(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20220901BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220901BHJP
B24B 29/00 20060101ALN20220901BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B41/06 L
B24B29/00 E
(21)【出願番号】P 2018211394
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502098662
【氏名又は名称】株式会社エステーリンク
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(74)【代理人】
【識別番号】100201237
【氏名又は名称】吉井 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 博文
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-107139(JP,A)
【文献】特開2013-049004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/06
B24B 41/06
B24B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク固定部で固定されたワークを研磨処理する研磨装置であって、前記ワーク固定部は、多数の孔が設けられ表面に前記ワークが配設されるワーク配設部と、このワーク配設部の裏面側に設けられる空気吸引空間部とを有
し、前記孔を介して前記空気吸引空間部へ空気を吸引することで前記ワーク配設部の表面に配設された前記ワークが吸引固定される構成であり、前記空気吸引空間部には可撓性を有するホースが設けられ、このホースは空気供給源に連設され、空気を噴射することで暴れ動しながらこの噴射空気によって前記空気吸引空間部に付着した前記ワークの削り屑などの塵埃が除去され、
更に、この塵埃は前記空気吸引空間部から導出されるように構成されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記空気吸引空間部の所定位置には複数の前記ホースから成る空気噴射部が設けられ、この空気噴射部の前記ホースは、互いに先端が異なる方向へ向けて配設されていることを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記空気供給源が連設される分岐部を介して複数の前記ホース夫々に独立して空気が供給される構成とし、前記各ホース夫々に空気の供給及び非供給を切り替えるバルブを有することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記空気吸引空間部から導出された空気が前記ワークを研磨処理する研磨処理部に導入される空気循環構造を具備していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記ワーク配設部は、複数の案内ローラーに巻回される無端ベルトで構成され、前記空気吸引空間部は前記無端ベルトの裏面で囲まれた内空間に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記空気吸引空間部は
、底壁部と、この底壁部の周囲に設けられる周壁部とからなる容体を有し、前記周壁部の内方は互いに交叉連設する縦桟及び横桟で適宜区画された構造であり、前記縦桟及び前記横桟により前記無端ベルトが支持されるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の研磨装置。
【請求項7】
前記ホースは前記縦桟及び前記横桟に干渉しない長さに設定されていることを特徴とする請求項6記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの研磨やバリ取りを行う研磨装置として、例えば特開2013-166225号に開示されるような研磨装置(以下、従来例という)が提案されている。
【0003】
この従来例は、ワークを載置して移送する搬送コンベアと、該搬送コンベアのコンベアライン上に配置されてこのコンベア上のワークを研磨面で研磨する回転研磨体とを備えたものである。
【0004】
ところで、従来例は、ワークを搬送する搬送コンベアの搬送面には多数の孔が設けられ、搬送コンベアの下方には孔から空気を吸引するための空気吸引空間部が設けられており、この構成から搬送面上に載置されたワークは吸引固定され、回転研磨体により研磨する際のワークの位置ズレが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来例は、ワークを回転研磨体により研磨することで飛散する削り屑などの塵埃は、搬送面の孔から吸引されて空気吸引空間部を通過して導出されるが、その一部は空気吸引空間部に付着して、やがて堆積し、この堆積した塵埃(金属屑の堆積物)が自然発火してしまう恐れがある。
【0007】
そこで、これを防止するためには空気吸引空間部に付着した塵埃の除去作業が必要となり、この除去作業は搬送コンベアを分解して行うことになるが、従来例はこの作業を頻繁に行わなければならず非常に厄介である。
【0008】
本発明は、前述した問題点を解消する、従来にない作用効果を発揮する画期的な研磨装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
ワーク固定部1で固定されたワークWを研磨処理する研磨装置であって、前記ワーク固定部1は、多数の孔4が設けられ表面に前記ワークWが配設されるワーク配設部3と、このワーク配設部3の裏面側に設けられる空気吸引空間部5とを有し、前記孔4を介して前記空気吸引空間部5へ空気を吸引することで前記ワーク配設部3の表面に配設された前記ワークWが吸引固定される構成であり、前記空気吸引空間部5には可撓性を有するホース6が設けられ、このホース6は空気供給源21に連設され、空気を噴射することで暴れ動しながらこの噴射空気によって前記空気吸引空間部5に付着した前記ワークWの削り屑などの塵埃Dが除去され、更に、この塵埃Dは前記空気吸引空間部5から導出されるように構成されていることを特徴とする研磨装置に係るものである。
【0011】
また、前記空気吸引空間部5の所定位置には複数の前記ホース6から成る空気噴射部Aが設けられ、この空気噴射部Aの前記ホース6は、互いに先端が異なる方向へ向けて配設されていることを特徴とする請求項1記載の研磨装置に係るものである。
【0012】
また、前記空気供給源21が連設される分岐部20を介して複数の前記ホース6夫々に独立して空気が供給される構成とし、前記各ホース6夫々に空気の供給及び非供給を切り替えるバルブ20aを有することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の研磨装置に係るものである。
【0013】
また、前記空気吸引空間部5から導出された空気が前記ワークWを研磨処理する研磨処理部2に導入される空気循環構造を具備していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨装置に係るものである。
【0014】
また、前記ワーク配設部3は、複数の案内ローラー7に巻回される無端ベルト3で構成され、前記空気吸引空間部5は前記無端ベルト3の裏面で囲まれた内空間に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨装置に係るものである。
【0015】
また、前記空気吸引空間部5は、底壁部5aと、この底壁部5aの周囲に設けられる周壁部5bとからなる容体5’を有し、前記周壁部5bの内方は互いに交叉連設する縦桟8及び横桟9で適宜区画された構造であり、前記縦桟8及び前記横桟9により前記無端ベルト3が支持されるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の研磨装置に係るものである。
【0016】
また、前記ホース6は前記縦桟8及び前記横桟9に干渉しない長さに設定されていることを特徴とする請求項6記載の研磨装置に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したから、例えば装置を分解することなく空気吸引空間部に付着した塵埃を良好に除去することができるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な研磨装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例の使用状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
ワーク配設部3にワークWを配設すると、孔4から空気吸引空間部5へ空気が吸引されることでワークWは吸引固定される。この状態でワークWは研磨処理される。
【0021】
この際、研磨処理によって生じるワークWの削り屑などの塵埃Dは、孔4から空気吸引空間部5へ吸引されるが、一部の塵埃Dは空気吸引空間部5に付着して該空気吸引空間部5から導出されない場合がある。
【0022】
本発明は、ホース6から空気を噴射させると、ホース6は可撓性を有するため、暴れ動しながら空気を噴射することになり、このホース6から噴射される空気により空気吸引空間部5に付着したワークWの削り屑などの塵埃Dは除去され、空気吸引空間部5から導出される。
【0023】
従って、空気吸引空間部5に塵埃Dが堆積されることが防止され、これまで厄介とされてきた塵埃Dの除去作業の負担を減らすことができる。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、ワーク固定部1で固定された板状のワークWを研磨したりバリ取りしたりするための研磨装置である。
【0026】
具体的には、この研磨装置は、
図1に図示したように下部に接地部10aが設けられたボックス状の装置本体10内に、ワークWを固定するワーク固定部1と、このワーク固定部1の上方対向位置に、ワーク固定部1で固定されたワークWを研磨する回転研磨体11とが設けられ、この研磨体11の周囲は囲まれて研磨処理部2(研磨処理空間)として構成されている。尚、本実施例では、研磨体11として特許第4332145号に開示される回転研磨体(回転軸の周面に一対の研磨布紙から成る研磨体が放射方向に多数突設された回転研磨体)を採用しているが、これに限るものではない。
【0027】
また、装置本体10は、上部に接続されるダクト12を介して研磨処理部2の空気を吸引して塵埃Dを除去する塵埃除去部13が設けられている。尚、本明細書で言う塵埃Dとは、ワークWの削り屑や粉塵などの空気中に浮遊している粒状物を言う。
【0028】
また、装置本体10は、後述する空気吸引空間部5から導出された空気がワークWを研磨処理する研磨処理部2に導入される空気循環構造を具備している。
【0029】
具体的には、この空気循環構造は、
図1に図示したように空気吸引空間部5に連設され該空気吸引空間部5から導出された空気が通過する導出空気通過部14と、この導出空気通過部14に設けられる空気吸引源15(吸引ブロワ)と、この空気供給源15を介して導出空気通過部14に通気状態で連設されるとともに、研磨処理部2に連設され、この研磨処理部2に空気を導入する導入空気通過部16とで構成されている。
【0030】
ワーク固定部1は、
図1,2に図示したように多数の孔4が設けられ表面にワークWが載置配設される水平面状のワーク配設部3と、このワーク配設部3の裏面側に設けられる空気吸引空間部5とを有して、孔4を介して空気吸引空間部5へ空気を吸引することでワーク配設部3の表面に配設されたワークWが吸引固定される構成である。
【0031】
具体的には、ワーク配設部3は、
図2~4に図示したように装置本体10内に回動自在に設けられる前後一対の案内ローラー7に巻回される無端ベルト3(コンベアベルト)で構成され、この無端ベルト3には多数の孔4(吸気孔)が設けられている。
【0032】
また、この無端ベルト3の裏面で囲まれた内空間には空気吸引空間部5が設けられている。
【0033】
空気吸引空間部5は、
図1~4に図示したように底壁部5aと、この底壁部5aの周囲に設けられる周壁部5bとからなる容体5’を有し、この容体5’の上部開口部には、多数の孔17aが設けられた支持板17と、無端ベルト3と支持板17との間に配され無端ベルト3の移動方向に長さを有する複数の長孔18aが並設された摩擦抵抗低減板18が配設されている。
【0034】
また、空気吸引空間部5の左右の周壁部5b夫々には、前述した空気循環構造の空気導出管部14が接続される開口部5b’が設けられている。
【0035】
従って、空気吸引源15の作動により空気吸引空間部5は負圧となって内部の空気が導出空気通過部14を介して導出され、この空気吸引空間部5から導出された空気は導入空気通過部16を介して研磨処理部2へ導入される。この際、無端ベルト3に設けられた孔4により研磨処理部2の空気は空気吸引空間部5へ引き込まれる状態となり、この無端ベルト3に配設されたワークWは吸引固定される。
【0036】
また、空気吸引空間部5は、
図1~4に図示したように周壁部5bの内方を互いに交叉連設する縦桟8及び横桟9で適宜区画(格子状に区画)された構造であり、この縦桟8及び横桟9により無端ベルト3,摩擦抵抗低減板18及び支持板17が負圧下においても平らに支持されるように構成されている。
【0037】
この横桟9には、底壁部5aに接する脚部9bが設けられており、この縦桟8及び横桟9夫々の下端部は、底壁部5aの面上において通気可能となるように開口部8a,9aが設けられている。
【0038】
また、空気吸引空間部5の底壁部5aには可撓性を有するウレタン樹脂製のホース6が設けられている。
【0039】
具体的には、
図4,5に図示したように空気吸引空間部5の所定位置(底壁部5aの中央部)には一対のホース6から成る空気噴射部Aが3つ設けられ、この空気噴射部Aのホース6は、空気吸引空間部5の底壁部5aに設けられるホース連結部22から先端(空気噴射開口部)が異なる方向(放射方向)へ向けて水平状に突出配設されている。尚、ホース6の素材はウレタン樹脂製に限らず、可撓性を有して本発明の特性を発揮するものであればフッ素樹脂やシリコン樹脂など適宜採用される。
【0040】
また、ホース6は、縦桟8及び横桟9(脚部9b)に干渉しない長さに設定されている。
【0041】
また、本実施例は、空気供給源21が連設される分岐部20を介して複数のホース6夫々に独立して空気が供給される構成とし、各ホース6夫々に空気の供給及び非供給を切り替えるバルブ20aを有している。
【0042】
具体的には、各ホース6の基端部が連設されるホース連設部22には、装置本体10に設けられたバルブ20a付き分岐部20から延設される空気供給管19が接続され、このバルブ20a付き分岐部20には空気供給源21(エアコンプレッサー)が連設されている。
【0043】
従って、各ホース6は、空気を噴射することで暴れ動し、この暴れ動する各ホース6から噴射される空気によって空気吸引空間部5に付着したワークWの削り屑などの塵埃Dが除去される。
【0044】
本実施例は上述のように構成したから、ワーク配設部3にワークWを配設すると、孔4から空気吸引空間部5へ空気が吸引されることでワークWは吸引固定される。この状態でワークWは研磨処理される。
【0045】
この際、研磨処理によって生じるワークWの削り屑などの塵埃Dは、孔4から空気吸引空間部5へ吸引されるが、一部の塵埃Dは空気吸引空間部5に付着して該空気吸引空間部5から導出されない場合がある。
【0046】
本実施例は、ホース6から空気を噴射させると、ホース6は可撓性を有するため、暴れ動しながら空気を四方八方へ噴射することになり、このホース6から噴射される空気により空気吸引空間部5に付着したワークWの削り屑などの塵埃Dは除去され、空気吸引空間部5から導出される。この空気吸引空間部5から導出された空気は、導出空気通過部14及び導入空気通過部16を通過して研磨処理部2へ導入される。
【0047】
よって、本実施例によれば、空気吸引空間部5に塵埃Dが堆積されることが防止され、これまで厄介とされてきた塵埃Dの除去作業の負担を減らすことができる。
【0048】
また、本実施例は、空気吸引空間部5の所定位置には複数のホース6から成る空気噴射部Aが設けられ、この空気噴射部Aの前記ホース6は、互いに先端が異なる方向へ向けて配設されているから、各ホース6から四方八方へ空気を噴射して空気吸引空間部5に付着した塵埃Dを良好に除去することができる。
【0049】
また、本実施例は、空気供給源21が連設される分岐部20を介して複数のホース6夫々に独立して空気が供給される構成とし、各ホース6夫々に空気の供給及び非供給を切り替えるバルブ20aを有するから、各バルブ20aが近い位置に設けられ該バルブ20aの操作がし易いのは勿論、例えば一つのホース6から空気を噴射させるようにすれば空気供給源21(エアコンプレッサー)のそのままの圧力でダイレクトに空気を噴射させることができるなど、任意の圧力で、そして、任意の位置から空気を噴射させることができる。
【0050】
また、本実施例は、空気吸引空間部5は、底壁部5aと、この底壁部5aの周囲に設けられる周壁部5bとからなる容体5’を有し、底壁部5aにホース連結部22が設けられているから、例えば掃除する際に装置を分解し易いなどメンテナンス性に秀れることになる。
【0051】
また、本実施例は、空気吸引空間部5から導出された空気がワークWを研磨処理する研磨処理部2に導入される空気循環構造を具備しているから、ワークWを吸引固定する構造を利用して効率良く塵埃Dを誘導して処理することができる。
【0052】
また、本実施例は、ワーク配設部3は、複数の案内ローラー7に巻回される無端ベルト3で構成され、空気吸引空間部5は無端ベルト3の裏面で囲まれた内空間に設けられているから、コンパクトな構造となる。
【0053】
また、本実施例は、空気吸引空間部5は、周壁部5bの内方を互いに交叉連設する縦桟8及び横桟9で適宜区画された構造であり、縦桟8及び前記横桟9により無端ベルト3が支持されるように構成されているから、無端ベルト3における良好なワークWの搬送が行われる。
【0054】
また、本実施例は、ホース6は縦桟8及び横桟9に干渉しない長さに設定されているから、ホース6は広い範囲で暴れ動することができて塵埃Dを良好に除去することができ、しかも、ホース6が破損し難く、更に、この塵埃Dの除去作業に伴い大きな音が生じることもない。
【0055】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0056】
A 空気噴射部
D 塵埃
W ワーク
1 ワーク固定部
3 ワーク配設部・無端ベルト
4 孔
5 空気吸引空間部
5’ 容体
5a 底壁部
5b 周壁部
6 ホース
7 案内ローラー
8 縦桟
9 横桟
20 分岐部
20a バルブ
21 空気供給源