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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】蓄電素子、及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20220901BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220901BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220901BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220901BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20220901BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220901BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220901BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20220901BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20220901BHJP
【FI】
H01M10/653
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6556
H01M10/6555
H01M50/20
H01M10/04 Z
H01G11/10
H01G11/82
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018551645
(86)(22)【出願日】2017-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2017040961
(87)【国際公開番号】W WO2018092775
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2016222473
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】山福 太郎
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035395(WO,A1)
【文献】特開2014-197467(JP,A)
【文献】特開2001-307784(JP,A)
【文献】特開2013-012441(JP,A)
【文献】特開2016-152118(JP,A)
【文献】特表2013-541152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
H01M 50/10
H01M 50/20
H01M 50/40
H01M 50/572
H01M 10/04
H01G 11/10
H01G 11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面に沿って広がると共に該ケースの周方向に延び、且つ該ケースを周方向にのみ囲う一つの外装シートと、
前記外装シートを前記ケースの外面に固定する接着層と、を備え、
前記外装シートは、前記ケースの外面と前記接着層を介して対向する部分と、前記ケースの外面と直接対向する部分と、を有する、蓄電素子。
【請求項2】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面に沿って広がり且つ該ケースを周方向に囲う一つの外装シートと、
前記外装シートを前記ケースの外面に固定する接着層と、
前記ケースに収容され且つ前記電極体の熱が伝わる内部部材と、
前記ケースと前記電極体との間、及び前記ケースと前記内部部材との間に配置される絶縁部材と、を備え、
前記外装シートは、前記ケースの外面と前記接着層を介して対向する部分と、前記ケースの外面と直接対向する部分と、を有し、
前記内部部材は、前記ケースの内面の一部に前記絶縁部材を介して当接し、
前記接着層は、前記ケースの外面の所定位置であって、前記内部部材が前記絶縁部材を介して該ケースの内面に当接している位置を避けた所定位置に配置される、蓄電素子。
【請求項3】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面に沿って広がり且つ該ケースを周方向に囲う一つの外装シートと、
前記外装シートを前記ケースの外面に固定する接着層と、を備え、
前記ケースは、周方向に複数の角部を有する角筒状の周壁を有し、
前記外装シートは、前記ケースの外面と前記接着層を介して対向する部分と、前記ケースの外面と直接対向する部分と、を有すると共に、少なくとも一つの前記角部を前記周方向に跨ぎ且つ前記周方向の張力が加わっている状態で前記周壁に固定され、
前記接着層は、前記ケースの周壁の厚さ方向から見て前記角部の頂部と重ならない位置に配置されている、蓄電素子。
【請求項4】
前記ケースは、周方向に複数の角部を有する角筒状の周壁を有し、
前記外装シートは、少なくとも一つの前記角部を前記周方向に跨ぎ且つ前記周方向の張力が加わっている状態で前記周壁に固定され、
前記接着層は、前記ケースの周壁の厚さ方向から見て前記角部の頂部と重ならない位置に配置されている、請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記電極体は、積層された状態で巻回される電極を有し、
前記周壁は、前記電極体の巻回中心軸方向における該電極体の両側において該巻回中心軸方向と直交する一対の第一外壁面と、該第一外壁面と直交する方向に広がり且つ前記一対の第一外壁面の対応する端部同士を接続する一対の第二外壁面と、を有し、
前記第二外壁面は、周方向において、前記第一外壁面より長く、
前記接着層は、前記第二外壁面に配置される、請求項3又は4に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記接着層は、前記電極体の巻回中心軸方向における該電極体の端部と、該巻回中心軸方向と直交する方向に重なる位置に配置される、請求項に記載の蓄電素子。
【請求項7】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面に沿って広がり且つ該ケースを周方向に囲う一つの外装シートと、
前記外装シートを前記ケースの外面に固定する接着層と、を備え、
前記外装シートは、前記ケースの外面と前記接着層を介して対向する部分と、前記ケースの外面と直接対向する部分と、を有し、
前記ケースの外面は、外部端子が配置される第一の面と、前記第一の面と反対側の第二の面と、を含み、
前記外装シートは、前記第二の面を覆い、
前記接着層は、前記ケースの外面のうちの前記第二の面以外の領域と対向する位置に配置される、蓄電素子。
【請求項8】
電極体と、
前記電極体を囲い且つ周方向に複数の角部を有する角筒状の周壁を有するケースと、
前記周壁の周方向に延び且つ該周壁の外面を覆う一つの外装シートと、
周方向における前記外装シートの一方の端部と他方の端部とが積層された状態で、該一方の端部と該他方の端部とを接着する接着層と、を備え、
前記積層された一方の端部及び他方の端部は、前記角部の頂部と重ならない位置に配置され
前記ケースの外面は、外部端子が配置される第一の面と、前記第一の面と反対側の第二の面と、を含み、
前記外装シートは、前記第二の面を覆い、
前記接着層は、前記ケースの外面のうちの前記第二の面以外の領域と対向する位置に配置される、蓄電素子。
【請求項9】
第一方向に並ぶ複数の蓄電素子であって、請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電素子を少なくとも一つ含む複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、を備える、蓄電装置。
【請求項10】
前記第一方向に並ぶ複数の蓄電素子の列に沿って配置され、前記複数の蓄電素子を冷却する冷却部材を備え、
前記接着層は、前記ケースの外面における前記冷却部材によって冷却される領域以外の領域と対向する位置に配置される、請求項9に記載の蓄電装置。
【請求項11】
第一方向に並ぶ複数の蓄電素子であって、電極体、前記電極体を収容するケース、前記ケースの外面に沿って広がり且つ該ケースを周方向に囲う一つの外装シート、及び、前記外装シートを前記ケースの外面に固定する接着層、を有し、前記外装シートが、前記ケースの外面と前記接着層を介して対向する部分、及び前記ケースの外面と直接対向する部分、を有する蓄電素子を少なくとも一つ含む複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、
前記第一方向に並ぶ複数の蓄電素子の列に沿って配置され、前記複数の蓄電素子を冷却する冷却部材と、を備え
前記接着層は、前記ケースの外面における前記冷却部材によって冷却される領域以外の領域と対向する位置に配置される、蓄電装置。
【請求項12】
第一方向に並ぶ複数の蓄電素子であって、電極体、前記電極体を囲い且つ周方向に複数の角部を有する角筒状の周壁を有するケース、前記周壁の周方向に延び且つ該周壁の外面を覆う一つの外装シート、及び、周方向における前記外装シートの一方の端部と他方の端部とが積層された状態で、該一方の端部と該他方の端部とを接着する接着層、を有し、前記積層された一方の端部及び他方の端部が前記角部の頂部と重ならない位置に配置される蓄電素子を少なくとも一つ含む複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、
前記第一方向に並ぶ複数の蓄電素子の列に沿って配置され、前記複数の蓄電素子を冷却する冷却部材と、を備え
前記接着層は、前記ケースの外面における前記冷却部材によって冷却される領域以外の領域と対向する位置に配置される、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2016-222473号の優先権を主張し、日本国特願2016-222473号の内容は、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ケースと、接着層を介して前記ケースの外周面に固定される外装シートと、を備える蓄電素子、及び前記蓄電素子を備える蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来から、金属缶ケースと、金属缶ケースを被覆する絶縁外装体と、を備える電池セルが知られている(特許文献1参照)。具体的に、前記電池セルは、金属缶ケースと、前記金属缶ケースの中央部を被覆する絶縁外装体と、を備える、二次電池セルである。
前記絶縁外装体は、前記金属ケースの表面部分を被覆するように設けられる。前記絶縁外装体は、複数の材料からなる多層構造により形成されてなる。具体的には、前記絶縁外装体は、熱放射層、熱伝導層、絶縁層、及び粘着層等を有する多層シートである。前記粘着層は、前記絶縁外装体の全面において、該絶縁外装体と前記金属缶ケースとを密着させて固定する役割を果たす。従って、前記絶縁外装体は、粘着層が前記電池セル側となる向きで該電池セルを被覆し、前記粘着層と前記金属缶ケースとを接触させる。
【0004】
尚、前記絶縁外装体は、前記金属缶ケースとの間に塗布された粘着剤により粘着性を有することを実現してもよい。その場合に、前記絶縁外装体は、前記粘着層の代わりに当該粘着剤を前記絶縁層と前記金属缶ケースとの間に塗布する必要がある。
【0005】
上述の電池セルにおいて、粘着層や粘着剤は、熱放射層や熱伝導層等の絶縁外装体を構成する他の層よりも熱伝導率が低い。このため、前記電池セルでは、前記絶縁外装体の全面において粘着層や粘着剤が配置されているため、内部の熱が外部に十分に放出されない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2009-295381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本実施形態は、外装シートが接着層によってケースの外面に配置されていても、内部の熱を外部に放出させ易い蓄電素子及び蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の蓄電素子は、
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面に沿って広がる外装シートと、
前記外装シートを前記ケースの外面に固定する接着層と、を備え、
前記外装シートは、前記ケースの外面と前記接着層を介して対向する部分と、前記ケースの外面と直接対向する部分と、を有する、蓄電素子。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、前記蓄電素子の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III位置における断面図である。
図4図4は、前記蓄電素子の電極体の斜視図である。
図5図5は、図1のV-V位置における断面の模式図である。
図6図6は、前記蓄電素子を含む蓄電装置の斜視図である。
図7図7は、前記蓄電装置の分解斜視図である。
図8図8は、他実施形態に係る蓄電素子の断面の模式図である。
図9図9は、他実施形態に係る蓄電素子のケース本体を外した状態における分解斜視図である。
図10図10は、前記蓄電素子の斜視図である。
図11図11は、他実施形態に係る蓄電素子のケース本体を外した状態における分解斜視図である。
図12図12は、前記蓄電素子の斜視図である。
図13図13は、他実施形態に係る蓄電素子のケース本体を外した状態における分解斜視図である。
図14図14は、前記蓄電素子の斜視図である。
図15図15は、他実施形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
図16図16は、前記蓄電装置が備える蓄電素子の外装シートを説明するための斜視図である。
図17図17は、前記蓄電装置の冷却部材の位置を示す模式図である。
図18図18は、他実施形態に係る蓄電装置の冷却部材の位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の蓄電素子は、
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面に沿って広がる外装シートと、
前記外装シートを前記ケースの外面に固定する接着層と、を備え、
前記外装シートは、前記ケースの外面と前記接着層を介して対向する部分と、前記ケースの外面と直接対向する部分と、を有する。
【0011】
かかる構成によれば、接着層が外装シートの全面に配置されていないことで、ケース内部の熱が接着層を介さずにケースから外装シートに直接伝わる部分がある。このため、かかる部分において接着層を介して熱が伝わる部分より熱伝達が効率よく行われる。これにより、外装シートが接着層によってケースの外面に配置されていても、外装シートの全面に接着層が配置される場合に比べ、内部の熱を外部に放出させ易くなる。
【0012】
前記蓄電素子は、
前記ケースに収容され且つ前記電極体の熱が伝わる内部部材と、
前記ケースと前記電極体との間、及び前記ケースと前記内部部材との間に配置される絶縁部材と、を備え、
前記内部部材は、前記ケースの内面の一部に前記絶縁部材を介して当接し、
前記接着層は、前記ケースの外面の所定位置であって、前記内部部材が前記絶縁部材を介して該ケースの内面に当接している位置を避けた所定位置に配置されてもよい。ここで、内部部材が絶縁部材を介してケースの内面に当接している位置を避けた所定位置とは、ケースの外面の法線方向から見て、内部部材が絶縁部材を介してケースの内面に当接している位置と重ならない位置である。
【0013】
かかる構成によれば、ケースの外面において内部部材からの熱が伝わりやすい位置を避けた位置(ケースの外面の法線方向から見て重ならない位置)に接着層が配置されるため、内部部材を通じてケースに伝わった蓄電素子の内部の熱が接着層に邪魔されずに外装シートに伝わり、外部に放出される。
【0014】
前記蓄電素子では、
前記ケースは、周方向に複数の角部を有する角筒状の周壁を有し、
前記外装シートは、少なくとも一つの前記角部を前記周方向に跨ぎ且つ前記周方向の張力が加わっている状態で前記周壁に固定され、
前記接着層は、前記ケースの周壁の厚さ方向から見て前記角部の頂部と重ならない位置に配置されてもよい。
【0015】
このように、張力が加わった状態で角部を跨ぐように外装シートが周壁の外面に配置されることで、角部において外装シートがケース(周壁)と確実に接触し、これにより、ケースから空気層を介して外装シートに熱が伝わる場合に比べ、内部からケースに伝わった熱が効率よく外装シートに伝わり、その結果、前記内部の熱がより外部に放出され易くなる。
【0016】
前記蓄電素子では、
前記電極体は、積層された状態で巻回される電極を有し、
前記周壁は、前記電極体の巻回中心軸方向における該電極体の両側において該巻回中心軸方向と直交する一対の第一外壁面と、該第一外壁面と直交する方向に広がり且つ前記一対の第一外壁面の対応する端部同士を接続する一対の第二外壁面と、を有し、
前記第二外壁面は、周方向において、前記第一外壁面より長く、
前記接着層は、前記第二外壁面に配置されてもよい。
【0017】
このように、角筒状の周壁において外装シートが周方向に巻き付けられたときにケースの外面から外装シートが浮きやすい長壁面(周方向の寸法の大きな外壁面:第二外壁面)に接着層が配置されることで、外装シートとケースの外面との間に隙間が生じることが好適に抑えられる。
【0018】
前記蓄電素子では、
前記接着層は、前記電極体の巻回中心軸方向における該電極体の端部と、該巻回中心軸方向と直交する方向に重なる位置に配置されてもよい。
【0019】
電極体において、通常、集電体等が接続される巻回中心軸方向の端部(未塗工部等)は、充放電による膨張等によってケースの内面に接触し難い。このため、ケースの外面における前記電極体の端部と対応する位置に接着層が配置されることで、ケースの外面において電極体からの熱が伝わりやすい位置を避けた位置に接着層が配置される。これにより、電極体からケースに伝わった熱が接着層に邪魔されずに外装シートに伝わり、外部に放出される。
【0020】
他の実施形態の蓄電素子は、
電極体と、
前記電極体を囲い且つ周方向に複数の角部を有する角筒状の周壁を有するケースと、
前記周壁の周方向に延び且つ該周壁の外面を覆う外装シートと、
周方向における前記外装シートの一方の端部と他方の端部とが積層された状態で、該一方の端部と該他方の端部とを接着する接着層と、を備え、
前記積層された一方の端部及び他方の端部は、前記角部の頂部と重ならない位置に配置される。
【0021】
張力によって外装シートがケース(周壁)の角部と確実に接触するため、この位置(角部の頂部)を避けた位置に、ケースから伝わった熱を外部に放出し難い外装シートにおける厚さ寸法の大きくなった部位(接着層を介して端部同士が積層された部位)が配置されることで、外装シートが接着層によってケースの外面に配置されていても内部の熱が外部に放出され易い。
【0022】
上記のいずれかの蓄電素子では、
前記外装シートの熱伝導率は、0.6W/(m・K)以上、且つ、30W/(m・K)以下であってもよい。
【0023】
このような熱伝導率の外装シートが用いられることで、ケースから外装シートに伝わった熱が好適に外部に放出される。
【0024】
上記のいずれかの蓄電素子では、
前記ケースの外面は、外部端子が配置される第一の面と、前記第一の面と反対側の第二の面と、を含み、
前記外装シートは、前記第二の面を覆い、
前記接着層は、前記ケースの外面のうちの前記第二の面以外の領域と対向する位置に配置されてもよい。
【0025】
蓄電素子を冷却する場合、ケースの外面における外部端子等の構造物が配置された面と反対側の面が冷却されることが多い。このため、上記の構成によれば、ケースの外面における前記冷却が行われやすい面以外の領域と対向する位置に接着層が配置されている(即ち、冷却されやすい位置を避けた位置に接着層が配置される)ことで、蓄電素子に対して前記冷却が行われる場合に十分な冷却効果が得られる。
【0026】
他の実施形態の蓄電装置では、
第一方向に並ぶ複数の蓄電素子であって、上記のいずれかの蓄電素子を少なくとも一つ含む複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、を備える。
【0027】
かかる構成によれば、保持部材によって保持されていることで、蓄電素子のそれぞれに第一方向の力が加わるため、第一方向において外装シートとケースの外面とが直接対向する部分を有する蓄電素子において前記第一方向に加わる力によって外装シートとケースとが密着する。これにより、該蓄電素子においてケースから外装シートへの熱伝達が好適に行われる。その結果、複数の蓄電素子を備える蓄電装置において、外装シートが接着層によってケースの外面に配置されている蓄電素子が含まれていても、該蓄電素子において内部の熱は、外部に放出され易い。
【0028】
前記蓄電装置は、
前記第一方向に並ぶ複数の蓄電素子の列に沿って配置され、前記複数の蓄電素子を冷却する冷却部材を備え、
前記接着層は、前記ケースの外面における前記冷却部材によって冷却される領域以外の領域と対向する位置に配置されてもよい。
【0029】
このように、ケースの外面における冷却部材によって冷却される領域以外の領域と対向する位置(避けた位置)に接着層が配置されることで、各蓄電素子において十分な冷却効果が得られる。
【0030】
他の実施形態の蓄電素子は、
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記電極体と前記ケースとの間に配置される絶縁材と、
前記ケースの外面に配置される外装シートと、を備え、
前記絶縁材及び前記外装シートの少なくとも一方の熱伝導率は、0.6W/(m・K)以上、且つ、30W/(m・K)以下である。
【0031】
このような熱伝導率の絶縁材及び外装シートの少なくとも一方が用いられることで、熱が絶縁材及び外装シートの少なくとも一方を通過し易くなる。このため、電極体で生じた熱(即ち、ケースの内部の熱)がケースの外部へ放出され易くなる。
【0032】
以上の実施形態によれば、外装シートが接着層によってケースの外面に配置されていても、内部の熱を外部に放出させ易い蓄電素子及び蓄電装置を提供することができる。
【0033】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1図5を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0034】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、蓄電素子は、単一で使用される。一方、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、蓄電素子は、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0035】
蓄電素子は、図1図4に示すように、電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外面に沿って広がる外装シート7と、外装シート7をケース3の外面に固定する接着層8(図2及び図5参照)と、を備える。また、蓄電素子1は、ケース3の外面に配置される外部端子4と、電極体2と外部端子4とを導通させる集電体(内部部材)5と、を備える。本実施形態の蓄電素子1は、電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材(絶縁材)6等も、備える。
【0036】
電極体2は、積層された状態で巻回される電極(正極23及び負極24)を有する。具体的に、電極体2は、巻芯21と、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で積層された積層体22であって、巻芯21の周囲に巻回された積層体22と、を備える(図3及び図4参照)。電極体2においてリチウムイオンが正極23と負極24との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0037】
巻芯21は、通常、絶縁材料によって形成される。本実施形態の巻芯21は、筒状、より詳しくは、偏平な筒状である。この巻芯21は、可撓性又は熱可塑性を有するシートを巻回することによって形成される。本実施形態の前記シートは、合成樹脂によって形成されている。
【0038】
正極23は、帯状の金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。この正極活物質層232は、金属箔231における幅方向の一方の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔231に重ねられている。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔である。
【0039】
負極24は、帯状の金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。この負極活物質層242は、金属箔241における幅方向の他方(正極23の金属箔231の非被覆部と反対側)の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔241に重ねられている。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0040】
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極23、負極24、及びセパレータ25の積層体22が巻回されている。
【0041】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を移動可能となる。
【0042】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、SiO粒子、Al粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層が多孔質膜によって形成された基材の上に設けられることで形成されている。本実施形態のセパレータ25の基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0043】
セパレータ25の幅方向の寸法は、負極活物質層242の幅より大きい。セパレータ25は、正極活物質層232と負極活物質層242とが厚さ方向(積層方向)に重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の非被覆部と、負極24の非被覆部とは重なっていない。即ち、正極23の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(積層方向と直交する方向)に突出し、且つ、負極24の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の非被覆部の突出方向と反対の方向)に突出する。このような状態で積層された正極23、負極24、及びセパレータ25(即ち、積層体22)が巻回されることによって、電極体2が形成される。また、本実施形態の電極体2では、正極23の非被覆部又は負極24の非被覆部のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
【0044】
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。本実施形態の非被覆積層部26は、巻回された正極23、負極24、及びセパレータ25の巻回中心軸C方向から見て、中空部27(図2及び図4参照)を挟んで二つの部位(二分された非被覆積層部)261に区分けされる。
【0045】
以上のように構成される非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極23の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極24の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。
【0046】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間33(図3参照)に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0047】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPFを溶解させたものである。
【0048】
ケース3は、図1図3に示すように、ケース本体31の開口周縁部34と、蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3では、内部空間33がケース本体31と蓋板32とによって画定されている。本実施形態のケース3では、ケース本体31の開口周縁部34と蓋板32の周縁部とが溶接によって接合されている。
【0049】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0050】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0051】
以下では、閉塞部311の長辺方向を直交座標系のX軸方向とし、閉塞部311の短辺方向を直交座標系のY軸方向とし、閉塞部311の法線方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0052】
胴部312は、周方向に複数の角部を有する角筒形状である。本実施形態の胴部312は、周方向に四つの角部を有する角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0053】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。このケース本体31には、電極体2が巻回中心軸C方向をX軸方向に向けた状態で収容される。この電極体2がケース本体31に収容された状態において、胴部312は、電極体2の巻回中心軸C方向における該電極体2の両側において該巻回中心軸C方向と直交する一対の第一外壁面(短壁部314の外面)と、該第一外壁面と直交する方向に広がり且つ一対の第一外壁面の対応する端部同士を接続する一対の第二外壁面(長壁部313の外面)と、を有する。
【0054】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32の輪郭は、Z軸方向から見て、ケース本体31の開口周縁部34に対応した形状である。即ち、蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように該ケース本体31に当接する。より具体的には、蓋板32が開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。これにより、ケース3が構成される。
【0055】
外装シート7は、ケース3の外面と接着層8を介して対向する部分71と、ケース3の外面と直接対向する部分72と、を有する(図2参照)。この外装シート7は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。外装シート7の熱伝導率は、0.6w/(m・K)以上、且つ、30W/(m・K)以下である。具体的には、例えば外装シート7は、高熱伝導性ポリカーボネート、高熱伝導性ポリフェニレンサルファイド、高熱伝導性ナイロンによって形成される。
【0056】
外装シート7は、図1図3、及び図5に示すように、ケース3の胴部312の外面を覆う。この外装シート7は、胴部312の周方向に延びる帯状である。この外装シート7は、少なくとも一つの角部を周方向に跨ぎ且つ周方向の張力が加わっている状態で胴部312に固定されている。詳しくは、以下の通りである。
【0057】
外装シート7の長手方向の一方の端部(捲き始めの端部)をケース3の外面に固定する接着層8である第一接着層81は、胴部312の厚さ方向において角部の頂部315と重ならない位置に配置されている。詳しくは、第一接着層81は、長壁部313と対向する位置に配置されている。より詳しくは、第一接着層81は、巻回中心軸C方向における電極体2の端部(非被覆積層部)26と、Y軸方向から見て重なる位置に配置される。このとき、第一接着層81は、胴部312の所定位置であって、集電体5が絶縁部材6を介して胴部312の内面に当接している位置を避けた位置に配置されている。この位置から外装シート7が胴部312に巻き付けられている。このとき、外装シート7は、胴部312の周方向に張力を加えられつつ該胴部312に巻き付けられている。そして、外装シート7は、少なくとも一つの角部を周方向に跨ぎ且つ周方向の張力が加わっている状態で胴部312に固定されている。本実施形態の外装シート7は、胴部312を全周に亘って覆っている(囲っている)。具体的に、外装シート7の長手方向の他方の端部(巻き終わりの端部)をケース3の外面に固定する接着層8である第二接着層82は、第一接着層81と重なる位置に配置されている。即ち、外装シート7の一方(捲き始め)の端部と、他方(巻き終わり)の端部とは、第二接着層82を介して重なっている。
【0058】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。本実施形態の外部端子4は、図1図3に示す通り、バスバ等を溶接可能な面41を有する。
【0059】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と通電可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを通電可能に接続するクリップ部材50を備える。
【0060】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。本実施形態の集電体5は、外部端子4とクリップ部材50とを通電可能に接続する。具体的に、集電体5は、外部端子4と通電可能に接続される第一接続部51と、電極体2と通電可能に接続される第二接続部52と、第一接続部51と第二接続部52とを接続する屈曲部53と、を有する。集電体5では、屈曲部53がケース3内の蓋板32と短壁部314との境界近傍に配置され、第一接続部51が屈曲部53から蓋板32に沿って延び、第二接続部52が屈曲部53から短壁部314に沿って延びる。第二接続部52は、短壁部314の近傍から非被覆積層部26に向けて延びると共に第二接続部52と同方向に延びる接合片55を少なくとも一つ有する。この接合片55は、クリップ部材50と接合される。本実施形態の接合片55は、例えば、超音波溶接によってクリップ部材50と接合される。
【0061】
以上のように構成される集電体5は、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース3内において、電極体2の正極の非被覆積層部26と、負極の非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。正極の集電体5と負極の集電体5とは、異なる素材によって形成される。具体的に、正極の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
【0062】
クリップ部材50は、電極体2の非被覆積層部26(詳しくは、二分された非被覆積層部261)において積層された正極23又は負極24を束ねるように挟む。これにより、クリップ部材50は、非被覆積層部26において積層される正極23同士、又は負極24同士を導通させる。本実施形態のクリップ部材50は、断面がU字状となるように板状の金属材料が曲げ加工されることによって形成される。
【0063】
絶縁部材6は、図2及び図3に示すように、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される。この絶縁部材6は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。絶縁部材6の熱伝導率は、0.6w/(m・K)以上、且つ、30W/(m・K)以下が好ましいが、0.6w/(m・K)以下であってもよい。具体的に、例えば絶縁部材6は、高熱伝導性ポリカーボネート、高熱伝導性ポリフェニレンサルファイド、高熱伝導性ナイロンによって形成される。本実施形態の絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材が折り曲げられることによって袋状に形成されている。
【0064】
以上の蓄電素子1によれば、接着層8が外装シート7の全面に配置されていないことで、ケース3の内部の熱が接着層8を介さずにケース3から外装シート7に直接伝わる部分がある。このため、かかる部分において接着層8を介して熱が伝わる部分より熱伝達が効率よく行われる。これにより、蓄電素子1において外装シート7が接着層8によってケース3の外面に配置されていても、接着層8が外装シート7の全面に配置される場合に比べ、内部の熱が外部に放出され易い。
【0065】
本実施形態の蓄電素子1では、接着層8(本実施形態の例では第一接着層81と第二接着層82との両方)が、ケース3の外面の所定位置であって、集電体5が絶縁部材6を介して該ケース3の内面に当接している位置を避けた所定位置に配置されている(図5参照)。このように、ケース3の外面において集電体5からの熱が伝わりやすい位置を避けた位置に接着層8が配置されることで、集電体5を通じてケース3に伝わった蓄電素子1の内部の熱が接着層8に邪魔されずに外装シート7に伝わり、外部に放出される。
【0066】
また、本実施形態の蓄電素子1では、接着層8は、ケース3の胴部312の厚さ方向において角部の頂部315と重ならない位置に配置されている。そして、張力が加わった状態で角部を跨ぐように外装シート7が胴部312の外面に配置されることで、角部において外装シート7がケース3(胴部312)と確実に接触する。これにより、ケース3から空気層を介して外装シート7に熱が伝わる場合に比べ、内部からケース3に伝わった熱が効率よく外装シート7に伝わる。その結果、蓄電素子1において、前記内部の熱がより外部に放出され易くなる。
【0067】
また、本実施形態の蓄電素子1では、接着層8は、長壁部313の外面に配置されている。このように、角筒状の胴部312において外装シート7が周方向に巻き付けられたときにケース3の外面から外装シート7が浮きやすい長壁部313の外面(周方向の寸法の大きな外壁面)に接着層8が配置されることで、外装シート7とケース3の外面との間に隙間が生じることが効果的に抑えられる。
【0068】
また、本実施形態の蓄電素子1では、接着層8が、電極体2の巻回中心軸C方向における該電極体2の端部(非被覆積層部)26と、Y軸方向から見て重なる位置に配置されている。電極体2の未塗工部(金属箔231、241において活物質層232、242が塗られていない部位:電極体2において集電体5が接続される巻回中心軸C方向の端部)は、充放電による膨張等によってケース3の内面に接触し難い。このため、ケース3の外面における前記未塗工部と対応する位置に接着層8が配置されることで、ケース3の外面において電極体2からの熱が伝わりやすい位置を避けた位置に接着層8が配置されることになる。これにより、蓄電素子1では、電極体2からケース3に伝わった熱が接着層8に邪魔されずに外装シート7に伝わり、外部に放出される。
【0069】
また、胴部312における電極体2の塗工部(金属箔231、241において活物質層232、242が塗られている部位)とY軸方向から見て重なる位置では、充放電による電極体2の膨張によって胴部312が膨らむため、胴部312と外装シート7とが密接しやすい。このため、かかる位置(即ち、前記塗工部とY軸方向から見て重なる位置)に接着層8が配置されないことで、電極体2からケース3に伝わった熱が接着層8に邪魔されずに外装シート7に伝わり易くなる。
【0070】
本実施形態の蓄電素子1では、外装シート7の熱伝導率が、0.6W/(m・K)以上、且つ、30W/(m・K)以下が好ましいが、0.6w/(m・K)以下であってもよい。このような熱伝導率の外装シート7が用いられることで、ケース3から外装シート7に伝わった熱が好適に外部に放出される。また、本実施形態の蓄電素子1では、絶縁部材6の熱伝導率も、0.6W/(m・K)以上、且つ、30W/(m・K)以下が好ましいが、0.6w/(m・K)以下であってもよい。このような絶縁部材6が用いられることで、熱が絶縁部材6を通過し易くなるため、電極体2で生じた熱(即ち、ケース3の内部の熱)がケース3の外部へ放出され易くなる。
【0071】
次に、本発明に係る蓄電装置の一実施形態について図6及び図7も参照しつつ説明するが、上述の実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0072】
蓄電装置10は、Y軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1と、蓄電素子1と隣り合う複数の隣接部材200と、複数の蓄電素子1と複数の隣接部材200とをひとまとめに保持する保持部材400と、を備える。また、蓄電装置10は、複数の蓄電素子1と保持部材400との間に配置されるインシュレータ500と、蓄電素子1の外部端子4に接続される複数のバスバ600と、を備える。
【0073】
複数の蓄電素子1のそれぞれでは、上記の実施形態と同様に、外装シート7が、ケース3の外面と接着層8を介して対向する部分と、ケース3の外面と直接対向する部分と、を有している。
【0074】
隣接部材200は、X軸方向に並ぶ蓄電素子1の間、又は蓄電素子1と該蓄電素子1に対してY軸方向に並ぶ部材(本実施形態の例では、保持部材400の一部)との間に配置される。この隣接部材200は、複数種の隣接部材を含む。本実施形態の隣接部材200は、蓄電装置10のY軸方向の途中位置に配置される蓄電素子1と隣り合う第一隣接部材(隣接部材)210と、Y軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1のうちの最も端にある蓄電素子1と隣り合う第二隣接部材220と、を有する。
【0075】
第一隣接部材210は、蓄電装置10のY軸方向の途中位置において、Y軸方向に隣り合う蓄電素子1の間に配置される。これにより、第一隣接部材210を介してY軸方向に並ぶ蓄電素子1の間に、所定の間隔(沿面距離等)が確保される。
【0076】
具体的に、第一隣接部材210は、蓄電素子1(ケース本体31)と隣り合う第一本体部211と、第一本体部211と隣り合う蓄電素子1の該第一本体部211に対する移動を規制する第一規制部212と、を有する。
【0077】
第一本体部211の輪郭は、Y軸方向から見て隣り合う蓄電素子1(ケース3)の輪郭に対応する矩形である。また、第一本体部211は、Y軸方向に隣り合う蓄電素子1との間に温度調整用の流体(本実施形態の例では空気)を通過させる通風路215を形成する。詳しくは、第一本体部211は、矩形波形の断面形状を有する。これにより、第一本体部211が隣り合う蓄電素子1と当接することで、該蓄電素子1との間に通風路215が形成される。
【0078】
第一規制部212は、第一本体部211からY軸方向に延び、第一本体部211と隣り合う蓄電素子1(詳しくはケース3)とX-Z面方向の外側から当接することによって該蓄電素子1の第一本体部211に対するX-Z面方向への相対移動を規制する。この第一規制部212は、第一本体部211の少なくとも各角部からY軸方向に延び、第一本体部211と隣り合う蓄電素子1(ケース3)の角部にX-Z面方向の外側から当接する。
【0079】
第二隣接部材220は、Y軸方向において蓄電素子1と保持部材400との間に配置される。これにより、第二隣接部材220を介してY軸方向に並ぶ蓄電素子1と保持部材400との間に、所定の間隔(沿面距離等)が確保される。
【0080】
具体的に、第二隣接部材220は、蓄電素子1と保持部材400との間において該蓄電素子1(ケース本体31)と隣り合う第二本体部221と、第二本体部221と隣り合う蓄電素子1の該第二本体部221に対する移動を規制する第二規制部222と、を有する。
【0081】
第二本体部221の輪郭は、Y軸方向から見て隣り合う蓄電素子1(ケース3)の輪郭に対応する矩形である。また、第二本体部221は、Y軸方向に隣り合う蓄電素子1との間に温度調整用の流体(本実施形態の例では空気)を通過させる通風路225を形成する。詳しくは、第二本体部221では、隣り合う蓄電素子1に向けて(Y軸方向に)突出すると共にX軸方向に延びる複数の凸部226が、Z軸方向に間隔をあけて並ぶ。これにより、凸部226の先端(突出方向の先端)が隣り合う蓄電素子1と当接することで、第二隣接部材220と蓄電素子1との間に通風路225が形成される。
【0082】
第二規制部222は、第二本体部221からY軸方向に延び、第二本体部221と隣り合う蓄電素子1(詳しくはケース3)とX-Z面方向の外側から当接することによって該蓄電素子1の第二本体部221に対するX-Z面方向への相対移動を規制する。この第二規制部222は、第二本体部221の少なくとも各角部からY軸方向に延び、第二本体部221と隣り合う蓄電素子1(ケース3)の角部にX-Z面方向の外側から当接する。
【0083】
保持部材400は、複数の蓄電素子1と複数の隣接部材200との周囲を囲むことで、これら複数の蓄電素子1と複数の隣接部材200とをひとまとめに保持する。この保持部材400は、金属等の導電性を有する部材によって構成される。具体的に、保持部材400は、Y軸方向において複数の蓄電素子1が間に位置するように配置される一対の終端部材410と、複数の蓄電素子1とX軸方向に対向した状態で一対の終端部材410同士を接続する対向部材420と、を備える。本実施形態の蓄電装置10では、一対の終端部材410が、Y軸方向の端に配置された蓄電素子1との間に第二隣接部材220を挟み込んだ状態で配置される。また、一対の対向部材420がY軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1のX軸方向の両側に配置される。
【0084】
一対の終端部材410のそれぞれは、X-Z面方向に広がる。具体的に、一対の終端部材410のそれぞれは、蓄電素子1と対応する輪郭(本実施形態では矩形状の輪郭)を有する本体411と、本体411から第二隣接部材220の第二本体部221に向けて突出し且つ該第二隣接部材220に当接する圧接部412と、を有する。
【0085】
一対の対向部材420のそれぞれは、Y軸方向に延び且つZ軸方向に間隔をあけて配置される一対の梁部421と、一対の梁部421の端部同士を連結する一対の第一連結部422と、Y軸方向における途中位置(本実施形態の例では、Y軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1のうちの途中位置に配置された蓄電素子1とX軸方向から見て重なる位置)において一対の梁部421同士を連結する第二連結部423と、を有する。
【0086】
一対の梁部421のそれぞれは、Y軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1(ケース3)の各角部に沿って延びる。第一連結部422は、Z軸方向に延び、終端部材410と連結される。これにより、終端部材410と対向部材420とが接続(連結)される。第二連結部423は、Y軸方向において蓄電素子1と重なる位置においてZ軸方向に延びる。
【0087】
インシュレータ500は、絶縁性を有する。このインシュレータ500は、対向部材420と、Y軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1と、の間に配置される。具体的に、インシュレータ500は、保持部材400における少なくとも複数の蓄電素子1と対向する領域を覆う。これにより、インシュレータ500は、保持部材400と、Y軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1と、の間を絶縁する。
【0088】
バスバ600は、金属等の導電性を有する板状の部材によって構成され、蓄電素子1の外部端子4同士を導通させる。バスバ600は、蓄電装置10において複数(複数の蓄電素子1と対応する数)設けられる。本実施形態の複数のバスバ600は、蓄電装置10に含まれる複数の蓄電素子1の全てを直列に接続する(導通させる)。
【0089】
以上の蓄電装置10によれば、保持部材400によって保持されていることで、蓄電素子1のそれぞれにY軸方向の力が加わる。このため、蓄電装置10では、Y軸方向において外装シート7とケース3の外面とが直接対向する部分72を有する外装シート7を備えた蓄電素子1において、Y軸方向に加わる力によって外装シート7とケース3とが密着する。これにより、該蓄電素子1においてケース3から外装シート7への熱伝達が好適に行われる。その結果、複数の蓄電素子1を備える蓄電装置10において、外装シート7が接着層8によってケース3の外面に配置されている蓄電素子1を含んでいても、該蓄電素子1において内部の熱が外部に放出され易い。
【0090】
尚、本発明の蓄電素子1及び蓄電装置10は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0091】
上記実施形態の蓄電素子1では、外装シート7は、胴部312を全周に亘って連続して囲っているが、この構成に限定されない。複数の外装シート7によって、胴部312を囲うように覆う構成であってもよい。即ち、各外装シート7が、長壁部313のみや、短壁部314のみ等のケース3の一部を覆う形状であってもよい。この場合でも、各外装シート7は、ケース3の外面と接着層8を介して対向する部分71と、ケース3の外面と直接対向する部分72と、を有する。
【0092】
上記実施形態の蓄電素子1では、外装シート7の厚さ方向において第一接着層81と第二接着層82とが重なっているが、この構成に限定されない。第一接着層81と第二接着層82とが互いに重ならない位置にそれぞれ配置されてもよい。
【0093】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、外装シート7の長手方向の端部のみに接着層8が配置されているが、他の部位に接着層8が配置されてもよい。即ち、外装シート7の全面に接着層8が配置されていなければよい。
【0094】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、外装シート7の少なくとも一部(上記実施形態の例では、長手方向の一方の端部)がケース3に接着層8(詳しくは、第一接着層81)を介して固定されているが、この構成に限定されない。例えば、図8に示すように、外装シート7が胴部312を周方向に囲い且つ周方向における外装シート7の一方の端部と他方の端部とが積層された状態で互いに接着層8によって接着された構成であってもよい。即ち、外装シート7とケース3とが、接着層8によって接着されていない構成でもよい。このとき、外装シート7には、周方向の張力が加わった状態で、胴部312に巻き付けられている。
【0095】
この場合、接着層8を介して積層された前記一方の端部及び前記他方の端部は、胴部312の角部における頂部315と重ならない位置に配位置されることが好ましい。また、接着層8を介して積層された前記一方の端部及び前記他方の端部は、電極体2の非被覆積層部26(未塗工部)とY軸方向から見て重なる位置に配置されることがより好ましい。
【0096】
かかる構成によれば、張力によって外装シート7がケース3(胴部312)の角部(詳しくは、頂部315)と確実に接触するため、この位置(角部の頂部315)を避けた位置に、ケース3から伝わった熱を外部に放出し難い外装シート7における厚さ寸法の大きくなった部位(接着層8を介して端部同士が積層された部位)を配置することで、外装シート7が接着層8によってケース3の外面に配置されていても蓄電素子1の内部の熱を外部に放出させ易い。
【0097】
また、上記実施形態の蓄電素子1における集電体5では、第二部位(電極体2に接続される部位)52が巻回中心軸C方向から電極体2(詳しくは、非被覆積層部26)に当接するように配置されているが、この構成に限定されない。例えば図9に示すように、集電体5が、Y軸方向に間隔をあけた一対の第二部位52Aを有し、これら一対の第二部位52Aが電極体2の非被覆積層部26をY軸方向に挟み込むように接続されてもよい。この場合も、上記実施形態の蓄電素子1と同様に、接着層8は、集電体5が絶縁部材6を介して胴部312の内面に当接している位置を避けた位置に配置される。例えば具体的には、図10に示すように、接着層8は、外装シート7における短壁部314と対向する位置に配置される。
【0098】
また、図11に示すように、集電体5が一つの第二部位52Bを有し、この第二部位52BがY軸方向の一方側のみから電極体2の非被覆積層部26に接続される構成でもよい。この場合も、接着層8は、集電体5が絶縁部材6を介して胴部312の内面に当接している位置を避けた位置に配置される。例えば具体的には、図12に示すように、接着層8Aは、外装シート7において、Y軸方向の他方側の長壁部313における非被覆積層部26と重なる領域と対向する位置に配置に配置される。また、接着層8Bは、短壁部314と対向する位置に配置されてもよい。
【0099】
上記実施形態の電極体2は、長尺な電極(正極23及び負極24)が巻回された、いわゆる巻回型であるが、この構成に限定されない。例えば図13に示すように、電極体2Aは、枚葉状または短冊状の電極(正極及び負極)が積層された、いわゆる積層型でもよい。この場合、例えば図14に示すように、接着層8は、外装シート7における短壁部314と対向する位置に配置される。これは、短壁部314が胴部312において内部からの熱が伝わり難い部位であるため、この位置に接着層8が配置されることで、内部からの熱が伝わりやすい長壁部313と対向する位置に接着層8が配置されることによって長壁部313を通じたケース3内部の熱の外部への放熱性が低下する場合に比べ、蓄電素子1の放熱性の低下が抑えられるからである。詳しくは、以下の通りである。
【0100】
積層型の電極体2Aの場合、通常、電極体2AのX軸方向の端部では、正極と負極との絶縁を図るために、セパレータの端部が正極の端縁及び負極の端縁から突出している。このため、電極体2Aがケース3内に収容される際に電極体2Aがケース本体31に押し込まれる(圧入される)ことで、このセパレータの突出している部位が折れ曲がったり複数重なったりした状態となる。即ち、電極体2Aの電極とケース3の短壁部314との間に折れ曲がったり複数重なったりしたセパレータが位置した状態となっている。これにより、胴部312において、短壁部314は、長壁部313よりも内部からの熱(電極体2A(電極)で生じた熱等)が伝わり難くなっている。しかも、この蓄電素子1では、電極体2Aがケース3内に収納される際のガイドとしても使用されるサイドスペーサ9が短壁部314と電極体2Aとの間に配置されているため、内部の熱が短壁部314へ、より伝わり難くなっている。よって、この内部からの熱が伝わり難くなっている短壁部314と対向する位置に接着層8が配置されることで、上述のように、内部からの熱が伝わりやすい長壁部313と対向する位置に接着層8が配置されることによって長壁部313を通じたケース3内部の熱の外部への放熱性が低下する場合に比べ、蓄電素子1の放熱性の低下が抑えられる。即ち、この蓄電素子1では、放熱性の高い位置に接着層8を配置せずに、放熱性の低い位置に接着層8を配置することによって、蓄電素子1全体としての放熱性の低下が抑えられる。
【0101】
ここで、図13に示すサイドスペーサ9は、絶縁性を有し、樹脂によって形成されている。このサイドスペーサ9は、Z軸方向から見て略円弧状であり、電極体2をX軸方向から挟み込むように一対配置されている。この一対のサイドスペーサ9は、ケース本体31に電極体2Aが挿入(圧入)される際に、ガイドとして働き、ケース3内に電極体2Aが収納された状態では、ケース3内での電極体2Aの動き(位置ズレ等)を規制する。尚、積層型の電極体2Aを備えた蓄電素子1は、サイドスペーサ9を備えない構成でもよい。
【0102】
上記実施形態の蓄電装置10では、温度調整用の流体(例えば、空気)が蓄電素子1と隣接部材200との間に形成される通風路215、225を通過することで蓄電素子1の温度調整が行われるが、この構成に限定されない。例えば図15に示すように、蓄電装置10Aは、X軸方向に並ぶ複数の蓄電素子1に沿って配置され、該複数の蓄電素子1を冷却する冷却部材70を備えていてもよい。この冷却部材70は、例えばヒートシンクである。そして、この冷却部材70がX軸方向に並ぶ蓄電素子1と接していることで、各蓄電素子1の温度が調整される。図15に示す例では、冷却部材70は、水冷式のヒートシンクである。この蓄電装置10Aでは、上記実施形態の蓄電装置10のように隣り合う蓄電素子1同士の間に通風路がなくても各蓄電素子1の温度調整が可能であるため、隣接部材が蓄電素子1間に配置されていない。即ち、蓄電装置10Aの各蓄電素子1では、隣接する蓄電素子1間の絶縁が外装シート7Aによって図られている。尚、冷却部材70を備える蓄電装置10Aにおいても、隣り合う蓄電素子1間に隣接部材200が配置され、通風路215、225が形成されていてもよい。
【0103】
図16に示すように、蓄電装置10Aの各蓄電素子1における外装シート7Aでは、接着層8が、ケース3の外面における冷却部材70によって冷却される領域以外の領域と対向する位置に配置される。また、この外装シート7Aは、ケース3の閉塞部311も覆うことにより、各蓄電素子1と冷却部材70との間を絶縁している。
【0104】
具体的に、外装シート7Aは、ケース3の閉塞部311と対応する矩形状の第一部位71Aと、第一部位71Aの一対の長辺のそれぞれから延び且つケース3の長壁部313と対応する矩形状の一対の第二部位72Aと、第一部位71Aの一対の短辺のそれぞれから延びる一対の第三部位73Aと、を有する。第三部位73Aは、短壁部314と対応する矩形状の本体731Aと、本体731Aの一対の長辺のそれぞれから延びる矩形状の延設部732Aと、を有する。第一部71Aは、閉塞部311を覆い、一対の第二部位72Aのそれぞれは、長壁部313を覆い、一対の第三部位73Aの本体731Aのそれぞれは、短壁部314を覆う。また、第三部位73Aの一対の延設部732Aのそれぞれは、本体731Aから延びて長壁部313の一部(X軸方向の端部)を覆うことにより、第二部位72Aと本体731Aとの間(長壁部313と短壁部314との角部の位置)に外装シートの隙間が生じることが防がれる。
【0105】
以上の外装シート7Aにおいて、接着層8は、第二部位72Aの先端部と第三部位73Aの先端部とに配置されている。即ち、接着層8は、外装シート7Aにおいて、長壁部313及び短壁部314の端部(ケース本体31の胴部312における開口側の端部)と対向する位置に配置されている。このように、冷却部材70によって冷却される閉塞部311以外の位置に接着層8が配置されることで、冷却部材70による蓄電素子1の冷却効率の低下が防がれる。しかも、胴部312の開口側(蓋板32側)の端部の内側には、通常、外部端子4と集電体5との接続部等が配置されているため、ケース3内の他の領域(電極体2が収容されている領域)に比べて空間(隙間)が多く、且つ、ケース3内に配置された部材(集電体5等)とケース3の内面との接触部位が少なく(接触面積が小さく)、これにより、前記開口側の端部は、胴部312において電極体2等で生じた熱の伝わり難い部位(即ち、冷却部材70等によって冷却してもケース3の内部が冷却され難い部位)となっている。従って、この胴部312の開口側の端部位置に接着層8が配置されることで、内部からの熱が伝わりやすい胴部312の他の領域(部位)と対向する位置に接着層8が配置されることによって胴部312の前記他の領域を通じたケース3内部の冷却効率が低下する場合に比べ、蓄電素子1の冷却効率の低下が抑えられる。
【0106】
尚、蓄電装置10Aでは、各蓄電素子1において、接着層8が長壁部313の全域と対向するように第二部位72Aに配置されてもよい。かかる構成によれば、隣接する二つの蓄電素子1のケース3同士の間に接着層8(長壁部313の全域に広がる接着層8)が介在することとなるため、前記接着層8がない場合に比べ、一方の蓄電素子1のケース3から他方の蓄電素子1のケース3に熱が伝わり難くなる。これにより、例えば、前記隣接する二つの蓄電素子1のうちの一方の蓄電素子1の温度が上昇したときに、前記一方の蓄電素子1から他方の蓄電素子1への熱の影響が抑えられる。即ち、前記一方の蓄電素子1からの熱に起因する前記他方の蓄電素子1での温度上昇が抑えられる。
【0107】
また、図15に示す蓄電装置10Aでは、冷却部材70は、各蓄電素子1を閉塞部311側から冷却するがこの構成に限定されない。図17に示すように、蓄電装置10Aでは、蓄電素子1のX軸方向の寸法がZ軸方向の寸法より大きいため、冷却面積が十分に確保できる閉塞部311側に冷却部材70が配置されている。しかし、図18に示すように、蓄電素子1AのZ軸方向の寸法がX軸方向の寸法より大きい場合には、冷却面積が十分に確保されるよう、短壁部314側に冷却部材70が配置されるのが好ましい。この場合、接着層8は、外装シート7において、ケース3の外面における冷却部材70によって冷却される領域以外の領域と対向する位置(図18に示す例では、ケース3の各長壁部313、冷却部材70と対向していない短壁部(図18における右側の短壁部)314、閉塞部311等の少なくとも一つ)と対向する位置に配置される。
【0108】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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図18