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特許7133262金属下地屋根におけるパネル固定構造、パネル固定構造に用いられるパネル固定部材及びパネル固定方法、並びに、施工するパネルを搬送するパネル搬送配置方法
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  • 特許-金属下地屋根におけるパネル固定構造、パネル固定構造に用いられるパネル固定部材及びパネル固定方法、並びに、施工するパネルを搬送するパネル搬送配置方法 図1
  • 特許-金属下地屋根におけるパネル固定構造、パネル固定構造に用いられるパネル固定部材及びパネル固定方法、並びに、施工するパネルを搬送するパネル搬送配置方法 図2
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  • 特許-金属下地屋根におけるパネル固定構造、パネル固定構造に用いられるパネル固定部材及びパネル固定方法、並びに、施工するパネルを搬送するパネル搬送配置方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】金属下地屋根におけるパネル固定構造、パネル固定構造に用いられるパネル固定部材及びパネル固定方法、並びに、施工するパネルを搬送するパネル搬送配置方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 12/00 20060101AFI20220901BHJP
   E04D 15/00 20060101ALI20220901BHJP
   E04D 15/04 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
E04D12/00 G
E04D15/00 E
E04D15/04 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022520083
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043174
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2020213197
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520508941
【氏名又は名称】山川 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】山川 孝幸
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-268764(JP,A)
【文献】特開2002-349034(JP,A)
【文献】実開平05-061318(JP,U)
【文献】実開昭48-109719(JP,U)
【文献】特開2020-029747(JP,A)
【文献】特開平07-259237(JP,A)
【文献】特開平11-172835(JP,A)
【文献】特開昭63-147049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 12/00
E04D 15/00
E04D 15/04
E04D 3/36
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属下地屋根において複数のパネル部材を固定するパネル固定構造であって、
建築物の梁に配列される複数の母屋と、
連結部を各々が有する、複数のパネル部材に取り付けられる複数の固定部材と
を備え、
前記複数の母屋の各々は、
立ち上がり部を少なくとも有し、梁に固定される複数の基礎部材と、
前記立ち上がり部に結合される結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を持ち、前記パネル載置部が、2つのスリットと前記2つのスリットの間において前記パネル載置部の面から隆起するように設けられた隆起部とからなる1つ又は複数の受け部を有する、レール部材と、
を有し、
前記複数の固定部材の各々の前記連結部が、前記2つのスリットを通して前記隆起部の下に挿入されたことによって、複数のパネル部材が前記複数の母屋に固定される
パネル固定構造。
【請求項2】
前記連結部は、挿入後に前記連結部が前記受け部から外れないようにするためのストッパを有する、
請求項1に記載のパネル固定構造。
【請求項3】
前記立ち上がり部は板状体であり、
前記結合部は、前記板状体の厚みに対応する間隔で配置された2つの挟持壁からなる、
請求項1又は請求項2に記載のパネル固定構造。
【請求項4】
前記立ち上がり部と前記結合部とは、それぞれ対応する位置に1つ又は複数の貫通孔を有し、該1つ又は複数の貫通孔に締結部材を挿通させることによって互いに結合される、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のパネル固定構造。
【請求項5】
前記立ち上がり部の前記1つ又は複数の貫通孔及び前記結合部の前記1つ又は複数の貫通孔のいずれか一方又は両方は、ルーズホールである、
請求項4に記載のパネル固定構造。
【請求項6】
前記基礎部材は、略L字の横断面形状を有し、
前記レール部材は、略T字の横断面形状を有する
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のパネル固定構造。
【請求項7】
複数のパネル部材における隣接する2つのパネル部材は、一方のパネル部材の端部に凸部を有し、他方のパネル部材の端部に凸部に対応する形状の凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって互いに組み合わされる構造であり、
前記固定部材は、パネル部材に取り付けるための取付部を有し、前記取付部の少なくとも一部が、前記凸部と前記凹部との嵌合部に対応する形状を有し、前記凸部と前記凹部との嵌合部に挟まれることによって、複数のパネル部材に取り付けられる、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のパネル固定構造。
【請求項8】
前記取付部の前記少なくとも一部は、前記嵌合部に挟まれた状態のときに隣接するパネル部材の一方又は両方に挿入される挿入部をさらに有する、
請求項7に記載のパネル固定構造。
【請求項9】
前記レール部材は、前記結合部の下部から前記パネル載置部と平行に突出する突出部をさらに有する、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のパネル固定構造。
【請求項10】
金属下地屋根において複数のパネル部材を、パネル載置部を各々が有する複数の母屋に固定するためのパネル固定部材であって、
複数のパネル部材に取り付けられて用いられ、
前記パネル載置部に設けられた、2つのスリットと前記2つのスリットの間において前記パネル載置部の面から隆起するように設けられた隆起部とからなる1つ又は複数の受け部と連結させるための連結部を有し、
前記連結部が前記2つのスリットを通して前記隆起部の下に挿入されたことによって、前記複数のパネル部材と前記複数の母屋とを固定する、
パネル固定部材。
【請求項11】
前記連結部は、挿入後に前記連結部が母屋の受け部から外れないようにするためのストッパを有する、
請求項10に記載のパネル固定部材。
【請求項12】
複数のパネル部材における隣接する2つのパネル部材は、一方のパネル部材の端面に1つ又は複数の凸部を有し、他方のパネル部材の端面に1つ又は複数の凸部に対応する1つ又は複数の凹部を有して、1つ又は複数の凸部と1つ又は複数の凹部とが嵌合することによって互いに連結される構造であり、
前記複数の固定部材は、パネル部材に取り付けるための取付部を有し、前記取付部の少なくとも一部が前記1つ又は複数の凸部と前記1つ又は複数の凹部との嵌合部に折り込まれることによって、複数のパネル部材に取り付けられる、
請求項10又は請求項11に記載のパネル固定部材。
【請求項13】
金属下地屋根において複数のパネル部材を固定するパネル固定方法であって、
各々が立ち上がり部を有する複数の基礎部材を建築物の梁に取り付ける工程と、
結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する複数のレール部材を、前記結合部と前記立ち上がり部とを結合することによって前記複数の基礎部材に取り付ける工程と、
前記複数のパネル部材の各々に取り付けられる複数の固定部材と前記複数のレール部材とを連結する工程であって、
前記複数の固定部材を前記複数のパネル部材に取り付けることと、
前記複数のレール部材の前記パネル載置部に設けられた、前記パネル載置部の面から隆起するように設けられた隆起部を間に有する2つのスリットに、前記複数の固定部材の各々に設けられた連結部を挿入することと
を含む、
連結する工程と
を含むパネル固定方法。
【請求項14】
前記立ち上がり部は板状体であり、前記結合部は対向する2つの挟持壁からなり、
前記複数のレール部材を前記複数の基礎部材に取り付ける前記工程は、前記2つの挟持壁の間に前記板状体を挿入することを含む、
請求項13に記載のパネル固定方法。
【請求項15】
前記複数のレール部材を前記複数の基礎部材に取り付ける前記工程は、
前記結合部が有する1つ又は複数の貫通孔と前記立ち上がり部が有する1つ又は複数の貫通孔とを位置合わせし、位置合わせされた1つ又は複数の貫通孔に締結部材を挿通することによって前記結合部と前記立ち上がり部とを互いに結合することを含む、
請求項13又は請求項14に記載のパネル固定方法。
【請求項16】
前記複数の固定部材を前記複数のパネル部材に取り付けることは、前記複数の固定部材の各々の取付部を隣接するパネル部材の対向する端部間に挟むことを含む、
請求項13から請求項15までのいずれか1項に記載のパネル固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属下地屋根におけるパネル固定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根の施工方法として、近年、金属下地の上に、ボード又はパネル状に成形された断熱材を敷設し、その上に防水層を施す金属下地屋根防水工法が多く採用されるようになっている。このような金属下地屋根防水工法として、機械的固定工法が用いられている。機械的固定工法は、例えば特許文献1又は非特許文献1において提案される工法や、特許文献2又は非特許文献2において提案される工法である。
【0003】
特許文献1又は非特許文献1に提案される工法は、母屋上に配置された折れ板状の金属板の上に断熱材を敷設し、断熱材を貫通する固定用ビスで断熱材を金属板に固定し、さらにその上に防水シートを配置して固定用ディスクで支持するものである。特許文献2又は非特許文献2に提案される工法は、例えば断熱材を鋼板で挟んだボード又はパネルを母屋上に敷設し、ボード又はパネルを貫通する固定用ビスでボード又はパネルを母屋に固定し、さらにその上に防水シートを配置して固定用ディスクで支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-1533号公報
【文献】特開2002-294940号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】住ベシート防水株式会社ウェブサイト「防水システム、屋上防水、サンブリッド-金属下地」、<URL:http://www.sunloid-dn.jp/products/roof/sunbrid/>
【文献】住ベシート防水株式会社ウェブサイト「防水システム、屋上防水、サンブリッド-ルーフボード下地」、<URL:http://www.sunloid-dn.jp/products/roof/roofboard/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1又は非特許文献1に提案される工法、並びに特許文献2及び非特許文献2に提案される工法は、いずれも、断熱材、ボード又はパネル(以下、パネル部材という)を固定する多数のビスと、防水シートを支持するディスクを固定する多数のビスが用いられる。したがって、パネル部材の下面には、これらを貫通して多くのビスが突出し、多数のビスの存在によって結露が発生する可能性がある。また、これらの固定用のビスは、建築物の微振動によって抜けかかる場合があり、抜けかかったビスが打ち込まれていたパネル部材の貫通孔を通して漏水が発生するおそれがある。さらに、多数のビスを施工するための工程が多くなる。
【0007】
本発明は、パネル部材を貫通するビスを用いることなくパネル部材を母屋に固定することを可能にする、金属下地屋根におけるパネル固定構造、パネル固定構造に用いられるパネル固定部材、及びパネル固定方法を提供することを課題とする。
本発明は、金属下地屋根におけるパネル固定構造を施工するためのパネル部材を搬送して配置するパネル搬送配置方法を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、本発明は、金属下地屋根において複数のパネルを固定するパネル固定構造を提供する。パネル固定構造は、建築物の梁に配列される複数の母屋と、複数のパネルに取り付けられる複数の固定部材とを備える。複数の母屋の各々は、基礎部材とレール部材とを有する。基礎部材は、立ち上がり部を少なくとも有し、梁に固定されるものである。レール部材は、基礎部材の立ち上がり部に結合される結合部と、その結合部の上部に位置するパネル載置部とを持つものである。複数のパネルと複数の母屋とは、複数の固定部材の各々と、複数の母屋の各々が有するレール部材とを連結させることによって固定される。一実施形態において、基礎部材は略L字の横断面形状を有し、レール部材は略T字の横断面形状を有するものとすることができる。別の実施形態において、レール部材は、結合部の下部からパネル載置部と平行に突出する突出部をさらに有することが好ましい。
【0009】
レール部材は、パネル載置部に設けられた1つ又は複数の受け部を有し、固定部材は、1つ又は複数の受け部と連結させるための1つ又は複数の係合部を有することが好ましい。一実施形態においては、受け部は、スリットとして実現され、係合部は、スリットに挿入され、挿入後はスリットから外れないように構成された爪として実現される。
【0010】
一実施形態においては、基礎部材の立ち上がり部は板状体であり、レール部材の結合部は、板状体の厚みに対応する間隔で配置された2つの挟持壁からなるものとすることができる。また、立ち上がり部及び結合部は、それぞれ対応する位置に貫通孔を有し、該貫通孔に締結部材を挿通させることによって互いに結合されることが好ましく、立ち上がり部の貫通孔と、結合部とのいずれか一方又は両方は、ルーズホールであることがより好ましい。
【0011】
一実施形態においては、複数のパネル部材における隣接する2つのパネル部材が、一方のパネル部材の端部に凸部を有し、他方のパネル部材の端部に凸部に対応する形状の凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって互いに組み合わされる構造とすることができる。このパネル部材を用いる場合には、固定部材は、レール部材に取り付けるための連結部とパネルに取り付けるための取付部とを有することが好ましい。この取付部の少なくとも一部は、パネル部材の凸部と凹部との嵌合部に対応する形状を有し、凸部と凹部との嵌合部に挟まれることによって、複数のパネル部材に取り付けられる。取付部の前記少なくとも一部は、嵌合部に挟まれた状態のときに隣接するパネル部材の一方又は両方に挿入される挿入部をさらに有することが好ましい。
【0012】
本発明の別の態様によれば、本発明は、金属下地屋根において複数のパネルを複数の母屋に固定するためのパネル固定部材を提供する。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明は、金属下地屋根において複数のパネルを固定するパネル固定方法を提供する。パネル固定方法は、各々が立ち上がり部を有する複数の基礎部材を建築物の梁に取り付ける工程と、結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する複数のレール部材を、その結合部と基礎部材の立ち上がり部とを結合することによって、複数の基礎部材に取り付ける工程と、複数のパネルの各々に取り付けられる複数の固定部材と複数のレール部材とを連結する工程とを含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明は、上記のパネル固定構造を施工するために、レール部材を各々が有する複数の母屋の上で複数のパネルを搬送して複数の母屋の上にパネルを配置するパネル搬送配置方法を提供する。パネル搬送配置方法は、レール部材を構成するパネル載置部の上を走行する複数の台車と、複数の台車の上に架け渡された架台とを有するパネル搬送装置の上に、複数のパネルを積載する積載工程と、パネル載置部に沿って複数の台車を走行させることによって、パネル搬送装置を所定位置まで移動させる移動工程と、所定位置においてパネル搬送装置からパネルを降ろし、パネル載置部に配置する配置工程とを含み、必要に応じて上記の移動工程と配置工程とを繰り返すことによって、複数の母屋全体にわたって複数のパネル部材を搬送し、配置する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属下地屋根においてビスを用いることなく断熱材、ボート又はパネルを母屋に固定することができるため、多数のビスを用いる従来方法で問題となる結露、ビスの抜け、漏水などを発生させることがなく、不具合の少ない金属下地屋根を施工することができる。また、本発明によれば、断熱材、ボート又はパネルを施工する際におけるパネル搬送を容易にすることができるため、少人数で安全な施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるパネル固定構造が建築物の梁に取り付けられた状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるパネル固定構造を構成する母屋の構造を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態によるパネル固定構造を構成する固定部材の構造を示す斜視図(a)、固定部材の係合部が挿入される受け部が配置されたレール部材を示す斜視図(b)、及び固定部材20がレール部材12に連結される状態を示す図((c)及び(d))である。
図4】本発明の一実施形態によるパネル固定構造の固定部材がパネル部材に取り付けられている状態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態によるパネル固定構造に複数のパネル部材が固定された状態を示す上面図(a)及び正面図(b)である。
図6】本発明の一実施形態によるパネル固定構造にパネル部材を固定する施工のために複数のパネルを搬送する搬送装置とその使用方法とを示す図であり、(a)は複数のパネル部材を積載した状態のパネル搬送装置の正面図、(b)はパネル搬送装置の上面図、(c)はパネル搬送装置の1つの台車及び架台本体部の正面図である。
図7】本発明の別の実施形態によるパネル固定構造を構成する母屋を示す斜視図である。
図8】本発明の別の実施形態によるパネル固定構造を構成する固定部材の斜視図及び固定部材が挿入される受け部が配置されたレール部材を示す斜視図(a)と、固定部材がレール部材に連結された状態を示す図(b)である。
図9】本発明のさらに別の実施形態によるパネル固定構造を構成する固定部材の斜視図(a)及び三面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0018】
[パネル固定構造]
図1は、本発明の一実施形態によるパネル固定構造1が建築物の梁2に取り付けられた状態を示す斜視図である。図2は、パネル固定構造1を構成する母屋10の構造を示す斜視図である。図3は、パネル固定構造1を構成する固定部材20の構造を示す斜視図(a)、固定部材20の爪201aが挿入されるスリット122cが配置されたレール部材12を示す斜視図(b)、及び固定部材20がレール部材12に連結される状態を示す図((c)及び(d))である。図4は、パネル固定構造1の固定部材20がパネル部材3に取り付けられている状態を示す。図5は、パネル固定構造1において、複数のパネル部材3が母屋10に固定された状態を示す上面図(a)及び正面図(b)である。
【0019】
本発明に係るパネル固定構造1は、図1に示されるように、建築物に母屋10を取り付け、その母屋10と、パネル部材3に取り付けられる固定部材20とを連結することによって、パネル部材3を建築物に固定するものである。パネル部材3は、典型的には断熱材を鋼板で挟んだボード又はパネルとすることができるが、これに限定されるものではなく、例えば、断熱材を鋼板で挟み、さらに一方の鋼板に防水層を施工したパネルなどを用いることもできる。この場合、パネルに施工される防水層は、限定されるものではなく、例えばウレタン防水、アスファルト防水、シート防水などを適宜用いることができる。
【0020】
パネル固定構造1は、複数の母屋10と複数の固定部材20とを備える。複数の母屋10を建築物の梁2に固定し、母屋10と固定部材20とを連結し、複数の固定部材20と複数のパネル部材3とを固定することによって、複数のパネル部材3を母屋10に固定することができる。母屋10の数及び隣接する母屋10の間隔、パネル部材3の数及び大きさ、並びに固定部材20の数及び隣接する固定部材20の間隔は、特に限定されるものではなく、建築物の用途、大きさ、構造、強度等の条件に応じて適宜決定されればよい。
【0021】
(母屋)
1つの母屋10は、図2に示されるように、複数の基礎部材11と1つのレール部材12とによって構成することができる。複数の基礎部材11の各々は、本実施形態においては、略L字の横断面形状を有する鋼材とすることができる。基礎部材11は、長方形状の板状体である取付部111と、取付部111の一方の長辺から立ち上がるように形成された長方形状の板状体である立ち上がり部112とを有する。取付部111と立ち上がり部112との間の角度は、90°であることが好ましいが、屋根の構造によっては90°に限定されるものではない。基礎部材11の各々は、梁2とレール部材12とが交わる位置(図1参照)にそれぞれ配置されることが好ましい。取付部111は、溶接、ボルト及びナットなどの汎用的な手段を用いて、梁2に取り付けることができる。
【0022】
なお、図1においては、図面の最も手前の2つの基礎部材11以外の基礎部材11は、レール部材12に隠れているため、図示されていない。また、図1及び図2においては、構造をわかりやすくするために、母屋10を図面の手前側で切断した状態で描かれている。
【0023】
立ち上がり部112は、本実施形態においては長辺が取付部111と同じ長さの長方形状の板状体であるが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば取付部111の長さ方向(すなわち、母屋10の長さ方向)に間隔を空けて配置された複数の板状体として構成することもできる。また、立ち上がり部112は、本実施形態においては取付部111の一方の長辺から立ち上がるように形成されているが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば取付部111の幅方向(すなわち、母屋10の幅方向)の中央部分から立ち上がるように形成することもできる。
【0024】
別の実施形態において、基礎部材11は、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、略I字の断面形状を有するもの、すなわち長方形状の板状体を梁2の上に立設させたものとすることもできる。この場合、板状体が梁2と接する部分の両側を、例えば隅肉溶接によって梁2に固定することができる。この形態においては、板状体が梁2と接する部分が取付部として機能し、取付部から梁2の上面に垂直な方向に延びる部分が立ち上がり部として機能することになる。
【0025】
一方、レール部材12は、図2に示されるように、略T字の横断面形状を有する長尺の鋼材とすることができる。1つのレール部材12は、結合部121と、結合部121の上部に位置するパネル載置部122とを有する。結合部121は、間隔を空けて主面が向かい合うように配置された細長い長方形状の2枚の板状体からなる挟持壁121a、121bである。挟持壁121a、121bの間には、基礎部材11の立ち上がり部112が挿入されるようになっており、したがって、挟持壁121aと挟持壁121bとの間隔は、立ち上がり部112の厚みに対応するように適宜設定される。パネル載置部122は、パネル部材3をその上に載置する事ができるように、細長い長方形状の上面122aを有する。結合部121は、パネル載置部122の下面122ba、122bbの幅方向中央部から下方に延びるように形成されている。基礎部材11の立ち上がり部112を、結合部121の挟持壁121a、121bの間に挟むことによって、より安定した状態で基礎部材11とレール部材12とを結合することができる。
【0026】
図1及び図2においては、パネル載置部122の両端部は、斜め下方に垂れ下がった翼部122dを有するが、この翼部122dは、必ずしも必要ではない。翼部122dを設けることによって、パネル載置部122のねじれに対する強度が向上する。
【0027】
結合部121は、本実施形態においては挟持壁121a、121bとして構成されているが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば1枚の板状体として形成してもよい。この場合、例えば板状体である結合部121の一方の主面を、立ち上がり部112のいずれかの主面と接するように対向させ、両者を何らかの公知の手段(例えば、締結部材13のような手段)を用いて結合させればよい。また、結合部121は、本実施形態においては2枚の板状体からなる挟持壁121a、121bとして構成されているが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば挟持壁121a、121bをそれぞれ複数の板状体として形成してもよい。
【0028】
本実施形態におけるレール部材12は、1枚の板を折り曲げ加工して中空構造とした形状であるが、これに限定されるものではない。別の実施形態においては、間隔を空けて設けられた挟持壁121a、121bの上端に1枚以上の板状体を溶接した構造とすることもできる。さらに別の実施形態においては、レール部材12の一方の突出部123a、一方の挟持壁121a、及び一方の下面122baと、他方の突出部123b、一方の挟持壁121b、及び一方の下面122bbとを、それぞれ1枚の板から形成し、1枚の板から形成した上面122a及び翼部122dを両方の下面122ba、122bbを覆い被せるように配置した構造とすることもできる。
【0029】
立ち上がり部112には、その両面を貫通する1つ又は複数の貫通孔112hが形成されることが好ましい。また、結合部121にも、2つの挟持壁121a、121bを貫通する1つ又は複数の貫通孔121hが形成されることが好ましい。立ち上がり部112の貫通孔112hと結合部121の貫通孔121hは、結合部121の挟持壁121a、121bの間に立ち上がり部112が挿入されたときに対応する位置に設けられている。これらの貫通孔112h、121hに、例えばボルト及びナットなどの締結部材30を挿通させ、立ち上がり部112と結合部121とを締結することによって、両者を互いに結合することができる。
【0030】
貫通孔112hと貫通孔121hのいずれか一方又は両方は、ルーズホールであることが好ましい。貫通孔112h、121hをルーズホールとして形成することによって、施工条件等に応じてパネル載置部122の高さを微調整することができる。
【0031】
レール部材12のパネル載置部122には、幅方向の両端部付近の適切な位置に、受け部122cが配置されている。受け部122cは、限定されるものではないが、図2に示されるように、パネル載置部122を貫通するスリットとすることができる。スリット122cの数は、本実施形態においては4つであるが、これに限定されるものではなく、固定部材20とレール部材12とが強固に連結されるのであれば、3つ以下でも5つ以上でもよい。スリット122cには、図3を参照しながら後述されるように、固定部材20の係合部(爪)201aが挿入される。
【0032】
レール部材12は、結合部121の下部からパネル載置部122と平行に突出する突出部123をさらに有することが好ましい。一実施形態においては、突出部123は、挟持壁121aの下辺から挟持壁121aの面に垂直に突出する板状体123aと、挟持壁121bの下辺から挟持壁121bの面に垂直に、板状体123aとは反対の方向に突出する板状体123bとからなる。突出部123を設けることによって、図5(b)に示されるように、パネル部材3とは別のパネル部材33を、隣接する母屋10の間に配置することができる。
【0033】
(固定部材)
パネル固定構造1は、パネル部材3と母屋10とを固定するための固定部材20を備える。固定部材20は、図1に示されるように、母屋10のレール部材12に所定の間隔で連結され、所定の間隔は、通常、パネル部材3の幅に対応する距離とすることができる。固定部材20は、図3(a)に示されるように、レール部材12に連結するための連結部201と、パネル部材3に取り付けるための取付部202とを有する。なお、図3の実施形態では、連結部201と取付部202とが別の部材で構成され、両者がボルト又はビスなどで結合されているが、これに限定されるものではなく、例えば、連結部201と取付部202とが一体的に形成されていてもよい。また、例えば、取付部202の下部(連結部と結合される部分)にルーズホール(図示せず)を穿設し、このルーズホールを介して取付部202を連結部201に結合することによって、取付部202が連結部201に対して移動可能となるように固定部材20を構成してもよい。固定部材20の材料は、本発明の目的を達成することができる限り特に限定されるものではなく、金属、樹脂などを適宜用いることができる。
【0034】
連結部201は、パネル載置部122のスリット122cと係合する係合部201aを有する。係合部201aは、限定されるものではないが、図3(a)に示されるように、ベース201bの四隅から突出する4つの爪とすることができる。4つの爪201aは、図3(b)及び図3(c)に示されるように、レール部材12の対応する位置に設けられたスリット122cに挿入される。スリット122cに挿入された爪201aは、図3(d)に示されるように、パネル載置部122の裏面に突出する部分が、例えば工具などによって内側(挟持壁121a、121bの方向)に折り曲げられ、それによって、固定部材20は、レール部材12(すなわち母屋10)から外れないように連結される。なお、爪201aの数は、4つに限定されるものではなく、固定部材20とレール部材12とが強固に連結されるのであれば、3つ以下でも5つ以上でもよい。
【0035】
固定部材20の取付部202は、図1及び図3(a)に示されるように、1枚の板状体が複数箇所で折り曲げられた状態でベース201bに取り付けられる。この折り曲げられた取付部202が、隣接するパネル部材3の対向する端部間に挟まれることによって、固定部材20がパネル部材3に取り付けられるようになっている。すなわち、図4(a)に示されるように、隣接する2つのパネル部材3は、一方のパネル部材3の端部31に凸部31aを有し、他方のパネル部材3の端部32に、凸部31aに対応する形状の凹部32aを有するように加工されている。隣接するパネル部材3は、この凸部31aと凹部32aとを嵌合させることによって互いに組み合わされる構造になっている。固定部材20の取付部202は、凸部31a及び凹部32aが嵌合した部分の形状に対応するように折り曲げられており、組み合わされたパネル部材3の嵌合部分に取付部202を折り込むように挟むことによって、固定部材20をパネル部材3に取り付けることができる。
【0036】
図4(b)に示されるように、取付部202には、例えば1つ又は複数のピンの形態の挿入部202aが設けられることがより好ましい。挿入部202aは、取付部202の一方の面又は両方の面からこれらの面に垂直な方向に突出するように設けられる。取付部202を隣接するパネル部材3の端部間で挟んだときに、挿入部202aがパネル部材3の断熱層に挿入されることによって、隣接するパネル部材3同士、及びパネル部材3と固定部材20とを、より強固に固定するとともに、パネルの浮き上がりを防止することができる。また、パネル部材3が断熱材を2枚の鋼板で挟んだものである場合には、熱による鋼板の伸縮に起因するパネル部材3の動きを抑制することができる。
【0037】
固定部材20は、図4に示される構造に限定されるものではない。例えば、隣接する2つのパネル部材3が、一方のパネル部材3の端部31に2つ以上の凸部31aを有し、他方のパネル部材3の端部32に、凸部31aに対応する数及び形状の2つ以上の凹部32aを有するように加工されていてもよい。このような構造のパネル部材3が用いられる場合には、固定部材20は、パネル部材3の端部31、32の形状に対応する形状に複数箇所で折り曲げられた取付部202を備えるものとすることができる。
【0038】
(パネル部材が固定された状態)
以上のようにして、梁2の上に取り付けられたパネル固定構造1の母屋10に複数のパネル部材3が固定された状態が、図5に示される。複数の梁2の上には、梁2と直交する向きで、複数の母屋10が間隔をもって配置される。複数の母屋10は、一例として、隣接する母屋10の立ち上がり部112の間隔が900mmになるように梁2の上に配置される。複数の母屋10には、複数の固定部材20を介して、複数のパネル部材3が固定される。
【0039】
図5(a)に示されるように、梁2と平行な方向(図5(a)の上下方向)に並んだ複数のパネル部材3は、隣接するパネル部材3の一方の端部31に形成された凸部31aと他方の端部32に形成された凹部32aとによって互いに組み合わされ、凸部31aと凹部32aとの間には、固定部材20の取付部202が折り込まれるように挟まれている。
【0040】
一方、母屋10と並行な方向(図5(a)の左右方向)に並んだ複数のパネル部材3の間には目地4が生じる。この目地4は、防水部材(図示せず)が充填された上で、防水シート(図示せず)で覆われる。なお、図5においては、目地4の部分には母屋10が存在していないが、複数のパネル部材3の各々の長さ(図5の横方向の長さ)を、その両端部が母屋10の上に位置するように複数の母屋10の間隔に対応した長さとし、パネル載置部122の上に目地4が位置するようにパネル固定構造1を構成してもよい。このような構成を採用する場合には、パネル固定部材20は、4枚のパネル部材3の隣接する4つの角部に位置する(すなわち、1つの固定部材20を4枚のパネル部材3で共有する)ことになる。図5(b)に示されるように、隣接する母屋10の間には、突出部123の上に別のパネル部材33、例えば断熱材、防音材などを配置することができる。
【0041】
[パネル固定方法]
次に、パネル部材3を建築物に固定する固定方法を説明する。
まず、建築物の建築過程において、母屋10を構成する基礎部材11を、建築物の梁2の所定の位置に取り付ける。母屋10は、上述のように、基礎部材11とレール部材12とを組み合わせた構造となっている。したがって、母屋10を構成する基礎部材11をあらかじめ建築現場に搬入しておき、鉄骨工事の際に作業者が基礎部材11の取付部111を溶接やボルトなどを用いて梁2に取り付けることが好ましい。基礎部材11は、あらかじめ梁2に取り付けておき、その後建築現場に搬入するようにしてもよい。
【0042】
次に、梁2に取り付けられた基礎部材11にレール部材12を結合させて、図2に示されるように母屋10を完成させる。基礎部材11は、取付部111と、取付部111の一方の長辺から立ち上がるように形成された立ち上がり部112とを有する。一方、レール部材12は、パネル部材3を載置するパネル載置部122と、パネル載置部122の下面の幅方向中央部から下方に延びるように形成されている結合部121とを有する。したがって、立ち上がり部112を結合部121に挿入するようにレール部材12を配置し、立ち上がり部112に設けられた貫通孔112hと、結合部121に設けられた貫通孔121hとを位置合わせし、位置合わせされた貫通孔112h、121hにボルト及びナットなどの締結部材30を挿通して締結することによって、基礎部材11とレール部材12とを固定することができる。なお、貫通孔112h、121hは、ルーズホールとして形成されているので、必要に応じて、レール部材12の高さを微調整する。
【0043】
完成した母屋10の上に、次に、パネル部材3を載置する。まず、図3に示されるように、固定部材20の連結部201に設けられた4つの爪201aをレール部材12のパネル載置部122に設けられた4つのスリット122cに挿入し、挿入された爪201aを内側(挟持壁121a、121bの方向)に折り曲げることによって、固定部材20とレール部材12とを連結する。次に、複数のパネル部材3をそれぞれ配置される位置まで搬送する。複数のパネル部材3の搬送方法は、図6を用いて後述する。次いで、固定部材20の取付部202を、隣接するパネル部材3の対向する端部31、32間に挟んで、一方の端部31の凸部31aと他方の端部32の凹部32aとの間に折り込むようにして、複数のパネル部材3を配置していく。
【0044】
別の実施形態においては、取付部202がなく4つの爪201aを有するベース201bのみの固定部材20を用いることもできる。この場合、固定部材20を、ビス、ボルト、溶接、又は接着剤などの手段を用いて、パネル部材3にあらかじめ取り付けておくこともできる。この実施形態においては、複数のパネル部材3をパネル載置部122に配置する際に、あらかじめパネル部材3に取り付けられた固定部材20の爪201aをレール部材12のスリット122cに挿入し、挿入された爪201aを内側(挟持壁121a、121bの方向)に折り曲げることによって、固定部材20をレール部材12に連結する。
【0045】
[パネル搬送配置方法]
ここで、母屋10が完成した後に、そのレール部材12の上に載置される複数のパネル部材3を、それぞれのパネル部材3が載置される位置まで搬送して配置するパネル搬送配置方法を説明する。パネル搬送配置方法は、本発明のパネル固定構造1を施工するために開発されたパネル搬送装置5を用いて、複数のパネル部材3を移動させながら施工位置に配置していくものである。このパネル搬送配置方法を用いることによって、少人数で安全にパネル部材3を所定位置まで搬送し、施工場所に配置することができる。
【0046】
図6は、パネル固定構造1にパネル部材3を固定する施工のために複数のパネル部材3を搬送する搬送装置5とその使用方法とを示す図であり、(a)は複数のパネル部材3を積載した状態のパネル搬送装置5の正面図、(b)はパネル搬送装置5の上面図、(c)はパネル搬送装置5の1つの台車51及び架台本体部52aの正面図である。パネル搬送装置5は、複数のレール部材12のパネル載置部122の各々の上を走行する複数の台車51と、複数の台車51の上に架け渡された架台52とを有する。架台52の上には、複数のパネル部材3が積載される。パネル搬送装置5は、建築物の高所において複数のレール部材12の上を走行するものであるため、できるだけ軽量であることが好ましく、例えばアルミニウムを用いて作製されることが好ましい。
【0047】
台車51は、レール部材12の上を走行するように構成されており、フレーム51aに、レール部材12のパネル載置部122の幅に対応する間隔を有する1対の車輪51bが取り付けられる。車輪51bには、パネル載置部122の両端部(好ましくは、翼部122d)に乗るように形成された切り欠き51cが設けられているため、走行中に台車51がパネル載置部122から逸脱する危険性を低減させることができる。台車51には、車輪51bの回転を止めるためのブレーキ(図示せず)を設けることが好ましい。
【0048】
複数の台車51の上には、パネル部材3を積載するための架台52が設けられている。架台52は、パネル部材3がはみ出さない大きさであることが好ましい。架台52は、台車51のフレーム51aに取り付けられる複数の本体部52aと、隣接する本体部52aの間を連結するための複数の連結部52bとを有する。本体部52aと連結部52bとの間は、組み立て及び解体を容易に行うことができるように、公知の取り外し可能な連結方法、例えばボルト及びナットによる締結方法や、互いに連結可能に加工された継手による連結方法などを用いればよい。なお、図6においては、長方形状の1つの本体部52aをその長さ方向に間隔を空けて配置された2つの台車51で支持するように示されているが、本体部52aの長さ、幅、及び台車51の数はこれに限定されるものではなく、パネル部材3の大きさに応じて、長さ及び幅を適宜変更した本体部52aを用いたり、台車51の数を3つ以上にしたりすることができる。また、連結部52bの長さ、幅及び数は、パネル部材3の大きさやレール部材12の間隔などに応じて、適宜変更することができる。
【0049】
施工時には、このように構成されたパネル搬送装置5のそれぞれの台車51の車輪51bを、母屋10の長さ方向の端部で、レール部材12のパネル載置部122の上に配置する。次に、パネル搬送装置5の架台52の上に、荷上げした複数のパネル部材3を積載する。次に、パネル載置部122に沿って台車51を走行させることによって、パネル搬送装置5を、パネル部材3を施工する所定位置の近くまで移動させる。所定位置に移動させたパネル搬送装置5から必要な数のパネル部材3を降ろし、レール部材12のパネル載置部122に配置し、上述したパネル部材3の固定方法にしたがってパネル部材3を母屋10に固定する。パネル搬送装置5に積載したすべてのパネル部材3の配置を終えると、次の複数のパネル部材3を積載する位置までパネル搬送装置5を移動させ、必要な枚数のパネル部材3を積載し、上述の工程を繰り返す。このようにして、複数の母屋10に必要な枚数のパネル部材3を固定することができる。
【0050】
[パネル固定構造の別の実施形態]
本発明の別の実施形態によるパネル固定構造を以下に説明する。なお、以下においては、上述の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0051】
図7は、本発明の別の実施形態によるパネル固定構造を構成する母屋10を示す斜視図である。レール部材12のパネル載置部122には、幅方向の概ね中央部分に、受け部122c’が配置される。図7においては、図面を簡単にするために1つの受け部122c’のみが描かれているが、実際には、受け部122c’は、パネル載置部122の長さ方向に複数設けられる。図1から図5を用いて説明した実施形態による受け部122cは、パネル載置部122を貫通するようにその長さ方向に延びる4つのスリットであった(図2参照)。それに対して、本実施形態による受け部122c’は、パネル載置部122を貫通するように設けられた幅方向に延びる2つのスリット122c’a、122c’bと、2つのスリット122c’a、122c’bの間に設けられた隆起部122c’cとを有する。2つのスリット122c’a、122c’bには、後述されるように、固定部材60の連結部601が挿入され、受け部122c’は、連結部601の係合部601bと連結される。2つのスリット122c’a、122c’b及び隆起部122c’cの高さ及び幅は、係合部601bの高さに対応するように設定される。これらの長さ(レール部材12の長さ方向の長さ)は、連結部601のベース601aの長さより長い限り特に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態によるパネル固定構造は、パネル部材3と母屋10とを固定するための固定部材60を有する。図8(a)は、本発明の別の実施形態によるパネル固定構造を構成する固定部材60と、固定部材60の連結部601が挿入される受け部122c’が配置されたレール部材12とを示す斜視図(a)であり、図8(b)は、固定部材60がレール部材12に連結された状態を示す斜視図である。また、図9は、さらに別の実施形態による固定部材60の斜視図(a)及び三面図(b)である。図9(b)の三面図は、(1)図9(a)の斜視図の左斜め下方から見た図、(2)斜視図の左斜め上方から見た図、及び、(3)斜視図の上方から見た図である。
【0053】
固定部材60は、レール部材12に連結するための連結部601と、パネル部材3に取り付けるための取付部602とを有する。図8の実施形態では、連結部601と取付部602とが一体に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、連結部601と取付部602とを別の部材で作製し、これらを例えば溶接などによって接続してもよい。
【0054】
連結部601は、ベース601aを有し、図8(a)に示されるようにベース601aがスリット122c’aと122c’bとを通して受け部122c’に挿入されることによって、固定部材60とレール部材12とが連結される。ベース601aの長さは、2つのスリット122c’a、122c’b及び隆起部122c’cに確実に挿入することができ、固定部材60とレール部材12との連結が確実に実現できるものであれば、特に限定されるものではない。ベース601aは、受け部122c’に挿入されたときに隆起部122c’cによって隠れる部分に、係合部601bを有する。
【0055】
係合部601bには、係合部601bの下面から下方に突出するストッパ601cが設けられていることが好ましい。ストッパ601cは、連結部601の先端(取付部602とは反対の方向)から後方(取付部602の方向)に向かって滑らかに下方に突出するように形成されるとともに、後方が垂直に切り立った端面として形成される。したがって、ベース601aを受け部122c’に一旦挿入すると、ストッパ601cの切り立った端面がスリット122c’aの下縁に引っかかり、連結部601が受け部122c’から容易に外れなくなる。ストッパ601cの数は1つに限定されるものではなく、ベース601aの幅方向に2つのストッパを並べて設けてもよい。
【0056】
ベース601bの上面には、連結部601の強度を向上させるためのリブ601dが設けられることが好ましい。リブ601dの位置、数、長さ及び高さなどは、特に限定されるものではなく、連結部601の補強に有効であればよい。係合部601bにおけるベース601aからリブ601dの頂部までの高さは、2つのスリット122c’a、122c’b及び隆起部122c’cに対応するように設定される。
【0057】
取付部602は、固定部材202の取付部202に対応する。図4(a)に示される取付部202と同様に、取付部602をパネル部材3の凸部31aと凹部32aとに挟み込むことによって、固定部材60をパネル部材3に取り付けることができる。
【0058】
取付部602には、図9に示されるように、2つのピン形態の挿入部602aが設けられることが好ましい。挿入部602aは、取付部602の垂直面602cから突出するように設けられる。挿入部602aは、取付部602の垂直面602cにくさび形状の切り込みを形成しておき、施工時に切り込みから起こして使用することができる(挿入部602aを起こした後には、開口602bが形成される)。図9では、垂直面602cの一方の面側に2つの挿入部602aが起こされているが、これに限定されるものではなく、垂直面602aの両面にそれぞれ1つの挿入部602aが起こされてもよい。なお、挿入部602aは、図9に示される形態に限定されるものではなく、垂直面602cにピンを溶接するなどによって形成してもよい。また、挿入部602aの数は、2つに限定されるものではなく、長さも限定されるものではない。さらに、図9では、2つの挿入部602aが高さ方向に異なる位置に設けられているが、これに限定されるものではなく、同じ高さに設けられてもよい。
【0059】
図4(b)に示される固定部材20の場合と同様に、取付部602を隣接するパネル部材3の端部間で挟んだときに、挿入部602aがパネル部材3の断熱層に挿入されることによって、パネル部材3と固定部材60とを、より強固に固定するとともに、パネルの浮き上がりを防止することができる。また、パネル部材3が断熱材を2枚の鋼板で挟んだものである場合には、熱による鋼板の伸縮に起因するパネル部材3の動きを抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 パネル固定構造
10 母屋
11 基礎部材
111 取付部(板状体)
112 立ち上がり部(板状体)
112h 貫通孔(ルーズホール)
12 レール部材
121 結合部
121h 貫通孔(ルーズホール)
121a、121b 挟持壁(板状体)
122 パネル載置部
122a 上面
122ba、122bb 下面
122c 受け部(スリット)
122d 翼部
122c’ 受け部
122c’a、122c’b スリット
122c’c 隆起部
123、123a、123b 突出部
13 締結部材
20 固定部材
201 連結部
201a 係合部(爪)
201b ベース
202 取付部
202a 挿入部(ピン)
2 梁
3 パネル部材
31 一方の端部
31a 凸部
32 他方の端部
32a 凹部
33 別のパネル部材
4 目地
5 パネル搬送装置
51 台車
51a フレーム
51b 車輪
51c 切り欠き
52 架台
52a 本体部
52b 連結部
60 別の固定部材
601 連結部
601a ベース
601b 係合部
601c ストッパ
601d リブ
602 取付部
602a 挿入部
602b 開口
602c 垂直面

【要約】
パネル部材を貫通するビスを用いることなくパネル部材を母屋に固定することを可能にする、金属下地屋根におけるパネル固定構造を提供する。パネル固定構造は、建築物の梁に配列される複数の母屋と、複数のパネルに取り付けられる複数の固定部材とを備える。複数の母屋の各々は、立ち上がり部を有し、梁に固定される複数の基礎部材と、立ち上がり部に結合される結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を持つ、レール部材とを有する。複数の固定部材の各々と、複数の母屋の各々が有するレール部材とを連結させることによって、複数のパネルと複数の母屋とを固定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9