IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪シーリング印刷株式会社の特許一覧

特許7133264ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法
<>
  • 特許-ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法 図1
  • 特許-ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法 図2
  • 特許-ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法 図3
  • 特許-ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法 図4
  • 特許-ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法 図5
  • 特許-ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220901BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018007785
(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公開番号】P2019126910
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100182822
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】盛屋 美和
(72)【発明者】
【氏名】古澤 寛樹
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202499328(CN,U)
【文献】特開2016-141403(JP,A)
【文献】実開平03-032066(JP,U)
【文献】登録実用新案第3003279(JP,U)
【文献】特開平06-024420(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072410(WO,A1)
【文献】特開2003-026838(JP,A)
【文献】特開2005-292328(JP,A)
【文献】特開昭49-067788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
B65D 51/00-51/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の片側に積層されたヒートシール層とを有し、
前記ヒートシール層の前記基材層とは反対側の面に、印刷層が形成された印刷領域と、印刷層が形成されていない非印刷領域とを有し、
方形状であり、互いに対向する両端部に沿って前記非印刷領域が形成されており、
前記非印刷領域が前記ヒートシール層の端部の全体に亘って延び、前記印刷領域が互いに対向する両端部に沿って形成される前記非印刷領域の間に位置している、ヒートシールフィルム。
【請求項2】
基材層と、前記基材層の片側に積層されたヒートシール層とを有し、
前記ヒートシール層の前記基材層とは反対側の面に、印刷層が形成された印刷領域と、印刷層が形成されていない非印刷領域とを有し、
円形状または楕円形状であり、端部に沿って、前記印刷領域と前記非印刷領域とが形成されており、
前記印刷領域が前記ヒートシール層の端部の一部に形成され、前記非印刷領域が前記印刷領域を除く前記ヒートシール層の端部の全周に亘って延びている、ヒートシールフィルム。
【請求項3】
ヒートシール処理領域において、前記印刷領域と前記非印刷領域とを有する、請求項1または2に記載のヒートシールフィルム。
【請求項4】
前記基材層の前記ヒートシール層とは反対側に積層され、加熱により発色する発色材料を含む感熱記録層を有する、請求項1~3のいずれかに記載のヒートシールフィルム。
【請求項5】
前記基材層および前記感熱記録層が透明である、請求項4に記載のヒートシールフィルム。
【請求項6】
容器と、前記容器の帯封として請求項1に記載のヒートシールフィルムと、を有する、包装材。
【請求項7】
容器と、前記容器のトップシールとして請求項2に記載のヒートシールフィルムと、を有する、包装材。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載のヒートシールフィルムを用いた包装材の製造方法であって、
前記ヒートシールフィルムの端部において、前記印刷領域と前記非印刷領域とを含む領域を加熱することにより、前記印刷領域における前記ヒートシール層をヒートシールすることなく、前記非印刷領域における前記ヒートシール層をヒートシールすることを含む、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール層を有するヒートシールフィルムは、食品包装などの様々な用途に用いられている。一般的に、ヒートシールフィルムは、ヒートシールフィルムを重ねた部分にヒートシール層とは反対側からヒートシールバーを押し当てて加熱することにより、加熱された部分がヒートシールされる。このように、従来のヒートシールフィルムは、ヒートシールバーを押し当てた部分がヒートシール処理領域となって、ヒートシール層側が一様にヒートシール(熱溶着)されるものであり、ヒートシール処理領域において任意のパターン状にヒートシールすることは容易ではない。パターン状にヒートシールする手段として、例えば、ヒートシール層をパターニングするか、または、ヒートシールバーによる加熱箇所をパターニングすることが考えられるが、これらの手段は工程および構成が複雑化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-292328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、簡易な構成により、任意の領域をヒートシールすることが可能なヒートシールフィルム、そのようなヒートシールフィルムを用いた包装材、および包装材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のヒートシールフィルムは、基材層と、上記基材層の片側に積層されたヒートシール層とを有し、上記ヒートシール層の上記基材層とは反対側の面に、印刷層が形成された印刷領域と、印刷層が形成されていない非印刷領域とを有する。
1つの実施形態においては、ヒートシール処理領域において、上記印刷領域と上記非印刷領域とを有する。
1つの実施形態においては、上記基材層の上記ヒートシール層とは反対側に積層され、加熱により発色する発色材料を含む感熱記録層を有する。
1つの実施形態においては、上記基材層および上記感熱記録層が透明である。
1つの実施形態においては、上記ヒートシールフィルムは方形状であり、互いに対向する両端部に沿って上記非印刷領域が形成されている。
1つの実施形態においては、円形状または楕円形状であり、端部に沿って、上記印刷領域と上記非印刷領域とが形成されている。
本発明の別の局面によれば、包装材が提供される。この包装材は、容器と、上記容器の帯封として上記ヒートシールフィルムと、を有する。
1つの実施形態においては、上記包装材は、容器と、上記容器のトップシールとして上記ヒートシールフィルムと、を有する。
本発明の別の局面によれば、包装材の製造方法が提供される。この包装材の製造方法は、上記ヒートシールフィルムを用いた包装材の製造方法であって、上記ヒートシールフィルムの端部において、上記印刷領域と上記非印刷領域とを含む領域を加熱することにより、上記印刷領域における上記ヒートシール層をヒートシールすることなく、上記非印刷領域における上記ヒートシール層をヒートシールすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略断面図である。
図2】本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムをヒートシール処理する工程を示す概略図である。
図3】本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図である。
図4】本発明の別の実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図である。
図5】本発明の1つの実施形態による包装材の概略図である。
図6】本発明の別の実施形態による包装材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0008】
A.ヒートシールフィルム
図1は、本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略断面図である。図1に示すように、ヒートシールフィルム100は、基材層10と、基材層10の片側に積層されたヒートシール層20とを有する。さらに、ヒートシールフィルム100は、ヒートシール層20の基材層10とは反対側の面に、印刷層30が形成された印刷領域31と、印刷層30が形成されていない非印刷領域32とを有する。すなわち、ヒートシールフィルム100は、非印刷領域32においてはヒートシール層20が露出しており、印刷領域31においてはヒートシール層20が露出していない。これにより、ヒートシールフィルム100をヒートシール処理したとき、非印刷領域32においてはヒートシールされ、印刷領域31においてはヒートシールされない。印刷領域31の位置および大きさなどは限定されず、任意の位置に任意の大きさの印刷層30を形成することができる。これにより、印刷層30の形成領域に応じて任意の領域をヒートシールすることができる。
【0009】
図2は、本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムをヒートシール処理する工程を示す概略図である。図2に示すように、ヒートシールフィルム100は、代表的には、ヒートシール層20が被着体に面するように一方の端部を被着体に重ねた状態で、ヒートシール層20とは反対側の面にヒートシールバー200を押し当てて加熱することにより、ヒートシールされる。なお、ヒートシール処理工程においては、ヒートシールバーを、被着体のヒートシールフィルム100とは反対側から押し当ててもよいし、ヒートシールフィルム100および被着体を挟むように両側から押し当ててもよい。被着体は、ヒートシールフィルム100の他方の端部であってもよいし、他のフィルムであってもよいし、後述する容器であってもよい。ここで、ヒートシールバーが押し当てられる部分に対応する領域を、ヒートシール処理領域Aとする。図2に示すように、ヒートシールフィルム100は、好ましくは、ヒートシール処理領域Aにおいて、ヒートシール層20の基材層10とは反対側の面に、印刷領域31と非印刷領域32とを有する。ヒートシールフィルム100は、ヒートシールすべきでない領域におけるヒートシール層20の表面を印刷領域31としておくことによって、従来のヒートシールフィルムをヒートシール処理する場合と同様にヒートシール処理領域Aにヒートシールバーを押し当てたときに、ヒートシール処理領域Aにおける非印刷領域32のみをヒートシールすることができる。
【0010】
ヒートシール処理領域Aは、代表的には、ヒートシールフィルム100の端部の領域であり、ヒートシールバー200の幅に対応する幅を有する領域である。ヒートシール処理領域Aは、例えば、端部から1mm~20mmの幅を持つ領域であり、好ましくは端部から2mm~10mmの幅を持つ領域である。すなわち、ヒートシールフィルム100は、端部から所定の幅を持つ領域に、印刷領域31と非印刷領域32とを有する。印刷層30は、上記のとおり、ヒートシール処理領域Aの任意の位置に形成することができる。ヒートシールフィルム100は、ヒートシール処理領域Aに2以上の印刷領域31および/または非印刷領域32を有していてもよい。また、図1および2に示す例では、ヒートシール処理領域Aにおける最も端部側が非印刷領域32であるが、ヒートシール処理領域Aにおける最も端部側は印刷領域31であってもよい。
【0011】
ヒートシールフィルム100は、枚葉状であってもよいし、長尺状であってもよい。例えば、ロール状のヒートシーラーを用いて長尺状のヒートシールフィルム100を搬送しながら連続的にヒートシール処理する場合、ヒートシールすべきでない領域におけるヒートシール層20の表面を印刷領域31としておくことによって、ヒートシールすべきでない領域においてもヒートシールフィルム100とヒートシーラーとの接触を断つ必要がなく、連続的にヒートシーラーを接触させながらヒートシール処理することができ、ヒートシール処理工程を効率化することができる。
【0012】
1つの実施形態においては、ヒートシールフィルム100は、基材層10のヒートシール層20とは反対側に積層され、加熱により発色する発色材料を含む感熱記録層40を有する。これにより、感熱記録層40に感熱印字することができる。基材層10および感熱記録層40は、好ましくは透明である。これにより、印刷層20における印刷内容を感熱記録層40側から視認することができる。なお、基材層10および感熱記録層40が透明であるとは、感熱記録層40に感熱印字する前の状態において透明であることを意味する。基材層10および感熱記録層40は、好ましくは、JIS P8138に準拠した不透明度が25%以下である。図示は省略するが、ヒートシールフィルム100は、感熱記録層40に代えて、または、感熱記録層40に加えて、任意の適切な機能層を備えていてもよい。上記機能層としては、感熱記録層40(基材層10)の表面に印刷を施す場合に印刷特性を向上させるプライマ層、感熱記録層40(基材層10)の表面に転写印刷を施す場合に転写印刷特性を向上させる層などが挙げられる。このような層は一般的に用いられており周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0013】
図3は、本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図であり、図4は、本発明の別の実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図である。図3に示すヒートシールフィルム100Aは、方形状であり、互いに対向する両端部に沿って非印刷領域32が形成されている。このようなヒートシールフィルム100Aは、後述する帯封として好適に用いられ得る。ヒートシールフィルム100Aにおいて、非印刷領域32の幅は、例えば1mm~100mmであり、好ましくは1mm~30mmであり、さらに好ましくは5mm~20mmである。また、図4に示すヒートシールフィルムは、円形状または楕円形状であり、端部に沿って、印刷領域31と非印刷領域32とが形成されている。このようなヒートシールフィルムは、後述するトップシールとして好適に用いられ得る。図4(A)に示すヒートシールフィルム100Bは円形状であり、ほぼ全周に亘り、端部に沿って非印刷領域32が形成されており、端部の一部に印刷領域31が形成されているとともに、端部の非印刷領域32の内側に印刷領域31が形成されている。非印刷領域32の幅(端部から中心に向かう方向における幅)は、例えば1mm~10mmであり、好ましくは2mm~5mmである。図4(B)に示すヒートシールフィルム100Cでは、図4(A)のヒートシールフィルムにおける内側の領域が非印刷領域32とされている。
【0014】
A-1.基材層
基材層は、ヒートシールフィルムの基材として用いることができる任意の適切な材料で構成される。基材層は、例えば、樹脂フィルム、金属箔、紙、不織布、織布などにより構成され得、好ましくは樹脂フィルムにより構成される。
【0015】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリスチレンなどのスチレン樹脂;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリカーボネートなどのカーボネート系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0016】
樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、基材層は、単層フィルムにより構成されていてもよく、多層フィルムにより構成されていてもよい。
【0017】
取り扱い性、他の層の形成し易さ、透明性などの観点から、基材層の厚みは、例えば、5μm~150μmであり、好ましくは10μm~100μmであり、さらに好ましくは20μm~70μmである。
【0018】
A-2.ヒートシール層
ヒートシール層は、ヒートシール性を有する任意の適切な材料により構成される。このような材料としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に用いられる。また、上記の他に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂(オレフィン-酢酸ビニル共重合体など);エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0019】
ヒートシール層は、上記樹脂材料からなるフィルムを基材層に積層(ドライラミネート)することにより形成してもよいし、上記樹脂材料を、基材層を構成する樹脂とともに共押出しすることにより基材層上に形成してもよい。また、基材上に、ヒートシール層を構成する材料を塗工することにより形成しても良い。
【0020】
ヒートシール層の厚みは、積層や共押出しにより形成する場合は、好ましくは5μm~100μmであり、より好ましくは10μm~30μmである。塗工により形成する場合は、好ましくは0.1μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~3.0μmである。
【0021】
A-3.印刷層
印刷層は、代表的には、印刷層を構成する材料をヒートシール層の表面に印刷することにより形成される。上記材料としては、例えば、染料、顔料、金属、バインダー成分の材料、溶媒、他の成分などを含む塗工液が挙げられる。また、上記材料は金属を含んでいてもよく、金属をヒートシール層の表面に蒸着することにより印刷層を形成してもよい。金属の種類も特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金(銅-ニッケル合金、銅-亜鉛合金など)、銀、銀合金などを使用することができる。金属の形態は、金属粉末、金属フレーク、および金属繊維などいずれの形態であっても良い。これらの金属を含有する印刷層は、意匠性に優れるとともに、遮光性にも優れている。
【0022】
上記材料をヒートシール層の表面に印刷する方法は、ヒートシールフィルムの用途やヒートシール層との相性に応じて、任意の適切な方法を採用することができ、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸輪転印刷、UV印刷、シルクスクリーン印刷等が挙げられる。
【0023】
上記のとおり、ヒートシールフィルムをヒートシール処理したとき、ヒートシール層の表面に印刷層が形成された印刷領域はヒートシールされない。すなわち、印刷層は、ヒートシール層のヒートシール性を封じる機能を有し得る。また、基材層および感熱記録層が透明である場合、印刷層における印刷内容は感熱記録層側から視認され得る。したがって、印刷層は、ヒートシール層のヒートシール性を封じるだけでなく、ヒートシールフィルムの意匠性を向上させ得る。ヒートシール層をパターニングする場合に比べて、印刷層は容易にパターニングすることができる。したがって、ヒートシール可能な領域を容易にパターニングすることができる。
【0024】
A-4.感熱記録層
感熱記録層は、上記のとおり、加熱により発色する発色材料を含む。発色材料としては、加熱により発色可能である限り特に制限されず、単独で発色可能な染料を使用してもよく、透明または淡色の染料(ロイコ染料)と、この染料を加熱により発色させることができる顕色剤とを組み合わせて使用してもよい。ロイコ染料と顕色剤とを組み合わせた発色材料は、一般的な感熱記録紙などでも使用されており、入手し易く、汎用性が高い。
【0025】
ロイコ染料としては、公知のものが使用でき、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系などの各種のロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料は、一種を単独で使用してもよいが、二種以上を組み合わせて使用することで、所望の色の印字を行うことができる。
【0026】
顕色剤としては、酸性物質などの電子受容体が使用できる。顕色剤は、ロイコ染料の種類に応じて、適宜選択でき、公知のものが使用できる。顕色剤としては、例えば、酸性無機物(ベントナイト、ゼオライト、シリカゲルなど)、カルボン酸(ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸;シユウ酸、マレイン酸などのポリカルボン酸;酒石酸、クエン酸、コハク酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;安息香酸などの芳香族カルボン酸など)などの他、フェノール性水酸基を有する化合物が例示できる。これらの顕色剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
さらに、感熱記録層は、必要に応じて、結着剤などの他の材料を含み得る。感熱記録層に含まれ得る材料の詳細は、例えば、国際公開第2015/072411号パンフレットに記載されている。当該パンフレットは、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0028】
感熱記録層は、例えば、上記の材料を分散媒に分散させて塗工液を調製し、基材層の表面に塗布し、塗膜を乾燥することにより形成することができる。感熱記録層の構成材料を分散媒に分散させる際には、公知のミキサーの他、サンドミル、ビーズミルなどの公知の粉砕器などを用いてもよい。分散媒としては、例えば、アルコール、ケトン、およびニトリルなどの有機溶媒を用いてもよく、好ましくは水を用いる。
【0029】
感熱記録層は、基材層の表面全体に形成されていてもよいし、印字したい部分がヒートシールフィルムの限られた一部の領域である場合、当該領域のみに形成しても良い。
【0030】
B.ヒートシールフィルムの用途
上記A項に記載のヒートシールフィルムは、包装材の製造に用いられ得る。包装材としては、ヒートシールフィルムの端部をヒートシールして袋状に形成することにより製造される包装袋が挙げられる。包装袋のタイプとしては、例えば、合掌袋、ガゼット袋、三方袋が挙げられる。また、包装材としては、上記包装袋の他に、ヒートシールフィルムを帯封として用いた包装材、ヒートシールフィルムをトップシールとして用いたカップ型の包装材などが挙げられる。
【0031】
図5は本発明の1つの実施形態による包装材の概略図であり、(A)は包装材の斜視図であり、(B)は(A)のB-B線矢視断面図である。包装材200は、容器110と、容器110の帯封としてヒートシールフィルム100と、を有する。ヒートシールフィルム100は、容器110の外周面に巻き付けられた状態で、両端部が互いにヒートシールされてヒートシール部101とされている。このように帯封として用いられるヒートシールフィルムとしては、図3に示すヒートシールフィルム100Aが好適に用いられ得る。容器としては、例えば、市販の弁当用のポリスチレン容器が挙げられる。従来のヒートシールフィルムを帯封として有する弁当は、電子レンジなどで加熱したときに、帯封が容器に溶着してしまう場合がある。これに対して、図3に示すように端部以外を印刷領域としたヒートシールフィルムを帯封として用いることにより、加熱時の容器への溶着を防止することができる。
【0032】
図6は本発明の別の実施形態による包装材の概略斜視図である。包装材201は、容器120と、容器120のトップシールとしてヒートシールフィルム100と、を有する。ヒートシールフィルム100は、容器120の開口部を塞ぐようにして、容器120の開口部の縁にヒートシールされている。このように帯封として用いられるヒートシールフィルムとしては、図4に示すヒートシールフィルム100B(100C)が好適に用いられ得る。容器120としては、例えば、円形の開口部を有するカップ型容器が挙げられる。このような包装材のトップシールとして、図4に示すように端部に沿って印刷領域と非印刷領域とが形成されているヒートシールフィルムを用いることにより、従来のヒートシール処理と同様にヒートシールバーを押し当てたときに、印刷領域をヒートシールすることなく、非印刷領域のみをヒートシールすることができる。これにより、カップ型容器を完全密封することなく、通気性を付与することができ、例えば、空気や蒸気を通す構造とすることができる。
【0033】
C.包装材の製造方法
包装材の製造方法は、ヒートシールフィルムの端部において、印刷領域と非印刷領域とを含む領域を加熱することにより、印刷領域におけるヒートシール層をヒートシールすることなく、非印刷領域におけるヒートシール層をヒートシールすることを含む。包装材としては、1枚のヒートシールフィルムからなる包装袋であってもよいし、2枚以上のヒートシールフィルムからなる包装袋であってもよいし、ヒートシールフィルムを帯封として用いた包装材であってもよいし、ヒートシールフィルムをトップシールとして用いた包装材であってもよい。1枚のヒートシールフィルムからなる包装袋を製造する場合、例えば、一方の端部と他方の端部とを重ねた状態で、ヒートシール層とは反対側の面にヒートシールバーを押し当てて加熱することにより、非印刷領域におけるヒートシール層をヒートシールする。2枚以上のヒートシールフィルムからなる包装袋を製造する場合、例えば、ヒートシールフィルムの端部と他のヒートシールフィルムの端部とを重ねた状態で、ヒートシール層とは反対側の面にヒートシールバーを押し当てて加熱することにより、非印刷領域におけるヒートシール層をヒートシールする。ヒートシールフィルムをトップシールとして用いた包装材を製造する場合、例えば、容器の開口部の縁に対応する位置に印刷領域と非印刷領域とを有するヒートシールフィルムを容器に被せた状態で、開口部の縁の全域に亘ってヒートシールフィルムにヒートシールバーを押し当てて加熱することにより、非印刷領域におけるヒートシール層をヒートシールする。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のヒートシールフィルムは、包装用のフィルムに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0035】
10 基材層
20 ヒートシール層
30 印刷層
31 印刷領域
32 非印刷領域
40 感熱記録層
100 ヒートシールフィルム
200 包装材
図1
図2
図3
図4
図5
図6