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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】超音波フィルム包装装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/22 20060101AFI20220901BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20220901BHJP
   B65B 11/08 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B65B51/22 100
B29C65/08
B65B11/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018129726
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020007001
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000203531
【氏名又は名称】多賀電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392017048
【氏名又は名称】株式会社ティー・エム・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】奥山 経夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一雄
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-230837(JP,A)
【文献】特開平04-339736(JP,A)
【文献】特開2017-019513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B11/00-11/58
B65B49/00-49/16
B65B51/00-51/32
B29C63/00-63/48
B29C65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーキ等の包装される対象物を載置して搬送するコンベアと、前記コンベアの搬送方向に交叉する方向に配置され前記コンベア上の対象物に包装用のフィルムを巻き付けるように供給するフィルム供給機構と、前記コンベアを挟みそのコンベアの搬送方向に略直交する方向で進退するように進退機構に支持させて配置された超音波振動する溶着ホーン及び該溶着ホーンに正対するアンビルによるフィルムの溶着・カット部とを基台に備える超音波フィルム包装装置であって、前記フィルムを挟む前記溶着ホーンと前記アンビルとの先端における少なくとも一方の当接面が、その当接面の長さ方向の一端側の左右幅が他端側の左右幅より小さく形成されていることにより、前記一端側の接着強度が他端側の接着強度より小さいことを特徴とする超音波フィルム包装装置。
【請求項2】
前記当接面の長さ方向の一端側の左右幅と他端側の左右幅を前記アンビルの当接面に幅部と幅部で形成し、前記溶着ホーンの当接面はその長さ方向で均一の左右幅に形成し請求項1の超音波フィルム包装装置。
【請求項3】
前記溶着ホーンの先端は、前記アンビルの先端の幅部と幅部に形成した当接面に代えて、左右幅を幅部と幅部に形成した当接面である請求項2の超音波フィルム包装装置。
【請求項4】
前記当接面が備える広幅部と狭幅部は、前記フィルムに形成される溶着線の広幅部と狭幅部の比率が、9.5~6.0:0.5~4.0の範囲となるように形成する請求項1~3のいずれかの超音波フィルム包装装置。
【請求項5】
前記当接面の広幅部の幅は、狭幅部の幅を1とするとき、少なくとも2である請求項1~4のいずれかの超音波フィルム包装装置。
【請求項6】
前記溶着ホーンとアンビルを夫々に支持している2つの進退機構は、前記進退機構の少なくとも一方、又は双方を基台上にフローティング状態で設置した請求項1~5のいずれかの超音波フィルム包装装置。
【請求項7】
対象物を載せた搬送コンベアは、前記対象物の前半側が溶着ホーンとアンビルによる溶着部を通過するとき所定速度で前記対象物を搬送し、前記対象物の後端部が前記溶着部に近づくに伴って前記所定速度よりも遅い速度で前記対象物を搬送するように制御される請求項1~6のいずれかの超音波フィルム包装装置。
【請求項8】
溶着部に進出する前記溶着ホーンとアンビルは、溶着部に近づくにつれて進出速度が遅くなるように制御される請求項7の超音波フィルム包装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動する溶着ホーンを用いてケーキ等の包装対象物(以下、単に「ケーキ」という)を、食品包装用のプラスチックフィルム(以下、単に「フィルム」という)で包装する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーキの包装形態としては、ケーキの外周側面をフィルムで巻きで覆う包装形態が特許文献1~4等により公知であり、この包装のための装置がケーキ包装機等の名称で複数メーカーから市場に提供されている。
【0003】
従来のケーキ包装機は、ケーキに使用された生クリームや生地が持つ粘性を利用してケーキに巻き付けられるフィルムを保持し、巻き付けられてケーキに保持されているフィルムを電熱溶断シール方式によってカットする包装工程を施工している。
【0004】
しかし、上記のケーキ包装は、ケーキの粘性を利用してフィルムをケーキ外周側面に仮に保持させた状態で包装しているため、例えば冷凍ケーキのようにケーキ表面が凍結されて粘性がないと、フィルムをケーキの粘性を利用して保持できない。このため、従来のケーキ包装機では冷凍されたケーキの綺麗な包装や端正な包装ができないという問題が生じていた。
【0005】
また、従来のケーキ包装機をはじめとするフィルム包装機は、電気ヒータや電熱板を利用した熱溶断シール方式であるため、フィルム同士の溶着が強くなりすぎるきらいがあり、この点を回避するためヒータの外径を小さくするとヒータの耐久性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
さらに従来の包装手法では、溶けたフィルムが発熱体に付着する問題があり、これを解消するため、テフロン(登録商標)材を用いて剥離性の表面処理をしなければならないという難点があった。このほかにヒータの温度管理が予熱や周囲温度の違いによって煩わしいという難点、或いは、フィルム溶断時にヒータの加熱により生じる煙や臭いが作業環境面で好ましくないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-16915号公報
【文献】実開平6-80666号公報
【文献】特開平1-308713号公報
【文献】特開昭63-203517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電気ヒータや電熱板をフィルムのシール・カットに用いる従来のフィルム包装機によるケーキのフィルム包装では包装フィルムの裂開性が良くないという問題点を解消した超音波利用のフィルム包装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明超音波フィルム包装装置の構成は、ケーキ等の包装される対象物(以下、単に「ケーキ」という)を載置して搬送するコンベアと、前記コンベアの搬送方向に交叉する方向に配置され前記コンベア上のケーキに包装用のフィルムを巻き付けるように供給するフィルム供給機構と、前記コンベアを挟みそのコンベアの搬送方向に略直交する方向で進退するように進退機構に支持させて配置された超音波振動する溶着ホーン及び該溶着ホーンに正対するアンビルによるフィルム溶着部とを基台に備える超音波フィルム溶着装置であって、前記フィルムを挟む前記溶着ホーンの先端の当接面と前記アンビルの先端の当接面における少なくとも一方の当接面は、その当接面の長さ方向において異なる左右幅を有するように形成されていることを特徴とする。前記当接面の先端は、平断面形状が曲面状、例えば円弧状に形成されている。
【0010】
前記溶着ホーン又はアンビルにおける当接面の左右幅は、その当接面の長さ方向に沿って広幅部と狭幅部により形成する。前記狭幅部は、溶着強度を広幅部の溶着強度より小さくできるから、ケーキを包装したフィルムを裂開するとき、溶着強度が弱い側の溶着部を容易に裂開することができる。
【0011】
本発明においては、前記アンビルの当接面の左右幅をその当接面の長さ方向において変えて形成することに代え、前記溶着ホーンの当接面の左右幅をその長さ方向で変えて形成してもよい。本発明では、当接面の左右幅をその当接面の長さ方向で変えることを、溶着ホーンとアンビルの当接面の双方の当接面に適用するか、又は一方の当接面に適用するかは、任意である。
【0012】
本発明包装装置の前記溶着ホーンとアンビルは、互いに接近する動作と離反する動作とをする。両部材が対向して進退するために、前記溶着ホーンの支持部とアンビルの支持部を摺動進退機構に支持させている。前記摺動進退機構において、前記2つの支持部を夫々に備えた各摺動基部は、この包装装置の基台の上に、バネやゴム、或は弾性機能を有する他の部材を介して浮遊(フローティング)状態で配置されている。
【0013】
これは、前記溶着ホーンの前端面(当接面)とこの前端面に対面するアンビルの前端面(当接面)とが当接したときの当接線が略完全に密着するようにするためである。因みに、溶着ホーンとアンビルの摺動進退機構に誤差(製作誤差や組立誤差等の誤差)があった場合、浮遊(フローティング)状態にないと、当接線(溶着ライン)が全長で密着できず、フィルムの溶着不良を惹起する。
【0014】
上記において、浮遊状態での配置は、溶着ホーンとアンビルの支持部における双方の摺動基部、又はいずれか一方の摺動基部であれば足りる。
【0015】
ケーキを包んだフィルムを溶着するために前記摺動進退機構の作用でフィルムに向かって対向して進出してくる前記溶着ホーンとアンビルの進出速度は、前記フィルムを溶着する溶着点(当接点)に近付くに従って遅くなるように制御する。
また、ケーキの搬送速度も、送り方向から見たケーキの後端部が対向配置されている溶着ホーンとアンビルに近づくにつれて遅くなるように、搬送コンベアの速度を制御する。
この制御によって、例えば四角形のケーキを包装するとき、前記フィルムを前記ケーキに略密接状態で溶着できるから、フィルムを無駄に使用しない綺麗で端正な包装を実現できる。因みに、ケーキを等速で搬送するとケーキの後端部を包むフィルムが余計に引き出され(繰り出され)ケーキ後端部の後ろに余った状態になるから溶着線がケーキ後端部から離れた位置に形成されて見映えが良くない。一方、四角形のケーキを囲んだフィルムを電気ヒータによってシール・カットするには、電気ヒータがケーキ等に接近しないようにフィルムを余計に繰り出しておく必要があるため、四角形のケーキ等については綺麗で端正なフィルム包装は出来ないのが実情であった。
【発明の効果】
【0016】
溶着ホーンとアンビルを対面進出させて超音波振動する前記溶着ホーンとアンビルの間に溶着したい包装用のフィルムを挟み、互いに当接する前記溶着ホーンとアンビルの作用で前記フィルムを溶着してカットするフィルム包装装置において、前記溶着ホーンとアンビルの先端の当接面の左右幅を、この当接面の長さ方向において異なる幅に形成したから、前記フィルムの溶着部にその長さ方向に沿って溶着強度に差を付けることができる。よって溶着強度が弱い側の溶着部から容易に前記フィルムを裂開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る超音波フィルム包装装置の要部の概略構成を示す平面図。
図2図1の超音波フィルム包装装置における溶着ホーンとアンビルの形態と対応関係を模式的に示した斜視図。
図3図1の超音波フィルム包装装置におけるケーキとフィルムの配置関係を模式的に示した斜視図。
図4図1の超音波フィルム包装装置における溶着ホーンとアンビルの配置関係の概要を説明するための図1のA-A線矢視拡大図。
図5図4におけるアンビルのB-B線矢視拡大図。
図6図5の右側面図。
図7図5の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明に係る超音波フィルム包装装置(以下、単に本発明装置ともいう)の一例について図を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明装置の概略構成の例を示す平面図である。図1において、1は、ケーキCなどのフィルム包装の対象物(以下、ケーキCという)を、図1の左側から右側へ搬送するため本発明装置のベースとなる基台MBの略中心に配置された一例として平ベルトによる搬送コンベアである。搬送コンベア1には、平ベルト以外のベルトやチェーン等を用いたものもある。
【0020】
2,3は、前記基台MBにおける搬送コンベア1の送り方向から見て手前側近傍(図1の左側)に、当該搬送コンベア1を挟む態様で配置された第1フィルムF1と第2フィルムF2を、夫々に巻き取った第1フィルムロールと第2フィルムロールである。
【0021】
4,5は、前記第1フィルムロール2と第2フィルムロール3から第1フィルムF1と第2フィルムF2のそれぞれの繰り出しを案内すると共に前記搬送コンベア1の送り方向側に向けたフィルム送り出しを支持案内する案内ロール4a,5a、案内ロール4c、5cや駆動ロール4b、5b等のロール群を主体に形成した第1フィルム送出部と第2フィルム送出部である。前記第1フィルムロール2,第2フィルムロール3と、第1フィルム送出部4,第2フィルム送出部5によってフィルム供給機構の一例を形成する。なお、4d、5dは前記第1フィルムロール2と第2フィルムロール3の近傍に夫々に配置したフィルム押えである。
【0022】
6と7は、前記第1フィルム送出部4,第2フィルム送出部5の下流側に、前記搬送コンベア1を挟んで対向配置され、かつ、前記搬送コンベア1の搬送方向に直行する方向において進退するように配置した超音波振動する溶着ホーンとアンビルであり、前記第1フィルムF1と第2フィルムF2の溶着・カット部を形成する(図2参照)。
【0023】
前記第1フィルムF1と第2フィルムF2の溶着カット部を形成する前記溶着ホーン6とアンビル7は、一例として図4に示す態様で本発明装置の基台MBに配置されている。溶着ホーン6は、その後端が超音波振動子6aの先端に結合され、前記超音波振動子6aが支持部6bに支持されている。アンビル7はその後端部が支持部7aに支持されている。
【0024】
前記2つの支持部6b,7aは、夫々に摺動台6cと摺動台7bの上に配置され、これらの摺動台6c、7bは、夫々にベース架台6d、7cに載架されている。摺動台6c、7bは、図示しないシリンダや送りねじ等の駆動力によってベース架台6d、7cの上で進退動作(図4の矢印の方向)をするように形成されている。
【0025】
また、上記ベース架台6d、7cは、夫々にゴム製インシュレータやバネなどの弾撥性を有する部材から選ばれたフローティング部材8,9によって前記基台MBの上に浮遊状態で支持されている。これは、溶着ホーン6の先端の当接面61とアンビル7の先端の当接面71との両面が、それらに製作誤差や組立誤差等の誤差があっても両当接面の全域で密着することを担保するためである。
【0026】
上記のように基台MBに配置される溶着ホーン6とアンビル7を備えた本発明装置において、ケーキCとこのケーキCを包装する第1フィルムF1、第2フィルムF2の前記ケーキCに対する配置関係は、模式的に示すと図3の態様になる。
【0027】
即ち、図1において、搬送コンベア1の手前側(図1の搬送コンベア1の左方)に置いたケーキC1は、搬送コンベア1によってケーキC2の位置に搬送される。この搬送の間において、前記ケーキC1が溶着ホーン6とアンビル7によるフィルムの溶着・カット部を通過する前に、第1フィルム送出部4,第2フィルム送出部5から、夫々に第1フィルムF1と第2フィルムF2が、ケーキC1の搬送方向に関してケーキC1の前面より前方に送り出される。
【0028】
送りだされた前記第1フィルムF1と第2フィルムF2に対して溶着ホーン6とアンビル7が進出し、前記第1フィルムF1と第2フィルムF2を溶着We1すると共に、溶着We1の部位からはみ出しいる部分の第1フィルムF1,第2フィルムF2をカットし、ケーキC1と溶着We1した前記第1フィルムF1と第2フィルムF2の位置関係を図3(a)の状態にする。第1の溶着We1とカットが完了すると溶着ホーン6とアンビル7は元の位置に後退して戻る。以下において、We1は第1溶着部ともいう。
【0029】
第1溶着We1の後、溶着ホーン6とアンビル7が元の位置に戻った状態になると搬送コンベア1によりケーキC1はさらに搬送されて第1溶着We1で一体化した前記第1フィルムF1と第2フィルムF2が図3(b)に示す態様になる。そうすると前記溶着ホーン6とアンビル7が再び前記第1フィルムF1と第2フィルムF2に対して進出し、前記第1フィルムF1と第2フィルムF2をケーキC2の後端側において第2溶着We2を実行し前記第1フィルムF1、第2フィルムF2をカットする(図1のケーキC2を参照)。以下において、We2は第2溶着部ともいう。
上記において、第1フィルムF1と第2フィルムF2の繰り出し速度は、ケーキC2の送り速度と略同期しているが、ケーキC2の後端部が前記溶着ホーン6とアンビル7の対向線に近づくにつれて繰り出し速度が低くなるように制御する。一方、第2溶着We2のために進出してくる溶着ホーン6とアンビル7も溶着部に近づくにつれて速度が遅くなるように制御する。これによって前記第1フィルムF1と第2フィルムF2をケーキC2の後端部により近づけた位置で第2溶着We2することができる。
【0030】
第2溶着We2が済み前記第1フィルムF1と第2フィルムF2が、カットされるとこの第1フィルムF1,第2フィルムF2で包装されたケーキC2はさらに搬送されて図1の搬送コンベア1の右端側に描かれたフィルム包装が完了したケーキC3の状態になる。搬送コンベア1の上のケーキC3において、Fpは包装完了フィルムである(図1参照)。
【0031】
上記のように、ケーキCは搬送コンベア1によって第1フィルム送出部4,第2フィルム送出部5の位置に搬送される。そこで第1フィルムF1と第2フィルムF2が当てがわれ、そのまま搬送されて前記第1フィルムF1と第2フィルムF2が溶着・カット部において溶着ホーン6部とアンビル7の作用で第1溶着We1と第2溶着We2を施工されることにより、前記ケーキCのフィルム包装が完了するのである。本発明では、前記フィルムの溶着・カット部に本発明独自の技術的工夫が施されているので、この点について図4を参照して以下に説明する。
【0032】
溶着・カット部を形成する溶着ホーン6とアンビル7によるフィルムの溶着とカットの作用は、次の通りである。すなわち、溶着ホーン6の先端の当接面61とアンビル7の先端の当接面71で2枚の第1フィルムF1,第2フィルムF2を挟み、この状態で前記溶着ホーン6を超音波振動させると、前記2枚の第1フィルムF1,第2フィルムF2の前記溶着ホーン6とアンビル7の先端の当接面61,71に挟まれた部分が発熱して溶融一体化(接着)し、この状態からさらに尖ったアンビル7の先端を溶着ホーン6に押付けると、前記溶融一体化した前記第1フィルムF1と第2フィルムF2がその部分でカットされる。前記アンビル7の当接面71の先端は、平断面略円弧状である。
【0033】
前記溶着ホーン6とアンビル7による前記2枚の第1フィルムF1、第2フィルムF2の溶着作用は、前記溶着ホーン6の当接面61とアンビル7の当接面71に挟まれた部分の第1フィルムF1と第2フィルムF2の内部が溶融され第1フィルムF1、第2フィルムF2が一体化することにより得られる。
【0034】
この場合において、第1フィルムF1,第2フィルムF2の溶着状態は、溶着ホーン6の当接面61とアンビル7の当接面71の当接面積(当接面の左右幅)が、前記当接面61,71の長さ方向の全長L(以下、前記第1フィルムF1,第2フィルムF2の2つの溶着部We1,We2の長さも説明の便宜上、溶着線Lという。)において略均一であると、溶着強度は溶着線Lの長さ方向において略均一になる。そして、その溶着強度は、溶着線Lの幅(溶着線Lに対する直交方向での幅=左右幅)が広いと溶着強度大であるが、溶着線Lの幅が狭いと溶着強度は小になるという溶着強度の差が生じる。
上記においては、説明の便宜上、当接面61,71の長さ方向の全長Lと、第1フィルムF1,第2フィルムF2の溶着線Lを、同じ符号Lで示したが、実際には、前記当接面61,71の長さは、超音波溶着すべき前記第1フィルムF1,第2フィルムF2の縦幅(溶着線Lの長さと略同じ)よりも大きくなるように溶着ホーン6とアンビル7が形成されている。
【0035】
そこで、本発明では、前記第1溶着部We1と第2溶着部We2における溶着線Lの左右幅をその溶着線Lの長さ方向において変え、溶着部の長さ方向での溶着強度を変えるようにした。具体的には、図5のアンビル7において、当接面71の長さLの全長の20~30%程度の長さを左右幅が小さい幅(狭幅w1)に形成し、残り80~70%程度の長さの左右幅を大きめの幅(広幅w2)に形成することによって、第1溶着部We1と第2溶着部We2の夫々における溶着線Lに、その長さ方向での溶着強度に差を付けるようにした。これにより前記2つの溶着部We1,We2における溶着強度が小さい側(小さい幅w1の側)を裂開の起点にして包装完了フィルムFpの裂開を容易かつ綺麗にできることになる。
【0036】
本発明では、溶着部We1,We2の溶着強度を上記の態様に制御するため、一例として次の手法を採った。すなわち、図5はアンビル7の当接面71を正面側に見た図で、この例では前記当接面71の全長(図5のアンビル7の高さ方向の全長L)において上方20%位までの左右幅を狭幅w1の当接面71aに、残りの80%位の長さを広幅w2の当接面71bに形成した。狭幅w1の当接面71aと広幅w2の当接面71bの左右幅の比率はほぼ1:2であるが、左右幅の比率はこれに限られるものではない。
また、前記狭幅w1の当接面71aと広幅w2の当接面71bの当接面71の全長Lに対する長さの比率も、上記比率は一例であって本発明はこの比率には限定されるものではない。本発明において、広幅の当接面71bと狭幅の当接面71aの比率は、例えば9.5~6.0:0.5~4.0の間、或は前記数値以外の比率で任意に設定することが出来るものである。
【0037】
上記例において、前記狭幅w1と広幅w2の2つの当接面71aと71bの平断面形状も、夫々、略円弧状である(図7参照)。また、アンビル7の先端側の平面形状が図7の形態であると、狭幅w1の当接面71aはその平断面の頂角が鋭角になり、広幅w2の当接面71bはその平断面の頂角が鈍角になる。
なお、アンビル7において左右幅が異なる2つの当接面71a,71bが上記例の構成であるときは、溶着ホーン6の当接面61は、図示しないが、全域を略均一の左右幅の当接面61に形成したもので足りる。
【0038】
本発明では、溶着ホーン6の当接面61を、前記アンビル7の当接面71の左右幅と同様に、溶着線Lに沿って左右幅に差を付けた形態とすることもできる。本発明において、当接面61,71の左右幅に差を付ける構成を、前記当接面61,71の一方に適用するか、又は双方に適用するかは任意である。
【0039】
上記実施例のようにアンビル7の当接面71の長さ方向の全長において左右幅の差を付けたアンビル7と溶着ホーン6によって超音波溶着した包装完了フィルムFpは、溶着線Lの狭幅w1の部位において容易に裂開することができる。
因みに、電熱線や電熱板を用いた溶着をする従来のフィルム包装では、溶着線Lに沿って溶着強度を変えることができなかったので、本発明のようなフィルム包装の容易な裂開性を得ることはできない。
【0040】
以上の説明は、ケーキCの包装に第1フィルムF1と第2フィルムF2の2つのフィルムを使用するフィルム包装装置によるフィルム包装の例についてであるが、本発明は、図示しないが、1つのフィルムを用いてケーキCを包装する公知の超音波フィルム包装装置の溶着ホーン6とアンビル7について適用しても、上記例と同じ効果を得ることができる。
【0041】
本発明は以上の通りであるから、特に冷凍ケーキのように、包装対象物が持つ粘性によるフィルムの仮保持ができない対象のフィルム包装を、フィルムの無駄な使用を生じさせずに綺麗かつ端正に行うことができる。本発明は上記実施例の冷凍ケーキのみならず、常温のケーキ、或いはその他の冷凍食品や常温食品等のフィルム包装に適用することができること勿論である。
【符号の説明】
【0042】
C ケーキ(冷凍ケーキ、包装対象物)
C1~C3 搬送コンベア1の上のケーキ
MB 本発明包装装置の基台
F1 第1フィルム
F2 第2フィルム
1 搬送コンベア
2 第1フィルムロール
3 第2フィルムロール
4 第1フィルム送出部
5 第2フィルム送出部
6 溶着ホーン
6a 超音波振動子
6b 支持部
6c 摺動台
6d ベース架台
7 アンビル
7a 支持部
7b 摺動台
7c ベース架台
61 溶接ホーン6の当接面
71 アンビル7の当接面
71a 狭幅w1の当接面
71b 広幅w2の当接面
8,9 フローティング部材
We1 第1溶着(第1溶着部)
We2 第2溶着(第2溶着部)
Fp 包装完了フィルム
L アンビル7の当接面71の全長(溶着部We1,We2の溶着線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7