(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】コーヒー乳飲料組成物
(51)【国際特許分類】
A23F 5/24 20060101AFI20220831BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A23F5/24
A23C9/00
(21)【出願番号】P 2021530755
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2018009202
(87)【国際公開番号】W WO2020032303
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンチャン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンイン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,イル
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンミ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,テチョル
(72)【発明者】
【氏名】イム,スヨン
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-113059(JP,A)
【文献】特開2015-136309(JP,A)
【文献】国際公開第2008/102892(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0047895(KR,A)
【文献】国際公開第2014/152791(WO,A1)
【文献】特開2016-106606(JP,A)
【文献】特開2014-036645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
A23C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆抽出物、牛乳およびアルロースを含むコーヒー乳飲料組成物であって、
前記コーヒー豆抽出物は、コーヒー乳飲料組成物内キナ酸(quinic acid)濃度が
200~
400μg/m
lになるように添加され
、
前記コーヒー乳飲料組成物内カフェイン濃度に対するキナ酸濃度の比(キナ酸濃度/カフェイン濃度)が0.5~1.5であり、
前記牛乳は、脂肪を除いた牛乳全成分の固形分含量が全体コーヒー乳飲料組成物100重量%を基準にして1~8重量%で含まれるように添加され、
前記アルロースは、全体コーヒー乳飲料組成物の固形分重量100%を基準にして0.1~20重量%で混合される、コーヒー乳飲料組成物。
【請求項2】
前記コーヒー乳飲料組成物内カフェイン濃度が400~450μg/mlである、請求項1に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項3】
前記アルロースが、シロップまたは粉末形態で添加される、請求項1に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項4】
前記アルロースが、アルロースシロップ100重量%を基準にしてアルロース固形分含量が70~99.99重量%であるアルロースシロップで添加される、請求項
3に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項5】
前記アルロースが、電気伝導度が1~50μS/cmであるアルロースシロップで添加される、請求項
3に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項6】
前記牛乳が、原乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、還元乳、還元低脂肪牛乳、および脱脂粉乳からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項7】
前記コーヒー乳飲料組成物は、アルロースを除いた希少糖、果糖、水飴、ブドウ糖、オリゴ糖、糖アルコール、およびデキストリンからなる群より選択された1以上の糖類を追加的に混合して製造される、請求項1に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項8】
前記コーヒー乳飲料組成物が砂糖を含まない、請求項1に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項9】
前記コーヒー乳飲料組成物が発色剤を含まない、請求項1に記載のコーヒー乳飲料組成物。
【請求項10】
水に、コーヒー豆抽出物、牛乳およびアルロースを混合する段階を含み、
前記コーヒー豆抽出物は、コーヒー乳飲料組成物内キナ酸(quinic acid)濃度が
200~
400μg/m
lになるように添加され
、
前記コーヒー乳飲料組成物内カフェイン濃度に対するキナ酸濃度の比(キナ酸濃度/カフェイン濃度)が0.5~1.5であり、
前記牛乳は、脂肪を除いた牛乳全成分の固形分含量が全体コーヒー乳飲料組成物100重量%を基準にして1~8重量%で含まれるように添加され、
前記アルロースは、全体コーヒー乳飲料組成物の固形分重量100%を基準にして0.1~20重量%で混合される
、コーヒー乳飲料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルロースを含むコーヒー乳飲料組成物および製造方法であって、アルロース使用によって低カロリー飲料を提供することができ、特に製造安定性が高く製造されて飲料に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
最近、国民食生活が西欧化することによって嗜好食品および食飲料の消費が大きく増加しており、特に過去に比べてコーヒーまたはコーヒー牛乳の飲用の頻度が増えて、コーヒー飲料市場は既存缶コーヒー以外に、瓶、カップ、パックなど多様な容器に入ったコーヒーが登場しており、高級型エスプレッソ形態でコーヒー市場が急増している。
【0003】
但し、市販されている飲料は砂糖を多量含んでいて、過量摂取時、虫歯、肥満症と糖尿病などの成人病を誘発し得る問題がある。国民の健康のために、政府でも政策的に食飲料組成物の「糖類低減化」の施行を奨励している。食品衛生法の機器分析法による「糖類」は、食品内に存在する単糖類、二糖類の総合を意味し、単糖類としては果糖、ブドウ糖、二糖類としては砂糖、麦芽糖、乳糖がある。食飲料内で前記のような糖類低減化を達成するためには、特に砂糖の代替が不可避であるのが実情である。
【0004】
砂糖はスクロースを主成分とするものであって、飲食に添加して甘味を出す代表的な甘味料の一つである。砂糖は優れた甘味度を有していて、過去から様々な飲食、加工食品などに添加されて飲食の味を良くし、食欲をかきたてる最も好まれる甘味料と見なされてきた。しかし最近、砂糖の有害性が継続して明らかになることによって問題が提起されている。具体的に、砂糖の過剰摂取が虫歯はもちろん肥満、糖尿病など各種生活習慣病の大きな原因と指摘されていて、これを代替できる甘味料開発の必要性が全世界的に台頭しているのが実情である。最近、多様な甘味素材が開発されているが、甘味度および甘味質を考慮して、砂糖とこれら甘味素材、食物繊維など多様な機能性素材を混合して製品化が行われている。
【0005】
前記砂糖を代替する甘味料として使用されるアルロースは、果糖の3番炭素のエピマーであって、果糖の70%に該当する甘味度を有しており、血糖調節、虫歯予防および肝で脂肪合成を阻害する機能性糖である。砂糖代替甘味料として多く使用されている糖アルコール類は、一定量以上摂取時、下痢を誘発するなどの副作用があるが、アルロースは知られた副作用がない。したがって、アルロースの甘味料としての関心が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルロースを含むコーヒー乳飲料組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルロースを含むコーヒー乳飲料組成物およびその製造方法に関するものであって、特に特定含量のキナ酸およびカフェインを含むコーヒーおよびアルロースを組み合わせて使用することによる物性または官能を改善することができる組成およびその製造方法を提供しようとする。
【0008】
本発明は、コーヒー豆抽出物、牛乳およびアルロースを含むコーヒー乳飲料組成物を提供する。
【0009】
本発明で「コーヒー乳飲料」とは、コーヒー豆を加工したものであるかまたはこれに食品または食品添加物を加えたものであって、焙煎コーヒー(コーヒー豆を焙煎したものまたはこれを粉砕したもの)、インスタントコーヒー(焙煎コーヒーの可溶性抽出液を乾燥したもの)、調製コーヒー、または液状コーヒーからなる1種以上のコーヒーを含み、牛乳から脂肪を除いた牛乳全成分の固形分(無脂乳固形分)含量が全体コーヒー乳飲料組成物100重量%を基準にして1重量%~8重量%、好ましくは無脂乳固形分含量が4重量%~7重量%である飲料を意味する。前記脂肪を除いた牛乳全成分は、カゼインを含むタンパク質、カルシウムおよびリン酸塩を含むミネラル、およびビタミンを含むことができ、通常牛乳に含まれる成分であればこれに限定されない。
【0010】
前記コーヒー乳飲料組成物に含まれるコーヒー豆抽出物は、全体コーヒー乳飲料組成物にキナ酸(quinic acid)濃度が100~600μg/ml、好ましくは200~400μg/mlの濃度で含むことができ、カフェイン(cafffein)濃度が100~800μg/ml、好ましくは250~500μg/ml、さらに好ましくは400~450μg/mlになるように添加できる。前記コーヒー乳飲料組成物に含まれるキナ酸(a)/カフェイン(b)の濃度比率は、a/b値が0.1~2.5、好ましくは0.5~2.5、さらに好ましくは0.5~1.5比率で含むことができる。本発明のコーヒー乳飲料組成物は、前記範囲でキナ酸およびカフェインを含むことによって官能的に優れるコーヒー乳飲料組成物を提供することができる。
【0011】
本発明の一例によれば、前記コーヒー乳飲料キナ酸(a)/カフェイン(b)の濃度比率は、a/b値を0.5~1.5比率で含み、キナ酸の濃度が200~400μg/mlであるコーヒー乳飲料を提供することができる。
【0012】
コーヒー乳飲料の場合、キナ酸/カフェイン濃度比率が同一でもキナ酸の含量によってコーヒー乳飲料の甘味、酸味、苦味、ボディー感などが異なるようになり得、前記キナ酸/カフェイン濃度比率とキナ酸濃度を有する時、アルロースの苦味または鉄の味を効果的にマスキングしながらコーヒーの苦味を緩和させ優れた官能性を有するコーヒー乳飲料を提供することができる。
【0013】
キナ酸(quinic acid)は、クロロゲン酸(chlorogenic acid)の分解産物であって、下記の化学式の構造を有し、水溶性の無色結晶を有する化合物である。本発明のキナ酸は、コーヒー豆抽出物に苦味と渋味を付与する成分である。
【0014】
【0015】
カフェイン(caffeine)は、下記の化学式の構造を有するメチルキサンチンアルカロイド系化合物であって、白色の結晶構造を有するプリン塩基の一つである。中枢神経系を刺激する成分であって、コーヒー豆抽出物に苦味を付与する成分である。
【0016】
【0017】
前記コーヒー乳飲料組成物に含まれるコーヒー豆抽出物は、粉砕したコーヒー豆をコーヒー抽出用抽出機に入れて90~100℃の温度の熱水を前記のコーヒー抽出用抽出機に投入し抽出してコーヒー抽出物を得て、フィルター(filter)で1~2回フィルタリングした液状抽出物(コーヒー豆抽出液)またはこれを乾燥した粉末(乾燥抽出物)であってもよい。前記液状抽出物は、抽出物自体または溶媒(例、水)で希釈して使用することができ、前記乾燥抽出物は、抽出物自体または溶媒(例、水)で希釈して液状に変形して使用することができる。
【0018】
前記コーヒー抽出物に使用されるコーヒー豆は、コロンビアスプレモ、ケニアAA、ブラジルサントス、ブラジルセハード、ブラジルサンタルシア、ブラジルイエローバーボン、エチオピアイルガチェフェ、エチオピアシダモ、タンザニアキリマンジャロ、コスタリカタラジュ、グアテマラアンティグア、グアテマラレインフォレストコバン、グアテマラハイランドフエフエ、ハワイアンコナ、ジャマイカブルーマウンテン、イエメンモカ、インドネシアマンデリン、およびインドネシアガヨマウンテンからなる群より選択された1種以上を使用することができるが、これに限定されない。
【0019】
前記コーヒー豆抽出物は、コーヒー固形分含量を全体コーヒー乳飲料組成物100重量%を基準にして1~50重量%、好ましくは5~45重量%、さらに好ましくは20~30重量%で含むように添加できる。
【0020】
本発明のコーヒー乳飲料組成物は、糖類としてアルロースを使用することによって低カロリーまたは無カロリーのコーヒー乳飲料組成物を提供することができ、ブドウ糖、果糖または砂糖のような単糖類または二糖類の過剰摂取を減らし、糖尿、肥満などの成人病予防に良い効果がありながらも、砂糖と類似の水準で甘味度が高いという利点がある。特に、アルロースは砂糖と異なり甘味以外にも清涼感または鉄の味がして砂糖を完全に代替することができる甘味料と見にくかったが、本発明の飲料組成物はアルロースをコーヒー乳飲料に適用してコーヒー乳飲料の苦味および酸味によってアルロースの鉄の味などがマスキングされると同時にコーヒーの苦味を緩和させる効果があり、コーヒー豆抽出物内キナ酸およびカフェインとの官能的相互作用によって甘味は低いが、甘味満足度が高い、即ち、高品質の甘味を有するコーヒー乳飲料組成物を提供することができる。
【0021】
本発明のコーヒー乳飲料組成物に含まれるアルロースは、シロップまたは粉末形態であってもよい。本発明のコーヒー乳飲料組成物は、前記アルロースをコーヒー乳飲料組成物の総固形分重量100%を基準にして0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、さらに好ましくは1~10重量%で含まれたものであってもよい。
【0022】
前記アルロースシロップは、アルロースを用いて多様な濃度で製造した溶液であってもよい。例えば、前記アルロースシロップ内固形分アルロースがアルロースシロップ重量100%を基準にして10~100重量%で含むことができ、好ましくは70~99.99重量%、さらに好ましくは90~99.99重量%で混合して製造できる。前記アルロース粉末を使用する場合、アルロース粉末固形分は全体組成物粉末、例えば純度90%以上のアルロース、例えばアルロースを90~99.99重量%、さらに好ましくは95~99.99重量%で含むアルロースを使用することができる。
【0023】
前記アルロースシロップは、前記アルロース単独または混合糖から分離、精製および濃縮工程を通じて得られたものであってもよい。本発明の一例で、分離および精製工程を経たアルロースシロップは、電気伝導度1~50μS/cmであり、無色または微黄色の甘味を有する液状アルロースシロップであってもよい。
【0024】
前記アルロースは、アルロース単独または追加の他の糖類を含む混合糖であってもよく、混合糖の例は全体混合糖の固形分含量100重量%を基準にして1~99.9重量%のアルロースを含有することができ、追加的に果糖およびブドウ糖からなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。アルロース混合糖が果糖および/またはブドウ糖を含む場合、前記混合糖は果糖1~90重量%および/またはブドウ糖1~50重量%を含むことができる。前記アルロース含有混合糖の具体的な例は混合糖の全体固形分含量100重量部を基準にして、アルロース5~30重量部、果糖20~50重量部およびブドウ糖20~55重量部、およびオリゴ糖1~10重量部を含むものであってもよく、オリゴ糖は含まなくてもよい。前記アルロース、果糖およびブドウ糖は、好ましくは全てD型-異性体である。
【0025】
前記コーヒー乳飲料組成物は、アルロース以外にも糖類として、砂糖、果糖、水飴、ブドウ糖、アルロースを除いた希少糖、オリゴ糖、糖アルコール類およびデキストリンからなる群より選択された1種以上の糖類を追加的に含むことができる。
【0026】
高甘味度甘味料、マルチトール、D-ソルビトール、ポリグリシトールシロップ、難消化性マルトデキストリン、ポリデキストロースからなる群より選択された1以上の糖類を、追加的に混合して製造できる。追加的に混合される1以上の糖類は、全体コーヒー乳飲料組成物固形分重量100%を基準にして0.1~20重量%、好ましくは0.1~10重量%で混合して製造できる。
【0027】
前記追加的に混合される1以上の糖類は、全体コーヒー乳飲料組成物固形分重量100%を基準にして0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.1~5重量%で含むか、追加糖類を含まなくてもよい。例えば、本発明のコーヒー乳飲料組成物は砂糖を含まなくてもよい。
【0028】
前記アルロースを除いた希少糖は、タガトース、アルロースおよびアルトロースからなる群より選択された1以上を含むことができる。また、前記オリゴ糖は、グルコース、フルクトース、またはガラクトースなどの単糖類がグリコシド結合によって脱水および縮合されて、単糖類2個~5個程度が結合された低粘度の糖類を総称する。前記オリゴ糖は糖質原料から得られた糖液を加工したものであって、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖などがあり、オリゴ糖は原料(基質)の種類によって、デンプン質を用いたマルトオリゴ糖またはイソマルトオリゴ糖、乳糖を用いたガラクトオリゴ糖、および砂糖を用いたフラクトオリゴ糖を使用することができる。
【0029】
前記糖アルコール類は、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、イノシトールおよびソルビトールからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記食物繊維類は水溶性食物繊維であってもよく、水溶性食物繊維は、ポリデキストロース、難消化性マルトデキストリン、およびペクチンからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記オリゴ糖類は、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、およびガラクトオリゴ糖からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0030】
本発明のコーヒー乳飲料組成物に含まれる牛乳は、原乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、還元乳、還元低脂肪牛乳、および脱脂粉乳からなる群より選択された1以上であってもよい。
【0031】
前記牛乳は、脂肪を除いた牛乳全成分の固形分含量が全体コーヒー乳飲料組成物100重量%を基準にして1~8重量%、好ましくは4~7重量%で含まれるように添加できる。例えば、前記原乳、例えばMSNF8%以上の原乳をコーヒー乳飲料組成物100重量%を基準にして30~50重量%、好ましくは35~45重量%を添加することができる。
【0032】
前記脂肪を除いた牛乳全成分は、カゼインを含むタンパク質、カルシウムおよびリン酸塩を含むミネラル、およびビタミンを含むことができ、通常牛乳に含まれる成分であればこれに限定されない。
【0033】
本発明のコーヒー乳飲料組成物は、クリーマー、粉末クリーム、牛乳粉末、カゼイン塩、乳脂、植物性オイル、泡形成剤、芳香化合物、および緩衝塩からなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
【0034】
また、本発明のコーヒー乳飲料組成物は、選択的に安定化剤、乳化剤、甘味剤、pH調節剤および発色剤からなる群より選択された1以上を追加的に含むことができる。
【0035】
本発明のコーヒー乳飲料組成物は、糖類としてアルロースを含んでアルロースのメイラード(Maillard)反応を伴って砂糖のみを含む場合に比べて褐変がさらに発生して特にコーヒー乳飲料組成物に優れた発色効果があって、発色剤の添加がなくても官能的に優れた水準の発色効果が得られる。従って、本発明のコーヒー乳飲料組成物は発色剤を含まないことを特徴とすることができる。
【0036】
本発明で使用可能な安定化剤としては、ゲランガム、キサンタンガム、カラギナン、グアーガム、アラビアゴム、ローカストビーンガムなどのガム類、CMC(carboxymethyl cellulose)などのセルロース類、ペクチンおよびゼラチンからなる群より選択された1種以上を使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0037】
前記組成物で使用可能な乳化剤は、食品に使用可能な乳化剤であれば特に制限されず、例えば、非イオン系乳化剤、陽イオン性乳化剤、両性乳化剤などを使用することができ、具体的に脂肪酸エステル、好ましくは、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合脂肪酸エステル、およびポリソルベート系乳化剤からなる群より選択された1種以上を含むことができ、好ましくはショ糖脂肪酸エステル(S-1670および/またはS570)を使用することができる。前記乳化剤は、全体組成物重量100%を基準にして0.0001~0.5重量%で含むことができ、好ましくは0.001~0.01重量%で含まれる。
【0038】
本発明で使用可能なpH調節剤として、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸ナトリウムからなる群より選択された1以上を使用することができる。
【0039】
本発明のまた他の一例として、水に、コーヒー豆抽出物、牛乳およびアルロースを混合する段階を含むコーヒー乳飲料組成物を製造する方法を提供する。
【0040】
前記コーヒー乳飲料組成物に関する事項は、飲料組成物の製造方法に同一に適用できる。
【0041】
また、本発明のコーヒー乳飲料組成物製造方法は、殺菌する段階、冷却段階、均質化段階、および充填する段階からなる群より選択された1以上を追加的に含むことができる。
【0042】
前記殺菌段階は、低温殺菌法(low temperature long time method、LTLT)、高温短時間殺菌法(high temperature short time method、HTST)、および超高温加熱法(ultra-high temperature heating method、UHT)など食品に使用可能な殺菌法を非制限的に使用することができる。
【0043】
また、前記冷却段階は、殺菌されるか殺菌されていない処理物を5~15℃の温度で冷却することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、アルロースを含むコーヒー乳飲料組成物およびその製造方法であって、コーヒー豆抽出物、牛乳およびアルロースを含んで、低カロリーのコーヒー乳飲料でありながらも、アルロース特有の苦味または鉄の味をマスキングすると同時にコーヒーの苦味を緩和させ、高品質の甘味を有する官能特性を有するコーヒー乳飲料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1a】本発明によるコーヒー乳飲料組成物の写真である。
【
図1b】本発明のコーヒー乳飲料組成物の色価を測定した結果である。
【
図2】本発明によるコーヒー乳飲料組成物(単一品種コーヒー豆)の官能評価結果を示したものである。
【
図3】本発明によるコーヒー乳飲料組成物(2種コーヒー豆)の官能評価結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
下記例示的な実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の保護範囲が下記実施例に限定される意図ではない。
【0047】
製造例1.アルロースシロップ製造
アルロースとしては、韓国登録特許10-16173797に記載された製造方法と実質的に同一な生物学的方法で、果糖基質からアルロースシロップを製造して40ブリックスの95重量%果糖からブドウ糖:果糖:アルロース:オリゴ糖=6:67:25:2の24~26(w/w)%アルロースシロップを得た。
得られたアルロースシロップを、有色およびイオン成分などの不純物を除去するために陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂および陽イオンと陰イオン交換樹脂が混合された樹脂で充填された常温のカラムに時間当りイオン交換樹脂2倍体積の速度で通液させて処理した。その後、カルシウム(Ca2+)タイプのイオン交換樹脂で充填されたクロマトグラフィーを用いて高純度のアルロース分画を得た。前記アルロース分画をイオン精製および濃縮して、糖シロップ組成物固形分含量100重量%を基準にしてアルロース95重量%、果糖5重量%から構成されたアルロースシロップを製造した。
前記アルロース含量95重量%のアルロースシロップのpH、色価、電気伝導度を測定して下記表1に示した。
【0048】
【0049】
実施例1~6: 単一コーヒー豆使用したコーヒー乳飲料組成物製造
ハンドドリップ用粉砕機(0.7~1.0mm)でコーヒー豆(コロンビアスプレモ、二月ロスターズ)を粉砕して、ビーカーに粉砕されたコーヒー豆500gを入れ90~100℃温度の水を注いだ後、5分間静置した。攪拌機(Overhead stirrer)で10分間攪拌した後、ろ過紙(filter paper 5A)を用いて真空ろ過してコーヒー豆抽出液を製造した。
コーヒー乳飲料製造のためにoverhead stirrerを用いて牛乳(MSNF8%以上原乳)を攪拌しながら50℃で加温し、製造例1で製造されたアルロースシロップ(75bx)または白砂糖(三養社)と、炭酸水素ナトリウム(炭酸カリウム)、カゼインナトリウムおよび乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、三養社)を混合して投入した後、脱脂粉乳(MSNF95%以上、ソウル牛乳)を少量ずつ投入した。その後、前記製造されたコーヒー豆抽出液を下記表のように含量を別にして投入した後、乳クリーム(冷凍乳クリームMF40%)および精製水を投入した後、攪拌して均質化過程(150bar)を経て殺菌してコーヒー乳飲料を製造した。また、比較例1、2として前記コーヒー乳飲料と同一に製造し、アルロースを含まず白砂糖を含む組成でコーヒー乳を製造した。前記コーヒー乳飲料は下記の成分および含量で製造された。
【0050】
【0051】
実施例7および8: 混合コーヒー豆使用したコーヒー乳飲料組成物製造
前記実施例1~6と同様な方法でコーヒー乳飲料を製造し、コーヒー豆は単一コーヒー豆でない混合コーヒー豆を使用してコーヒー乳飲料を製造した。下記表の組成比で製造され、混合コーヒー豆はコロンビアスプレモおよびケニアAA(二月ロスターズ)をそれぞれ5:5および3:7の重量比で混合して使用した。比較例として、アルロースを含まず砂糖を含む組成でコーヒー乳を製造した。
【0052】
【0053】
試験例1.物性評価
1.1成分分析
コーヒー乳飲料において官能に最も大きな影響を与えると知られた成分として、コーヒーの苦味と渋味に寄与するキナ酸(quinic acid)およびコーヒーの酸味に寄与すると知られたカフェイン(caffeine)の含量をHPLCを用いて分析した。実施例および比較例で使用されたコーヒー豆抽出物(コロンビアスプレモおよびケニアAA)サンプル1mlを0.45μm membrane filterを使用してろ過した後、下記表4の条件でそれぞれキナ酸およびカフェインを分析した。
【0054】
【0055】
分析された値を用いて実施例1~8および比較例1~2のキナ酸およびカフェイン含量を算出して、下記表5に示した。
【0056】
【0057】
1.2固形分含量、pHおよび酸度分析
一般にコーヒー乳飲料の品質を決定すると知られているコーヒー固形分含量、pHおよび酸度を分析した。
実施例1~8および比較例1~2のコーヒー乳飲料の固形分含量はTable brixmeter(ATAGO)で分析し、pHはpHメーターを使用して測定した。
【0058】
【0059】
上記結果から確認できるように、キナ酸およびカフェイン含量が増加することによってpHが低く示され、キナ酸およびカフェイン含量変化によるコーヒーの固形分含量は大きな変化がなく、2種以上のコーヒー豆を混合して含む場合にも固形分含量およびpHの変化は現れないのを確認した。
【0060】
1.3 色度分析
実施例1~6と比較例1のコーヒー乳飲料の色価を測定した。UV Spectrophotpmeterを使用して420nm波長で吸光度を測定した。測定サンプルの濃度は30bxであり、10cm石英セルを用いて分析した。420nmはyellownessを測定する波長でその値が高いほど黄色に近く値が低ければ透明な色に近いと見ることができる。測定結果は
図1a、
図1bに示した。
前記結果から確認できるように、単一コーヒー豆を使用する場合、yellownessを示すb値はアルロースシロップ含量に対してキナ酸およびカフェインの含量が増加することによって不規則に増加する傾向を示し、rednessを示すa値は一定に増加する様相を示して、コーヒー乳飲料色が濃くなったことを確認した。
【0061】
試験例2.官能評価
実施例1~9と、比較例1および2の組成で製造されたコーヒー乳飲料で、甘味、酸味、苦味、ボディー感、色満足度および甘味満足度の五種類評価項目に対して下記評価基準により評価し、20~50代の成人男女パネル14人を対象にして5点尺度法で官能評価を行った。前記結果のうちの実施例の評価結果を表7および
図2に、比較例の結果を表8および
図3に示した。
[評価基準]
甘味: 甘味が全くない(0点)-甘味が非常に強い(5点)
酸味: 酸味が全くない(0点)-酸味が非常に強い(5点)
苦味: 苦味が全くない(0点)-苦味が非常に強い(5点)
ボディー(body)感: ボディー感が全くない(0点)-ボディー感が非常に大きい(5点)
色満足度: 色甘味全て全般満足度と基準同一です。
甘味満足度: 非常に満足でない(0点)-非常に満足である(5点)
【0062】
【0063】
【0064】
上記結果から確認できるように、酸味と苦味はキナ酸およびカフェイン含量が増加することによって共に増加し、実施例2~4は砂糖を含む比較例に比べて甘味強度は低かったが、全体的満足度が優れたことを確認した。また、色満足度の場合、実施例4が最も高く示されたことを確認した。また、混合コーヒー豆を使用する場合にもアルロースシロップを使用した場合(実施例7および8)に甘味度が比較例2の砂糖に比べて低いにもかかわらず、高い満足度を示すのを確認した。
したがって、アルロースシロップ(アルロース固形分含量重量%、75bx)含量約6(w/w%)を基準にしてコーヒー豆抽出液のキナ酸が330~350μg/mlであり、カフェインが400~450μg/mlである時、官能特性が最も優れたことを確認した。