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  • 特許-頭部保護部材及びチャイルドシート 図1
  • 特許-頭部保護部材及びチャイルドシート 図2
  • 特許-頭部保護部材及びチャイルドシート 図3
  • 特許-頭部保護部材及びチャイルドシート 図4
  • 特許-頭部保護部材及びチャイルドシート 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】頭部保護部材及びチャイルドシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20220901BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20220901BHJP
【FI】
B60N2/28
B60N2/80
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017008046
(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公開番号】P2018114907
(43)【公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】作本 政幸
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】実公昭57-002196(JP,Y2)
【文献】特開2005-198856(JP,A)
【文献】米国特許第07490909(US,B1)
【文献】登録実用新案第3072561(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0062919(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012017746(DE,A1)
【文献】国際公開第2015/082743(WO,A1)
【文献】米国特許第06139100(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104169126(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/28
B60N 2/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児を拘束するチャイルドシートに配置される頭部保護部材において、
前記チャイルドシートの側壁部を覆うように配置されクッション材により袋状に構成されたサイドサポートと、
前記サイドサポートの内部に挿入され前記チャイルドシートの側壁部と前記乳幼児の首部との間に配置された一対のブロック体と、を備え、
前記ブロック体は、弾性材又は樹脂材により構成された柱状体であり、
前記ブロック体は、前記乳幼児の首部に接触可能な第一側面部と、前記側壁部に接触可能かつ前記第一側面部よりも高い第二側面部と、前記第一側面部の上端と前記第二側面部の上端との間に配置された傾斜面と、を含み、
前記ブロック体は、前記乳幼児を正常に拘束した通常状態では前記首部の左右両側に隙間を有するように配置されており、
前記ブロック体は、前記乳幼児の身体全体が前記側壁部に向かって移動した際に、前記側壁部と前記首部との間に挟まれた状態になり、前記第一側面部により前記首部の横方向の移動を規制し、前記傾斜面により前記頭部の回転力を低減するように構成されている、
ことを特徴とする頭部保護部材。
【請求項2】
前記傾斜面は、凸状に湾曲した曲面である、ことを特徴とする請求項1に記載の頭部保護部材。
【請求項3】
乳幼児を収容する空間を形成する本体部と、該本体部の内側に配置されたシートクッションと、前記乳幼児を前記本体部に拘束するハーネスと、を備えたチャイルドシートにおいて、
請求項1又は2に記載された頭部保護部材を備える、ことを特徴とするチャイルドシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部保護部材及びチャイルドシートに関し、特に、車両の側面衝突等の緊急時に適した頭部保護部材及びチャイルドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートベルトを着用する事ができない乳幼児(乳児及び幼児)を車両に乗車させる際、乳幼児の安全を確保するために身体を座席に固定する装置としてチャイルドシートを用いることが一般的である。なお、チャイルドシートは、年少者拘束装置や幼児用補助装置と称する場合もある。
【0003】
かかるチャイルドシートは、例えば、乳幼児を収容する空間を形成するシート状の本体部と、その内側に配置されたシートクッションと、乳幼児を拘束するハーネスと、を備えている。チャイルドシートに乳幼児を固定した状態で車両が側面衝突した場合には、乳幼児は本体部の側壁部に衝突することとなる。このとき、首が据わっていない乳児や首が柔らかい幼児の場合には、首部及び頭部が略水平方向に移動し、頭部が本体部の側壁部に衝突しやすい。
【0004】
かかる乳幼児の頭部を拘束するために、頭部保護パッドを備えたチャイルドシートが既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された頭部保護パッドは、年少者の両側頭部から頭頂部を取り囲むように配置された柔軟パッドと、その外側に配置された衝撃吸収パッドと、その外側に配置された固定パッドと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4817591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された頭部保護パッドでは、衝撃吸収パッドとしてウレタンや発泡材等の素材を用い、柔軟パッドとしてスポンジ等の衝撃吸収パッドよりも柔らかい素材を用いていることから、車両の側面衝突時には、首部及び頭部が柔軟パッドを簡単に押し潰してしまい、頭部が衝撃吸収パッドに衝突する際の衝撃が高くなりやすいという問題がある。また、特許文献1に記載された頭部保護パッドでは、乳幼児の側頭部から頭頂部まで覆っていることから、乳幼児に与える圧迫感が強く、不快感を生じやすいという問題もある。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、車両の側面衝突等の緊急時に生じる頭部の衝撃を緩和することができるとともに、快適性を向上することができる、頭部保護部材及びチャイルドシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、乳幼児を拘束するチャイルドシートに配置される頭部保護部材において、前記チャイルドシートの側壁部を覆うように配置されクッション材により袋状に構成されたサイドサポートと、前記サイドサポートの内部に挿入され前記チャイルドシートの側壁部と前記乳幼児の首部との間に配置された一対のブロック体と、を備え、前記ブロック体は、弾性材又は樹脂材により構成された柱状体であり、前記ブロック体は、前記乳幼児の首部に接触可能な第一側面部と、前記側壁部に接触可能かつ前記第一側面部よりも高い第二側面部と、前記第一側面部の上端と前記第二側面部の上端との間に配置された傾斜面と、を含み、前記ブロック体は、前記乳幼児を正常に拘束した通常状態では前記首部の左右両側に隙間を有するように配置されており、前記ブロック体は、前記乳幼児の身体全体が前記側壁部に向かって移動した際に、前記側壁部と前記首部との間に挟まれた状態になり、前記第一側面部により前記首部の横方向の移動を規制し、前記傾斜面により前記頭部の回転力を低減するように構成されている、ことを特徴とする頭部保護部材が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、乳幼児を収容する空間を形成する本体部と、該本体部の内側に配置されたシートクッションと、前記乳幼児を前記本体部に拘束するハーネスと、を備えたチャイルドシートにおいて、前記チャイルドシートの側壁部を覆うように配置されクッション材により袋状に構成されたサイドサポートと、前記サイドサポートの内部に挿入され前記シートクッションの側壁部と前記乳幼児の首部との間に配置された一対のブロック体と、を備え、前記ブロック体は、弾性材又は樹脂材により構成された柱状体であり、前記ブロック体は、前記乳幼児の首部に接触可能な第一側面部と、前記側壁部に接触可能かつ前記第一側面部よりも高い第二側面部と、前記第一側面部の上端と前記第二側面部の上端との間に配置された傾斜面と、を含み、前記ブロック体は、前記乳幼児を正常に拘束した通常状態では前記首部の左右両側に隙間を有するように配置されており、前記ブロック体は、前記乳幼児の身体全体が前記側壁部に向かって移動した際に、前記側壁部と前記首部との間に挟まれた状態になり、前記第一側面部により前記首部の横方向の移動を規制し、前記傾斜面により前記頭部の回転力を低減するように構成されている、ことを特徴とするチャイルドシートが提供される。
【0012】
また、前記傾斜面は、凸状に湾曲した曲面であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る頭部保護部材及びチャイルドシートによれば、チャイルドシートの側壁部と乳幼児の首部との間に所定の形状を備えたブロック体を配置したことにより、乳幼児に横方向に移動する力が生じた際に、乳幼児の首部を拘束して、乳幼児の頭部をブロック体に沿って回転させることができ、乳幼児の横方向に移動する力を低減して頭部の横方向への移動速度を低減することができる。したがって、本発明によれば、車両の側面衝突等の緊急時に生じる頭部の衝撃を緩和することができる。
【0016】
また、乳幼児の首部付近に頭部保護部材を配置し、側頭部や頭頂部付近に配置しないようにしたことから、チャイルドシートに拘束された乳幼児に与える圧迫感を低減することができ、快適性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るチャイルドシートを示す全体斜視図である。
図2図1に示したブロック体の拡大図であり、(A)は第一実施形態の斜視図、(B)は第二実施形態の斜視図、(C)は第三実施形態の断面図、を示している。
図3】ブロック体と乳幼児との位置関係を示す図であり、(A)は第一実施形態、(B)は変形例、を示している。
図4】第一実施形態に係る頭部保護部材の作用を示す図であり、(A)は通常状態、(B)は首部拘束状態、(C)は頭部回転状態、を示している。
図5】他の実施形態に係る頭部保護部材を示す図であり、(A)は第四実施形態、(B)は第五実施形態、(C)は第六実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1図5(C)を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係るチャイルドシートを示す全体斜視図である。図2は、図1に示したブロック体の拡大図であり、(A)は第一実施形態の斜視図、(B)は第二実施形態の斜視図、(C)は第三実施形態の断面図、を示している。図3は、ブロック体と乳幼児との位置関係を示す図であり、(A)は第一実施形態、(B)は変形例、を示している。
【0019】
本発明の一実施形態に係るチャイルドシート1は、図1図2(A)及び図3(A)に示したように、乳幼児9を収容する空間を形成する本体部2と、本体部2の内側に配置されたシートクッション3と、乳幼児9を本体部2に拘束するハーネス4と、を備え、シートクッション3の側壁部33と乳幼児9の首部92との間に配置されたブロック体51を備え、ブロック体51は、乳幼児9の首部92に接触可能な第一側面部511と、側壁部33に接触可能かつ第一側面部511よりも高い第二側面部512と、第一側面部511の上端と第二側面部512の上端との間に配置された傾斜面515と、を含む頭部保護部材5を備えている。
【0020】
チャイルドシート1は、例えば、図1に示したように、車両のシートに配置されるベース6を備えている。図1では、チャイルドシート1を車両の進行方向に対して前向きに使用する場合を図示している。ベース6は、例えば、チャイルドシート1の本体部2が接続されるベース本体61と、車両のシートに配置された取付バーに接続されるコネクタ62と、車両の床部に当接されるサポートレッグ63と、を備えている。コネクタ62が接続される取付バーは、シートの背もたれと座部との間に備え付けられている。
【0021】
ベース本体61は、チャイルドシート1の本体部2に接続される第一取付部61a及び第二取付部61bを備えている。チャイルドシート1を前向きに使用する場合には、本体部2の下面が第一取付部61aに接続され、本体部2の背面が第二取付部61bに接続される。チャイルドシート1を後ろ向きに使用する場合には、本体部2の背面が第一取付部61aに接続され、本体部2の下面が第二取付部61bに接続される。
【0022】
本体部2の内側に配置されるシートクッション3は、座部31と、背もたれ部32と、一対の側壁部33と、を備えている。また、シートクッション3の乳幼児9の頭部91に接触する部分には、ヘッドクッション34が配置されている。ヘッドクッション34は、背もたれ部32を覆うヘッドサポート34aと、側壁部33を覆うサイドサポート34bと、を備えている。図示した実施形態では、サイドサポート34bが頭部保護部材5を構成している。
【0023】
サイドサポート34bは、例えば、クッション材により袋状に構成されており、内部にブロック体51が挿入される。なお、ヘッドクッション34は、例えば、面ファスナー等によりシートクッション3に位置決めされていてもよい。
【0024】
上述したチャイルドシート1の基本構造は、単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。例えば、サポートレッグ63のないチャイルドシートや乳児に適したシェル形状のチャイルドシートにも本実施形態に係る頭部保護部材5を適用することができる。
【0025】
ここで、図3(a)は乳幼児9の骨格の一部を図示したものである。乳幼児9の身体に構成については、説明の便宜上、図示した骨格に基づいて説明する。乳幼児9の頭部91は、首部92を構成する頸椎により支えられている。頭部重心Gの位置は、四分円を交互に白色と黒色で塗り潰した記号で図示している。また、乳幼児9の肩部93は、鎖骨、肩胛骨、肩関節等によって構成されている。図では、鎖骨のみを図示している。頬部94は頬骨を含む部位であり、下顎部95は下顎骨の底部(下顎先端部から下顎角までの部分)を含む部位である。
【0026】
ブロック体51は、例えば、図2(A)に示したように、長方形の角部の一箇所を切り落とした五角形の断面形状を有する柱状体である。具体的には、ブロック体51は、乳幼児9の首部92側に配置される第一側面部511、シートクッション3の側壁部33側に配置される第二側面部512、乳幼児9の肩部93に接触する下面513、下面513に対峙する上面514、第一側面部511と上面514との間に形成された傾斜面515、シートクッション3の背もたれ部32側に配置される後面516、後面516に対峙する前面517によって形成されている。
【0027】
また、下面513と第一側面部511との境界部、第一側面部511と傾斜面515との境界部、傾斜面515と上面514との境界部については、乳幼児9と接触する可能性のある部分であるため、角張らないように滑らかに接続するようにしてもよい。なお、上面514は、傾斜面515を延長した傾斜面によって構成してもよい。
【0028】
ブロック体51の横幅をW、高さをH、長さ(奥行き)をLとする。横幅Wは、シートクッション3の側壁部33と乳幼児9の首部92との間に収まるように設定される。例えば、横幅Wは、乳幼児9の肩幅に合わせて設定される。チャイルドシート1は、新生児~1歳頃までの乳児及び1歳~4歳頃までの幼児に使用されることから、4歳頃の幼児にも頭部保護部材5を使用することができるように、4歳頃の幼児の肩幅を基準に横幅Wが設定される(例えば、60mm前後)。
【0029】
ブロック体51の高さHは、例えば、図3(A)に示したように、乳幼児9の首部92から頬部94を覆うように設定される。一般に、頭部重心Gは、頬部94を構成する頬骨よりも上方に位置する。ブロック体51の高さHは、乳幼児9の肩部93及び頭部重心Gの位置を基準に設定される。すなわち、ブロック体51は、乳幼児9の肩部93から頭部重心Gまでの範囲に収まるように形成される。このとき、4歳頃の幼児を基準にすると新生児等の乳児に対してブロック体51が高すぎることから、ブロック体51の高さHは新生児又は1歳頃の乳児を基準に設定される(例えば、70mm前後)。
【0030】
ブロック体51の長さLは、例えば、図3(A)に示したように、乳幼児9の頭部91の厚さ(前後方向幅)を基準に設定される(例えば、130mm前後)。ブロック体51は、少なくとも乳幼児9の首部92に接触することができればよいことから、例えば、図3(B)に示したように、後頭部から下顎部95の一部(例えば、下顎骨の下顎角)を覆う範囲に長さLを設定するようにしてもよい。ブロック体51の長さLの長さを短くすることにより、乳幼児9に与える圧迫感を低減することができる。
【0031】
なお、ブロック体51のサイズ(横幅W,高さH,長さL)は、単なる一例であり、上述したサイズに限定されるものではない。例えば、乳幼児9の年齢や体型に合わせてサイズの異なる複数のブロック体51を用意しておき、乳幼児9の成長に合わせてブロック体51を入れ替えるようにしてもよい。
【0032】
ブロック体51の第一側面部511は、乳幼児9に横方向に移動する力が生じた際に、乳幼児9の首部92に接触する部分である。また、第二側面部512は、乳幼児9に横方向に移動する力が生じた際に、シートクッション3の側壁部33に接触する部分である。したがって、乳幼児9に横方向に移動する力が生じた際に、第二側面部512が側壁部33に接触し、第一側面部511が首部92に接触することにより、乳幼児9の首部92を拘束することができ、首部92の横方向の移動を規制することができる。
【0033】
乳幼児9に横方向に移動する力が生じた際、乳幼児9の首部92はブロック体51に接触することから、乳幼児9の横移動を規制しつつ衝撃を緩和することができるように、ブロック体51はウレタンゴム等の弾性材により構成されている
【0034】
首部92を拘束された乳幼児9の頭部91は、何ら拘束されていないことから、さらに横方向に移動しようとする。このとき、首部92の移動は規制されていることから、頭部91は拘束された首部92を支点として回転運動することとなる。ブロック体51の傾斜面515は、この回転する頭部91に接触して衝撃を吸収するとともに減速させる機能を有している。傾斜面515は、乳幼児9の頭部91の回転に伴って、下顎部95に接触した後、頬部94に接触する。このとき、傾斜面515を乳幼児9に向かって凸状に湾曲した曲面によって構成することにより、乳幼児9の丸い外形に沿って滑らかに接触させることができる。
【0035】
乳幼児9の頬部94や下顎部95は、一般に、首部92よりも横方向に張りだしていることから、頭部91の回転運動に伴う顔の捩れを抑制するために、図2(B)に示した第二実施形態のように、上面514及び傾斜面515の前方部を前面517に向かって下るように形成した補助傾斜面518を配置するようにしてもよい。
【0036】
また、ブロック体51は、図2(C)にした第三実施形態のように、内部に空洞52を有し、空洞52内に乳幼児9の頬部94や下顎部95が傾斜面515に接触した際の衝撃を吸収する緩衝装置53を配置するようにしてもよい。具体的には、傾斜面515は、第一側面部511に回転可能に接続されており、傾斜面515の背面と下面513の内面との間に緩衝装置53が配置される。緩衝装置53は、シリンダ内にばね等の弾性体を有するものであってもよいし、エアシリンダであってもよい。本実施形態では、緩衝装置53を効果的に機能させるために、ブロック体51を構成する各面は弾性材や発泡材よりも硬い樹脂材により構成することが好ましい。
【0037】
ここで、図4は、第一実施形態に係る頭部保護部材の作用を示す図であり、(A)は通常状態、(B)は首部拘束状態、(C)は頭部回転状態、を示している。なお、各図において、C1はチャイルドシート1の中心線、C2は乳幼児9の中心線、を示している。また、図4(A)におけるC2/C1は、チャイルドシート1の中心線C1と乳幼児9の中心線C2とが一致している状態を示している。
【0038】
図4(A)に示したように、頭部保護部材5は、ヘッドクッション34の一部を構成するサイドサポート34bと、サイドサポート34b内に挿入されたブロック体51と、により構成されている。頭部保護部材5は、シートクッション3の一対の側壁部33の内側に配置されている。
【0039】
したがって、チャイルドシート1に乳幼児9を正常に拘束した通常状態において、乳幼児9の首部92の左右両側に頭部保護部材5が配置されている。また、図4(A)に示したように、ブロック体51は、乳幼児9の首部92及び肩部93の付近に配置されていることから、乳幼児9の頭部91の左右両側にはサイドサポート34bとの間に十分な隙間が形成されている。したがって、頭部保護部材5が乳幼児9に与える圧迫感を低減することができ、快適性を向上することができる。
【0040】
かかる通常状態において、例えば、車両が側面衝突した場合には、図4(B)に示したように、乳幼児9に横方向(例えば、図中の矢印方向)に移動する力が生じる。このとき、乳幼児9は、頭部91を含む身体全体が側壁部33に向かって横方向に移動することとなる。その後、ブロック体51は側壁部33と首部92との間に挟まれた状態になり、ブロック体51により首部92が拘束され、首部92の横方向の移動が規制される。なお、このとき、乳幼児9の肩部93はシートクッション3の側壁部33に押し付けられた状態になっている。
【0041】
乳幼児9の首部92がブロック体51によって拘束されたとき、頭部91の移動は規制されていないことから、図4(C)に示したように、頭部91は首部92を支点にして図中の矢印方向に回転しようとする。このとき、ブロック体51の傾斜面515が、乳幼児9の下顎部95及び頬部94を受け止めることによって、頭部91の回転力を徐々に低減することができる。頭部91が回転運動を開始すると、ブロック体51は肩部93と下顎部95又は頬部94との間に挟まれた状態になり、ブロック体51の傾斜面515に生じる反力F1及びブロック体51の下面513に生じる反力F2によって、頭部91の運動エネルギーが吸収される。
【0042】
このように、頭部91の回転力を低減することによって、頭部91の横方向への移動速度を減速することができ、頭部91が側壁部33に接触する際の生じる衝撃を緩和することができる。すなわち、本実施形態に係る乳幼児9の頭部保護方法は、乳幼児9に横方向に移動する力が生じた際に、乳幼児9の首部92を拘束して、乳幼児9の頭部91を回転させるようにしたものである。
【0043】
次に、他の実施形態に係る頭部保護部材5について、図5(A)及び図5(B)を参照しつつ説明する。ここで、図5は、他の実施形態に係る頭部保護部材を示す図であり、(A)は第四実施形態、(B)は第五実施形態、(C)は第六実施形態、を示している。
【0044】
図5(A)に示した第四実施形態に係る頭部保護部材5は、ブロック体51を覆うサイドサポート34bをブロック体51の形状に合わせたものである。本実施形態に係る頭部保護部材5によれば、頭部91が側壁部33に衝突する際の衝撃を低減することができることから、ブロック体51よりも上部のサイドサポートを省略することができる。
【0045】
図5(B)に示した第五実施形態に係る頭部保護部材5は、ブロック体51をシートクッション3の側壁部33内に配置したものである。本実施形態では、シートクッション3の側壁部33とブロック体51とにより頭部保護部材5が構成される。
【0046】
図5(C)に示した第六実施形態に係る頭部保護部材5は、ブロック体51のみによって構成したものである。ブロック体51は、例えば、面ファスナー等によってシートクッション3の側壁部33に接続される。
【0047】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 チャイルドシート
2 本体部
3 シートクッション
4 ハーネス
5 頭部保護部材
6 ベース
9 乳幼児
31 座部
32 背もたれ部
33 側壁部
34 ヘッドクッション
34a ヘッドサポート
34b サイドサポート
51 ブロック体
52 空洞
53 緩衝装置
61 ベース本体
61a 第一取付部
61b 第二取付部
62 コネクタ
63 サポートレッグ
91 頭部
92 首部
93 肩部
94 頬部
95 下顎部
511 第一側面部
512 第二側面部
513 下面
514 上面
515 傾斜面
516 後面
517 前面
518 補助傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5