(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】アタッチメント
(51)【国際特許分類】
F16L 23/032 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
F16L23/032
(21)【出願番号】P 2020191322
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520452345
【氏名又は名称】福井高圧ホース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002413
【氏名又は名称】特許業務法人ベリーベスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳宏
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04225161(US,A)
【文献】米国特許第02831708(US,A)
【文献】特開平06-229489(JP,A)
【文献】中国実用新案第207316286(CN,U)
【文献】米国特許第04874190(US,A)
【文献】実開昭57-033381(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/02
F16L 23/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さと外径の第1フランジ部を有する第1油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して締結する
第1油圧ホース継手用の一対のスプリットフランジにより、第1フランジ部より低い高さと小さい外径の第2フランジ部を有する第2油圧ホース継手を互換性を持たせて、相手部材の接続面に押圧して締結するために、
前記スプリットフランジのフランジ部押さえ面の深さ及び直径と、前記第2フランジ部の高さ及び外径との差によって生じる空隙を埋めて緊結可能とするアタッチメントであって、
前記空隙の形状に合わせた形状を備えていること
を特徴とする、アタッチメント。
【請求項2】
前記フランジ部押さえ面の深さと前記第2フランジ部の高さとの略差分の高さと、前記フランジ部押さえ面の直径と略同一の外径とを備え、同心円状の開口を有する円板と、
前記第2フランジ部の高さと略同一の高さと、前記フランジ部押さえ面の直径と略同一の外径と、前記フランジ部押さえ面の直径と第2フランジ部の外径との略差分の厚さとを備える円環状の周壁と、
が一体に形成されていることを特徴とする、請求項1記載のアタッチメント。
【請求項3】
前記同心円状の開口の直径は、前記
第1油圧ホース継手
又は第2油圧ホース継手の油圧通路と略同一であり、
前記円板の前記第2フランジ部に対面する面上周縁に前記円環状の周壁が立設され、
前記第2フランジ部と前記相手部材の接続面との間に挿入されること
を特徴とする、請求項2記載のアタッチメント。
【請求項4】
前記円板の前記相手部材の接続面と対面する面上に、Oリングを埋設可能な同心円状の溝が形成されていること
を特徴とする、請求項3記載のアタッチメント。
【請求項5】
前記同心円状の開口の直径は、前記
第2油圧ホース継手のニップル部の外径と略同一であり、
前記円板の前記第2フランジ部と接触する面上周縁に前記円環状の周壁が立設され、
前記フランジ部押さえ面と前記第2フランジ部との間に挿入されること
を特徴とする、請求項2記載のアタッチメント。
【請求項6】
前記アタッチメントが2分割されていること
を特徴とする、請求項5記載のアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の油圧制御に用いる高圧ホースを、フランジ部を有する油圧ホース継手でスプリットフランジにより相手部材の接続面に押圧して締結するためのアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル(バックホー)やクローラクレーン等の建設機械の油圧回路は、油タンク、油圧ポンプ、コントロールバルブ、及び油圧アクチュエータ(油圧モータ、油圧シリンダー)からなる油圧機器で構成され、それぞれの油圧機器間は、高圧ホースで接続されている。
【0003】
建設機械の油圧回路は、原動機で油圧ポンプを駆動することにより、油タンクから油を機械的に吸い上げ、コントロールバルブに向けて送り出す。コントロールバルブは、送り出された油の流体エネルギー(すなわち、流量や流速)を制御しながら油圧アクチュエータに送り込むことにより、旋回(油圧モータ)や往復(油圧シリンダー)といった機械的運動をさせ、建設機械に仕事を行わせる。
【0004】
油の流体エネルギーを油圧機器間で効率よく伝えるためには、油漏れが生じないようにすることが肝要である。油圧機器と高圧ホースとを緊結する構造として、フランジ部を有する油圧ホース継手とスプリットフランジとの組み合わせが中大型建設機械で主に採用されており、米国の自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers, Inc.)のSAE規格J518[Code61(3000psi)、Code62(6000psi)]、世界で圧倒的なシェアを誇る米国キャタピラー社のCAT規格(SAE-J518の一部にもなっている)や国内最大手のコマツ株式会社のKES規格で規定された製品等、複数種類が流通している(例えば、非特許文献1)。
【0005】
非特許文献1の「2.フランジFlange Coupling」には、SAEスタンダード(3000)シリーズ4タイプ、SAEハイプレッシャー(6000)シリーズ4タイプ、KESタイプシリーズ3タイプ、及びCATタイプシリーズ6タイプの金具寸法が、使用する高圧ホース(ミリ呼称)径と継手のヘッド(ダッシュ呼称)サイズごとに紹介されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】住友理工株式会社,「GRM GX金具寸法表 INDEX」,「2.フランジ Flange Coupling」,11p~27p,[online],ハイテック株式会社,[令和2年11月12日検索],インターネット<URL:https://www.hitec-hose.co.jp/cms2/wp-content/uploads/2018/02/061a215b927d04608c0a64fcdbd45579.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同じ高圧ホース(ミリ呼称)径に用いる同じヘッド(ダッシュ呼称)サイズのものでも、寸法の異なる複数種類の油圧ホース継手が存在するため、高圧ホース周りで油漏れが発生しても、同じ仕様の油圧ホース継手で端末処理された高圧ホースにすぐに交換できない場合、建設機械の作業できない期間が生じ、工事が長期化するといった不具合が起きていた。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、別仕様のフランジ部を有する油圧ホース継手で処理された高圧ホースしか手元にない場合でも、仕様の異なる油圧ホース継手の寸法差によってスプリットフランジのフランジ部押さえ面との間に生じる空隙を埋め、油漏れすることなく緊結可能とするアタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のアタッチメントは、所定の高さと外径の第1フランジ部を有する第1油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して締結する第1油圧ホース継手用の一対のスプリットフランジにより、第1フランジ部より低い高さと小さい外径の第2フランジ部を有する第2油圧ホース継手を互換性を持たせて、相手部材の接続面に押圧して締結するために、前記スプリットフランジのフランジ部押さえ面の深さ及び直径と、前記第2フランジ部の高さ及び外径との差によって生じる空隙を埋めて緊結可能とするアタッチメントであって、前記空隙の形状に合わせた形状を備えている。
【0010】
請求項2に記載のアタッチメントは、前記フランジ部押さえ面の深さと前記第2フランジ部の高さとの略差分の高さと、前記フランジ部押さえ面の直径と略同一の外径とを備え、同心円状の開口を有する円板と、前記第2フランジ部の高さと略同一の高さと、前記フランジ部押さえ面の直径と略同一の外径と、前記フランジ部押さえ面の直径と第2フランジ部の外径との略差分の厚さとを備える円環状の周壁と、が一体に形成されていることにより、第1フランジ部との組み合わせで使用していた一対のスプリットフランジのフランジ部押さえ面と第2フランジ部との間に生じる空隙に当該アタッチメントを挿入することで空隙を埋めることを可能とし、その結果、第2フランジ部を有する油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して緊結することができる。
【0011】
請求項3に記載のアタッチメントは、前記同心円状の開口の直径は、前記第1油圧ホース継手又は第2油圧ホース継手の油圧通路と略同一であり、前記円板の前記第2フランジ部に対面する面上周縁に前記円環状の周壁が立設され、前記第2フランジ部と前記相手部材の接続面との間に挿入されることにより、油圧通路の摩擦抵抗を最小限に抑えつつ、手間をかけずに確実に、第2フランジ部を有する油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して緊結することができる。
【0012】
請求項4に記載のアタッチメントは、前記円板の前記相手部材の接続面と対面する面上に、Oリングを埋設可能な同心円状の溝が形成されていることにより、Oリングを相手部材の接続面との間に埋設することができ、その結果、さらに確実に、第2フランジ部を有する油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して緊結することができる。
【0013】
請求項5に記載のアタッチメントは、前記同心円状の開口の直径は、前記第2油圧ホース継手のニップル部の外径と略同一であり、前記円板の前記第2フランジ部と接触する面上周縁に前記円環状の周壁が立設され、前記フランジ部押さえ面と前記第2フランジ部との間に挿入されることにより、油圧通路の摩擦抵抗を一切増やすことなく、確実に、第2フランジ部を有する油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して緊結することができる。
【0014】
請求項6に記載のアタッチメントは、前記アタッチメントが2分割されていることにより、さらに手間をかけずに確実に、第2フランジ部を有する油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して緊結することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の高さと外径の第1フランジ部を有する第1油圧ホース継手を相手部材の接続面に押圧して締結する一対のスプリットフランジにより、第1フランジ部より低い高さと小さい外径の第2フランジ部を有する第2油圧ホース継手を互換性を持たせて、相手部材の接続面に押圧して締結するために、前記スプリットフランジのフランジ部押さえ面の深さ及び直径と、前記第2フランジ部の高さ及び外径との差によって生じる空隙を埋めて緊結可能とするアタッチメントであって、前記空隙の形状に合わせた形状を備えている構成により、仕様の異なるフランジ部を有する油圧ホース継手の寸法差によってスプリットフランジのフランジ部押さえ面との間に生じる空隙を埋め、油漏れすることなく緊結可能とするアタッチメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係るアタッチメントの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るアタッチメントを用いた締結例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2に係るアタッチメントを用いた締結例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1に用いる油圧ホース継手及びスプリットフランジの構造例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2に用いる油圧ホース継手及びスプリットフランジの構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
図1から
図5は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表し、基本的構成及び動作は同様であるものとする。
【実施例1】
【0018】
図1、
図2及び
図4を用いて実施例1に係るアタッチメントの構成例を説明する。
まず、実施例1に係るアタッチメントについて説明する前に、一般に、フランジ部を有する油圧ホース継手で端末処理された高圧ホースをスプリットフランジにより相手部材の接続面に押圧して締結する締結例を、
図2(A)を用いて説明する。
【0019】
図2(A)は、第1油圧ホース継手1(1a)をスプリットフランジ3により相手部材7の接続面8にボルト4で押圧して締結した場合のE-E線片側断面構造例である。
図2(A)では、第1油圧ホース継手1(1a)の第1フランジ部11(11a)を相手部材7の接続面8に接触させた後、第1フランジ部11(11a)の周囲を左右から一対のスプリットフランジハーフ31、32で覆ったうえ、4本のボルト4でスプリットフランジ3(スプリットフランジハーフ31、32)を押圧して締結されている。スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36が第1フランジ部11(11a)を、Oリング5を変形させながら接続面8に押圧するので、接続面8でのシール性が確保される。
【0020】
つぎに、
図2(A)で説明した、第1油圧ホース継手1(1a)及びスプリットフランジ3について、
図4(A)及び(C)を用いてそれぞれの構造例を説明する。
本実施例では、第1油圧ホース継手1(1a)及びスプリットフランジ3としてCATタイプを想定している。
【0021】
図4(A)は、本発明の実施例1に用いる第1油圧ホース継手1(1a)のA-A線片側断面構造例である。
第1油圧ホース継手1(1a)は、一般に、第1フランジ部11(11a)、ニップル部12、スリーブ13、油圧通路14及びOリング溝15から構成されている。ニップル部12の基端部に第1フランジ部11(11a)が設けられ、ニップル部12の先端側外周にスリーブ13が設けられている。
第1フランジ部11(11a)は、その底面にOリング溝15が設けられ、Oリング5をOリング溝15に埋設することで、相手部材とのシール性を確保する構造になっている。
スリーブ13は、その端部の折れ曲り部131がニップル部12上に設けられた2つの環状突起121の間に嵌入されている。ニップル部12外周とスリーブ13内周との間に形成される環状空隙に油圧ホース2がニップル部12先端側から基端部側に向けて嵌挿され、加締め部132で加締められることにより、油圧ホース2がニップル部12に密着固定され、ニップル部12の複数の環状テーパ溝122と油圧ホース2とが密着することによりシール性が確保されている。
ニップル部12の先端から第1フランジ部11(11a)に亘りニップル部12の内周側に油圧通路14が設けられていることにより、油圧ホース2内を通ってきた油が漏れることなくニップル部12内を通過する。
【0022】
図4(C)は、本発明の実施例1に用いるスプリットフランジ3の構造例である。
スプリットフランジ3は、一対のスプリットフランジハーフ31、32から構成され、第1油圧ホース継手1(1a)のニップル部12が軸方向中央部に貫通する開口34を上面33側に有し、底面37側に第1油圧ホース継手1(1a)の第1フランジ部11(11a)に接触するフランジ部押さえ面36が形成されている。
そして、第1油圧ホース継手1(1a)の第1フランジ部11(11a)をスプリットフランジ3で相手部材の接続面に押圧して固定するため、上面33から底面37に貫通するボルト穴35が上下左右対称の4カ所に設けられている。
スプリットフランジ3は、分割部38でスプリットフランジハーフ31、32に分割されている。本発明の実施例1では、
図4(C)の平面図において、向かって左上から右下に対角線状に分割部38が形成されている。
【0023】
つづいて、第2油圧ホース継手1(1b)について、
図4(B)を用いて説明する。本実施例では、第2油圧ホース継手1(1b)としてKESタイプを想定している。
図4(B)は、本発明の実施例1に用いる第2油圧ホース継手1(1b)のB-B線片側断面構造例である。
第2油圧ホース継手1(1b)は、フランジ部11の高さ及び外径が異なる点以外、
図4(A)に示す第1油圧ホース継手1(1a)の構造と同様である。すなわち、第2フランジ部11(11b)の高さfh2が第1フランジ部11(11a)の高さfh1より低く、第2フランジ部11(11b)の外径fφ2が第1フランジ部11(11a)の外径fφ1より小さい。具体的数値例を、
図4(D)に示す。
【0024】
図4(D)は、本発明の実施例1に用いる油圧ホース継手1(1a、1b)及びスプリットフランジ3の具体的寸法例(カタログ値)を示す図である。
本実施例では、ホース(ミリ呼称)径25、ヘッド(ダッシュ呼称)サイズ16の場合の寸法例を示す。
【0025】
図4(D)から、第1フランジ部11(11a)の外径fφ1は47.6mm、第2フランジ部11(11b)の外径fφ2は44.5mmで、その差は3.1mmとなる。また、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36の直径SFφは47.9mmで、第2フランジ部11(11b)の外径fφ2との差は3.4mmとなる。
なお、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36の直径SFφが47.9mmに対して、第1フランジ部11(11a)の外径fφ1が47.6mmと、0.3mm小さいのは、ボルトで締結する際の組立裕度を考慮した仕様である。
【0026】
また、第1フランジ部11(11a)の高さfh1は14.22mm、第2フランジ部11(11b)の高さfh2は8mmで、その差は6.22mmとなる。また、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36の深さSFdは13.5mmで、第2フランジ部11(11b)の高さfh2との差は5.5mmとなる。
なお、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36の深さSFdの13.5mmに対して、第1フランジ部11(11a)の高さfh1が14.22mmと、0.72mm高いのは、ボルトで押圧して締結する際にスプリットフランジ3の底面37周縁側が変形して接続面8に接触する結果、第1フランジ部11(11a)の軸周囲から軸中心に向けて押圧力が確実に加わるように考慮した仕様である。
【0027】
また、ホース(ミリ呼称)径25の実内径は25.4mmなので、ニップル部12の肉厚を考慮すると、第1油圧ホース継手1(1a)の油圧通路14の内径pφ1及び第2油圧ホース継手1(1b)の油圧通路14の内径pφ2は、いずれも20mmである。
なお、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36の内径Spφは、フランジ部11の上面を確実に押圧できるように、第1フランジ部11(11a)の外径fφ1及び第2フランジ部11(11b)の外径fφ2よりも小さく、かつニップル部12の外径が通過できるように、39.4mmとなっている。
【0028】
このように、第1フランジ部11(11a)より低い高さと小さい外径の第2フランジ部11(11b)を有する第2油圧ホース継手1(1b)をスプリットフランジ3で締結した場合について、
図2(B)及び(C)を用いて説明する。
図2(B)は、
図4(B)に示す第2油圧ホース継手1(1b)を
図4(C)に示すスプリットフランジ3により相手部材の接続面にボルトで押圧して締結した場合のF-F線片側断面構造例である。
図2(A)と同様に、第2油圧ホース継手1(1b)の第2フランジ部11(11b)を相手部材7の接続面8に接触させて、スプリットフランジ3(スプリットフランジハーフ31、32)を介して4本のボルト4で締結しても空隙9が生じ、第2フランジ部11(11b)を接続面8に固定できないため、接続面8でのシール性を確保できない。
【0029】
図2(C)は、
図2(B)において、
図1(A)に示す本発明の実施例1に係る環状型アタッチメント6(6a)を、第2油圧ホース継手1(1b)の基端側と接続面8との間に挿入した場合のG-G線片側断面構造例である。
図2(B)に生じていた空隙9を環状型アタッチメント6(6a)で完全に埋めることにより、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36が第2フランジ部11(11b)を、第2フランジ部11(11b)底面のOリング5に加え、環状型アタッチメント6(6a)底面のOリング5を変形させながら接続面8に押圧するので、接続面8でのシール性が確実に確保される。
【0030】
この環状型アタッチメント6(6a)について、
図1(A)を用いて説明する。
図1(A)は、本発明の実施例1に係るアタッチメント6(6a)の構成例を示す図である。
図1(A)に示す環状型アタッチメント6(6a)は、円板63、開口64、周壁65及びOリング溝66から構成されている。環状型アタッチメント6(6a)は、円板63の中央に同心円状に開口64を有し、円板63の第2フランジ部に対面する面上周縁に周壁65が立設され、円板63の相手部材の接続面と対面する面上に同心円状にOリング溝66が設けられている。具体的な寸法値例を
図1(C)に示す。
【0031】
図1(C)は、本発明の実施例に係るアタッチメント6(6a、6b)各部の具体的な寸法値例を示す図である。
図1(C)のアタッチメント6(6a)列は、環状型アタッチメント6(6a)の各部の具体的な寸法値例である。
環状型アタッチメント6(6a)の外径Atφは、第1フランジ部11(11a)の外径fφ1と等しく47.6mmで、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36の直径SFφの47.9mmより小さいのは、前述した組立裕度の仕様を考慮した。
また環状型アタッチメント6(6a)の円板63の高さΔh1は、第1フランジ部11(11a)の高さfh1と第2フランジ部11(11b)の高さfh2との差に等しい6.22mmで、スプリットフランジ3のフランジ部押さえ面36の深さSFdと第2フランジ部11(11b)の高さfh2との差5.5mmより大きいのは、前述したように第2フランジ部11(11b)の軸周囲から軸中心に向けて押圧力が確実に加わるように仕様を考慮した。
さらに環状型アタッチメント6(6a)の周壁65の厚さΔφは、第1フランジ部11(11a)の外径fφ1と第2フランジ部11(11b)の外径fφ2との差3.1mmの1/2に等しく1.55mmで、周壁65の高さΔh2は、第2フランジ部11(11b)の高さfh2と等しく8mmである。
そして、環状型アタッチメント6(6a)の開口64の直径Opφは、油圧通路の摩擦抵抗を最小限に抑えるために、油圧ホース継手1(1a、1b)の油圧通路14の内径pφ1及びpφ2に等しく、20mmである。
【0032】
このように、本発明の実施例1によれば、上記構成を採用することで、仕様の異なるフランジ部を有する油圧ホース継手の寸法差によってスプリットフランジのフランジ部押さえ面との間に生じる空隙を手間をかけずに確実に埋め、油漏れすることなく緊結可能とするアタッチメントを提供することができる。
また本発明の実施例1では、ホース(ミリ呼称)径25、ヘッド(ダッシュ呼称)サイズ16の場合について説明してきたが、異なるホース(ミリ呼称)径及びヘッド(ダッシュ呼称)サイズの場合についても同様な環状型アタッチメント6(6a)を製作し、同様な効果が得られることは言うまでもない。
【実施例2】
【0033】
つぎに、
図1、
図3及び
図5を用いて本発明の実施例2に係るアタッチメントの構成例を説明する。
本実施例では、第1油圧ホース継手1’(1’a)及びスプリットフランジ3’としてSAEハイプレッシャー(6000)タイプを想定している。
図3(A)は、第1油圧ホース継手1’(1’a)をスプリットフランジ3’により相手部材の接続面にボルトで押圧して締結した場合のH-H線片側断面構造例である。基本的な締結構造は、実施例1の
図2(A)と同一であるため、それらについての説明は省略する。
実施例1と同様に、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36が第1フランジ部11’(11’a)を、Oリング5を変形させながら接続面8に押圧するので、接続面8でのシール性が確保される。
【0034】
つぎに、
図3(A)で説明した、第1油圧ホース継手1’(1’a)及びスプリットフランジ3’について、
図5(A)及び(C)を用いてそれぞれの構造例を説明する。
【0035】
図5(A)は、本発明の実施例2に用いる第1油圧ホース継手1’(1’a)のC-C線片側断面構造例である。
図5(C)は、本発明の実施例2に用いるスプリットフランジ3’の構造例である。
本実施例の第1油圧ホース継手1’(1’a)及びスプリットフランジ3’の基本的な構成及び機能は実施例1における
図4(A)の第1油圧ホース継手1(1a)及び
図4(C)のスプリットフランジ3と同一であるため、それらについての説明は省略する。
スプリットフランジ3’は、
図4(C)のスプリットフランジ3が対角線状に形成された分割部38により分割されているスプリットフランジハーフ31、32から構成されているのに対して、
図5(C)の平面図において、垂線方向に形成された分割部38により分割されているスプリットフランジハーフ31’、32’から構成されている点において差異がある。
【0036】
つづいて、第2油圧ホース継手1’(1’b)について、
図5(B)を用いて説明する。本実施例では、第2油圧ホース継手1’(1’b)としてSAEスタンダード(3000)タイプを想定している。
図5(B)は、本発明の実施例2に用いる第2油圧ホース継手1’(1’b)のD-D線片側断面構造例である。
本実施例の第2油圧ホース継手1’(1’b)の構成及び機能は第1油圧ホース継手1’(1’a)と同様であり、第2フランジ部11’(11’b)の高さfh2が第1フランジ部11’(11’a)の高さfh1より低く、第2フランジ部11’(11’b)の外径fφ2が第1フランジ部11’(11’a)の外径fφ1より小さい。具体的数値例を、
図5(D)に示す。
【0037】
図5(D)は、本発明の実施例2に用いる油圧ホース継手1’(1’a、1’b)及びスプリットフランジ3’の具体的寸法例(カタログ値)を示す図である。
本実施例では、ホース(ミリ呼称)径25、ヘッド(ダッシュ呼称)サイズ20の場合の寸法例を示す。
【0038】
図5(D)から、第1フランジ部11’(11’a)の外径fφ1は54mm、第2フランジ部11’(11’b)の外径fφ2は50.8mmで、その差は3.2mmとなる。また、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36の直径SFφは54.8mmで、第2フランジ部11’(11’b)の外径fφ2との差は4mmとなる。
なお、第1フランジ部11’(11’a)の外径fφ1が54mmと、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36の直径SFφの54.8mmより0.8mm小さいのは、ボルトで締結する際の組立裕度を考慮した仕様である。
【0039】
第1フランジ部11’(11’a)の高さfh1は10.3mm、第2フランジ部11’(11’b)の高さfh2は8mmで、その差は2.3mmとなる。また、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36の深さSFdは平均9.78(9.65~9.91)mmで、第2フランジ部11’(11’b)の高さfh2との差は平均1.78(1.65~1.91)mmとなる。
なお、第1フランジ部11’(11’a)の高さfh1が10.3mmと、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36の深さSFdの平均9.78(9.65~9.91)より平均0.52(0.39~0.65)mm高いのは、押圧力が確実に加わるように考慮した仕様である。
【0040】
ホース(ミリ呼称)径25の実内径は25.4mmと実施例1と同じなので、第1油圧ホース継手1’(1’a)の内径pφ1及び第2油圧ホース継手1’(1’b)の内径pφ2は、いずれも20mmである。
また、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36の内径Spφは第1フランジ部11’(11’a)の外径fφ1及び第2フランジ部11’(11’b)の外径fφ2よりも小さく、かつニップル部12の外径が通過できるように、44.5mmとなっている。
【0041】
このように、第1フランジ部11(11a)より低い高さと小さい外径の第2フランジ部11’(11’b)を有する第2油圧ホース継手1’(1’b)をスプリットフランジ3’で締結した場合について、
図3(B)及び(C)を用いて説明する。
図3(B)は、
図5(B)に示す第2油圧ホース継手1’(1’b)を
図5(C)に示すスプリットフランジ3’により相手部材の接続面にボルトで押圧して締結した場合のI-I線片側断面構造例である。
実施例1の
図2(B)と同様に、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36と第2油圧ホース継手1’(1’b)の第2フランジ部11’(11’b)との間に空隙9が生じ、第2フランジ部11’(11’b)を接続面8に固定できないため、接続面8でのシール性を確保できない。
【0042】
図3(C)は、
図3(B)において、
図1(B)に示す本発明の実施例2に係る分割型アタッチメント6(6b)を、第2油圧ホース継手1’(1’b)の第2フランジ部11’(11’b)とスプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36との間に挿入した場合のJ-J線片側断面構造例である。空隙9を埋めるためにアタッチメント6を挿入する位置関係において、実施例1との構成の差異がある。
図3(B)に生じていた空隙9を分割型アタッチメント6(6b)で完全に埋めることにより、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36が分割型アタッチメント6(6b)を介して第2フランジ部11’(11’b)底面のOリング5を変形させながら接続面8に押圧するので、接続面8でのシール性が確実に確保される。
【0043】
この分割型アタッチメント6(6b)について、
図1(B)を用いて説明する。
図1(B)は、本発明の実施例2に係る分割型アタッチメント6(6b)の構成例を示す図である。
なお、本実施例のアタッチメントの基本的な構成及び機能は、実施例1の
図1(A)の環状型アタッチメント6(6a)と同一であるため、それらについての説明は省略する。
【0044】
図1(B)に示す分割型アタッチメント6(6b)は、分割部67で一対のアタッチメントハーフ61、62に分割されている点、及び円板63と周壁65の位置関係が逆転している点において、実施例1の
図1(A)の環状型アタッチメント6(6a)と構成の差異がある。
図1(C)のアタッチメント6(6b)列は、分割型アタッチメント6(6b)の各部の具体的な寸法値例である。
【0045】
分割型アタッチメント6(6b)の外径Atφは、第1フランジ部11’(11’a)の外径fφ1と等しく54mmで、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36の直径SFφの54.8mmより小さいのは、前述した組立裕度の仕様を考慮した。
また分割型アタッチメント6(6b)の円板63の高さΔh1は、第1フランジ部11’(11’a)の高さfh1と第2フランジ部11’(11’b)の高さfh2との差に等しい2.3mmで、スプリットフランジ3’のフランジ部押さえ面36の深さSFdと第2フランジ部11’(11’b)の高さfh2との差平均1.78(1.65~1.91)mmより大きいのは、前述したように第2フランジ部11’(11’b)の軸周囲から軸中心に向けて押圧力が確実に加わるように仕様を考慮した。
さらに分割型アタッチメント6(6b)の周壁65の厚さΔφは、第1フランジ部11’(11’a)の外径fφ1と第2フランジ部11’(11’b)の外径fφ2との差3.2mmの1/2に等しく1.6mmで、周壁65の高さΔh2は、第2フランジ部11’(11’b)の高さfh2と等しく8mmである。
そして、分割型アタッチメント6(6b)の開口64の直径Opφは、第2油圧ホース継手1(1b)のニップル部12が軸方向に通過可能なように、ニップル部12の外径にほぼ等しいか、組立裕度を考慮してわずかに大きくし、かつスプリットフランジ3’の内径Spφ=44.5mmより小さくすることから、例えば43mmとなる。
【0046】
このように、本発明の実施例2によれば、上記構成を採用することで、油圧通路の摩擦抵抗を一切増やすことなく、仕様の異なるフランジ部を有する油圧ホース継手の寸法差によってスプリットフランジのフランジ部押さえ面との間に生じる空隙を手間をかけずに確実に埋め、油漏れすることなく緊結可能とするアタッチメントを提供することができる。
また本発明の実施例2では、ホース(ミリ呼称)径25、ヘッド(ダッシュ呼称)サイズ20の場合について説明してきたが、異なるホースサイズ及びヘッドサイズの場合についても分割型アタッチメント6(6b)を製作し、同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0047】
以上、本発明のアタッチメントについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態又は他の実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【0048】
例えば、本発明の実施例1によれば、第1油圧ホース継手1(1a)及びスプリットフランジ3としてCATタイプを、第2油圧ホース継手1(1b)としてKESタイプを想定しているが、KESタイプの第2フランジ部11(11b)の外径fφ2及び高さfh2は、同一のホース(ミリ呼称)径およびヘッド(ダッシュ呼称)サイズの場合、実施例2のSAEスタンダード(3000)タイプの外径fφ2及び高さfh2と等しいので、KESタイプの代わりにSAEスタンダード(3000)タイプの第2油圧ホース継手1’(1’b)と本発明の環状型アタッチメント6(6a)を用いてCATタイプの第1油圧ホース継手1(1a)を代用することが可能である。
【0049】
同様に、本発明の実施例2によれば、KESタイプの第2油圧ホース継手1(1b)と分割型アタッチメント6(6b)を用いてSAEハイプレッシャー(6000)タイプの第1油圧ホース継手1’(1’a)を代用することが可能である。
【0050】
さらに、本発明の実施例によれば、同一のホース(ミリ呼称)径およびヘッド(ダッシュ呼称)サイズの場合、CATタイプの第1油圧ホース継手1(1a)とSAEハイプレッシャー(6000)タイプの第1油圧ホース継手1’(1’a)の外径fφ1は等しく、フランジ部の高さfhのみが異なるので、アタッチメント6を周壁65を設けない円板63のみの構成として、その外径Atφを外径fφ1と等しく、開口64の直径Opφをニップル部12の外径が通過可能な大きさとし、厚さΔhをフランジ部の高さfhの差に等しくしてもよい。このようなサイズのアタッチメントは、SAEハイプレッシャー(6000)タイプの第1油圧ホース継手1’(1’a)と組み合わせることにより、CATタイプの第1油圧ホース継手1(1a)を代用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 油圧ホース継手
1’ 油圧ホース継手
1(1a) 第1油圧ホース継手
1(1b) 第2油圧ホース継手
1’(1’a) 第1油圧ホース継手
1’(1’b) 第2油圧ホース継手
2 油圧ホース
3 スプリットフランジ
3’ スプリットフランジ
31 スプリットフランジハーフ
32 スプリットフランジハーフ
31’ スプリットフランジハーフ
32’ スプリットフランジハーフ
33 上面
34 開口
35 ボルト穴
36 フランジ部押さえ面
37 底面
38 分割部
4 ボルト
5 Oリング
6 アタッチメント
6(6a) 環状型アタッチメント
6(6b) 分割型アタッチメント
61 アタッチメントハーフ
62 アタッチメントハーフ
63 円板
64 開口
65 周壁
66 Oリング溝
67 分割部
7 相手部材
8 接続面
9 空隙
11 フランジ部
11’ フランジ部
11(11a) 第1フランジ部
11(11b) 第2フランジ部
11’(11’a) 第1フランジ部
11’(11’b) 第2フランジ部
12 ニップル部
121 環状突起
122 環状テーパ溝
13 スリーブ
131 折れ曲り部
132 加締め部
14 油圧通路
15 Oリング溝