IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タカラトミーの特許一覧

<>
  • 特許-動作玩具 図1
  • 特許-動作玩具 図2
  • 特許-動作玩具 図3
  • 特許-動作玩具 図4
  • 特許-動作玩具 図5
  • 特許-動作玩具 図6
  • 特許-動作玩具 図7
  • 特許-動作玩具 図8
  • 特許-動作玩具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】動作玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 31/08 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
A63H31/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021107849
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2022-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 三郎
【審査官】大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-22000(JP,U)
【文献】特開平6-190151(JP,A)
【文献】実開昭58-95895(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00~37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の歯車が設けられ、軸方向に移動可能で、移動によって、前記一の歯車と他の歯車とが互いに噛合解除する第1位置と、前記一の歯車と前記他の歯車とが互いに噛合する第2位置とを選択的に取り得る可動軸と、
前記可動軸を前記第1位置に向けて付勢する第1コイルばねと、
前記可動軸を移動させるためのトリガとなる操作子と、を備えた動作玩具であって、
所定の付勢力で所定位置に復帰可能で、前記操作子の操作によって一方向に動作可能な可動体と、
前記可動体と第2コイルばねを介して連係されるとともに前記第1コイルばねの付勢力により前記可動軸が常時に当接する摺接体を有する運動方向変換機構と、
を備え、
前記運動方向変換機構は、前記可動体が前記所定位置から一方向に動作するときに畜勢される前記第2コイルばねの付勢力によって前記摺接体を前記可動軸に摺接させることで前記第1コイルばねの付勢力に抗して前記可動軸を前記第2位置まで移動させるように構成されていることを特徴とする動作玩具。
【請求項2】
前記操作子を操作する毎に、前記所定位置から離間した位置での前記可動体のラッチとラッチ解除とを交互に行うラッチ機構を備え、
前記ラッチ機構は、前記可動体をラッチしている間、前記第2コイルばねの付勢力で前記摺接体を介して前記可動軸を前記第2位置に向けて付勢することを特徴とする請求項1に記載の動作玩具。
【請求項3】
前記操作子の操作時に前記可動軸の進路に対して突入して前記可動軸の前記第2位置への移動を阻止し、前記操作子から手を離した時に前記可動軸の進路から退出して前記可動軸の前記第2位置への移動を許容するストッパが設けられ、
前記可動体は、前記操作子の操作により前記所定位置から一方向に動作するときに前記操作子に遅れて始動し、前記可動体が始動する前に前記ストッパが前記可動軸の進路に突入可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の動作玩具。
【請求項4】
前記ストッパには、前記操作子の操作時に既に前記第2位置に前記可動軸がある場合に前記可動軸の外周との摺接により前記ストッパを撓ませ前記進路から逃げさせるためのばね部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の動作玩具。
【請求項5】
前記一の歯車と前記他の歯車との噛合により所定の動作をする歯車機構を動作させるモータと、前記モータを作動させるためのリーフスイッチと、を備え、
前記可動体には、前記可動体が前記所定位置から一方向に動作するときに前記リーフスイッチに当接してONさせる当接部が設けられ、前記当接部は、前記可動体がラッチされている間は前記リーフスイッチに当接して前記リーフスイッチをON状態に保持し、ラッチ解除後に前記可動体が前記所定位置に復帰するときに前記リーフスイッチとの当接を解除して前記リーフスイッチをOFFさせることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の動作玩具。
【請求項6】
前記ラッチ機構は、前記可動体に所定の軸を中心に回動可能で先端にロックピンが設けられた回動部材と、前記動作玩具の固定部に設けられ前記ロックピンが係合するハート形のカム溝とを備えたことを特徴とする請求項2~請求項5のいずれか一項に記載の動作玩具。
【請求項7】
前記所定の付勢力で前記可動体を前記所定位置に復帰させる第3コイルばねが設けられていることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の動作玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動作玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車機構と、歯車機構中の歯車同士を噛合させたり、当該歯車同士を噛合解除させたりする操作子と、を備えた動作玩具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この動作玩具においては、一の歯車が可動軸に設けられ、可動軸が軸方向の第1位置と第2位置との間で移動可能に構成されるとともに第1位置に向けて付勢され、第1位置で前記一の歯車と他の歯車(相手方歯車)とを噛合解除させ、第2位置で一の歯車と他の歯車とを噛合させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平6-39758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記動作玩具においては、レバーの基端部に形成した係合段部を有する係合部に可動軸(摺動歯車軸)を圧接させておき、歯車同士を噛合させる際には、レバーを操作して、圧接力に抗して可動軸を軸方向に摺動させることとしている。
ところで、歯車同士を噛合させる場合、一の歯車の歯と、他の歯車の歯と歯の隙間とが合致することが必要である。
しかしながら、タイミングが悪いと、レバーの操作時に一の歯車の歯と他の歯車の歯とが互いにぶつかってしまい上手く歯車同士が噛み合わない場合がある。この場合、レバーの操作によって一の歯車の歯と他の歯車の歯とが強く圧接され、歯車が破損等する虞がある。また、一の歯車の歯と他の歯車の歯とが互いにぶつかってしまった場合、レバーを操作する手を緩めてしまい、歯車同士の噛合を諦めてしまう虞もある。
本発明は、斯かる実情に鑑み、歯車の破損を防止でき、歯車を確実に噛合させることができる動作玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
一の歯車が設けられ、軸方向に移動可能で、移動によって、前記一の歯車と他の歯車とが互いに噛合解除する第1位置と、前記一の歯車と前記他の歯車とが互いに噛合する第2位置とを選択的に取り得る可動軸と、
前記可動軸を前記第1位置に向けて付勢する第1コイルばねと、
前記可動軸を移動させるためのトリガとなる操作子と、を備えた動作玩具であって、
所定の付勢力で所定位置に復帰可能で、前記操作子の操作によって一方向に動作可能な可動体と、
前記可動体と第2コイルばねを介して連係されるとともに前記第1コイルばねの付勢力により前記可動軸が常時に当接する摺接体を有する運動方向変換機構と、
を備え、
前記運動方向変換機構は、前記可動体が前記所定位置から一方向に動作するときに畜勢される前記第2コイルばねの付勢力によって前記摺接体を前記可動軸に摺接させることで前記第1コイルばねの付勢力に抗して前記可動軸を前記第2位置まで移動させるように構成されていることを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段において、
前記操作子を操作する毎に、前記所定位置から離間した位置での前記可動体のラッチとラッチ解除とを交互に行うラッチ機構を備え、
前記ラッチ機構は、前記可動体をラッチしている間、前記第2コイルばねの付勢力で前記摺接体を介して前記可動軸を前記第2位置に向けて付勢することを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第2の手段において、
前記操作子の操作時に前記可動軸の進路に対して突入して前記可動軸の前記第2位置への移動を阻止し、前記操作子から手を離した時に前記可動軸の進路から退出して前記可動軸の前記第2位置への移動を許容するストッパが設けられ、
前記可動体は、前記操作子の操作により前記所定位置から一方向に動作するときに前記操作子に遅れて始動し、前記可動体が始動する前に前記ストッパが前記可動軸の進路に突入可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第3の手段において、前記ストッパには、前記操作子の操作時に既に前記第2位置に前記可動軸がある場合に前記可動軸の外周との摺接により前記ストッパを撓ませ前記進路から逃げさせるためのばね部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第2~第4の手段のいずれかにおいて、
前記一の歯車と前記他の歯車との噛合により所定の動作をする歯車機構を動作させるモータと、前記モータを作動させるためのリーフスイッチと、を備え、
前記可動体には、前記可動体が前記所定位置から一方向に動作するときに前記リーフスイッチに当接してONさせる当接部が設けられ、前記当接部は、前記可動体がラッチされている間は前記リーフスイッチに当接して前記リーフスイッチをON状態に保持し、ラッチ解除後に前記可動体が前記所定位置に復帰するときに前記リーフスイッチとの当接を解除して前記リーフスイッチをOFFさせることを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第2~第5の手段のいずれかにおいて、前記ラッチ機構は、前記可動体に所定の軸を中心に回動可能で先端にロックピンが設けられた回動部材と、前記動作玩具の固定部に設けられ前記ロックピンが係合するハート形のカム溝とを備えたことを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第1~第6の手段のいずれかにおいて、前記所定の付勢力で前記可動体を前記所定位置に復帰させる第3コイルばねが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2コイルばねを介して摺接体を動作させ、摺接体を可動軸に摺接させて第2位置まで動作させるので、歯車同士が過度の力で押し付けられることがなくなり、歯車の破損等を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の動作玩具の一例である鉄道車両玩具の斜視図である。
図2】車両の内部筐体を左方から見た斜視図である。
図3】内部筐体の上側の枠体を取り外した状態を左方から見た斜視図である。
図4】車両の内部筐体を右方から見た斜視図である。
図5】モータ、歯車機構及び動輪を示す左方から見た側面図である。
図6】歯車機構及び動輪を示す後面図である。
図7】噛合関係変化機構を後方から見た分解斜視図である。
図8】噛合関係変化機構及びその周辺を示した右方からみた側面図である。
図9】噛合関係変化機構の動作を示した後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、動作玩具の一例である鉄道車両玩具100の斜視図である。この鉄道車両玩具100の説明において、前後、左右及び上下は鉄道車両玩具100の内部から見た図1に示す方向を言う。
この鉄道車両玩具100は、先頭車両10(以下車両10と言う)と、2両目車両11(以下車両11と言う)とを備えている。車両10と車両11とは連結器10aと連結器11aとによって互いに連結されている。連結器10aと連結器11aは、特に限定はされないが、面ファスナにより構成されている。
このうち、車両10には、屋根上に突出するボタン(操作子)12が設けられている。一方、車両11の屋根には、上方に向けて開口する平面視矩形の窪み13が形成され、この窪み13には、人形を模した駒14が2つ着脱可能に乗せられている。
そして、この鉄道車両玩具100は、ボタン12の操作によって、電動又は手押しで走行することができる。
【0016】
図2は、車両10の内部筐体10aを左方から見た斜視図、図3は、内部筐体10aの上側の枠体を取り外した状態を左方から見た斜視図、図4は、先頭の車両10の内部筐体10aを右方から見た斜視図である。
内部筐体10aには、後部左右に動輪15、15が設けられ、前部左右に従輪16,16が設けられている。
また、内部筐体10aには、電源となる電池17と、動力源となるモータ18と、モータ18の動力を動輪15、15に伝達する歯車機構19と、歯車機構19中の所定の歯車同士の噛合関係を変化させる噛合関係変化機構20とが設けられている。
【0017】
(歯車機構19)
図5は、モータ18、歯車機構19及び動輪15を示す左方から見た側面図であり、図6は、歯車機構19及び動輪15を示す後面図である。
モータ18の動力を動輪15、15に伝達する歯車機構19は、歯車21a~21kを含んで構成されている。歯車21aは、横置きのモータ18の出力軸22aに設けられている。出力軸22aは、モータ18のハウジングから後方に延出している。歯車21bは、車両10の上下方向に延在する軸22bに設けられ、歯車21aに噛合するクラウン歯車である。歯車21cは、軸22bに設けられ歯車21bと一体的に回転する。歯車21dは、軸22bと平行な軸22cに設けられ、歯車21cと噛合している。歯車21eは、軸22cに設けられ、歯車21dと一体的に回転するねじ歯車である。
【0018】
歯車21fは、車両10の左右方向に延在する軸22dに設けられ、歯車21eに噛合可能となっている。すなわち、軸22dは、可動軸となっており、軸方向に移動可能に設けられ、その移動位置に応じて、つまり、第2位置で歯車21fが歯車21eに噛合し、第1位置で歯車21fが歯車21eとの噛合を解除する。この軸22dは、軸22dに巻回されたコイルばね23の付勢力によって、歯車21fと歯車21eとが噛合解除される第1位置に向けて付勢されている。
【0019】
歯車21gは、左右方向に延在する軸22eに設けられ、歯車21fと噛合している。歯車21hは、左右方向に延在する軸22fに設けられ、歯車21gと噛合している。歯車21iは、左右方向に延在する軸22gに設けられ、歯車21hと噛合している。歯車21jは、軸22gに設けられている。そして、歯車21jと歯車21iとの間にはクラッチ機構24(図6参照)が設けられている。クラッチ機構24は過負荷が作用すると歯車21jと歯車21iとの間の動力伝達を遮断する。歯車21kは、動輪15,15の車軸15aに設けられ、歯車21jに噛合している。
【0020】
この歯車機構19によれば、モータ18が作動し、歯車21fと歯車21eとが噛合するときには、モータ18の動力によって、歯車21a~21kを介して、動輪15,15が前進方向に回転する。また、モータ18が作動せず、歯車21fと歯車21eとが噛合解除しているときには、鉄道車両玩具100を手押しによって走行させることができる。
【0021】
(噛合関係変化機構20)
図7は、噛合関係変化機構20の後方から見た分解斜視図、図8は、噛合関係変化機構20及びその周辺を示した右方からみた側面図である。
噛合関係変化機構20は、ボタン12をトリガとして、軸22dを軸方向に移動させ、その移動方向に応じて、歯車21fを歯車21eに噛合させたり、その噛合を解除させたりする。
【0022】
噛合関係変化機構20は、ボタン12と、ボタン12下に設けられ上下動可能な可動体31と、可動体31に対して上下動可能な摺接体32と、可動体31と摺接体32との間に介装されたコイルばね33と、可動体31を下動位置でラッチ可能なラッチ機構34と、ボタン12下に設けられボタン12と一体的に動作するストッパ35とを備えている。
【0023】
ボタン12は、コイルばね12aにより、上方に向けて付勢されている。ボタン12の下端部外周には外向突起12bが付設されている。このボタン12は車両10の屋根の開口に下方から挿入され、外向突起12bが車両10の屋根の開口縁に係合することにより、上方への抜けが防止されている。なお、ボタン12の下側には、下方に開口する凹部(図示せず)が設けられている。
【0024】
摺接体32は、初期位置から下動したときに軸22dの右端に摺接して当該軸22dをコイルばね23の付勢力に抗して軸方向左方に移動させるものである。摺接体32の上端には内向きの爪32aが設けられている。また、摺接体32の上下方向中間部には、上方に開口するポケット32bが形成され、このポケット32b内にはコイルばね33の下半部が挿入されている。摺接体32の下端部内面側には、軸22dの右端に当接可能な当接面32cが形成されている。当接面32cは上側の傾斜摺接面320cと下側の鉛直面321cとから構成されている。この摺接体32は、可動体31に組み付けられている。そして、摺接体32は、初期位置では、鉛直面321cの上端部に軸22dの右端が当接しており、摺接体32の下動が妨げられている。
摺接体32と、コイルばね23の付勢力にて摺接体32に当接される軸22dとは運動方向変換機構を構成している。そして、この運動方向変換機構は、コイルばね23の付勢力と、コイルばね33の付勢力との大きさに応じて可逆的に動作する。
【0025】
可動体31の頭部はボタン12の凹部内に臨んでいる。可動体31の上下方向中間部には、外向きの爪31aが形成されている。この可動体31には、爪32aが爪31aの上方に位置し、且つ、ポケット32bに挿入されたコイルばね33の上端が爪31aの下面に当接されて、コイルばね33の付勢力によって、爪32aの下面と爪31aの上面とが当接されるように摺接体32が組み付けられている。
なお、可動体31には段部31bが形成され、この段部31bがボタン12に押されて可動体31が下動するようにされている。この可動体31は、コイルばね37によって上方に付勢され、初期位置では、ボタン12と段部31bとの間には所定の隙間が形成されている。この所定の隙間は、可動体31が初期位置にある場合、ボタン12を押したときに可動体31の動作に先行して後述のストッパ35を動作させるためのものである。ここでは、可動体31をコイルばね37によって上方に付勢しているが、可動体31と摺接体32との間のコイルばね33によって上方に付勢してもよい。
【0026】
ストッパ35は、頭部がボタン12の凹部内に臨んだ形でボタン12に固定されている。そして、ストッパ35は、ボタン12に追従して上下動する。このストッパ35は、軸22dの左端部を支持する軸孔が貫設された壁50(図9参照)の外側に配置されている。そして、ストッパ35は、下動したときに軸孔を壁50の外側から塞いで軸22dの左方への移動を阻止する。このストッパ35の基端側にはS字状のばね部35aが設けられている。また、ストッパ35の下端部(先端部)には傾斜摺接部35bが形成されている。そして、ストッパ35の下動時に、当該ストッパ35の下方に軸22dが存在するときには、傾斜摺接部35bが軸22dの外周に摺接してばね部35aが撓んで逃げ、ストッパ35の下動を許容する。
【0027】
ラッチ機構34は次のように構成されている。
図8に示すように、可動体31の右側外面には、軸34aを中心に回動可能な回動部材34bが設けられている。回動部材34bの下端(先端)にはロックピン34cが付設されている。ロックピン34cは、可動体31の内側に配置された壁36に形成されたハート形のカム溝36aに臨入されている。この回動部材34b、カム溝36a及びコイルばね37によって、ラッチ機構34が構成されている。
【0028】
カム溝36aは、ハートの凹部となる部分が下側となるように形成されている。また、回動部材34bの先端には髭状のばね部34dが設けられ、このばね部34dの先端は可動体31の下動に伴って固定の突起34eに摺接可能となっている。これによって、ボタン12の操作に伴ってロックピン34cをカム溝36aに沿って円滑に一方向に回転させることができる。
このラッチ機構34によれば、ボタン12の押し下げによって可動体31が初期位置(所定)から下動すると、ばね部34dの先端が固定の突起34eに摺接し、ロックピン34cが、カム溝36aの外壁に形成された突起360cに突き当たる。次に、ボタン12から手を離すと、可動体31がコイルばね37によって少しばかり上動し、ロックピン34cが、カム溝36aの内壁に形成された凹部361cに係合し、可動体31がラッチされる。また、次にボタン12を押圧したとき、ロックピン34cがハート形のカム溝36aの凹部361cから外れ、ボタン12から手を離すと、可動体31がコイルばね37によって上動して初期位置に戻る。
【0029】
図8に示すように、可動体31の前方にはリーフスイッチ40が設置されている。リーフスイッチ40は可動片40aと固定片40bとを備えている。そして、可動体31が下動した際に、可動体31の前端の当接部31cが可動片40aに当接することにより、可動片40aが固定片40bに当接してリーフスイッチ40がONされる。可動体31がラッチ状態にあるときには、可動片40aが固定片40bに当接した状態を維持する。可動片40aが固定片40bに当接した状態ではモータ18が作動される。なお、リーフスイッチ40の近くには、メインスイッチ41が設けられている。メインスイッチ41の摘まみ41aは車両10の車体の下側に突出し、車体の下側から操作可能となっている。
【0030】
(遊び方及び全体動作)
メインスイッチ41をONとし、図9(A)の状態からボタン12をコイルばね12aの付勢力に抗して1回下方に押し下げる。これにより、ボタン12が下動し、図9(B)に示すように、ボタン12が途中で可動体31の段部31bに当接して可動体31をコイルばね37の付勢力に抗して押し下げるとともに、ストッパ35が下動する。このストッパ35の下動によって、ストッパ35が軸22dの進路内に突入し軸22dの左方への移動を阻止する。
【0031】
一方、可動体31が押し下げられることにより、可動体31の当接部31cがリーフスイッチ40の可動片40aに摺接し、可動片40aを固定片40bに当接させる。これにより、モータ18が作動し、歯車21a~21eが回転する。また、可動体31が押し下げられることにより、可動体31と摺接体32との間のコイルばね33が縮んで蓄勢される。
また、回動部材34のロックピン34cがカム溝36aの突起360aに当たって係止される。
【0032】
次に、ボタン12から手を離すと、ボタン12は、コイルばね12aの付勢力によって上動して元位置に復帰する。一方で、ボタン12の上動により、可動体31もコイルばね37の付勢力によって摺接体32に対して少しばかり上動し、ロックピン34cがカム溝36aの凹部361cに捕捉される。これにより、可動体31がラッチされる。また、ボタン12の上動により、ストッパ35が軸22dの進路から退出する。すると、コイルばね33に蓄勢された付勢力が開放され、可動体31に対して摺接体32が下動し、傾斜摺接面320cが軸22dの右端に摺接し、軸22dがコイルばね23の付勢力に抗して左方に移動する(図9(C))。これにより、歯車21fが歯車21eに噛合し、歯車21a~21kを介して、動輪15,15が前進方向に回転し、鉄道車両玩具100が走行する。
【0033】
他方、鉄道車両玩具100が走行中に、ボタン12を1回下方に押し下げると、ボタン12が途中で可動体31に当接して可動体31をコイルばね37の付勢力に抗して押し下げるとともに、ストッパ35が下動する。このとき、軸22dが左方位置にあるため、軸22dの外周にストッパ35の傾斜摺接部35bが当たるが、ばね部35aによってストッパ35が撓んで逃げ、ボタン12の押し下げは妨げられない。また、ボタン12の押し下げによって、ロックピン34cがカム溝36aの凹部361cから外れ、可動体31のラッチが解除される。
【0034】
次に、ボタン12から手を離すと、ボタン12及びストッパ35は、コイルばね12aの付勢力によって上動して元位置に復帰する。また、ラッチが解除された可動体31はコイルばね37の付勢力によって上動して初期位置に戻る。この可動体31の上動により、コイルばね33に蓄勢された付勢力が弱まる。これにより、軸22dがコイルばね23の付勢力によって右方に移動し、歯車21fと歯車21eとの噛合が解除され、鉄道車両玩具100が手押し可能となる。また、摺接体32及び可動体31が初期位置に戻る。
【0035】
(実施形態の効果)
以上説明した鉄道車両玩具100によれば、次のような主たる効果を得ることができる。
すなわち、ボタン12の操作によってコイルばね33を介して摺接体32を動作させ、摺接により軸22dを移動させ、歯車21fと歯車21eとを噛合させるため、歯車21fの歯と歯車21eの歯とが干渉したときでも、衝撃が吸収され、歯車21fと歯車21eとが噛合するまで歯車同士が適度な力で押し付けられることとなり、歯車の破損等を効果的に防止することができる。
【0036】
また、歯車21fの歯と歯車21eの歯とが干渉したときでも可動体31をラッチさせることができるので、ボタン12から手を離した後でも、両者を確実に噛合させることができる。
【0037】
また、可動体31が初期位置にあるときにボタン12を操作すると、ストッパ35が軸22dの進路に突出して軸22dの移動が阻止されることでコイルばね33が蓄勢され、その後に、ボタン12から手を離したときにストッパ35が軸22dの進路から退出するとともに可動体31がラッチされることによって、コイルばね33に蓄勢しておいた付勢力により歯車21fと歯車21eとの噛合を完了させることができる。そのため、安定して歯車21fと歯車21eとを噛合させることができる。
【0038】
さらに、可動体31のラッチ前にモータ18が作動し、歯車21a~21eが回転するので、歯車21eに歯車21fが噛合し易くなる。
【0039】
また、可動体31のラッチを解除するのに操作子12を操作したとき、ストッパ35が軸22dに当たるが、傾斜摺接部35bが軸22dに摺接してばね部35aが撓んで逃げ、ストッパ35の下動を許容するので、可動体31のラッチ解除が妨げられない。
【0040】
また、操作子をボタン12としているため操作がし易い。
【0041】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、鉄道車両玩具100に本願発明を適用した場合を説明したが、自動車玩具その他の走行玩具は勿論のこと、他の歯車機構を介して動作する動作玩具一般に本願発明は適用できる。
【0043】
また、上記実施形態では、軸22dが付勢される方向の第1位置で歯車の噛合解除、第2位置で噛合をさせるようにしたが、第1位置でも別の歯車に噛合させるものであってもよい。
【0044】
なお、上記実施形態では、軸方向に軸を移動して歯車同士を噛合又は噛合解除されるものについて説明したが、本発明は、遊星歯車のように太陽歯車の周りで軸を公転させるものにも応用可能である。
また、上記実施形態では、軸22dが付勢される方向の第1位置で歯車の噛合解除、第2位置で噛合をさせるようにしたが、その逆の場合に本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 車両
11 車両
12 ボタン(操作子)
18 モータ
31 可動体
32 摺接体
34 ラッチ機構
34b 回動部材
34c ロックピン
34d ばね部
35 ストッパ
35a ばね部
40 リーフスイッチ
100 鉄道車両玩具
【要約】
【課題】歯車の破損を防止でき、歯車を確実に噛合させることができる動作玩具を提供すること。
【手段】 軸方向に移動可能で、歯車同士の噛合を解除させる第1位置と、歯車同士を噛合させる第2位置とを選択的に取り得且つ第1コイルばねで第1位置に向けて付勢された可動軸と、所定の付勢力で所定位置に復帰可能で、前記操作子の操作によって一方向に動作可能な可動体と、可動体に第2コイルばねを介して連係される摺動体とを備え、操作子の操作によって可動体を動作させることにより蓄勢される第2コイルばねを介して摺動体を摺接させることで可動軸を第2位置に移動させるようにした。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9