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  • 特許-緩み検出システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】緩み検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20220901BHJP
   F16B 31/00 20060101ALI20220901BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20220901BHJP
   G01L 5/24 20060101ALI20220901BHJP
   G01M 13/00 20190101ALI20220901BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20220901BHJP
【FI】
G01L5/00 103B
F16B31/00 Z
F16B31/02 Z
G01L5/24
G01M13/00
G01P15/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017120386
(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公開番号】P2019007736
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-04-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】506169229
【氏名又は名称】ボルトワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 俊行
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】濱本 禎広
【審判官】中塚 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161478(JP,A)
【文献】特開2016-29358(JP,A)
【文献】特開平11-118637(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/79504(US,A1)
【文献】特開2007-112334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
G01P 15/18
G01M 13/00
F16B 31/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結物を締結し締結後の自身の緩みを検出するためのセンサ付き締結具であって、3軸加速度センサおよび3軸磁気センサを含む姿勢検出センサと、前記姿勢検出センサの検出情報を無線出力する送信部とを備えるセンサ付き締結具と、
前記センサ付き締結具から無線出力された前記検出情報を受信する監視装置とを備える緩み検出システムであって、
前記監視装置は、前記検出情報に基づき前記センサ付き締結具の姿勢情報を演算し、前記姿勢情報の時系列変化から前記センサ付き締結具の緩みの有無を判定するものであり
前記センサ付き締結具は、一の被締結物に対して複数使用されており、
前記監視装置は、前記姿勢情報の時系列変化を、複数の前記センサ付き締結具の間で比較することにより、緩みが生じた前記センサ付き締結具を判別する緩み検出システム。
【請求項2】
前記姿勢検出センサは、前記検出情報を定期的に出力する請求項1に記載の緩み検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩み検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトやネジなどの締結具の緩みを検出する装置として、特許文献1には、感圧センサを組み込んだ取付金具を、被締結部材とボルト頭部との間に介在させて、感圧センサにより検出された電圧値等の変化から締付けトルクを検出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-228465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の検知方法は、締結具の緩みを検出するために取付金具が新たな部品として必要になるだけでなく、この取付金具が締結力の作用箇所に影響を与えるため、強度計算や軸力管理が困難になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、新たな部品を必要とすることなく締結具の緩み発生を的確に検出することができる緩み検出システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、被締結物を締結し締結後の自身の緩みを検出するためのセンサ付き締結具であって、3軸加速度センサおよび3軸磁気センサを含む姿勢検出センサと、前記姿勢検出センサの検出情報を無線出力する送信部とを備えるセンサ付き締結具と、前記センサ付き締結具から無線出力された前記検出情報を受信する監視装置とを備える緩み検出システムであって、前記監視装置は、前記検出情報に基づき前記センサ付き締結具の姿勢情報を演算し、前記姿勢情報の時系列変化から前記センサ付き締結具の緩みの有無を判定するものであり、前記センサ付き締結具は、一の被締結物に対して複数使用されており、前記監視装置は、前記姿勢情報の時系列変化を、複数の前記センサ付き締結具の間で比較することにより、緩みが生じた前記センサ付き締結具を判別する緩み検出システムにより達成される。この緩み検出システムにおいて、前記姿勢検出センサは、前記検出情報を定期的に出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな部品を必要とすることなく締結具の緩み発生を的確に検出することができる緩み検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る緩み検出システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る緩み検出システムの概略構成図である。図1に示すように、緩み検出システム1は、センサ付き締結具10と、監視装置20とを備えている。
【0012】
センサ付き締結具10は、頭部11および軸部12を備えるボルト本体13と、姿勢検出センサ14と、信号出力ユニット16とを備えている。ボルト本体13は、軸部12の一端側となる頭部11の上面に凹部11aが形成され、軸部12の外周の一部にねじ部12aが形成されている。このセンサ付き締結具10は、各種構造物や機器等の被提携物を締結するのに使用され、固有の締結具識別情報により、取付対象物や取付位置等が特定される。
【0013】
姿勢検出センサ14は、3軸加速度センサおよび3軸磁気センサを備えており、センサ付き締結具10の姿勢を検出するための検出情報を出力する。姿勢検出センサ14は、凹部11aに封止樹脂15により固定されている。姿勢検出センサ14の検出情報は、一定時間毎に定期的に出力される。この時間間隔は、長すぎるとセンサ付き締結具10の緩みの発生をリアルタイムに把握するのが困難になる一方、短すぎるとバッテリ寿命の問題が生じやすくなることを考慮して、適宜設定することが好ましく、例えば1日に10回程度である。
【0014】
信号出力ユニット16は、ケーシングの内部に、マイクロチップ17、バッテリ18、送信部19および表示部30を備えて構成されている。マイクロチップ17は、バッテリ18から電力供給を受けて作動し、姿勢検出センサ14から出力される検出情報に締結具識別情報を含めて出力情報を生成し、送信部19から無線出力する。送信部19からの出力は、例えば、3G通信などのモバイル通信によりインターネットに直接接続する方法、あるいは、Bluetooth(登録商標)やZigbeeなどの近距離通信により、ゲートウェイや携帯端末経由でインターネットに接続する方法等により、行うことができる。送信部19からの出力は、姿勢検出センサ14が検出情報を生成する毎に行うことができる。検出情報の変化をマイクロチップ17が把握できる場合には、直前の検出情報に対して検出情報の変化が生じた場合にのみ送信部19から出力情報を無線出力し、検出情報が変化しない場合には、検出情報を生成する周期よりも長い周期(例えば、1日1回)で送信部19から出力情報を無線出力することで、消費電力を低減することができる。表示部30は、液晶パネルやLED等から構成することができる。
【0015】
監視装置20は、例えば、ネットワーク上のコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等であり、センサ付き締結具10から出力された検出情報をインターネット等のネットワークを介して受信する受信部21と、受信した検出情報を締結具識別情報と共に格納するメモリ部22と、受信した検出情報からセンサ付き締結具10の緩みの有無を判定する判定部23と、センサ付き締結具10に緩みが発生したことを示す緩み発生情報を締結具識別情報と共に出力する出力部24とを備えている。監視装置20は、一部の機能を分散させた構成にすることも可能であり、例えば、センサ付き締結具10から定期的に送信されるセンサ付き締結具10の検出情報を、クラウド上に設置された仮想サーバやウェブサービスに格納してもよい。
【0016】
判定部23は、センサ付き締結具10から受信した検出情報に基づき、センサ付き締結具10の締結緩みの有無を検知する。すなわち、姿勢検出センサ14が備える3軸加速度センサおよび3軸磁気センサの検出情報から、周知の方法によりセンサ付き締結具10の傾斜角および方位角を計算して姿勢情報を演算し、この姿勢情報の時系列変化が閾値を超えた場合に、センサ付き締結具10の緩み発生情報を生成する。
【0017】
被締結物が設置個所に固定されている場合には、センサ付き締結具10の姿勢情報の時系列変化を、そのままセンサ付き締結具10の緩みとして把握することができる。一方、被締結物が移動可能である場合には、被締結物の姿勢が変化することによってセンサ付き締結具10の姿勢情報が変化するため、単一のセンサ付き締結具10の姿勢情報のみではセンサ付き締結具10の緩みを判定することができない。この場合は、本実施形態の姿勢検出センサ14を予め被締結物にも固定しておき、センサ付き締結具1が備える姿勢検出センサ14の姿勢情報の時系列変化と、被締結物に固定された姿勢検出センサ14の姿勢情報の時系列変化との比較により、センサ付き締結具10の緩みを判定することができる。
【0018】
センサ付き締結具10は、通常は一の被締結物に対して複数使用される。同一の被締結物に使用されている複数のセンサ付き締結具10の姿勢情報は、被締結物の姿勢が変化しても、各センサ付き締結具10の緩みの発生がなければこれらの間で相対的な変化が生じない。したがって、センサ付き締結具10の姿勢情報の時系列変化を、複数のセンサ付き締結具10の間で比較することにより、緩みが生じたセンサ付き締結具10を判別することができる。緩みが生じたセンサ付き締結具10の判別は、例えば、複数のセンサ付き締結具10のうち、緩みがないことを目視等により確認したセンサ付き締結具10の姿勢情報の時系列変化を基準として行うことができる。あるいは、一の被締結物に対してセンサ付き締結具10が多数使用されている場合には、これらの間で姿勢情報の時系列変化の傾向が相対的に異なるものを判別して行うことができる。
【0019】
出力部24は、センサ付き締結具10からの出力情報や、判定部23が生成した緩み発生情報等を、予め定めた条件に応じてモニタ等に画面表示する。出力部24は、緩み発生情報を、画面表示する代わりに(あるいは画面表示すると共に)、他の端末等に電子メール等を介して送信してもよく、実際にセンサ付き締結具10が使用された現場等の任意の場所に、的確な情報を迅速に届けることができる。センサ付き締結具10に受信機能を設けることで、出力部24が外部に出力した緩み発生情報を、該当するセンサ付き締結具10が受信して、緩みの発生を表示部30に文字や色等で表示することもできる。
【0020】
以上の構成を備える緩み検出システム1は、センサ付き締結具10の緩みの発生を、それ自身に内蔵された姿勢検出センサ14によって検出することができ、従来のように、締結具の締結力を作用させる箇所に取付金具等の介在物を介在させる必要がない。このため、締結具の機械的性質に影響を及ぼすおそれがなく、通常の締結具を用いる場合と同様に軸力管理等を行うことができる。また、3軸加速度センサおよび3軸磁気センサを備える姿勢検出センサ14が自動的に検出して得られる検出情報により、磁界測定や目視では検出が困難な緩み発生を、的確に把握することができる。更に、この検出情報を定期的に取得することにより、緩み発生を迅速に把握することができる。
【0021】
センサ付き締結具10が備える姿勢検出センサ14は、3軸加速度センサおよび3軸磁気センサ以外に、ジャイロセンサ、振動センサ、温度センサ、湿度センサ、超音波センサ、位置センサ等の他のセンサを備えていてもよく、センサ付き締結具10が使用された被締結物の周辺環境の変化を、各種センサの検出情報から迅速的確に把握して、周辺診断を行うことができる。これらのセンサの検出情報は、センサ付き締結具10の緩み検出にも活用することが可能であり、例えば、ジャイロセンサにより検出したセンサ付き締結具10の回転加速度に基づいて、3軸加速度センサおよび3軸磁気センサのデータ補正を行ってもよい。
【0022】
本実施形態のセンサ付き締結具10のボルト本体13は、頭部11および軸部12を備える構成としているが、ホーローセットやスタッドボルト等のように、頭部を有さずに軸部のみの構成であってもよく、軸部の一端側に形成された凹部に姿勢検出センサ14を配置することで、本実施形態のセンサ付き締結具10と同様に使用することができる。軸部12は、ねじ部12aを有しないシャフト状のものであってもよい。センサ付きボルト10は、姿勢検出センサ14や信号出力ユニット16等の凹部11aに収容される部品を予め一体化した装置を市場に流通させ、ユーザが、この装置を六角穴付きボルト等の市販のボルトの凹部に嵌め込んで使用することもできる。
【0023】
本発明のセンサ付き締結具は、ボルト状のものに限定されない。例えば、被締結物の締結を大型のボルトおよびナットにより行う場合には、本実施形態の姿勢検出センサを側面等に埋め込んだナットを、センサ付き締結具として使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 緩み検出システム
10 センサ付き締結具
11 頭部
11a 凹部
12 軸部
13 ボルト本体
14 姿勢検出センサ
19 送信部
20 監視装置
図1