-1050:2つ以上のアクリル官能基を有するシロキサン聚合物(信越から購入)、Alink:3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、AD124:[3-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピル]トリメトキシシラン、N740:フェノールエポキシ樹脂、TMOM-BP:3,3’,5,5’-テトラメトキシメチルビフェノール、HMMM:ヘキサメトキシメチルメラミン。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
実施例及び比較例1~4から分かるように、第三級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む窒素含有有機基、環状エーテル基並びにヒドロキシル基を同時に含まない樹脂は、本発明の優れた耐溶剤性又は密着性を達成することができない。実施例7及び実施例8から分かるように、樹脂が2種類の環状エーテル基を有する組成物は、優れた密着性を有する。実施例11、実施例17及び実施例18から分かるように、エチレン性基含有シロキサン化合物を含む組成物は、優れた密着性を有し、エポキシ基含有シロキサン化合物又はイソシアネート基含有シロキサン化合物を含む組成物は、密着性がそれほど優れていない。
【0063】
[応用分野]
本発明のレーザにより離型可能な組成物、及びその積層体は、半導体パッケージング分野での応用以外、任意の支持材又は材料を一時キャリアを介して担持し、次いで1つ又は複数の工程を行い、最後にレーザによりキャリアと支持材又は材料とを分離する必要があれば、いずれも本発明の提供可能な範囲に含まれる。例えば、軟性支持材又は太陽電池の製造も本発明の提供可能な範囲に含まれる。
【0064】
以上の実施形態により本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に制限されない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、当業者は様々な変更や修飾を行うことができる。従って、本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲に準ずる。
【符号の説明】
【0065】
S1 ステップ1
S2 ステップ2
S3 ステップ3
S4 ステップ4
1 支持材
2 膜
3 加工素子