(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】医療用縫合針
(51)【国際特許分類】
A61B 17/06 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
A61B17/06 510
(21)【出願番号】P 2019155257
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康史
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 充裕
(72)【発明者】
【氏名】水井 雅人
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121312(JP,A)
【文献】特開平09-322898(JP,A)
【文献】特開2001-333910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切刃部と該切刃部と連続した胴部とを有し、
前記切刃部は、一つの底面と二つの斜面とからなり、前記一つの底面と二つの斜面が一致した鋭い尖端と、前記尖端から連続し前記底面と斜面とが一致して形成された切刃と、前記尖端から連続し二つの斜面が一致して形成された峰とを有し、且つ前記胴部から前記尖端にかけて太みが減少しており、
前記二つの斜面は夫々予め設定された寸法を有し且つ前記尖端から所定寸法離隔した切刃の位置を起点として前記峰に沿って形成された曲面状の溝を有しており、更に該溝の胴部側端部を起点として、該溝が胴部側に向かうのに伴って、該溝の下縁が前記切刃から前記峰側に離隔していることを特徴とする医療用縫合針。
【請求項2】
前記切刃部の二つの斜面は夫々研削面として形成され、前記二つの斜面の夫々に形成された溝はプレス面として形成されていることを特徴とする請求項1に記載した医療用縫合針。
【請求項3】
前記切刃が、前記胴部側端部に於いては、前記底面と前記溝を構成する曲面の下縁により形成され、前記胴部側端部の先端側に隣接する部位に於いては、前記底面と前記溝を構成する曲面により形成され、前記胴部側端部の胴部側に隣接する部位に於いては、前記底面と前記斜面により形成され、且つ前記胴部側端部の胴部側に隣接する部位に於ける切刃の角度が、前記胴部側端部の先端側に隣接する部位に於ける切刃の角度よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載した医療用縫合針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を縫合する際に用いる医療用縫合針に関し、特に、鋭い尖端を含む先端部分に曲がりやクラックが生じる虞を軽減させる医療用縫合針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用縫合針としては、目的の縫合部位に対応させて最適な形状を有する複数の種類のものが提供されている。その中で、鋭い尖端と、該尖端から連続した切刃を有する切刃部と、が形成され、該切刃部の断面が三角形に形成された医療用縫合針がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された医療用縫合針は、断面が三角形の切刃形成部に第1切刃部と、第2切刃部及び第3切刃部が形成されている。第1切刃部は側部分が切刃として形成されており、頂部には切刃は形成されていない。第2切刃部は、周面の両側の斜面を三角形の中心に向けて平行移動させて第1凹部を形成することで、周面の両側に側刃が形成され頂部に山刃が形成されている。更に、第3切刃部は、第2切刃部を形成する各切刃が夫々の角度を保持した状態で周面の両側に側刃が、頂部に山刃が形成されている。
【0004】
上記特許文献1には、第2切刃部の側刃と山刃との刃角を比較的小さくしても肉厚を大きくして高い曲げ強度を得ることができること、第3刃部に於いては、第2凹部により側刃と山刃との刃角を比較的小さくしても鋭利な状態で針先まで連続して形成することができ高い刺通性を得ることができることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2に記載された医療用縫合針は、第1角度と第2角度からなる切刃を有し、三つの切刃を接続面を介して接続することで放射状に配置している。この医療用縫合針では、生体組織を縫合する際の刺通性を向上させることができる。
【0006】
上記特許文献1、2に記載された技術では放射状に配置された三つの切刃を有するので高い刺通性を得ることができる。しかし、断面に於ける中心部分の肉厚が薄くなって強度が低下する虞がある。
【0007】
本件出願人は、上記課題を解決するために、特許文献3に記載した医療用縫合針を開発している。この医療用縫合針は、鋭い尖端と、この尖端から胴部にかけて形成された第1切刃部と、第2切刃部からなる切刃構成部を有している。第1切刃部は、二つの第1斜面と一つの第1底面からなる横断面が三角形に形成されている。また第2切刃部は、二つの第1斜面と夫々の第1斜面に形成された第2斜面と一つの第1底面とを有して形成されている。特に、第2切刃部の胴部側に連続させて第3切刃部を構成する場合、この第3切刃部は、二つの第1斜面に該第1斜面の角度よりも小さい斜面を有する溝が形成されている。
【0008】
このように、第1切刃部は断面が二つの斜面と一つの底面からなる三角形に形成されており、底面と斜面とが交差するエッジに切刃が形成されているため、中心部分の肉厚が薄くなることがなく、先端部分の強度を向上させることができる。特に、第3切刃部に形成された切刃が第1切刃部に形成された切刃よりも刃先角度が小さくなるため、良好な刺通性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-165638号公報(特許第4576589号)
【文献】米国特許第5403344号
【文献】特開2017-121312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献3に記載された医療用縫合針であっても全く問題がないわけではなく、幾つかの改良すべき点を有している。例えば、第2切刃部では、第2底面と第2斜面とが交差するエッジに切刃が形成されるため、このエッジの角度は第1切刃のエッジよりも大きくなり、生体組織の切開性が低下する虞がある。
【0011】
また、第3切刃部では、第1斜面に、該第1斜面よりも小さい角度を有する溝を形成し、この溝の下縁に第3斜面が形成され、この第3斜面と第3底面とが交差するエッジに切刃が形成されている。この第3切刃部のエッジの角度は第1切刃部のエッジの角度よりも小さくなる。そして、峰を挟んで形成された第1斜面のなす角度よりも小さい角度を有する、第2切刃部に於ける第2斜面、第3切刃部に於ける溝を構成する斜面及び第3斜面、はプレス加工によって形成される。このため、特に第3切刃部の加工率が高くなり、該第3切刃部にクラックが発生し易くなる虞がある。
【0012】
本発明の目的は、鋭い尖端を形成した先端部分に曲がりやクラックが生じる虞を軽減させるようにした医療用縫合針を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る代表的な医療用縫合針は、切刃部と該切刃部と連続した胴部とを有し、前記切刃部は、一つの底面と二つの斜面とからなり、前記一つの底面と二つの斜面が一致した鋭い尖端と、前記尖端から連続し前記底面と斜面とが一致して形成された切刃と、前記尖端から連続し二つの斜面が一致して形成された峰とを有し、且つ前記胴部から前記尖端にかけて太みが減少しており、前記二つの斜面は夫々予め設定された寸法を有し且つ前記尖端から所定寸法離隔した切刃の位置を起点として前記峰に沿って形成された曲面状の溝を有しており、更に該溝の胴部側端部を起点として、該溝が胴部側に向かうのに伴って、該溝の下縁が前記切刃から前記峰側に離隔しているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る医療用縫合針(以下単に「縫合針」という)では、切刃部を構成する二つの斜面の夫々に、予め設定された寸法を有し、且つ尖端から所定寸法離隔した切刃の位置を起点として峰に沿って形成された曲面状の溝を有している。このため、底面と曲面状の溝とが交差して形成された切刃を鋭利な角度とすることができる、
【0015】
特に、溝は予め設定された寸法を保持して峰に沿って形成された曲面によって構成され、且つ溝の胴部側端部を起点として、溝が胴部側に向かうのに伴って、該溝の下縁が切刃から峰側に離隔している。このため、特許文献3に記載された縫合針と比較して、切刃部に対する加工率を低下させることができ、該切刃部にクラックが生じる虞を低減することができる。従って、持針器によって把持した状態で生体組織を縫合する際に、尖端を含む先端部分に力が作用した場合でも、クラックや曲がりが生じる虞を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施例に係る縫合針の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る縫合針について説明する。本発明に係る縫合針は、持針器によって把持した状態で生体組織を縫合する際に、切刃部の尖端を含む先端部分にクラックや曲がりが生じる虞を低減させたものである。
【0018】
本発明に於いて、目的の縫合針が円弧状に湾曲した湾曲針であるか、直線状の直針であるか、は限定するものではなく、何れの形状であっても良い。また、目的の縫合針が湾曲針である場合、頂部が湾曲の内側にあるか、外側にあるか、も限定するものではない。
【0019】
本発明に係る縫合針は、切刃部と、該切刃部と連続した胴部と、該胴部と連続した元端部とを有している。切刃部は、胴部から尖端にかけて太みが減少するいわゆる先細形状に形成されている。切刃部の長さや太みは、目的の縫合針のサイズに対応させて適宜設定される。
【0020】
尚、以下の説明に於いて、「太み」とは三角形を含む断面形状の頂点を結ぶ円の径、或いは断面形状の内接円の径をいうものではなく、断面形状の面積に対応する面積を有する円の径をいうものとする。
【0021】
本発明に係る縫合針の切刃部は、一つの底面と、二つの斜面と、二つの斜面の夫々に形成された曲面状の溝を有している。一つの底面と二つの斜面が一致した先端に鋭い尖端が形成されており、この尖端から連続して底面と二つの斜面の夫々が一致して切刃が形成されている。また、尖端から連続して二つの斜面が互いに一致して峰が形成され、且つ胴部から尖端にかけて太みが減少している。
【0022】
二つの斜面の夫々に形成された溝は予め設定された寸法を有しており、尖端から胴部に向けて所定寸法離隔した切刃の位置を起点とし、上縁が峰に沿って配置され、下縁は胴部側に向かうのに伴って切刃から峰側に離隔している。即ち、切刃部に於ける切刃の中間部分に溝が臨むこととなる。このため、溝の上縁が切刃と交差する尖端側端部よりも尖端側の切刃は底面と斜面によって形成され、溝の下縁が切刃と交差する胴部側端部よりも胴部側の切刃は底面と斜面とによって形成される。そして、溝の尖端側端部と胴部側端部の間の切刃は底面と溝を構成する曲面によって形成されている。
【0023】
本発明に於いて、斜面に形成された溝は斜面の最大寸法よりも小さいことが必要であるが、寸法を限定するものではない。また、切刃に於ける溝の位置は特に限定するものではないが、該溝の下縁と切刃との交差点である胴部側端部の尖端からの距離が、縫合針の太みをDとしたとき、この太みDの約2.5~5倍程度であることが好ましい。そして、溝の上縁と切刃との交差点である尖端側端部の尖端からの距離は、前記した切刃に於ける胴部側端部の尖端からの寸法と溝の幅寸法に応じて設定される。
【0024】
二つの斜面に曲面状の溝を形成する際の方法は特に限定するものではなく、研削による方法、プレスによる方法を選択的に採用することが可能である。しかし、加工の容易性と加工に伴う強度の向上を考慮するとプレス加工によることが好ましい。この場合、溝を深くし過ぎると加工率が過大となって好ましくない、
【0025】
切刃部を構成する底面と二つの斜面をプレス加工によって形成した後、何れか一方の面を研削面とし他方の面をプレス面のまま残して形成することが可能であり、全ての面を研削面として形成することも可能である。また、底面と二つの斜面をプレス加工した後、二つの斜面を研削してからプレス加工により曲面状の溝を形成し、その後、底面を研削することでも良い。その場合、先端側の研削量を多くし、先端側に向かうのに伴って、溝が浅くなるように研削する。このように形成することで、溝のプレス加工後、溝の周囲に生じた膨れを削除することが可能である。
【0026】
上記の如く、切刃部を構成する二つの斜面を研削面とすることによって、これらの研削面を互いに一致させることで、斜面によって挟まれた峰を切刃として形成することが可能である。また、二つの研削面を一致させることなく離隔させておくことで、切刃としての機能を有することのない峰として形成することも可能である。
【0027】
本発明に於いて、縫合針の素材として特に限定するものではなく、ステンレス鋼、バネ鋼など、適度な強度を有す材料を選択的に利用することが可能である。しかし、発錆の観点からはステンレス鋼であることが好ましく、特に、オーステナイト系ステンレス鋼からなる丸棒を予め設定された減面率で冷間線引き加工することで、目的の縫合針の太さを持ち且つ組織をファイバー状に伸長させた線材を用いることが好ましい。
【0028】
以下、本実施例に係る縫合針の構成について図を用いて説明する。図に示す縫合針Aは直状に形成されており、この状態で縫合針として用いられるか、或いはこの直状の縫合針Aを後工程で曲げ加工して湾曲状の縫合針として用いられる。
【0029】
本実施例に係る縫合針Aは、予め設定された径まで冷間線引き加工されたオーステナイト系ステンレス鋼からなる線材を所定の長さに切断し、その後、一端側をプレス加工して三角柱状に成形した素材に対し、研削し、止まり穴加工を施すことで形成されている。
【0030】
縫合針Aは、一方側に切刃部10が形成され、該切刃部10と連続して胴部20が形成され、更に胴部20と連続して図示しない縫合糸を取り付ける元端部30が形成されている。切刃部10は生体組織を縫合する際に、該生体組織を刺通して切開する機能を有する。胴部20は切刃部10と元端部30を接続する機能を有しており、切刃部10の断面形状と略同じ形状に形成されている。
【0031】
元端部30は断面が円形に形成されており、端面31には図示しない止まり穴が形成されている。そして、止まり穴に縫合糸の端部を挿入し、元端部30に於ける止まり穴に対応する部分をかしめることで取り付けている。しかし、縫合糸を縫合針に取り付ける構造は本実施例にのみ限定するものではなく、元端部30を扁平状に成形し、成形された平面に一対のバネ性を有する柱を形成し、該柱の間に縫合糸を通過させて取り付ける構造であっても良いことは当然である。
【0032】
切刃部10は一つの底面11と二つの斜面12とを有しており、先端には底面11と二つの斜面12が一致した鋭い尖端13が形成され、該尖端13から連続して底面11と夫々の斜面12とが一致して切刃14が形成されている。即ち、切刃14は底面11の幅方向の両側に尖端13から胴部20に向けた方向に形成されている。
【0033】
切刃部10は胴部20から尖端13にかけて太みが減少するような先細状に形成されている。即ち、切刃部10は尖端13を頂点とする三角錐状に形成されており、縫合針を尖端13側からみたとき、切刃部10は胴部20の断面内にあり、該胴部20の側面から突出する部位がないように形成されている。このため、刺通痕を小さくすることが可能となる。
【0034】
また、切刃部10を構成する二つの斜面12が一致して峰15が形成されている。峰15は切刃としての機能を発揮し得るように構成しても良く、切刃としての機能を有しないように構成しても良い。
【0035】
図に示すように、底面11は切刃部10に於いて、胴部20側から尖端13に向けて峰15に接近するように形成されると共に、峰15が尖端13の近傍で僅かに底面11側に向けて下向きに形成されている。このため、切刃部10は尖端13を頂点とする三角錐状に形成されている。
【0036】
峰15を形成する二つの斜面12のなす角度は限定するものではない。しかし、バランスの良い均等な刺通性を確保するには、底面11の幅方向の両側に形成された各切刃14の角度と同じにすることが好ましい。このため、二つの斜面12のなす角度は60度を中央値として前後に適度な角度範囲を設定したものであることが好ましい。
【0037】
二つの斜面12には夫々曲面18aからなる溝18が峰15に沿って形成されている。前述したように、溝18は斜面12の幅寸法よりも小さい寸法を有し、且つ峰15に沿って形成されている。そして、底面11が尖端13に接近するのに伴って峰15側に接近していることから、溝18の上縁18bが切刃14と交差して交差部位に尖端側端部19aが形成され、下縁18cが切刃14と交差して交差部位に胴部側端部19bが形成される。更に、溝18が胴部20に向かうのに伴って、下縁18cは胴部側端部19bで切刃14から離脱して峰15側に離隔する。
【0038】
溝18は、斜面12に曲面18aを凹状に形成することで構成されている。斜面12に曲面18aからなる凹状の溝18を形成する方法は特に限定するものではなく、斜面12を研削して、或いはプレスして形成することで良い。本実施例では、プレス加工によって斜面12に溝18を形成している。そして、溝18を形成した後、底面11を形成することで切刃14に切刃としての機能を発揮させている。
【0039】
溝18が切刃14と交差したとき、該切刃14に於ける尖端側端部19aと胴部側端部19bに挟まれた部分は平面視が緩い曲線状となり、この部分には底面11と曲面18aとが一致した切刃14bが形成される。
【0040】
従って、切刃14は、尖端13と尖端側端部19aとの間に底面11と斜面12とが一致して形成された切刃14aと、尖端側端部19aと胴部側端部19bとの間に形成された切刃14bと、胴部側端部19bから胴部20に向けて底面11と斜面12とが一致して形成された切刃14cと、が連続して構成されている。
【0041】
このため、切刃部10の横断面の形状は、尖端13から尖端側端部19aの間では、
図4(a)に示すように、二つの切刃14aと峰15を頂点とする三角形(本実施例では略正三角形)となる。また、溝18よりも胴部20側では同図(d)に示すように、二つの切刃14cと峰15を頂点とする略正三角形となる。
【0042】
尖端側端部19aから胴部側端部19bの間では、同図(b)に示すように、峰15を構成する斜面12の下方に溝18の斜面18aが形成された略五角形状を有している。そして、底面11と溝18を構成する曲面18aが一致して切刃14bが形成されている。特に、切刃14bが底面11と曲面18aが一致して形成されることから、特許文献3に記載されているような、平面どうしが一致して形成されたエッジよりも鋭いエッジを有する切刃とすることが可能となる。
【0043】
また、胴部側端部19bよりも胴部20側であって溝18が形成されている部位(胴部側端部19bの胴部20側に隣接する部位)では、同図(c)に示すように、斜面12の面内に溝18が形成された略正三角形となる。そして、切刃14cは尖端13から尖端側端部19aまでの間に形成された切刃14aと同じ角度を有して該切刃14aの延長線上に位置している。
【0044】
特に、胴部側端部19bの胴部20側に隣接する部位に於ける切刃14cの角度は、胴部側端部19bの尖端13側に隣接する部位の切刃14bの角度よりも大きく形成されている。言い換えると、尖端側端部19aと胴部側端部19bの間の切刃14bの角度は、切刃14cの角度よりも小さく形成されている。
【0045】
上記の如く構成された縫合針Aでは、持針器によって把持したときに曲がりが生じる虞のある胴部側端部19bの胴部20側に隣接する部位に曲がりが生じ難くなる。このため、特許文献3に記載した縫合針と比較して信頼性が向上する。
【0046】
本件発明者が本発明に係る縫合針Aと従来の縫合針として特許文献3に記載された縫合針の比較テストを行った。両縫合針は同一の規格サイズとし、尖端から3mmの位置を持針器によって把持し、先端に力を作用させて曲げモーメントと曲がり角度の関係を測定した。
【0047】
本発明に係る縫合針では、20度曲げたときの曲げモーメントは略35mN・mであり、90度曲げたときの曲げモーメント略40mN・mであった。また、比較した縫合針では、20度曲げたときの曲げモーメントは略25mN・mで、50度曲げたときに降伏した。この比較結果からも、本発明に係る縫合針は充分な曲げ強さを発揮し得るということがいえる。
【0048】
尚、胴部20はプレス加工による底面21と二つの斜面22を有しており、底面21と斜面22とは曲面23(R面)を介して接続され、二つの斜面22どうしも曲面からなる峰24を介して接続されている。このため、各曲面23、24は切刃としての機能を付与されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る縫合針Aは、直状の縫合針として、或いは湾曲状の縫合針として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
A 縫合針
10 切刃部
11、21 底面
12、22 斜面
13 尖端
14、14a~14c 切刃
15 峰
18 溝
18a 曲面
18b 上縁
18c 下縁
19a 尖端側端部
19b 胴部側端部
20 胴部
23、24 曲面
30 元端部
31 端面