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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】車椅子用動力装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20220901BHJP
【FI】
A61G5/04 711
A61G5/04 701
A61G5/04 703
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018173360
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020043957
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】394021638
【氏名又は名称】トリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】五家 秀樹
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3092374(JP,U)
【文献】登録実用新案第3116721(JP,U)
【文献】特開2014-014473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式の車椅子に装着されることによって前記車椅子の走行を補助する車椅子用動力装置であって、
前記車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームに設けられる連結部と、
前記連結部に設けられるメインフレームと、
前記メインフレームに設けられるハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられる駆動輪と、
前記駆動輪を駆動するモータと、を備え、
前記連結部が、
水平方向の第1連結ピンで軸支された屈曲部、及び前記屈曲部を回動させることにより前記駆動輪のキャスター角を変更可能とするキャスター角度変更部を備え、
前記駆動輪のキャスター角を変更することで前記駆動輪を路面に押圧させる又は路面から浮かせることを特徴とする車椅子用動力装置。
【請求項2】
手動式の車椅子に装着されることによって前記車椅子の走行を補助する車椅子用動力装置であって、
前記車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームに設けられる連結部と、
前記連結部に設けられるメインフレームと、
前記メインフレームに設けられるハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられる駆動輪と、
前記駆動輪を駆動するモータと、を備え、
前記連結部が、
水平方向の第2連結ピンで軸支されたメインアーム、前記メインアームの動きを規制するストッパ、及び前記メインアームと前記ストッパとの間に設けられる弾性体を備える緩衝部を備えることを特徴とする車椅子用動力装置。
【請求項3】
前記メインフレームの前後方向の軸線が、前記車体フレームの前後方向の軸線と同じ又は前記車椅子の外側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の車椅子用動力装置。
【請求項4】
前記連結部と前記メインフレームとを着脱可能にする第1着脱部を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車椅子用動力装置。
【請求項5】
前記第1着脱部が、
前記メインフレームを挟む挟持部、及び前記挟持部のうち少なくとも一端を固定する締結部材を備えることを特徴とする請求項に記載の車椅子用動力装置。
【請求項6】
前記第1着脱部のうち前記メインフレームに対する取付位置が、前記車椅子の座面フレームの延長線から前記延長線と直交する方向に上方向50mm以内、下方向150mm以内に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の車椅子用動力装置。
【請求項7】
前記車椅子の種類毎に合わせて製作されるアタッチメントが前記車体フレームに設けられ、
前記連結部が前記アタッチメントに装着されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の車椅子用動力装置。
【請求項8】
前記アタッチメントと前記連結部とを着脱可能にする第2着脱部を備えることを特徴とする請求項7に記載の車椅子用動力装置。
【請求項9】
前記メインフレームが円筒形のヘッドチューブで構成され、
前記ハンドル機構が、操作ハンドル、前記操作ハンドルの下方に配置され前記ヘッドチューブを貫通するステム、及び前記ステムの下方に配置され前記駆動輪が設けられるフォークを備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の車椅子用動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動式の車椅子に装着されることによって、前記車椅子の走行を補助する車椅子用動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常時は手動式車椅子として使用し、必要が生じた際に他人の力を借りることなく使用者が車いすに乗ったまま独力で駆動部を取り付けて、電動式車椅子として使うことを目的として、例えば特開2004-201807号公報、特開2011-030964号公報、特開2013-048735号公報に、組立て可能な電動車椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-201807号公報
【文献】特開2011-030964号公報
【文献】特開2013-048735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献に記載されている電動車椅子では、その駆動機構を手動式車椅子に連結する連結用フレームが、使用者の両足の周りを囲うように配置されているか使用者の両足の間に配置されている。このため、車椅子を乗り降りしようとすると連結用フレームを跨ぐか、連結用フレームを駆動機構ごと外す作業をする必要があった。ところが、車椅子を用いる使用者は下半身が不自由な人や体力に劣る高齢者が多く、上記の作業を車椅子の乗り降りの度にすることが負担となっていた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、車椅子の左右どちらか一方の車体フレームに装置の構成要素を配置することで車椅子の前方に空間を設け、装置の着脱をすることなく使用者が楽に乗り降りすることができる車椅子用動力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の車椅子用動力装置は、
手動式の車椅子に装着されることによって前記車椅子の走行を補助する車椅子用動力装置であって、
前記車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームに設けられる連結部と、
前記連結部に設けられるメインフレームと、
前記メインフレームに設けられるハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられる駆動輪と、
前記駆動輪を駆動するモータと、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の車椅子用動力装置によれば、メインフレームが設けられる連結部が、車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームに配置される。これにより、車椅子用動力装置が車椅子の左右どちらか一方にオフセットされて取付けられ、車椅子の正面に開けた空間ができる。このため、使用者が車椅子用動力装置のフレーム等を跨ぐ必要がなく、楽に乗り降りすることができる。
【0008】
(2)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記メインフレームの前後方向の軸線が、前記車体フレームの前後方向の軸線と同じ又は前記車椅子の外側に位置することを特徴とする。
【0009】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、メインフレームの前後方向の軸線が、車椅子の車体フレームの前後方向の軸線と同じ又は車椅子の外側に位置するため、車椅子の正面及び使用者が足を乗せるステップ部分の空間を完全に空けることができる。このため、車椅子への乗り降りがさらにし易くなるとともに、使用者が車椅子の進行方向に対して斜めに座る、又は足を横にずらして座る必要がなくなる。
【0010】
(3)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記連結部と前記メインフレームとを着脱可能にする第1着脱部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、第1着脱部によって、メインフレームから先の構成要素を取外すことができる。このため、屋内や電車等の車内ではメインフレームから先を取外して手動式の車椅子として使用することができる。
【0012】
(4)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記第1着脱部が、
前記メインフレームを挟む挟持部、及び前記挟持部のうち少なくとも一端を固定する締結部材を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、挟持部を固定する締結部材を操作するだけでメインフレームから先の着脱が可能となるため、使用者等がメインフレームの着脱をより容易にすることができる。
【0014】
(5)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記第1着脱部のうち前記メインフレームに対する取付位置が、前記車椅子の座面フレームの延長線から前記延長線と直交する方向に上方向50mm以内、下方向150mm以内に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、使用者自らがメインフレームから先の構成要素を着脱するときに、使用者の腕が自然に届き、深い前傾姿勢になることがなく着脱が容易となる。
【0016】
(6)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記車椅子の種類毎に合わせて製作されるアタッチメントが前記車体フレームに設けられ、
前記連結部が前記アタッチメントに装着されることを特徴とする。
【0017】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、車椅子の種類毎に合わせて製作されるアタッチメントを介して連結部が装着されるため、車椅子の種類が異なっても連結部から先の構成要素を共通化させることができる。
【0018】
(7)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記アタッチメントと前記連結部とを着脱可能にする第2着脱部を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、第2着脱部によって連結部も着脱することが可能となり、車椅子を様々な使用状況に合わせることが可能となる。
【0020】
(8)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記連結部が、
水平方向の第1連結ピンで軸支さた屈曲部、及び前記屈曲部を回動させることにより前記駆動輪のキャスター角を変更可能とするキャスター角度変更部を備え、
前記駆動輪のキャスター角を変更することで前記駆動輪を路面に押圧させる又は路面から浮かせることを特徴とする。
【0021】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、駆動輪のキャスター角を変更することで駆動輪を路面に押圧させることができるため、車椅子用動力装置の走行時には駆動輪に荷重をかけることができる。一方、車椅子用動力装置の一部の構成要素を着脱するときは、駆動輪に荷重がかからないようにすることができる。これにより、走行時の路面に対する駆動輪のトラクションと、連結部又はメインフレームの着脱の容易さとを両立させることができる。
【0022】
(9)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記連結部が、
水平方向の第2連結ピンで軸支されたメインアーム、前記メインアームの動きを規制するストッパ、及び前記メインアームと前記ストッパとの間に設けられる弾性体を備える緩衝部を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、緩衝部を備えるため、路面の凹凸に対応することができる。また、この緩衝部がメインアーム、ストッパ、及び弾性体という簡素な構成となっているため、車椅子用動力装置の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0024】
(10)本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記メインフレームが円筒形のヘッドチューブで構成され、
前記ハンドル機構が、操作ハンドル、前記操作ハンドルの下方に配置され前記ヘッドチューブを貫通するステム、及び前記ステムの下方に配置され前記駆動輪が設けられるフォークを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、メインフレームが円筒形のヘッドチューブで構成されるとともに、ハンドル機構がヘッドチューブを貫通する。このため、メインフレーム及びハンドル機構の構成が簡素なものとなり、メインフレームから先の構成要素の軽量化をさらに図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
上述した本発明の車椅子用動力装置によれば、車椅子の左右どちらか一方の車体フレームに装置の構成要素を配置することで車椅子の前方に空間を設け、使用者が楽に乗り降りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る車椅子用動力装置及び車椅子用動力装置が装着される車椅子の側面図である。
図2図1の平面図である。
図3図1の正面図である。
図4】第1着脱部を説明する図である。
図5】第2着脱部を説明する図である。
図6図1において駆動輪のキャスター角を変更した状態を示す図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8】第1着脱部によってメインフレームを取外した状態を説明する図である。
図9】第2着脱部によって連結部を取外した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る車椅子用動力装置の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1ないし図3に示すように、本実施形態の車椅子用動力装置10は、アタッチメント11と、連結部20と、第1着脱部40と、第2着脱部46と、メインフレーム50と、ハンドル機構51と、駆動輪60と、モータ62とを備える(第2着脱部46については図5を参照。)。なお、本実施形態の車椅子用動力装置10は、手動式の車椅子70の車体フレーム71に装着されることによって前記車椅子70の走行を補助するものである。
【0030】
アタッチメント11は、車椅子70のうち左右どちらか一方の車体フレーム71に、ボルト等によって取付けられるものであり、本実施形態では側面視で略逆L字状をなす板状部材で構成される。このアタッチメント11は、車椅子70の種類毎に合わせてその形状等が決定され製作される。これは、連結部20から先の構成要素を略同一の設計としながら、車椅子用動力装置10を略全ての車椅子70に装着可能とするためである。また、アタッチメント11は、車椅子70の使用者の乗り降りの妨げにならないよう、車体フレーム71のうち車椅子70の外側に設けられることが好ましい。
【0031】
連結部20は、図7にも示すように、アタッチメント11とメインフレーム50とを連結する部材である。この連結部20は、連結ベース21と、メインアーム25と、屈曲部26と、サブアーム27と、弾性体29とを備える。また、屈曲部26には第1着脱部40が設けられ、この第1着脱部40で連結部20とメインフレーム50とが着脱可能に構成される。さらに、上記のアタッチメント11と連結ベース21とは後述する第2着脱部46によって着脱可能に構成される。なお、図7では連結ベース21の内部を見易くするために、連結ベース21の手前側の板を取外した状態としている。
【0032】
連結ベース21は、車椅子70の前後方向に長く、前面に開口部22を備える箱形の部材であり、その内部は中空となっている。その内部に前方からメインアーム25が差し込まれ、連結ベース21に第2連結ピン31によって軸支される。この第2連結ピン31は、水平方向かつ車椅子70の幅方向に設けられており、メインアーム25を車椅子70の上下方向に回動可能になるよう軸支する。
【0033】
ここで、メインアーム25がある程度の角度以上に回動しないよう、箱形に構成された連結ベース21の上面23及び下面24がストッパとなっている。メインアーム25は、第2連結ピン31を軸に回動するが、このストッパ23,24に接触することによりそれ以上は回動しない。また、円筒形のゴムからなる弾性体29が、連結ベース21の内部で、メインアーム25と連結ベース21の上面(ストッパ)23との間に配置されている。これらの第2連結ピン31、メインアーム25、ストッパ23、及び弾性体29によって、駆動輪60から伝えられる路面76の凹凸を吸収する緩衝部34が構成される。
【0034】
屈曲部26は、平面視略コ字状の部材であり、その下端近傍がメインアーム25の先端近傍に第1連結ピン30によって軸支され、駆動輪60のキャスター角θと略同じ角度に立設される。また、第1連結ピン30も水平方向かつ車椅子70の幅方向に設けられており、屈曲部26が車椅子70の前後方向に回動可能となっている。
【0035】
サブアーム27は、屈曲部26の上端近傍と連結ベース21の上面とでそれぞれ第3連結ピン32及び第4連結ピン33で軸支され、屈曲部26の動きを規制している。これらの第3連結ピン32及び第4連結ピン33も水平方向かつ車椅子70の幅方向に設けられる。
【0036】
本実施形態では、このサブアーム27として、横押し型のトグルクランプ27を採用している。このトグルクランプ27のレバー28を操作することによって、第3連結ピン32が前後方向に移動する。すると、屈曲部26が第1連結ピン30を軸に前後方向に回動され、屈曲部26に第1連結部20を介して接続されたメインフレーム50も回動する。これによって、駆動輪60のキャスター角θを変更可能とするとともに、駆動輪60を路面76に押圧させる又は路面76から浮かせることができる(図1図6参照)。これらの第1連結ピン30、屈曲部26、サブアーム27等によって、駆動輪60のキャスター角θを変更可能とするキャスター角度変更部35を構成している。
【0037】
第1着脱部40は、屈曲部26の前方に設けられ、連結部20とメインフレーム50とを着脱可能にするものである。この第1着脱部40の詳細を図4(A)~(C)を参照して説明する。図4(A)はメインフレーム50がない状態での第1着脱部40の平面図、図4(B)は第1着脱部40にメインフレーム50を固定した状態での側面図、図4(C)は第1着脱部40からメインフレーム50を外した状態での側面図である。
【0038】
第1着脱部40は、メインフレーム50を挟む挟持部41a,41b、及び挟持部41a,41bのうち少なくとも一端を固定する締結部材44aを備える。また、2つの挟持部41a,41bの中央近傍には、メインフレーム50を挟むための半円状の窪み42がそれぞれ対向して設けられる。また、一方の挟持部41aは、平面視略L字状をなし、その根元部43が屈曲部26にボルト等で接合される。そして、先端部には蝶番45が設けられ、この蝶番45で他方の挟持部41bと連結されるとともに、一方の挟持部41aに対して他方の挟持部41bが略水平方向に回動可能となる。さらに、他方の挟持部41bには締結部材44aとして、人手で操作可能な締め付けネジ44aが設けられ、2つの挟持部41a,41bでメインフレーム50を挟んだ状態で、一方の挟持部41aのネジ穴44bに螺合されることによって挟持部41a,41b同士及びメインフレーム50を固定する。
【0039】
第2着脱部46は、アタッチメント11と連結ベース21に設けられ、アタッチメント11と連結部20とを着脱可能にするものである。この第2着脱部46の詳細を、図5を参照して説明する。本実施形態では、第2着脱部46は、係合部47と、被係合部48と、固定部49とを備える。係合部47は、アタッチメント11側に設けられた平頭ピン47であり、ここでは2本が配置される。被係合部48は、連結ベース21側に設けられただるま孔48であり、平頭ピンに対応する位置に設けられる。固定部49は、人手で操作可能な固定ネジ49であり、平頭ピンとだるま孔とを係合した後に、これらが外れないように固定する。
【0040】
なお、本実施形態の車椅子用動力装置10は、車椅子70の左右どちらか一方の車体フレーム71に設けられている。このため、車椅子70の使用者と車椅子用動力装置10との干渉がなく、使用者が着脱時に操作する第1着脱部40、第2着脱部46を、比較的高い位置に配置することが可能である。本実施形態の車椅子用動力装置10では、これらの第1着脱部40及び第2着脱部46を、車椅子70の座面72をその左右端で保持する座面フレーム72aの延長線el1と同等の高さに配置している(図6参照)。
【0041】
特に、着脱頻度の高い第1着脱部40は、座面フレーム72aの延長線el1から、前記延長線el1と直交する方向に上方向50mm以内かつ下方向150mm以内に、好ましくは上方向0mm以内かつ下方向100mm以内の範囲rに配置される。ここで、第1着脱部40のメインフレーム40に対する取付位置mpとしては、メインフレーム50が挟持又は保持される中心cを基準とする。なお、駆動輪60を路面76に押圧させた状態では、原則として第1着脱部40は操作しない。このため、上記の取付位置mp及び中心cは、駆動輪60のキャスター角θを寝かせて、駆動輪60を路面76から浮かせた状態での位置を基本とする。
【0042】
図1図3に戻り、メインフレーム50は、上述したように、第1着脱部40に挟持されるもので、略円筒形のヘッドチューブ50で構成される。このメインフレーム50の位置であるが、その前後方向の軸線a1が、アタッチメント11が設けられた側の車体フレーム71の前後方向の軸線a2と同じか、車椅子70の外側に位置することが好ましい。メインフレーム50をこのような位置に配置することで、車椅子70のステップ75周りに邪魔をするものがなく、車椅子70の前方が大きく開ける。
【0043】
ハンドル機構51は、操作ハンドル52と、ステム55と、フォーク56とを備える。操作ハンドル52は、車椅子70の使用者が手に持って操作することにより、車椅子用動力装置10の進行方向を決めるためのものである。操作ハンドル52には、使用者が握るためのグリップ53、ブレーキレバー54、アクセルスイッチ(図示せず)が設けられる。ステム55は、操作ハンドル52の下方に位置するパイプ状の部材であり、上記ヘッドチューブ50内をその軸方向に貫通して下方に伸びている。フォーク56は、ステム55の下端から二股に分かれるもので、その下端にアクスルシャフト61によって駆動輪60が設けられる。この駆動輪60には図示しないブレーキが設けられる。
【0044】
モータ62は、フォーク56の上端近傍に配置されたステー63に設けられるもので、伝達機構64によってその回転力を駆動輪60に伝達する。この伝達機構64としては、公知のチェーン、ベルト、歯車等を採用することができる。このモータ62は、バッテリ(図示せず)から電力の供給を受け、操作ハンドル52に設けられたアクセルスイッチ(図示せず)からの信号によって動作する。なお、モータ62を駆動輪60の上に配置することで、モータ62の重さで駆動輪60を路面76に押圧して、駆動輪60の路面76に対するトラクションを増加させる作用も有する。
【0045】
次に、上述の本実施形態に係る車椅子用動力装置10の構成要素と機能を踏まえて、車椅子用動力装置10の使用方法を説明する。
【0046】
図1に示すように、通常の使用状態では、本実施形態の車椅子用動力装置10は、手動式の車椅子70の車体フレーム71に取付けられている。そして、トグルクランプ27のレバー28が前方に引き起こされることによって、駆動輪60のキャスター角θが起こされ、駆動輪60が路面76に押圧される。このとき、車椅子70と車椅子用動力装置10が自由な状態であれば、駆動輪60の下端は、車椅子70の前輪74及び後輪73の下端よりも約10mm下に位置する。これにより、駆動輪60が路面76に押圧されて、走行時の路面76に対してのトラクションを確保する。また、走行中の路面76の凹凸はメインアーム25に伝わり、メインアーム25とストッパ23との間の弾性体29によって吸収される。
【0047】
次に、車椅子用動力装置10の動力によらずに人力で車椅子70を操作するとき、図6に示すようにトグルクランプ27のレバー28を後方に倒す。すると、駆動輪60のキャスター角θが寝て、駆動輪60が路面76より約20mm浮く。これにより、路面76との摩擦がなくなり、介護者又は車椅子70の使用者が人力で容易に車椅子70を操作することができる。
【0048】
なお、駆動輪60を路面76から浮かせる高さは、上記の20mmに限られない。また、トグルクランプ27の操作に中間位置を設けてキャスター角度θを2段階に変更して、駆動輪60を浮かせる高さを多段階にすることもできる。例えば、車椅子を人力で操作するときには、駆動輪60と路面76との干渉を避けるために、駆動輪60を路面から30~50mm浮かせてもよい。一方、後述する第1着脱部40からメインフレーム50を着脱するときには、使用者の負担とならないよう駆動輪60を路面76から10mm程度のみ浮かせてもよい。
【0049】
次に、上記の駆動輪60を路面76から浮かせた状態で、図8に示すように第1着脱部40の締め付けネジ44aを操作してメインフレーム50から先を取外すことができる。これは、屋内や電車等での使用を考慮したものである。このとき、車椅子用動力装置10が車椅子70の左右どちらか一方に設けられているため、第1着脱部40を車椅子70の座面フレーム72aの延長線el1と略同じ高さに配置することが可能である。これにより、使用者自らが着脱するときでも、不必要に前傾姿勢となることなくメインフレーム50から先を取外すことができる。
【0050】
また、上述したように、メインフレーム50はヘッドチューブ50のみという簡素な構成であり、メインフレーム50から先を軽量にすることが可能である。このため、介護者がいなくとも車椅子70の使用者自らが、メインフレーム50から先を着脱することができる。さらに、取外したメインフレーム50から先の構成は、例えば車椅子70の側面または背面に設けたポケット等の収納部に収納したり車椅子70にベルト等で縛って固定することもできる(いずれも図示せず)。
【0051】
さらに、図9に示すように、第2着脱部46によってアタッチメント11のみを車椅子70に残し、連結部20から先を取外すこともできる。このようにすることで、通常の車椅子70として使用することも可能となる。この第2着脱部46も車椅子70の座面フレーム72aの延長線el1と略同じ高さに配置されているため、使用者自らが着脱するときに不必要な前傾姿勢となることがない。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態の車椅子用動力装置10によれば、装置を車椅子70の左右どちらか一方に配置している。これにより、使用者が乗車時に車椅子用動力装置10を跨ぐ必要がなく、そのまま普通に車椅子70から乗り降りすることができる。また、メインフレーム50の前後方向の軸線a1も車体フレーム71の前後方向の軸線a2より外側にある。これにより、車椅子用動力装置10と車椅子70の使用者との干渉が略なくなり、使用者の乗り降りがさらに容易になるとともに、車椅子70の座面72を正面に向けたままにして使用者が真っ直ぐ座ることができる。
【0053】
また、メインフレーム50の構成が簡素であるとともに、第1着脱部40によってメインフレーム50から先の構成が着脱可能とされる。このため、メインフレーム50から先を軽量にすることができ、着脱も容易である。
【0054】
また、上述の装置自体が車椅子70の左右どちらか一方に配置され、使用者が装置を跨ぐ必要がないため、第1着脱部40、第2着脱部46、及び連結部20を比較的高い場所に配置することができる。これにより、メインフレーム50から先の構成、又は連結部20から先の構成を着脱する際に、使用者が深い前傾姿勢を取る必要がなくなり、使用者自らが車椅子70に乗車したまま、各部の着脱をすることが容易となる。
【0055】
この前傾姿勢を取らずにメインフレーム50等を着脱できることは、特に下半身の不自由な車椅子70の使用者にとって有効である。何故ならば、下半身が不自由であると足に力を入れることができず、上半身のみで体を支える必要がある。このような状況にあって、深い前傾姿勢を保ちながら装置の着脱をすることは一般に困難だからである。一方、本実施形態の車椅子用動力装置10ではメインフレーム50から先の構成、又は連結部20から先の構成を簡単に着脱することが可能である。これにより、例えば車椅子用動力装置10を装着した車椅子70で乗車等の直前に一部の構成を取外し、電車に乗る、エレベーターに乗る、屋内に入る等を容易にすることができる。
【0056】
また、第2着脱部46によってアタッチメント11のみを車椅子70に残し、連結部20から先の構成を全て取外すこともできる。これにより、アタッチメント11のみが各種の車椅子70に合わせて製作され、連結部20から先の構成は車椅子70の種類が異なっても略共通化することができる。これにより、上述のメインフレーム50がヘッドチューブ50であることと相まって、装置の製造コストを低減させることができる。
【0057】
また、キャスター角度変更部35によって、駆動輪60を路面76に押圧又は路面76から浮かせることができる。これにより、走行時における駆動輪60のトラクションの確保と、車椅子70から装置を着脱するときの操作の容易さを両立させることができる。さらに、駆動輪60を路面76から浮かせることで、車椅子用動力装置10によらずに人力で車椅子70を移動させることも容易である。
【0058】
また、緩衝部34が、第2連結ピン31とメインフレーム50とストッパと弾性体29という簡素な構成ながら、この緩衝部34によって路面76からの凹凸の衝撃を和らげることができる。
【0059】
なお、上述した本実施形態の車椅子用動力装置10は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0060】
10・・車椅子用動力装置、11・・アタッチメント、
20・・連結部、21・・連結ベース、22・・開口部、23・・上面(ストッパ)、24・・下面(ストッパ)、25・・メインアーム、26・・屈曲部、27・・サブアーム(トグルクランプ)、28・・レバー、29・・弾性体、
30・・第1連結ピン、31・・第2連結ピン、32・・第3連結ピン、33・・第4連結ピン、34・・緩衝部、35・・キャスター角度変更部、
40・・第1着脱部、41a,41b・・挟持部、42・・窪み、43・・底部、44a・・締結部材(締め付けネジ)、44b・・ネジ穴、45・・蝶番、46・・第2着脱部、47・・係合部(平頭ピン)、48・・被係合部(だるま孔)、49・・固定部(固定ネジ)、
50・・メインフレーム(ヘッドチューブ)、51・・ハンドル機構、52・・操作ハンドル、53・・グリップ、54・・ブレーキレバー、55・・ステム、56・・フォーク、
60・・駆動輪、61・・アクスルシャフト、62・・モータ、63・・ステー、64・・伝達機構、
70・・車椅子、71・・車体フレーム、72・・座面、72a・・座面フレーム、73・・後輪、74・・前輪、75・・ステップ、76・・路面、
a1,a2・・軸線、
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図9