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  • 特許-結晶格子湾曲のないA-B結晶の成長 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】結晶格子湾曲のないA-B結晶の成長
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20220901BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20220901BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20220901BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20220901BHJP
   C30B 29/40 20060101ALI20220901BHJP
   C30B 29/42 20060101ALI20220901BHJP
   C30B 29/44 20060101ALI20220901BHJP
   C30B 29/46 20060101ALI20220901BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B29/38 C
C23C16/34
C30B25/18
C30B29/36 A
C30B29/40 Z
C30B29/42
C30B29/44
C30B29/46
H01L21/205
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017549197
(86)(22)【出願日】2016-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2016055956
(87)【国際公開番号】W WO2016150850
(87)【国際公開日】2016-09-29
【審査請求日】2019-01-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】102015205104.8
(32)【優先日】2015-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500562905
【氏名又は名称】フライベルガー・コンパウンド・マテリアルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FREIBERGER COMPOUND MATERIALS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイナート,ベルンツ
(72)【発明者】
【氏名】ハベル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ライビガー,グンナー
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】関根 崇
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-17030(JP,A)
【文献】特開2003-303774(JP,A)
【文献】特表2010-520135(JP,A)
【文献】米国特許第6176925(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B29/36-46
C30B25/18
C23C16/34
H01L21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III-V、IV-IVまたはII-VI化合物半導体結晶の製造プロセスであって、
a)成長させるべき半導体結晶の結晶層(バッファ層)を任意に含む基板を結晶成長反応器に提供する工程と、
b)バッファ層を任意に含むa)に従って提供された前記基板上方に気相を提供する工程であって、この気相が、化合物半導体のための元素(II、III、IV、V、VI)の少なくとも2つの反応体を含み、これらの反応体が、前記結晶成長反応器中の反応温度で気体であり、選択された反応条件にて互いに反応性であり、これらの反応体が、適切なIII-、IV-またはII-前駆体または元素およびV-、IV-またはVI-前駆体または元素の反応から誘導され、
これらの反応体2つの濃度比は、前記化合物半導体結晶が気相から結晶化するように調整され、
少なくとも1つの共反応体が気相に存在し、これが少なくとも1つのIII-、IV-またはII-反応体または前駆体または元素と反応する、工程と、
c)前記バッファ層を任意に含む前記基板の表面上への前記化合物半導体結晶の堆積工程であって、
b)に従って提供された気相は、工程c)の少なくとも1つの堆積過程の間、前駆体化合物または元素の少なくとも1つを結晶成長が可能となる十分な出発材料が提供されるように高濃度で含み、III-、IV-またはII-化合物それぞれを還元する還元剤および共反応体の添加または調整によって、III-、IV-またはII-化合物の気相中での活性を低下させ、結果として結晶の成長速度を、共反応体のない状態と比べて遅くするが、半導体結晶成長は停止させずに、化合物半導体の結晶成長ゾーンの表面へIII-、IV-またはII-元素の元素状金属、好ましくは液体金属膜を形成する工程とを含む、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
堆積過程の間におけるb)に従う提供およびc)に従う堆積により、前記化合物半導体の結晶成長ゾーンの表面に、III-、IV-またはII-元素の元素状金属、好ましくは液体金属膜を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記化合物半導体が、GaN、AlN、Ga1-xAlN(0<x0<1)、GaAs、GaP、InP、GaSb、SiC、CdTe、ZnTeおよびHgTeからなる群から選択され、
前記II、IIIまたはVI-前駆体が、GaCl、GaCl、AlCl、AlCl、InCl、InCl、GaI、GaI、InI、InI、SiCl4-y(式中0≦y≦4、ここでyは整数である)、CH、CCl、CHCl(4-z)(式中、z=1、2または3)、単純または高次のシラン、単純または高次のゲルマン、単純または高次の炭化水素からなる群から選択され、
および/または前記V-前駆体が、NH、AsHおよびPHからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記III-、IV-および/またはII-前駆体のそれぞれのIII-、IV-またはII-元素への還元が、水素の添加または調整によって行われる、
ことを特徴とする請求項1乃至の1つに記載のプロセス。
【請求項5】
1つ以上の気体状補助物質が気相に送達され、これが、前記半導体結晶に関して等電子的であり、前記化合物半導体に、成長反応器の選択された条件で最大1×1017cm-3の量で最大限取り込まれ、
前記補助物質がIn化合物、好ましくはInClまたはInClであり、還元された補助物質がInである、
ことを特徴とする請求項1乃至の1つに記載のプロセス。
【請求項6】
A-B結晶の製造プロセスであって、Aが元素周期表の第3(III)、第4(IV)または第2(II)主族/副族の少なくとも1の元素であり、Cd、Zn、Hg、Al、Ga、In、Si、CおよびGeから選択され、Bは元素周期表のV-、IV-またはVI-主族/副族の少なくとも1つの元素であり、C、Ge、N、P、As、Sb、S、Se、Teから選択され、A-B-バッファ層を任意に含む前記基板上側にエピタキシャル「3D」成長モードでA-B-層成長させられ、ここで前記基板または任意のバッファ層は、所望の総成長方向に垂直ではない表面を含み、隆起部および隆起部間の下方ギャップを有する構造化表面が形成され、
前記製造プロセスは、更に
)前記基板上方に平滑な表面を得るためのさらなるA-B材料の成長または堆積によって得られた前記隆起部間の前記ギャップの充填工程、ならびに
)エピタキシャル「2D」成長モードでの)によって得られた平滑な表面上にさらにA-B層を成長させる工程を含み
任意でさらに工程)および/または)が、存在するIII-、IV-またはII-元素または所定の半導体化合物とは異なるが等電子的である、1つまたは複数の補助物質の存在下で行われ、
堆積過程の間における提供および堆積により、化合物半導体の結晶成長ゾーンの表面に液体金属膜の形態でIII-、IV-またはII-元素の元素状金属を形成する、工程とを含む
ことを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載のプロセス。
【請求項7】
得られた充填層が孔を含まない、
ことを特徴とする請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
HVPE設定で実行される
ことを特徴とする請求項1乃至の1つに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種基板またはネイティブ基板上のA-B単結晶の製造プロセスに関し、ここでA-B単結晶は、III-V-、IV-IV-またはII-VI化合物半導体結晶を意味する。本発明によるプロセスは、高品質のA-B結晶の製造を可能にし、これは特にウェハとしての使用に適している。
【背景技術】
【0002】
A-B化合物半導体結晶の製造のための従来のプロセスは、特にIII-V-結晶を扱っている。従来、基本的に異なる製造プロセスが存在する。特殊な化合物半導体、例えばGaAsは、必要とされる結晶完全性において溶融物から成長させることが可能であった。融点から遠く離れて得られる結晶の場合(例えば、SiC、GaN、AlN)、最大限完全な結晶の成長を可能にするには問題が伴う。このような結晶では、単結晶の成長は、原子の再配列が動力学的理由からこれ以上不可能である温度でのみ可能である。しかし、このような条件で放出される結晶化エネルギーは、結晶方位すべてにおいて非常に大きいので、存在する結晶に対して成長する原子は、比較的無秩序な様式で結晶格子に直ちに結合し、したがって通常は多結晶または場合により無定形の固体が得られる。
【0003】
したがって、融点からはるかに離れた結晶成長は、溶液または気相から生じる。実際には、特に気相堆積法がIII-N-結晶に適用される。しかし、ここでは、溶融物から成長が行われる場合に比べて、提供物質濃度が低いという問題が生じる。したがって、溶融物からの結晶成長に比べて結晶化速度が低下する。それにもかかわらず、このような結晶は、結晶欠陥における結晶核形成確率が高くなり、既に存在する結晶上での秩序化された単結晶の成長が困難であるため、多結晶が形成される傾向がある。
【0004】
しかし、「完全に」単結晶の領域は、存在する少数の結晶欠陥からしか成長しないので、このようにして巨視的には均一な領域および結晶を形成することができる。このような現象は、例えば、Naフラックス法によるGaN結晶で観察することができる。
【0005】
このような結晶の液相または気相からの成長の間に、直径の増加はさらにはほとんどまたは全く不可能である。したがって、成長は、多くの場合大面積の異種基板上でそれぞれ生じるが、その格子定数は、ほとんどの場合、成長させるべきA-B結晶に対応せず、結晶品質の悪化、張力およびクラックをもたらす。成長する結晶またはテンプレートの湾曲/張力に影響を及ぼす可能性はしばしば示されており、例えば特許出願である特許文献1および特許文献2に示されている。薄層の場合、湾曲はLaytecの測定手順で非常によく測定できる。結晶の厚さがμmの範囲で増加すると、測定信号は非常に曖昧になり、この手順はもはや適用できなくなる。成長プロセス中の結晶の湾曲を直接測定するためには、これは、直接光学(例えば、可視波長範囲またはX線波長範囲で時間的に連続する結晶の写真)または機械的測定手順(例えば、成長する結晶の中央からエッジまでの幾何学的位置の絶対的または相対的な決定)によって実現されなければならない。結果として、結晶のエッジに関連した結晶中央における結晶の変化する湾曲/反りが、例えばHVPE結晶成長中の2”サファイアテンプレート上のGaN結晶の場合に得られる。
【0006】
溶融物から得られない化合物半導体結晶の製造のための従来のプロセスのさらなる欠点は、上部の周囲液体または気相から結晶化されるべき種の濃度が低いことによって引き起こされる低い成長速度において見ることができる。
【0007】
特許文献3では、GaNの「2D」成長と「3D」成長とが区別される。ここでは、少なくとも10ピット/cmで少なくとも50%のピット領域を有するテンプレートが記述されている。さらに、図9bおよび図9dに見られるように、薄い領域でピットが成長し、続いて閉じられる。
【0008】
特許文献4は基板上の直接成長に基づいており、ここでは最初に互いに接続されていない島が成長する。しかし、島の合着については開示されていない。
【0009】
特許文献5には、結晶層がその中またはその上で成長する「湿潤層」が含まれている。
【0010】
特許文献6には、適用されたGa膜が開示されており、続いてGaNに移るので消失する。
【0011】
非特許文献1では、ピット層の厚さは>3μmとすべきであると記載されている。しかし、図3は、2μmの「3D」層の厚さしか開示していない。
【0012】
非特許文献2には、基板の上に分解可能なバッファ層(DBL)およびキャッピング層(CPL)を形成することにより、高品質の自立GaNウェハを製造できることが記載されている。CPLのために、GaNウェハは基板から容易に分離することができる。DBLの分解により、Gaを含むウェハの成長中にDBLの表面に金属膜を形成することができる。
【0013】
また、特許文献7には、Si基板と反応できる液体金属膜が開示されている。III-N層は液体膜上で成長する。
【0014】
特許文献8によるプロセスでは、Inが補助物質として添加される。ここでInはGa源に直接添加され、Gaと同様に、このプロセスで塩素化が行われる。
【0015】
相対的に厚い結晶層を得ることができず、特にクラック、インクルージョン、析出物および他の材料欠陥が形成され、材料の品質および基板への加工処理性を制限する可能性があるという事実において、従来技術の従来のプロセスには典型的な問題が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】DE102012204551A1
【文献】DE102012204553A1
【文献】米国特許第7,879,147B2号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0278136A1号明細書
【文献】国際公開第2008/102358A2号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2008/0194085A1号明細書
【文献】米国特許第6176925B1号明細書
【文献】DE102007009412A1
【非特許文献】
【0017】
【文献】Sato and Goto、「Japanese Journal of Applied Physics 52」(2013)
【文献】Kim et al. 、「Journal of Crystal Growth 398」(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本願の目的は、支持体上の温度T≦T(T=物質の融点)で好ましくは完全な単結晶を成長させることであり、この支持体は、成長させるべき結晶と同じ材料で構成されるか、そうでなければ異なる、または物理的および化学的に同一でない。
【0019】
この客観的な技術的課題は、請求項1、3および7に記載のプロセスによって解決される。本発明により得ることができる非常に好ましい生成物は、請求項10に定義されている。さらなる発展はそれぞれの従属請求項に含まれている。
【0020】
本発明を限定するものではないが、本発明の生成物、さらなる発展および特有の特徴を説明する、項目の概要を以下に示す。
【0021】
(1)III-V、IV-IVまたはII-VI化合物半導体結晶の製造プロセスであって、
a)成長させるべき半導体結晶の結晶層(バッファ層)を任意に含む基板を結晶成長反応器に提供する工程と、
b)バッファ層を任意に含むa)に従って提供された基板上方に気相を提供する工程であって、この気相が、化合物半導体のための元素(II、III、IV、V、VI)の少なくとも2つの反応体を含み、これらの反応体が、結晶成長反応器中の反応温度で気体であり、選択された反応条件にて互いに反応性であり、これらの反応体が、適切なIII-、IV-またはII-前駆体または元素およびV-、IV-またはVI-前駆体または元素の反応から誘導され、
これらの反応体2つの濃度比は、化合物半導体結晶が気相から結晶化するように調整され、
少なくとも1つの共反応体が気相に存在し、これが少なくとも1つのIII-、IV-またはII-反応体または前駆体または元素と反応する、工程と、
c)バッファ層を任意に含む基板の表面上への化合物半導体結晶の堆積工程であって、
b)に従って提供された気相は、工程c)の少なくとも1つの堆積過程の間、前駆体化合物または元素の少なくとも1つを結晶成長が可能となる十分な出発材料が提供されるように高濃度で含み、III-、IV-またはII-化合物それぞれを還元する還元剤および共反応体の添加または調整によって、III-、IV-またはII-化合物の気相中での活性を低下させ、結果として結晶の成長速度を、共反応体のない状態と比べて遅くするが、半導体結晶成長は停止しない、工程と
を含むプロセス。
【0022】
(2)堆積過程の間におけるb)に従う提供およびc)に従う堆積により、化合物半導体の結晶成長ゾーンの表面に、III-、IV-またはII-元素の元素状金属、好ましくは液体金属膜を形成する、項目1に記載のプロセス。米国特許第6176925B1号明細書とは対照的に、液体金属膜は、結晶成長ゾーンの表面上に存在する。
【0023】
(3)III-V-、IV-IV-またはII-VI-化合物半導体結晶の製造プロセスであって、
a)成長させるべき半導体結晶の結晶層(バッファ層)を任意に含む基板を結晶成長反応器に提供する工程と、
b)バッファ層を任意に含むa)に従って提供された基板上方に気相を提供する工程であって、この気相が、化合物半導体のための元素(II、III、IV、V、VI)の少なくとも2つの反応体を含み、これらの反応体が、結晶成長反応器中の反応温度で気体であり、選択された反応条件にて互いに反応性であり、これらの反応体が、適切なIII-、IV-またはII-前駆体または元素およびV-、IV-またはVI-前駆体または元素の反応から誘導され、
これら反応体2つの濃度比は、化合物半導体結晶が気相から結晶化するように調整され、
少なくとも1つの共反応体が気相に存在し、これが少なくとも1つのII-、III-またはIV-反応体または前駆体または元素と反応する、工程と、
c)バッファ層を任意に含む基板の表面への化合物半導体結晶の堆積工程であって、
b)に従って提供された気相は、工程c)の少なくとも1つの堆積過程の間、前駆体または元素の少なくとも1つを結晶成長が可能となる十分な出発材料が提供できるように高濃度で含み、III-、IV-またはII-化合物それぞれを還元する還元剤の添加または調整によって、化合物半導体の結晶成長ゾーンの表面へIII-、IV-またはII-元素の元素状金属、好ましくは液体金属膜を形成する工程と
を含むプロセス。
【0024】
(4)化合物半導体が、GaN、AlN、Ga1-xAlN(0<x0<1)、GaAs、GaP、InP、GaSb、SiC、CdTe、ZnTeおよびHgTeからなる群から選択される、先行する項目の1つに記載のプロセス。
【0025】
(5)II、IIIまたはVI-前駆体が、GaCl、GaCl、AlCl、AlCl、InCl、InCl、GaI、GaI、InI、InI、SiCl4-y (式中0≦y≦4、ここでyは整数である)、CH、CCl、CHCl(4-z)(式中、z=1、2または3)、単純または高次のシラン、単純または高次のゲルマン、単純または高次の炭化水素からなる群から選択され、および/またはV-前駆体が、NH、AsHおよびPHからなる群から選択される、先行する項目の1つに記載のプロセス。
【0026】
(6)III-、IV-および/またはII-前駆体のそれぞれのIII-、IV-またはII-元素への還元が、水素の添加または調整によって行われる、先行する項目の1つに記載のプロセス。
【0027】
(7)少なくとも1つの共反応体の濃度が、化合物半導体成長の熱力学的平衡(式1)および反応体の還元の熱力学的平衡(式2)の両方に影響を及ぼす、項目2、3または6に記載のプロセス。
【0028】
(8)1つ以上の気体状補助物質が気相に送達され、これが、半導体結晶に関して等電子的であり、化合物半導体に、成長反応器の選択された条件で最大1×1017cm-3、好ましくは最大5×1016cm-3の量で最大限取り込まれる、先行する項目の1つに記載のプロセス。
【0029】
(9)水素の存在または調整によって、補助物質が還元された補助物質に還元される、先行する項目の1つに記載のプロセス。
【0030】
(10)補助物質がIn化合物、好ましくはInClまたはInClであり、還元された補助物質がInである、前の2つの項目の1つに記載のプロセス。
【0031】
(11)A-B結晶の製造プロセスであって、Aが元素周期表の第3(III)、第4(IV)または第2(II)主族/副族の少なくとも1の元素であり、Cd、Zn、Hg、Al、Ga、In、Si、CおよびGeから選択され、Bは元素周期表のV-、IV-またはVI-主族/副族の少なくとも1つの元素であり、C、Ge、N、P、As、Sb、S、Se、Teから選択され、
i)A-Bバッファ層を任意に含む基板を提供する工程と、
ii)A-B-バッファ層を任意に含む基板上側にエピタキシャル「3D」成長モードでA-B-層を成長させる工程であって、ここで基板または任意のバッファ層は、所望の総成長方向に垂直ではない表面を含み、隆起部および隆起部間の下方ギャップを有する構造化表面が形成される工程と、
iii)基板上方に平滑な表面を得るためのさらなるA-B材料の成長または堆積による、工程ii)から得られた隆起部間のギャップの充填工程、ならびに
iv)エピタキシャル「2D」成長モードでのiii)によって得られた平滑な表面上にさらにA-B層を成長させる工程であって、
少なくとも工程ii)、任意でさらに工程iii)および/またはiv)が、存在するIII-、IV-またはII-元素または所定の半導体化合物とは異なるが等電子的である、1つまたは複数の補助物質の存在下で行われ、
堆積過程の間における提供および堆積により、化合物半導体の結晶成長ゾーンの表面に液体金属膜の形態でIII-、IV-またはII-元素の元素状金属を形成する、工程と
を含むプロセス。
【0032】
(12)工程ii)および任意で工程iii)および/またはiv)が項目1に従うプロセスの工程b)およびc)または項目3に従うプロセスの工程b)およびc)、好ましくは項目2または4~10の1つに記載のプロセスに従って行われる、項目11に記載のプロセス。
【0033】
(13)気相中で生成されたA-Cl化合物の化学活性がClおよび/またはHClの気相への添加によって影響を受ける、項目11または12に記載のプロセス。
【0034】
(14)Aを含む液体層が、成分Aの前駆体の少なくとも1つの還元によって成長するA-B層上に形成される、項目13に記載のプロセス。
【0035】
(15)液相がAのIII-、IV-またはII-元素を含む、項目11から14の1つに記載のプロセス。
【0036】
(16)A-BがGaNを意味し、この場合補助物質がインジウムまたはインジウム化合物である、先行する項目11から15の1つに記載のプロセス。
【0037】
(17)A-BがAlNを意味し、この場合補助物質がインジウムまたはガリウム、またはインジウム化合物、ガリウム化合物またはインジウム/ガリウム化合物である、項目11から15の1つに記載のプロセス。
【0038】
(18)工程iii)において、好ましくは工程(iv)においても、横方向(「2D」)結晶成長が、温度を上昇させることおよび/またはA/B比の増大によって得られる、項目11から17の1つに記載のプロセス。
【0039】
(19)得られた充填層が孔を含まない、先行する項目11から18の1つに記載のプロセス。
【0040】
(20)工程ii)において、粗い表面が、Vピット、逆ピラミッド形ピットまたは他形状のピットあるいは成長面に対して垂直に進まない他の表面や、結晶子表面でのピラミッド構造、台形構造、プリズム構造のうちの少なくとも1つの表面構造特性によって特徴付けられ、可能な領域は原子的に平滑でなくてもよい、先行する項目の1つに記載のプロセス。
【0041】
(21)粗い、特にVピットを含む表面が、バッファ層を任意に含む工程i)で得られた基板に対して規定された領域でのみA-B成長を開始/許容することによって、工程ii)で生成され、他の領域でのA-B成長が防止される、先行する項目に従うプロセス。
【0042】
(22)目標とする態様においてバッファ層を任意に含む工程(i)で得られた基板の上方に、基板上に幾何学的に反復するか、または反復しない、中心または横方向の構造を生じることによって、部分的に許容され、部分的に防止された成長が得られる、項目21に記載のプロセス。
【0043】
(23)バッファ層を任意に含む工程i)で得られた基板を部分的に不動態化することによって、部分的に許容され、部分的に防止された成長が得られる、項目21または22に記載のプロセス。
【0044】
(24)部分的な不動態化が、成長が起こり得ない開放幾何学的構造/層を適用することによって、目標とする態様で生じる、3つの先行する項目に記載のプロセス。
【0045】
(25)薄層で天然に発生した開口部が成長が生じ得る場所に存在するために、部分的に許容された成長が得られる、項目21に記載のプロセス。
【0046】
(26)部分的不動態化が、固有の不均質性、特に成長が起こり得ない、原子ステップ、張力、転位分布/配列の使用によって、原子スケールで目的とする態様で生成される、項目23に記載のプロセス。
【0047】
(27)部分的に許容される成長が、原子ステップ(オフ配向)を生成し、支持体の特定の位置での新しい物質の好ましい成長を助長し、それを他の位置では防止することによって得られる、項目21に記載のプロセス。
【0048】
(28)部分的に許容された成長が、原子または巨視的スケールで支持体中に外部(さらなる物質)または内部(基板のさらなる相)領域を用意または配置することによって得られ、その上に新しい物質は結晶化することができず、外部領域はさらなる物質を介して画定され、内部領域は支持体のさらなる相を介して画定される、項目21に記載のプロセス。
【0049】
(29)工程iv)の「2D」成長モードのそれぞれの条件と比較して、工程ii)の「3D」成長モードに関して下記条件のうち少なくとも1つが選択される、先行する項目11から28の1つに記載のプロセスであって、下記条件とは、
「2D」成長モードと比較してより低い成長温度と、例えばより高いNH濃度を介した「2D」成長と比較して高いN/III比である。
【0050】
(30)項目11から29の1つに記載のプロセスであって、特に、III-NがGaNを意味する場合、工程ii)の「3D」成長モードについて、700~850℃の範囲の第1の相対的に低い温度が選択され、および工程iv)の「2D」成長モードについて、第1の温度と比較して、約900~1050℃の範囲の相対的に高い第2の温度が選択され、工程iii)において、第1の温度と第2の温度との間の温度が選択されるか、または「3D」成長温度から「2D」成長温度まで適宜温度を上昇させるプロセス。
【0051】
(31)ホールがない材料を用いた中央成長面と比較して、工程iii)において温度を第1の温度から第2の温度まで徐々に上昇させて、凹部を充填する、項目30に記載のプロセス。
【0052】
(32)工程ii)において、「3D」層は、層が析出した支持体から最も高い点まで測定される場合、約50~500μm、好ましくは100~150μmになり、工程c)において、この得られた厚さは、この厚さがさらに工程iv)の「2D」層形態において増大する前、好ましくは顕著に増大する前に、増大しないか、または最大100μm、好ましくは最大30μmだけ増大する、先行する項目11から31の1つに記載のプロセス。
【0053】
(33)工程iv)において、先に得られた厚さが、少なくとも100μm、好ましくは少なくとも500μm、さらに好ましくは少なくとも1mm、特に好ましくは少なくとも5mm、1cm、2cm、5cmまたは少なくとも10cm増大する、先行する項目11から32の1つ、特に先行する項目に記載のプロセス。
【0054】
(34)III-N-材料が、主に工程iii)における隆起部間のギャップ内で成長または析出する、先行する3つの項目の1つに記載のプロセス。
【0055】
(35)A-BがGaN、AlN、CdTeまたはSiCである、項目11から29および32から34の1つに記載のプロセス。
【0056】
(36)先行する項目の1つに従うプロセスであって、HVPE設定で実行されるプロセス。
【0057】
(37)III-V-、IV-IV-またはII-VI-化合物結晶を含む単結晶、特に(任意に存在する他の微量成分または不純物のほかに)これら化合物結晶からなる単結晶であって、それぞれIII-、IV-またはII-の析出物および/またはIII-V-、IV-IV-またはII-VI-結晶中の非化学量論的III-V-、IV-IV-またはII-VIインクルージョンの濃度が、最大で1×10cm-3、好ましくは最大1×10cm-3、さらに好ましくは最大1×10cm-3である単結晶。
【0058】
上述の析出物およびインクルージョンの決定または測定は、析出物およびインクルージョンの技術的に関連するすべての特徴(すなわち、小さいサイズ、大きいサイズおよび場合によっては中程度のサイズ)を捉えることができるように行われるべきである。したがって、適切な方法は、例えば、M. Naumannn et al. 、「Laser scattering experiments in VCz GaAs」J. of Crystal Growth 210 (2000) 203-206およびSteinegger et al. 、「Laser Scattering Tomography on Magnetic CZ-Si for Semiconductor process Optimization」Solid State Phenomena Vols. 108-109(2005)第597~602頁に記載されるような、レーザ散乱トモグラフィ(簡潔にLST)である。
【0059】
(38)III-V-、IV-IV-またはII-VI-基本結晶の他、追加的に少なくとも分析的に検出可能な微量の補助物質が存在し、これが製造中の補助物質の使用を示す、項目37に記載の単結晶。
【0060】
(39)補助物質が、1×1017cm-3、好ましくは5×1016cm-3の最大濃度で存在する、項目38に記載の単結晶。
【0061】
(40)補助物質がインジウムである、項目38または39に記載の単結晶。
【0062】
(41)微量の補助物質が、補助物質の析出物またはインクルージョンの形態で存在せず、それぞれの化合物混晶の形態でも存在せず、これらが結晶を構築する構成成分の元素または前駆体との補助物質の反応によって形成される、項目38から40の1つに記載の単結晶。
【0063】
(42)結晶格子の湾曲がないか、または結晶格子の湾曲半径が少なくとも10m以上、好ましくは15m以上、さらに好ましくは20m以上である、項目37から41の1つに記載の単結晶。
【0064】
(43)結晶格子の湾曲がないか、または結晶格子の湾曲半径が少なくとも25mである、項目37から41の1つに記載の単結晶。
【0065】
補助物質は、結晶成長中に表面活性物質として作用し、したがって、表面再構成に影響を及ぼす。補助物質は、それぞれのIII-V-、IV-IV-またはII-IV化合物結晶の選択された成長条件(特に選択された成長温度)でそれぞれの結晶(特にIII-、IV-またはII-位置)に実質的に取り込まれないが、それぞれの化合物パートナーの原子拡散のためのエネルギー障壁が低下する(すなわち、それぞれV-、IV-またはVI-原子)。補助物質は、一定の成長速度で格子定数のより迅速な一時的適応を引き起こし、結晶のより大きな力および反りをもたらす。しかし、これは同時に、横方向成長(沿面成長)の改善、およびクラック源として作用する可能性のある結晶中の散乱の中心部分の減少を導く。従って、より強い反りを有する結晶が成長し、これは、相対的に強く歪みが生じるが、クラックが少ない。この場合、補助物質を用いることにより、結晶の湾曲が相対的に大きくなる。
【0066】
補助物質に関連する本発明の特に特異な態様は、第1に、液体金属膜の形成中に補助物質を(任意であるが、非常に好ましくは)使用することができること、第2に、補助物質が、3D成長モードの工程で使用することができ、そこで予期しない好都合な効果が生じる可能性があるという点に見られる。
この意味において、補助物質の存在は、本発明の特異な態様における使用の適応(品質特性)を提供する。
【0067】
上述のように、各結晶への補助物質の取り込みは実質的なものではない。それにもかかわらず、補助物質が使用される場合、その存在は、(補助物質に特異的なそれぞれの検出方法によって)少なくとも微量で分析的に確定可能でなければならない。したがって、補助物質は、インクルージョンまたは析出物の形態では存在しないが、(上述の理由により熱的条件のためにわずかに過ぎないが)化合物半導体結晶のそれぞれの部位で等電子的に取り込まれる。結晶に取り込まれる量は、通常、典型的なドーピングのための通常量未満、例えば、最大濃度で1×1017cm-3、好ましくは5×1016cm-3である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】増加する水素濃度における熱化学平衡に存在するGaとGaNのモル数を示すグラフである。
図2】GaN結晶の成長中に補助物質としてのインジウムによって例示される、成長する結晶の湾曲/曲げに対する補助物質の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
基礎となる本発明の基本的な概念は、物質が反応器内に導入されないまたは物質が反応器から出されず、組になった平衡反応のすべての基本的に可能な反応が可逆性である場合に(すなわち、1つの反応方向のみが境界条件下で可能であるような反応が総じて生じない場合に限り)、互いに組になった平衡反応系が生じ、境界条件に依存した平衡条件に調整されるという事実に基づく。互いに組になったいくつかの平衡反応が、化学系全体に含まれる。ここでは以下に、最初に互いに組になった平衡反応を示すが、これは2つの共通する反応体を介して接続されており、この場合GaNの例を示すものであるが、これはIII-V結晶が形成される代表的な一例に過ぎず、それぞれ類似のIV-IV-またはII-VI-結晶を表す。ここで述べる例では、GaはIII-またはIV-またはII-反応体の代表例であり、Cl(またはHCl)は共反応体の代表例であり、Hは、それぞれIII、IVまたはIIに関する還元手段および還元剤(特にガス状のもの)の代表例である。以下では、一次平衡のみについて説明する。
【0070】
平衡反応1:
【化1】
【0071】
GaはClと反応しGaCl(より高い温度で)またはGaCl(より低い温度で)となり、それ故、所定のプロセス条件(≧800℃)では主にGaClとして存在する。ClまたはHClの追加的な過剰化学量論的添加により、GaClが安定化され、それによってGaClまたはGaClの活性(a)が低下し、故にゆっくりと反応するが、これはGaNの形成にとって特に重要である(反応3aを参照)。
【0072】
所望のGaN形成確率/成長速度のために、GaCl濃度は、HClの添加および一定のNH濃度の場合に増大させることができる、または、増大させなければならない。
これは、GaN成長の間の表面近傍の気相のGa欠損を避けるために重要であり、これが成長させるべき結晶の結晶性の改善が得られる理由である。
【0073】
あるいは、HClがClの代わりに反応する平衡反応2が起こり得る。
【0074】
平衡反応2:
【化2】
【0075】
水素は存在する他の物質と平衡状態にあり、従って他の平衡に影響を与えるので、H分圧の適応は重要である。
【0076】
GaClは、ガス状の還元手段または還元剤(ここではH)を用いてGaおよびHClに転化することができ、したがって、(本発明のプロセスにとって重要であり有利な)Ga膜を基板上に、特に成長すべき結晶上に導くことができる。成長すべき結晶の相境界におけるさらなる反応体の濃度は、液体膜によって溶液成長の条件まで増大させることができる。しかし、液相の層の厚さは、薄くまたは非常に薄く、適切にはより低いμmまたはさらにはnmの範囲で、原子寸法にまでさえ維持できる。
【0077】
以下ではさらなる反応を説明するが、これらは平衡反応ではなく、所定の条件下で一方向にのみ進行する(すなわち、不可逆的である)が、それによって上述の基本的な方程式系は、さらなる反応を示した後に記載されるように、さらに影響を受け得る。
【0078】
反応3a:
GaCl+NH→GaN+HCl+H
またはGaCl+NH→GaN+3HCl (3a)
【0079】
GaClは、約1150℃の温度までおよび最大1atmでNHと反応することができるが、系内の圧力が増大しない場合、化合物はより高温でその元素に分解される。しかし、NHの形成はエネルギー的に好ましくないので、逆反応は不可能である。
【0080】
反応3b:
2GaN+Cl→2GaCl+Nまたは
2GaN+2HCl→2GaCl+N+H (3b)
【0081】
ClおよびHClによるエッチングによるGaNの分解が可能であるが、NHの形成がエネルギー的に好ましくないので、逆反応は不可能である。
【0082】
さらに、原理的に2つのさらなる副反応が可能である。
2GaN+H→2GaH+N (4a’)
2GaN+H→2GaNH (4a”)
【0083】
しかし、両方の反応4a’および4a”について、熱力学的データおよび実験証明は利用できない。
【0084】
GaおよびNHからのGaNの形成も可能である。
2Ga+2NH→2GaN+3H (4b)
【0085】
原理的には、ClおよびHの影響を受けない分解がさらに起こり得る。
2GaN(s)→N(g)+2Ga(l) (5)
(用語「s」は固体を示し、「g」は気体を示し、「l」は液体を示す。)
【0086】
GG2の他、潜在的に追加的な液体ガリウムもこの反応によって生成することができ、これは830℃を超える温度で起こり得る。
【0087】
全ての反応式(平衡反応+不可逆反応)では、元素Ga、Cl、Hが存在し、平衡に影響するため、各反応式の分離は労なくは不可能である。系内のHおよびClの濃度の目標とする調整を介して、例えば、それぞれの反応温度、所望の平衡濃度およびIII/N比について反応体HおよびClの分圧を介して、所望の方向、例えば結晶表面上の液体Ga膜の有利な形成および調整のために、GG2の生成物側の方向において種々の平衡に対して個々に影響を及ぼすことが可能である。HClの濃度はまた非常に適した様式で調整することができるが、この場合HおよびClの濃度は当量比で変化し、これが調整性が制限される理由である。
【0088】
反応3、4および5は不可逆反応である。NHへの逆反応は既存の境界条件では起こらず、最終的に活性な原子状窒素はもはや利用できなくなる。それにもかかわらず、不可逆反応は、それぞれの反応速度論による平衡反応の調整および位置に影響を及ぼす。
【0089】
平衡反応GG1およびGG2は、反応ゾーン内の還元手段(H)もしくは還元物質および/または共反応体(Cl、HCl)の添加または調整を介して、目標とする態様で影響を受けおよび/または調整され得る。
【0090】
他の物質(ここでは例えばGaCl)をそれらの成分または他の化合物に転化できるすべての薬剤/物質は、熱力学的観点から、還元手段または還元物質として理解されるべきである。ここでは、それら自体は還元されるべき物質(例えば、GaN)と反応する。とりわけ、物質の熱化学的ポテンシャル、それらの量および温度によって、還元効果が物質に起因する可能性があるかどうかが決定される。
【0091】
還元手段/試剤の添加または調整を介して、特にGaNと液体Gaとの比が影響を受けるか、または制御される。さらに、Hまたは共反応体は、気相中のGaまたはGa含有反応体の活性が低下することを確実にする。さらに、Hまたは共反応体は、高濃度の前駆体化合物(GaCl、GaClおよび/またはNH)にもかかわらず、反応3aがあまり速く進行しないことを確実にするが、停止することもない。III-前駆体(ここではGaCl、GaCl)およびV-前駆体(ここではNH)の好ましくは高濃度が特に重要であり、この場合、十分な出発材料は、GaNの好ましくは選択可能な高成長速度にて常に提供されるので、高品質な結晶の成長を確実にする。液体Ga膜が存在すると、この高濃度は相界面領域で直接利用可能である。
【0092】
固体GaNがGaNバッファ層の意図された除去のために分解されることを意図した非特許文献2に記載されている系とは対照的に、本発明では、液体Gaとの反応によって、例えばCl、HClまたは局所的に十分な濃度のClおよび成長ゾーン中のHClを添加または調整し、これらが相界面領域で直接利用できるようにすることによって、「新しい」前駆体を形成することが可能である(式1および式2参照)。非特許文献2とは対照的に、液体Gaは、平衡状態に依存して、さらなる反応のために常に適切な平衡状態で利用可能である。
【0093】
GaNの形成中にInなどの、任意だが、好ましくは使用される等電子的な補助物質はまた、他の反応体に類似した共反応体と反応することができる。補助物質もまた形成されることができ、したがって化合物半導体結晶が成長するときに化合物半導体結晶の上方に液相で設けることができる。
【0094】
本系では、好ましくはGaNの直接分解(式5)は避けるべきである。液体Gaは、上述の平衡反応の繋がりを介して平衡濃度でのみ存在する方がよい。
【0095】
成長ゾーンの表面上の薄い液体金属膜およびその結晶成長に関する重要性について、例えば、以下の現象が、本発明に従って代表的に決定され得る。
【0096】
(i)GaClの添加が分析調査上の理由で中断される場合、送達された追加のHClのみが相境界で有効であり、したがってGa膜のエッチングを有利にする。これにより、結晶は直ちに過度に曲げられ、クラックを形成し、あるいは最悪の場合には、多くの単一片に破裂する。このような反応は、結晶の内部の特性の変化によって推論することはできない。これらの理由により、表面上に存在する液体膜がエッチングされ、したがって表面張力が急激に変化し、記載された自発的なクラック形成または結晶の破裂につながるということが唯一の可能な説明である。
【0097】
(ii)NH添加および特定温度でのGaClおよびHClの添加の停止中に表面が裂ける可能性はないが、例えば5~10μmのサイズのVピットが形成される可能性がある。III/V(N)比が非常に小さくなるとVピットが形成されるが、これは記載されたプロセスの場合には避けられない。しかし、Ga膜が存在しなければ、成長は突然停止し、表面は実際には完全に滑らかになる。
【0098】
(iii)さらに、結晶成長中の局所的な濃度差によって液体膜が存在しない場合に形成するインクルージョンおよび析出物を回避することができる。
【0099】
液体金属膜では、上述されるように、補助物質として、例えばInとしてさらなる構成成分も存在し得る。
【0100】
結晶の上方に(結晶成長中に)永久的に存在する液体層(例えば、Ga、Inまたは他の元素の)は、原子の移動度に影響を及ぼす。エネルギー的に好ましい位置、したがって結晶学的に正確な位置での取り込みが有利であり、これにより、系が平衡状態に近づいて平衡状態に到達する。
【0101】
GaNとは異なるIII-V-、IV-IV-またはII-VI-化合物半導体結晶の場合、化合物半導体の形成は、対応する平衡反応によって同様に進行し、平衡の位置は、不可逆的副反応によって影響を受け得る。
【0102】
例えばAlNの成長中、Alは約600℃でAlClに変換され、1400℃~1600℃でNHによりAlNに転化される。ここで、上述の境界条件では、III/V比は1に近いかそれ以上であるが、少なくとも1/50でなければならない。
【0103】
本発明によれば、AlN結晶の成長の間に補助物質を有利に好適に使用するために、追加のIn源および/またはGa源を含む装置の特定のものが存在してもよく、これにより気体InClまたはGaClをHClまたはClを用いて形成し、これをまた結晶化面に導く。次いで、成長しているAlN結晶上の結晶化面に、液体Inまたはここではまた液体Alと混合されたGa層が、上記のGaNと同様に形成される。
【0104】
GaAsの場合、基板が、例えば、転位密度が5×10~3×10cm-2のGaAs-LEC基板(Liquid Encapsulated Czochalskiプロセスに従って作製される)であるように配列が選択できる。この上に、GaCl/GaClおよびAsHが、650℃~850℃の温度範囲で送達され、反応させられる。先の配列と同様に、InCl/InClは、GaAs上に液体In膜を形成するために系に挿入される。
【0105】
GaPの場合、基板が、例えば5×10~3×10cm-2の転位密度を有するGaAs基板(例えば、LEC-GaAsとして作製される)であるように配列が選択できる。この上に、InCl/InClおよびPHを挿入し、例えば850℃~1050℃の温度範囲で反応させる。GaP結晶を成長させるための補助物質の有利で好ましい使用に関して、先の配列と同様に、例えばInCl/InClを用いて、GaP上方にGaを有する液体In膜を形成するために、インジウムのような補助物質を系に挿入するという本発明による特異性がある。
【0106】
一般的なプロセスに関する好ましい実施形態では、反応器内の圧力は100mbar~100atm、好ましくは1atm以上、最良には10atm以上でなければならない。高い気相濃度を得るためには、少なくとも1atmの圧力が好ましい。
【0107】
反応温度は、好ましくは450℃~1200℃の範囲、さらに好ましくは可能な限り高く、約1000℃以上、例えば1050℃であるべきであり、ここで絶対温度は、圧力およびガス雰囲気の化学組成に依存して影響される。
【0108】
しかし、NHに由来する原子窒素分圧がGaN分解圧力よりも低いことを確実にすべきである。ここで窒化物の場合に生じる問題は、原子状の窒素が、逆反応のためにはもはや利用可能ではない分子状の窒素に直ちに反応するので、厳密な意味では、これは「実際」の平衡分圧ではないという点にある。それ故、この用語は、真空に対する純粋なGaN分解速度を表す。
【0109】
水素濃度は少なくとも30モル%、例えば約50モル%、最大で約80モル%まででなければならない。
【0110】
III/VまたはII/VI比は1~1/1000、通常は1/10~1/100であるべきであるが、1/10以上の値が好ましい。
【0111】
しかし、物質輸送に必要であり、平衡の形成に好ましい効果を有するClの量に関して、GaClの形成に必要なClのほぼ2倍、最大で3倍の量が使用されるべきである。
【0112】
成長速度は、総ガス流量によってさらに影響され得るが、配列およびデバイス設定の幾何学的形状も成長速度の進展に影響を及ぼす。さらに、成長速度は、軸方向および半径方向の温度勾配、反応器材料およびガス組成に依存する。
【0113】
基本的にエピタキシャル成長が生じることが確実にされるべきであり、これは支持体の結晶構造が、同じ物質であるか異なる物質であるかにかかわらず、成長する結晶内で継続されることを意味する。結晶成長は、定量的に添加された共反応体、例えば、ハロゲン(Cl、I、Br)または結合したハロゲン(HCl、HI、HBr)を用いてそれぞれ生じる。ハロゲンまたはハロゲン化合物は過剰の(過)化学量論的な濃度で添加され、結晶化面から生じる濃度低下を可能な限り回避することができるので、結晶品質の向上に繋がる。この場合、同時に、成長する結晶の成長速度はIII、IVまたはIIの必要濃度に依存して低下する。
【0114】
前駆体を(必要に応じて任意の補助物質も)元素状金属またはそれぞれの元素に還元できるように、水素が添加される。これにより、成長させるべき結晶上に液相を形成することができ、原子の原子移動度を高める。(上述の反応の境界条件に影響を与えることによって実現可能なように)液相の層の厚さが薄い場合、または極めて薄い場合でも、化合物半導体結晶の直上の拡散限界のため、成長速度は実質的にもまたは認識できる程度にも低下しない。液相の存在の証拠は、直接的または間接的に提供することができる。
【0115】
熱化学平衡計算は、Ga(Cl)および原子状窒素が同様の量で接触すると、GaN成長条件下でGaNに反応することを示している。ここで、NHが単に安定化され、GaNの生成が抑制されると、水素との反応は、液体Gaに向かう方向にシフトすることができず、それによって気相中にさらにGaClおよびNHが存在する。
【0116】
しかし、液相Gaは、GaClが少量の原子状窒素と平衡状態にある場合、固体GaNの他、適切な温度(例えば、900℃)で熱化学的平衡計算に存在し、これは相境界で直接的に実現可能である。水素が系に加えられると、GaNの量が減少し、Gaの量が増加する(図1参照)。
【0117】
図1は、増加する水素濃度(10-3~10-1モル)における熱化学平衡に存在するGaとGaNのモル数を示す。ここで、GaNの量はほぼ同じであるが、GaClは水素と反応してHClおよびGaになるという事実によって生じるようにGaの量が大きく増加する。これにより、水素濃度の増加に伴う熱化学平衡における固体GaNの他、900℃における液相Gaの存在が実証される。
【0118】
このような組成物に共反応体をさらに添加することにより、気相中の少なくとも1つの前駆体との副反応が提供された基板の上方で生じ、それによって成長させるべき結晶の形成確率が低下するが、結晶品質は向上する。
【0119】
III-V-、IV-IV-またはII-VI-化合物半導体結晶の製造のための上述の反応は、基本的にHVPE配列または設定で行うことができるが、ここで条件はそれぞれ記載されるように適応される。
【0120】
以下では、本発明に従うクラックのない結晶の形成のための異なる「3D」成長および「2D」成長の組み合わせがどのようにして可能になるかをより詳細に説明しなければならないが、ここでは「3D」成長について、場合によるが好ましくは「3D」ギャップの充填についておよび「2D」成長についてのさらなる好ましい実施形態において、制御(平衡)反応に関する上述の実施形態が適用される。
「3D」成長中の結晶の好ましい/必要とされる表面は、本質的には、全体/総成長方向に対して非平行に成長する結晶面からなる。
【0121】
「2D」成長中の結晶の所望の/要求される表面は、本質的に、結晶の全体/総成長方向に垂直に成長する結晶面からなる。「2D」成長の間に成長させるべき半導体結晶の成長方向における表面は本質的に原子的に滑らかであるが、マイクロメートルからミリメートルの範囲の隆起部が可能であることに留意すべきである。上述のように補助物質が添加されると、成長表面上に存在する液相を安定化するが、本質的に反応性ではなく、すなわち、選択された条件下で他の化合物の1つと化学的に結晶性の化合物を本質的に形成しない。従来考えられ得る補助物質の使用とは対照的に、本発明では、「2D」成長モードでは使用されず、「3D」成長モード、場合によりギャップの充填時において使用される。あるいは、「2D」成長モードだけでなく、「3D」成長モード、場合によりギャップの充填時にも使用される。本発明のアプローチは、予期せぬことに、得られた結晶において顕著な改善をもたらした。「3D」成長では、もともと結晶成長方向に垂直な転位は、全体/総結晶成長方向と平行ではない傾斜結晶面に曲げられ、これらの結晶面が隣接結晶面に向かって成長する場合に、結晶内に追加の張力、反りまたはクラックを生じさせることはなく、消滅し得る。「3D」成長の間、「2D」成長に類似した反応体のより高い移動度が、結晶の表面上に液相が存在する間に生じ、その結果、記載されたプロセスを加速させる。
【0122】
本実施形態の工程i)に従って提供される基板上に、まず、多数の、好ましくは結晶学的に類似の結晶が堆積され(本実施形態の工程(ii))、圧縮歪み層に合着する(結合される)。
【0123】
異種基板上での成長の間、成長させるべき物質の結晶格子は基板に対応しない。したがって、成長する結晶は、基板への適応を得るために、ゼロ、1次元、または2次元の欠陥を伴って創出される。
【0124】
ここで、成長方向に関して傾斜した結晶表面は、結晶子のエッジに単結晶の欠陥を移動/押し込むのに有利であり得、ここで欠陥は他の欠陥と共に消滅することができる。
【0125】
補助物質、例えばInは、欠陥の曲げを促進するのでこのプロセスを支持する。さらに、補助物質は、結晶化されるべき元素の表面移動度を増加させることを意図している。それにより、補助物質は、新しい結晶中に部分的にのみまたは全く取り込まれないことが意図される。
【0126】
しかし、成長させるべき物質の圧縮歪み層上には、可能な限り多くの同一に配置された結晶が析出されるので、結晶成長は、巨視的な成長方向に垂直な表面で生じ、すなわち成長方向に垂直な領域での横方向の成長が継続して生じる。しかし、成長方向に垂直な横方向の成長は、成長方向の成長に比べて低いため、結晶表面上の欠陥の過成長が生じないまたは不十分な過成長のみ生じ、「3D」成長モードにおける傾斜成長領域は、総結晶成長に対して垂直な所望の成長面とは対照的に形成される。結晶欠陥は結晶表面に対して曲がると、全体/総成長方向に傾斜したこれらの表面の方向に移動し、そこで結晶ピークに対して低い領域の他の隣接する傾斜表面の欠陥と反応する。
【0127】
工程i)からii)に関しては、「3D」成長条件は、選択された原子位置、例えば、貫通転位点(dislocation piercing point)、原子結晶ステップ、および任意の種類の格子欠陥においてのみ開始されることに留意する。垂直方向と比較して成長方向において速く成長する結晶子は、元の表面上の他の結晶欠陥においてはさらに成長しない。隣接する結晶子についても同じことがあてはまる。最初に個々に成長する結晶子は互いに接触し、最終的には元の層全体を覆い、巨視的に粗い3次元表面を形成し、この表面は、傾斜しているが成長方向に対して垂直ではない領域からなる。
【0128】
ここで、結晶の圧縮張力が生じ、さらに蓄積される。ここで、転位は、結晶子からの表面への成長方向に対して傾斜して位置する成長領域を通って有限回移動し、結晶子に接する他の結晶子の欠陥と共に消滅する。
しかし、この成長は、これらの覆われた領域での「3D」成長プロセスを除外するμm範囲の基板上の「巨視的」構造化(例えば、ELO)/被覆上の成長と混同してはならず、それによって上述したように、間にある領域では「3D」成長のみが開始され、その後覆われた領域は「3D」結晶子によって横方向に過成長する。
【0129】
好ましい実施形態の工程iii)の実現のために、新たな核形成を回避し、同時に残りの欠陥が結晶子のエッジに移動/押し込まれることを可能にする他の条件(例えば高温)を調整することができ、これにより、できるだけ短時間で成長方向に対して垂直な方向を向けるようになり、対向する傾斜領域の欠陥と共に消滅させることができる。これは、「3D」-成長モードの間に得られたギャップの充填により生じる。
【0130】
したがって、2次元成長方向における3次元成長領域のこうした充填は、好ましくは、ほぼ欠陥のない結晶子間に潜在的に存在する欠陥が、これ以上またはわずかにも、局所的および一時的に変化またはシフトしないように行われ、それによって新たな張力は発生しない。
【0131】
この目的のために、例えば、「3D」表面(工程iii))の充填/閉鎖の期間における成長速度は、主結晶成長の後の成長速度に比較して最初に遅く維持され、その後、温度を「2D」成長温度に達するまで段階的にその温度まで上昇させる。温度上昇の代わりに、またはそれに加えて、III/V比または圧力を変化させることも可能である。
【0132】
続いて、好ましい実施形態の工程iv)において、「2D」成長モードの結晶が堆積され続けられる。
【0133】
初めから系に添加される補助物質(例えば、In)は、このプロセスを助けることができるが、バルク結晶に関して等電子的でなければならず、結晶に、例えば混晶または新しい相(インクルージョンなど)の形態で実質的に取り込まれてはならない。例えば、GaNのためのInの系では、In原子はGa位置の結晶中にのみ取り込まれ得る。しかし、この実施形態が上述の実施形態と組み合わされる場合、補助物質は元素状金属液相の形成に寄与することができる。補助物質、例えばInは、二次イオン質量分析法によって測定される場合、1×1017cm-3のわずかな濃度、好ましくは最大5×1016cm-3の濃度までしか、最大でも取り込まれず、または検出可能ではない。
【0134】
GaNとは異なる結晶の成長中にも、液相は「2D」および「3D」成長中に重要な役割を果たす。
【0135】
したがって、AlNの成長のための液体Inおよび/またはGa層は、AlN結晶の「2D」成長においてだけでなく、AlNの「3D」成長においても使用され、それにより、AlN結晶格子の適応は、現在の成長条件下で平衡状態にあるAlN結晶格子上に元々異種の基板またはネイティブ基板によって成形された基板の巨視的な反りがなく行われることができる。続いて、GaNと同様に、「3D」-AlN層は充填/閉鎖され、結晶が最終的に所望の厚さに達するように、「3D」と比較してより高い温度で「2D」成長条件下で過成長する。
【0136】
同様の原理が、液体Al層が用いられるGaAsの成長、および液体In層が用いられるGaPの成長にも適用される。
【0137】
妨害する析出物または非化学量論的なインクルージョン、例えばIII-析出物または非化学量論的III-V-インクルージョン、同様にII-またはIV-析出物またはII-VI-またはIV-IV-インクルージョンは、記載のプロセスによって回避または低減できる。
【0138】
このような析出物またはインクルージョンの本発明による制限または回避は、それぞれ、本発明の単結晶において検出可能、例えばLST(レーザ散乱トポグラフィ)(M. Naumannn et. al. 、Laser scattering experiments in VCz GaAs, Steinegger et al. 、 J. of Crystal Growth 210 (2000) 203-206、Laser Scattering Tomography on Magnetic CZ-Si for Semiconductor process Optimization, Solid State Phenomena Vols. 108-109(2005)第597~602頁)により測定可能および検証可能である。(本発明によらない)析出物または非化学量論的インクルージョンを有する結晶の場合、これは、従来の混晶、例えばGaN(およびそれぞれGaInN混晶を、例えばInと共にそれぞれ形成する)の場合にもあるように、補助物質がIII-Vー、II-IV-およびIV-IV-結晶に実質的に取り込まれないが、別個の相として堆積するような混晶と区別される。これに対して、本発明の結晶中には、補助物質と化合物結晶との混晶は存在せず、補助物質が別個の相を形成することもない。
【0139】
本発明によるIII-V-、IV-IV-またはII-VI-化合物単結晶は、それぞれIII-、IV-またはII-析出物および非化学量論的III-V-、IV-IV-またはII-VI-インクルージョンの濃度が、最大1×10cm-3、好ましくは最大1×10cm-3、さらにより好ましくは最大1×10cm-3である。
【0140】
本発明に従うIII-V-、IV-IV-またはII-VI-化合物単結晶はさらに、結晶格子の湾曲が全く存在せずまたは小さな湾曲のみ存在し、あるいは少なくとも10m、15m、20mの結晶格子湾曲半径または好ましくは25mの湾曲半径が存在することを特徴とする。
【0141】
ここで、成長したGaN結晶の結晶格子の湾曲は、例えば室温でX線測定によって決定され、ここで少なくとも結晶の、またはこうして製造されたウェハのエッジおよび中央での配向が決定される。
【0142】
テンプレートまたは結晶の局所的および一時的な湾曲は、成長温度でのHVPE結晶成長時/結晶成長の間の光学的または機械的プロセスによって確認される。ここで、光学的プロセスは、異なる波長で、またはX線でも撮像することによって実行できる。機械的プロセスは、例えば、成長すべき結晶と直接接触して、規定された「ゼロ位置」に関して異なる局所的および一時的な位置を決定する。
ここで使用される方法は、点または領域における距離を決定することができ、または画像形成技術であり得る。
【0143】
図2は、GaN結晶の成長中に補助物質としてのインジウムによって例示される、成長する結晶の湾曲/曲げに対する補助物質の影響を示す。この湾曲の値は、HVPE結晶成長中の2”-サファイアテンプレート上のGaN結晶に関して結晶エッジに対する結晶の中央部に関係する。図2のa)は、標準条件(Inなし)を使用した場合の湾曲を示し、図2のb)は、HVPE-GaN成長温度で補助物質としてInを用いるプロセスの湾曲を示す。
【0144】
図2に示すように、補助物質としてインジウムを使用する場合、結晶の湾曲が増大する。インジウムは、2D結晶成長中に表面活性物質として作用する。選択されたGaN成長温度において、インジウムは実質的にGaN結晶中に取り込まれない(Gaの位置は置換されない)が、窒素原子の拡散のためのエネルギー障壁は減少する。Inは、一定の成長速度で格子定数のより迅速な一時的適応を引き起こし、結晶のより大きな力および反りをもたらし、それによってクラックに対する高い感受性をもたらす。しかし、同時に、横方向成長の改善を導き、クラック源として作用する可能性のある結晶中の散乱中心が少なくなる。このようにして、結晶は比較的強い反りを伴って成長し、比較的強く引っ張られるが、クラックは少ない。
【0145】
要約すると、本発明は、III-V-、IV-IVまたはII-VI-化合物半導体結晶の製造プロセスに関する。
【0146】
このプロセスは、必要に応じて1つの結晶層(バッファ層)を備えた基板を提供することから始まる。続いて、結晶成長反応器の反応温度において気体であり、選択された反応条件で互いに反応し得る化合物半導体(II、III、IV、V、VI)の元素の少なくとも2つの反応体を含む気相が提供される。2つの反応体の濃度比は、化合物半導体結晶が気相から結晶化できるように調整され、その濃度は、結晶形成が可能であるように高く選択され、ここで、III-、IV-、またはII-化合物の気相中の活性は、還元手段および共反応体を添加または調整することによって低下させ、結果として結晶成長速度は、共反応体が存在しない状態と比較して遅くなる。ここで、化合物半導体結晶は基板の表面に堆積されるが、液相は成長する結晶上に形成し得る。
【0147】
また、補助物質を添加でき、液相中に含有させることもできるが、化合物半導体結晶中に少量でのみ取り込まれる。
【0148】
ここで、3Dおよび2D成長モードは、目標とする方法で制御することができ、ここで結晶中に存在する欠陥は、3D成長モードで依然として傾斜した表面にわたって極短時間に結晶子のエッジに押し込まれ、成長方向に垂直なそれらの方向を継続的に変化させ、結果としてそれらを対向する傾斜領域の欠陥と共にそこで消滅させることができる。
補助物質の添加および液相の存在はこれらの手段に有利である。
【0149】
生成物は、それぞれ従来の化合物半導体結晶と比較して、より低い濃度のインクルージョンまたは析出物を有し、それにもかかわらず湾曲がないまたは湾曲が非常にわずかであるそれぞれのIII-V、IV-IVまたはII-VI化合物半導体結晶の単結晶である。
図1
図2