(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】電解液生成装置
(51)【国際特許分類】
C25B 15/02 20210101AFI20220901BHJP
C25B 15/027 20210101ALI20220901BHJP
C25B 1/13 20060101ALI20220901BHJP
C02F 1/461 20060101ALI20220901BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220901BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B15/027
C25B1/13
C02F1/461 Z
C25B9/00 A
(21)【出願番号】P 2020118114
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2020-07-08
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520252619
【氏名又は名称】宮崎 重明
(73)【特許権者】
【識別番号】506332786
【氏名又は名称】株式会社健康支援センター
(74)【代理人】
【識別番号】100148068
【氏名又は名称】高橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川崎 法通
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-196161(JP,A)
【文献】特開2018-076575(JP,A)
【文献】特開2019-037946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/461
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧供給に基づく電気分解により被電解液から電解液を生成するとともに前記被電解液、前記電解液その他の液体及び気体を貯蔵する電解槽と、
前記電解槽に対してバッテリ電圧を供給するバッテリと、
前記電解槽又は前記バッテリに対して外部電圧を供給する外部電源と、
前記外部電源から前記電解槽への前記外部電圧の供給終了時から所定の待機時間経過後に前記バッテリ電圧の供給を開始する制御
及び前記バッテリ電圧の供給開始時から供給終了時までのバッテリ電圧供給時間内において所定のバッテリ電圧供給条件を満たすように前記バッテリ電圧の電圧値を増減させる制御を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする電解液生成装置。
【請求項2】
前記電解槽内部の液温を検知する検温部と、を更に備えており、
前記制御部は、少なくとも前記バッテリ電圧の供給開始時までに検知した前記電解液の液温に応じて前記所定のバッテリ電圧供給条件を選択する
ことを特徴とする請求項
1に記載の電解液生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液生成装置に係り、特に、特に、携帯用オゾン水噴霧器などの携帯用電解液噴霧器に好適に利用できる電解液生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解液噴霧器は、例えば特許文献1に示すように、円筒状の筐体により構成されており、中間部に配置された水タンク部と、その水タンク部の内部に配置された電極を有する電解部と、下部に配置された乾電池などの電源部と、上部に配置されたプッシュ式噴霧機構部と、を備える。この従来の電解液噴霧器は、主に、オゾン水噴霧器として使用される。電解部が被電解液(水)を電気分解すると、電極周辺において被電解液(水)から気体(オゾン)が発生し、被電解液(水)は電解液(オゾン水)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電解液噴霧器は、乾電池などの電源部によって短時間の電気分解を終了すると電解液の濃度が低下する傾向にあるため、電気分解終了時から電解液噴霧時までの時間が長引くと、所望する電解液の濃度を保つことができないという問題があった。
【0005】
その一方、従来の電解液噴霧器において乾電池などの電源部により電気分解を長時間続けていると、乾電池などの電源部の残量があっという間になくなるので、電源部の残量がなくなった後は電解液の濃度が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、電源残量を長持ちさせつつ電解液を所望の濃度範囲内に維持することができる電解液生成装置を提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前述した目的を達成するため、本発明の電解液生成装置は、電圧供給に基づく電気分解により被電解液から電解液を生成するとともに被電解液、電解液その他の液体及び気体を貯蔵する電解槽と、電解槽に対してバッテリ電圧を供給するバッテリと、電解槽又はバッテリに対して外部電圧を供給する外部電源と、外部電源から電解槽への外部電圧の供給終了時から所定の待機時間経過後にバッテリ電圧の供給を開始する制御を行う制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
これにより、本発明の電解液生成装置は、外部電圧の供給終了後すぐにバッテリ電圧の供給を開始しなくても電解液を所望の濃度範囲内に維持することができることを利用して所定の待機時間を設けることにより、バッテリ電圧の供給開始時間を遅くした分だけバッテリ残量を長持ちさせることができる。
【0009】
(2)また、本発明の電解液生成装置において、制御部は、所望の濃度範囲内の電解液が生成される外部電圧又はバッテリ電圧を電解槽に供給するとともに、外部電圧がバッテリ電圧よりも高くなるように電解槽に電圧を供給する制御を行うことが好ましい。
【0010】
これにより、本発明の電解液生成装置は、例えば、制御部が、外部電圧の供給により所望範囲内において最大濃度の電解液を生成し、バッテリ電圧の供給により所望範囲内において最低濃度の電解液を生成する制御を行うことにより、電解液の濃度差を最も大きくした分だけ待機時間を最大限長くすることができるので、待機時間を長くした分だけバッテリ電圧を供給せずに電解液を所望の濃度範囲内に維持することができる。
【0011】
(3)また、本発明の電解液生成装置において、制御部は、外部電圧の供給により外部電源がバッテリに対して所望残量以上の充電を行った後に、外部電源が電解槽に対して外部電圧を供給する制御を行うことが好ましい。
【0012】
これにより、本発明の電解液生成装置は、バッテリ残量を一定以上にすることによってバッテリ電圧供給時間を一定以上に確保することができる。
【0013】
(4)また、本発明の電解液生成装置において、制御部は、バッテリ電圧の供給開始時から供給終了時までのバッテリ電圧供給時間内において所定のバッテリ電圧供給条件を満たすようにバッテリ電圧の電圧値を増減させる制御を行うことが好ましい。
【0014】
これにより、本発明の電解液生成装置は、電圧供給しない状態で電解液の濃度が低下していく割合が直線的(=一次関数的)ではなく非直線(例:折れ線、曲線、不規則線)的であることを事前に理解しておけば、その低下割合に適合するバッテリ電圧の増減により、電解液の濃度を一定に保つことができる。
【0015】
(5)また、本発明の電解液生成装置は、電解槽内部の液温を検知する検温部と、を更に備えており、制御部は、少なくともバッテリ電圧の供給開始時までに検知した電解液の液温に応じて所定のバッテリ電圧供給条件を選択することが好ましい。
【0016】
これにより、本発明の電解液生成装置は、電解液の濃度の低下割合が電解液の液温によって変化する特性が事前に明らかになっている場合、液温に基づき所定のバッテリ電圧供給条件を選択することにより、電解液の濃度を一定に保つことを容易にすることができる。なお、電解液の濃度の低下割合が電解液に与える圧力などの他の濃度変化要因によって変化する場合も、上記と同様、濃度変化要因を測定する検温部や検圧部その他のセンサからの測定結果に基づき所定のバッテリ電圧供給条件を選択することにより、電解液の濃度を一定に保つことを容易にすることができる。
【0017】
(6)また、本発明の電解液生成装置は、電解液の濃度を測定する濃度測定部と、を更に備えており、制御部は、バッテリ電圧供給時間内において電解液の濃度が所望値未満の値である場合、バッテリ電圧供給条件を満たすか否かにかかわらず、電解液の濃度が所望値以上の値となるまでバッテリ電圧の電圧値を増加させる制御を行うことが好ましい。
【0018】
これにより、本発明の電解液生成装置は、電解液の濃度が想定以上に低下しても電解液の濃度を最低所望値以上の値に保つことができる。
【0019】
(7)また、本発明の電解液生成装置は、電解槽内部の液温を検知する検温部と、を更に備えており、制御部は、外部電圧の供給終了時までに検知した電解液の液温に応じて待機時間を選択する制御を行うことが好ましい。
【0020】
これにより、本発明の電解液生成装置は、電解液の液温に応じて電解液の濃度の低下割合が異なるという電解液の濃度低下特性を利用して待機時間を設定することにより、バッテリ電圧の無駄な供給を省き、バッテリを長持ちさせることができる。
【0021】
(8)また、本発明の電解液生成装置は、電解槽の内部にある液体を冷却又は加熱する液温調整部と、を更に備えていることが好ましい。
【0022】
これにより、本発明の電解液生成装置は、電解液の液温が低い又は高いほど電解液の濃度が低下するという電解液の濃度低下特性に応じて電解液の液温を低く又は高くすることができる。
【0023】
(9)また、本発明の電解液生成装置は、電解槽内部の液温を検知する検温部と、電解槽の内部にある液体を冷却又は加熱する液温調整部と、を更に備えており、制御部は、液温が所望温度でない場合、液温が所望温度となるまで液温調整部が液体を冷却又は加熱する制御を行うことが好ましい。
【0024】
これにより、本発明の電解液生成装置は、電解液の液温が適温の範囲外であると電解液の濃度が大幅に低下するという電解液の濃度低下特性に応じて、その電解液の適温の範囲内にある所望温度に電解液の液温を調整することができる。
【0025】
(10)また、本発明の電解液生成装置において、制御部は、電解槽に対する外部電圧の供給終了時までに液温調整部が液温を所望温度にする制御を行うことが好ましい。
【0026】
これにより、本発明の電解液生成装置は、外部電圧の供給終了時までに電解液の液温が適温になるので、所定の電圧の供給終了後に電解液の濃度が大幅に低下することを抑制することができる。
【0027】
(11)また、本発明の電解液生成装置は、電解槽の内部にある内部気体が所定圧以上の値となったときに内部気体を電解槽の外部に排出する排気部と、を更に備えていることが好ましい。
【0028】
これにより、本発明の電解液生成装置は、電解槽や電解液の濃度低下に悪影響を及ぼす可能性のある所定圧以上の内部気体を廃棄することができる。
【0029】
(12)また、本発明の電解液生成装置は、液体を噴霧する噴霧部と電解槽とバッテリとが一体となるように構成される本体部と、本体部と外部電源とを電気的に離接容易に接続するクレードルと、を更に備えており、電解液は、オゾン水であり、電解槽は、オゾン水生成用電極を有していることが好ましい。
【0030】
これにより、本発明の電解液生成装置は、オゾン水を生成し、噴霧することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の電解液生成装置によれば、外部電圧の供給終了直後の電解槽内の電解液の濃度と比較して電解液の濃度が低下した所定の待機時間経過後にバッテリ電圧を供給して電解槽の電気分解を再開することなど種々の作用を示すので、電源残量を長持ちさせつつ電解液を所望の濃度範囲内に維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本実施形態の電解液生成装置において本体部がクレードルに電気的に接続された状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電解液生成装置において本体部がクレードルに電気的に接続されていない状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電解液生成装置において電解液の一例であるオゾン水の理論濃度と電気分解の電圧供給終了時からの理論経過時間との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本実施形態の電解液生成装置において電解液の一例であるオゾン水の理論濃度と理想的な電圧値の供給時間との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本実施形態の電解液生成装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度実験値と電圧供給時間の実験値との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本実施形態の電解液生成装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度実験値と電圧実験値の供給時間との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本実施形態の電解液生成装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度実験値と電圧実験値の供給時間との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本実施形態の電解液生成装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度が最低濃度以下になった場合のオゾン水の濃度実験値と電圧実験値の供給時間との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、本実施形態の電解液生成装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度が最低濃度以下になった場合のオゾン水の濃度実験値と電圧実験値の供給時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本実施形態の電解液生成装置1を説明する。
【0034】
本実施形態の電解液生成装置1は、
図1及び
図2に示すように、電解槽2と、バッテリ3と、外部電源4と、制御部5と、を備えていることを特徴とする。また、本実施形態の電解液生成装置1は、噴霧部6と、本体部7と、クレードル8と、検温部9と、濃度測定部10と、液温調整部11と、排気部12と、を更に備えていることが好ましい。
【0035】
[電解槽2]電解槽2は、電圧供給に基づく電気分解により被電解液から電解液を生成するとともに被電解液、電解液その他の液体及び気体を貯蔵する。被電解液としては、電気分解が可能な液体であればなんでもよい。本実施形態の電解槽2は、被電解液となる水の電気分解により電解液となるオゾン水を生成する。
【0036】
また、本実施形態の電解槽2は、電気分解板21と、噴霧部6と、を有していることが好ましい。
【0037】
[電気分解板21]電気分解板21は、基本的に、1枚又は2枚以上の陽極及び陰極により構成されており、それらは交互に配置されている。本実施形態の電気分解板21は、オゾン水生成用電極となるため、陽極としての白金電極と、陰極としてのダイヤモンド電極により構成されている。
【0038】
[噴霧部6]噴霧部6は、電解槽2に貯蔵された液体を噴霧する。噴霧部6としては、トリガー式スプレーノズルやプッシュ式スプレーノズルであることが好ましい。
【0039】
[バッテリ3]バッテリ3は、電解槽2に対してバッテリ電圧を供給する。本実施形態のバッテリ3としては、一般的に1.2~1.5Vの乾電池や充電式電池などの電池が1個または2個以上用いられる。本実施形態のバッテリ3の初期電圧が所望のバッテリ電圧よりも低い場合(例:乾電池の初期電圧:1.5V)、バッテリ3を構成するバッテリ回路基板に昇圧器を設けることにより、バッテリ3の初期電圧を所望のバッテリ電圧まで昇圧させることが好ましい(例:初期電圧1.5V × 昇圧率4.0=所望のバッテリ電圧6.0V)。
【0040】
[本体部7]本体部7は、噴霧部6と電解槽2とバッテリ3とが一体となるように構成される。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の本体部7は、一般的なスプレーボトルに似た形状になっている。また、本体部7は、その下面に、電気分解板21と外部電源4とを接続させるための接続端子を有している。
【0041】
[クレードル8]クレードル8は、本体部7と外部電源4とを電気的に離接容易に接続するように構成されている。そのため、このクレードル8は、外部電源4に接続するための接続コードを有している。また、このクレードル8は、その上面に、電気分解板21と外部電源4とを接続させるための接続端子を有している。
【0042】
[外部電源4]外部電源4は、電解槽2又はバッテリ3に対して外部電圧を供給する。外部電圧はバッテリ電圧よりも高くなるように設定されていることが好ましい。本実施形態の外部電源4としては、一般的に100~200Vの家庭用電源が用いられる。本実施形態の外部電源4の初期電圧が所望の外部電圧よりも高い場合(例:外部電源の初期電圧:100V)、外部電源4を構成する外部電源4回路基板に降圧器を設けることにより、外部電源4の初期電圧を所望の外部電圧まで降圧させることが好ましい(例:初期電圧100V × 降圧率1/10=所望の外部電圧10.0V)。なお、他の実施形態の電解液生成装置1において、外部電源4は、クレードル8を介さず、本体部7に対して外部電圧を直接供給してもよい。
【0043】
[検温部9]検温部9は、電解槽2の内部の液温を検知する。本実施形態の検温部9は、電解槽2の内部に設置された温度センサである。
【0044】
[濃度測定部10]濃度測定部10は、電解液の濃度を測定する。本実施形態の濃度測定部10は、電解槽2の内部に設置されたオゾン濃度センサである。
【0045】
[液温調整部11]液温調整部11は、電解槽2の内部にある液体を冷却又は加熱する。本実施形態の液温調整部11は、液体を冷却及び加熱する機能を有する水温調節器であってもよいし、液体を冷却する機能のみを有するクーラであってもよいし、液体を加熱する機能のみを有するヒータであってもよい。
【0046】
気体の溶解度の法則に基づいて理論的に考えると、電解槽2が電気分解を終了したとき、
図3に示すように、オゾン水の温度が低いほどその濃度の低下が小さくなる傾向にある。そのため、液温調整部11は、少なくとも液体を冷却する機能を有するクーラであればよい。本実施形態の液温調整部11は、例えば電解槽2の内部底面に設置されたペルチェ方式冷温器など、スプレーボトルに似た形状の本体部7に内蔵又は外付け可能であって電解槽2の内部又は近接位置に設置可能な大きさの小型冷温器であることが好ましい。
【0047】
[排気部12]排気部12は、電解槽2の内部にある内部気体が所定圧以上の値となったときに内部気体を電解槽2の外部に排出する。本実施形態の排気部12は、電解槽2の内部が所定圧以上になるとその内部から外部への一方向に開くワンウェイバルブであることが好ましい。排気部12により電解槽2の内部の圧力制御をする理由は、圧力が高い方が気体の溶解度は大きいというヘンリーの法則に基づき、電解液に溶解する気体の溶解度を高めるため、電解槽2に悪影響を及ぼさない程度に電解槽2の内部の圧力を高くしたいことによる。
【0048】
[制御部5][待機時間制御]制御部5は、外部電源4から電解槽2への外部電圧の供給終了時から所定の待機時間経過後にバッテリ電圧の供給を開始する制御を行う。待機時間t
wtは、
図4に示すように、外部電圧の供給終了時t
Afからバッテリ電圧の供給開始時t
BSまでの時間のことである。これは、外部電圧の供給終了後すぐにバッテリ電圧の供給を開始しなくても所定の時間内であれば電解液を所望の濃度範囲内に維持することができることを利用している。
【0049】
待機時間t
wtは電解液の濃度低下特性に基づいて設定される。電解液の濃度低下特性は被電解液の温度や電解液の濃度などの種々の要因によって異なってくる。例えば、
図4に示すように、被電解液の温度が20℃であって外部電圧が10Vであるときに外部電圧の供給終了時から電解液の所望の濃度範囲以下になる時までの時間が理論値で3分である場合、待機時間t
wtは3分以内に設定する。なお、バッテリ電圧の供給開始時t
BSからバッテリ電圧の供給終了時t
Bfまでのバッテリ電圧供給時間は、バッテリ電圧の高さ及びバッテリの持ちなどの種々の条件に応じて決められる。
【0050】
[供給電圧制御]また、制御部5は、所望の濃度範囲の電解液が生成される外部電圧又はバッテリ電圧を電解槽2に供給するとともに、外部電圧がバッテリ電圧よりも高くなるように電解槽2に電圧を供給する制御を行うことが好ましい。
【0051】
例えば、電解液が消毒用オゾン水である場合、設計者は、人体に悪影響を及ぼさずに消毒効果を発揮できるオゾン水の最大濃度Ch及び最低濃度Clを確定した上で、それらの濃度Ch,Clを生成するために必要な最大供給電圧Vm及び最小供給電圧Vlを設定する。最大供給電圧は外部電源4により供給され、最小供給電圧はバッテリ3により供給される。
【0052】
なお、
図4に示すように、外部電源4が外部電圧Vaとして最大供給電圧Vmの供給を開始しても、オゾン水などの電解液の濃度が即座に所望の最大濃度Chにならない。例えば、電解液の濃度を0から所定範囲内の最大濃度Chに上昇させる場合、外部電源4が被電解液に最大供給電圧Vmを供給することにより、外部電圧の供給終了直前時t
AFに電解液は最大濃度Chになる。逆をいえば、濃度変化にタイムラグがあるため、外部電圧の供給終了時t
AFから電解液が最大濃度Chから最低濃度Cl付近になるまでの待機時間t
wtが発生する。上記の通り、本実施形態の制御部5はバッテリ残量の持ちを延ばすためにこの待機時間を有効利用している。
【0053】
[バッテリ残量制御]また、制御部5は、外部電圧の供給により外部電源4がバッテリ3に対して所望残量以上の充電を行った後に、外部電源4が電解槽2に対して外部電圧を供給する制御を行うことが好ましい。バッテリ残量はバッテリ電圧の供給時間に影響を及ぼす。そのため、バッテリ残量は100%であることが望ましい。その一方、毎回、100%までバッテリ3を充電すると、繰り返し充電の結果、バッテリ性能が低下してしまう。そのため、設計者は、バッテリ3の所望残量を例えば80%に設定しておいてもよい。
【0054】
[バッテリ電圧供給条件制御]また、制御部5は、バッテリ電圧の供給開始時t
Bsから供給終了時t
Bfまでのバッテリ電圧供給時間内において所定のバッテリ電圧供給条件を満たすようにバッテリ電圧の電圧値を増減させる制御を行うことが好ましい。これは、外部電圧の供給終了後t
Afの電解液の濃度と経過時間との関係が、
図3の理想値に示すような直線(一次関数)的な濃度低下になることが少なく、
図5の実験値に示すような非直線(例:折れ線、曲線、不規則線)的な濃度低下になることのほうが多いことに起因する。
【0055】
例えば、バッテリ電圧Vbの電圧値をVl1で一定にしても、
図6に示すように電解液の濃度が一定にならずに変動する場合、例えば
図7に示すようにバッテリ電圧Vbの電圧値をVl1≦Vb≦Vl2の範囲内で徐々に減少させていくようにバッテリ電圧Vbを供給することにより、電解液の濃度が最低濃度Clよりも低下しないように制御することが好ましい。
【0056】
[液温条件追加制御][バッテリ電圧制御]また、制御部5は、少なくともバッテリ電圧の供給開始時t
Bsまでに検知した電解液の液温に応じて所定のバッテリ電圧供給条件を選択することが好ましい。これは、
図3及び
図5に示すように、電解液の液温が低いほど電解液の濃度低下が緩やかになることに起因する。つまり、上記の通り、
図7に示すようにバッテリ電圧Vbの電圧値をVl1≦Vb≦Vl2の範囲内で徐々に減少させていく場合であっても、電解液の液温が高い場合には電圧減少速度を遅くし、電解液の液温が低い場合には電圧減少速度を速くするといった制御を行うことが好ましい。
【0057】
[液温条件追加制御][待機時間制御]また、制御部5は、外部電圧の供給終了時t
Afまでに検知した電解液の液温に応じて待機時間を選択する制御を行うことが好ましい。これは、上記と同様、
図3及び
図5に示すように、電解液の液温が低いほど電解液の濃度低下が緩やかになることに起因する。例えば、電解液の液温が20℃(=293K)において電解液の濃度が最大濃度Chから最低濃度Clまで低下する時間が3分である場合、設計者は待機時間を3分以下に設定する。それに対し、電解液の液温が10℃(=283K)において電解液の濃度が最大濃度Chから最低濃度Clまで低下する時間が6分である場合、設計者は待機時間を6分以下に設定する。つまり、設計者は、電解液の液温が低くなるほど待機時間t
wtが長くなるように待機時間t
wtを設定する。
【0058】
[液温条件追加制御][液温調整制御]また、制御部5は、液温が所望温度でない場合、液温が所望温度となるまで液温調整部11が液体を冷却又は加熱する制御を行うことが好ましい。また、制御部5は、電解槽2に対する外部電圧の供給終了時tAfまでに液温調整部11が液温を所望温度にする制御を行うことが好ましい。
【0059】
この制御は、上記の通り、電解液の液温が低くなるほど、待機時間twtを長くすることができ、かつ、高いバッテリ電圧を供給する時間を短くすることができることに起因する。また、制御部5が加熱制御も含んでいるのは、電解液の濃度低下抑制において液温に適温がある場合、冷却制御だけでなく、加熱制御も考えられるからである。
【0060】
ただし、液温低下に時間を掛けすぎると電解液の生成完了までに時間がかかってしまう。そのため、制御部5は、液温が所望温度となるまで液温調整部11が液体を冷却又は加熱する制御を行う場合であっても、冷却又は加熱する制御時間を所定時間内に制限し、その所定時間を超過する場合には液温が所望温度でない場合であっても電気分解のための電圧供給を行うといった時間制限制御を行うことが好ましい。
【0061】
[濃度条件追加制御][バッテリ電圧制御]また、制御部5は、バッテリ電圧供給時間内において電解液の濃度が所望値未満の値である場合、バッテリ電圧供給条件を満たすか否かにかかわらず、電解液の濃度が所望値以上の値となるまでバッテリ電圧の電圧値を増加させる制御を行うことが好ましい。
【0062】
例えば、
図8に示すように、バッテリ電圧供給条件としてバッテリ電圧VbがVl1≦Vb≦Vl2を満たし、かつ、バッテリ電圧Vbが徐々に減少するようにバッテリ電圧を供給しても、バッテリ電圧供給途中時t
ESになったときに電解液の濃度が最低濃度Clよりも低くなった場合を想定する。バッテリ電圧供給途中時t
ESになったときに電解液の濃度が最低濃度Clよりも低くなったことを濃度測定部10が検知したとき、電解液の濃度を短時間(=
図8に示すようなバッテリ電圧供給途中時t
ESからバッテリ電圧供給途中時t
Efまでの時間t
av)で最低濃度Clよりも高くするために、
図9に示すように、バッテリ電圧VbがVl2<Vb=Vl3を満たすように昇圧させたバッテリ電圧Vbを供給する。そして、
図8及び
図9に示すように、バッテリ電圧供給途中時t
Efになったときに電解液の濃度が最低濃度Clよりも高くなった場合、バッテリ電圧供給条件、つまり、バッテリ電圧VbがVb=Vl1<Vl2を満たすように降圧させたバッテリ電圧Vbを供給する。
【0063】
次に、本実施形態の電解液生成装置1の効果を説明する。
【0064】
(1)前述した目的を達成するため、本実施形態の電解液生成装置1は、電圧供給に基づく電気分解により被電解液から電解液を生成するとともに被電解液、電解液その他の液体及び気体を貯蔵する電解槽2と、電解槽2に対してバッテリ電圧を供給するバッテリ3と、電解槽2又はバッテリ3に対して外部電圧を供給する外部電源4と、外部電源4から電解槽2への外部電圧の供給終了時から所定の待機時間経過後にバッテリ電圧の供給を開始する制御を行う制御部5と、を備えていることを特徴とする。
【0065】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、外部電圧の供給終了後すぐにバッテリ電圧の供給を開始しなくても電解液を所望の濃度範囲内に維持することができることを利用して所定の待機時間を設けることにより、バッテリ電圧の供給開始時間を遅くした分だけバッテリ残量を長持ちさせることができる。
【0066】
(2)また、本実施形態の電解液生成装置1において、制御部5は、所望の濃度範囲内の電解液が生成される外部電圧又はバッテリ電圧を電解槽2に供給するとともに、外部電圧がバッテリ電圧よりも高くなるように電解槽2に電圧を供給する制御を行うことが好ましい。
【0067】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、例えば、制御部5が、外部電圧の供給により所望範囲内において最大濃度の電解液を生成し、バッテリ電圧の供給により所望範囲内において最低濃度の電解液を生成する制御を行うことにより、電解液の濃度差を最も大きくした分だけ待機時間を最大限長くすることができるので、待機時間を長くした分だけバッテリ電圧を供給せずに電解液を所望の濃度範囲内に維持することができる。
【0068】
(3)また、本実施形態の電解液生成装置1において、制御部5は、外部電圧の供給により外部電源4がバッテリ3に対して所望残量以上の充電を行った後に、外部電源4が電解槽2に対して外部電圧を供給する制御を行うことが好ましい。
【0069】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、バッテリ残量を一定以上にすることによってバッテリ電圧供給時間を一定以上に確保することができる。
【0070】
(4)また、本実施形態の電解液生成装置1において、制御部5は、バッテリ電圧の供給開始時から供給終了時までのバッテリ電圧供給時間内において所定のバッテリ電圧供給条件を満たすようにバッテリ電圧の電圧値を増減させる制御を行うことが好ましい。
【0071】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、電圧供給しない状態で電解液の濃度が低下していく割合が直線的(=一次関数的)ではなく非直線(例:折れ線、曲線、不規則線)的であることを事前に理解しておけば、その低下割合に適合するバッテリ電圧の増減により、電解液の濃度を一定に保つことができる。
【0072】
(5)また、本実施形態の電解液生成装置1は、電解槽2内部の液温を検知する検温部9と、を更に備えており、制御部5は、少なくともバッテリ電圧の供給開始時までに検知した電解液の液温に応じて所定のバッテリ電圧供給条件を選択することが好ましい。
【0073】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、電解液の濃度の低下割合が電解液の液温によって変化する特性が事前に明らかになっている場合、液温に基づき所定のバッテリ電圧供給条件を選択することにより、電解液の濃度を一定に保つことを容易にすることができる。なお、電解液の濃度の低下割合が電解液に与える圧力などの他の濃度変化要因によって変化する場合も、上記と同様、濃度変化要因を測定する検温部9や検圧部その他のセンサからの測定結果に基づき所定のバッテリ電圧供給条件を選択することにより、電解液の濃度を一定に保つことを容易にすることができる。
【0074】
(6)また、本実施形態の電解液生成装置1は、電解液の濃度を測定する濃度測定部10と、を更に備えており、制御部5は、バッテリ電圧供給時間内において電解液の濃度が所望値未満の値である場合、バッテリ電圧供給条件を満たすか否かにかかわらず、電解液の濃度が所望値以上の値となるまでバッテリ電圧の電圧値を増加させる制御を行うことが好ましい。
【0075】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、電解液の濃度が想定以上に低下しても電解液の濃度を最低所望値以上の値に保つことができる。
【0076】
(7)また、本実施形態の電解液生成装置1は、電解槽2内部の液温を検知する検温部9と、を更に備えており、制御部5は、外部電圧の供給終了時までに検知した電解液の液温に応じて待機時間を選択する制御を行うことが好ましい。
【0077】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、電解液の液温に応じて電解液の濃度の低下割合が異なるという電解液の濃度低下特性を利用して待機時間を設定することにより、バッテリ電圧の無駄な供給を省き、バッテリ3を長持ちさせることができる。
【0078】
(8)また、本実施形態の電解液生成装置1は、電解槽2の内部にある液体を冷却又は加熱する液温調整部11と、を更に備えていることが好ましい。
【0079】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、電解液の液温が低い又は高いほど電解液の濃度が低下するという電解液の濃度低下特性に応じて電解液の液温を低く又は高くすることができる。
【0080】
(9)また、本実施形態の電解液生成装置1は、電解槽2内部の液温を検知する検温部9と、電解槽2の内部にある液体を冷却又は加熱する液温調整部11と、を更に備えており、制御部5は、液温が所望温度でない場合、液温が所望温度となるまで液温調整部11が液体を冷却又は加熱する制御を行うことが好ましい。
【0081】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、電解液の液温が適温の範囲外であると電解液の濃度が大幅に低下するという電解液の濃度低下特性に応じて、その電解液の適温の範囲内にある所望温度に電解液の液温を調整することができる。
【0082】
(10)また、本実施形態の電解液生成装置1において、制御部5は、電解槽2に対する外部電圧の供給終了時までに液温調整部11が液温を所望温度にする制御を行うことが好ましい。
【0083】
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、外部電圧の供給終了時までに電解液の液温が適温になるので、所定の電圧の供給終了後に電解液の濃度が大幅に低下することを抑制することができる。
【0084】
(11)また、本実施形態の電解液生成装置1は、電解槽2の内部にある内部気体が所定圧以上の値となったときに内部気体を電解槽2の外部に排出する排気部12と、を更に備えていることが好ましい。
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、電解槽2や電解液の濃度低下に悪影響を及ぼす可能性のある所定圧以上の内部気体を廃棄することができる。
【0085】
(12)また、本実施形態の電解液生成装置1は、液体を噴霧する噴霧部6と電解槽2とバッテリ3とが一体となるように構成される本体部7と、本体部7と外部電源4とを電気的に離接容易に接続するクレードル8と、を更に備えており、電解液は、オゾン水であり、電解槽2は、オゾン水生成用電極を有していることが好ましい。
これにより、本実施形態の電解液生成装置1は、オゾン水を生成し、噴霧することができる。
【0086】
すなわち、本実施形態の電解液生成装置1によれば、外部電圧の供給終了直後の電解槽2内の電解液の濃度と比較して電解液の濃度が低下した所定の待機時間経過後にバッテリ電圧を供給して電解槽2の電気分解を再開するなど種々の作用を示すので、電源残量を長持ちさせつつ電解液を所望の濃度範囲内に維持することができるという効果を奏する。
【0087】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 電解液生成装置
2 電解槽
3 バッテリ
4 外部電源
5 制御部
6 噴霧部
7 本体部
8 クレードル
9 検温部
10 濃度測定部
11 液温調整部
12 排気部
21 電気分解板