(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】成形物繰出し装置
(51)【国際特許分類】
B25B 9/02 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B25B9/02
(21)【出願番号】P 2021141266
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2021-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 桐
(72)【発明者】
【氏名】河野 光彦
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 秀樹
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04813678(US,A)
【文献】実開昭61-184422(JP,U)
【文献】特開平09-294617(JP,A)
【文献】米国特許第04113143(US,A)
【文献】米国特許第04535913(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同形の複数の成形物を出入口から1つずつ内部に取り込み、取り込んだ前記複数の成形物を内部に一列にして保持し、後から取り込んだ方から順に前記成形物を前記出入口から1つずつ押し出すように
構成された成形物繰出し装置であって、
内部に前記複数の成形物を軸方向に一列に保持可能な外筒と、
前記外筒の外側に設けられた操作子と、
前記外筒の内部に前記外筒の軸方向に移動可能に設けられ、前記操作子の操作によって、装置内の前記成形物を前記出入口から押し出す押出し部材と、
を備え、
前記外筒の内部に備えられ、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材の先端部には、
嵌合凹部又は嵌合凸部の一方部分が形成され、
前記成形物は、前記一方部分に嵌合可能な他方部分を有し、
前記装置内に最初に取り込まれた前記成形物の前記他方部分と前記当接部材の前記一方部分とが互いに嵌合されるように構成されている、ことを特徴とする成形物繰出し装置。
【請求項2】
同形の複数の成形物を出入口から1つずつ内部に取り込み、取り込んだ前記複数の成形物を内部に一列にして保持し、後から取り込んだ方から順に前記成形物を前記出入口から1つずつ押し出すように構成された成形物繰出し装置であって、
内部に前記複数の成形物を軸方向に一列に保持可能な外筒と、
前記外筒の外側に設けられた操作子と、
前記外筒の内部に前記外筒の軸方向に移動可能に設けられ、前記操作子の操作によって、装置内の前記成形物を前記出入口から押し出す押出し部材と、
を備え、
前記押出し部材は、内筒から構成され、ばねによって前記外筒の後端側に向けて付勢され、
前記内筒の先端部には、前記外筒の先端側に移動するときに前記外筒の内面に摺接して窄む第1の係合部が形成され、
前記外筒の内部に備えられ、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材には、窄んだ前記第1の係合部に係合可能な第2の係合部が軸方向に前記成形物の保持ピッチで形成され、
前記操作子が操作される毎に、前記第1の係合部が前記第2の係合部に係合して前記当接部材を前記保持ピッチずつ先端側に向けて移動させて、前記成形物を1つずつ押し出す、
ことを特徴とする成形物繰出し装置。
【請求項3】
前記成形物には、前記複数の成形物を装置内に一列にして保持した際に、窄んだ前記第1の係合部に係合可能な第3の係合部が形成され、
窄んだ前記第1の係合部が前記第3の係合部に係合しているときに前記操作子が操作される毎に、前記第1の係合部が前記第3の係合部に係合して前記成形物を1つずつ押し出す、
ことを特徴とする請求項2に記載の成形物繰出し装置。
【請求項4】
同形の複数の成形物を出入口から1つずつ内部に取り込み、取り込んだ前記複数の成形物を内部に一列にして保持し、後から取り込んだ方から順に前記成形物を前記出入口から1つずつ押し出すように構成された成形物繰出し装置であって、
内部に前記複数の成形物を軸方向に一列に保持可能な外筒と、
前記外筒の外側に設けられた操作子と、
前記外筒の内部に前記外筒の軸方向に移動可能に設けられ、前記操作子の操作によって、装置内の前記成形物を前記出入口から押し出す押出し部材と、
を備え、
前記押出し部材は、内筒から構成され、ばねによって前記外筒の後端側に向けて付勢され、前記内筒の先端部には、前記内筒が前記外筒の先端側に移動するときに前記外筒の内面に摺接して窄む第1の係合部が形成され、
前記成形物には、前記複数の成形物を装置内に一列にして保持した際に、窄んだ前記第1の係合部に係合可能な第3の係合部が形成され、
前記操作子が操作される毎に、前記第1の係合部が前記第3の係合部に係合して前記成形物を1つずつ押し出す、
ことを特徴とする成形物繰出し装置。
【請求項5】
前記外筒の内部に備えられ、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材の先端部には、
嵌合凹部又は嵌合凸部の一方部分が形成され、
前記成形物は、前記一方部分に嵌合可能な他方部分を有し、
前記装置内に最初に取り込まれた前記成形物の前記他方部分と前記当接部材の前記一方部分とが互いに嵌合されるように構成されている、ことを特徴とする請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の成形物繰出し装置。
【請求項6】
前記外筒の内部には、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の成形物繰出し装置。
【請求項7】
前記成形物は、水平面に対して載置可能で、且つ、鉛直方向から前記出入口を圧接させることにより前記出入口から装置内に取込み可能な形状を有している、ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の成形物繰出し装置。
【請求項8】
前記出入口は、前記成形物の圧接により摺動して拡開する、ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の成形物繰出し装置。
【請求項9】
前記出入口は、円周方向に所定間隔で配設された複数の弾性片で構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の成形物繰出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形物繰出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装飾パーツである球状のビーズを挟持するとともに、挟持したビーズを操作部の操作によって解放するビーズ挟持具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、1つのビーズを挟持し、その1つのビーズを操作部の操作によって解放するだけなので、複数のビーズを使用して装飾を施す場合には、挟持作業と解放作業とを交互に繰り返す必要があり、面倒であった。
本発明は、斯かる実情に鑑み、複数の装飾パーツを効率よく、保持及び押し出すことができる成形物繰出し装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
同形の複数の成形物を出入口から1つずつ内部に取り込み、取り込んだ前記複数の成形物を内部に一列にして保持し、後から取り込んだ方から順に前記成形物を前記出入口から1つずつ押し出すように構成された成形物繰出し装置であって、
内部に前記複数の成形物を軸方向に一列に保持可能な外筒と、
前記外筒の外側に設けられた操作子と、
前記外筒の内部に前記外筒の軸方向に移動可能に設けられ、前記操作子の操作によって、装置内の前記成形物を前記出入口から押し出す押出し部材と、
を備え、
前記外筒の内部に備えられ、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材の先端部には、
嵌合凹部又は嵌合凸部の一方部分が形成され、
前記成形物は、前記一方部分に嵌合可能な他方部分を有し、
前記装置内に最初に取り込まれた前記成形物の前記他方部分と前記当接部材の前記一方部分とが互いに嵌合されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、
同形の複数の成形物を出入口から1つずつ内部に取り込み、取り込んだ前記複数の成形物を内部に一列にして保持し、後から取り込んだ方から順に前記成形物を前記出入口から1つずつ押し出すように構成された成形物繰出し装置であって、
内部に前記複数の成形物を軸方向に一列に保持可能な外筒と、
前記外筒の外側に設けられた操作子と、
前記外筒の内部に前記外筒の軸方向に移動可能に設けられ、前記操作子の操作によって、装置内の前記成形物を前記出入口から押し出す押出し部材と、
を備え、
前記押出し部材は、内筒から構成され、ばねによって前記外筒の後端側に向けて付勢され、
前記内筒の先端部には、前記外筒の先端側に移動するときに前記外筒の内面に摺接して窄む第1の係合部が形成され、
前記外筒の内部に備えられ、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材には、窄んだ前記第1の係合部に係合可能な第2の係合部が軸方向に前記成形物の保持ピッチで形成され、
前記操作子が操作される毎に、前記第1の係合部が前記第2の係合部に係合して前記当接部材を前記保持ピッチずつ先端側に向けて移動させて、前記成形物を1つずつ押し出す、
ことを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第2の手段であって、
前記成形物には、前記複数の成形物を装置内に一列にして保持した際に、窄んだ前記第1の係合部に係合可能な第3の係合部が形成され、
窄んだ前記第1の係合部が前記第3の係合部に係合しているときに前記操作子が操作される毎に、前記第1の係合部が前記第3の係合部に係合して前記成形物を1つずつ押し出す、
ことを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、
同形の複数の成形物を出入口から1つずつ内部に取り込み、取り込んだ前記複数の成形物を内部に一列にして保持し、後から取り込んだ方から順に前記成形物を前記出入口から1つずつ押し出すように構成された成形物繰出し装置であって、
内部に前記複数の成形物を軸方向に一列に保持可能な外筒と、
前記外筒の外側に設けられた操作子と、
前記外筒の内部に前記外筒の軸方向に移動可能に設けられ、前記操作子の操作によって、装置内の前記成形物を前記出入口から押し出す押出し部材と、
を備え、
前記押出し部材は、内筒から構成され、ばねによって前記外筒の後端側に向けて付勢され、前記内筒の先端部には、前記内筒が前記外筒の先端側に移動するときに前記外筒の内面に摺接して窄む第1の係合部が形成され、
前記成形物には、前記複数の成形物を装置内に一列にして保持した際に、窄んだ前記第1の係合部に係合可能な第3の係合部が形成され、
前記操作子が操作される毎に、前記第1の係合部が前記第3の係合部に係合して前記成形物を1つずつ押し出す、
ことを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第2~第4の手段のいずれかであって、
前記外筒の内部に備えられ、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材の先端部には、
嵌合凹部又は嵌合凸部の一方部分が形成され、
前記成形物は、前記一方部分に嵌合可能な他方部分を有し、
前記装置内に最初に取り込まれた前記成形物の前記他方部分と前記当接部材の前記一方部分とが互いに嵌合されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第4の手段であって、
前記外筒の内部には、前記外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、取り込んだ前記成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材を備える、
ことを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第1~第6の手段のいずれかであって、
前記成形物は、水平面に対して載置可能で、且つ、鉛直方向から前記出入口を圧接させることにより前記出入口から装置内に取込み可能な形状を有している、ことを特徴とする。
【0012】
第8の手段は、第1~第7の手段のいずれかであって、前記出入口は、前記成形物の圧接により摺動して拡開する、ことを特徴とする。
【0013】
第9の手段は、第8の手段であって、前記出入口は、円周方向に所定間隔で配設された複数の弾性片で構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の手段によれば、1つずつ装飾パーツを内部に取り込んで、内部に複数の成形物を一列に保持し、後入れ先出し式に、1つずつ成形物を押し出すことができるので、装飾作業が簡単となる。
また、第1の手段によれば、外筒の内部に複数の成形物を取り込み、操作子の操作によって押出し部材を介してその成形物を1つずつ押し出すことができる。
また、第1の手段によれば、装置内に取り込まれた成形物の嵌合凸部が先ず当接部材の第2の嵌合凹部に嵌合するので、装置内に、より安定的に成形物を保持できる。
【0016】
第2の手段によれば、1つずつ装飾パーツを内部に取り込んで、内部に複数の成形物を一列に保持し、後入れ先出し式に、1つずつ成形物を押し出すことができるので、装飾作業が簡単となる。
また、第2の手段によれば、外筒の内部に複数の成形物を取り込み、操作子の操作によって押出し部材を介してその成形物を1つずつ押し出すことができる。
また、第2の手段によれば、操作子が操作される毎に、第1の係合部が第2の係合部に係合して当接部材を保持ピッチずつ先端側に向けて移動させるので、確実に、成形物を1つずつ押し出すことができる。
【0017】
第3の手段によれば、操作子が操作される毎に、確実に、第1の係合部が第3の係合部に係合して成形物を1つずつ押し出すことができる。
【0018】
第4の手段によれば、1つずつ装飾パーツを内部に取り込んで、内部に複数の成形物を一列に保持し、後入れ先出し式に、1つずつ成形物を押し出すことができるので、装飾作業が簡単となる。
また、第4の手段によれば、外筒の内部に複数の成形物を取り込み、操作子の操作によって押出し部材を介してその成形物を1つずつ押し出すことができる。
また、第4の手段によれば、操作子が操作される毎に、確実に、第1の係合部が第3の係合部に係合して成形物を1つずつ押し出すことができる。
【0019】
第5の手段によれば、装置内に取り込まれた成形物の嵌合凸部が先ず当接部材の第2の嵌合凹部に嵌合するので、装置内に、より安定的に成形物を保持できる。
【0020】
第6の手段によれば、外筒の内部には、外筒の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、内部に取り込んだ成形物に押されて後端側に向けて移動する当接部材を備えるので、取り込んだ複数の成形物を安定的に一列に保持することができる。
【0021】
第7の手段によれば、水平面に対して載置された成形物に出入口を圧接させることにより、成形物を取り込むことができるので、取り込み作業が簡単となる。
【0022】
第8の手段によれば、成形物の圧接により摺動して拡開するので、簡単に成形物を装置内に取り込むことができる。
【0023】
第9の手段によれば、出入口が複数の弾性片で構成され、成形物の圧接により摺動して拡開するので、簡単に成形物を装置内に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態の成形物繰出し装置の斜視図である。
【
図2】(A)は装飾パーツの上面側斜視図、(B)は装飾パーツの下面側斜視図である。
【
図5】成形物繰出し装置の使用状態を示した断面図である。
【
図6】成形物繰出し装置による装飾パーツの取り込み時の様子を示す斜視図である。
【
図7】成形物繰出し装置による装飾パーツの押出し時の様子を示す斜視図である。
【
図8】(A)は、成形物繰出し装置によって装飾パーツを1つ取り込んだ状態を示す一部拡大斜視図、(B)は、装飾パーツを2つ取り込んだ状態を示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
《全体》
図1は、実施形態の成形物繰出し装置10の斜視図である。なお、以下の成形物繰出し装置10の説明及び特許請求の範囲において、前後(先後)、左右、上下は
図1の矢印で示した方向を言うものとする。
成形物繰出し装置10は、外筒11と、外筒11内に設けられる内筒12(
図3)と、内筒12の後端に連結され外筒11の後側に設けられる操作子13と、内筒12内に設けられた当接部材14と、外筒11の先端部に付設され装飾パーツ30(
図2)を出入させる筒先部15とを備えている。
【0027】
《装飾パーツ30》
図2(A),(B)は装飾パーツ30を示す斜視図である。なお、ここで装飾パーツ30の説明において、上下は
図2で示した状態を言うものとする。
装飾パーツ30は、ポッシュ絞りされたクリームの塊を模したもので、プラスチックで形成され、下半部の円盤状部31と、上半部の円錐状部32とによって構成されている。そして、装飾パーツ30の下面には円錐状部(嵌合凸部)32の一部が嵌合可能な円錐状穴(嵌合凹部)33が形成されている。
【0028】
《成形物繰出し装置10》
図3は、成形物繰出し装置10の分解斜視図、
図4は成形物繰出し装置10の断面図、
図5は、成形物繰出し装置10の使用状態を示した断面図である。
成形物繰出し装置10は、コイルばね20,21及び螺子(指示せず)を除いてプラスチックから構成されている。
【0029】
〈外筒11〉
外筒11は円筒状に構成されている。外筒11は、上下対称形の2つの部分11a,11aを凹凸嵌合及び螺子止めすることによって構成されている。
外筒11の後端側には、左右に指掛け部11bがそれぞれ1つずつ形成されている。各指掛け部11bは先端側に向けて凹となるように鰭状に湾曲している。この左右の指掛け部11bに一方には人差し指が、他方には中指が掛けられる。
また、外筒11の後端部は、中間部よりも外径及び内径が大きい大径部11cとなっており、内面に内向フランジ11dが形成されている。この部分は、外筒11と一体であっても、別部品となっていてもよい。
一方、外筒11の先端部は、中間部よりも外径及び内径が小さい小径部11eとなっており、小径部11eには筒先部15が外嵌されている。
また、外筒11の中間部の前端部内径は、上記小径部11e程ではないが、中間部の他の部分よりも小さくなっており、その内径が変化する部分は内径遷移部を構成している。
【0030】
〈内筒12〉
外筒11内には、軸方向に所定範囲内で移動可能に内筒12が設置されている。ここでは、内筒12の移動範囲は、内部に保持される装飾パーツ30の保持ピッチに設定されている。内筒12は円筒状に構成されている。内筒12は、左右対称形の2つの部分12a,12aを凹凸嵌合することによって構成されている。
内筒12の後端部外面に外向フランジ12bが形成されている。この外向フランジ12bは、内筒12が外筒11内で軸方向に移動する際、外筒11の内面に対して摺動するとともに、内筒12が外筒11内で後方に移動したときには、上記内向フランジ11dに当接し、それ以上の内筒12の移動が阻止される。
また、内筒12の中間部外面に外向フランジ12cが、先端部外面に外向フランジ12dがそれぞれ形成されている。この外向フランジ12c,12dは、内筒12が外筒11内で軸方向に移動する際、外筒11の内面に対して摺動する。
さらに、内筒12には、外向フランジ12dよりも先の部分に、中心軸に平行に延びるスリットにより区画された弾性片12eが左右対称位置に1つずつ形成されている。弾性片12eの先端は球状の係合部12fとなっている。この係合部12fは、内筒12の外向フランジ12bが外筒11の内向フランジ11dに当接しているときには、外筒11の内径遷移部の直後に当接している。そして、係合部12fは、操作子13の操作により内筒12が外筒11に対して前方に移動するとき、係合部12fが内径遷移部に摺動するので、弾性力に抗して外筒11の内側に移動する。つまり、係合部12fが窄むことになる。
また、内筒12は、外向フランジ12bよりも後側部分が、外筒11の内向フランジ11dよりも後方に突出し、この突出部分は操作子13に固定されている。
【0031】
(操作子13)
操作子13は円板状に構成されている。この操作子13の前面には凹部が形成され、凹部の底に形成された環状溝(指示せず)には内筒12の後端が嵌合している。また、凹部の底の中央にはガイド棒13aが前端側に向けて立設されている。操作子13と外筒11の内向フランジ11dとの間にはコイルばね20が介装され、内筒12及び操作子13は後方に向けて付勢されている。その結果、常態では、内筒12の外向フランジ12bが外筒11の内向フランジ11dに当接している。
【0032】
(当接部材14)
当接部材14は棒状部材によって構成されている。この当接部材14の外周には軸方向に装飾パーツ30の保持ピッチで括れ部が複数形成されている。この括れ部によって上記係合部12fが窄んだ際に係合する係合部14aが構成されている。
また、当接部材14の前端中央部には、上記装飾パーツ30の円錐状部32の一部が嵌合可能な円錐状穴14cが形成されている。
さらに、当接部材14には、上記ガイド棒13aに嵌合する穴14dが形成され、ガイド棒13aにより当接部材14の軸方向の移動案内が行われる。
なお、当接部材14と操作子13との間にはコイルばね21が介装され、このコイルばね21によって、当接部材14は先端側に向けて付勢されている。また、当接部材14の先端部には装飾パーツ30の円錐状部32の一部に嵌合する嵌合凹部が形成されている。
【0033】
(筒先部15)
図3に示すように、筒先部15は、外筒11の小径部11eの外側に嵌合する嵌合部15aと、嵌合部15aの前端側に連結された出入口15bとを備える。
出入口15bは、スリットにより円周方向に6つの片に分割されており、各片は弾性片15c(
図1)となっている。6つの弾性片15cの先端に、装飾パーツ30の円錐状部32を受容する孔が形成されている。各弾性片15cの先端には内向爪が形成されている。
この筒先部15は、装飾パーツ30に押し付けたとき摺動して、6つの弾性片15cの先の孔が開いて装飾パーツ30を出入させる。
【0034】
〈成形物繰出し装置10の出入動作〉
1.装飾パーツ30の取込み動作
図6に示すように、水平面上に置かれた(載置された)装飾パーツ30に成形物繰出し装置10の筒先部15を上方から押し付けると、装飾パーツ30の円錐状部32により弾性片15cが摺動により拡開され、
図8(A)に示すように装飾パーツ30が内部に取り込まれる。そして、取り込まれた装飾パーツ30の円錐状部32が当接部材14の円錐状穴14cに嵌合する。また、装飾パーツ30を取り込んだ後には、弾性片15cが元位置に復帰し、取り込まれた装飾パーツ30は弾性片15cの内向爪によって効果的に保持される。
【0035】
この状態から、2つ目の装飾パーツ30に成形物繰出し装置10を押し付けると、1つ目の装飾パーツ30の場合と同様に、
図8(B)に示すように装飾パーツ30が内部に取り込まれる。そして、取り込まれた装飾パーツ30の円錐状部32が先行の装飾パーツ30の円錐状穴33に嵌合する。また、装飾パーツ30を取り込んだ後、1つ目の装飾パーツ30の場合と同様に、取り込まれた装飾パーツ30は弾性片15cの内向爪によって効果的に保持される。また、このとき、当接部材14は、コイルばね21の付勢力に抗して保持ピッチ分だけ奥に押し込まれる。
【0036】
2.装飾パーツ30の押出し動作
装飾パーツ30の押出し動作を、
図5に示すように、成形物繰出し装置10に多数の装飾パーツ30が保持されている状態から説明する。
この状態で、操作子13が操作されると、それに伴い内筒12が先端側に移動する。これにより、係合部12fが窄んで1つの装飾パーツ30の円錐状部32の斜面(係合部)に係合し、当該装飾パーツ30を先端側に保持ピッチ分だけ移動させる。すると、当該装飾パーツ30よりも先端側にある装飾パーツ30が順次に押され、一番先端に位置する装飾パーツ30により弾性片15cが開かれて外部に押し出される。一方、当該装飾パーツ30よりも後側にある装飾パーツ30は最終的にコイルばね21によって付勢された当接部材14により押されて保持ピッチ分先端側に移動させられる。
【0037】
次に、
図8(B)に示すように、成形物繰出し装置10に少数の装飾パーツ30が保持されている場合を説明する。
この状態で、操作子13が操作されると、それに伴い内筒12が先端側に移動する。これにより、係合部12fが窄んで当接部材14の係合部14aに係合し、当接部材14を先端側に保持ピッチ分だけ移動させる。すると、当接部材14によって装飾パーツ30が押され、一番先端に位置する装飾パーツ30により弾性片15cが開かれて外部に押し出される(
図8(A))。
【0038】
図7は、成形物繰出し装置10を使用した装飾の一例を示している。
この一例では、装飾対象として白色クリームを塗った状態のケーキスポンジ模型50が用いられ、このケーキスポンジ模型50にクリームの形をした装飾パーツ30で装飾している。
ケーキスポンジ模型50はプラスチック製の白色の有底円筒部51と、有底円筒部51の凹部に詰め込んだ詰込み物52とから構成され、詰込み物52の表層部には粘着性のある白色のシートが貼られている。
このケーキスポンジ模型50の表面外周近くに、成形物繰出し装置10を用いて装飾パーツ30を等間隔で設置し、ケーキスポンジ模型50を装飾パーツ30で装飾している。
【0039】
〈実施形態の効果〉
この実施形態の成形物繰出し装置10によれば次のような主たる効果を得ることができる。
すなわち、筒先部15から1つずつ装飾パーツ30を外筒11の内部に取り込んで、内部に複数の装飾パーツ30を一列に保持し、操作子13を操作することで、後入れ先出し式に、1つずつ装飾パーツ30を押し出すことができるので、保持作業と押出し作業とを交互に繰り返す場合に比べて、装飾作業が簡単となる。
【0040】
また、装飾パーツ30を水平面に対して載置した状態で筒先部15を圧接させることにより、装飾パーツ30を取り込むことができるので、取り込み作業が簡単となる。勿論、向きを同じにして1つずつ手で装飾パーツ30を取り込ませてもよい。
【0041】
さらに、筒先部15の出入口15bが弾性片15cで構成されているため、耐久性に優れた筒先部15とすることができる。
【0042】
また、外筒11の内部には、外筒11の軸方向に移動可能で先端側に向けて付勢され、且つ、内部に取り込んだ装飾パーツ30に押されて後端側に向けて移動する当接部材14を備えるので、確実に、取り込んだ複数の装飾パーツ30を一列に保持することができる。その結果、どの向きでも、装飾パーツ30を押し出すことができる。
【0043】
また、操作子13が操作される毎に、係合部12fと、係合部14a、又は装飾パーツ30の係合部とを係合させて当接部材14を保持ピッチずつ先端側に向けて移動させるので、確実に、装飾パーツ30を1つずつ押し出すことができる。
【0044】
〈変形例〉
上記実施形態では、コイルばね22によって当接部材14を介して装飾パーツ30を先端側に向けて付勢しておき、操作子13の操作によって内筒12を動作させ1つずつ装飾パーツ30を押し出すようにしたが、成形物繰出し装置10を常に立てて用いる場合には、特に、コイルばね22によって付勢される当接部材14を設けなくてもよく、外筒11の内部に取り込まれ積層状態に保持された装飾パーツ30を、操作子13の操作によって上記内筒12又は他の押出し部材で押し出すようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、出入口15bを円周方向に分割された複数の弾性片15cで構成しているが、装飾パーツ30の圧接により摺動して拡開する孔を有するものであればよく、孔が環状のゴム等によって形成されているものであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、操作子13が操作される毎に、係合部12fと係合する係合部を当接部材14及び装飾パーツ30に設けたが、係合部12fと係合する係合部を当接部材14及び装飾パーツ30の一方に設けたものであってもよい。このうち、当接部材14にのみ当該係合部を設けるものでは、装飾パーツ30に当該係合部を設ける必要がないので、装飾パーツ30の形状的制約が少ないものとなる。なお、上記成形物繰出し装置10は上記装飾パーツ30に限定されず、ビーズや球状体の装飾パーツその他の成形物にも用いることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、装飾パーツ30を繰り出す成形物繰出し装置10について説明したが、成形物を発射する発射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
10 成形物繰出し装置
11 外筒
12 内筒
12f 係合部
14 当接部材
14a 係合部
15 筒先部
15b 出入口
15c 弾性片
30 装飾パーツ
【要約】
【課題】複数の成形物を効率よく、保持及び押し出すことができる成形物繰出し装置を提供すること。
【手段】 同形の複数の成形物30を出入口から1つずつ内部に取り込み、取り込んだ前記複数の成形物30を内部に一列にして保持し、後から取り込んだ方から順に前記成形物30を1つずつ前記出入口から押し出すように構成された成形物繰出し装置である。これにより、1つずつ装飾パーツを内部に取り込んで、内部に複数の成形物を一列に保持し、後入れ先出し式に、1つずつ成形物を押し出すことができるので、装飾作業が簡単となる。
【選択図】
図5