(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ハウジング及び検査キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
G01N33/543 521
(21)【出願番号】P 2018039135
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-02-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社メディセオ(東京都中央区八重洲二丁目7番15号)平成29年10月17日 東邦薬品株式会社(東京都世田谷区代沢5-2-1)平成29年10月24日 株式会社ムトウ(北海道札幌市北区北11条西4-1)平成29年11月 2日 共立医科器械株式会社(岩手県盛岡市愛宕町15番9号)平成29年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】505145149
【氏名又は名称】株式会社ニチレイバイオサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 亜佐夏
(72)【発明者】
【氏名】松下 洋久
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-303615(JP,A)
【文献】特開2017-173009(JP,A)
【文献】特開2007-114097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0006530(US,A1)
【文献】特開2016-102790(JP,A)
【文献】特開2017-062258(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124508(WO,A1)
【文献】A群β溶血連鎖球菌抗原キット イムノファインTM ストレップA,株式会社ニチレイバイオサイエンス,2017年09月,httpd://www.nichirei.co.jp/bio/products/pdf2/522071.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体滴下開口及び判定開口が形成され、内部の載置領域に検査ストリップが配されるハウジングにおいて、
互いに接合される第1ケース部及び第2ケース部と、
前記第1ケース部と前記第2ケース部とを接合する際に、前記検査ストリップが、前記検体滴下開口を介して滴下された検体抽出液が前記検査ストリップによって展開される向きに沿った展開方向に前記載置領域からずれているときに前記検査ストリップを挟み込んで前記第1ケース部と前記第2ケース部との接合を阻害する阻害部と
を備え
、
前記阻害部は、
前記第1ケース部の内面に設けられ、前記展開方向における前記載置領域に近接した第1凸部と、
前記第2ケース部の内面に設けられ、前記検査ストリップが前記載置領域に配されて前記第1ケースと前記第2ケースとが接合されたときに、前記載置領域の外側で前記第1凸部よりも展開方向外側において前記第1凸部に近接して配される第2凸部と、
を有し、
前記第1凸部は、前記検査ストリップの前記展開方向における移動を規制する規制壁であり、
前記第2凸部は、前記検査ストリップが前記載置領域に配されて前記第1ケースと前記第2ケースとが接合されたときに前記規制壁と厚さ方向で重なりが生じ、前記載置領域から前記検査ストリップが前記第1凸部側にずれているときに、前記第1凸部との間に前記検査ストリップを挟むことによって、前記第2ケース部と前記第1ケース部との接合を阻害することを特徴とするハウジング。
【請求項2】
前記第2凸部は、前記載置領域から前記展開方向にずれた前記検査ストリップを厚さ方向に押
し、
前記第1ケース部の内面には、前記
第2凸部を受け入れる受容部
を備え、
前記第1凸部は、前記載置領域から前記検査ストリップが前記第1凸部側にずれているときに前記
第2凸部によって厚さ方向に押された前記検査ストリップの変形を抑える支持部と
なることを特徴とする請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記第1ケース部の内面に、前記第1凸部との間に前記展開方向に間隔をあけて設けられ、前記第1凸部との間に前記第2凸部が入り込む溝を形成する第3凸部を有することを特徴とする請求項
1に記載のハウジング。
【請求項4】
前記第2凸部は、前記展開方向に延びており、前記第2ケース部の縁部に形成された側壁と一体であることを特徴とする請求項
1に記載のハウジング。
【請求項5】
一対の前記第1凸部が前記展開方向と直交する方向に並べて設けられ、前記一対の第1凸部の間に前記第2凸部が入り込む間隙が形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のハウジング。
【請求項6】
前記阻害部は、前記載置領域の前記展開方向の両端にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし
5のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載のハウジングと、
前記検査ストリップと
を備えることを特徴とする検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング及び検査キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマト法用の検査ストリップを用いたハウジングタイプの検査キットが知られている(例えば特許文献1等を参照)。このような検査キットは、妊娠検査や、インフルエンザウイルスなどの感染症の診断において利用されている。ハウジングタイプの検査キットは、上ケース部と下ケース部とを接合したハウジングと、このハウジング内に収容された帯状の検査ストリップとを備えており、ハウジングの上面には検体滴下開口と判定開口とが形成されている。下ケース部の内面には、検査ストリップの位置を規制して正規の位置に保持するためのガイド部材が設けられている。
【0003】
検査の際には、検体滴下開口を介して被験物質を含む検体抽出液を検査ストリップに滴下し、判定開口から露出されている検査ストリップの所定部分にテストラインが発現するか否かを目視で確認し、感染等の有無を判定する。通常では、判定開口内には、テストラインの他に、検査が適正に行われたことを示すコントロールラインが発現する。ハウジングの判定開口の近傍には、テストライン、コントロールラインの位置を示す文字等の指標が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなハウジングタイプの検査キットでは、製造時において何らかの理由により、ハウジング内の検査ストリップが正規の位置からずれてしまうことがある。このように検査ストリップがずれた検査キットでは、正しい検査結果を取得できなくなることがある。特に検査ストリップが検体抽出液を展開する方向にずれると、判定開口の近傍に記された指標からずれた位置にラインが出現し、医師が判定に迷ったり誤判定したりする可能性がある。また、検査ストリップによる検体抽出液の展開が起きず、検査が全く行われないといった事象が発生する可能性もある。このため、製造工程では、上記のように検査ストリップがずれた検査キットをとり除いているが、そのような検査キットを取り除くことは容易ではなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、検査ストリップがずれていることを容易に判別することができるハウジング及び検査キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハウジングは、検体滴下開口及び判定開口が形成され、内部の載置領域に検査ストリップが配されるハウジングにおいて、互いに接合される第1ケース部及び第2ケース部と、前記第1ケース部と前記第2ケース部とを接合する際に、前記検査ストリップが、前記検体滴下開口を介して滴下された検体抽出液が前記検査ストリップによって展開される向きに沿った展開方向に前記載置領域からずれているときに前記検査ストリップを挟み込んで前記第1ケース部と前記第2ケース部との接合を阻害する阻害部とを備え、前記阻害部は、前記第1ケース部の内面に設けられ、前記展開方向における前記載置領域に近接した第1凸部と、前記第2ケース部の内面に設けられ、前記検査ストリップが前記載置領域に配されて前記第1ケースと前記第2ケースとが接合されたときに、前記載置領域の外側で前記第1凸部よりも展開方向外側において前記第1凸部に近接して配される第2凸部と、を有し、前記第1凸部は、前記検査ストリップの前記展開方向における移動を規制する規制壁であり、前記第2凸部は、前記検査ストリップが前記載置領域に配されて前記第1ケースと前記第2ケースとが接合されたときに前記規制壁と厚さ方向で重なりが生じ、前記載置領域から前記検査ストリップが前記第1凸部側にずれているときに、前記第1凸部との間に前記検査ストリップを挟むことによって、前記第2ケース部と前記第1ケース部との接合を阻害するものである。
【0008】
また、本発明の検査キットは、上記ハウジングと、前記検査ストリップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検査ストリップがずれているときには、第1ケース部と第2ケース部との接合が阻害されてハウジングの厚さが増大するので、検査ストリップのずれを容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を実施した検査キットを示す平面図である。
【
図2】検査キットに用いられている検査ストリップを示す斜視図である。
【
図3】ハウジングを構成する上ケース部の内面側を示す説明図である。
【
図4】ハウジングを構成する下ケース部の内面側を示す説明図である。
【
図5】ハウジング内の載置領域に検査ストリップが配された状態を示す部分断面図である。
【
図6】検査ストリップが上流方向にずれた場合のハウジングの上流端部の状態を示す説明図である。
【
図7】検査ストリップが下流方向にずれた場合のハウジングの下流端部の状態を示す説明図である。
【
図8】阻害部を構成する上ケース部の凸部を展開方向に延ばした例を示す要部断面図である。
【
図9】
図8の例における上ケース部の内面側の上流端部を示す説明図である。
【
図10】
図8の例において検査ストリップが上流方向にずれた場合のハウジングの上流端部の状態を示す要部断面図である。
【
図11】下ケース部に規制壁とともに凸部を設けた例を示す要部断面図である。
【
図12】
図11の例における下ケース部の内面側の上流端部を示す説明図である。
【
図13】
図11の例において検査ストリップが上流方向にずれた場合のハウジングの上流端部の状態を示す要部断面図である。
【
図14】サンプル作製の際に支持台を用いて上ケース部と下ケース部とを組み付ける状態を示す説明図である。
【
図15】阻害部を備えていないハウジングの上流端部を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、検査キット10は、樹脂製のハウジング12の内部に検査ストリップ15を収容したハウジングタイプのものである。ハウジング12の上面に検体滴下開口17、判定開口18、空気孔19が形成されている。検体滴下開口17、判定開口18からは、それぞれハウジング12内の検査ストリップ15の一部が露出される。ハウジング12には、後述するように検査キット10の組み立ての際に、検査ストリップ15がずれている場合に、ハウジング12を構成する上ケース部27(
図3参照)と下ケース部28(
図4)との接合(組み付け)を阻害する阻害部20、21(
図5参照)とが設けられている。
【0012】
検査キット10で検査を行う場合には、検体滴下開口17から被験物質を含む検体抽出液を検査ストリップ15に滴下して検体抽出液を図中右側から左側に向って展開させる。検査結果は、判定開口18内におけるテストラインTL、コントロールラインCLの表示(呈色)の有無で知ることができる。ハウジング12の上面の判定開口18の近傍には、テストラインTL、コントロールラインCLの表示位置を示す各文字(C、T)が記されている。検査ストリップ15は、検体抽出液が展開される向きに沿った展開方向(X方向)に延びた帯状である。
【0013】
なお、以下では、展開方向における向きを特に区別する場合には、上流側から下流側への向き(図中左方向)を下流方向、下流側から上流側への向き(図中右方向)を上流方向と称して説明する。また、ハウジング12、上ケース部27及び下ケース部28の検体滴下開口17側の端部を上流端部、これと反対側の端部を下流端部と称する。
【0014】
図2に示すように、検査ストリップ15は、イムノクロマト法用のものである。この検査ストリップ15は、支持体BS上に、展開方向の上流側(図中右側)から順番に、検体滴下開口17を介して検体抽出液が滴下されるサンプルパッドSP、特定の抗原に特異的に結合する標識抗体を保持したコンジュゲートパッドCP、標識抗体が結合した抗原を捕捉する捕捉抗体及び標識抗体を捕捉する捕捉抗体(または抗原)がそれぞれテストラインTL、コントロールラインCLの位置に固相化されたメンブランM、吸収パッドAPが配されている。検体抽出液は、サンプルパッドSPから吸収パッドAPに向って毛細管現象によって展開される。なお、検査ストリップ15は、周知のものを利用することができる。また、この例では1種類の抗原を検出するものであるが、複数種類の抗原をそれぞれ検出するものでもよい。なお、符号CTは、サンプルパッドSPの一部とコンジュゲートパッドCPの表面を覆うカバーテープである。
【0015】
図3に上ケース部27の内面側を示す。上ケース部27は、展開方向に長い矩形状であり、上述の検体滴下開口17、判定開口18及び空気孔19が形成されている。上ケース部27の内面側縁部には、内面側に突出した側壁31が形成されている。また、上ケース部27の内面には、複数の係合ピン32と、凸部34、35とが設けられている。係合ピン32は、上ケース部27と下ケース部28とを組み付ける際に用いられる。凸部34、35は、いずれも第2凸部として機能するものであり、凸部34は、阻害部20の一部であり、凸部35は、阻害部21の一部である。凸部34は、板状であり、展開方向と直交するハウジング12の幅方向(Y方向)に平行となる姿勢で上ケース部27の上流端部に設けられている。凸部35は、ピン状であり、上ケース部27の下流端部に設けられている。凸部34、35は、いずれも後述する載置領域S(
図4参照)の展開方向外側に配置されている。
【0016】
図4に下ケース部28の内面側を示す。下ケース部28は、展開方向に長い矩形状であり、展開方向の長さ及び幅方向の長さは上ケース部27と同じである。下ケース部28の内面の縁部には、内面側に突出した側壁41が形成されている。また、上ケース部27の係合ピン32に対応する位置に係合穴42aが形成された円柱状の柱部42が設けられている。柱部42は、載置領域Sの幅方向外側に設けられている。
【0017】
検査キット10を組み立てる際には、各係合ピン32を対応する係合穴42aに挿入して係合させることにより、上ケース部27と下ケース部28とを接合した状態に組み付ける。上ケース部27と下ケース部28とが正常に組み付けられている場合は、上ケース部27側の側壁31と下ケース部28側の側壁41との端部同士がほぼ密接した状態になる。
【0018】
下ケース部28の内面の幅方向中央に展開方向に延びた載置領域Sが設定されている。載置領域Sは、検査ストリップ15を載置すべき領域であり、検査ストリップ15とほぼ同じ大きさである。載置領域Sの周囲には、載置領域Sを画定するガイド部材43、45、46が設けられている。ガイド部材43は、幅方向に載置領域Sを挟むように載置領域Sの幅方向の境界に複数設けられており、幅方向への検査ストリップ15の移動を規制する。
【0019】
ガイド部材45は、上流端部に設けられており、検査ストリップ15の上流側の端部の位置を規制する。このガイド部材45は、規制壁45aと、この規制壁45aの両端に一体に設けた一対の規制壁45bとを有するコ字状である。規制壁45aは、幅方向に平行な板状であり、載置領域Sの展開方向の上流端の境界に配されている。この規制壁45aによって、検査ストリップ15が上流方向に移動することを規制する。一対の規制壁45bは、幅方向に載置領域Sを挟むように載置領域Sの展開方向に沿った境界に配されており、ガイド部材43と同様に幅方向への検査ストリップ15の移動を規制する。
【0020】
上記規制壁45aは、第1凸部としても機能し、上ケース部27の凸部34とともに阻害部20を構成する。検査キット10が正しく組み立てられている場合には、規制壁45aよりも上流側で規制壁45aに近接した位置に凸部34が配される。第1凸部としての規制壁45aは、載置領域Sの境界を含む近傍に配されていればよいが、この例のように載置領域Sの境界に配されることが好ましい。
【0021】
ガイド部材46は、下流端部に設けられており、検査ストリップ15の下流側の端部の位置を規制する。ガイド部材46は、一対の規制壁46aから構成されている。規制壁46aは、一端が載置領域Sの展開方向の下流端の境界に配されており、一端に対して90°屈曲した他端が載置領域Sの展開方向に沿った境界に配されている。これにより、規制壁46aは、その一端で検査ストリップ15が下流方向に移動することを規制し、他端で幅方向への検査ストリップ15の移動を規制する。
【0022】
一対の規制壁46aの一端同士の間には間隙47が設けられている。これら、一対の規制壁46aは、第1凸部としても機能し、上ケース部27の凸部35とともに阻害部21を構成する。検査キット10が正しく組み立てられている場合には、間隙47内に凸部35が配される。
【0023】
載置領域S内で検体滴下開口17のほぼ直下となる位置には台座48が設けられている。この台座48は、検体滴下開口17の周囲の部分に検査ストリップ15を押し付けるように検査ストリップ15の高さを調整する。
【0024】
図5において、上述のように阻害部20は、上ケース部27に設けた凸部34と、下ケース部28の規制壁45aとで構成される。また、阻害部21は、上ケース部27に設けた凸部35と、下ケース部28の一対の規制壁46aとで構成される。なお、この例では、上ケース部27が第2ケース部であり、下ケース部28が第1ケース部である。
【0025】
検査ストリップ15が載置領域Sに正しく配されているときには、図示されるように、規制壁45aと一対の規制壁46aの一端との間に検査ストリップ15が配された状態である。この状態を維持したまま上ケース部27と下ケース部28とを組み付けた場合、凸部34は、検査ストリップ15に邪魔されることなく、規制壁45aの上流側の近接した位置に配された状態になる。また、凸部35は、検査ストリップ15に邪魔されることなく一対の規制壁46aの間の間隙47内に配された状態になる。したがって、この場合には、側壁31と側壁41の端部同士がほぼ密接した良好な接合状態で上ケース部27と下ケース部28とが接合される。
【0026】
一方、例えば検査ストリップ15が何らかの理由で載置領域Sから上流方向にずれた状態で、上ケース部27と下ケース部28とを組み付けられてしまうことがある。この場合には、
図6に示すように、上流方向にずれた検査ストリップ15の端部が規制壁45aを乗り越えるため、上ケース部27と下ケース部28とを組み付ける際に、検査ストリップ15の上流側の端部によって、凸部34の
図5に示される正常な位置への移動が阻止され、凸部34と規制壁45aとの間に検査ストリップ15を挟んだ状態になる。このため、上流端部における側壁31、41が密接せず上ケース部27と下ケース部28の接合が不完全になる。この結果、ハウジング12の厚さ(検査ストリップの面と直交する方向の長さ)が正常に組み付けられたものよりも大きくなる。
【0027】
この阻害部20では、載置領域Sから展開方向にずれた検査ストリップ15をハウジング12の厚さ方向に押す凸部を凸部34とし、上流端における側壁41と規制壁45aとの間の空間を凸部34を受け入れる受容部とすれば、規制壁45aが凸部34によってハウジング12の厚さ方向に押された検査ストリップ15の変形を抑える支持部になる。また、載置領域Sから展開方向にずれた検査ストリップ15をハウジング12の厚さ方向に押す凸部を規制壁45aとし、凸部34から下流側の空間が規制壁45aを受け入れる受容部とすれば、凸部34が規制壁45aによってハウジング12の厚さ方向に押された検査ストリップ15の変形を抑える支持部になる。受容部は、検査ストリップ15が上流方向にずれていない場合に凸部34または規制壁45aが収容される空間である。このように阻害部20をみた場合では、検査ストリップ15が上流方向にずれているときは、凸部(凸部34または規制壁45a)によってハウジング12の厚さ方向に押された検査ストリップ15を支持部(規制壁45aまたは凸部34)が支持することで、凸部の移動が規制されて上ケース部27と下ケース部28の接合が阻害される。
【0028】
また、検査ストリップ15が何らかの理由で載置領域Sから下流方向にずれた状態で、上ケース部27と下ケース部28とを組み付けられてしまうことがある。この場合には、
図7に示すように、下流方向にずれた検査ストリップ15の端部が規制壁46aを乗り越えるため、上ケース部27と下ケース部28とを組み付ける際に、検査ストリップ15の下流側の端部によって、凸部35の
図5に示される正常な位置への移動が阻止され、凸部35と規制壁46aとの間に検査ストリップ15を挟んだ状態になる。このため、下流端部における側壁31、41が密接せず上ケース部27と下ケース部28の接合が不完全になる。この結果、ハウジング12の厚さが正常に組み付けられたものよりも大きくなる。
【0029】
この阻害部21では、載置領域Sから展開方向にずれた検査ストリップ15をハウジング12の厚さ方向に押す凸部を凸部35とし、間隙47を凸部35を受け入れる受容部とすれば、一対の規制壁46aの一端が支持部になり、載置領域Sから展開方向にずれた検査ストリップ15をハウジング12の厚さ方向に押す凸部を規制壁46aとし、凸部35の幅方向の両側の空間を規制壁46aを受け入れる受容部とすれば、凸部35が支持部になる。
【0030】
上記のように検査ストリップ15が上流方向あるいは下流方向にずれている状態で、上ケース部27と下ケース部28との組み付けが行われた場合には、ハウジング12の上流端部あるいは下流端部における接合が不完全(接合状態が不良)になり、ハウジング12の厚さが正常に組み付けられたものよりも増大する。このため、ハウジング12の厚さに基づいて、検査ストリップ15が展開方向にずれている不良な検査キット10を容易に判別できる。例えば機械的または光学的な検査装置でハウジング12の厚さを測定して、検査ストリップ15のずれの有無を判別する場合に、高い精度でハウジング12の厚さを測定できなくても問題ない。また、目視による検査でも容易に判別可能である。
【0031】
なお、阻害部20では、検査ストリップ15に阻害されることなく上ケース部27と下ケース部28とが接合されたときに、凸部34の下端と規制壁45aの上端との厚さ方向における位置が一致する(重なりが「0」)ことを含め、凸部34と規制壁45aとがハウジング12の厚さ方向において重なりが生じればよい。この凸部34及び規制壁45aの厚さ方向の重なりが大きいほど、検査ストリップ15の位置ずれが生じた場合のハウジング12の厚さの増加を大きくできる。同様に、阻害部21では、検査ストリップ15に阻害されることなく上ケース部27と下ケース部28とが接合されたときに、凸部35の下端と規制壁46aの上端との厚さ方向における位置が一致する(重なりが「0」)ことを含め、凸部35と規制壁46aとがハウジング12の厚さ方向において重なりが生じればよい。この凸部35及び規制壁46aの厚さ方向の重なりが大きいほど、検査ストリップ15の位置ずれが生じた場合のハウジング12の厚さの増加を大きくできる。このため、この例においては、凸部34、35、規制壁45a、46aをできるだけ高くして重なりを大きくすることが好ましい。具体的には、凸部34、35、規制壁45a、46aの高さを正常に組み付けられたハウジング12における上ケース部27と下ケース部28との内面の間隔と略同一すなわち同じかそれよりも僅かに低い程度にし、凸部34と規制壁45aとが、また凸部35と規制壁46aとが、厚さ方向において完全に重なることが好ましい。
【0032】
上記の例では、上流端部と下流端部に設けた各阻害部の構成を異なるものとしたが、同じ構成にしてもよい。また、上記の例における上流端部に設けた阻害部を下流端部に設け、下流端部の阻害部を上流端部に用いてもよい。
【0033】
上記の阻害部の形状、配置などは一例であり、それに限定されない。阻害部は、上ケース部と下ケース部との一方に凸部が形成され、検査ストリップが載置領域に配されているときには、凸部が厚さ方向(検査ストリップの面と直交する方向)で上ケース部と下ケース部の他方の一部と重なり、載置領域から検査ストリップが展開方向にずれているときに、上ケース部と下ケース部との一方の凸部と他方の一部との間に検査ストリップを挟む構成であればよい。
【0034】
例えば、上記の例では、載置領域を画定するガイド部材(規制壁)を阻害部の第1凸部としているが、ガイド部材とは別に第1凸部を設けてもよい。また、上ケース部と下ケース部とを接合した状態に保持する係合部を阻害部として利用することができる。例えば、突起を設けた被係合部材を載置領域の展開方向の境界に設けるとともに、上ケース部に上記突起に係合する係合爪を設けた構成としてもよい。この構成では、係合爪と被係合部材とからなる係合部が上ケース部と下ケース部とを接合した状態に保持する機能を持つとともに、検査ストリップが展開方向にずれているときには係合爪と被係合部材との間に検査ストリップを挟み上ケース部と下ケース部との接合を阻害する。また、阻害部として利用することができる係合部は、例えば係合ピン32と、係合穴42aが形成された柱部42とのように、凸部(被係合部材)に形成された係合穴内の突起や段差と係合ピン(係合爪)が係合するような構成でもよい。
【0035】
さらに、阻害部として、上ケース部と下ケース部との一方、例えば下ケース部に凸部を、他方の上ケース部の上壁面に凸部が嵌合する穴をそれぞれ設けてもよい。この阻害部の構成では、検査ストリップが載置領域に配されているときには、下ケース部の凸部が上ケース部の穴に嵌合し、検査ストリップが展開方向にずれているときには、凸部と穴の周囲の上ケース部の内面との間に検査ストリップを挟み上ケース部と下ケース部との接合を阻害する。なお、この構成では、上ケース部の穴が受容部、穴の周囲の上ケース部の内面が支持部となる。
【0036】
図8及び
図9に示す例におけるハウジング12Aでは、凸部34Aと規制壁45aとによって阻害部20Aが構成される。凸部34Aは、上ケース部27の内面上で、規制壁45aに近接する位置から上流方向に延びており、上流端の側壁31と一体になっている。この例では、
図8に示すように、検査ストリップ15が載置領域Sに配されている場合には、凸部34Aが下ケース部28の規制壁45aと側壁41との間の溝50に嵌合し、上ケース部27と下ケース部28とが正常に接合する。一方、
図10に示すように、検査ストリップ15が載置領域Sから上流方向にずれている場合には、規制壁45aを乗り越えた検査ストリップ15の上流側の端部によって、凸部34Aが溝50に嵌合することが阻止され、凸部34Aと規制壁45aとの間に検査ストリップ15を挟んだ状態になる。この結果、上流端部において、上ケース部27と下ケース部28との接合が不完全になり、ハウジング12の厚さが正常に組み付けられたものよりも大きくなる。
【0037】
図11及び
図12に示す例におけるハウジング12Bの阻害部20Bは、上ケース部27に設けた凸部34と、下ケース部28に設けた規制壁45aと第3凸部としての凸部51とで構成される。凸部34と規制壁45aは、最初の例と同じである。凸部51は、規制壁45aと上流方向に間隔をあけて設けられ、凸部51との間に凸部34が嵌合する溝52を形成する。この例では凸部51は、上流方向で側壁41に連結するように側壁41と一体に形成されているが、側壁41から離れていてもよい。
【0038】
この例では、
図11に示すように、検査ストリップ15が載置領域Sに配されている場合には、凸部34は、溝52に嵌合し、上ケース部27と下ケース部28とが正しく接合する。検査ストリップ15が載置領域Sから上流方向にずれている場合には、検査ストリップ15の端部が規制壁45aと凸部51とに支持された状態になる。このため、組み付けの際には、規制壁45aと凸部51の間の検査ストリップ15の部分を凸部34が押圧するから、大きな力で組み付けをしても検査ストリップ15は、ほとんど変形しない。この結果、検査ストリップ15の変形によってハウジング12の厚さが小さくなり難く、上ケース部27と下ケース部28との接合が不完全であることをより容易に判定、すなわち検査ストリップ15が上流方向にずれていることをより確実に判別できる。
【0039】
上記
図8、
図11に示す例は、上流端部に阻害部を設けた場合を例にしているが、下流端部に同様な阻害部を設けることができる。
【実施例】
【0040】
阻害部20、21を備えるハウジング12と、阻害部20A、21を備えるハウジング12Aと、阻害部20B、21を備えるハウジング12Bとの各サンプルを作製し、検査ストリップ15が展開方向にずれた場合の接合について、ハウジング12、12A、12Bの厚さに基づいて評価した。ハウジングの厚さは、マイクロメーター(標準外側マイクロメーター M320-25A、Mitutoyo社)を用いて測定した。各評価で使用した上ケース部27及び下ケース部28は、いずれも耐衝撃性ポリスチレンであり、ハウジング12、12A、12Bの展開方向及び横方向のサイズは、85mm×15mmであった。
【0041】
この評価では、検査ストリップ15の代わりに、メンブランM等が貼り付けられていない支持体BSを用いた。支持体BSは、プラスチック製のバッキングシート(Lohmann社製)を76mm×4mmに切断して作製した。バッキングシートは、プラスチック製のシート上に粘着剤、剥離紙を貼り合せた構成となっており、剥離紙を剥がさない状態で使用し、評価した。剥離紙を剥がさないときのバッキングシートの厚さは、0.46mmであり、実際の検査ストリップ15よりも薄い。
【0042】
評価は、支持体BSを下ケース部28の載置領域Sに配した場合を基準値として求め、載置領域Sからずれた場合を基準値と比較して行った。
【0043】
[基準値の取得]
支持体BSをハウジング12の下ケース部28の載置領域Sに配した後に、この下ケース部28の上に、ハウジング12の上ケース部27を重ねて接合した。この接合は、後述する接合器具(支持台)を用いてサンプルの作製と同様な方法で、ハウジング12の上流端部と下流端部とのそれぞれに押圧力を加えることで行った。このようにして、ハウジング12と、検査ストリップ15の代わりとしての支持体BSとを備える検査キット10を5個つくり、これら5個を基準用の検査キットサンプルとして、各検査キットサンプルの厚さを測定した。この測定結果を表1の「ハウジング厚さ」欄に示す。厚さは、上流端部と下流端部とのそれぞれで測定した。上流端部の厚さは、展開方向におけるハウジング12の上流端から6mm以内の位置で測定し、下流端部の厚さは、下流端から10mm以内の位置で測定した。上流端部の5つの測定結果の平均と、下流端部の5つの測定結果の平均とを求めた。それら各平均値に0.25mmを加算した値を、上流端部の基準値及び下流端部の基準値とした。これら基準値を表1の「基準値」欄に示す。なお、平均値に加算した「0.25mm」は、上ケース部27と下ケース部28との接合の良否判断の基準として設定したものであり、接合時のハウジングのばらつきを考慮して決めた値である。
【0044】
【0045】
[接合器具の作製]
評価対象であるハウジング12、ハウジング12A及びハウジング12Bを用いた各サンプルを作製するための接合器具として、
図14に示す支持台56を作製した。支持台56は、重り55とともに上ケース部27の展開方向における上流端部に載せられて、上ケース部27を下ケース部28へ押圧することにより、上流端部で上ケース部27と下ケース部28とを接合するための器具であり、ウレタン樹脂で作製した。なお、支持台56は、上ケース部27の展開方向における上流端部を押圧するものであり、下流端部を押圧する支持台については後述する。
【0046】
支持台56は、その下部にハウジング12の上流端部を嵌め込む凹部が形成されており、凹部の上面にハウジング12の幅方向に所定の間隔で設けた一対の突起56aと、判定開口18に入り込む突起56bとが形成されている。突起56bは、上ケース部27の押圧には寄与しない。支持台56は、下ケース部28上に置かれた上ケース部27の上流端部の上に載せられる。この支持台56の上に重り55を載せたときに、突起56aが上ケース部27の上流端部に押圧力を加えることで、上流端部の接合が行われる。
【0047】
下流端部の接合を行う支持台(図示省略)についても、支持台56と同様な構成であるが、下流端部を嵌め込む凹部内には一対の突起のみが設けられている。この下流端部用の支持台も支持台56と同様に重り55とともに用いられ、上ケース部27の下流端部に押圧力を加え、接合を行う。なお、作製した支持台56の質量は58.2g、下流端部用の支持台の質量は52.1gであり、重り55の質量は約2kgであった。
【0048】
[サンプル作製]
ハウジング12、ハウジング12A及びハウジング12Bを用いた各サンプルを、以下の組み付け方法を用いて作製した。なお、評価は、支持体BSを載置領域Sから上流方向にずらして配したサンプルと、下流方向にずらして配したサンプルについて行っており、それぞれの場合に応じて、上ケース部27と下ケース部28との組み付け方法を以下の通り変えた。
【0049】
支持体BSを載置領域Sから上流方向にずらしたサンプルを作製する場合には、まず、支持体BSを下ケース部28に載置領域Sから上流方向にずらした状態に配した。続いて、互いに対応関係にある係合ピン32と係合穴42aとを合わせるように、上ケース部27を下ケース部28の上に載せた。次に、展開方向におけるハウジング12、12A、12Bの下流端から判定開口18付近までを指で押して上ケース部27と下ケース部28とを組み付けた。その後、上ケース部27の上流端部に支持台56を載せ、その状態でハウジング12、12A、12Bを電子天秤上に設置し、支持台56上に静かに約2kgの重り55を載せ、30秒間静置した。30秒間の静置後、ハウジング12、12A、12Bに圧力がかからないように注意しながら重り55及び支持台56を外した。このようにして、支持体BSが載置領域Sから上流方向にずれたサンプルを作製した。
【0050】
また、支持体BSを載置領域Sから下流方向にずらしたサンプルを作製する場合には、支持体BSを下ケース部28に、載置領域Sから下流方向にずらした状態に配した。続いて、互いに対応関係にある係合ピン32と係合穴42aとを合わせるように、上ケース部27を下ケース部28の上に載せた。次に、展開方向におけるハウジング12、12A、12Bの上流端から空気孔19付近までを指で押して上ケース部27と下ケース部28とを組み付けた。その後、上ケース部27の下流端部に支持台を載せ、その状態でハウジング12、12A、12Bを電子天秤上に設置し、支持台上に静かに約2kgの重り55を載せ、30秒間静置した。30秒間の静置後、ハウジング12、12A、12Bに圧力がかからないように注意しながら重り55及び支持台を外した。このようにして、支持体BSを載置領域Sから下流方向にずらしたサンプルを作製した。
【0051】
1.上流方向のずれに対する評価
(1)実験1
ハウジング12、12A、12Bを用いて作製した支持体BSを載置領域Sから上流方向にずらした15個のサンプル1~15について、ハウジング12、12A、12Bの厚さを測定し、上ケース部27と下ケース部28との接合が阻害されるかを評価した。サンプル1~15のうちのサンプル1~5は、ハウジング12を、サンプル6~10はハウジング12Aを、サンプル11~15はハウジング12Bをそれぞれ用いたものであり、これらに形成してある阻害部の種類については、表2の「上流側阻害部」欄に符号を付して示す。評価方法は以下の通りである。
【0052】
各サンプル1~15の上流端部におけるハウジング12、12A、12Bの厚さをそれぞれ測定した。サンプル1~15の厚さの測定は基準のサンプルと同様に行った。この測定結果を表2の「ハウジング厚さ」欄に示す。なお、サンプル1~5のハウジング12の厚さの平均、サンプル6~10のハウジング12Aの厚さの平均、及びサンプル11~15のハウジング12Bの厚さの平均を表2の「平均」にあわせて示す。
【0053】
測定した各ハウジング12、12A、12Bの厚さが基準値よりも大きかった場合には、接合状態が不良であるとして、表2の「接合状態」欄に「×」を記した。一方、上流端部の基準値よりも小さかった場合には表2の同欄には「○」を記した。「×」は、ハウジング12、12A、12Bの厚さの十分な増加が認められ上ケース部27と下ケース部28との接合が阻害されていると認識できることを示し、「○」は、ハウジング12、12A、12Bの厚さに十分な増加が認められず、上ケース部27と下ケース部28の接合の阻害がされているとは認識できないことを示す。
【0054】
【0055】
(2)比較実験1
ハウジングに阻害部を備えないサンプル16~20について接合の良否を評価した。
図15にサンプル16~20用に作製したハウジング60を示す。ハウジング60は、その上流端部に阻害部20、20A、20Bのいずれもが形成されていない、また、図示を省略しているが、ハウジング60の下流端部には阻害部21が形成されていない。すなわち、ハウジング60の上ケース部27は、阻害部を構成する凸部34、35がなく、ハウジング60の下ケース部28は一対の規制壁46aの一端が一体に形成されており間隙47がない。このハウジング60のその他の構成は、ハウジング12と同様である。
【0056】
比較実験1においても、実験1と同様に検査ストリップ15の代わりに支持体BSを用いた。実験1と同じ方法で、上ケース部27と下ケース部28とを組み付け、支持体BSを載置領域Sから上流方向にずらした5個のサンプル16~20を作製し、接合の良否を評価した。この評価結果を上記表2に示す。
【0057】
上記の結果から分かるように、ハウジング12、12A、12Bは、その阻害部20、20A、20Bによる上ケース部27と下ケース部28との接合の阻害にともなう厚さの増加に基づいて、検査ストリップ15が載置領域Sからずれていることを容易に判定できることがわかる。
【0058】
2.下流方向のずれに対する評価
(1)実験2
支持体BSを載置領域Sから下流方向にずらした5個のサンプル21~25について、ハウジング12の厚さを測定し、上ケース部27と下ケース部28との接合が阻害されるかを評価した。サンプル21~25の厚さの測定は基準のサンプルと同様に行った。サンプル21~25に形成してある阻害部の種類は、表3の「下流側阻害部」欄に示すように阻害部21である。評価方法は以下の通りである。
【0059】
各サンプル21~25の下流端部におけるハウジングの厚さ12をそれぞれ測定し測定結果を表3の「ハウジング厚さ」欄に示す。なお、表3の「平均」は、サンプル21~25のハウジング12の厚さの平均である。
【0060】
測定した各ハウジング12の厚さが、上記の下流端部の基準値よりも大きかった場合には、表3の「接合状態」欄に「×」と記す。一方、下流端部の基準値よりも小さかった場合には表3の同欄に「○」と記す。「×」は、ハウジング12、12A、12Bの厚さの十分な増加が認められ上ケース部27と下ケース部28との接合が阻害されていると認識できることを示し、「○」は、ハウジング12、12A、12Bの厚さに十分な増加が認められず、上ケース部27と下ケース部28の接合の阻害がされているとは認識できないことを示す。
【0061】
【0062】
(2)比較実験2
ハウジングに阻害部を備えないサンプル26~30について接合の良否を評価した。実験2と同じ方法で、上ケース部27と下ケース部28とを組み付け、支持体BSを載置領域Sから上流側にずらした5個のハウジング60のサンプル26~30を作製した。ハウジング60の構成は、比較実験1ものと同じである。実験2と同様の方法で、接合の良否を評価した。サンプル26~30の評価結果を表3に示す。
【0063】
上記の結果から分かるように、ハウジング12は、その阻害部21による上ケース部27と下ケース部28との接合の阻害にともなう厚さの増加に基づいて、検査ストリップ15が載置領域Sからずれていることを容易に判定できることがわかる。
【0064】
3.目視による評価(上流方向のずれ)
(1)実験3
ハウジング12、12A、12Bのサンプル31~42を用いて目視で接合不良を判定できるか評価した。サンプル31~42のうちのサンプル31~34はハウジング12を、サンプル35~38はハウジング12Aを、サンプル39~42はハウジング12Bを用いたものである。また、サンプル31、32、35、36、39、40は、支持体BSが載置領域Sに配されたサンプルであり、サンプル33、34、37、38、41、42は、支持体BSを載置領域Sから上流方向にずらしたサンプルである。サンプル31~42に形成してある阻害部の種類については、表4の「上流側阻害部」欄に符号を付して示す。なお、サンプル31、32、35、36、39、40は、上述の基準用の検査キットサンプルと同じ作製手順で作製した。また、サンプル33、34、37、38、41、42の作製手順は、実験1と同じである。
【0065】
評価方法は以下の通りである。サンプル31~42を順不同に並べ、4名の試験者(表4におけるT1~T4)が目視にて接合の良否の評価をした。接合が良好であると評価したときは合格(表4において「〇」)とし、接合が不良であると評価したときは不合格(表4において「×」)とした。次に、サンプル31~42を並び変えて、同様に再度目視にて2回目の評価をした。さらにサンプル31~42を並び変えて、同様に目視にて3回目の評価をした。このように、サンプル31~42について、3回の目視評価を実施した。評価結果を表4に示す。なお、実際には、サンプル31~42とともに後述する比較実験3のサンプル43~46を順不同に並べ評価を行っており、実験3と比較実験3とを同時に行った。
【0066】
支持体BSを載置領域Sからずらして配した設置したサンプルに33、34、37、38、41、42ついて、接合不良と判定された割合(除外率)を算出したところ、いずれも100%であった。
【0067】
【0068】
(2)比較実験3
上述のハウジング60を用いたサンプル43~46について、上記実験3と同様に評価をした。サンプル43~46のうちのサンプル43、44は、支持体BSが載置領域Sに配されたものであり、サンプル45、46は、支持体BSを載置領域Sから上流方向にずらしたものである。この評価結果を表4に示す。支持体BSを載置領域Sからずらして配したサンプル45、46について、上記除外率を算出したところ、サンプル45は0%、サンプル46は83%であった。
【0069】
上記の結果から分かるように、ハウジング12、12A、12Bは、その阻害部20、20A、20Bにより、目視においても検査ストリップ15が載置領域Sからずれていることを容易に判定できることがわかる。
【0070】
4.目視による評価(下流方向のずれ)
(1)実験4
ハウジング12を用い支持体BSが載置領域Sに配された基準用のサンプル47、48と、ハウジング12を用い支持体BSを載置領域Sから下流方向にずらしたサンプル49、50とについて、実験3と同様に、目視で接合不良と判定できるか評価した。この評価結果を表5に示す。サンプルに49、50ついて、上記除外率を算出したところ、いずれも100%であった。なお、サンプル47~50に形成してある阻害部の種類は、表5の「下流側阻害部」欄に示すように阻害部21である。
【0071】
【0072】
(2)比較実験4
上述のハウジング60を用いたサンプル51~54について、上記実験4と同様に評価をした。サンプル51~54のうちのサンプル51、52は、支持体BSが載置領域Sに配されたものであり、サンプル53、54は、支持体BSを載置領域Sから下流方向にずらしたものである。評価結果を表5に示す。支持体BSを載置領域Sからずらして配したサンプル53、54について、上記除外率を算出したところ、サンプル53は58%、サンプル54は75%であった。
【0073】
上記の結果から分かるように、ハウジング12、12A、12Bは、その阻害部21により、目視においても検査ストリップ15が載置領域Sからずれていることを容易に判定できることがわかる。
【符号の説明】
【0074】
10 検査キット
12、12A、12B ハウジング
15 検査ストリップ
17 検体滴下開口
18 判定開口
20、20A、20B 阻害部
27 上ケース部
28 下ケース部
34、34A、34B、35 凸部
45a、46a 規制壁
S 載置領域