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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】管と容器の断熱装置と断熱方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/06 20060101AFI20220901BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20220901BHJP
   F16L 59/14 20060101ALI20220901BHJP
   F16L 9/18 20060101ALI20220901BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
F16L59/06
F16L59/065
F16L59/14
F16L9/18
B65D81/38 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021198641
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2022-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517271935
【氏名又は名称】前田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 和幸
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-525483(JP,A)
【文献】特開昭59-217086(JP,A)
【文献】実開昭51-001817(JP,U)
【文献】特開2006-153245(JP,A)
【文献】特開平09-126389(JP,A)
【文献】特開2004-020027(JP,A)
【文献】特開平11-056649(JP,A)
【文献】特開2020-122568(JP,A)
【文献】特開昭52-056437(JP,A)
【文献】実開昭57-082288(JP,U)
【文献】特開平10-288293(JP,A)
【文献】特開2008-106879(JP,A)
【文献】特開平06-201078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0235100(US,A1)
【文献】米国特許第6403180(US,B1)
【文献】米国特許第6634390(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134556(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0237084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/06
F16L 59/065
F16L 59/14
F16L 9/18
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管又は容器の外周部にU字管状に設置し、その外周を板状の物質で覆うという構造にすることにより、管又は容器の外周部に、U字管状に設置された中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管又は容器の表面と、管又は容器の外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層により、管を流動する物質又は容器内部にある物質との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする管又は容器の断熱装置。
【請求項2】
内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管又は容器の外周部にU字管状に設置し、その外周を板状の物質で覆うという方法を用いることにより、管又は容器の外周部に、U字管状に設置された中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管又は容器の表面と、管又は容器の外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層により、管を流動する物質又は容器内部にある物質との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする管又は容器の断熱方法。
【請求項3】
内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管又は容器の外周部にU字管状に設置し、その外周を板状の物質で覆い、管又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、管又は容器の表面と両端が閉じられた板状の物質との間に形成された密閉空間を真空にすることにより、管又は容器の外周部に、U字管状に設置された中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される真空断熱層により、管を流動する物質又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする、請求項1に記載された管又は容器の断熱装置。
【請求項4】
内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管又は容器の外周部にU字管状に設置し、その外周を板状の物質で覆い、管又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、管又は容器の表面と両端が閉じられた板状の物質との間に形成された密閉空間を真空にするという方法を用いることにより、管又は容器の外周部に、U字管状に設置された中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される真空断熱層により、管を流動する物質又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする、請求項2に記載された管又は容器の断熱方法。
【請求項5】
管又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質をU字管状に設置し、U字管状に設置した物質の外周を板状の物質で覆うという構造にすることにより、管又は容器の外周部に、管又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、U字管状に設置された中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管又は容器の外周を覆っている板状の物質の表面と、その外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層により、管を流動する物質又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする、請求項1又は請求項3に記載された管又は容器の断熱装置。
【請求項6】
管又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質をU字管状に設置し、U字管状に設置した物質の外周を板状の物質で覆うという方法を用いることにより、管又は容器の外周部に、管又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、U字管状に設置された中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管又は容器の外周を覆っている板状の物質の表面と、その外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層により、管を流動する物質又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする、請求項2又は請求項4に記載された管又は容器の断熱方法。
【請求項7】
管又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質をU字管状に設置し、U字管状に設置した物質の外周を板状の物質で覆い、管又は容器の外周を覆っている板状の物質と、その外周に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、この密閉空間を真空にすることにより、管又は容器の外周部に、管又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層、管又は容器の表面を覆っている板状の物質とその外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に真空断熱層を形成し、管を流動する物質又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする、請求項1又は請求項3に記載された管又は容器の断熱装置。
【請求項8】
管又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質をU字管状に設置し、U字管状に設置した物質の外周を板状の物質で覆い、管又は容器の外周を覆っている板状の物質と、その外周に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、この密閉空間を真空にするという方法を用いることにより、管又は容器の外周部に、管又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層、管又は容器の表面を覆っている板状の物質とその外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に真空断熱層を形成し、管を流動する物質又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるとともに、既存の管又は容器の外周に分割して設置し、これを結合することが可能になることを特徴とする、請求項2又は請求項4に記載された管又は容器の断熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管や容器の外周を二重構造としてその内部を真空にすることにより、断熱効果が格段に向上することはよく知られている。しかし、容器内を真空にすると二重構造にした管や容器の表面とそれを覆う構造物で構成される空間の内圧が低下するため、二重構造にした管や容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物に作用する圧力によって二重構造にした管や容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形する可能性がある。これを防止するためには二重構造にした管や容器の表面とそれを覆う構造物との間に新たな構造物を挿入して、これに支柱の役割を持たせることにより、管や容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形するのを防止する措置がとられている。
例えば、特許文献1には「管において、断熱層を構成する二重筒の間の空間に設ける断面円形の金属線材スペーサを、内管に螺旋状に巻き付ける技術」が記載されている。
また、特許文献2には「容器の周囲に、閉じた二重管を設けることにより真空槽を形成し、容器の外周に断面円形の金属製ワイヤ又は金網を巻き付けて真空層の構造を維持する技術」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-144740号公報
【文献】特開2002-228055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、管や容器の外周を二重構造としてその内部を真空にすることにより断熱効果が格段に向上するが、二重構造にした管や容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形する可能性があるため、これを防止するために、特許文献に記載されているように、「管や容器の外側(真空層の内部)に断面円形の長尺物をらせん状に巻き付ける」などの新たな技術と方法が必要になるが、この他にも次に示すような事項を考慮する必要があるため、特殊な、付加価値の高い用途以外にこの方法を用いることは困難である。
(1)真空に耐える強度を得るには、管や容器の表面を構成する材料の強度を通常よりも向上させる必要があるため、この方法を用いるには、管や容器そのものの設計変更が必要になる場合がある。
(2)管や容器の表面を構成する材料の強度を向上させることにより、一般に製造コストが高くなるとともに、重量が増す。
(3)二重構造物の変形を防止するために「管や容器の外側(真空層の内部)に断面円形の長尺物をらせん状に巻き付ける」などの方法を用いた場合、らせん状に巻き付ける物質の重量が加算されることになる。
(4)何らかの理由により二重構造にした管や容器の表面とそれを覆う構造物で形成される密閉空間の気密性が損なわれると、断熱効果が大幅に低下する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、下記の要素を備えた、既存の管や容器にも設置可能な、汎用性が高く、容積や重量の増加も比較的少ない構造を持つ真空断熱構造以外の断熱装置と、管や容器の設計変更をすることなく、既存の管や容器にも設置可能な真空断熱構造を有する断熱装置と方法を提供することを目的とする。
(1)管や容器の構造物(表面を構成する材料)を含む二重の真空構造としないことにより、既存の管や容器がそのまま使用できる。
(2)管や容器の外側に設置するらせん状に巻き付ける断面円形の長尺物などの構造物として、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の軽量物質を用いることにより、断熱効果が高くなるとともに、重量が軽減される。
(3)管や容器の表面を、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質で覆い、その周囲にらせん状に巻き付ける断面円形の長尺物などを設置し、さらにその周囲を表面に凹及び、又は凸がある板状の物質で覆うという構造を用いることにより、管や容器の外周に二重の断熱層を形成することにより、断熱効果を高めることが可能となる。
(4)管や容器の表面を、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質で覆い、その周囲にらせん状に巻き付ける断面円形の長尺物などを設置し、さらにその周囲を表面に凹及び、又は凸がある板状の物質で覆うとともに、管や容器の表面を覆った表面に凹及び、又は凸がある板状の物質と、その周囲にらせん状に巻き付ける断面円形の長尺物などの周囲を覆った表面に凹及び、又は凸がある板状の物質とで形成される空間の両端を閉じてその内部を真空にすることにより、更に断熱効果を高めることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
熱力学の第2法則「熱エネルギーは温度の高いところから低いところへ流れる」により、管を流れる流体や容器内の物質の温度(TH:Temperature High)が周囲の温度(TL:Temperature Low)よりも高いと、熱量(熱エネルギー)が管や容器を構成する物質を通して周囲に移動し、管を流れる流体や容器内の物質の温度は、この熱量に比例して低下する。
単位時間あたりの移動熱量をQとすると、Qは熱伝導率(CT:Coefficient of Thermal Conductivity)、温度差(TH-TL)、伝熱面積(HS:Heat-transfer Surface)に比例し、移動距離(D:Distance)に反比例する。このため、同じ形状の管や容器において、熱伝導率CTと伝熱面積HSが同じとすると、管や容器内にある物質の温度が高いほど移動熱量Qが大きくなり、急激に温度が低下することになる。管を流れる流体や容器内の物質と周囲とに発生する熱の移動(温度低下)を防止するためには、管を流れる流体や容器内の物質と周囲との間に、熱伝導率CTの値が小さく、移動距離Dの値が大きな断熱層を形成することにより、管や容器から周囲に移動する(放出される)移動熱量Qの値を小さくすることができる。
【0007】
請求項1に記載の発明は、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置し、その外周を板状の物質で覆うという構造にして、管及び、又は容器の外周部に、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管及び、又は容器の表面と管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置された円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層により、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構造を有する装置において、中空で円筒状の物質の内部に満たされた気体の圧力を大気圧以上にすることにより、耐圧で柔軟性のある物質の内部に気体を大気圧以上の圧力で充填することになり、外圧に耐える強度を持たせることが可能となる。その例としては、柔軟性のある中空で円筒状の物質を密閉構造とし、その内部の圧力を約2気圧にすることにより、外圧と衝撃に耐える非常に優れた素材に変化する。
また、管及び、又は容器内部の温度と周囲とに温度差がある場合、材料の熱による膨張及び、又は熱による収縮を考慮する必要がある。これに対応するために、材料の表面に凹及び、又は凸部を設けて、熱による膨張・収縮をこの湾曲部で吸収できる形状にするなどの方法(構造)を用いてもより。このような熱による材料の膨張・収縮に対する対応を行わないと、熱応力が発生し、接合部など強度の弱い部分が破損する可能性がある。
【0009】
管を流れる流体や容器内の物質の温度と周囲の温度に差があると、この温度差に比例した熱量が高温の物質から低温の物質に移動することにより、高温側の物質の温度が低下する。これを防止するには、温度が高い管や容器の表面と温度が低い周囲の間に、熱伝導率が小さい物質で構成される空間を形成するとともに、熱の移動距離を長くすることにより、熱伝導率に比例し移動距離に反比例する熱の移動量をできるだけ少なくする必要がある。請求項1の発明は、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管及び、又は容器の外周部に、らせん状やU字管状などの形状に設置した構造とすることによりこれを具体化したものである。すなわち、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体(例えば空気の場合、300℃における熱伝導率が2.614 x 10-2 [W/mK] )で満たされた中空で円筒状の物質を、管及び、又は容器の外周部に、らせん状やU字管状などの形状に設置した構造とし、中空で円筒状の物質としては、熱伝導率の値と密度が小さい金属や非金属物質を用いることにより、管や容器の周囲に、断熱性に優れた軽量構造の断熱層を形成することが可能となる。具体的な中空で円筒状の物質としては、例えば、管や容器の表面温度が約250℃未満の場合は、耐熱温度が約250℃でその温度付近における熱伝導率が0.24 [W/mK] のフッ素樹脂(PTFE)などの密度が小さな物質を用いることにより、管や容器の外面と周囲の間に、熱伝導率が低い物質を用いた移動距離(中空で円筒状の物質の直径により調整可能となる)を有する軽量の(重量の増加をほとんど伴わない)層を形成することが可能になる。フッ素樹脂(PTFE)の熱伝導率の値は、鉄の80.3 [W/mK](300℃)、ステンレス鋼の16.0 [W/mK]と比較すると非常に小さな値であり、500~1000℃の耐熱温度を有する断熱材の0.2~0.3 [W/mK]と同等の値である。また、管や容器の表面温度が約250℃以上の場合は、中空で円筒状の物質として耐熱金属などを用いることになるが、この場合はできるだけ外径と内径の差(肉厚)と熱伝導率の値が小さい中空で円筒状の物質を用いることにより、重量と熱伝導率の増加を軽減することができる。
なお、中空で円筒状の物質の具体的な形状は円形や楕円形が一般的であるが、管や容器の表面及び断熱層の外周を覆う平板状の物質と接する面積(個体間の伝熱面積)が小さくなるような形状であれば、特に円筒状でなくともよい。
【0010】
請求項2に記載の発明は、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置し、その外周を板状の物質で覆うという方法を用いることにより、管及び、又は容器の外周部に、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管及び、又は容器の表面と管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置された円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層を形成し、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を持たせることができることを特徴とする。
【0011】
管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置し、その外周を板状の物質で覆うという方法の具体的な構造は、板状の物質を管及び、又は容器の外周部に空間を保持して巻き付け、その接合部を溶接、ボルト・ナットなどを用いたネジ止め、接着剤などの方法を用いて密着させることにより、管及び、又は容器の外周部に空間が形成されている状態である。ここで、管及び、又は容器を板状の物質を用いて分割した覆う場合、板状の物質の接合部は複数となるが、全体としては管及び、又は容器の外周部に空間が形成されている状態となる。板状の物質の材料(材質)の選択に際しては、要求される強度、耐熱温度、重量(軽量化の必要性)などの使用条件に対応したものを使用することにより、より高性能な断熱装置とすることが可能になる。
また、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質の具体例としては、管や容器の表面温度が低い(例えば250℃未満)の場合はフッ素樹脂チューブを、管や容器の表面温度が高い(例えば250℃以上)の場合はできるだけ密度と円筒の肉厚が小さい耐熱金属を、らせん状に巻き付けるという構造(方法)を用いてもよい。
【0012】
請求項3に記載の発明は、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置し、その外周を板状の物質で覆い、管及び、又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、管及び、又は容器の表面と両端が閉じられた板状の物質との間に形成された密閉空間を真空にすることにより、管及び、又は容器の外周部に、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管及び、又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される真空断熱層により、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を備えることを特徴とする。
【0013】
管や容器の表面にらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物を設置し、その周囲を表面に例えば凹及び、又は凸がある熱応力に対応可能な板状の物質で覆い、管や容器の外周に断熱層を形成することにより、断熱効果を高めることが可能となる。さらに、管や容器の表面を覆った、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質の両端を閉じて、管や容器の表面と、管や容器の表面を覆った、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質とで構成される空間を密閉空間としてその内部を真空にすることにより、断熱効果を高めることが可能となる。
【0014】
単位時間あたりに移動する熱量をQとすると、Qは熱伝導率CT、温度差(TH-TL)、伝熱面積HSに比例し、移動距離Dに反比例する。請求項1及び2において、熱伝導率の値を小さくすることにより移動熱量Qを低減する装置と方法について記載したが、本請求項における発明は、管や容器の表面と、管や容器の表面を覆った、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質とで構成される空間を密閉空間としてその内部を真空にすることにより、さらに断熱効果を高めることが可能となる。
すなわち、熱の移動は分子間におけるエネルギーの伝達であるので、管や容器の表面と、管や容器の表面を覆った、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質とで構成される空間を密閉空間としてその内部を真空にすることにより、真空度に比例して密閉空間に存在する分子の数が減少するため、熱の移動量はこの空間の真空度に比例して減少する。また、熱の移動は、内部が真空の密閉空間の変形を防止するために管及び、又は容器の表面(外周部)に設置した、らせん状及び、又は連続したU字管状などの形状を持つ中空で円筒状の物質と、その内部にある大気圧以上の圧力を持つ気体の熱伝導率と移動距離及び伝熱面積に比例するため、管及び、又は容器の表面(外周部)に設置した、らせん状及び、又は連続したU字管状などの形状を持つ中空で円筒状の物質の材料として熱伝導率の小さな材料を用いるとともに、その内部を熱伝導率の小さい気体で満たすとともに、らせん状及び、又は連続したU字管状などの形状を持つ中空で円筒状の物質が、管や容器の表面及び管や容器の表面を覆った板状の物質と接触する面積を小さくする(伝熱面積を小さくする)ことによりさらに減少する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を、管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置し、その外周を板状の物質で覆い、管及び、又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、管及び、又は容器の表面と両端が閉じられた板状の物質との間に形成された密閉空間を真空にするという方法を用いることにより、管及び、又は容器の外周部に、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層と、管及び、又は容器の表面と中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される真空断熱層を形成し、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を持たせることができることを特徴とする。
【0016】
管や容器の表面を、熱応力への対応措置が採られた構造を有する、例えば表面に凹及び、又は凸がある板状の物質で覆い、その周囲にらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物を設置し、その周囲を板状の物質で覆い、管や容器の外周に二重の断熱層を形成することにより、断熱効果を高めることが可能となる。さらに、管や容器の表面を覆った板状の物質と、その周囲に設置されたらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物の周囲を覆った板状の物質とで形成される空間の両端を閉じてその内部を真空にすることにより、さらに断熱効果を高めることが可能となる。このように、本発明に記載された方法を用いることにより、例えば、管や容器に内部が圧力を持った気体満たされたフッ素樹脂チューブを、一定間隔でらせん状に巻き付け、その周囲を板状の物質で覆うことにより、周囲に対する強度を持つ、熱伝導率の値が金属の約100分の1、断熱材の約10分の1である大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた断熱層を形成し、高温の管や容器の表面から低温の周囲への熱の移動を大幅に低減することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、管及び、又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を設置し、その外周を板状の物質で覆うという構造として、管及び、又は容器の外周部に、管及び、又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層、管及び、又は容器の表面を覆っている板状の物質とその外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層を形成することにより、管を流動する物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を備えることを特徴とする。
【0018】
管や容器の表面を板状の物質で覆い、その周囲にらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物を設置し、その周囲を板状の物質で覆い、管や容器の外周に二重の断熱層を形成することにより、断熱効果を高めることが可能となる。さらに、管や容器の表面を覆った板状の物質と、その周囲に設置されたらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物の周囲を覆った板状の物質とで形成される空間の両端を閉じてその内部を真空にすることにより、さらに断熱効果を高めることが可能となる。
一般に、管や容器の外周を二重構造としてその内部を真空にすることにより断熱効果が格段に向上するが、二重構造にした管や容器の表面とそれを覆う構造物が変形する可能性があるため、これを防止するためには新たな技術と方法が必要になるため、特殊な、付加価値の高い用途以外にこの方法を用いることは困難である。しかし、例えばエンジンの排気管など温度が500℃を超えるような場合は、管を流動する流体や容器内にある物質と周囲(外気)との温度差が大きくなるため、真空断熱という方法を用いることにより、効果的な断熱が可能となる。また、大気環境浄化に関する規制対応として設置されている排ガス浄化装置の触媒には高価な金属等が用いられており、それを有効に機能させるためには排気系統の温度を高く保持する必要があるため、このような場所に真空断熱を用いることは、特殊な、付加価値の高い用途といえる。
【0019】
管及び、又は容器の表面と両端が閉じられた板状の物質との間に形成された密閉空間を真空にすると二重構造にした管や容器の表面とそれを覆う構造物で構成される空間の内圧が低下するため、二重構造にした管や容器の表面とそれを覆う構造物に作用する圧力によって変形する可能性がある。これを防止するために、管及び、又は容器の外周部に断面円形の長尺物(針金状)や、内部が真空の中空で円筒状の物質を設置した構造を用いることもできるが、断面円形の長尺物(針金状)を用いた場合、熱の移動距離を長くするために断面円形の長尺物(針金状)の直径を大きくすると重量が増加する。また、内部が真空の中空で円筒状の物質を用いた場合、内部を真空にすることによる変形に耐える材質と形状を持つ中空で円筒状の物質を使用する必要がある(設置後は「内部が真空の中空で円筒状の物質」の周囲も真空になるため圧力差はなくなるが、らせん状に巻き付ける段階での「内部が真空の中空で円筒状の物質」の状態においてはこれを考慮する必要がある)。
【0020】
これに対し、大気圧下においては「内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質(内部圧力は大気圧)」の両端を閉じて、その内部を密閉空間にしたものを用いると、容器の表面と両端が閉じられた板状の物質との間に形成された密閉空間を真空にしても、らせん状に巻き付けた中空で円筒状の物質内の圧力は1気圧を保つため、二重構造にした管や容器の表面とそれを覆う構造物で構成される空間の内圧が低下しも、管や容器の表面とそれを覆う構造物の変形を防止するための支柱の役割を維持することが可能となる。
また、「内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質」の両端を閉じてその内部を密閉空間にする際に、「内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質」の内部を1気圧以上の圧力にすることにより、「管や容器の表面とそれを覆う構造物の変形を防止するための支柱の役割」という作用をより効果的に果たすことが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、管及び、又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に、内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を設置し、その外周を板状の物質で覆うという方法を用いることにより、管及び、又は容器の外周部に、管及び、又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層、管及び、又は容器の表面を覆っている板状の物質とその外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される空気の断熱層を形成し、管を流動する物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を持たせることができることを特徴とする。
【0022】
管や容器の表面を板状の物質で覆い、その周囲にらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物を設置し、その周囲を板状の物質で覆い、管や容器の外周に二重の断熱層を形成することにより、断熱効果を高めることが可能となる。さらに、管や容器の表面を覆った板状の物質と、その周囲に設置されたらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物の周囲を覆った板状の物質とで形成される空間の両端を閉じてその内部を真空にすることにより、さらに断熱効果を高めることが可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、管及び、又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を設置し、その外周を板状の物質で覆うとともに、管及び、又は容器の外周を覆っている板状の物質と、その外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、この密閉空間を真空にすることにより、管及び、又は容器の外周部に、管及び、又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層、管及び、又は容器の表面を覆っている板状の物質とその外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される真空断熱層を形成し、管を流動する物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を備えることを特徴とする。
【0024】
管や容器の表面を板状の物質で覆い、その周囲にらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物を設置し、その周囲を板状の物質で覆い、管や容器の外周に二重の断熱層を形成することにより、断熱効果を高めることが可能となる。さらに、管や容器の表面を覆った板状の物質と、その周囲に設置されたらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物の周囲を覆った板状の物質とで形成される空間の両端を閉じてその内部を真空にすることにより、さらに断熱効果を高めることが可能となる。
内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質の例としては、金属、樹脂、石油化学系製品などが想定されるが、これらの耐熱温度は200~300℃の場合が多い。これに対し、一般に断熱材として用いられている物質には、耐熱温度が1000℃を超えるものも多く見られる。本請求項における発明はこれらの物質の長所を組み合わせることにより、その短所を補うためのものである。具体的には、管又は容器の外面を覆った、耐熱性には優れた特性を持つが柔らかいために何らかの方法で固定する必要がある断熱材を、格子状の物質又は目開き2000μm(10メッシュ)~目開き約300μm(50メッシ)のステンレス製フィルター材などの金網で固定し、この周囲に内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質を設置しることにより、管や容器の表面温度が1000℃以上であっても、まず断熱材によって温度を低下させ(熱伝導率に反比例し、移動距離に比例する温度差を大きくして=断熱材の表面温度を下げて)この外側に、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた、又は内部が真空の、中空で円筒状の金属、樹脂、石油化学系製品などを材料とする物質を設置しることにより、熱伝導率の値が小さく、厚みを持つ(熱の移動距離が長い)断熱層を形成して、管や容器の表面から周囲への熱の移動を低減することが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、管及び、又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に内部が気体で満たされた中空で円筒状の物質を設置し、その外周を板状の物質で覆うとともに、管及び、又は容器の外周を覆っている板状の物質と、その外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質によって形成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、この密閉空間を真空にするという方法を用いることにより、管及び、又は容器の外周部に、管及び、又は容器の表面とその外周を覆っている板状の物質との間に形成される断熱層、中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層、管及び、又は容器の表面を覆っている板状の物質とその外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質との間に形成される真空断熱層を形成し、管を流動する物質と周囲との熱の移動を防止できるという機能を持たせることができることを特徴とする。
【0026】
管や容器の表面を板状の物質で覆い、その周囲にらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物を設置し、その周囲を板状の物質で覆い、管や容器の外周に二重の断熱層を形成することにより、断熱効果を高めることが可能となる。さらに、管や容器の表面を覆った板状の物質と、その周囲に設置されたらせん状及び、又は連続したU字管状などの断面円形の長尺物の周囲を覆った板状の物質とで形成される空間の両端を閉じてその内部を真空にすることにより、さらに断熱効果を高めることが可能となる。
本発明に記載された方法を用いることにより、表面温度が1000℃の管や容器から周囲へ移動する熱量を低減することが可能になる。具体的には、管や容器の表面を耐熱温度が1000℃以上、熱伝導率が0.2 [W/mK] の断熱材で覆い、その周囲に内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質を、互いに密着させてらせん状に巻き付けることにより、管や容器の表面を覆った断熱材を固定し、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質の温度低下を防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明を用いることにより、管を流動する物質及び容器内部にある物質の温度を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係る基本構成を示したものである。
図2】本発明の実施の形態に係る基本構成の実施例を示したものである。
図3】本発明の実施の形態に係る応用構成を示したものである。
図4】本発明の実施の形態に係る応用構成の実施例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
熱力学の第2法則「熱エネルギーは温度の高いところから低いところへ流れる」により、管を流れる流体や容器内の物質の温度(TH:Temperature High)が周囲の温度(TL:Temperature Low)よりも高いと、熱量(熱エネルギー)が管や容器を構成する物質を通して周囲に移動し、管を流れる流体や容器内の物質の温度は、この熱量に比例して低下する。
単位時間あたりの移動熱量をQとすると、Qは熱伝導率(CT:Coefficient of Thermal Conductivity)、温度差(TH-TL)、伝熱面積(HS:Heat-transfer Surface)に比例し、移動距離(D:Distance)に反比例する。このため、同じ形状の管や容器において、熱伝導率、伝熱面積を同とすると、管や容器内にある高温の物質の温度THと、これに比べて低温の周囲の温度TLとの温度差が大きいほど移動熱量Qが大きくなり、管や容器内にある高温の物質の温度THが急激に低下することになる。これらのことから、管を流れる流体や容器内の物質と周囲との熱量の移動(温度低下)を防止するためには、管を流れる流体や容器内の物質と周囲との間に、熱伝導率が小さい物質の層を形成することにより(熱伝導率の値を小さくするとともに、移動距離の値を大きくする)、管や容器から周囲に移動する(放出される)熱量Qの値を低減し、管や容器内にある高温の物質の温度THの低下を防止できることが分かる。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る基本構成を示したものである。
管又は容器(1)の温度(TH)が周囲の温度(TL)よりも高いと、熱量(Q)が管又は容器から周囲に向かって移動することにより管又は容器の温度(TH)は低下する。本発明において、初期状態における管又は容器内の温度(TH)と周囲の温度(TL)及び伝熱面積(HS)が一定とすると(同じ形状の管又は容器においては)、管又は容器から外部へ移動する熱量(Q)は、図1に示す管又は容器(1)の表面と、管及び、又は容器の外周部に設置されたらせん状の内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質(2)の外周を覆う板状の物質(3)間に形成された空間の熱伝導率と、管及び、又は容器の外周部にせん状に巻き付けられた内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質によって構成される断熱層(4)の平均熱伝導率(CT)に比例し、平均厚さ(D)に反比例する。このことから、管又は容器の表面と、管及び、又は容器の外周部に設置された中空で円筒状の物質(2)の外周を覆う板状の物質(3)間に形成された空間(4)の熱伝導率と、管又は容器の外周に設置された中空で円筒状の物質(2)の平均熱伝導率をできるだけ小さくするとともに、中空で円筒状の物質(2)の直径を大きく(断熱層の平均厚さを大きく)することにより、平均の熱伝導率(CT)、移動距離(D)で構成される断熱層の能力を向上し、管又は容器(1)から周囲への移動熱量Qの値が小さくなり、管又は容器内の温度低下を低減できることが分かる。
【0031】
管又は容器の外周に設置された、中空で円筒状の物質(2)の具体的な材料としては金属が一般的であるが、例えば温度約300℃における金属の熱伝導率は、Al(アルミニウム)では237[Wm/K]、 Fe(鉄)では80.3[Wm/K]、SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)では16.0[Wm/K]である。これに対し、PTFE(フッ素樹脂)の熱伝導率は0.24[Wm/K]、気体の熱伝導率は0.026[Wm/K]と金属に比べて非常に低い値を持つ。また、密度(単位体積当たりの質量)も小さいため、金属と比べて熱伝導率と密度が小さい大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた、金属と比べて熱伝導率と密度が小さい中空のPTFE(フッ素樹脂)を用いることにより、熱伝導率が約0.2[Wm/K]である一般的な断熱材を用いるよりも構造が簡単で(断熱材を用いる場合、それを固定する構造物が必要になる)、熱伝導率が小さい断熱層を形成することが可能となる。
【0032】
なお、管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置した円筒状の物質の外周を覆う平板の一部に突起を持たせて波形とすることにより、容器に貯蔵された物質やパイプ内を流動する流体の温度が変化することによる熱的な変化(容器やパイプの膨張・収縮)にも対応出来るようになる。
【0033】
管又は容器の外周に設置された中空で円筒状の物質(2)の設置方法としては、中空で円筒状の物質の外周を覆う板状の物質内面の随所に突起物(5)を設置することにより、中空で円筒状の物質(2)の位置を固定することが可能となる。
【0034】
また、中空で円筒状の物質の外周を覆う板状の物質(3)を貫通する90°エルボ(6)などを用いて、周囲と中空で円筒状の物質(2)の内部とを連結し、この90°エルボ(6)の周囲側にある穴から、中空で円筒状の物質の内部へ挿入された側にある穴に向けて気体を注入して、中空で円筒状の物質(2)の両端を閉じることにより、中空で円筒状の物質内部を密閉空間とすることができる。
【0035】
さらに、断熱層(4)を真空とした場合、二重構造にした管や容器(1)の表面とそれを覆う構造物(3)で構成される空間の内圧低下により、二重構造にした管や容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物に作用する圧力によって二重構造にした管や容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形するのを防止するために、中空で円筒状の物質内部に、大気圧と同等かそれ以上の圧力の気体を注入して、中空で円筒状の物質の両端を閉じて密閉空間とすることにより外圧に耐える構造として、断熱層における支柱の役割を持たせ、断熱層を構成する管及び、又は容器の表面とその外周部に設置された中空で円筒状の物質の外周を覆う板状の物質が外圧により変形するのを防止することが可能となる。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に係る基本構成の実施例を示したものである。
図1の構造とするには、管及び、又は容器が他の構造物に接続される前に予め、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質(2)、管及び、又は容器の外周部にらせん状に設置された物質の外周を覆う板状の物質(3)を設置しておき、気体又は真空の断熱層(4)を構成しておく必要があるため、既に外部の構造物と接続されている管や容器に、図1に示す構造の断熱装置を設置することは困難である。
これに対し、図2に示すように、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質を管及び、又は容器の外周部に連続したU字管状などの形状にして設置することにより、図1に示した断熱装置と断熱方法の構造と機能を残した状態で2分割し、これを既存の管や容器の外周部に設置して、ボルト・ナットなどにより結合することにより、既存の管や容器にも設置可能となる。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係る応用構成を示したものである。
管及び、又は容器の外周を、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質(7)で覆い、その板状の物質の外周部に、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質(2)を設置し、管及び、又は容器の外周部に設置した円筒状の物質(2)の外周を表面に凹及び、又は凸がある板状の物質(3)で覆うという構造として、管及び、又は容器の外周部に、管及び、又は容器の表面と、その外周を覆っている板状の物質との間に形成される大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた空間によって形成される断熱層(4)と中空で円筒状の物質とその内部にある気体で構成される断熱層、管及び、又は容器の外周を覆っている表面に凹及び、又は凸がある板状の物質(7)と、管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置した円筒状の物質の外周を覆っている表面に凹及び、又は凸がある板状の物質(3)との間に形成される絶対真空に近い気体の断熱層を形成することにより、平均の熱伝導率(CT)、移動距離(D)で構成される断熱層の能力を向上し、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質が保有する熱量が、温度が高い管及び、又は容器の表面から、温度が低い周囲へ移動することにより、管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質の温度が低下するのを防止できる。
【0038】
図3に示すように、管及び、又は容器の外周を覆っている、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質の内側(管及び、又は容器の表面側)の2箇所以上に凸を設けることにより、管及び、又は容器の表面と、その外周を覆っている板状の物質との空間を維持する支柱の役割を持たせることができるとともに、凸の大きさ(高さ)に比例して管及び、又は容器の表面と、その外周を覆っている板状の物質との距離が大きくなることにより、断熱層(4)の効果を向上させることが可能となる。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態に係る応用構成の実施例を示したものである。
図3に示すような構造とするには、管及び、又は容器が他の構造物に接続される前に予め、管及び、又は容器の外周を、表面に凹及び、又は凸がある板状の物質(7)で覆い、その板状の物質の外周部に、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質(2)、管及び、又は容器の外周部にらせん状に設置された物質の外周を覆う板状の物質(3)を設置しておき、気体又は真空の断熱層(4)を構成しておく必要があるため、既に外部の構造物と接続されている管や容器に、図3に示す構造の断熱装置を設置することは困難である。
これに対し、図4に示すように、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質を管及び、又は容器の外周部に連続したU字管状などの形状にして設置することにより、図3に示した断熱装置と断熱方法の構造と機能を残した状態で2分割し、これを既存の管や容器の外周部に設置して、ボルト・ナットなどにより結合することにより、既存の管や容器にも設置可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、管及び容器内にある物質の温度を保持したい場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1.管又は容器
2.内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質
3.管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に
設置された物質の外周を覆う板状の物質
4.気体又は真空の断熱層
5.内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質の位置を
定めるための突起物
6.90°エルボ
7.管及び、又は容器の外周を覆う表面に凹及び、又は凸がある板状の物質
8.空気の断熱層
Q :移動熱量
CT:熱伝導率
TH:管や容器内の温度
TL:周囲の温度
D :断熱層の平均厚さ


【要約】
【課題】管を流動する物質及び、又は容器内部にある物質の温度を保持するための装置と方法に関する。
【解決手段】管及び、又は容器の外周を板状の物質で覆い、その板状の物質の外周部に、内部が大気圧以上の圧力を持つ気体で満たされた中空で円筒状の物質を設置し、その外周を板状の物質で覆う構造とし、管及び、又は容器の表面と管及び、又は容器の外周を覆った板状の物質との間に空気の断熱層を形成するとともに、管及び、又は容器の外周を覆っている板状の物質と、管及び、又は容器の外周部にらせん状及び、又は連続したU字管状などの形状に設置した円筒状の物質の外周を覆っている板状の物質とで構成される空間の両端を閉じて密閉空間とし、この空間を真空断熱層とすることを特徴とする、管と容器の断熱装置と断熱方法
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4