IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特許7133312ポリマー組成物、その調製方法、その使用及びそれを含む組成物
<>
  • 特許-ポリマー組成物、その調製方法、その使用及びそれを含む組成物 図1
  • 特許-ポリマー組成物、その調製方法、その使用及びそれを含む組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ポリマー組成物、その調製方法、その使用及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220901BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220901BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20220901BHJP
   C08F 283/12 20060101ALI20220901BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20220901BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08F265/06
C08F279/02
C08F283/12
C08L51/00
C08L51/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017534198
(86)(22)【出願日】2015-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2015081142
(87)【国際公開番号】W WO2016102658
(87)【国際公開日】2016-06-30
【審査請求日】2018-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】1463304
(32)【優先日】2014-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イヌブリ, ラベール
(72)【発明者】
【氏名】ピリ, ホザンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ハッジ, フィリップ
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】土橋 敬介
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2006/019041(JP,A1)
【文献】特開平6-157715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃を超える融点、又は25℃を超えるガラス転移温度若しくは軟化点を有するエポキシ樹脂E1、及び
多段階コアシェルポリマー
を含み、多段階コアシェルポリマーが組成物の少なくとも20重量%、及び100重量%未満を占める、ポリマー組成物であって、
1μm-500μmの体積メジアン粒径D50を有するポリマー粉末の形態である、ポリマー組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂が50℃を超える融点、又は50℃を超えるガラス転移温度若しくは軟化点を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂が、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノ-フェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、m-アミノ-フェノールのトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシ-フェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、オルト-クレゾールノボラックのポリ-グリシジルエーテル及びテトラフェニル-エタンのテトラグリシジルエーテル、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
多段階コアシェルポリマーが、
a)コアとして、-100℃-0℃のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段階(A)、
b)シェルとして、30℃-150℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段階(B)
を含むことを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ポリマー(A1)及び(B1)がアクリル又はメタクリルポリマーであることを特徴とする、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
多段階コアシェルポリマーが、
a)-150℃-0℃のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段階(A)であって、ポリマー(A1)がシリコーンゴム系ポリマーである1つの段階(A)、
b)30℃-150℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段階(B)
を含むことを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ポリマー(A1)が、イソプレン又はブタジエン由来のポリマー単位を少なくとも50重量%、及び多くとも100重量%含むことを特徴とする、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
固体組成物であることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
ポリマー組成物が、25℃を超える融点、又は25℃を超えるガラス転移温度若しくは軟化点を有するエポキシ樹脂E1、及び多段階コアシェルポリマーを含むポリマー粉末の形態であることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
連続相として25℃を超える融点、又は25℃を超えるガラス転移温度若しくは軟化点を有するエポキシ樹脂E1、及び分散相として多段階コアシェルポリマーを含むポリマー粉末の形態であることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
a)25℃を超える融点、又は25℃を超えるガラス転移温度若しくは軟化点を有するエポキシ樹脂E1及び多段階コアシェルポリマーを混合する工程、
b)前工程の得られた混合物を回収する工程
を含み、工程a)におけるエポキシ樹脂E1及び多段階コアシェルポリマーが水性相中の分散体の形態である、ポリマー組成物を製造する方法であって、
回収する工程b)が凝集又は噴霧乾燥により行われる、方法。
【請求項12】
多段階コアシェルポリマーがポリマー組成物の少なくとも20重量%、及び多くとも100重量%を占めることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から10の何れか一項に記載の、又は請求項11若しくは12に記載の方法により得られるポリマー組成物の、熱硬化性樹脂におけるマスターバッチとしての使用。
【請求項14】
a)エポキシ樹脂E2及び
b)請求項1から10の何れか一項に記載の、又は請求項11若しくは12に記載の方法により得られるポリマー組成物
を含む、エポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
a)エポキシ樹脂E2をマスターバッチと混合する工程
を含む、ポリマー組成物を含むエポキシ樹脂組成物を製造する方法において、前記マスターバッチが、請求項1から10の何れか一項に記載の、又は請求項11若しくは12に記載の方法により得られるポリマー組成物を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂及び多段階ポリマーを含むポリマー組成物に関する。
【0002】
特に本発明は、エポキシ樹脂及び多段階ポリマーを含み、マスターバッチとして使用することができるポリマー組成物に関する。
【0003】
より具体的には、本発明は、エポキシ樹脂及び多段階ポリマーを含むポリマー組成物を、噴霧乾燥又は凝集により調製する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
[技術的問題]
熱硬化性ポリマーは、複合材料におけるマトリックス材料として最も広く用いられている。熱硬化性ポリマーは、不融不溶のポリマー網目構造である。熱硬化性ポリマーを得る1つの可能性は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と硬化剤又はキュアリング剤との硬化反応による。
【0005】
架橋密度が高いため、材料は高いガラス転移温度を備え、これが材料の優れた熱力学的性質をもたらす。しかしながら、多数の用途では熱硬化性ポリマーの衝撃強度の性質は不十分である。
【0006】
通常、衝撃強度を増加するためにゴム材料が添加される。
【0007】
こうしたゴムは、コアシェル粒子の形態であり、ゴムである段階を有する多段階ポリマーであり得る。
【0008】
コアシェル粒子の形態である多段階ポリマーは、凝集した乾燥粒子として入手でき、この粒子は均一な分布を得るためにマトリックス中で分散している。ある熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂に対して、これらの多段階ポリマー粒子を正しく分散させることは非常に困難であるか、又はほぼ不可能である。
【0009】
コアシェル粒子の連続分散媒体を水から有機溶媒へ次第に変えることにより、多段階ポリマーをその合成プロセス後に乾燥させることなく、コアシェル粒子の形態である多段階ポリマーをエポキシ樹脂に組み込むための、複雑な技術も存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、未硬化エポキシ樹脂中に容易に分散することができる、多段階ポリマーを含むポリマー組成物を得ることである。
【0011】
本発明の目的は、エポキシ樹脂中に、多段階ポリマーの効果的で均一な分布を有することでもある。
【0012】
本発明の別の目的は、多段階ポリマー粒子の凝集を避けることである。
【0013】
本発明の追加的な目的は、多段階ポリマーの形態である耐衝撃性改良剤の均一な分布により、硬化したエポキシ樹脂のマトリックスを強靭化することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、未硬化のエポキシ樹脂中に容易に分散することができる多段階ポリマーを含むポリマー組成物を製造する方法である。
【0015】
さらに追加的な目的は、未硬化のエポキシ樹脂中に容易に分散することができる多段階ポリマーを含むポリマー組成物を調製する方法を有すること、かつ、エポキシ樹脂中に多段階ポリマーの効果的で均一な分布を有することである。
【0016】
さらに別の目的は、エポキシ樹脂を耐衝撃性改良するためのマスターバッチである、多段階ポリマーを含むポリマー組成物の使用である。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、エポキシ樹脂を耐衝撃性改良するための、多段階ポリマーの均一な分布を備えたマスターバッチとして使用される、エポキシ樹脂及び多段階ポリマーを含む、流動性乾燥粉末の形態であるポリマー組成物を製造する方法である。
【0018】
[発明の背景]従来技術
文献EP0228450は、ゴム変性エポキシ化合物を開示している。組成物は、エポキシ樹脂連続相、及び連続相中に分散するゴム粒子の不連続相を含む。ゴム粒子はグラフトしたゴム粒子である。ゴム粒子は、混合又は剪断(shearing)装置によりエポキシ相中に分散される。
【0019】
文献EP0911358は、ブロックコポリマーをエポキシ樹脂中の耐衝撃性改良剤として用いることを開示している。しかしながら、ブロックコポリマーは比較的高価であり、標準的なコアシェル耐衝撃性改良剤をエポキシ樹脂中に分散させることが好まれる。
【0020】
文献FR2934866は、親水性モノマーを含む官能性シェルを備えた、特定のコアシェルポリマーのポリマー調製を開示している。コアシェルポリマーは、熱硬化性ポリマーにおける耐衝撃性改良剤として用いられる。
【0021】
文献EP1632533は、改良されたエポキシ樹脂を製造する方法を開示している。エポキシ樹脂組成物は、ゴム粒子を分散させている有機媒体と粒子を接触させる方法により、組成物中に分散するゴム様のポリマー粒子を有している。
【0022】
文献EP1666519は、ゴム状のポリマー粒子を製造する方法、及びそれを含有する樹脂組成物を製造する方法を開示している。
【0023】
文献EP2123711は、組成物中に分散するゴム状のポリマー粒子を有する熱硬化性樹脂組成物、及びその製造方法を開示している。
【0024】
従来技術文献のいずれも、特許請求の範囲に記載の組成物、又はそれを得る方法を開示していない。
【0025】
[本発明の簡単な記載]
驚くべきことに、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
b)多段階ポリマー
を含み、多段階ポリマーが組成物の少なくとも20重量%を占める、ポリマー組成物が、エポキシ樹脂E2中に容易に分散することができることが見出された。
【0026】
驚くべきことに、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
b)多段階ポリマー
を含み、多段階ポリマーが組成物の少なくとも20重量%を占める、ポリマー組成物が、エポキシ樹脂のためのマスターバッチとして使用することができることも見出された。
【0027】
驚くべきことに、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを混合する工程、
b)前工程の得られた混合物を回収する工程
を含み、工程a)におけるエポキシ樹脂E1及び多段階ポリマーが、水性相中の分散体の形態である、ポリマー組成物を製造する方法が、エポキシ樹脂のためのマスターバッチとして使用することができるポリマー組成物をもたらすことも見出された。
【0028】
驚くべきことに、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
b)
a)0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段階(A)、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段階(B)
を備える多段階プロセスにより得られるポリマー
を含み、多段階プロセスにより得られるポリマーが組成物a)+b)の少なくとも20重量%を占めるポリマー組成物が、エポキシ樹脂E2中に容易に分散することができ、かつエポキシ樹脂のためのマスターバッチとして使用することができることも見出された。
【発明を実施するための形態】
【0029】
第1の態様によれば、本発明は、
25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
多段階ポリマー
を含み、多段階ポリマーが組成物の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40%、有利には少なくとも50重量%を占める、ポリマー組成物に関する。
【0030】
第2の態様によれば、本発明は、
25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
a)0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段階(A)、
b)少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段階(B)
を含む多段階ポリマー
を含み、多段階ポリマーが組成物の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40%、有利には少なくとも50重量%を占める、ポリマー組成物に関する。
【0031】
第3の態様では、本発明は、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを混合する工程、
b)前工程の得られた混合物を回収する工程
を含み、工程a)におけるエポキシ樹脂E1及び多段階ポリマーが、水性相中の分散体の形態である、ポリマー組成物を製造する方法に関する。
【0032】
第4の態様では、本発明は、
25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
多段階ポリマー
を含み、多段階ポリマーが組成物の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40%、有利には少なくとも50重量%を占めるポリマー組成物の、エポキシ樹脂のためのマスターバッチとしての使用に関する。
【0033】
第5の態様では、本発明は、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを混合する工程、
b)前工程の得られた混合物を回収する工程
を含み、工程a)におけるエポキシ樹脂E1及び多段階ポリマーが、水性相中の分散体の形態である、エポキシ樹脂のためのマスターバッチとして使用するためのポリマー組成物を製造する方法に関する。
【0034】
第6の態様では、本発明は、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを混合する工程、
b)前工程の得られた混合物を回収する工程
を含み、工程a)におけるエポキシ樹脂E1及び多段階ポリマーが、水性相中の分散体の形態である、マスターバッチポリマー組成物を製造する方法に関する。
【0035】
用いられる用語「ポリマー粉末」は、ナノメートル領域にある粒子を含む一次ポリマー(一若しくは複数)又は一次オリゴマーの凝集により得られる、少なくとも1マイクロメートル(μm)の領域にある粉末粒子を含むポリマーを意味する。
【0036】
用いられる用語「一次粒子」は、ナノメートル領域にある粒子を含む球形ポリマーを意味する。好ましくは、一次粒子は20nm-800nmの重量平均粒径を有する。
【0037】
用いられる用語「粒径」は、球形とみなされる粒子の体積平均直径を意味する。
【0038】
用いられる用語「コポリマー」は、少なくとも2種の異なるモノマーからなるポリマーを意味する。
【0039】
用いられる「多段階ポリマー」は、多段階重合プロセスによる順次的に形成されたポリマーを意味する。第1のポリマーが第1段階ポリマーであり、第2のポリマーが第2段階ポリマーである、すなわち、第1の乳化重合体の存在下で第2のポリマーが乳化重合により形成される、多段階乳化重合プロセスが好ましい。
【0040】
用いられる用語「(メタ)アクリル」は、あらゆる種類のアクリル及びメタクリルモノマーを意味する。
【0041】
用いられる用語「(メタ)アクリルポリマー」は、(メタ)アクリルポリマーの50重量%以上を占める(メタ)アクリルモノマーを含んだポリマーを、(メタ)アクリルポリマーが本質的に含んでいることを意味する。
【0042】
用いられる用語「エポキシ樹脂」は、開環により重合することができる少なくとも2つのオキシラン型官能基を有する、任意の有機化合物と理解される。硬化すると、エポキシ樹脂は熱硬化ポリマーとなる。
【0043】
用語「ある温度未満で固体であるエポキシ樹脂」は、エポキシ樹脂の化学構造次第で、エポキシ樹脂がこのある温度を超える融点T、又はこのある温度を超えるガラス転移温度T若しくは軟化点を有すると理解される。好ましくは、ASTM D6090-99により評価する、軟化点(Mettler Cup and Ball)を用いる。
【0044】
用語「液体エポキシ樹脂」は、エポキシ樹脂の化学構造次第で、エポキシ樹脂がこのある温度未満の融点T、又はこのある温度未満のガラス転移温度T若しくは軟化点を有すると理解される。通常は、液体エポキシ樹脂は、ASTM D2196-05による25℃におけるそのブルックフィールド粘度により特徴付けられる。
【0045】
用いられる用語「マスターバッチ」は、担体材料中で高濃度の添加物を含む組成物と理解される。添加物は担体材料中に分散している。
【0046】
本発明によるエポキシ樹脂E1に関しては、25℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは60℃未満、さらにより好ましくは70℃未満の温度において固体である。
【0047】
これらのエポキシ樹脂は、一方でモノマー又はポリマーであることができ、他方で脂肪族、脂環式、複素環式又は芳香族であるとすることができる。例として、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノ-フェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、m-アミノ-フェノールのトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシ-フェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、オルト-クレゾールノボラックのポリ-グリシジルエーテル及びテトラフェニル-エタンのテトラグリシジルエーテルに基づくこうしたエポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂が25℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは60℃未満、さらにより好ましくは70℃未満の温度において固体である限り、これらの樹脂の少なくとも2つの混合物も用いることができる。
【0048】
25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを含む本発明によるポリマー組成物は、固体組成物である。
【0049】
25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを含む本発明によるポリマー組成物は、いかなる液体エポキシ樹脂も含まない。液体エポキシ樹脂とは、25℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは60℃未満、さらにより好ましくは70℃未満の温度において液体である樹脂を意味する。
【0050】
本発明による多段階ポリマーは、そのポリマー組成が異なる少なくとも2つの段階を有する。
【0051】
多段階ポリマーは、好ましくは、球形ポリマー粒子の形態である。これらの粒子は、コアシェル粒子とも呼ばれる。第1の段階はコアを形成し、第2又は続く全ての段階はそれぞれのシェルを形成する。
【0052】
球形ポリマー粒子に関しては、20nm-800nmの重量平均粒径を有する。好ましくはポリマーの重量平均粒径は、25nm-600nm、より好ましくは30nm-550nm、さらにより好ましくは35nm-500nm、有利には40nm-400nm、より有利には50nm-400nm、さらにより有利には75nm-350nm、最も有利には80nm-300nmである。
【0053】
ポリマー粒子は、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む少なくとも1つの層(A)、及び30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む別の層(B)を含む、多層構造を有する。好ましくは、30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子の外層である。好ましくは、段階(A)は第1の段階であり、ポリマー(B1)を含む段階(B)は、ポリマー(A1)を含む段階(A)の上にグラフトしている。
【0054】
2つ、3つ又はそれ以上の段階のプロセスなどの多段階プロセスにより、ポリマー粒子は得られる。層(A)にある0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、多段階プロセスの最後の段階中に作られることは決してない。このことは、ポリマー(A1)は多層構造を備えた粒子の外層には決してないことを意味する。層(A)にある0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、ポリマー粒子のコア又は内層の1つにある。
【0055】
好ましくは、層(A)にある0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、多層構造を有するポリマー粒子のコアを形成する、多段階プロセスの第1の段階において作られる。好ましくは、ポリマー(A1)は、-5℃未満、より好ましくは-15℃未満、有利には-25℃未満のガラス転移温度を有する。
【0056】
好ましくは、30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子の外層を形成する多段階プロセスの最後の段階において作られる。
【0057】
中間段階(一又は複数)により得られる、追加の中間層(一又は複数)は存在し得る。
【0058】
多段階ポリマーのそれぞれのポリマーのガラス転移温度Tgは、例えば熱機械分析のような動的方法により評価することができる。
【0059】
第1の実施態様では、ポリマー(A1)に関しては、少なくとも50重量%のアクリル酸アルキル由来モノマーを含む(メタ)アクリルポリマーである。
【0060】
より好ましくは、ポリマー(A1)が0℃未満のガラス転移温度を有する限り、ポリマー(A1)は、アクリル酸アルキルと共重合することができるコモノマー(一又は複数)を含む。
【0061】
ポリマー(A1)中のコモノマー(一又は複数)は、好ましくは(メタ)アクリルモノマー及び/又はビニルモノマーから選択される。
【0062】
ポリマー(A1)中の(メタ)アクリルコモノマーは(メタ)アクリル酸C1-C12アルキルから選択されるモノマーを含む。さらにより好ましくは、ポリマー(A1)中の(メタ)アクリルコモノマーは、メタアクリル酸C1-C4アルキルモノマー及び/又はアクリル酸C1-C8アルキルモノマーを含む。
【0063】
最も好ましくは、ポリマー(A1)のアクリル又はメタクリルコモノマーは、ポリマー(A1)が0℃未満のガラス転移温度を有する限り、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びこれらの混合物から選択される。
【0064】
好ましくはポリマー(A1)は架橋している。これは、他のモノマー(一又は複数)に架橋剤が添加されることを意味する。架橋剤は、重合することができる少なくとも2つの基を含む。
【0065】
1つの特定の実施態様では、ポリマー(A1)はアクリル酸ブチルのホモポリマーである。
【0066】
別の特定の実施態様では、ポリマー(A1)はアクリル酸ブチルのコポリマー及び少なくとも1種の架橋剤である。架橋剤は、このコポリマーの5重量未満で存在する。
【0067】
より好ましくは、第1の実施態様のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-100℃-0℃、さらにより好ましくは-100℃--5℃、有利には-90℃--15℃、より有利には-90℃--25℃である。
【0068】
第2の実施態様では、ポリマー(A1)はシリコーンゴム系ポリマーである。シリコーンゴムは例えば、ポリジメチルシロキサンである。より好ましくは、第2の実施態様のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-150℃-0℃、さらにより好ましくは-145℃--5℃、有利には-140℃--15℃、より有利には-135℃--25℃である。
【0069】
第3の実施態様では、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、イソプレン又はブタジエン由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含み、段階(A)は、多層構造を有するポリマー粒子の最内層である。換言すれば、ポリマー(A1)を含む段階(A)は、ポリマー粒子のコアである。
【0070】
例として、第2の実施態様のコアであるポリマー(A1)としては、イソプレンホモポリマー又はブタジエンホモポリマー、イソブレン-ブタジエンコポリマー、最大で98重量%のビニルモノマーとのイソプレンのコポリマー、及び最大で98重量%のビニルモノマーとのブタジエンのコポリマーを挙げることができる。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキル、又はブタジエン若しくはイソプレンであってもよい。1つの実施態様では、コアはブタジエンホモポリマーである。
【0071】
より好ましくは、イソプレン又はブタジエンに由来するポリマー単位を少なくとも50重量%含む、第3の実施態様のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-100℃-0℃、さらにより好ましくは-100℃--5℃、有利には-90℃--15℃、さらにより有利には-90℃--25℃である。
【0072】
ポリマー(B1)に関しては、二重結合を持つモノマー及び/又はビニルモノマーを含むホモポリマー及びコポリマーを挙げることができる。好ましくは、ポリマー(B1)は(メタ)アクリルポリマーである。
【0073】
好ましくは、ポリマー(B1)は、(メタ)アクリル酸C1-C12アルキルから選択されるモノマーを、少なくとも70重量%含む。さらにより好ましくは、ポリマー(B1)は、メタアクリル酸C1-C4アルキルモノマー及び/又はアクリル酸C1-C8アルキルモノマーを、少なくとも80重量%含む。
【0074】
最も好ましくは、ポリマー(B1)が少なくとも30℃のガラス転移温度を有する限り、ポリマー(B1)のアクリル又はメタクリルモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びこれらの混合物から選択される。
【0075】
有利には、ポリマー(B1)は、メタクリル酸メチルに由来するモノマー単位を、少なくとも70重量%含む。
【0076】
好ましくは、ポリマー(B1)のガラス転移温度Tgは、30℃-150℃である。ポリマー(B1)のガラス転移温度は、より好ましくは60℃-150℃、さらにより好ましくは80℃-150℃、有利には90℃-150℃、より有利には100℃-150℃である。
【0077】
本発明による多段階ポリマーを製造する方法に関しては、
a)モノマー又はモノマー混合物(A)の乳化重合により重合して、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの層(A)を得る工程、
b)モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合して、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程
を含み、モノマー又はモノマー混合物(A)、及びモノマー又はモノマー混合物(B)は、前に与えたポリマー(A1)及びポリマー(B1)のための組成によるそれぞれのモノマーから選択される。
【0078】
好ましくは工程a)は工程b)の前に行われる。より好ましくは、単に2つの段階のみ存在する場合、工程b)は、工程a)において得られるポリマー(A1)の存在において実施される。
【0079】
有利には、本発明による多段階ポリマー組成物を製造する方法は、
a)モノマー又はモノマー混合物(A)の乳化重合により重合して、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの層(A)を得る工程、
b)モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合して、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程
の順次工程を含む多段階プロセスである。
【0080】
ポリマー(A1)及び(B1)をそれぞれ含む層(A)及び(B)をそれぞれ形成するための、それぞれのモノマー又はモノマー混合物(A)及び(B)、並びにそれぞれのポリマー(A1)及び(B1)の特性は、前に規定したものと同じである。
【0081】
多段階ポリマーを製造する方法は、追加の段階のための追加の工程を、工程a)とb)の間に含むことができる。
【0082】
多段階ポリマーを製造する方法は、工程a)とb)の前に追加の段階のための追加の工程を含むこともできる。乳化重合によりモノマー又はモノマー混合物(A)を重合して、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む層(A)を得るためのシード(seed)を用いることができる。シードは、好ましくは少なくとも20℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーである。
【0083】
多段階ポリマーは、ポリマー粒子の水性分散液として得られる。分散の固体含量は、10重量%-65重量%である。
【0084】
本発明によるポリマー組成物を製造する方法に関しては、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを混合する工程、
b)前工程の得られた混合物を、ポリマー粉末の形態で回収する工程
を含み、工程a)におけるエポキシ樹脂E1及び多段階ポリマーが、水性相中の分散体の形態である。
【0085】
エポキシ樹脂E1の水性分散液及び多段階ポリマーの水性分散液の量は、得られた混合物中の固体部分だけに対する、多段階ポリマーの重量割合が、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、有利には少なくとも50重量%である方法で選択される。
【0086】
エポキシ樹脂E1の水性分散液及び多段階ポリマーの水性分散液の量は、得られた混合物中の固体部分だけに対する、多段階ポリマーの重量割合が、最大で99重量%、好ましくは最大で95重量%、より好ましくは最大で90重量%である方法で選択される。
【0087】
エポキシ樹脂E1の水性分散液及び多段階ポリマーの水性分散液の量は、得られた混合物中の固体部分だけに対する、多段階ポリマーの重量割合が、5重量%-99重量%、好ましくは10重量%-95重量%、より好ましくは20重量%-90重量%である方法で選択される。
【0088】
本発明によるポリマー組成物を製造する方法の回収する工程b)は、好ましくは凝集又は噴霧乾燥により行われる。
【0089】
本発明によるエポキシ樹脂E1が25℃未満の温度において固体である場合、回収工程は好ましくは凝集により行われる。
【0090】
本発明によるエポキシ樹脂E1が70℃未満の温度において固体である場合、回収工程は噴霧乾燥又は凝集により行われる。
【0091】
本発明によるポリマー組成物を製造する方法は、ポリマー組成物を乾燥する追加の工程c)を、任意選択的に含むことができる。
【0092】
乾燥とは、本発明によるポリマー組成物が、3重量%未満の湿気、好ましくは1.5重量%未満の湿気、より好ましくは1.2重量%未満の湿気を含むことを意味する。
【0093】
湿気は、ポリマー組成物を加熱し重量損失を測定する、熱てんびんにより測定することができる。
【0094】
本発明によるポリマー組成物を製造する方法は、好ましくはポリマー粉末を生み出す。本発明のポリマー粉末は粒子の形態である。ポリマー粉末粒子は、多段階プロセスにより作られた凝集した一次ポリマー粒子、及びエポキシ樹脂E1を含む。
【0095】
本発明のポリマー粉末に関しては、1μm-500μmの体積メジアン粒径D50を有する。好ましくは、ポリマー粉末の体積メジアン粒径は、10μm-400μm、より好ましくは15μm-350μm、有利には20μm-300μmである。
【0096】
体積での粒径分布のD10は、少なくとも7μm、好ましくは少なくとも10μmである。
【0097】
体積での粒径分布のD90は、最大で950μm、好ましくは最大で500μm、より好ましくは最大で400μmである。
【0098】
25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを含む本発明による組成物で作られたポリマー粉末は、20℃において固体流動性粉末(solid free flowing powder)である。
【0099】
25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを含む本発明による組成物で作られたポリマー粉末は、25℃未満の温度においていかなる液体エポキシ樹脂も含まない。
【0100】
好ましくは、本発明のポリマー粉末は、25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1を連続相として、多段階ポリマーを分散相として含む。
【0101】
エポキシ樹脂そのものは25℃未満の温度において固体であり、多段階ポリマーは少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を含むので、粉末形態である本発明の組成物は、20℃において固体粉末である。
【0102】
本発明は、ポリマー粉末の形態である本発明によるポリマー組成物の、熱硬化性樹脂におけるマスターバッチとしての使用にも関する。好ましくは、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂E2である。
【0103】
マスターバッチは他の樹脂と混ぜられる。使用するマスターバッチの割合は、熱硬化性樹脂、及び本発明によるポリマー組成物を含有する組成物に対して、最大で90重量%である。使用するマスターバッチの割合は、熱硬化性樹脂、及び本発明によるポリマー組成物を含有する組成物に対して、少なくとも10重量%である。
【0104】
別の実施態様では、本発明によるポリマー組成物をそのまま使用することができる。
【0105】
本発明は、追加的な態様として、ポリマー組成物を含むエポキシ樹脂に関係がある。
【0106】
本発明によるポリマー組成物を含むエポキシ樹脂に関しては、
a)エポキシ樹脂E2及び
b)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
c)多段階ポリマー
を含み、多段階ポリマーが組成物の少なくとも5重量%を占めることを特徴とする。
【0107】
好ましくは、本発明によるポリマー組成物を含むエポキシ樹脂は、
a)エポキシ樹脂E2及び
b)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
c)
- 0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段階(A)、
- 少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段階(B)
を含む多段階プロセスにより得られるポリマー
を含み、多段階ポリマーが組成物の少なくとも5重量%を占めることを特徴とする。
【0108】
多段階ポリマー及びエポキシ樹脂E1は、前に規定したものと同じである。
【0109】
ポリマー(A1)及び(B1)をそれぞれ含むそれぞれの段階(A)及び(B)、並びにそれぞれのポリマー(A1)及び(B1)の特性は、前に規定したものと同じである。
【0110】
本発明のさらに追加的な態様は、
a)エポキシ樹脂E2及び
b)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び
c)多段階ポリマー
を含む、本発明によるポリマー組成物を含むエポキシ樹脂を製造する方法であって、
a)25℃未満の温度において固体であるエポキシ樹脂E1、及び多段階ポリマーを含む組成物から作られたポリマー粉末を、エポキシ樹脂E2と混合する工程
を含む方法に関する。
【0111】
多段階ポリマー及びエポキシ樹脂E1は、前に規定したものと同じである。
【0112】
エポキシ樹脂E2に関しては、本発明によれば、開環により重合することができる少なくとも2つのオキシラン型官能基を有する、任意の有機化合物であるとすることができる。
【0113】
エポキシ樹脂E2は、エポキシ樹脂E1と同じであり得る。
【0114】
エポキシ樹脂E2は、エポキシ樹脂E1と異なり得る。エポキシ樹脂E2は、固体又は液体であり得る。用語「ある温度未満で液体であるエポキシ樹脂」は、エポキシ樹脂がこのある温度未満の融点T、又はこのある温度未満のガラス転移温度Tを有すると理解される。
【0115】
これらのエポキシ樹脂E2は、一方でモノマー又はポリマーであることができ、他方で脂肪族、脂環式、複素環式又は芳香族であるとすることができる。
【0116】
好ましくは、エポキシ樹脂E2は、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノ-フェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、m-アミノ-フェノールのトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシ-フェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、オルト-クレゾールノボラックのポリ-グリシジルエーテル、及びテトラフェニル-エタンのテトラグリシジルエーテルに基づいたエポキシ樹脂から選択される。これらの樹脂の少なくとも2つの混合物も用いることができる。
【0117】
本発明によるポリマー組成物を含むエポキシ樹脂は、1%-90%の多段階プロセスにより得られるポリマーを含む。
【0118】
本発明によるポリマー組成物を含むエポキシ樹脂を製造する方法の変化に関しては、
エポキシ樹脂E2を、マスターバッチと混合する工程
を含み、前記マスターバッチがエポキシ樹脂E1及び多段階ポリマーを含むポリマー組成物である。
【0119】
多段階ポリマー及びエポキシ樹脂E1は、前に規定したものと同じである。
【0120】
ポリマー組成物を含むエポキシ樹脂は、硬化することができる。
【0121】
さらに別の態様では、本発明は、本発明によるポリマー組成物を含むエポキシ樹脂を硬化することにより得られる熱硬化性樹脂に関する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】比較例1の顕微鏡検査:AFM及び光学顕微鏡検査の図である。試料切片表面の光学顕微鏡検査は、白点により認識できる不均一性を示している。白点領域におけるAFM分析は、多段階ポリマー粒子の多数の凝集体を示している。他の領域においては、時折の凝集体とともに、はるかに少ない多段階ポリマー粒子が存在する。
図2】実施例1の顕微鏡検査:AFM及び光学顕微鏡検査の図である。試料切片表面の光学顕微鏡検査は、均一性を示している。AFM分析は、多段階ポリマー粒子の良好な分布を示している。
【0123】
[評価方法]
光学顕微鏡検査は、ZEISSモデルにより行う。
【0124】
原子間力顕微鏡検査(AFM)は、VEECO社製D3100によりタッピングモードで実施する。画像を取得するために、表面のトポグラフィーを得る高さモード、及び粘弾性的性質を得る位相コントラストモードの2つのモードが用いられる。
【0125】
AFMのために試料を破壊し、薄く事実上は平滑な表面を得るために、試料を-90℃まで冷却しミクロトームにより切断する。切断された試料の薄片は、約100nmの厚みを有する。
【0126】
粒径分析
多段階重合後の一次粒子の粒径は、MALVERN製Zetasizer Nano S90により測定する。ポリマー粉末の粒径は、MALVERN製Malvern Mastersizer3000により測定する。体積メジアン粒径(volume median particle size)D50の評価は、300mmレンズを備え、0.5-880μmの範囲を測定するMalvern Mastersizer3000装置を用いる。
【0127】
ガラス転移温度
多段階ポリマーのガラス転移(Tg)は、熱機械分析を実現することができる装置により測定する。Rheometrics Companyが提唱するRDAII「RHEOMETRICS DYNAMIC ANALYSER」を用いた。熱機械分析は、加えた温度、歪又は変形に応じて、試料の粘弾性変化を正確に測定する。染料を固定したまま、温度変化が制御されたプログラム中の試料の変形を、装置により連続的に記録する。結果は、温度に応じて、弾性係数(G’)、損失係数及びtanδを示すことにより得られる。導き出されたtanδがゼロに等しい時、Tgはtanδ曲線で読み取られる温度よりも高くなる。
【実施例
【0128】
比較例1:標準的な乳化重合技法を用いる、米国特許第4278576号に記載の技法により、多段階ポリマーラテックス(MP1)を調製する。すなわち、エラストマーコアとして84.2部のアクリル酸ブチル、0.4部のジアクリル酸ブチレングリコール及び0.4部のマレイン酸ジアリルを用い、続いて15部のメタクリル酸メチルを重合し、コア/シェルアクリルポリマーを調製する。固体含量は40%である。多段階ポリマーラテックスを噴霧乾燥により乾燥させ、1%未満の残留揮発分を備えた粉末を得る。
【0129】
多段階ポリマーMP1は、第1の段階としてTg<-20℃を有する(メタ)アクリルポリマーのコア、及び最後の段階としてTg>30℃を有する(メタ)アクリルポリマーのシェルを含む。
【0130】
多段階ポリマーMP1の粉末を、室温(25℃)において、液体エポキシ樹脂(Huntsman LY556)に分散させる。硬化剤ポリエーテルアミン(Huntsman、Jeffamnine T403)を室温にて添加する。ブレンドを120℃で2時間、乾燥機中で硬化させる。
【0131】
図1に提示するように、顕微鏡検査は、硬化したエポキシ樹脂内での多段階ポリマー粒子の不均一な分布を示している。エポキシ樹脂内での不良な分散性能により、ほぼ粒子が無い場所、並びに多数の粒子及び凝集した粒子が存在する場所が存在する。
【0132】
比較例2:比較例1と同様の多段階ポリマーラテックス(MP1)を調製する。MP1の分散を液体エポキシ樹脂(Huntsman LY556)と混合する試みをした。回収又は噴霧乾燥して20℃における固体粉末を得ることができる、2つの化合物の分散した混合物は得られない。
【0133】
実施例1:標準的な乳化重合技法を用いる、米国特許第4278576号に記載の技法により、多段階ポリマーラテックス(MP1)を調製する。すなわち、エラストマーコアとして84.2部のアクリル酸ブチル、0.4部のジアクリル酸ブチレングリコール及び0.4部のマレイン酸ジアリルを用い、続いて15部のメタクリル酸メチルを重合し、コア/シェルアクリルポリマーを調製する。固体含量は40%である。
【0134】
2421gの多段階ポリマーラテックス(固体含量40%)を、2096gの固体エポキシ樹脂(Momentive Specialty Chemicals Inc.製EPI-REZ(商標)Resin 3522-W-60/固体含量59.2%)の水性分散液、及び4054gの脱イオン水と混合する。分散混合物は30.6%の固体含量を有し、噴霧乾燥により乾燥し、1%未満の残留揮発分を備えた粉末が得られる。
【0135】
この粉末を、比較例1で用いた同じエポキシ樹脂(Huntsman LY556)及び硬化剤ポリエーテルアミン(Huntsman、Jeffamnine T403)中に、室温(25℃)にて分散させる。ブレンドを120℃で2時間、乾燥機中で硬化させる。
【0136】
図2に提示するように、顕微鏡検査は、硬化したエポキシ樹脂内での多段階ポリマー粒子の均一な分布を示している。これは、本発明による組成物のエポキシ樹脂内での良好な分散性能による。
図1
図2