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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】スクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/42 20060101AFI20220901BHJP
   B41F 15/44 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B41F15/42
B41F15/44
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021539720
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031704
(87)【国際公開番号】W WO2021028986
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593039856
【氏名又は名称】マイクロ・テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 徳弘
(72)【発明者】
【氏名】戸田 久夫
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 悠
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-42763(JP,A)
【文献】特開2001-315304(JP,A)
【文献】特開2014-73593(JP,A)
【文献】特開2017-170791(JP,A)
【文献】特開2005-14470(JP,A)
【文献】特開平4-253393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/42
B41F 15/44
B41F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンを用いてスクリーン印刷をするスクリーン印刷装置において、
ペーストをコーティングするスクレッパと、前記スクレッパの右に配置された第1のスキージと、前記スクレッパの左に配置された第2のスキージと、前記第1のスキージと前記第2のスキージとを上下方向に駆動する上下駆動部とを有するヘッド部と、
前記ヘッド部を左右方向に駆動する左右駆動部とを備え、
上下駆動部により前記第1のスキージを下降させて前記左右駆動部により前記ヘッド部を左方向に駆動して前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第1のスキージでスクリーン印刷をし、上下駆動部により前記第2のスキージを下降させて前記左右駆動部により前記ヘッド部を右方向に駆動して前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第2のスキージでスクリーン印刷をするスクリーン印刷装置であって、
前記スクレッパを上下方向に駆動するスクレッパ上下駆動部と、
前記スクレッパの下端部とスクリーンとの間隔を計測するセンサとを有し、
前記スクレッパ上下駆動部は、前記スクレッパの下端部とスクリーンとの間隔がゼロになるように前記スクレッパの上下位置を調整するスクリーン印刷装置
【請求項2】
上下駆動部は、
前記第1のスキージを上下方向に駆動する第1のスキージ上下駆動部と、
前記第2のスキージを上下方向に駆動する第2のスキージ上下駆動部と、
を有し、
前記ヘッド部が左方向に駆動されている場合、前記スクレッパは、スクリーンに対してペーストをコーティングし、前記第1のスキージ上下駆動部は、前記第1のスキージをスクリーンに押圧してスクリーン印刷をし、
前記ヘッド部が右方向に駆動されている場合、前記スクレッパは、スクリーンに対してペーストをコーティングし、前記第2のスキージ上下駆動部は、前記第2のスキージをスクリーンに押圧してスクリーン印刷をする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記第1のスキージと前記第2のスキージとの間にのみペーストが存在し、
前記第1のスキージと前記第2のスキージは、前記第1のスキージと前記第2のスキージとの間のペーストで印刷をする請求項1又は2に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記ヘッド部が左方向に駆動されている場合、
前記スクレッパは、前記第2のスキージと前記スクレッパとの間のペーストでコーティングをし、前記第1のスキージは、前記第1のスキージと前記スクレッパとの間のペーストで印刷をし、
前記ヘッド部が右方向に駆動されている場合、
前記スクレッパは、前記第1のスキージと前記スクレッパとの間のペーストでコーティングをし、前記第2のスキージは、前記第2のスキージと前記スクレッパとの間のペーストで印刷をする請求項1から3のいずれか1項に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記スクレッパは、ペーストをコーティングするコーティング部を有し、前記コーティング部の下端部は、左右方向に鋭角部を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
前記スクレッパは、幅方向の両端に、左右方向に向かって屈曲した翼部を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
前記第1のスキージと前記第2のスキージとは、幅方向において、ずれた位置に配置されている請求項1から6のいずれか1項に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項8】
ペーストをコーティングするスクレッパと、前記スクレッパの右に配置された第1のスキージと、前記スクレッパの左に配置された第2のスキージと備えたスクリーン印刷装置のスクリーン印刷方法において、
前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第1のスキージを下降させて左方向へスクリーン印刷をし、
前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第2のスキージを下降させて右方向へスクリーン印刷をするスクリーン印刷方法であって、
左方向の印刷の印刷開始位置と右方向の印刷の印刷終了位置とが同じで、
左方向の印刷の印刷終了位置と右方向の印刷の印刷開始位置とが同じであり、
左右方向への切り替え時に、スクレッパを上下させることなく設定高さ位置に固定しているスクリーン印刷方法
【請求項9】
左方向の印刷時に、前記スクレッパは、前記第2のスキージと前記スクレッパとの間のペーストでコーティングをし、前記第1のスキージは、前記第1のスキージと前記スクレッパとの間のペーストで印刷をし、
右方向の印刷時に、前記スクレッパは、前記第1のスキージと前記スクレッパとの間のペーストでコーティングをし、前記第2のスキージは、前記第2のスキージと前記スクレッパとの間のペーストで印刷をする請求項8に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項10】
スクリーンを用いてスクリーン印刷をするスクリーン印刷装置において、
ペーストをコーティングするスクレッパと、前記スクレッパの右に配置された第1のスキージと、前記スクレッパの左に配置された第2のスキージと、前記第1のスキージと前記第2のスキージとを上下方向に駆動する上下駆動部とを有するヘッド部と、
前記ヘッド部を左右方向に駆動する左右駆動部とを備え、
上下駆動部により前記第1のスキージを下降させて前記左右駆動部により前記ヘッド部を左方向に駆動して前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第1のスキージでスクリーン印刷をし、上下駆動部により前記第2のスキージを下降させて前記左右駆動部により前記ヘッド部を右方向に駆動して前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第2のスキージでスクリーン印刷をするスクリーン印刷装置であって、
左方向の印刷の印刷開始位置と右方向の印刷の印刷終了位置とが同じで、
左方向の印刷の印刷終了位置と右方向の印刷の印刷開始位置とが同じであり、
左右方向への切り替え時に、前記スクレッパを上下させることなく設定高さ位置に固定しているスクリーン印刷装置。
【請求項11】
ペーストをコーティングするスクレッパと、前記スクレッパの右に配置された第1のスキージと、前記スクレッパの左に配置された第2のスキージと備えたスクリーン印刷装置のスクリーン印刷方法において、
前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第1のスキージを下降させて左方向へスクリーン印刷をし、
前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第2のスキージを下降させて右方向へスクリーン印刷をするスクリーン印刷方法であって、
センサにより前記スクレッパの下端部とスクリーンとの間隔を計測し、
前記スクレッパの下端部とスクリーンとの間隔がゼロになるように前記スクレッパの上下位置を調整するスクリーン印刷方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷をするスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、2個のスキージを用いてワークにスクリーン印刷をする装置が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-014470号公報
【文献】特開2019-014179号公報
【文献】国際公開第2014/184877号
【文献】特開2000-263752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、2個のスキージを用いて効率よくスクリーン印刷をするスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスクリーン印刷装置は、
ペーストをコーティングするスクレッパと、前記スクレッパの右に配置された第1のスキージと、前記スクレッパの左に配置された第2のスキージと、前記第1のスキージと前記第2のスキージとを上下方向に駆動する上下駆動部とを有するヘッド部と、
前記ヘッド部を左右方向に駆動する左右駆動部とを備え、
上下駆動部により前記第1のスキージを下降させて前記左右駆動部により前記ヘッド部を左方向に駆動して前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第1のスキージでスクリーン印刷をし、上下駆動部により前記第2のスキージを下降させて前記左右駆動部により前記ヘッド部を右方向に駆動して前記スクレッパでペーストをコーティングしながら前記第2のスキージでスクリーン印刷をする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2個のスキージを用いて効率よくスクリーン印刷をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1におけるスクリーン印刷装置100の正面図。
図2】実施の形態1におけるスクリーン印刷装置100の右側面図。
図3】実施の形態1におけるスクリーン印刷装置100の拡大図で、(a)はヘッド部の正面部分拡大図、(b)はヘッド部の平面拡大図。
図4】実施の形態1におけるスクリーン印刷装置100の動作フローチャート。
図5】実施の形態1におけるスクリーン印刷装置100の印刷動作説明図。
図6】実施の形態1におけるスクリーン印刷装置100の印刷動作説明図。
図7】実施の形態1におけるスクリーン印刷装置100の印刷動作説明図。
図8】実施の形態1におけるセンサを用いたスクリーン印刷装置100の印刷動作説明図。
図9】実施の形態1における2個のスクレッパを用いたスクリーン印刷装置100の部分拡大図。
図10】実施の形態1における2個のスキージの位置をずらしたスクリーン印刷装置100の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以上、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「表」、「裏」といった方向は、説明の便宜上、そのように記しているだけであって、装置、器具、部品等の配置や向き等を限定するものではない。
【0009】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1図2に基づいて、スクリーン印刷装置100の構成について説明する。
図1において、印刷方向となる往復方向、すなわち、紙面に向かって左右方向を左右方向という。
図1において、紙面に向かって上下方向を高さ方向という。
図1において、紙面に向かって奥行方向を幅方向という。
【0010】
スクリーン印刷装置100は、印刷テーブル910に載置されたワーク900に対してスクリーン印刷をする。
スクリーン印刷装置100は、スクリーン90を有する版枠91によりスクリーン印刷をする。
【0011】
スクリーン印刷装置100は、印刷機構となるヘッド部110と、ヘッド部110を左右方向に駆動する左右駆動部60とを有する。
【0012】
<<ヘッド部110>>
ヘッド部110は、第1のスキージ10と第2のスキージ20とスクレッパ30と上下駆動部50とを有する。
スクレッパ30は、ペーストをコーティングする金属ヘラである。
第1のスキージ10は、スクレッパ30の右に配置されている。
第2のスキージ20は、スクレッパ30の左に配置されている。
上下駆動部50は、第1のスキージ10と第2のスキージ20とスクレッパ30とを個別に上下方向に駆動する。
【0013】
<<左右駆動部60>>
左右駆動部60は、ヘッド部110を水平方向に移動させるため、水平方向に配置された軸62を有する。
左右駆動部60は、ヘッド部110をガイド61に沿って水平方向に往復移動させる。
スクリーン印刷装置100は、2個のスキージと1個のスクレッパの左右駆動を、軸62により同軸でかつ同時に実施する。
【0014】
<<上下駆動部50>>
上下駆動部50は、第1のスキージ上下駆動部51と、第2のスキージ上下駆動部52と、スクレッパ上下駆動部53とを有する。
第1のスキージ上下駆動部51は、第1のスキージ10を上下方向に駆動する。
第2のスキージ上下駆動部52は、第2のスキージ20を上下方向に駆動する。
スクレッパ上下駆動部53は、スクレッパ30を上下方向に駆動する。
【0015】
<<制御部70>>
スクリーン印刷装置100は、制御部70を有する。
制御部70は、装置全体を制御するものである。
制御部70は、中央処理装置、プログラム、メモリ、及び、記憶装置により実現できる。
制御部70は、図1に示す上下駆動部50、左右駆動部60等を制御して、後述する印刷動作を制御する。
制御部70からの信号は、信号線により各部に伝達される。
後述する印刷方法の各動作は、制御部70が信号線により命令及び信号を送受信することにより実現できる。
【0016】
制御部70は、上下駆動部50により第1のスキージ10を下降させて左右駆動部60によりヘッド部110を左方向に駆動してスクリーン印刷をする。
制御部70は、上下駆動部50により第2のスキージ20を下降させて左右駆動部60によりヘッド部110を右方向に駆動してスクリーン印刷をする。
【0017】
<<第1のスキージ10>>
第1のスキージ10は、左方向の印刷に使用されるスキージであり、図3に示すとおり、上部が左側(内側)に傾いて傾斜して取り付けられている。
【0018】
<<第2のスキージ20>>
第2のスキージ20は、右方向の印刷に使用されるスキージであり、図3に示すとおり、上部が右側(内側)に傾いて傾斜して取り付けられている。
【0019】
<<スクレッパ30>>
スクレッパ30は、左方向と右方向のペーストのコーティングに使用される金属ブレードであり、図3に示すとおり、スクリーン90に対して垂直に取り付けられている。
【0020】
図3において、T2は、スクレッパ30の設定高さ位置である。
スクレッパ30の設定高さ位置T2は、スクリーン90の水平面の高さ位置T1と同じである。
T3は、第1のスキージ10と第2のスキージ20の印刷高さ位置であり、印刷高さ位置T3は、スクリーン90の水平面の高さ位置T1とスクレッパ30の設定高さ位置T2よりも低い。
【0021】
スクレッパ30は、ペーストをコーティングするコーティング部31を有する。
コーティング部31は、スクリーン90に対して垂直に配置された矩形の板状部分である。
コーティング部31の下端部39は、幅方向において、スクリーン90の表面に接触又は接近する。
【0022】
スクレッパ30は、左右方向と平行な断面において、下端部39の左辺から下端部39の左右中央上部に向かって傾斜した左傾斜面34と、下端部39の右辺から下端部39の左右中央上部に向かって傾斜した右傾斜面33とを有する。
コーティング部31の下端部39は、左右方向に鋭角部32を有する。
右側の鋭角部32は、コーティング部31の右側の垂直面と右傾斜面33とが90度未満で交差することにより形成される。
左側の鋭角部32は、コーティング部31の左側の垂直面と左傾斜面34とが90度未満で交差することにより形成される。
なお、スクレッパ30の下端部39の形状は他の形状でもよい。たとえば、左傾斜面34と右傾斜面33との傾斜角度が異なっていてもよい。また、鋭角部32ではなく90度の直角部があってもよい。また、スクレッパ30の傾斜面が曲面を有していてもよい。
【0023】
スクレッパは、幅方向の両端に、左右方向に向かって屈曲した翼部35を有する。
翼部35は、コーティング部31の幅方向の両端に、左方向と右方向に向かって屈曲した金属板である。
翼部35の下端部は、スクリーン90の表面に接触又は接近して、ペーストを中央に集める。
翼部35は、ペーストが印刷範囲の外側に漏れないようにするためのフェンスである。
なお、スクレッパ30の翼部35の形状は他の形状でもよい。例えば、翼部35が曲面を有していてもよい。また、スクレッパ30に翼部35がなくてもよい。
【0024】
図3に示すとおり、スクレッパ30は、コーティング部31の高さが異なる2個のスクレッパを背中あわせに結合して製造することができる。
あるいは、スクレッパ30は、2個の同一形状のスクレッパを背中あわせに結合して製造することができる。
【0025】
***動作の説明***
図4を用いて、スクリーン印刷装置100のスクリーン印刷方法について説明する。
ここでは、右方向の印刷をしてから左方向の印刷をする動作について説明する。
【0026】
*初期設定*
以下に説明する動作は、制御部70からの電気信号に基づいて行われる。
スクリーン印刷装置100の電源がオンになると、スクリーン印刷装置100は、初期動作を開始し、初期設定をする。
*ペースト供給
まず、図示していないペースト供給装置により、スクリーン90の上面にペーストを供給する。
図5に示すとおり、ペースト供給装置は、第1のスキージ10と第2のスキージ20との間にのみペーストを供給する。
ペースト供給装置は、第1のスキージ10とスクレッパ30との間と、第2のスキージ20とスクレッパ30との間とにペーストを供給する。
第1のスキージ10と第2のスキージ20との外側にはペーストが存在しない。
なお、ペーストは、ペースト供給装置ではなく、手動で供給してもよい。
【0027】
*スクレッパ30の固定
スクレッパ上下駆動部53が、スクレッパ30を上下方向に駆動して、スクレッパ30の位置を設定高さ位置T2に固定する。
スクレッパ上下駆動部53は、スクレッパ30の下端部39が、スクリーン90の水平面と同じ高さ又はスクリーン90の水平面よりわずかに低くになるように位置決めする。
この位置決めにより、スクレッパ30の左右方向の移動によるペーストのスクリーン90へのコーティングが可能になる。
制御部70は、左右駆動部60により、ヘッド部110を左側の印刷開始位置に設定する。
【0028】
*ワーク設置工程S1*
制御部70は、図示していない搬出入装置により、ワーク900を印刷テーブル910に載せる。
同時に、図5に示すとおり、第1のスキージ上下駆動部51が、第1のスキージ10を上昇させる。この時、スクレッパ30の上下位置は設定高さ位置T2に固定されたままである。
【0029】
*第2のスキージ20の下降工程S2*
第2のスキージ上下駆動部52が、第2のスキージ20を印刷高さ位置T3、スクリーン90を押圧する。この時、スクレッパ30の上下位置は設定高さ位置T2に固定されたままである。
【0030】
*右方向印刷工程S3*
制御部70は、左右駆動部60により、ヘッド部110を左側の印刷開始位置から右方向に駆動する。
ヘッド部110が右方向に駆動されている場合、スクレッパ上下駆動部53は、スクレッパ30をスクリーン90に対して隙間なく接触又は接近させてペーストをコーティングする。
スクレッパ30は、上下位置が設定高さ位置T2に固定されたまま、第1のスキージ10とスクレッパ30との間のペーストでスクリーン90に対してコーティングをする。
第2のスキージ上下駆動部52は、第2のスキージ20をスクリーン90に押圧しており、ヘッド部110が右方向に移動してスクリーン印刷をする。
第2のスキージ20は、第1のスキージ10とスクレッパ30との間のペーストで印刷をする。
制御部70は、左右駆動部60により、ヘッド部110を右側の印刷終了位置まで移動する。
【0031】
*ワーク設置工程S4*
制御部70は、図示していない搬出入装置により、印刷が終了したワーク900を搬出し、新たなワーク900を印刷テーブル910に載せる。
図6に示すとおり、第2のスキージ上下駆動部52が、第2のスキージ20を上昇させる。この時、スクレッパ30の上下位置は設定高さ位置T2に固定されたままである。
【0032】
*第1のスキージの下降工程S5*
第1のスキージ上下駆動部51が、第1のスキージ10を印刷高さ位置T3、スクリーン90を押圧する。この時、スクレッパ30の上下位置は設定高さ位置T2に固定されたままである。
【0033】
*左方向印刷工程S6*
左方向印刷時は、右側の印刷終了位置をそのまま右側の印刷開始位置として、右向印刷時と逆の動作で印刷をする。
制御部70は、左右駆動部60により、ヘッド部110を右側の印刷開始位置から左方向に駆動する。
ヘッド部110が左方向に駆動されている場合、スクレッパ上下駆動部53は、スクレッパ30をスクリーン90に対して隙間なく接触又は接近させてペーストをコーティングする。
スクレッパ30は、上下位置が設定高さ位置T2に固定されたまま、第2のスキージ20とスクレッパ30との間のペーストでスクリーン90に対してコーティングをする。
第1のスキージ上下駆動部51は、第1のスキージ10をスクリーン90に押圧しており、ヘッド部110が右方向に移動してスクリーン印刷をする。
第1のスキージ10は、第1のスキージ10とスクレッパ30との間のペーストで印刷をする。
制御部70は、左右駆動部60により、ヘッド部110を左側の印刷終了位置まで移動する。
【0034】
*繰り返し工程*
制御部70は、印刷が終了したワーク900の搬出後、次の印刷があるか判断し、次の印刷がある場合、設置工程S2に戻る。
右方向印刷時は、左側の印刷終了位置をそのまま左側の印刷開始位置として、右向印刷時と逆の動作で印刷をする。
制御部70は、次の印刷がなければ、印刷を終了する。
【0035】
***実施の形態1の特徴***
実施の形態1では、2個のスキージの間にスクレッパを配置して、2個のスキージとスクレッパの間にペーストを配置している。このため、左右方向のいずれの印刷においても、印刷方向の前方にスクレッパが配置され後方にスキージが配置される。
左右のスキージとスクレッパの間のペーストは、往路印刷時には一方のペーストがスクレッパのコーティングに利用され他方のペーストがスキージの印刷に利用され、復路印刷時には他方のペースがスクレッパのコーティングに利用され一方のペースがスキージの印刷に利用される。
【0036】
***実施の形態1の効果の説明***
実施の形態1によれば、往路と復路で印刷が可能になり、印刷効率が向上する。
【0037】
実施の形態1によれば、左方向の印刷の印刷開始位置と右方向の印刷の印刷終了位置とが同じで、かつ、左方向の印刷の印刷終了位置と右方向の印刷の印刷開始位置とが同じである。したがって、左右方向への切り替え時に、左右のスキージの昇降動作をするだけであり、ヘッド部110を左右に移動する必要がなく、また、スクレッパ30を上下させることがなく、印刷効率が向上する。
【0038】
***比較例***
実施の形態1の構成と、スキージの後方にスクレッパがあり往路でコーティングをして復路で印刷をする構成とを比較する。
実施の形態1のように、往路のみで又は復路のみでコーティングをして印刷をする場合は、往路でコーティングをして復路で印刷をする場合に比べて、以下のような特徴がある。
1.実施の形態1では、1回の移動動作でコーティングと印刷とをするので、往路でコーティングをして復路で印刷をする場合に比べて、ペーストが乾燥することなく印刷精度が向上する。
2.実施の形態1では、印刷方向とコーティング方向が同方向であるのに対して、往路でコーティングをして復路で印刷をする場合は、印刷方向とコーティング方向が逆になる。
3.実施の形態1では、常にスキージとスクレッパの間にペーストがあるので、往路の印刷終了位置と復路の印刷開始位置とを同一にすることができるのに対して、往路でコーティングをして復路で印刷をする場合は、印刷後のペーストがスキージの外側になるので、スクレッパを上昇させてペーストを飛び越える必要があり、無駄な動作が発生する。
4.往路でコーティングをして復路で印刷をする場合は、スキージの後方にスクレッパがあるので、スクレッパが版離れに影響を及ぼす可能性がある。実施の形態1では、スキージの後方に何もないので、通常の印刷と同等の版離れを提供することができる。
実施の形態1によれば、印刷をしながら次の印刷のためのコーティングをするのではなく、コーティングをしながら印刷することができるので、高品質の印刷が可能になる。
【0039】
***実施の形態1の変形例1***
(センサ80)
図8のスクリーン印刷装置100は、センサ80を有する。
センサ80は、スクレッパ30の下端部39とスクリーン90との間隔を計測する隙間検出センサである。
右側のセンサ80は、右方向印刷時に、右側の鋭角部32の下端とスクリーン90との間隔を計測して、制御部70に伝達する。
左側のセンサ80は、左方向印刷時に、左側の鋭角部32の下端とスクリーン90との間隔を計測して、制御部70に伝達する。
【0040】
制御部70は、スクレッパ30の下端部39とスクリーン90との間隔がゼロになるようにスクレッパ上下駆動部53を駆動してスクレッパ30の上下位置を印刷中に動的に調整する。
【0041】
図8に示すとおり、印刷時には、スクリーン90はスキージにより下方に押圧されるため、印刷位置においてスクリーン90は下方に下がり、スクリーン90は印刷位置の左右において傾斜する。
印刷時におけるスクリーン90の下降距離は、スクリーン90とワーク900との距離に依存する。また印刷時におけるスクリーン90の傾斜角度は、印刷位置の移動により変化する。
このため、スクレッパ30の位置が固定されていると、スクレッパ30の下端部39とスクリーン90とが離れる可能性がある。
センサ80は、スクレッパ30の下端部39とスクリーン90との間隔をヘッド部110の移動中に計測する。
制御部70は、スクレッパ上下駆動部53を駆動してスクレッパ30の上下位置をヘッド部110の移動中にリアルタイムに調整する。
このため、印刷中、スクレッパ30の下端部39とスクリーン90とが常に接触又は接近した状態を保つことができる。
スクレッパ30の上下位置は、スクリーン90の高さ位置T1とワーク900の高さ位置T3の間の高さ位置T2に調整される。
右方向印刷時には、左の印刷開始位置から右の印刷終了位置に向かって、T2は、次第に高くなる。
左方向印刷時には、右の印刷開始位置から左の印刷終了位置に向かって、T2は、次第に高くなる。
【0042】
***実施の形態1の変形例2***
(2個のスクレッパ30)
図9のスクリーン印刷装置100は、2個のスクレッパ30を有する。
2個のスクレッパ30は、初期設定時に、設定高さ位置T2に設定されている。
右側のスクレッパ30は、第1のスキージ10に固定されているので、第1のスキージ上下駆動部51が右側のスクレッパ30を印刷高さ位置T3に設定すれば、右側のスクレッパ30は、設定高さ位置T2に設定される。
左側のスクレッパ30は、第2のスキージ20に固定されているので、第2のスキージ上下駆動部52が左側のスクレッパ30を印刷高さ位置T3に設定すれば、左側のスクレッパ30は、設定高さ位置T2に設定される。
この例では、スクレッパ上下駆動部53は不要になる。
【0043】
***実施の形態1の変形例3***
(印刷圧力変更印刷)
左方向の印刷圧力と右方向の印刷圧力とを変更してもよい。
左方向の印刷圧力と右方向の印刷圧力とを変更する場合は、図4のワーク設置工程S1とS4において、スクレッパ30の設定高さ位置T2を印刷圧力に合わせて変更してもよい。印刷圧力が大きい場合は、印刷圧力が小さい場合に比べて、スクレッパ30の設定高さ位置T2を低くすればよい。
【0044】
***実施の形態1の変形例4***
(重ね印刷)
同一のワークに対して、左方向と右方向の重ね印刷をしてもよい。
重ね印刷をする場合は、図4のワーク設置工程S4において、ワーク900の交換をせずに同一のワーク900のままのしておけばよい。
【0045】
***実施の形態1の変形例5***
(曲面印刷)
曲面を有するワークに対して印刷をしてもよい。
曲面を有するワークに対して印刷をする場合は、図4の右方向印刷工程S3において、制御部70が、第1のスキージ10の印刷高さ位置T3とスクレッパ30の設定高さ位置T2をワーク900の曲面に沿うように変化させればよい。同様に、図4の左方向印刷工程S6において、制御部70が、第2のスキージ20の印刷高さ位置T3とスクレッパ30の設定高さ位置T2をワーク900の曲面に沿うように変化させればよい。
ワーク900の曲面の形状が左右で異なり左右非対称であっても、ワーク900の曲面の形状を予めメモリに記憶しておけば、制御部70がワーク900の曲面の形状から印刷高さ位置T3と設定高さ位置T2とを計算することができる。
あるいは、図示していない形状検出センサによりワーク900の曲面の形状を検出すれば、制御部70がワーク900の曲面の形状から印刷高さ位置T3と設定高さ位置T2とを計算することができる。
【0046】
***実施の形態1の変形例6***
(ダブルワーク印刷)
図10に示すように、第1のスキージ10と第2のスキージ20の位置を幅方向にずらしてもよい。
印刷テーブル910は、幅方向に2個あり、幅方向に2個のワーク900を配置することができる。印刷テーブル910は、上下移動可能あるいは幅方向に移動可能であり、図示していないワーク搬出入装置がワーク900を交換する。
図10に示す構成では、図10の紙面の上のワーク900に第1のスキージ10で左方向に印刷している間に、制御部70は、印刷テーブル910とワーク搬出入装置とを駆動して図10の紙面の下のワーク900を交換する。
また、図10の紙面の下のワーク900に第2のスキージ20で右方向に印刷している間に、制御部70は、印刷テーブル910とワーク搬出入装置とを駆動して図10の紙面の上のワーク900を交換する。すなわち、制御部70は、図4に示すS1とS4のワーク設置をS3とS6の印刷中に実行する。
図10に示す構成によれば、S1とS4においてワーク設置をすることがなく、印刷効率が向上する。
なお、図10に示すように、第1のスキージ10と第2のスキージ20の幅方向の位置を幅方向において全く重ならないように配置してもよい。あるいは、第1のスキージ10と第2のスキージ20を、少なくとも幅方向において一部重なるように配置してもよい。
図10では、版枠91は一つであるが、印刷テーブル910に対応して2個の版枠91を設置してもよい。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらの実施の形態のうち、2つ以上を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、2つ以上を部分的に組み合わせて実施しても構わない。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 スクリーン印刷装置、110 ヘッド部、10 第1のスキージ、20 第2のスキージ、30 スクレッパ、31 コーティング部、32 鋭角部、33 右傾斜面、34 左傾斜面、35 翼部、39 下端部、50 上下駆動部、51 第1のスキージ上下駆動部、52 第2のスキージ上下駆動部、53 スクレッパ上下駆動部、60 左右駆動部、61 ガイド、62 軸、70 制御部、80 センサ、90 スクリーン、91 版枠、900 ワーク、910 印刷テーブル。
図1
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図9
図10