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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】藻類培養リアクタ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220901BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20220901BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M1/04
C12N1/12 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018086048
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019187348
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505182454
【氏名又は名称】学校法人四国大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】平野 篤
(72)【発明者】
【氏名】西尾 幸郎
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202246648(CN,U)
【文献】特開2007-043909(JP,A)
【文献】特開2006-014627(JP,A)
【文献】特開2000-320041(JP,A)
【文献】特開平04-287678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を培養する藻類培養リアクタであって、
外管および内管からなる二重管構造の培養槽と、
前記培養槽の下端近傍に配置される培養液入口および気体入口と、
前記培養槽の内管の内部に配置され前記培養液入口および前記気体入口に連通して該内管の下端から上端近傍に至るエアリフトポンプ用の管と、を備え、
前記外管はガラス製であり、
前記内管は樹脂製であり、
前記内管は、藻類を含有する培養液を収容し、前記外管に対して着脱可能であり、
前記内管の下端近傍かつエアリフトポンプ用の管の外側に培養液出口を備えることを特徴とする藻類培養リアクタ。
【請求項2】
前記培養槽が複数並設されていて、隣接する該培養槽の前記培養液入口と前記培養液出口とが連結されていることを特徴とする請求項に記載の藻類培養リアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類を培養する藻類培養リアクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石資源に依存しない燃料として、バイオマス(バイオ燃料とも称される)が積極的に活用されており、その1つとして藻類を例示することができる。藻類の培養方法は大きく、開放型および閉鎖型に分類される。開放型の培養設備は、大きな池またはそれに類する開放系の容器と撹拌装置、および二酸化炭素の注入装置を含んで構成される。開放型の培養設備は、構成が単純であるため、設備投資を抑えることができる。しかしながら、開放型ゆえに、空気中からの害菌や異物の混入が起こりやすく、時として培養藻類が害菌により全滅したり、製品に異物が混入したりすることが問題となる。
【0003】
また開放型の培養設備では水面から光を当てるが、一定の水深を超えると光が到達しない。このため、深い位置の藻類が光合成できず増殖しづらくなるため、水深を大きくとることが難しい。一方、二酸化炭素の溶解度は、気泡が水中で上昇する距離すなわち水深に依存する。このため、水深を小さくとると、注入する二酸化炭素の溶解度にも限界が生じてしまう。
【0004】
閉鎖型の培養施設は、害菌やゴミの混入を確実に防ぐことができる。また閉鎖型の培養施設であれば水面だけではなく容器側面からの光照射が可能であるため、構造を工夫することにより高さ方向に空間を利用することができる。また高さ方向に空間を利用することにより、水深を大きくとることができる。したがって、二酸化炭素の溶解度を高めることが可能となる。しかしながら、閉鎖型の培養施設は一般に構造が複雑であり、高い設備投資が必要となる。さらに容器内部の汚れにより光の透過率が低下し、培養効率が低下することもある。閉鎖型ゆえに容器内部の洗浄作業は容易ではない、という課題もある。
【0005】
閉鎖型の培養施設としては、例えば特許文献1の光合成微細藻類培養装置を例示することができる。特許文献1の光合成微細藻類培養装置は、光合成微細藻類と培養液の混合液を収容して光合成微細藻類を培養するための培養容器を備える。この培養容器は、光の透過可能な材質からなり、容器内面のなす立体形状が一方向(高さ方向)に長く延びたシルエットを有する。培養容器中の混合液には、散気手段によって培養容器内面の下端部から二酸化炭素が供給される。特許文献1の光合成微細藻類培養装置においても、上述した閉鎖型の培養施設と同様の課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-254766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、閉鎖型の培養槽では内部洗浄作業が容易ではない。このため、洗浄作業を簡便化することが可能な構造の開発が求められている。また他の課題として、藻類を効率的に培養するためには、培養槽内において光および二酸化炭素が均一に培養液に供給される必要がある。しかしながら、特許文献1の構成であると、培養容器に下端から二酸化炭素が供給されるため、供給された二酸化炭素は培養液に溶解するが、培養槽内の培養液の撹拌が十分でなければ、溶解した二酸化炭素が均一化されない可能性がある。また特許文献1の構成であると、培養容器の内面近くの培養液には光が十分に当たるが、培養容器の中央近くの培養液には光が十分に当たらない可能性がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、培養槽の洗浄作業を簡便化することができ、また培養槽の内部の培養液の十分な撹拌により光および二酸化炭素の均一化が可能な藻類培養リアクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる藻類培養リアクタの代表的な構成は、藻類を培養する藻類培養リアクタであって、外管および内管からなる二重管構造の培養槽を備え、外管はガラス製であり、内管は樹脂製であり、内管は、藻類を含有する培養液を収容し、外管に対して着脱可能であることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、培養槽は二重管構造であり、培養液は内管に収容される。内管は樹脂製であるため、コストが低い。このため、内管の内面に藻類が付着する等によって汚れが生じた場合、また、培養したい藻類を変更した場合は、内管を交換することにより、洗浄作業によらず培養槽における汚れを除去することができる。このとき、培養液は内管に収容されているため、外管の内面に汚れが付着することがない。したがって、外管の外面だけを洗浄すれば、培養槽の洗浄作業が完了する。故に、上記構成によれば、培養槽の洗浄作業を簡便化することができ、作業員の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる藻類培養リアクタの他の構成は、藻類を培養する藻類培養リアクタであって、培養槽と、培養槽の下端近傍に配置される培養液入口と気体入口と、培養槽の内部に配置され培養液入口および気体入口に連通して培養槽の下端から上端近傍に至るエアリフトポンプ用の管と、培養槽の下端近傍かつエアリフトポンプ用の管の外側に培養液出口を備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成では、培養液は、エアリフトポンプ用の管(供給管)において気体と混合されて培養槽内に供給される。すると、培養槽の中で供給管の内側から外側へと培養液が移動する。すると、培養槽の下端近傍にある培養液出口と培養液入口を連結すれば、培養液を循環させることができる。この循環は、培養槽が1つでも循環可能であるし、複数の培養槽を互いに連結しても循環可能である。したがって、培養槽の内部の培養液が十分に撹拌され、光および溶解した二酸化炭素の均一化に有効である。
【0013】
上記培養槽が複数並設されていて、隣接する培養槽の培養液入口と培養液出口とが連結されているとよい。これにより、培養液を複数の培養槽に順次に循環させることが可能となる。したがって、上述した効果を高めることが可能となる。

【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、培養槽の洗浄作業を簡便化することができ、また培養槽の内部の培養液の十分な撹拌により光および二酸化炭素の均一化が可能な藻類培養リアクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態にかかる藻類培養リアクタを説明する図である。
図2図1の培養槽の説明をする図である。
図3】複数の材質の透過率スペクトル依存性測定結果について説明する図である。
図4】実施例および比較例の培養槽の写真である。
図5】培養槽内における培養液の動きについて説明する図である。
図6図1(a)のリアクタにおける培養液の循環について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態にかかる藻類培養リアクタ(以下、リアクタ100と称する)を説明する図である。図1(a)は、リアクタ100の正面図であり、図1(b)は、リアクタ100の平面図である。本実施形態のリアクタ100は、藻類を培養する装置である。図1(a)および(b)に示すように、本実施形態のリアクタ100は複数の培養槽110を備える。なお、本実施形態では、10個の培養槽110を並設した構成を例示したが、これに限定するものではなく、培養槽の数は適宜変更することが可能である。
【0018】
図2は、図1の培養槽110の説明をする図である。図2(a)は、外管120を説明する図であり、図2(b)は、内管140を説明する図である。本実施形態の培養槽110は、図2(a)に示す外管120、および図2(b)に示す内管140を含む二重管構造である。
【0019】
図2(a)に示す外管120は、ガラス製の管である。外管120の上部は、リアクタ100の上部フレーム102によって支持される。外管120の下端には、受けとなる治具122が取り付けられている。治具122は、リアクタ100の下部フレーム104に連結されている。これにより、外管120の下部は、治具122を介して下部フレーム104に支持される。
【0020】
図1および図2(a)に示すように、下部フレーム104の下方には、供給手段105が配置されている。供給手段105には、培養液入口130aおよび気体入口130bが設けられている。培養液入口130aには培養液配管106が接続されていて、気体入口130bには気体配管108が接続されている。後述する内管140の下端を供給手段105に取り付けることにより、培養槽110の下端に培養液入口130aおよび気体入口130bが配置される。
【0021】
図2(b)に示す内管140は、培養槽110において外管120の内側に配置され、藻類を含有する培養液を収容する樹脂製のバッグである。内管140は、外管120に対して着脱可能である。また内管140の下端には、培養液を排出するための培養液出口144が、後述する供給管150の外側に設けられている。
【0022】
上記のように、内管140は外管120に対して着脱可能である。そして、内管140を樹脂製のバッグとすることにより、内管140を安価なものとすることができる。したがって、内管140の内面に汚れが付着した場合等に、内管140を外管120から取り外し、内管140を使い捨て使用(ディスポーザブル)することが可能となる。内管140に用いる樹脂としては、軟質樹脂を用いるとよい。これにより、培養液の充填により内管140が外管120によく密着するよう変形を容易にすることが可能となる。
【0023】
内管140の内部には、エアリフトポンプ用の管である供給管150が配置される。供給管150は、内管140の下端から上端近傍まで延びている。供給管150の下端は導入側接続部142に連結されていて、上端は内管140内で開放されている。導入側接続部142を供給手段105の供給コネクタ112に接続することにより、供給管150ひいては内管140が培養液入口130aおよび気体入口130bと連通する。これにより、供給管150を通じて培養液および二酸化炭素が内管140に供給される。また培養液出口144を連結コネクタ114に接続することにより、培養液を内管140の外部に排出することが可能となる。
【0024】
培養槽110を組み立てる際には、まず内管140を外管120の内部に挿入する。そして、内管140の導入側接続部142を供給コネクタ112に接続し、培養液出口144を連結コネクタ114に接続する。そして、外管120の上部に蓋160を嵌め、外管120を上部フレーム102および下部フレーム104に取り付ける。これにより、培養槽110が組み立てられる。このとき、外管120が内管140の外側で保護管として機能するため、樹脂製の内管140の破れ等の損傷を好適に防ぐことができる。
【0025】
図3は、複数の材質の透過率スペクトル依存性測定結果について説明する図である。図3(a)~(d)では、光の波長を横軸とし、光の透過率を縦軸としている。透過率スペクトル依存性の測定は空気をブランクとして、サンプル光透過率の波長依存性を測定した。
【0026】
図3(a)は、測定対象を配置していないブランクの透過率スペクトル依存性である。図3(a)に示すように、ブランクの状態では、200nm~800nmのいずれの波長においても強度はほぼ100%である。すなわち、ブランクの状態では、当然にして光の減衰は生じない(光がほぼ100%透過する)。
【0027】
図3(b)は、測定対象としてガラスプレートを配置した際の透過率スペクトル依存性である。図3(b)に示すように、ガラスプレートを配置すると、200nm~300nmに波長帯域、すなわち紫外線の一部の波長帯域において強度がほぼ0%となる。一方300nm以上では、強度は約90%程度である。このことから、ガラスプレートは、紫外線を効率よくカットしつつ、可視光領域の光を良好に透過可能であることが理解できる。
【0028】
図3(c)は、測定対象として内管に用いた樹脂のシートを配置した際の透過率スペクトル依存性である。図3(c)に示すように、内管に用いた樹脂のシートを配置すると、200nm~300nmに波長帯域、すなわち紫外線の一部の波長帯域での強度は約50%程度となる。そして、300nm以上では、波長が長くなるにしたがって徐々に強度が強くなり、800nmのときに強度が約90%程度となる。このことから、内管に用いた樹脂のシートは、紫外線を半分ほどカットしつつ、可視光領域ではガラスプレートほどではないものの良好に光を透過可能であることが理解できる。
【0029】
図3(d)は、測定対象としてアクリルプレートを配置した際の透過率スペクトル依存性である。図3(d)に示すように、アクリルプレートを配置すると、紫外線の波長帯域を含む200nm~350nmの波長帯域の光の強度が約10%程度となる。そして光の波長が350nmを超えると強度が約50%まで上昇する。しかしながら、光の波長が長くなるにしたがって徐々に強度が低下し、800nmのときに強度が約25%程度となる。このことから、アクリルプレートは、紫外線の大部分をカットすることができるものの、可視光領域の光も大幅にカットしてしまうことが理解できる。
【0030】
藻類が光合成を行う際に吸収する光は可視光である。このため、可視光領域が大幅にカットされてしまうと、藻類の光合成が阻害されてしまう。したがって、アクリルプレートは、外管120および内管140の材質として適していない。一方、紫外線は、生物の染色体を損傷することは一般によく知られている。このことから、紫外線を大幅にカットすることは藻類の培養において有益である。したがって、ガラスおよび、内管に用いた樹脂のシートは、外管120および内管140の材質として適している。
【0031】
仮に外管および内管の両方をガラス製とした場合、培養液はガラス製の内管内で増殖することとなる。内管がガラス製であると、部品コストが高いため、使い捨て使用することはできない。このため、内管の内面に汚れが付着したら内部を洗浄しなければならず、二重管構造とする意味がない。
【0032】
また仮に外管および内管の両方を樹脂製とした場合、鋭利なものなどが接触した際に外管および内管の両方が破損するおそれがある。すると、内部の培養液が外に漏れだしてしまう。このことから、外管の材質としては、樹脂ではなく、強度が高いガラスが適していることがわかる。
【0033】
図4は、実施例および比較例の培養槽の写真である。図4(a)は、ガラス製の外管120の内部に樹脂製の内管140が配置されている実施例の培養槽110の写真であり、左側の1本は、内管140の内部に培養液が入っている状態であり、中央および右側の2本は、内管140の内部の培養液を抜いた状態である。図4(b)は、内管のみからなる比較例の培養槽の写真であり、内管140の内部の培養液を抜いた状態である。
【0034】
図4(a)に示すように、実施例の培養槽110では、培養液を抜いた状態で内管140の内面への藻類の付着がなく、外管120の奥の景色が確認できる。一方、図4(b)に示すように、比較例の培養槽では、培養液を抜いた状態で内管の内面への藻類の付着が生じているため、内管が不透明になっている。
【0035】
比較例のように内面に藻類が付着することにより内管が不透明になると、光の透過率が低下する。このため、藻類の光合成の効率が低下し、培養が低下してしまう。これに対し、実施例では、内面に藻類が付着しないため、内管が透明であり、光が十分に透過する。したがって、実施例の培養槽110のように外管120および内管140の二重管構造とすることにより、藻類の光合成の効率を高め、高い培養効率を得ることが可能となる。なお、実施例で内管140の内面に藻類が付着しないのは、外管120によって紫外線が大幅にカットされることにより、藻類の死滅する量が大幅に低減されたためと考えられる。
【0036】
上記説明したように、本実施形態のリアクタ100によれば、培養槽110は二重管構造であり、培養液が収容される内管140は樹脂製であるため低コストである。したがって、内管140の内面に藻類が付着する等によって汚れが生じたら、内管140を交換することにより培養槽110における汚れを容易に除去することができる。そして、培養液は内管140に収容されているため、外管120の内面に汚れが付着することがない。このため、内管140の洗浄は不要であり、外管120の外面だけを洗浄すれば培養槽110の洗浄作業が完了する。これにより、培養槽110の洗浄作業を簡便化することができ、作業員の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0037】
図5は、培養槽110内における培養液の動きについて説明する図である。理解を容易にするために、図5では、培養液をハッチングで示し、培養液の流れを黒矢印によって示し、気体(二酸化炭素)の流れを白抜き矢印によって示す。図5に示すように、培養液および気体を培養槽110の下端から供給すると、それらは供給管150に入りこむ。このとき、培養液と気体とが一緒に供給管150に入りこむことにより、気泡が上方に浮上し、培養液が気泡によって上方に運搬される。この構成は、一般にエアリフトポンプと称される。
【0038】
気泡によって運搬されることにより、培養液は供給管150の上端に達し、供給管150の外側に溢れ出る。すると、内管140の内部の培養液の液位が上昇し、培養液は内管140内を下方に向かって流動し、培養液出口144を通じて内管140ひいては培養槽110の外部に排出される。このように培養槽110内において培養液を流動させることにより、培養液が培養槽110内において同一の場所に滞留する場合に比して光および二酸化炭素を均一に供給することが可能となる。
【0039】
図6は、図1(a)のリアクタ100における培養液の循環について説明する図である。先に説明したように、リアクタ100では、複数(本実施形態では10本)の培養槽が並設されている。本実施形態のリアクタ100の特徴として、これらの複数の培養槽110は、それぞれ隣接する培養槽110の培養液入口130aと培養液出口144とが連結されている。説明の便宜上、以下の説明では図6の10個の培養槽110を、左から順に1個目の培養槽110~10個目の培養槽110と称する。
【0040】
詳細には、図6において最も左側の1個目の培養槽110の培養液出口144(図2(b)参照)は、連結コネクタ114を介して2個目の培養槽110の培養液入口130aに連結されている。これにより、1個目の培養槽110から排出された培養液は2個目の培養槽110に流入する。すると、2個目の培養槽110において内管140内の培養液の液位が上昇する。これにより、2個目の培養槽110内において内管140が流動して下方に移動する。
【0041】
2個目の培養槽110の培養液出口144は、3個目の培養槽110の培養液入口130aに連結されている。したがって、2個目の培養槽110から排出された培養液は3個目の培養槽110に流入する。このように、複数の培養槽110の培養液出口144および培養液入口130aが連結されていることにより、複数の培養槽110に培養液を順に循環させることができる。
【0042】
上記のようにして1個目~9個目の培養槽110を循環した培養液は、9個目の培養槽110から排出されると10個目の培養槽110に流入する。本実施形態では、10個目の培養槽110の培養液出口144と1個目の110の培養液入口130aを連結する。これにより、10個目の培養槽110から排出された培養液は、1個目の培養槽110に流入する。したがって、培養液を複数の培養槽110に循環させ続けることが可能となる。
【0043】
上記説明したように、本実施形態のリアクタ100によれば、培養液を複数の培養槽110に循環させることができる。このとき、機械的な手段ではなくエアリフトポンプを利用することにより、藻類の細胞を損傷することなく循環が可能である。そして、上記のように培養液を循環させることにより、気体、すなわち藻類の栄養となる二酸化炭素が培養液全体に均一に供給される。また培養液が循環することにより、培養液に光を均一に当てることもでき、且つ内管140の内面への藻類の付着も好適に抑制することが可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、二重管構造の培養槽110を例示したが、これに限定するものではない。単管構造の培養槽であっても、複数の培養槽を連結することにより上述した培養液の循環による効果を得ることが可能である。また培養槽110を1つしか設けない場合には、培養槽110の培養液入口130aおよび培養液出口144を培養液の貯留タンク(不図示)に接続することにより、培養槽110および貯留タンクの間で培養液を循環させることができる。他に、1つの培養槽110の培養液入口130aと培養液出口144とを連結すれば、1つの培養槽110において培養液を循環させ続けることも可能である。
【0045】
なお、本実施形態では、外管120をガラス製の管とする構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば、紫外線を効率よくカットしつつ、可視光領域の光を良好に透過可能な樹脂を用いる場合、外管120を樹脂製とすることも可能である。ただし、この場合にも、内管140を保護する観点から、外管120に用いる樹脂は適度な剛性を有することが好ましい。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、藻類を培養する藻類培養リアクタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100…リアクタ、102…上部フレーム、104…下部フレーム、105…供給手段、106…培養液配管、108…気体配管、110…培養槽、112…供給コネクタ、114…連結コネクタ、120…外管、122…治具、130a…培養液入口、130b…気体入口、140…内管、142…導入側接続部、144…培養液出口、150…供給管、160…蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6