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特許7133346導管の連続する画像フレームのシーケンスから前記導管を流れる流体を定量的にフロー分析する装置の作動方法および撮像デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】導管の連続する画像フレームのシーケンスから前記導管を流れる流体を定量的にフロー分析する装置の作動方法および撮像デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
A61B6/00 331E
A61B6/00 350D
A61B6/00 330A
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018089649
(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公開番号】P2019022647
(43)【公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】17171126.0
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504048537
【氏名又は名称】パイ メディカル イメージング ビー ヴイ
【氏名又は名称原語表記】PIE MEDICAL IMAGING B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーマンズ、 ロン
(72)【発明者】
【氏名】アーベン、 ジャン-ポール
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、 デニス
【審査官】最首 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-184531(JP,A)
【文献】特開2009-195586(JP,A)
【文献】特表2015-527901(JP,A)
【文献】特開昭60-190968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管の連続する画像フレームのシーケンスから前記導管を流れる流体を定量的にフロー分析する装置の作動方法であって、前記画像フレームが、ある時間間隔で時間的に分離されていて、前記装置が、以下のステップを実行するためのプロセッサを備え、
a)前記プロセッサが、前記シーケンスから開始フレームと終了フレームを選択するステップと、
b)前記プロセッサが、前記開始フレーム内で前記導管の中心線を決定するステップと、
c)前記プロセッサが、前記終了フレーム内で前記導管の中心線を決定するステップと、
d)前記プロセッサが、前記開始フレームの前記中心線上と前記終了フレームの前記中心線上の共通開始ポイントを選択するステップと、
e)前記プロセッサが、前記開始フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択するステップと、
f)前記プロセッサが、前記終了フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択するステップと、
g)前記プロセッサが、前記開始フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算するステップと、
h)前記プロセッサが、前記終了フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算するステップと、
i)前記プロセッサが、開始フレームと終了フレームとの間の前記中心線距離と時間間隔の関数としてローカル・フロー速度を計算するステップと
を備え、
画像フレームの前記シーケンスが、前記導管内を移動する造影剤の経時的な分布を決定するための情報を含み、前記開始フレームおよび前記終了フレームが、前記開始フレームおよび前記終了フレームの前記中心線に位置する近位のポイントから遠位のポイントへの前記導管内の造影剤の異なる分布に関連し、
前記開始フレーム内の前記終了ポイントおよび前記終了フレーム内の前記終了ポイントが、前記共通開始ポイントより遠位の前記造影剤の前面によって識別され、
期間に渡って平均速度を決定するために、ステップi)で計算された速度が、相関係数によって除算され、
前記相関係数が、既知の速度プロフィールの入力データベースを処理することによって計算される、
装置の作動方法。
【請求項2】
前記開始ポイントからの強度対中心線距離グラフが、開始フレームと終了フレームの両方で計算され、前記終了ポイントが、閾値を設定しそして当該閾値に等しい強度を有するポイントに対応する中心線距離を特定することによって選択される、請求項1に記載の装置の作動方法。
【請求項3】
画像フレームの前記シーケンスが、デジタル減算画像フレームを含む、または前記シーケンスの前記画像フレームを、一または複数のマスク・フレームからデジタル減算して、デジタル減算された画像フレームを得て、前記導管内のフローを強調するステップを更に含む、請求項1-2の何れか1項に記載の装置の作動方法。
【請求項4】
時間の関数として速度のマップを提供するために、前記ローカル・フロー速度が、異なるフレームの選択に基づいて計算される、請求項1-3の何れか1項に記載の装置の作動方法。
【請求項5】
前記導管が血管であり、前記シーケンスが、一つ以上の心周期をカバーする二次元または三次元の画像フレームを備え、前記平均速度が、前記心周期に含まれる期間に渡って計算されている、請求項に記載の装置の作動方法。
【請求項6】
前記相関係数が、以下の式
【数18】
に従ってカバーされる心臓周期の部分に渡って正規化された積分に基づいていて、
ここで、
【数19】
が、一般的な全速度プロフィールを表し、
【数20】
および
【数21】
が、一般的な全速度プロフィールに関連する開始および終了フレーム時間である、請求項の何れか1項に記載の装置の作動方法。
【請求項7】
前記ローカル・フロー速度または平均速度が、他のセグメントにおける速度を推定するために、前記導管の当該他のセグメントに伝播される、請求項1-の何れか1項に記載の装置の作動方法。
【請求項8】
デジタル・コンピュータのメモリに直接ロード可能なコンピュータ製品であって、前記製品がコンピュータ上で実行されるときに、請求項1-の何れか1項に記載の装置の作動方法を実行するためのソフトウェア・コード部分を含むコンピュータ製品。
【請求項9】
造影剤により強調された画像フレームの2次元または3次元シーケンスを取得する撮像デバイスであって、造影剤により灌流された血管の複数の画像フレームを得るための取得モジュール、前記取得モジュールを駆動してトリガ・イベントの後の画像フレームを得るためのタイミング・モジュール、トリガ・イベントの後に、シーケンスの開始フレームおよび終了フレームを選択するユーザ指示を受信するための入力、および/またはシーケンスの開始フレームおよび終了フレームを自動的に選択するための選択モジュールを含み、前記撮像デバイスが、更に、
a)前記開始フレーム内の前記血管の中心線を決定し、
b)前記終了フレーム内の前記血管の中心線を決定し、
c)前記開始フレームの前記中心線上および前記終了フレームの前記中心線上の共通の開始ポイントを、自動的にまたはユーザ入力時に選択し、
d)前記開始フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択し、
e)前記終了フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択し、
f)前記開始フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算し、
g)前記終了フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算し、
h)中心線距離および開始フレームと終了フレームとの間の時間間隔の関数としてローカル・フロー速度を計算する、
ようにプログラムされているプロセッサを備え、
開始フレームおよび終了フレーム内の前記終了ポイントが、前記造影剤の前面を表すユーザ入力を精緻化すること、および/または強度対開始フレームおよび終了フレームの両方における前記開始ポイントからの中心線距離を表すグラフにおける低下ポイントを自動的に検出すること、によって選択され、
期間に渡って平均速度を決定するために、ステップh)で計算された速度が、相関係数によって除算され、
前記相関係数が、既知の速度プロフィールの入力データベースを処理することによって計算される、
撮像デバイス。
【請求項10】
開始フレームおよび終了フレーム内の前記共通開始ポイントが、造影剤注入カテーテルの先端部を自動的に検出するステップ、血管分岐のポイントのような解剖学的ポイントを自動的に検出するステップ、ユーザの入力を精緻化するステップからなるグループから選択される一つ以上の操作を実行することにより選択される、請求項に記載の撮像デバイス。
【請求項11】
マスク・フレームを計算し、かつ当該一つまたは複数のマスク・フレームを前記画像フレームから減算して、フローが強調されたフレームのシーケンスを得るように構成されているデジタル減算血管造影モジュールを更に備える、請求項9または10に記載の撮像デバイス。
【請求項12】
取得を心臓周期と同期させるためのECGモジュールを更に備え、前記プロセッサが、一つまたは複数の心臓周期に関連する前記シーケンスの画像フレームの複数の対について前記ローカル・フロー速度を計算するように構成されている、請求項11の何れか1項に記載の撮像デバイス。
【請求項13】
前記心臓周期内の所定の時点に造影剤注入を行うために前記ECGモジュールとインターフェース接続されている造影剤注入器を更に備える、請求項12に記載の撮像デバイス。
【請求項14】
前記造影剤注入器が、冠状動脈フローが最小である時点に造影剤を注入するように構成されている、請求項13に記載の撮像デバイス。
【請求項15】
前記開始フレームの前記選択が、前記ECG同期造影剤注入が開始される前記画像フレームを選択することによって実行される、請求項13または14に記載の撮像デバイス。
【請求項16】
前記開始フレームの前記選択が、前記ECG同期造影剤注入が終了する前記画像フレームを選択することによって実行される、請求項1315の何れか1項に記載の撮像デバイス。
【請求項17】
前記ローカル・フロー速度が、容積フロー分析、CFR、CFDの計算のための更なる定量処理に使用される、請求項1216の何れか1項に記載の撮像デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療画像の撮像(特に、血管造影法の撮像)の技術分野に関する。しかしながら、これは、例えば、非破壊テストの応用のような、フローを定量化する必要がある、如何なる分野においても、応用を見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
冠動脈疾患(CAD: coronary artery disease)は、全世界的に主要な死因の1つである。CADは、一般に、心筋への酸素供給が減少する結果、例えば、虚血および心筋梗塞と言う結果になる、狭窄から遠位のセクションへの血液供給が減少する又はなされない状況をもたらす可能性がある、狭くなった又はブロックされた血管に関する状態に関連する。一般に心臓発作として知られている、心筋梗塞(MI: myocardial infarction)は、心臓の一部への血液のフローが途絶え、心筋に不可逆性の損傷をもたらすときに、発生する。米国のみでも、毎年約1,500万のMIケースが、発生している。
【0003】
現在、X線血管造影法は、(経皮的冠動脈インターベンション(PCI: percutaneous coronary intervention)としても知られている)最小限侵襲性手順によって狭窄(狭くなった)冠動脈を治療する間に、用いられる画像診断法である。PCIの間、(インターベンションの)心臓専門医は、カテーテル上の収縮させたバルーンまたは他のデバイスを、血管中に、鼠径大腿動脈からまたは橈骨動脈から、それらが動脈内の障害物の場所に到達するまで供給する。X線撮像は、カテーテルの進行をガイドするために用いられる。PCIは、通常、バルーンを膨らませて、目標の動脈を開き、血液フローが妨げられていない状態を回復させる。ステントまたはスキャフォールド(足場)は、障害物の部位に配置させて、動脈を開いたままにすることができる。
【0004】
CADの完全な理解を得るために、臨床医は、冠動脈解剖、心室機能および冠動脈血液フローを評価することが出来なければならない。X線血管造影は、最初の2つのファクタ(冠動脈解剖および心室機能)に関する情報を得るための標準撮像技術である。パーセンテージ直径冠動脈血栓狭窄症の視覚によるパーセンテージ直径の評価には、内部観察者の間および観察者の間に深刻なばらつきがあるが、定量的冠動脈分析(QCA: quantitative coronary analysis)は、動脈の幾何学形状の正確でかつ客観的な測定を提供する。第三のファクタ(冠動脈血液フロー)が、直接測定されることはまれである。
【0005】
カテーテル検査室で冠動脈血液フローを評価する方法は、冠動脈内ドップラ測定技術による。これらの技術は、非特許文献1に記載されているような、ドップラ変換ワイヤを経皮的に冠動脈に挿入しかつ冠動脈内の血液フロー速度を計測することに関する。しかしながら、冠動脈内ドップラ測定には、いくつかの欠点がある。この技術には、ドップラ・ワイヤが一度しか用いることができないことによる費用の追加が発生する。更に、ドップラ・ベースで冠動脈フローを評価するには、侵襲性カテーテル法を追加する必要があり、これに関連するコストおよび処置時間が必要となる。更に、冠動脈フローのドップラ・ベースの評価は、平均ピーク速度に依存するので、この評価では、CAD(冠動脈疾患)の患者に通常起こる速度プロフィールまたは血管領域の変化が考慮されない。
【0006】
X線血管造影画像データに基づく冠動脈血液フローの推定は、これが、関連するコストおよび処置時間を発生させる侵入性カテーテル法を追加する必要がないので、好ましいであろう。長年にわたって、冠動脈血液フローは、血栓溶解が心筋梗塞(TIMI: thrombolysis in myocardial infarction)フロー等級の何れに属するかによってのみ評価されて来た。PCIの様な再灌流治療の効率を評価するために血管造影冠動脈フロー率を質的に格付けするこのような単純な方法は、非特許文献2に示されているように、臨床試験において灌流の復旧を判断するために広く使われて来ている。この方法は、罹患している血管において標準化された遠位の冠動脈ランドマークに造影剤が到達するために必要なフレームの量を、評価した。この評価は、二次元のX線血管造影画像の実行の範囲内で(造影剤が、罹患している血管の遠位の標準化された冠動脈ランドマークに到達するまでに必要な)フレーム数を視覚的に評価することによって、行われる。フレーム数は、毎秒30コマのX線シネ映画撮影率に基づく。従って、フレーム数30は、色素が動脈を横断するのに1秒が必要であることを意味するであろう。TIMIフロー等級は、患者の冠動脈フローを4つの異なるカテゴリ、すなわち、等級0(フロー無し)、等級1(潅流の無い侵入)等級2(部分的な潅流)または等級3(完全な潅流)のうちの1つに、分類した。
【0007】
しかしながら、この方法は、TIMI計数に使用される最初および最後のフレームを観察者が決定する際のぶれが大きいので、非常に主観的である。更にまた、この方法は等級に依存する方法であり、そしてこの方法には冠動脈フローの連続する血管造影インデックスは与えられない。
【0008】
これらの問題を克服するために、非特許文献3は、補正されたTIMIフレーム計数(CTFC: corrected TIMI frame count)と呼ばれる冠動脈フローのより客観的でかつ連続する変数を開発した。
【0009】
この方法では、TIMIフレーム計数が、血管長に対して調整される。補正係数が、非特許文献4に記載されているように、回旋および右冠動脈に比較してより長い左前降順動脈(LAD: left anterior descending artery)の長さを補償するために、適用される。
【0010】
しかしながら、この改良バージョンも、依然としてフレームを臨床医が視覚により評価することに基づいている。更に、例えば、非特許文献5に記載されているように、CTFCは、注入効果、性別、血行力学、身体サイズおよび造影剤タイプのようないくつかの変数に影響される可能性がある。
【0011】
冠動脈血液フローのより強力な数量化を発展させるために、血管造影法に対する冠動脈速度の決定分野においては、さまざまな研究が、長年にわたってなされて来ている。この分野における初期の仕事についての優れたレビューは、非特許文献6に見出すことができる。この論文は、冠動脈速度およびフローを決定するいくつかの異なる方法の概要を述べている。
【0012】
非特許文献6は、血液フロー速度アルゴリズムの2つの主要なクラス;追跡アルゴリズムと計算アルゴリズムを区別する。後者のクラス(計算アルゴリズム)は、モデル、質量および容積の方程式を利用する。これらのアプローチは、例えば、質量および容積の仮定に依存し、および/または追加情報を必要とする。このため、これらの方法は、カテーテル法検査室における冠動脈インターベンションの間のような臨床現場において、即座に冠動脈血液フローを評価しなければならない場合には適さない。
【0013】
血管内の造影剤ボーラスの移動に注目するいくつかの追跡アルゴリズムが、利用可能である。ボーラス移送時間アルゴリズムは、ボーラスが、血管の範囲内の1つの固定位置から第二の固定位置まで進行するのにかかる時間を測定することによって速度を決定する。この方法は、パルス状のフローに対しては強力ではなく、かつ2本のボーラス密度曲線を取得するためには2つの位置で全てのフレームに対する情報を必要とする。これらのボーラス強度曲線を得るためには、全てのフレームにおいて測定位置を正確に追跡することが必要であるが、この計算は高価でありかつ時間を要する。二次元の時間―距離パラメータ画像アルゴリズムから連続する速度を決定することは、臨床現場に適用するには複雑過ぎる。この方法が必要とする注入方法が臨床診療とマッチングしないため、この液滴テクニックは、臨床現場には適用出来ない。非特許文献6から、大部分の方法が、後続フレームの間のボーラス移動に注目しているので、これは拍動性のフローには適していないと言ういくつかの技術の欠点を学ぶことが出来る。別のアプローチは、全心周期の間の造影剤濃度に注目し、そして経験的に決定された濃度レベルを、進行したボーラス距離を決定するために用いる。後者の方法は、ローカル濃度偏差に影響されやすい。
【0014】
ボーラス到達時間に基づく同様なアプローチが、最近、非特許文献7によって使われている。この論文において、Ten Brinkeは、複数の画像フレームにより中心線を経時的に描画しかつ追跡し、そして造影剤強度の減少を経時的に追跡することによって前述のフレーム計数を導出して、TIMIフレーム計数(速度の尺度)を決定している。これに加えて、Ten Brinkeは、冠動脈血管に沿って測定される距離を改善するために、冠動脈血管の3D再構成を使用している。この方法は、経時的に一組の固定空間ポイントを追跡しかつこれらのポイントに変化が発生する時点をマークするので、これは、通常、ボーラス到達時間に基づく方法と呼ばれている。
【0015】
類似する方法は、Fieselmann 外による特許文献1においても用いられている。この公報は、例えば、血液フロー、血液フロー速度および造影剤分散のような血液フロー・パラメータを決定しかつ視覚化する、血管造影法画像における造影剤の拡散を評価するための方法を開示する。この方法も、2つの空間的に固定されたポイントに依存し、かつそれらの2つのポイント内における造影剤の移動を測定する。この場合、距離に結合されているこの測定は、速度率を得るためのみならず、造影剤分散の変化(これは、造影剤が既に広がっている容積を計算するために使われ、フローおよび速度の間接的な表示となる)を得るためにも用いられる。
【0016】
しかしながら、X線血管造影法によって冠動脈血液フローを評価する上記アプローチは、いくつかの限界を有する。
【0017】
第一に、ほとんどの方法は、2つ以上の空間的に固定されたポイントに注目し、そしてそれらのポイントの継時的な輝度変化を追跡する。これらのアプローチは、X線血管造影取得システムの時間分解能(映写フレーム率)に非常に影響を与える。TIMIの導入以来、患者へのX線被爆を下げる目的の技術改善により、映写フレーム率は、徐々に、毎秒7.5-15フレームにまで減少した。映写フレーム率のこの減少は、TIMIフレーム計数等の方法によって冠動脈フローを評価する上で2つの欠点をもたらした。TIMIフレーム計数に関して、血液フローを評価する標準方法には、毎秒30フレームの映写フレーム率しか適用されない。更に重要なことは、映写フレーム率の減少が、X線血管造影法の時間分解能に直接悪影響を与えることである。例えば、毎秒30フレームで得られる33ミリ秒と比較して、毎秒7.5フレームの映写フレーム率は、133ミリ秒の時間分解能と言う結果をもたらす。毎秒15フレームの映写フレーム率の正常な使用において、選択される時間間隔および取得の正確な時点によっては、測定された冠動脈フロー速度において大きなオフセットが、起こり得る。
【0018】
第二に、例えば、心周期、呼吸周期および患者の動きにより、冠動脈血管は、常に、動いているので、非特許文献7および特許文献1のような自動アプローチに対しては、堅牢な画像登録が必要である。
【0019】
要約すると、上記方法は、全て、それらの精度については時間分解能に依存し、画像登録を必要とし、または選択される基準ポイントの位置によりタイミング範囲が制限される。更に、いくつかの方法は、二平面の画像取得を必要とする。
【0020】
従って、X線血管造影画像において血液フロー速度を決定するより正確で、完全に客観的でかつ再現可能なアプローチが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】ドイツ特許出願DE102011083708号明細書
【文献】米国特許第8,086,000号明細書
【文献】米国特許第8,787,641号明細書
【非特許文献】
【0022】
【文献】Bach外による「冠動脈性心疾患の評価および治療のための冠動脈内ドップラ・フロー測定(Intracoronary Doppler flow velocity measurements for the evaluation and treatment of coronary artery disease)」、Current Opinion in Cardiology 1995、10巻、434―442頁
【文献】「冠動脈梗塞(TIMI)試験における血栓溶解。フェーズI所見。TIMIスタディ¥グループ。(The Thrombolysis in Myocardial Infarction (TIMI) trial. Phase I findings. TIMI Study Group)」、1985年4月、312(14):932―6
【文献】Gibson外による「TIMIフレーム計数:冠動脈フローを評価する定量的方法(TIMI Frame Count: A Quantitative Method of Assessing Coronary Flow)」、Circulation、第93巻、5号、879―888(1996)
【文献】Appelby外による「将来の治験に対するTIMIフレーム計数の重要性(Importance of the TIMI frame count: implications for future trials)」、Curr Control Trials Cardiovasc Med. 2000;1(1):31―34
【文献】Abaci外による「心筋梗塞(TIMI)の治験フレーム計数およびその再現性の血栓溶解についてのポテンシャル交絡率の効果(Effect of potential confounding factors on the thrombolysis in myocardial infarction (TIMI) trial frame count and its reproducibility)」、Circulation100(22):2219―2223
【文献】Shipilfoygel外による「血液フローおよび血液速度の測定のためのX線ビデオ濃度測定方法(X-ray videodensitometric methods for blood flow and velocity measurement: A critical review of literature)」、Medical Physics、27巻、9号、2000年9月
【文献】Ten Brinke外による「3D再構成を用いた心筋梗塞(TIMI)フレーム係数における自動血栓溶解法(A Method towards Automated Thrombolysis in Myocardial Infarction (TIMI) Frame Counting Using 3D Reconstruction)」Computers in Cardiology 36巻、653―656頁、2009
【文献】Chen外による「2DX線透視検査のための堅牢で高速な造影剤の流入検出(Robust and fast contrast inflow detection for 2D x-ray fluoroscopy)」MICCAI 2011、パート1、243―250頁
【文献】Berglund外による「動脈管腔容積の計算のための血管造影法でECGゲーティング(ECG gating at angiography for calculation of arterial lumen volume)」、Acta Radiologica 198、29:6
【文献】Bonnefuis外による「デジタル滅算血管造影を用いた動脈のフローの数量化(Quantification of arterial flow using digital subtraction angiography)」、Medical Physiology 39(10)、2012年10月
【文献】Zweng, M., Fallavolita, P., Demicri, S., ea、による「低ランク・スパース行列分解およびノイズ除去を使用する神経介入のための自動ガイド・ワイヤ検出(Automatic guide-wire detection for neurointerventions using low-rank sparse matrix decomposition and denoising)」、Augmented Environments for Computer-Assisted Interventions、114―123頁、2015年12月
【文献】Wang, P., Ecabert, O., Chen, T.外による「血管造影と血管内超音波画像の共同登録(Image-based Co-registration of Angiography and Intravascular Ultrasound Images)」、IEEE Transactions on Medical Imaging、32巻、12号、2013年12月
【文献】Gronenschild外による「CAASII:オフラインおよびオンラインの定量的血管造影法(CAAS II: A Second Generation System for Off-line and On-line Quantitative Coronary Angiography)」Catheterization and Cardiovascular Diagnosis 33:61―75(1994)
【文献】Dodge外による「正常ヒト冠動脈の直径:年齢、性別、解剖学的変異、および左心室肥大または拡張の影響(Lumen diameter of normal human coronary arteries: influence of age, sex, anatomic variation, and left ventricular hypertrophy or dilation)」、Circulation 1992; 86:232-246頁
【文献】Manikandan外による「心電図(ECG)信号のR―ピークを検出するための新規な方法(A novel method for detecting R-peaks in electrocardiogram (ECG”) signal)」Biomedical Signal Processing and Control 7、(2012年、118―128頁
【文献】Layによる「線形代数およびそのアプリケーション(Linear algebra and its applications)」)2012年、第四版、142―143頁、Addison-Wesley Longman
【文献】Frangによる「マルチ・スケール血管強化フィルタリング(Multiscale vessel enhancement filtering)」Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention- MICCAI 1998、Computer Scienceのレクチャ・ノート、1496巻 130―137頁
【文献】Dodge外による「正常ヒト冠動脈の腔径:年齢、性別、解剖学的変異および左心室肥大の影響(Lumen diameter of normal human coronary arteries: influence of age, sex, anatomic variation, and left ventricular hypertrophy or dilation)」Circulation、1992年:82:232―24頁
【文献】Dodge外による「冠動脈ツリーにおけるルーメン直径。年齢、性別、解剖学的変異および左心室肥大または拡張の影響(Lumen Diameter of Normal Human Coronary Arteries. Influence of age, sex, anatomic variation, and left ventricular hypertrophy or dilation)」Circulation, 86巻、1号、232―246頁(1992年)
【文献】Huo外、「脈管ツリーの種内スケーリング則(Intraspecific scaling laws of vascular trees)」、J. R. Soc. Interface(2012年)9、190―200頁
【文献】Fischer, B., Bommersheim, Sによる、「非剛体画像登録(Non-rigid image registration)」http://www.mic.uni-luebeck.de/uploads/tx_wapublications/2006-KOREA-BF.pdf, 2006
【文献】Mehta, S.S.L, Lingayat, N.S.による「心電図におけるPおよびT波の検出(Detection of P and T-waves in Electrocardiogram)」:Proceedings of the World Congress on Engineering and Computer Science 2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本願における実施態様の目的は、二次元または三次元画像のシーケンスから、正確に導管のフロー速度(特に、二次元の血管造影画像から血管の血液フロー速度)を決定すること(これは、時間分解能および二平面の画像取得には依存せず、かつ導管の動きに対応することができる)である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願明細書における実施態様に従うと、導管の連続する画像フレーム(画像フレームは、ある時間間隔で時間的に分離されている)のシーケンスから前記導管を流れる流体を定量的にフロー分析するためのデバイス、コンピュータ・プログラム製品およびコンピュータ実行方法が、提供される。
デバイス、プログラム製品および方法は、特定の実行可能命令によって構成されている一つ以上のコンピュータ・システムの制御の下で、
a)前記シーケンスから開始フレームと終了フレームを選択するステップと、
b)前記開始フレーム内で前記導管の中心線を決定するステップと、
c)前記終了フレーム内で前記導管の中心線を決定するステップと、
d)前記開始フレームの前記中心線上と前記終了フレームの前記中心線上の共通開始ポイントを選択するステップと、
e)前記開始フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択するステップと、
f)前記終了フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択するステップと、
g)前記開始フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算するステップと、
h)前記終了フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算するステップと、
i)開始フレームと終了フレームとの間の前記中心線距離と時間間隔の関数としてローカル・フロー速度を計算するステップと
を実行するように構成されている。
【0025】
一実施態様において、画像フレ―ムのシ―ケンスは、導管を進行している造影剤の分布を経時的に決定するための情報を含み、開始フレ―ムおよび終了フレ―ムは、開始フレ―ムと終了フレ―ムの中心線に置かれる近位ポイントから遠位ポイントまで導管の造影剤の異なる分布に関係している。開始フレ―ムの終了ポイントおよび終了フレ―ムの終了ポイントは、例えば、共通の開始ポイントから遠位にある造影剤の前面によって識別される。
【0026】
有利な構成では、開始ポイントからの強度対中心線距離のグラフは、開始フレ―ムと終了フレ―ムの両方において計算される。したがって、閾値を設定し、かつこのような閾値に等しい強度を有する位置に対応する中心線距離を識別することによって、終了ポイントは、選択することができる。
【0027】
開始フレームと終了フレームの共通の開始ポイントは、造影剤注入カテーテルの先端を自動的に検出すること、血管の分岐ポイントのような解剖学的ポイントを自動的に検出すること、から成るグループから選択される一つ以上の操作を実行し、ユーザ入力を精緻化することによって、選択するのが有利である。
【0028】
画像フレームのシーケンスは、デジタル的に減算された(差引かれた)画像フレームを含む、またはこの方法が、デジタル減算された画像フレームを得て、導管のフローを強化する、つまり分解能を向上させるために、複数のマスク・フレーム又は単一のマスク・フレームからシーケンスの画像フレームをデジタル的に減算する(差引く)ステップを更に含むことが好ましい、
【0029】
一実施態様によれば、ローカル速度は、速度のマップを時間の関数として提供するために、異なるフレーム選択に基づいて計算される。
【0030】
これに代えてまたはこれと共に、ステップi)において計算される速度は、相関係数によって調整されて、期間に渡って平均速度を決定する。導管が血管である場合、シーケンスは、一つ以上の心周期をカバーしている二次元または三次元画像フレームを備え、そして平均速度が、心周期内の期間に渡って計算されることが好ましい。
【0031】
相関係数は、例えば、既知の速度プロフィールの入力データベースを処理することによって計算することが出来る。
【0032】
当該セグメントの(例えば、隠れているまたはマスキングされている、したがって画像フレームに適切に示すことができないこれらのパーツに対する)速度を推定するために、ローカル速度または平均速度が、導管の他の部分に伝播されることが、有利である。
【0033】
より一般的には、ローカル速度は、更なる定量的処理のため(例えば、容量フロー解析、CFR、CFD等の計算のため)に使うことができる。
【0034】
実施態様は、デジタル・コンピュータのメモリに直接ロード可能なコンピュータ製品であって、この製品がコンピュータ上で作動するときに、本願の実施態様に従う方法を実行するためのソフトウエア・コード部分を備えるコンピュータ製品にも、関する。
【0035】
一態様によれば、実施態様は、造影剤が強化された画像フレームの二次元または三次元シーケンスを得るための、撮像デバイス、典型的にはX線またはMRIデバイス、より典型的には、血管造影法のためのX線デバイスに関する。この撮像デバイスは、造影剤により灌流された血管の複数の画像フレームを得るための取得モジュール、前記取得モジュールを駆動してトリガ・イベントの後の画像フレームを得るためのタイミング・モジュール、トリガ・イベントの後に、シーケンスの開始フレームおよび終了フレームを選択するユーザ指示を受信するための入力、および/またはシーケンスの開始フレームおよび終了フレームを自動的に選択するための選択モジュールを備え、この撮像デバイスは、更に、
a)前記開始フレーム内の前記血管の中心線を決定し、
b)前記終了フレーム内の前記血管の中心線を決定し、
c)前記開始フレームの前記中心線上および前記終了フレームの前記中心線上の共通の開始ポイントを、自動的にまたはユーザ入力時に選択し、
d)前記開始フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択し、
e)前記終了フレームの前記中心線上の終了ポイントを選択し、
f)前記開始フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算し、
g)前記終了フレームの開始ポイントと終了ポイントとの間の中心線距離を計算し、
h)中心線距離および開始フレームと終了フレームとの間の時間間隔の関数としてローカル・フロー速度を計算する、
ようにプログラムされているプロセッサを備える。
【0036】
本願明細書における実施例は、開始フレームと終了フレームの共通の開始ポイントが、造影剤の注入カテーテルの先端を自動的に検出すること、血管の分岐のポイントのような解剖学的ポイントを自動的に検出すること、から成るグループから選択される一つ以上の操作を実行し、ユーザ入力を精緻化することによって、選択されることを、提供する。
【0037】
開始フレームおよび終了フレーム内の終了ポイントは、ユーザ入力を精緻化すること、および/または強度対開始フレームおよび終了フレームの両方における開始ポイントからの中心線距離を表すグラフにおける低下ポイントを自動的に検出することによって、選択することができる。
【0038】
撮像デバイスは、マスク・フレームを計算し、当該一つまたは複数のマスク・フレームを前記画像フレームから減算して、フローが強調されたフレームのシーケンスを得るように構成されているデジタル減算血管造影モジュールを備えることが有利である。
【0039】
本願明細書における一実施態様によれば、デバイスは、取得を心臓周期と同期させるためのECGモジュールを更に備え、前記プロセッサが、一つまたは複数の心臓周期に関連する前記シーケンスの画像フレームの複数の対についてローカル速度を計算するように構成されている。
【0040】
本願明細書における実施態様によれば、デバイスは、造影剤注入を心周期と同期させるモジュールを更に備え、造影剤注入が常に心周期の中の同じ時点から始まることを確実にする。
【0041】
本発明者等は、X線システムによって取得される画像シーケンスが、2つの異なる時間分解能を含むことを既に認識していた。第一に、1秒間に取得されるフレームの量は、シネフレーム率(これは、結果として時間シネフレーム率分解能(
【数1】
)になる)と定義される。第二に、時間分解能は、シネ画像の実行範囲内で単一のフレームを取得するために必要な期間(
【数2】
)である。現在の最高水準の技術のX線血管造影装置の場合、
【数3】
は、数ミリ秒のオーダである。更にまた、本発明者等は、
【数4】

【数5】
に依存していないことを既に認識していた。従って、
実施態様の1つでは、時間分解能のこの違いが、(
【数6】
の時間分解能を有し)かつ
【数7】
への依存が少ないX線血管造影フレーム範囲内の冠動脈造影剤ボーラス前面を評価することによって、利用されている。造影剤ボーラス前面は、造影剤が未だ見えている所定の血管造影フレーム内において対象血管の(血管ツリーの下流で)最も離れた遠位である位置である。更にまた、いくつかの実施態様は、フレーム毎に取得フレームの血液フロー速度を決定し、かつ心収縮周期によって生じる効果を考慮することが出来る。
【0042】
本願明細書における実施態様の特性およびそこから導き出される利点は、(添付の図面に図示される)限定するものではない実施態様の以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本願明細書の実施態様に従ってフロー速度を決定する方法のフローチャートを示す。
図2】本願明細書の実施態様に従うX線映画蛍光撮影ユニット・ブロック図の一例を示す。
図3】本願明細書の他の実施態様に従ってフロー速度を決定する方法のフローチャートを示す。
図4】二次元の血管造影画像の実行からの、開始フレームと終了フレームの選択を示す。
図5】血管造影フレームから減算されるマスク・フレーム及び減算された結果のフレームの一例を示す。
図6】造影剤薬剤に沿う中心線の作成を示す。
図7】入力画像フレームのさまざまな組合せのために選択されたvlocal値を含むマトリックスを示す。
図8】フレーム当たりの全てのvlocal値およびそれらのECG信号とのマッチングを含むグラフを示す。
図9】1つの心周期の範囲内の異なる間隔の一例を示す。
図10】一般的なECGプロフィールにマッチングした平均化された速度グラフを示す。
図11】P-波及びT-波を含むECG線図の形で心臓の状態相との関連がある一般的な血液フロー速度プロフィールの実施例を示す。
図12】心周期を追跡する中心線に基づいて速度を決定する代替方式の一例を示す。
図13】典型的な一平面血管造影装置の機能ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1および3は、本願の実施態様に従う操作を例示するフローチャートを示す。操作は、対象血管器官(またはその部分)または他の対象物の二次元画像を得そして処理することができる撮像システムを使用する。例えば、一平面血管造影システムには、例えば、Philips社 製造のAllura Xper FDを用いることができる。
【0045】
図2は、ユーザ・インタフェース・モジュール116からコマンドの下で作動しかつデータ処理モジュール114にデータを提供する血管造影撮像装置112を含む、典型的な一平面血管造影システムの機能ブロック図である。一平面血管造影撮像装置112は、例えば、前後方(PA)方向で対象血管器官の二次元X線画像の実行を捕える。一平面血管造影撮像装置112は、典型的には、支持構台のアームに据え付けられているX線源および検出器を含む。構台は、X線源と検出器の間のテーブルに保持されている患者に対して、X線源および検出器のアームをさまざまな角度に配置させる。データ処理モジュール114は、パーソナル・コンピュータ、ワークステーションまたは他のコンピュータ処理システムによって実現させることができる。データ処理モジュール114は、一つ以上のプロセッサおよび本願明細書に記載されている操作を一つ以上のプロセッサに実行させるためのプログラム命令を格納するメモリを含む。データ処理モジュール114は、ユーザに、本願明細書に記載されかつ図示される画像、指示、データ等の情報を提示するためのディスプレイも含む。データ処理モジュール114は、撮像装置112の操作を制御する、補完的な画像などを得るときに使用される投影斜視図を選択すると言うような本願明細書の操作に関連するユーザからの入力を受信するためのユーザ・インタフェースも含む。データ処理モジュール114は、本願明細書において参照されかつ参照により組込まれている特許および刊行物に記載されている一つ以上のシステムの部分に対応する、またはそれらを含むことができる。データ処理モジュール114は、一平面血管造影撮像装置112によって捕えられる二次元画像を処理して、本願明細書に記載されているデータを生成する。ユーザ・インタフェース・モジュール116は、ユーザと対話し、データ処理モジュール114と通信する。ユーザ・インタフェース・モジュール116は、ビジュアル出力のためのディスプレイ・スクリーン、タッチ入力のためのタッチ・スクリーン、入力のためのマウス・ポインタまたは他のポインティング・デバイス、音声入力のためのマイクロホン、オーディオ出力のためのスピーカ、入力のためのキーボードおよび/またはキーパッド等のような、種類の異なる入出力デバイスを含むことができる。図1または3の操作は、コンピュータ製品(例えば、光ディスクまたは他の形態の持続的メモリ(例えば、USBドライブまたはネットワーク・サーバ)に埋め込まれているソフトウエア・コードによって、実行させることも出来る。ソフトウエア・コードは、図1または3の操作を行うデータ処理システムのメモリに、直接、ロード可能である。
【0046】
以下に、実施態様が、非限定的な例として詳細に開示される。この例では、注目する対象物の二次元の血管造影画像の実行(S1、201)は、任意の方法で得られると仮定されている。例えば、二次元の血管造影画像データは、血管造影撮像システムからリアルタイムで得ることができる。オプションとして、予め記録されている二次元の血管造影画像データを、ローカル・メモリ、データベース、ネットワーク・サーバ等から得ることもできる。この二次元の血管造影画像の実行は、複数の心臓の状態相をカバーする複数のフレームを含む。二次元の血管造影画像の実行を提供することができる如何なる撮像デバイスも、この目的のために用いることができる。一平面血管造影システムには、例えば、Philips社製造のAllura Xper FDを使用することができる。
【0047】
取得した二次元の血管造影画像の実行(S1)から、減算フレームが、フローを強調する(S2)ために計算されることが好ましく、そして開始フレームAおよび終了フレームBが、図4に示されるように選択される(203)。次いで、対象血管に沿った中心線が、画像の実行の選択された2つのフレーム(205、207)内に示される(S3)。この入力から、対象血管における血液フロー速度を決定することが出来る。この速度は、フレーム間で経時的にカバーされる距離の組合せを見ることによって、決定される(S4、219)。心周期に関するフレームAとフレームBの間の時間に基づく任意の変換は、操作S5に示されるように実行することが出来る。心周期に関する情報は、例えば、二次元の血管造影画像の実行にリンクされている心電図検査(ECG:Electrocardiography)信号から、決定することが出来る。これは、結果として、患者固有の、独立している心臓の状態相、血管速度値(S6)になる。これらの各ステップ、および実施態様のこれらのベースとなるステップのいくつかの変更例は、後述される。
【0048】
この実施態様は、X線血管造影画像解析を使用して、目標とする血管または対象血管の平均血液フロー速度を決定する。従って、X線血管造影画像の実行に一致している減算血管造影フレームおよびECG信号が、S2および202に示されるように、血液フロー速度を決定する方法の最適な実施に好ましい。このステップは、画像フローの質を高めることに寄与するが、省略することができることは明らかである。同様な結果を得るために、例えば、MRIまたはコンピュータ断層撮影法またはX線回転血管造影等の他の画像診断法も、使用することができる。
【0049】
従来のX線血管造影法では、血管に造影剤を注入すると共に、時間制御されたX線によって注目する領域を被爆させることによって、画像を取得している。得られた画像には、この領域の血管以外のその上に重なっている全ての構造も含まれている。これは、解剖学的ポイントおよび変動を決定することには有用であるが、血管を正確に視覚化するためには役に立たない。デジタル滅算血管造影(DSA:digital subtraction angiography)は、放射線不透過性のヨウ素系色素が体内に静脈注入される前後の体の領域のX線画像を比較するコンピュータ技術を使用する。第一の画像上の組織および血管は、第二の画像(マスク・フレーム、放射線不透過性のヨウ素を含まない画像)からデジタル的に減算され(差引かれ)、動脈の鮮明な画像を残すことになるので、これは、体の残りの部分から隔離して残りの体とは独立して研究することを可能にする。
【0050】
DSAは、例えば、二次元の血管造影画像の実行から計算することができ、そしてほとんどのX線血管造影システムは、DSAを直接生成する撮像プロトコルを含む。しかしながら、DSAは、静的マスク・フレームを使用するため、取得の間に発生する心臓の動きを補償することは出来ない。
【0051】
減算画像の実行の作成のための他の方法は、例えば、画像の実行に利用可能なDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)情報に基づく。DICOMは、医療画像の情報を処理し、格納し、印刷し、かつ送信するための標準である。これには、ファイル様式の定義およびネットワーク通信プロトコルが含まれる。例えば、ポイントのリストとして表されるECGデータは、DICOMに格納することが出来る。
【0052】
血管造影画像の実行が、DICOMに利用可能なECG情報を有し、かつ造影剤注入が、X線血管造影画像の実行中の全心周期の後に開始される場合、造影剤注入の前にこの心周期を使用して複数のマスク・フレームを作成することができる。造影剤注入のこの時点は、以後、Tと呼ばれる。ユーザによって示されないときには、これに代えて、このTは、例えば、非特許文献8に記載されている方法によって自動的に検出することができる。この論文では、血管が造影剤で満たされるときに発生する一次微分応答に作用する血管性(vesselness)フィルタが、血管の数を検出する。造影剤注入の時点で大きい増加を示すこのような血管性フィルタの応答をモニタすることによって、血管が突然見えるようになるので、造影剤注入の時点は、正確に特定することができる。造影剤の注入後ECG心周期の時点にフレームをマッチングさせることによって、一つ以上の特定のマスク・フレーム(図5、参照24)を、造影剤注入の後の一つ以上の血管造影フレーム(図5、参照23)から減算することが出来る。これは、例えば、心臓の動きによって生じる患者の如何なる動きも取除き、そして一つ以上の改良された減算フレーム(図5、参照25)を生成する。これに代えて、完全な心周期が無い場合、または上記で決定された造影剤注入Tの時点の前にECGグラフが利用可能でない場合には、単一のマスク・フレームは、測定時点の前の全ての時間フレームから最大強度フレームを決定することによって、計算される(減算開始フレーム)。このような最大強度フレーム・マスクは、入力フレーム数により全てのピクセルを見てかつマスク・フレーム内の同じ位置にあるピクセルに最大ピクセル値を割り当てることによって、作成される。既に注入されている如何なる造影剤も、画像強度の低下を引き起こし、かつこの最大強度マスクには現れないであろう。図4に示されるように、減算された画像の実行または元のシーケンスで、2つのフレームを選択することができる。画像の実行の範囲内の画像を表す1フレームは、対象血管(A)の近位の造影剤ボーラス前面を示し、そして画像の実行内の画像を表す標的血管の下方の1フレームは、対象血管(B)の遠位の造影剤ボーラス前面を示す。
【0053】
オプションとして、開始フレームAは、影剤注入が開始されるフレーム(T)として自動的に選択することが出来る。血管造影画像が、ECG同期造影剤注入を使用して生成された場合、開始フレームAを識別するプロセスは、より容易にさせかつ自動化させることが出来る。ECG同期造影剤注入器の一例は、非特許文献9に記載されているMedrad Mark IV 注入器(Bayer)である。このようなECG同期注入器は、患者からECG信号を受信し、そして造影剤液の注入は、例えば、QRS群のR波によってトリガされる。正確なタイミングの制御は、R波の検出(図11、参照43)と造影剤注入の開始(図11、参照41)との間に遅延(図11、参照40)を設定することによって、実行することができる。次いで、造影剤が、1つの心周期内の短時間ウィンドウ(例えば、1つの心周期の1/5の時間、図11、参照41)内に注入される。この例では、フレームTは、図11、参照44で示されている。ECG同期造影剤注入の利点は、造影剤が心周期内の正確な時点で血管に入ることを保証することである。この造影剤注入のための理想的な時点は、QRS群が心臓の収縮(収縮期の冠動脈血液フロー段階(図11、参照41))をトリガする時のまわりである。この時、図11(参照13)に示されるように、冠動脈の血液フローは、最小に近い。R波(43)の検出と造影剤注入の開始との間に特定の遅延(40)を使用することは可能であるが、この図では一般的な平均速度曲線が記載されている。異なる冠動脈(例えば、左冠動脈、右冠動脈、冠状回旋等)に対し、最小冠動脈速度の時点が、心周期内の異なる時点で発生する可能性がある。特定の遅延(40)を用いることによって、注目する冠動脈に特有の最適な造影剤注入を可能にすることができる。
【0054】
これに代えて、開始フレームAは、ECG同期で制御される造影剤の注入が終了した画像フレームで、選択される(図11、参照45)。このアプローチを利用することにより、計算された血液フロー速度に対する造影剤注入速度(図11)の影響が、更に、排除される。造影剤の注入が終了した後に開始フレームAを選択すると、測定された速度(図11、参照42)が、実際の血液フロー速度であって、かつ造影剤の注入速度の部分ではないことが、確認される。説明されていない場合、造影剤注入による速度は、非特許文献10に記載されているように、測定された冠動脈血液フロー速度に影響を与える可能性がある。これは、また、造影剤流体の注入ポイントで直接開始する造影剤伝搬を測定することができる距離を最大にする。
【0055】
終了フレームBは、心拍数または患者のECG信号に基づいて、手動で選択することが出来るが、またフレームAの後の固定時間(例えば、全心周期)に設定することも出来る。
【0056】
これらのフレームAおよびBの両方において、中心線が、図1の操作S3または図3の205、207に示されるように、両方のフレームの開始ポイント(図6、参照1)から開始する造影剤ボーラス前面(図6、参照2)を含む造影剤に沿って作成される。フレームAおよびBにおけるこの開始ポイントは、公知技術のいくつかの方法を使用して達成することができる同一の解剖学的ポイントを表さなければならない(図3、参照209)。
【0057】
例えば、(ガイド・ワイヤが存在しているかもしれない対象領域を決定するために、雑音フィルタリングおよび堅牢な主成分分析による減算画像を使用する)非特許文献11または非特許文献12に教示されているように、両方の画像の解剖学的ポイントとして造影剤注入カテーテルの先端を自動的に検出することによって、ガイド・ワイヤのバイナリ画像を得ることができる。この方法は、血管ツリーの開始時に解剖学的に同一のポイントを選択することの信頼性を非常に高くする。本願明細書に参照される刊行物の完全な内容は、完全に本願明細書に引用されているものとする。
【0058】
これに代えて、カテーテル先端部より血管ツリーの更に下流で開始するポイントが望ましい場合、第二の方法は、自動的に検出された分岐のポイントにより、解剖学的にマッチングする開始ポイントを得る方法である。分岐のこのポイントの検出は、例えば、特許文献2で説明されているように、検出することができる。この特許では、分岐は、血管の輪郭と中心線を導出しかつ分岐の開始および終了を決定することによって検出される。次いで、分岐のさまざまな枝の間の角度が決定され、そして分岐の中心の位置が決定される。本願明細書において参照される特許の完全な主題は、完全に本願明細書に参照によって組込まれている。
【0059】
他の代替方法では、開始ポイントは、ユーザが手動で示すことが出来る。
【0060】
生成された中心線(図6、参照4)は、標的血管を通って進行して、可視造影剤前面(図6、参照3)まで続かなければならない。この中心線に沿った強度プロフィ―ルは、距離/強度グラフにプロットすることができ、これは、図6(参照6)で分かるように、結果としてグラフになる。これらのグラフの強度値は、中心線上のあらゆるポイント周辺の関心小領域図6、参照15)内の強度を平均することによって、計算される。
【0061】
造影剤強度に基づく終了ポイント(導管内での造影剤ボーラス前面を表す)は、例えば、ユーザ(図3、参照211、213)によって、手動で示すことができる。ユーザは、例えば、血管造影フレーム内、または距離/強度グラフ(図6、参照6)内に終了ポイントを示すことができる。
【0062】
これに代えて、終了ポイントは、自動的に定義することができる。血管の中心線に沿って、血管境界を僅かに超えて延在する対象小領域は、以前のS3、211、213および図6、参照15に記載されているように、定義される。これらの領域を、血管境界(図6、参照15)を通って中心線から少し離れて更に延在させることによって、このような領域に血管の一部と背景の一部の両方を含ませることができる。したがって、これらの関心領域は、血管の範囲内の(暗い)領域と血管の外側の(明るい、背景)領域の2つの領域をカバ―するであろう。血管が造影剤で満たされている限り、血管の内部は暗い(図5、参照27)ままである。造影剤ボ―ラス前面がまだ進行する必要がある血管の部分(図5、参照30)は、背景(明るい)(図5、参照32)と同じ強度であろう。これは、標準偏差―距離グラフ(図6、参照16)を計算することによって、最も良く捕獲される。このグラフにおいて、中心線上のあらゆるポイント周辺の各関心領域範囲図6、参照15)内の標準偏差が計算され、これは、造影剤ボ―ラス前面に達すると、低下するであろう。この低下ポイント(終了ポイント)は自動的に検出することができ、視覚による判定に比較してより大きな再現性で造影剤ボ―ラス前面がマ―クされる。終了ポイントは、所定のフレ―ムのtacquisitionの時間分解能により、造影剤が進行した距離をロックする。典型的なX線撮像システムに対するtacquisitionがミリ秒の範囲にあるので、これは、時間的に非常に正確な撮像の瞬間と造影剤の非常に正確な距離測定値を生成する。上述の低下ポイントの自動検出は、標準偏差―距離グラフの範囲内の、所定の閾値に依存させることができる。これに代えて、例えば、距離グラフに標準偏差グラフを乗算することによって、結合された標準偏差―強度距離グラフを、計算することもできる(図6、参照17)。このグラフにより、低下位置は強調されるであろう。この低下ポイントは、結合された標準偏差―強度距離グラフの絶対値微分が最大になる位置(図6、参照18)として定義することができる。
【0063】
両方のフレームに造影剤が存在する場合、これは、操作S4または219に説明したように、マーキングされた2つの終了ポイントの間の血管内の速度を生成するために、フレーム間の時間間隔と結合される。
【数8】
ここで、vlocalは、所定の入力フレーム内の造影剤前面の間の血管セグメントに渡って測定される速度であり、
は、第一のフレーム(フレームA)で測定される距離、
は、第二のフレーム(フレームB)で測定される距離、
は、第一のフレームの取得開始のタイムスタンプ、そして、
は、第二のフレームの取得開始のタイムスタンプである。
これらのタイムスタンプは、例えば、DICOMファイル内の適切なフィールドから導出することが出来る。
【0064】
距離sは、血管の中心線に沿った開始ポイントから造影剤ボーラス前面(終了ポイント)までの距離である(図3、参照215および217)。これは、例えば、2つのポイントの間の中心線に沿ったユークリッド距離を決定することによって、行うことが出来る。
【0065】
オプションとして、中心線sに沿った距離は、例えば、非特許文献13に記載されているような血管検出アルゴリズムを使用して自動的に検出される中心線を用いることによって、最適化することも出来る。これにより、手動で定義された中心線の場合より、より信頼性が高い所定の入力中心線に沿う二次元距離測定が行われる。この方法では、以前に(手動で)定義された中心線が、入力として使用される。次いで、ピクセル強度に基づく数量化解析が、血管のセグメンテーション端を決定するために、入力中心線を使用して実行される。更新された中心線は、次いで、検出されたセグメンテーション端の中心として定義される。本願明細書に参照される刊行物の完全な内容は、完全に本願明細書に参照によって組込まれている
【0066】
オプションとして、入力フレームAおよびBのさまざまな組合せに対して選択されたvlocal値のマトリックスを作成することも可能である。このようなマトリックスは、フレームの異なる選択に対するvlocal挙動の概要を与え、そして図7に見られる様な心周期の異なる部分にわたって測定されるときに、vlocalがどのように変化するかについての洞察を生成する。例えば、全心周期内の全てのフレームに続いて、例えば、フレームAとフレームBとの間の単一フレーム差を用いて計算された全てのvlocal値をグラフにプロットすることは、図8に見られるように、造影剤が標的血管を通って伝播するときの心周期中の速度変化(「全速度プロフィール」としても知られている)を表す。 図8は、本発明によって達成可能なこと、つまり、心周期内の複数のローカル速度(vlocal)の組合せとしての全速度プロフィールの生成を説明する。
【0067】
全速度プロフィールは、患者に依存しないプロフィール形状を有する。一つ以上のプロフィールを使用して、一般的な平均速度プロフィールが作成された。各全速度プロフィールは、見いだされた速度の最小値および最大値に基づいて正規化された。
【0068】
更に、全速度プロフィールに対応するECG信号も平均化されて、一般的なECG信号が生成される。
【0069】
これにより、結果として、一般的なECG信号(図10、参照9)にマッチングする1つの心周期に対して、一般的な全プロフィールf(x)(図10、参照8)が、得られる。心周期は、正規化されることが、有利である。心周期の開始(「0」)は、ECGプロフィールのRピークに対応し、心周期の終了(「1」)は、ECGプロフィールの次のRピークに対応する。
【0070】
オプションとして、これらの患者に依存しない一般的な全プロフィールは、例えば、右優位、左優位、小右優位及びバランスが保たれている、異なる冠動脈血管ツリー構造に基づいて、一般的平均全速度グラフを作成するために使用された全プロフィールを予め選択しておくことによって、生成することも出来る。冠動脈優位なタイプに対してこれらの冠動脈血管ツリーが相違する点は、非特許文献14に詳述されている。
【0071】
localが心周期の一部分の中で計算される場合、vlocalはその患者の平均血液フロー速度を表さない。この状況では、vlocal値が過去に決定された時間間隔は、心臓の状態相の対応するセクションに依存している。従って、心臓の状態相が異なるセクションにおいて、vlocal値は、図9に見られる様に、患者の平均血液速度との関係では過大または過小評価になり得る。間隔(図9の範囲内の20)に対応するvlocalは、例えば、間隔(図9の範囲内の21)に対応するvlocalと比較すると異なる。従って、vlocalは、全心周期(図9の範囲内の22)に渡る平均速度値vmeanに対して修正することが必要である。この変換方法(図1、S5)に対して、一般的な全速度プロフィールが、使用される。全速度プロフィールは、例えば、データベースを介して異なる患者から得ることが出来、かつ対応するECG信号を有することが出来る。
【0072】
一般的な全速度プロフィール(f(x))は、vlocalをvmeanに変換する際の強力なツールとなる。vlocalがvmeanを得るためには、相関係数cの計算が使用される。この相関係数は、カバーされている心周期の一部分にわたって正規化された積分に基づく:
【数9】
ここで、
【数10】
は、一般的な全速度プロフィールを表し、そして開始及び終了は、正規化された心周期[0、1]内の開始フレームと終了フレーム時間である。換言すれば、開始及び終了は、vmeanを計算す必要があるフレームAおよびBの心臓の状態相の位置に変換された開始フレームと終了フレーム時間である。ECG同期制御造影剤注入システムの場合、開始変数は、実際のところ、正規化された心周期の特定の時点に固定され、これにより、方程式を単純化し、かつより正確で一貫した結果が提供されることに留意されたい。
【0073】
この変換では、入力フレームは、一般化され正規化された速度プロフィールの特定の時間時点にマッチングさせる必要がある。これは、非特許文献15によって教示されているように、例えば、QRS群のRピーク(図11参照)を検出することによって行うことができる。
【0074】
画像の実行における全てのRピークが検出されると、対応するそれらのフレーム番号が判明する。従って、開始フレームと終了フレームの間にまたがった間隔は、検出されたRピークと関連する間隔にリンクさせることが出来る。2つのRピーク間の間隔は、0と1の間の間隔に正規化され、そして開始フレームと終了フレームの間の間隔は、同じ比率で正規化され、この結果心臓の状態相に関連する間隔になる。
【0075】
平均速度vmeanは、次のように、計算することができる:
【数11】
ここで、vlocalは、所定の入力フレームの造影剤前面の間の血管セグメントに渡って測定された速度であり、そしてcは、相関係数である。
【0076】
平均速度vmeanを使用して、標準方程式に従って容積フロー値Qを計算することも出来る:
【数12】
ここで、
【数13】
は、vmeanが計算される血管の直径である。
【0077】
血管の直径は、分析される血管のセグメントに渡る平均直径に対応すべきである。これを達成するために、値は、例えば、二次元の血管造影フレームに線を描画することによって、手動で設定することが出来る。
【0078】
これに代えて、平均直径は、例えば、特許文献3に記載されている検出アルゴリズムによって、自動的に検出することも出来る。この検出アルゴリズムでは、S3、205、207の入力として使用された中心線は、入力として使用することが出来る。これは、中心線を再定義する、しかし、これは血管境界も検出するので、これは、中心線に沿う直径グラフを作成するために使用することも出来る。平均直径は、このようなグラフの中で、導き出すことが出来る。本願明細書に参照される特許の完全な主題は、完全に本願明細書に参照によって組込まれている。
【0079】
この実施態様は、(毎秒7.5フレームに限定されているかもしれない)画像シネフレーム率によって定義される時間分解能(tcineframe)に依存するのではなく、撮像システムのシャッタの時間分解能(tacquisition)(これは、通常約20ミリ秒よりかなり高い)のみに依存する。
【0080】
上述した実施態様について、いくつかの可能な変更例を定義することが出来る。これらの変更例は、図1または3で上述した通常のフローに追加される。変更例は、互いに別々に、または複数のものとして一緒に適用することが出来る。次に、各変更例のより詳細な説明を説明する。
【0081】
オプションとして、3Dモデルを使用して、二次元距離の補正を行うこともできる。この場合、開始フレームと終了フレームで利用可能な二次元の中心線にマッピングされた一つまたは複数の3Dモデルが、利用できることが必要である。
【0082】
中心線(例えば、ユークリッド距離)に沿う二次元距離を測定する代わりに、マッピングされた二次元のポイントからの3Dモデル内の3D距離が、計算され、これにより、より良好な距離推定が可能になる。
【0083】
これを行うためには、3Dモデルと血管造影画像の実行との間にマッチングが、確立されなければならない。最初に、3Dモデルが、患者体位が画像の実行の患者体位に等しくなるように、配置される。画像の実行のフレームは、フレームの心臓の状態相が3Dモデルのそれにマッチングするように、選択されることが、好ましい。例えば、3DモデルがCTデータから導出される場合、データは、心臓の状態相内の一つの特定の時点に記録されるのに対し、二次元画像の実行は、複数の心臓の状態相を含む。心臓の状態相を整列配置することは、より良好なマッチングを確実にする。
【0084】
次いで、この3Dモデルは、例えば、非特許文献16に教示されるように、選択された二次元フレームに逆投影される。これは、3D中心線モデルまたは3Dルーメン・モデルを使用して行うことができる。本願明細書に参照される刊行物の完全な内容は、完全に本願明細書に参照によって組込まれている。
【0085】
逆投影された3Dモデルの二次元フレームとのマッチングを単純化するために、二次元フレーム内のルーメンは、強調される。これは、例えば、非特許文献17に記載されているように、画像内で見出されるべきルーメンの直径を考慮する血管性(vesselness)フィルタを使用して、行うことができる。本願明細書において参照される刊行物の完全な内容は、完全に本願明細書において引用したものとする。これらの直径は、ルーメン-モデルの場合には、3Dモデルから直接読出すことが出来る。中心線のみが抽出されるときには、直径についての文献、非特許文献18を使用して、対応する直径の経験値に基づいて推測を行うことが出来る。これは、結果として二次元の血管性画像になる。本願明細書に参照される刊行物の完全な内容は、完全に本願明細書に参照によって組込まれている。
【0086】
二次元の計算された血管性画像と逆投影された3Dモデルとの間のマッチングは、逆投影された3D中心線モデルと二次元の血管性中心線とがマッチングしないコストを計算することによって実行される。逆投影された3Dポイントごとに、コストが、決定される。このコストは、例えば、最も近い隣接ポイントまでのユークリッド距離である。この逆投影された3D中心線モデルと二次元の血管性画像との間のマッチングのための総コストは、逆投影された3D中心線モデルの全てのポイントに対するコストの合計である。
【0087】
最小コストは、逆投影された3Dモデルと二次元のフレームとの間の最良のマッチングを表す。このマッチングを使用して、3D中心線は、二次元のポイントの間の二次元距離を補正するために用いることが出来る。
【0088】
対象血管の平均速度vmeanを計算することに加えて、同じ血管ツリーの他の部分の速度も、計算することが出来るので、例え、血管造影または3Dモデルの一部が適切に見えない場合であっても、血管の速度にアクセスすることが出来る。
【0089】
これは、患者の血管ツリー(の一部)における関心のある一つ以上の血管セグメント(SOI: segments of interest)を示しかつvmeanに対応する血管ツリーのセグメントを示すことによって行われる。血管ツリー(の一部)は、例えば、データベースから検索された一般的な血管ツリー内に示すことが出来、これは、患者の心臓タイプに対応する、またはもし利用可能な場合には、例えば、患者に特有のCTスキャンに対応していることが、好ましい。
【0090】
meanに属する血管セグメントは、血管ツリー(の一部)内でユーザが手動で示す、または自動的に決定することが出来る。(各血管セグメントに対するラベルを含む)注釈がついている3Dモデルが、血管ツリーの一部または全体で利用可能である場合、vmeanに属する血管セグメントは、上述したように二次元の血管造影画像上に3Dモデルを逆投影することによって、決定することが出来る。
【0091】
meanに属する血管部分が分かると、速度の伝搬を行うことが出来る。全ての患者が、図10に示される右優位、左優位、右小優位またはバランスが保たれているの何れかであると決定することができる心臓タイプを有するので、全ての患者は、非特許文献19に記載されているように、この心臓タイプに基づいて、冠動脈血管ツリー内に特定の相対直径を有する特定の冠動脈血管ツリーを有する。
【0092】
非特許文献20に説明されているように、スケーリング則は、次いで、所定の入力速度を有する血管ツリーの分岐の前後で、特定の心臓タイプに対する直径を結合して、分岐の他の2本の分岐上の速度およびフローを計算する。本願明細書において参照される刊行物の完全な内容は、完全に本願明細書において引用したものとする。
【0093】
Murrayのスケーリング則とフローQ=Qd1+...+QdN (すなわち、近位フロー)の格納を結合すると、これは、遠位のフローの合計に等しくなる。
分岐に対して、これは:
【数14】
と等しい。r値は、2つの遠位血管の半径である。一般的な心臓モデルの直径を使用して、血管ツリー全体を通して任意の速度値を計算することが可能である。これは、図3のステップS6の後に、余分の処理ステップを生成する。
【0094】
オプションとして、画像登録を、図3の操作S2の余分な処理ステップとして、入力された血管造影減算画像フレームに実行することも出来る。特に、その目的が、図7に説明されているような速度マトリックスを作成する場合、これは、中心線導出および距離計算をより容易にする。
【0095】
複数の強度プロフィール(図6、参照6で示すフレームごとの一つのプロフィール)を決定することに代えて、血管に沿う累積的な単一の強度プロフィールを生成する代替アプローチも、可能である。このアプローチでは、画像実行の各フレームに対して、画像登録が、必要である。造影剤注入の間の画像登録は複雑であるので、代替アプローチが使用される。非特許文献21に教示されるこのアプローチでは、「非剛体画像登録(non-rigid image registration)」が、造影剤注入の後の心周期に実行される。心臓の動きは、直接心周期にリンクされる。血管が、血管の完全な潅流の後に全ての心周期に対して既に登録されている場合、見出された登録は、造影剤が対象血管に完全に注がれる前に存在していてかつ直接の登録が不可能であった一つ以上の心周期に、マッピングすることが出来る。本願明細書において参照される刊行物の完全な内容は、完全に本願明細書において引用したものとする。
【0096】
完全に見える血管ツリ―内の各フレ―ム(図12、参照16)は、ECG信号(図12、参照17)にリンクされている心周期の時点にマッピングされ、そして同じことが造影剤伝搬の間に行われる。次いで、一定数の中心線ポイントが、全てのフレ―ム(図12、参照15)に沿って登録される。これらの中心線ポイントは、新しい強度グラフ(図6)上のx軸に対応する。登録された中心線ポイントとそれらの周辺の小領域のピクセル値を、値を得るために累積的に追加することによって、このグラフのy強度値が、取得される。これは、結果として、注目する血管を通る造影剤の伝搬に従う異なる強度曲線になる(図12、参照18)。この新しい強度曲線に基づいて、先に定義した計算を使用して、累積時間間隔で造影剤の開始及び終了のカットオフ・ポイント(図12、参照19)を決定して、距離、したがってそれらの間の速度を計算することが出来る。
【0097】
これに代えて、この強度曲線は、(式1)の計算方法を用いて造影剤ボーラス前面が見えなければならないフレームAおよびフレームBをユーザが選択する際のガイダンスとして、使用することも出来る。
【0098】
更に、画像登録の場合、画像の実行の可能な全てのフレーム内に経時的に登録された開始ポイントを使用して、画像の実行の開始ポイントで最大造影剤強度を有するフレームを識別することによって、血管ツリー内の造影剤注入の時点を決定することが出来る。これは、フレームAに対する提案として使用することが出来る。
【0099】
画像登録が上述した様に使用される場合、これは、フレームAの第一の中心線ポイントをフレームBの登録ポイントにマッチングさせる(またはその逆)ことによって、フレームAおよびフレームB内の同一の開始ポイントを決定するための更なる代替方法として、使用することもできる。
【0100】
meanの計算に速度自己相関法を使用する代わりに、vmeanを得る代替の方法がある。このような代替方法の主な目的は、速度を測定する心臓の状態相の部分を特定することである。この目的は、心周期の設定部分に沿って測定することであるので、得られたvlocalは、vmeanに到達するための一定の相関係数を有する。
【0101】
1つのアプローチは、例えば、速度グラフがそのピークにあるときの速度(図11、参照13)を測定することによって、心周期の間の最大速度をカバーすることであり、このアプローチは、この領域での速度の描画および検出をより容易にする。これは、例えば、図11で分かるように、右冠動脈の場合、心周期のP波から心周期のT波までの速度を測定することを意味する。入力された血管造影画像とマッチングしている入力ECGのP波およびT波(図11、参照14)を検出することによって、P波およびT波に対応する画像の実行のフレームを識別することができる。TおよびP波の識別は、ユーザによって手動で、または例えば、非特許文献22に記載されているように、自動的に検出するの何れかで行うことが出来る。非特許文献22は、勾配検出を使用して、ECG信号からQRS群を識別しかつ先ずQRS群をフィルタ除去し、次いで、同じ技術を使用して、先ずT波の、そして最終的にはP波のよりわずかな勾配を検出しかつそれらをフィルタ除去する。T波およびP波ピークに対応するフレームは、速度計算のための開始フレームAおよび終了フレームBとして使用されなければならない。これは、((式)1)をvlocalに対する次の方程式に変更する。
【数15】
ここでvlocalは、所定の入力フレーム内の造影剤前面の間の血管セグメントに渡って測定される速度であり、stwaveは、T波に対応するフレーム内で測定される距離であり、spwaveは、P波に対応するフレーム内で測定される距離であり、ttwaveは、T波に対応するフレームの取得のタイムスタンプであり、そしてtpwaveは、 P波に対応するフレームの取得のタイムスタンプである。造影剤注入が、測定のこの時点において行われないことを確認し、そして常にvlocalのこのバージョンを決定する前に設定されているので、ECG同期制御による造影剤注入の適用は、このプロセスの信頼性をより高くすることも出来る点に留意する必要がある。
【0102】
更に、間隔が一定であるので、(式2)はもはや必要ではない。この方程式の代わりに、式7では、cは、(式3)に記載されているように平均vmeanを計算するために使用することが出来る定数値Cに等しい。
【数16】
ここで、vlocalは、所定の入力フレームの造影剤前面の間の血管セグメントに渡って測定される速度であり、そしてcは、定数の相関係数である。
【0103】
これに代えて、vmeanを計算する他の方法は、1つの心周期に沿って速度を測定することに基づいている。先に述べたように心周期をECGグラフにマッピングすることによって、測定された心周期の長さをフレーム数で決定することが可能である。開始フレームと終了フレーム間のフレーム数が、1つの心周期に等しい場合、相関係数cは1に等しくなるので、
【数17】
が成立すると述べることができる。
【0104】
二次元の血管造影画像の実行が、利用可能なECGグラフを有しない、またはECG信号が非常に不規則であるまたは雑音が多い場合でも、速度を修正しかつ真のvmeanを得ることが依然として可能であるように、実施態様を調整することができる。このアプローチは、分析されつつある心臓の状態相の部分に最初のガイダンスを与えるには、ECG信号が利用できないという事実を補償するために、より広範な分析を必要とする。このためには、「開始」フレームAと「終了」フレームBの間の利用できる画像フレームを全て分析する必要がある。この方法は、速度マトリックスを必要とし、かつこれから速度グラフを生成する(図7および図8)。測定ポイント当たり単一フレームの間隔時間を有する速度グラフv(x)は、図10に見られるように、一般的なプロフィールvgen(v)と異ならないプロフィールを与える。v(x)をvgen(v)にフィットさせることによって、心周期のどの部分がv(x)に対応するかを決定することが可能になる。これが分かると、真の速度vmeanを確立するために、(式2)および(式3)を使用することが可能となり、この後(式4)を使用して容積フローQを確立することが可能となる。
【0105】
心周期に渡って上述のように計算された平均速度vmeanは、例えば、導管内の壁せん断応力または圧力降下を評価するための、例えば、冠動脈フロー留置(CFR:coronary flow reserve)または計算流体力学(CFD:computational fluid dynamics)計算のための、更なる計算および推定における開始ポイントとすることができる。
【0106】
オプションとして、vlocalからvmeanへの変換(図1の操作S5)は、省略することも出来る。この場合、vmeanは、次の全ての計算に対し、vlocalに等しい。
【0107】
本願明細書に記載されている実施態様は、スタンドアロン・システムに使用することができるが、例えば、二次元の血管造影画像を取得するために、直接X線蛍光撮影システムまたは他の如何なる画像システムにも、直接含ませることも出来る。図17は、X線シネ・フルオログラフィ・システムの高レベル・ブロック図の例を示す。このブロック図において、本実施態様は、本実施態様がどのようにしてこのようなシステムに一体化することができるかの一例として、含まれる。
【0108】
(さまざまな機能ブロックによって定義される)システムの部分は、専用ハードウェア、アナログおよび/またはデジタル回路、および/またはメモリに格納されているプログラム命令を操作する一つ以上のプロセッサにより実行することができる。
【0109】
図13のX線システムは、X線ビーム803を発生させる高電圧発生器802を有するX線管801を含む。高電圧発生器802は、X線管801に電力を供給しかつそれを制御する。
【0110】
高電圧発生器802は、陰極とX線管801の回転陽極との間の真空ギャップに高電圧を印加する。
【0111】
X線管801に印加される電圧により、電子移動が、陰極からX線管801のアノードに発生し、結果として制御放射(Bremsstrahlung)と呼ばれるX線光子発生効果が得られる。生成された光子は、画像検出器806に向けられるX線ビーム803を形成する。
【0112】
X線ビーム803は、X線管801に与えられる電圧および電流によって決定される最大値まで変動するエネルギーのスペクトルを有する光子から成る。
【0113】
次いで、X線ビーム803‘は、調整可能テーブル805に横たわる患者804を通過する。X線ビーム803‘のX線光子は、患者の組織を様々な程度で透過する。患者804の異なる構造は、放射線の異なる留分を吸収し、ビーム強度を変調する。
【0114】
患者804から出る変調されたX線ビーム803‘は、X線管の反対側に位置する画像検出器806によって検出される。この画像検出器806は、間接または直接検出システムの何れかとすることができる。
【0115】
間接検出システムの場合、画像検出器806は、X線射出ビーム803を増幅された可視光画像に変換する真空管(X線画像増幅器)から成る。この増幅された可視光画像は、次いで、可視光画像レセプタ(例えば、画像表示および記録のためのデジタル・ビデオ・カメラ)に、伝送される。これは、結果としてデジタル画像信号になる。
【0116】
直接検出システムの場合、画像検出器806は、フラットパネル検出器から成る。フラットパネル検出器は、X線射出ビーム803‘をデジタル画像信号に直接変換する。
【0117】
画像検出器806から得られたデジタル画像信号は、デジタル画像処理ユニット807を通過する。デジタル画像処理ユニット807は、806からのデジタル画像信号を、標準画像ファイル形式(例えば、DICOM)で補正された(例えば、反転および/またはコントラスト強調された)X線画像に変換する。次いで、補正されたX線画像は、ハードディスク808に格納することが出来る。
【0118】
更に、図13のX線システムは、Cアーム809から成る。Cアームは、患者804および調整可能テーブル805が、X線管801と画像検出器806の間にあるように、X線管801および画像検出器806を保持する。Cアームは、Cアーム制御810を使用して、制御された態様で、特定の投影を取得するように所望の位置へ移動させる(回転させる、及び角度付ける)ことができる。Cアーム制御は、ある投影でのX線記録のための所望の位置にCアームを調整するための手動入力または自動入力を可能にする。
【0119】
図13のX線システムは、一平面または二平面撮像システムの何れかとすることが出来る。二平面撮像システムの場合には、複数のCアーム809が存在し、各々は、X線管801画像検出器806およびCアーム制御810から成っている。
【0120】
加えて、調整可能テーブル805は、テーブル制御811を使用して移動させることが出来る。調整可能テーブル805は、x、yおよびz軸に沿って移動させ、かつあるポイントの周りに傾けることができる。
【0121】
一般のユニット812は、このX線システムにも存在する。この一般のユニット812は、Cアーム制御810、テーブル制御811およびデジタル画像処理ユニット807と対話して使用することができる。
【0122】
造影剤の注入は、造影剤注入器813を使用して行われる。造影剤注入器813は、ECG同期により制御させ、及び一般のユニット812またはユーザ入力に応じて制御させることができる。
【0123】
一実施態様は、以下のように図13のX線システムによって実施される。臨床医または他のユーザは、患者804に対しCアーム809を所望の位置に動かすCアーム制御810を用いて、ある投影で患者804のX線血管造影画像を取得する。患者804は、テーブル制御811を使用して特定の位置へユーザによって既に移動されている調整可能テーブル805に横たわる。
【0124】
X線画像フレームのシーケンスが、次いで、前述したように、高電圧発生器802、X線管801、画像検出器806およびデジタル画像処理ユニット807を使用して、生成される。これらの画像フレームは、次いで、ハードディスク・ドライブ808またはサーバに格納される。このX線画像フレームを使用して、汎用処理ユニット812は、図1および図3を参照して、上で開示された1つ以上の操作および関連する可変要素および組合せを実行することによって、ローカル速度または平均速度を計算する。このような速度は、ハードディスク・ドライブまたはサーバにアクセスする処理システムによって、計算させることも出来る。このシステムは、目標となる導管(典型的には、血管)の造影剤のシーケンスの強化された画像フレームを読込むように構成されているメモリ、そして、メモリに格納されているプログラム命令を実行するときに、本願明細書の実施態様に従う方法(特に、図1および3および関連した変更例およびこれらの組合せに関して開示されている操作)を実行するように構成されている一つ以上のプロセッサを備える。
【0125】
本願明細書では、減少した短縮法および情報の関連性に関して最適ビューイング画像方向を決定するための方法および装置のいくつかの実施態様が、記載されかつ示されて来た。本発明の特定な実施態様が記述されてきたが、本発明は、技術が許す範囲の程度に広く、かつ明細書もそのように読まれることが意図されているので、本発明が実施態様に限定されることは、意図されていない。例えば、データ処理操作は、デジタル・ストレージ(例えば、医療用画像技術で一般的に用いられるPACS) に格納される画像にオフラインで実行させることが出来る。従って、請求項の趣旨及び範囲から逸脱すること無く、更に他の変更を、提供された本発明になすことができることは、当業者には理解されるであろう。
【0126】
本願明細書に記述される実施態様は、上述したような様々なデータ格納及び他のメモリ及びストレージ・メディアを含んでいても良い。これらは、一つ以上のコンピュータにローカルに存在する(及び/又はそこに常駐する)、又はネットワーク全体のコンピュータの一部又は全部から遠隔のストレージ媒体のような、様々な位置に存在させることができる。特定の組の実施態様においては、情報は、当業者には馴染みのあるストレージ-領域ネットワーク(「SAN: storage-area network」)に存在していても良い。同様に、任意の必要なファイル- コンピュータ、サーバ又は他ネットワーク・デバイスに起因している機能を実行するために必要な如何なるファイルも、適切に、ローカルに及び/又は遠隔で格納させても良い。システムがコンピュータ化されたデバイスを含む場合、各デバイスは、バスを介して電気的に結合させても良いハードウェア素子を含むことが出来る。これらの素子は、例えば、少なくとも一つの中央処理ユニット(「CPU」又は「プロセッサ」)、少なくとも一つの入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラ、タッチ・スクリーン又はキーパッド)及び少なくとも一つの出力デバイス(例えば、表示デバイス、プリンタ又はスピーカ)を含む。このようなシステムは、ディスク・ドライブ、光ストレージ・デバイス、及びランダム・アクセス・メモリ(「RAM」)又はリード・オンリ・メモリ(「ROM」のような固体物理ストレージ・デバイス並びに可換型媒体デバイス、メモリ・カード、フラッシュ・カード等のような、一つ以上のストレージ・デバイスを含んでいても良い。
【0127】
このようなデバイスは、上述したコンピュータ可読記憶媒体メディア・リーダ、(モデム、ネットワーク・カード(無線又は配線)、赤外線通信デバイスのような)通信デバイス及び作業メモリを含むことも出来る。コンピュータ可読記憶媒体メディア・リーダは、遠隔の、ローカルの、固定された及び/又は着脱可能なストレージ・デバイス並びにコンピュータ可読情報を一時的に及び/又は永久に含み、格納し、送信し、読み出すためのストレージ・メディアを表すコンピュータ可読格納媒体に、接続させる又はこれを受けるように構成することが出来る。システム及び種々のデバイスは、通常、オペレーティング・システム、及びクライアント・アプリケーション又はウェブ・ブラウザのようなアプリケーション・プログラムを含む、少なくとも一つの操作するメモリ・デバイス内に配置される多くのソフトウェア・アプリケーション、モジュール、サービス又は他の素子を含むであろう。代替の実施態様が、上述されたものに対し多数の変更例を有していても良いことは、理解されるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアが使用されるかもしれないし、及び/又は特定の要素を、ハードウェア、(アプレットのような、高移植性ソフトウェアを含む)ソフトウェア又は両方で、実装するかもしれない。更に、ネットワーク入力/出力デバイスのような他のコンピューティング・デバイスへの接続を、採用しても良い。
【0128】
種々の実施態様は、更に、前述の記載に従って実装される命令及び/又はデータを受信し、送信し、コンピュータ可読媒体に格納することを含んでいても良い。コード又はコードの部分を含むためのストレージ・メディア及びコンピュータ読取り可能な媒体は、揮発性及び不揮発性で、コンピュータ可読命令のようなストレージ及び/又は情報伝送のための任意の方法又は技術において実装される着脱可能な及び取り外し不可能なメディアに制限されず、データ構造(プログラム・モジュール又は他のデータ)のような、ストレージ・メディア及び通信媒体を含み、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム可能なリード・オンリ・メモリ(「EEPROM」)、フラッシュ・メモリ又は他のメモリ技術、コンパクト・ディスク・リードオンリ・メモリ(「CD―ROM」)、デジタル広用途ディスク(DVD)又は他の光学ストレージ、所望の情報の格納に使用することができる及びシステム装置によってアクセスさせることができる磁気カ設定、磁気テープ、磁気ディスク・ストレージ又は他の磁気ストレージ・デバイス又はいずれかの他のメディアを含む、この技術分野において公知である又は使用される任意の適切なメディアを含むことが出来る。本明細書において提供されている開示及び教示に基づいて、当業者は、種々の実施態様を実装する他の方法(単数)及び/又は方法(複数)を理解するであろう。
【0129】
従って、明細書及び図面は、限定的なものではなく、開示するものであるとみなすべきである。しかしながら、種々の変更及び改変を、請求項に記載される本発明のより広い精神と範囲を逸脱しない範囲でなしてもよいことは、明白であろう。
【0130】
他の変更は、本開示の精神の中にある。したがって、開示された技術には、種々の変更及び代替の構成が可能であるが、それらのいくつかの実施態様は、図面に示されかつ詳細に上述されてきた。しかしながら、開示される特定の形(単数)又は形(複数)に本発明を制限する意図はなく、この逆で、この意図は、添付の請求項において定義され本発明の精神と範囲に入る全ての変更、代替構造及び等価物をカバーすることであることを理解すべきである。
【0131】
用語「a」及び「an」及び「the」の使用及び開示された実施態様で記述される文脈(特に続く請求項の文脈)内の類似する参照の使用は、本願明細書においてそれに反する記載がない限り又はコンテクストと明らかに矛盾しない限り、 単数及び複数をカバーするものとする。用語「備える」、「有する」、「含む」及び「含有する」は、特に明記しない限り、開放型用語(すなわち、「~を含むが、これに限定されるものではない」)であると解釈されるべきである。変更されずかつ物理的接続に関連するときの用語「接続されている」は、何か介在物がある場合であっても、部分的に又は完全に、含有されている、付着されている又は結合されているように解釈すべきである。本願明細書における値の範囲の説明は、特に明記されていない限りそしてあたかも各別個の値が本願明細書に個々に詳述されていたかのように、それが明細書に組み込まれていない限り、各別個の値が範囲に入っていることを個々に示す簡略的な方法として機能することを意図しているに過ぎない。用語「設定」(例えば、「アイテムの設定」)又は「サブ設定」の使用は、特に明記されていない限り又はコンテクストと矛盾しない限り、一つ以上の部材を備えている空がない集合と解釈されるべきである。更に、特に明記されていない限り又はコンテクストと矛盾しない限り、対応する設定の用語「サブ設定」は、必ずしも対応する設定の適切な設定を示すというわけではなく、サブ設定及び対応する設定は、等しくても良い。
【0132】
本願明細書において記述されるプロセスの操作は、本願明細書においてそれに反する記載がない限り又はコンテクストと明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行させることが出来る。本願明細書において記述される(又は変更例及び/又はこれらの組合せ)プロセスは、実行可能な命令によって構成されている一つ以上のコンピュータ・システムのコントロールの下で実行させても良く、そしてハードウェア又はこれらの組合せによって、一つ以上のプロセッサに集合的に実行するコード(例えば、実行可能な命令、一つ以上のコンピュータ・プログラム又は一つ以上のアプリケーション)として実装させても良い。コードは、そうであることができる、例えば、一つ以上のプロセッサによって実行可能な複数の命令を備えているコンピュータ・プログラムの形態で、コンピュータ読出し可能な格納媒体に格納させても良い。コンピュータ読出し可能な格納媒体は、非一時的としても良い。
【0133】
この開示の好ましい実施態様は、発明を実施するための本発明者等が知る最良の形態を含めて、本願明細書において記述されている。これらの好ましい実施態様の変更例は、当業者が前述の記載を読込めば、即座に、明らかになる。本発明者等は、当業者が、そのような変更例を適切に採用することを期待し、そして本開示の実施態様が、本願明細書において特定的に記述されているもの以外で実行されると理解する。したがって、本開示の範囲は、準拠法によって許される、添付の請求項に記載される主題全ての変更及び等価物を含む。更に、これらの全ての可能性がある変更例の上記の要素の任意の組合せは、本願明細書においてそれに反する記載がない限り又はコンテクストと明らかに矛盾しない限り、本開示の範囲に含まれる。
【0134】
公表、特許出願及び特許を含む全ての参照は、あたかも、各参照が、参照によって組み込まれていると個々にかつ特定的に示されていてかつその全部が本願明細書に記載されていたかのように、参照によって本願明細書に組込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13