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特許7133323固着したバルブを検出するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】固着したバルブを検出するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/88 20060101AFI20220901BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20220901BHJP
   B62L 3/08 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B60T8/88
B60T17/22 Z
B62L3/08
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018041000
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2018144807
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/468,886
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595179505
【氏名又は名称】ハーレー-ダビッドソン・モーター・カンパニー・グループ・エルエルシー
【住所又は居所原語表記】3700 West Juneau Avenue,Milwaukee,Wisconsin 53208,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】マシュー デイヴィッド ラスムッセン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ クリストファー シャープ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン トッド フルマー
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193136(JP,A)
【文献】特開2000-255417(JP,A)
【文献】特開2006-001402(JP,A)
【文献】特開平11-180294(JP,A)
【文献】特開平04-243658(JP,A)
【文献】特開2008-230355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
15/00 - 17/22
B62L 1/00 - 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動システムの診断手順を実施する方法であって、
電子制御ユニットにより、第1のブレーキ回路に結合された第1の入力装置のみが関与しているか又は第2のブレーキ回路に結合された第2の入力装置のみが関与しているかを解析することと、
前記第1の入力装置のみが関与していると決定したことに応答して、前記電子制御ユニットにより、前記第1のブレーキ回路内の第1のバルブ及び第2のバルブを検査する診断検査を実施することであり、前記診断検査は、
前記第1の入力装置の作動の間、前記第1のブレーキ回路の第1の圧力センサを介してマスタシリンダ圧力を測定し、前記第1のブレーキ回路の第2の圧力センサを介してホイールシリンダ圧力を測定することと、
前記マスタシリンダ圧力と前記ホイールシリンダ圧力との間の差を閾圧力値と比較し、前記比較に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
前記第1の入力装置が解放されると、前記マスタシリンダ圧力及び前記ホイールシリンダ圧力の第2の測定値を前記第1のブレーキ回路のそれぞれの前記第1及び第2の圧力センサを介して取得することと、
前記マスタシリンダ圧力及び前記ホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値を比較し、前記比較に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
を含む、ことと、
前記第2の入力装置のみが関与していると決定したことに応答して、前記電子制御ユニットにより、前記第2のブレーキ回路内の第1のバルブ及び第2のバルブを検査する診断検査を実施することであり、前記診断検査は、
前記第2の入力装置の作動の間、前記第2のブレーキ回路の第1の圧力センサを介してマスタシリンダ圧力を測定し、前記第2のブレーキ回路の第2の圧力センサを介してホイールシリンダ圧力を測定することと、
前記マスタシリンダ圧力と前記ホイールシリンダ圧力との間の差を閾圧力値と比較し、前記比較に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
前記第2の入力装置が解放されると、前記マスタシリンダ圧力及び前記ホイールシリンダ圧力の第2の測定値を前記第2のブレーキ回路のそれぞれの前記第1及び第2の圧力センサを介して取得することと、
前記マスタシリンダ圧力及び前記ホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値を比較し、前記比較に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
を含む、ことと、
を含む方法。
【請求項2】
前記電子制御ユニットにより、前記第1及び第2の入力装置の双方が関与しているかどうかを解析することと、
前記第1及び第2の入力装置の双方が関与しているとき、前記電子制御ユニットにより同時に、前記第1のブレーキ回路内の前記第1及び第2のバルブを検査する前記診断検査と前記第2のブレーキ回路内の前記第1及び第2のバルブを検査する前記診断検査との双方を実施することと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子制御ユニットにより、前記第1及び第2の入力装置のいずれも関与していないかどうかを解析することと、
前記第1及び第2の入力装置のいずれも関与していないと決定したことに応答して、前記電子制御ユニットにより、前記第1及び第2のブレーキ回路のうち少なくとも1つにおいて診断検査を実施することであり、前記第1及び第2のブレーキ回路のうち前記少なくとも1つから、少なくとも1つのホイールシリンダに対する流体圧力が発生する、ことと、
をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の入力装置のみが関与しているか又は前記第2の入力装置のみが関与しているかを解析することは、第1のマスタシリンダにおける第1の圧力を測定することと、前記測定された第1の圧力をマスタシリンダ閾圧力値と比較することと、第2のマスタシリンダにおける第2の圧力を測定することと、前記測定された第2の圧力を前記マスタシリンダ閾圧力値と比較することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の入力装置のみが関与しているか又は前記第2の入力装置のみが関与しているかを解析する前にエンジンスピードを測定すること、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子制御ユニットでタイマを解析して、前記第1の入力装置のみが関与しているか又は前記第2の入力装置のみが関与しているかを解析する前に最後の診断検査が実施されてからの時間を決定すること、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電子制御ユニットにより、前記第1の入力装置のみが関与していると決定したことに応答して、又は前記第1のブレーキ回路及び前記第2のブレーキ回路の双方が作動していないと決定したことに応答して、第2の診断検査を実施することであり、
前記第2の入力装置の非作動の間、ポンプのアクティブ化によりホイールシリンダに向けられたポンプ圧力を発生させ、前記第2のブレーキ回路の第2の圧力センサを介してホイールシリンダ圧力を測定することと、
前記ホイールシリンダ圧力前記ポンプ圧力に達しているかどうか判定し該判定に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
前記ポンプ圧力が解放されると、前記第2のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記ホイールシリンダ圧力の第2の測定値を取得することと、
前記ホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値をチェックし、前記ホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
を含む、ことをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の診断検査は、前記第1のブレーキ回路及び前記第2のブレーキ回路の双方が作動していないと前記電子制御ユニットが決定したことに応答して実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1のブレーキ回路であり、
第1のマスタシリンダ、
前記第1のブレーキ回路の末端に位置づけられた第1のホイールシリンダ、
第1のマスタシリンダ圧力を測定するように構成された第1の圧力センサ、及び
第1のホイールシリンダ圧力を測定するように構成された第2の圧力センサ、を含む第1のブレーキ回路と、
第2のブレーキ回路であり、
第2のマスタシリンダ、
前記第2のブレーキ回路の末端に位置づけられた第2のホイールシリンダ、
第2のマスタシリンダ圧力を測定するように構成された第1の圧力センサ、及び
第2のホイールシリンダ圧力を測定するように構成された第2の圧力センサ、を含む第2のブレーキ回路と、
前記第1のマスタシリンダを作動させるように動作可能な第1の入力装置と、
前記第2のマスタシリンダを作動させるように動作可能な第2の入力装置と、
前記第1の入力装置のみが作動していると決定したことに応答して第1のモードにおいて、及び前記第2の入力装置のみが作動していると決定したことに応答して第2のモードにおいて動作可能な電子制御ユニットと、
を含み、
前記第1のモードにおいて、前記電子制御ユニットは、前記第1の入力装置の作動の間に測定される前記第1及び第2の圧力センサからの前記第1のマスタシリンダ圧力及び前記第1のホイールシリンダ圧力の値を比較し、コントローラが前記比較に基づいて前記第1のブレーキ回路の第1のバルブが固着しているかどうかを診断するようプログラムされるようにすることにより、及びさらに、前記第1の入力装置が解放されると測定される前記第1及び第2の圧力センサからの前記第1のマスタシリンダ圧力及び前記第1のホイールシリンダ圧力の値を比較し、前記コントローラが前記比較に基づいて前記第1のブレーキ回路の第2のバルブが固着しているかどうかを診断するようプログラムされるようにすることにより、前記第1のブレーキ回路の第1の診断検査を実施するようにプログラムされ、
前記第2のモードにおいて、前記電子制御ユニットは、前記第2の入力装置の作動の間に測定される前記第1及び第2の圧力センサからの前記第2のマスタシリンダ圧力及び前記第2のホイールシリンダ圧力の値を比較し、前記コントローラが前記比較に基づいて前記第2のブレーキ回路の第1のバルブが固着しているかどうかを診断するようプログラムされるようにすることにより、及びさらに、前記第2の入力装置が解放されると測定される前記第1及び第2の圧力センサからの前記第2のマスタシリンダ圧力及び前記第2のホイールシリンダ圧力の値を比較し、前記コントローラが前記比較に基づいて前記第2のブレーキ回路の第2のバルブが固着しているかどうかを診断するようプログラムされるようにすることにより、前記第2のブレーキ回路の第1の診断検査を実施するようにプログラムされ、
前記第2のモードは、前記第1のブレーキ回路の第2の診断検査を含む、
制動システム。
【請求項10】
前記電子制御ユニットは、前記第1の入力装置が作動しており且つ前記第2の入力装置が作動しているとき第3のモードにおいて動作可能であり、前記第3のモードは、前記第1のブレーキ回路の前記第1の診断検査と、前記第2のブレーキ回路の前記第1の診断検査とを含む、請求項9に記載の制動システム。
【請求項11】
前記電子制御ユニットは、前記第1の入力装置又は前記第2の入力装置のいずれも作動していないとき第4のモードにおいて動作可能であり、前記第4のモードは、前記第1のブレーキ回路の前記第2の診断検査と、前記第2のブレーキ回路の第2の診断検査とを含む、請求項10に記載の制動システム。
【請求項12】
前記第1のブレーキ回路における第1のポンプ及び前記第2のブレーキ回路における第2のポンプ、をさらに含み、
前記電子制御ユニットは、前記第1のポンプのアクティブ化により前記第1のホイールシリンダに向けられた第1のポンプ圧力を発生させ、前記第1のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記第1のホイールシリンダ圧力を測定し、前記第1のホイールシリンダ圧力前記第1のポンプ圧力に達しているかどうか判定し、前記コントローラが該判定に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定するようプログラムされるようにし、前記第1のポンプ圧力が解放されると、前記第1のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記第1のホイールシリンダ圧力の第2の測定値を取得し、前記第1のホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値をチェックし、前記コントローラが前記第1のホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定するようプログラムされるようにすることにより、前記第2のモード及び前記第4のモードにおいて前記第1のブレーキ回路の前記第2の診断検査を実施するようにプログラムされ、
前記電子制御ユニットは、前記第2のポンプのアクティブ化により前記第2のホイールシリンダに向けられた第2のポンプ圧力を発生させ、前記第2のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記第2のホイールシリンダ圧力を測定し、前記第2のホイールシリンダ圧力前記第2のポンプ圧力に達しているかどうか判定し、前記コントローラが該判定に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定するようプログラムされるようにし、前記第2のポンプ圧力が解放されると、前記第2のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記第2のホイールシリンダ圧力の第2の測定値を取得し、前記第2のホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値をチェックし、前記コントローラが前記第2のホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定するようプログラムされるようにすることにより、前記第1のモード及び前記第4のモードにおいて前記第2のブレーキ回路の前記第2の診断検査を実施するようにプログラムされる、
請求項11に記載の制動システム。
【請求項13】
前記第2の診断検査の各々は、前記第1及び第2のホイールシリンダのうち対応する1つにおいて、前記第1及び第2のブレーキ回路のうち対応する1つにおけるポンプのアクティブ化によりポンプ圧力を発生させ、対応する第2の圧力センサを介してホイールシリンダ圧力を測定し、前記測定されたホイールシリンダ圧力前記ポンプ圧力に達しているかどうか判定し、前記コントローラが該判定に基づいて前記第1及び第2のブレーキ回路のうち対応する1つの前記第1のバルブが固着しているかどうかを診断するようプログラムされるようにし、前記ポンプ圧力を解放し、前記第2の圧力センサで前記ホイールシリンダ圧力をチェックし、前記コントローラが前記ホイールシリンダ圧力に基づいて前記第1及び第2のブレーキ回路のうち対応する1つの前記第2のバルブが固着しているかどうかを診断するようプログラムされるようにする命令を提供するように、前記電子制御ユニットにプログラムされる、請求項11に記載の制動システム。
【請求項14】
第1のポンプ、をさらに含み、
前記第2のモードにおいて、前記電子制御ユニットは、前記第1のブレーキ回路の前記第2の診断検査を実施するようにプログラムされ、前記第1のブレーキ回路の前記第2の診断検査は、前記第1のポンプのアクティブ化により前記第1のホイールシリンダに向けられた第1のポンプ圧力を発生させ、前記第1のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記第1のホイールシリンダ圧力を測定し、前記第1のホイールシリンダ圧力前記第1のポンプ圧力に達しているかどうか判定し、前記コントローラが該判定に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定するようプログラムされるようにし、前記第1のポンプ圧力が解放されると、前記第1のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記第1のホイールシリンダ圧力の第2の測定値を取得し、前記第1のホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値をチェックし、前記コントローラが前記第1のホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定するようプログラムされるようにすることを含む、請求項9に記載の制動システム。
【請求項15】
制動システムの診断手順を実施する方法であって、
電子制御ユニットにより、第1のブレーキ回路に結合された第1の入力装置が関与しており且つ第2のブレーキ回路に結合された第2の入力装置が関与していないと識別したことに応答して、前記電子制御ユニットを第1のモードで動作させることと、
前記第1のモードにおいて、前記電子制御ユニットが前記第1のブレーキ回路内の第1のバルブ及び第2のバルブを検査する第1の診断検査を実施することであり、前記第1の診断検査は、
前記第1の入力装置の作動の間、前記第1のブレーキ回路の第1の圧力センサを介してマスタシリンダ圧力を測定し、前記第1のブレーキ回路の第2の圧力センサを介してホイールシリンダ圧力を測定することと、
前記マスタシリンダ圧力と前記ホイールシリンダ圧力との間の差を閾圧力値と比較し、前記比較に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
前記第1の入力装置が解放されると、前記マスタシリンダ圧力及び前記ホイールシリンダ圧力の第2の測定値を前記第1のブレーキ回路のそれぞれの前記第1及び第2の圧力センサを介して取得することと、
前記マスタシリンダ圧力及び前記ホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値間の差を比較し、前記比較に基づいて前記第1のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
を含む、ことと、
前記第1のモードにおいて、前記電子制御ユニットが前記第2のブレーキ回路内の第1のバルブ及び第2のバルブを検査する第2の診断検査を実施することであり、前記第2の診断検査は、
前記第2の入力装置の非作動の間、ポンプのアクティブ化によりホイールシリンダに向けられたポンプ圧力を発生させ、前記第2のブレーキ回路の第2の圧力センサを介してホイールシリンダ圧力を測定することと、
前記ホイールシリンダ圧力前記ポンプ圧力に達しているかどうか判定し、該判定に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第1のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
前記ポンプ圧力が解放されると、前記第2のブレーキ回路の前記第2の圧力センサを介して前記ホイールシリンダ圧力の第2の測定値を取得することと、
前記ホイールシリンダ圧力の前記第2の測定値をチェックし、前記比較に基づいて前記第2のブレーキ回路の前記第2のバルブが固着しているかどうかを決定することと、
を含む、ことと、
を含む方法。
【請求項16】
前記電子制御ユニットにより、前記第2の診断検査を実施する前に車両スピードが閾値を下回ることを検証すること、をさらに含む請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月8日に申請された米国仮出願第62/468,886号の非仮出願である。上記の内容全体が本明細書において参照援用される。
【0002】
本発明は、車両の制動システムに関する。詳細には、本発明は、自動二輪車などの2つ以上の区別可能なブレーキ入力を備えた車両の制動システムに関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、制動システムの診断手順を実施する方法を提供する。電子制御ユニットが、第1の入力装置のみが関与しているか又は第2の入力装置のみが関与しているかを解析する。第1の入力装置のみが関与している場合、第1の診断検査が実施される。第2の入力装置のみが関与している場合、第2の診断検査が実施される。
【0004】
制動システムが、第1のマスタシリンダを含む第1のブレーキ回路と、第2のマスタシリンダを含む第2のブレーキ回路と、第1のマスタシリンダで作動させるように動作可能な第1の入力装置と、第2のマスタシリンダを作動させるように動作可能な第2の入力装置と、第1の入力装置のみが作動しているときの第1のモード及び第2の入力装置のみが作動しているときの第2のモードにおいて動作可能な電子制御ユニットとを含む。第1のモードは、第1のブレーキ回路の第1の診断検査と、第2のブレーキ回路の第2の診断検査とを含む。第2のモードは、第1のブレーキ回路の第2の診断検査と、第2のブレーキ回路の第1の診断検査とを含む。第1のブレーキ回路の第1の診断検査は、第2のブレーキ回路の第1の診断検査と同様である。第1のブレーキ回路の第2の診断検査は、第2のブレーキ回路の第2の診断検査と同様である。
【0005】
制動システムが2つのマスタシリンダ及び2つの入力装置を含み、2つの入力装置の各々が別個のブレーキ回路と連通する。制動システムの診断手順を実施する方法が、電子制御ユニットにより、2つの入力装置のうち一方若しくは双方が作動しているか又はいずれも作動していないかを解析することを含む。2つの入力装置のうち一方が作動している場合、2つの制動アクチュエータのうち一方と連通する作動しているブレーキ回路で第1の診断検査が実施され、2つの入力装置のうち他方と連通する作動していないブレーキ回路で第2の診断検査が実施される。2つの入力装置の双方が作動している場合、2つの作動しているブレーキ回路の双方で第1の診断検査が実施される。2つの入力装置のいずれも作動していない場合、2つの作動していないブレーキ回路の双方で第2の診断検査が実施される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】ブレーキシステムにおけるバルブの機能性を診断する方法を例示するフローチャートの第1の部分である。
図1B】ブレーキシステムにおけるバルブの機能性を診断する方法を例示するフローチャートの第2の部分である。
図1C】ブレーキシステムにおけるバルブの機能性を診断する方法を例示するフローチャートの第3の部分である。
図1D】ブレーキシステムにおけるバルブの機能性を診断する方法を例示するフローチャートの第4の部分である。
図1E】ブレーキシステムにおけるバルブの機能性を診断する方法を例示するフローチャートの第5の部分である。
図1F】ブレーキシステムにおけるバルブの機能性を診断する方法を例示するフローチャートの第6の部分である。
図1G】ブレーキシステムにおけるバルブの機能性を診断する方法を例示するフローチャートの第7の部分である。
図2】ブレーキシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のいかなる実施形態も詳細に説明される前に、本発明はその適用において、下記説明内に明記され又は下記図面内に例示される構造の詳細及びコンポーネントの配置に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践され又は実行されることが可能である。
【0008】
制動システム10は、自動二輪車などの車両に提供されて、ユーザ入力に基づき車両に対して制動を動作可能に提供する。図2に示されるように、制動システムは、2つの区別可能な油圧回路と、前輪に関連づけられた第1の回路12と、第1及び第2のフロントホイールシリンダ又はキャリパ16、18と、後輪に関連づけられた第2の回路14と、リアホイールシリンダ又はキャリパ20とを含む。回路12、14は、それぞれの区別可能な入力装置(例えば、レバー、ペダル等)22、24と、マスタシリンダ26、28とをさらに備える。各マスタシリンダ26、28は、それぞれの入力装置22、24からの入力された力をそれぞれの回路12、14内における制動圧力に変換する。各回路12、14は、油圧ポンプ30、32をさらに備える。油圧ポンプ30、32の双方が、モータ34により電力供給される。代替的な電子油圧制御ユニットがその他の方法で使用されて、ホイールシリンダ16、18、20における圧力を発生させてもよい。
【0009】
第1の回路12は、第1及び第2のフロントホイールシリンダ16、18を含むが、第2のフロントホイールシリンダ18はセカンダリホイールシリンダであり、他のシリンダ16、20とは別様に入力に応答する。第2のフロントホイールシリンダ18は、通常開のインレット(inlet)バルブ38(すなわち、適用(apply)バルブ)を介してマスタシリンダ26と直接連通し、ポンプ30から油圧流体(hydraulic fluid)を受け取らない。第2のフロントホイールシリンダ18と対照的に、第1のフロントホイールシリンダ16及び単一のリアホイールシリンダ20は図式的に同様であり、以下でより詳細に説明される。
【0010】
第1のフロントホイールシリンダ16に関して、通常開の切り替えバルブ(形成圧力制御バルブ)40が、マスタシリンダ26とホイールシリンダ16との間に位置する。通常閉のオン/オフバルブ(圧力形成制御バルブ)44が、マスタシリンダ26と油圧ポンプ30のインレットとの間に位置する。制動力が入力装置22に加えられ(applied)たとき、及びホイール圧力がマスタシリンダ圧力を上回って増加されることが望まれるときに、切り替えバルブ40は、発生圧力を調節するように制御される。切り替えバルブ40が制御されたとき、オン/オフバルブ44は開位置に移行し、これにより、入力装置22及びマスタシリンダ26により生み出された流体圧力が流体をポンプ30の中へ、及びポンプ30を通して移動させる。さらなる流体がリザーバから来て、これにより、さらなる制動力を規定してもよい。ポンプ30からの流体は、通常開のインレットバルブ56(すなわち、適用バルブ)を通して、及びホイールシリンダ16において圧力を加え、これにより、制動力を規定する。第1の回路12は、ABS制動において圧力を解放するように動作可能な2つの通常閉のアウトレット(outlet)バルブ60、72(すなわち、解放バルブ)をさらに含む。
【0011】
マスタシリンダ圧力センサ52が、マスタシリンダ26からの流体圧力を測定し、信号をコントローラ又は電子制御ユニット70に送信する。コントローラは、信号をモータ34に提供して、モータ34を所望の圧力形成レートなどの制動特性に基づくレートで作動させる。圧力は、上記で説明されたように、ポンプ30により発生した余剰の圧力を選択的にブリードオフする(bleed off)ように、圧力形成制御バルブ44により制御される。ホイールシリンダ圧力センサ64が、ホイールシリンダ16における圧力をさらに測定する。
【0012】
単一のリアホイールシリンダ20に関して、通常開の切り替えバルブ(形成圧力制御バルブ)42が、マスタシリンダ28とホイールシリンダ20との間に位置する。通常閉のオン/オフバルブ(圧力形成バルブ)46が、マスタシリンダ28と油圧ポンプ32のインレットとの間に位置する。制動力が入力装置24に加えられたとき、切り替えバルブ42が閉位置に移行し、これにより、制動力により生み出された流体圧力はホイールシリンダ20に直接伝達されない。切り替えバルブ42が閉じたとき、オン/オフバルブ46は開位置に移行し、これにより、入力装置24及びマスタシリンダ28により生み出された流体圧力が流体をポンプ32の中へ、及びポンプ32を通して移動させる。さらなる流体が、リザーバ、又は図示されるようにアキュムレータ50から来てもよい。ポンプ32からの流体は、インレットバルブ58(すなわち、適用バルブ)を通して、及びホイールシリンダ20において圧力を加え、これにより、制動力を規定する。必要な場合、通常閉のアウトレットバルブ62(すなわち、解放バルブ)が、流体圧力の一部をアキュムレータ50及び/又はポンプ32に戻すようブリードオフするように動作可能である。
【0013】
マスタシリンダ圧力センサ54が、マスタシリンダ28からの流体圧力を測定し、信号をコントローラ(図示されていない)に送信する。コントローラは、信号をモータ34に提供して、モータ34を測定された圧力に比例したスピードで作動させる。ホイールシリンダ圧力センサ66が、ホイールシリンダ20における圧力をさらに測定する。
【0014】
時に、バルブ40、42、44、46、56、58、62の1つ以上が、固着(stuck)することがある(すなわち、バルブがある位置から別の位置に移動することができない)。固着したバルブは制動システム19の能力を制限することがあり、したがって、車両が起動するとバルブが固着しているかどうかを決定することは有益である。図1A~Gは、ブレーキシステムの機能性を診断する方法を例示し、具体的に、圧力センサ52、54、64、66からの圧力測定のみ利用して制動システム10のバルブ40、42、44、46、56、58、62の様々なバルブの機能性を診断する方法を例示する。
【0015】
図1Aに示されるように、ステップA及びBにおいて、イグニッションがオンに切り替えられ(ステップA)、電子油圧制御ユニット(electro-hydraulic control unit)の任意の既存の診断ルーチンが実行される(ステップB)。車両が既存の診断ルーチンを合格した場合(ステップC)、コントローラが、識別され且つ依然としてアクティブである制動システム10に関する診断上の欠陥(例えば、ABSコード)がすでにあるかどうかをチェックする(ステップD1)。アクティブな既知の欠陥がある場合、操作者に可視のABS警告灯が照明される(例えば、イグニッションがオンに切り替えられている間に点灯したままか、短時間点滅するか、又はイグニッションがオンに切り替えられている間に点滅する)(ステップD2)。図1Bに示されるように、マスタシリンダ26、28のうち一方の内部の圧力が閾値を上回る場合、それぞれの回路12、14が検査されて、診断上の欠陥を発生させた問題が解決されたかどうかを決定することができる。
【0016】
具体的に、フロント回路12に関して、マスタシリンダ26内の圧力が閾値を上回る場合(ステップFP1)、コントローラは、マスタシリンダ26とフロントホイールシリンダ16とにおける圧力差分が閾圧力差分(例えば、20バールデルタ)より小さいか、又はフロントホイールシリンダ16における圧力が閾圧力を上回るかをチェックする(ステップFM1)。測定された圧力差分/圧力が、上記で説明された条件のうち1つを満たす場合、コントローラは、操作者がマスタシリンダ圧力を解放するのを待機する(ステップFM2)。マスタシリンダ圧力を解放すると、コントローラは、マスタシリンダ圧力をホイールシリンダ圧力と比較する(ステップFM3)。ホイールシリンダ圧力がマスタシリンダ圧力より大きくない場合、フロント回路12における既存の欠陥が(欠陥がフロント回路12に存在した場合に)直されたと決定される。同様の検査が、リア回路14に適用されるが、ステップFP1、FM1、FM2、FM3をミラーリングしたステップRP1、RM1、RM2、RM3を用いてリア回路14に適用される。フロント及びリアの回路12、14に適用された診断検査が肯定的な結果を生み出す場合、警告灯がオフに切り換えられ、ログ記録されたABSコードがクリアされ、診断方法は図1Aに示されるステップEで継続する。診断方法は、ログ記録された診断上の欠陥がない場合、ステップEでさらに継続する。
【0017】
ステップEにおいて、コントローラは、エンジンの回転速度(すなわち、エンジンのクランクシャフトの回転速度)をチェックし、具体的に、エンジン速度が毎分ゼロ回転である(又は、閾回転速度より小さい)かをチェックする。回転速度がゼロ(又は、閾値)より大きい場合、バルブ40、42、44、46、56、58、60、62、72のうちいくつか又はすべてが、図1Cに示されるようにサイクル動作させられる(cycled)(ステップG)。回路12、14における圧力が閾値を下回る(例えば、3バールより小さい)場合(ステップG1)、上記で説明されたバルブ40、42、44、46、56、58、60、62、72の9つすべてがサイクル動作させられる(ステップG4)。フロント回路12上の圧力のみが閾値を下回る場合(ステップG2)、リア回路14のアウトレットバルブ62は、ホイールシリンダ20における圧力損失を防止するためにサイクル動作させられず、しかし、残りのバルブ40、42、44、46、56、58、60、72は活性化され(energized)、サイクル動作させられる(ステップG5)。リア回路14上の圧力のみが閾値を下回る場合(ステップG3)、フロント回路12のアウトレットバルブ60、72は、ホイールシリンダ16、18における圧力損失を防止するためにサイクル動作させられず、しかし、残りのバルブ40、42、44、46、56、58、62は活性化され、サイクル動作させられる(ステップG6)。フロント及びリアの回路12、14双方が閾圧力であるか又は上回る場合(ステップG3)、アウトレットバルブ60、62、72がサイクル動作させられず、これにより、残りのバルブ40、42、44、46、56、58は依然として活性化され、サイクル動作させられる(ステップG7)。ひとたびバルブ40、42、44、46、56、58、60、62、72のうちすべて又はいくつかが上記で概説された基準に基づいてサイクル動作させられると、コントローラは、エンジンが始動したかをチェックする(ステップH)。同様に、ステップFにおいて車両がスピード閾を上回って移動している場合、サイクル動作ステップ(ステップG)はスキップされ、ステップHに直接移動する。
【0018】
ステップHにおいて、コントローラは、エンジンが始動した(例えば、少なくとも50ミリ秒について、700又はそれ以上のRPMで稼働している)かをチェックする。エンジンが始動していない場合、診断方法は、図1Dに示されるように継続する。フロント回路12に関して、コントローラは、マスタシリンダ26の圧力が閾値(例えば、20バール)を上回るかをチェックする(ステップFP1)。それが閾値を上回っていない場合、方法はステップHに戻り、エンジンが始動したかをチェックする。マスタシリンダ圧力が閾値を上回る場合、コントローラは、マスタシリンダ26とフロントホイールシリンダ16とにおける圧力差分が閾圧力差分(例えば、20バールデルタ)より小さいか、又はフロントホイールシリンダ16における圧力が閾圧力(例えば、20バール)を上回るかをチェックする(ステップFM1)。測定された圧力差分が上記条件のうち1つを満たさない場合、インレットバルブ56が固着し閉じられているか、又はインレット(すなわち、マスタシリンダ26の直接的に下流)とアウトレット(すなわち、ホイールシリンダ16の直接的に上流)との間の通路がブロックされていると決定される。失敗指標が操作者に対して提供される。測定された圧力が、上記で説明された条件のうち1つを満たす場合、コントローラは、操作者がマスタシリンダ圧力を解放するのを待機する(ステップFM2)。マスタシリンダ圧力を解放すると、コントローラは、マスタシリンダ圧力をホイールシリンダ圧力と比較する(ステップFM3)。ホイールシリンダ圧力がマスタシリンダ圧力より大きい(又は、所定圧力差分、例えば20バールデルタだけ、より大きい)場合、切り替えバルブ40が固着し閉じられていると決定される。失敗指標が操作者に対して提供される。ホイールシリンダ圧力がマスタシリンダ圧力より大きくない場合、方法はステップHに戻る。同様の検査が、リア回路14に適用されるが、ステップFP1、FM1、FM2、FM3をミラーリングしたステップRP1、RM1、RM2、RM3を用いてリア回路14に適用される。図1Dに概説される手順は、エンジンがまだ始動されていない場合、繰り返されてもよい。別法として、手順は、エンジンが始動されるまでステップHで待機してもよい。
【0019】
エンジンが始動されている場合(ステップH)、診断方法は、図1EのステップJで継続する。ステップJにおいて、コントローラは、前のイグニッションサイクル又はエンジン起動が成功裏の検査(すなわち、固着したバルブのないこと)を結果としてもたらしたかをチェックする。最も最近の事前検査が成功であって、エンジン温度が較正閾を上回る場合(ステップK)、エンジンが最近固着バルブなく成功裏に始動されたと決定され、したがって、診断検査が終了される。さらに、センサ示度(例えば、エンジンヘッド温度又はエンジンオイル温度センサ)又はタイマが、診断検査が最近(すなわち、所定の時間期間内に、例えば、過去4時間、8時間、12時間、1日等以内に)成功裏に実施されたと示す場合、診断検査は終了されて、検査の頻度を制限し、不要な診断を最小限にし、ハードウェアの寿命を向上させることができる。前の検査が成功でなかった(例えば、終了しなかった、固着したバルブの存在を決定した等)(ステップJ)か、又はエンジン温度が較正閾を下回る(例えば、最後の使用以後に冷えた)(ステップK)場合、較正方法はステップLで継続する。
【0020】
ステップLにおいて、コントローラは、車両がスピード閾を上回って(例えば、毎時1.8キロメートルを上回って)移動しているかどうかを決定する。この測定は、ホイールスピードセンサにより測定されてもよい。車両がスピード閾を上回って移動している場合、コントローラは、(フロント回路12に関連づけられた)第1の入力装置22が作動しているか、(リア回路14に関連づけられた)第2の入力装置24が作動しているか、又は第1及び第2の入力装置22、24の双方が作動しているかをチェックする。コントローラは、それぞれのマスタシリンダ26、28における圧力を測定することにより、各入力装置22、24が作動しているかを決定する。より具体的に、コントローラは、それぞれのマスタシリンダ26、28における圧力が閾値(例えば、20バール)より大きいかを測定してもよい。
【0021】
コントローラが、第1の(フロントの)入力装置22のみが適用されていると認める(notes)場合(ステップFP1)、診断方法は、図1Fに示されるようにステップFM0(フロント回路12の第1の診断検査)で継続する。ステップFM0において、コントローラは、フロントホイールシリンダ16における圧力がマスタシリンダ26における圧力にマッチするかを監視する。コントローラは、マスタシリンダ圧力とホイールシリンダ圧力とにおける差を閾圧力差分(例えば、20バールデルタ)と比較する。コントローラは、達成されたホイールシリンダ圧力を閾圧力(例えば、20バール)とさらに比較する(ステップFM1)。測定された圧力差分又はホイールシリンダ圧力が上記条件のうち1つを満たさない場合、インレットバルブ56が固着し閉じられているか、又はインレットとアウトレットとの間の通路がブロックされていると決定される。失敗指標が操作者に対して提供される。測定された圧力が、上記で説明された条件のうち1つを満たす場合、コントローラは、操作者がマスタシリンダ圧力を解放するのを待機する(ステップFM2)。マスタシリンダ圧力を解放すると、コントローラは、マスタシリンダ圧力をホイールシリンダ圧力と比較する(ステップFM3)。ホイールシリンダ圧力が、マスタシリンダ圧力より大きい(又は、少なくとも所定の量、例えば20バールだけ、より大きい)場合、切り替えバルブ40が固着し閉じられていると決定される。失敗指標が操作者に対して提供される。ホイールシリンダ圧力が、マスタシリンダ圧力より大きくない場合、コントローラは、フロント回路が適切に機能していると決定している。
【0022】
コントローラが、第2の(リアの)入力装置24のみが適用されていると認める場合(ステップRP1)、診断方法は、図1Gに示されるようにステップRM0(リア回路14の第1の診断検査)で継続する。ステップRM0において、コントローラは、リアホイールシリンダにおける圧力がマスタシリンダ28における圧力にマッチするかを監視する。コントローラは、マスタシリンダ圧力とホイールシリンダ圧力とにおける差を閾圧力差分(例えば、20バールデルタ)と比較する。コントローラは、達成されたホイールシリンダ圧力を閾圧力(20バール)とさらに比較する(ステップRM1)。測定された圧力差分又はホイールシリンダ圧力が上記条件のうち1つを満たさない場合、インレットバルブ58が固着し閉じられているか、又はインレットとアウトレットとの間の通路がブロックされていると決定される。失敗指標が操作者に対して提供される。測定された圧力が、上記で説明された条件のうち1つを満たす場合、コントローラは、操作者がマスタシリンダ圧力を解放するのを待機する(ステップRM2)。マスタシリンダ圧力を解放すると、コントローラは、マスタシリンダ圧力をホイールシリンダ圧力と比較する(ステップRM3)。ホイールシリンダ圧力が、マスタシリンダ圧力より大きい(又は、少なくとも所定の量、例えば20バールだけ、より大きい)場合、切り替えバルブ42が固着し閉じられていると決定される。失敗指標が操作者に対して提供される。ホイールシリンダ圧力がマスタシリンダ圧力より大きくない場合、コントローラは、リア回路が適切に機能していると決定している。
【0023】
コントローラが、フロント及びリアの入力装置22、24双方が適用されていると認める場合、(ステップFM0及びRM0で始まる)診断検査の双方が実施される。
【0024】
ステップLにおいて、コントローラが、車両がスピード閾を上回って移動していないと決定する場合、図1F及び図1Gに示されるように、独立した診断検査がフロント及びリアの回路において実施される。フロント回路12(及び、図1F)を参照すると、コントローラは、フロントマスタシリンダ26における圧力が閾値(例えば、20バール)を上回るかを決定する(FP1)。圧力が閾値を上回る場合、方法は、上記で説明されたようにステップFM0(フロント回路12の第1の診断検査)で継続する。圧力が閾値を上回らない場合(例えば、ライダーが第1の入力装置22を作動させていない場合)、方法は、ステップFB1(フロント回路12の第2の診断検査)で継続する。用語「第1の診断検査」及び「第2の診断検査」は、本明細書の文脈において回路12、14上で実施できる別個の検査を参照するために使用され、検査する順序に対応しないことに留意するべきである。診断検査の文脈において使用される用語「第1」及び「第2」は、適用において診断検査が導入される順序を概説する。
【0025】
ステップFB1において、フロント回路12に関連づけられたポンプ30は、ある時限期間について、第1のフロントホイールシリンダ16に対して限られた量の圧力(例えば、5バール)を形成する。(圧力センサ64により測定された、)ホイールシリンダ16において測定された圧力が、ポンプ30のアクティブ化の間に(ポンプ稼働時間制限内に)所望の圧力に増加しない場合(ステップFB2)、インレットバルブ56は固着し閉じられており、ポンプ30を駆動するモータ34は欠陥があり、あるいはアウトレットへの通路がブロックされている。失敗指標が操作者に対して提供される。ホイールシリンダ16における所望の圧力がポンプ30を介して到達されない場合(ステップFB2)、圧力形成が停止され、圧力はホイールシリンダ16から解放される(ステップFB3)。ホイールシリンダ圧力が低下する場合(ステップFB4)、リアホイールシリンダ16に関連づけられた回路12は良好とみなされる。ホイールシリンダ圧力が低下しない場合、切り替えバルブ40が固着し閉じられている。ステップFB4は、検査パラメータに依存してスキップされてもよい。
【0026】
リア回路14(及び、図1G)を参照すると、コントローラは、リアマスタシリンダ28における圧力が閾値(例えば、20バール)を上回るかを決定する(ステップRP1)。圧力が閾値を上回る場合、方法は、上記で説明されたようにステップRM0(リア回路14の第1の診断検査)で継続する。圧力が閾値を上回らない場合(例えば、ライダーが第2の入力装置24を作動させていない場合)、方法は、ステップRB1(リア回路14の第2の診断検査)で継続する。ステップRB1において、リア回路14に関連づけられたポンプ32が、ある時限期間について、リアホイールシリンダ20に対して限られた量の圧力(例えば、5バール)を形成する。(圧力センサ66により測定された、)ホイールシリンダ20において測定された圧力が、ポンプ32のアクティブ化の間に(ポンプ稼働時間制限内に)所望の圧力に増加しない場合(ステップRB2)、インレットバルブ58が固着し閉じられているか、ポンプ32を駆動するモータ34が欠陥があるか、あるいはアウトレットへの経路がブロックされている。失敗指標が操作者に対して提供される。ホイールシリンダ20における所望の圧力がポンプ32を介して到達される場合(ステップRB2)、圧力形成が停止され、圧力はホイールシリンダ20から解放される(ステップRB3)。ホイールシリンダ圧力が低下する場合(ステップRB4)、リアホイールシリンダ20に関連づけられた回路14は良好とみなされる。ホイールシリンダ圧力が低下しない場合、切り替えバルブ42が固着し閉じられている。ステップRB4は、検査パラメータに依存してスキップされてもよい。
【0027】
ステップFB1、RB1で始まる検査の間、コントローラが、入力装置22、24が新たに適用されていると認める場合、検査が中断され、ステップFP1、RP1に戻されてもよい。さらに、車両モーションがホイールスピードセンサにより検出される場合、ステップFB1、RB1で始まる検査が同様に中断されてもよい。
【0028】
上記情報に基づき、診断方法がステップLに進んだとき、各回路12、14が検査されて、入力装置22、24により提供される制動がホイールシリンダ16、18、20において所望の制動圧力を生み出すことを確保する。車両がスピード閾を上回って移動している場合、検査は、ホイールシリンダ16、18、20における圧力に積極的に影響しないが、それぞれの入力装置22、24が作動しているときにそれぞれの回路12、14の機能性を依然として検証する検査に、制限される。車両がスピード閾を上回って移動していない場合、検査は、入力装置22、24のライダー作動により制限されず、しかし、第1の入力装置22、第2の入力装置24、若しくは双方の入力装置22、24が作動しているか、又は入力装置22、24のいずれも作動していないかで、回路12、14の機能性を検証する。
【0029】
診断システムが欠陥を決定したときの指標をライダーに与えることの他に、コントローラはさらに、診断検査のうち1つ以上が失敗信号を結果としてもたらす場合に、エンジン動作を中止し、あるいは防止してもよい。さらに、コントローラは、車両がすでに移動していない場合に、原動力が車両に加えられるのを防止してもよい。またさらに、コントローラは、低減されたトルク許可(authority)又はスピードを強制することにより原動力を制限し、診断検査が失敗信号を結果としてもたらす車両を制限してもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2